メンタルヘルス用語辞典 · 双極性障害

双極性障害(躁うつ病)とは?
症状・原因・治療法をわかりやすく解説

双極性障害は「躁状態」と「うつ状態」を繰り返す脳の病気です。正しい診断と治療で安定した生活を取り戻せます。I型・II型の違いから治療・日常ケア・家族のサポートまで、必要な情報をすべてまとめました。

ABOUT BIPOLAR DISORDER

双極性障害とは、どんな病気か

双極性障害は、気分が異常に高揚する「躁状態」と深く落ち込む「うつ状態」を繰り返す脳の病気です。以前は「躁うつ病」と呼ばれていました。正しい診断と治療で、安定した日常を取り戻すことができます。

定義

双極性障害の定義——うつ病とは異なる病気

双極性障害は、気分が異常に高揚する「躁(そう)状態」と、深く落ち込む「うつ状態」を繰り返す脳の病気です。単なる「気分の波」ではなく、脳内の神経伝達物質のバランスが大きく乱れることで起こります。うつ病とは別の病気であり、治療法がまったく異なるため、正確な診断が極めて重要です。

日常的な気分の波
誰にでもある感情の変化
嬉しいことがあれば元気になり、嫌なことがあれば落ち込む。数日で自然と戻り、生活に大きな支障は出ない。
双極性障害
脳の機能に異常が起きた状態
気分の振れ幅が極端に大きく、数日〜数週間にわたって続く。躁状態では社会的トラブル、うつ状態では日常生活が困難になる。適切な治療が不可欠。
🧠

なぜ「うつ病の治療」では治らないのか

双極性障害に抗うつ薬を単独で使用すると、躁状態を誘発(躁転)したり、気分の波をさらに不安定にすることがあります。双極性障害には気分安定薬を中心とした治療が必要であり、正確な診断が治療の土台になります。

うつ病と間違えやすい双極性障害の方の多くは「うつ状態」で受診するため、最初はうつ病と診断されることが少なくありません。正しい診断までに平均8年かかるという研究もあります。
有病率

双極性障害は、珍しい病気ではない

双極性障害は特別な人がなる病気ではありません。データで見ると、その身近さがわかります。

0.6%
日本における生涯有病率は約0.6%(約170人に1人)
20
発症のピークは10代後半〜20代前半。全年代で発症しうる
90%以上
適切な治療で90%以上が症状をコントロールできるようになる
世界では約4,000万人が双極性障害を抱えています。WHOの報告でも全人口の約0.5%に上ります。決して「自分だけ」ではありません。
誤診の問題

なぜ「うつ病」と誤診されやすいのか

双極性障害の方が最初に病院を訪れるのは、ほとんどの場合「うつ状態」の時です。躁状態や軽躁状態は本人にとって「調子が良い時期」に感じられるため、問題として報告されません。

双極性障害を疑うべきチェックポイント

  • 気分の波が激しく、「良い時」と「悪い時」の差が極端に大きい
  • 抗うつ薬を飲んでいるのに改善しない、または急にハイテンションになった
  • 「やたら元気で眠らなくても平気」な時期が過去にあった
  • 衝動的な買い物やギャンブルで後悔した時期がある
  • 家族から「別人のようだった」と言われた時期がある
  • うつ状態で過眠・過食・鉛のような体の重さがある
  • 家族に双極性障害(躁うつ病)の方がいる
  • !「消えてしまいたい」「死にたい」と思うことがある
💡
上記に3つ以上心当たりがあれば、主治医に「双極性障害の可能性」について相談してみてください。MDQ(気分障害質問票)というスクリーニング検査を受けることもできます。
TYPE I vs TYPE II

双極I型とII型——その違いと特徴

双極性障害にはI型とII型があり、躁状態の程度と期間が異なります。どちらも専門的な治療が必要であり、II型は「軽い病気」ではありません。

2つの型

双極I型・双極II型のそれぞれの特徴

それぞれのカードをタップすると詳細が開きます。タグは代表的な特徴です。

激しい
双極I型障害
躁の程度:躁状態(7日以上)
気分の高揚が非常に強く、入院が必要になることもある。衝動的な買い物、無謀な運転、睡眠なしでの活動などが見られる。社会的・職業的機能に著しい障害をもたらし、場合によっては精神病性の特徴(妄想・幻覚)を伴うこともある。
激しい躁入院が必要な場合も精神病性症状を伴うことも
軽度〜中等度
双極II型障害
躁の程度:軽躁状態(4日以上)
軽躁状態は「調子が良い時期」に見え、本人も周囲も気づきにくい。入院を要するほどの重症度はないが、うつ状態の期間がI型より長く、全体の約半分を占める。うつ病と誤診されやすく、自殺リスクがI型と同等かそれ以上に高い。
軽躁(見逃しやすい)うつが長い自殺リスク注意うつ病と誤診されやすい
比較表

I型とII型——項目別の比較

I型
II型
躁の程度
激しい躁状態
軽躁状態
躁の最低期間
7日以上
4日以上
入院の必要性
必要な場合あり
まれ
うつ期間の割合
約1/3
約1/2
発見の難易度
比較的容易
見逃しやすい
自殺リスク
高い
同等かそれ以上
II型は「軽い双極性障害」ではありません。うつ期間が長く、自殺リスクも高いため、I型と同等の注意と治療が不可欠です。
特殊な病態

混合状態と急速交代型——見逃せない2つのパターン

双極性障害にはI型・II型のほかに、理解しておくべき重要な病態があります。「混合状態」と「急速交代型(ラピッドサイクラー)」はどちらも症状管理が難しく、自殺リスクとも深く関係します。

⚡ 混合状態(混合性エピソード)とは

躁状態とうつ状態の症状が「同時に」または「急速に交互に」現れる状態です。気分は沈んでいるのに体は動き続けてしまう、あるいは焦燥感・イライラ感だけが異常に高まるといった形で現れます。

  • 抑うつ気分があるのに、思考が奔走してじっとしていられない
  • 意欲はないのに衝動性だけが高まり、衝動的な行動に走りやすい
  • 焦燥感と絶望感が同時にあるため、自殺リスクが最も高い状態のひとつ
  • 「気分が良い」とも「悪い」とも言えない不安定な状態が続く
⚠️
混合状態での自殺リスクに注意混合状態は「エネルギーがある」状態でもあるため、希死念慮が行動に移りやすく、双極性障害の中で最も注意すべき時期です。「消えたい」「死にたい」という気持ちがあれば、すぐに主治医か相談窓口に連絡してください。

🔄 急速交代型(ラピッドサイクラー)とは

1年間に4回以上の気分エピソード(躁・軽躁・うつ・混合)を繰り返す状態を「急速交代型」と呼びます。双極性障害全体の約15〜20%に見られ、通常の治療では安定しにくいため特別なアプローチが必要です。

  • 女性・若年発症・甲状腺機能低下症の合併が危険因子
  • 抗うつ薬の単独使用が急速交代型を誘発・悪化させることがある
  • リチウムよりバルプロ酸・ラモトリギンが有効なケースが多い
  • 睡眠リズムの乱れが特に強いトリガーとなる
💡
急速交代型は「治りにくい」わけではない急速交代型は通常の双極性障害より治療が複雑ですが、適切な気分安定薬の選択・睡眠管理・生活リズムの安定化によって、十分にコントロール可能です。あきらめずに主治医と連携しましょう。
SYMPTOMS

双極性障害の症状

双極性障害では「躁状態」「うつ状態」「身体症状」が現れます。それぞれの特徴を知っておくことが、早期発見と対処の鍵になります。

3種類の症状

躁状態・うつ状態・身体症状

🔝
気分の高揚・誇大感
自分は何でもできると感じ、異常に自信がみなぎる。「自分は特別な存在だ」と確信し、壮大な計画を立てる。
💬
多弁・話が止まらない
考えが次から次に湧き出し(観念奔逸)、一方的に話し続ける。話題が飛びやすく、会話の脈絡がなくなることもある。
🌙
睡眠欲求の著しい減少
2〜3時間の睡眠でもまったく疲れを感じない。何日も眠らずに活動し続けることもある。これは最も重要な警告サインのひとつ。
💸
衝動的・危険な行動
高額な買い物、無計画な投資、性的逸脱、危険な運転など、後で深く後悔する行動に走る。本人はリスクを認識できない。
活動量の著しい増加
仕事・趣味・社交活動を同時にいくつも抱え込み、過度に活動的になる。じっとしていられず、目的のある活動が増えるか落ち着きがなくなる。
😤
易怒性(いどせい)
些細なことで激しく怒ったり、イライラが爆発する。高揚感ではなく「怒り」が主症状の躁状態もある。トラブルの原因になりやすい。
💭
注意散漫
注意があちこちに飛び、ひとつのことに集中できない。重要でない刺激に簡単に反応してしまう。計画は立てるが完遂できない。
💡
躁状態の落とし穴躁状態の本人は「最高に調子が良い」と感じるため、自分が病気だと認識できません。周囲の人が「いつもと違う」と気づくことが、早期介入の鍵です。
前兆サイン

躁状態の前兆サイン——早期に気づくために

躁状態には前兆(プロドローム)があります。この段階で気づき、対処できれば、本格的な躁エピソードを防げる可能性があります。

  • 🌙
    睡眠時間の減少
    いつもより早く目が覚め、それでも疲れを感じない。最も信頼できる前兆サイン。
  • 💬
    話が多くなる・声が大きくなる見逃しやすい
    周囲から「最近よく話すね」と言われる。会話のスピードが速くなる。
  • 💡
    次々とアイデアが浮かぶ見逃しやすい
    頭の中が忙しくなり、計画やアイデアが止まらない。いくつものプロジェクトを同時に始める。
  • 💸
    普段しない出費をする
    必要のないものを衝動的に購入する。金銭感覚が変わる。
  • 😤
    些細なことでイライラする見逃しやすい
    普段は気にならないことで怒りを感じる。運転中のロードレイジが増えるなど。
  • エネルギーが溢れる感覚
    「何でもできる」「最高に調子が良い」と感じる。休息を取る必要を感じない。
気づいたら48時間以内に対処前兆に気づいたら、まず睡眠を確保し、刺激を減らし、主治医に連絡しましょう。早めの介入で悪化を防げる可能性が高まります。
CAUSES & RISK FACTORS

双極性障害の原因とリスク要因

双極性障害は単一の原因で起こるのではなく、脳・遺伝・環境・生活リズムなど複数の要因が複合的に関わっています。

4つの要因

複合的に関わる4つの発症要因

双極性障害の発症メカニズムは完全には解明されていませんが、以下の4つの要因が複合的に関わっていると考えられています。

🧠脳の神経伝達物質

セロトニン・ノルアドレナリン・ドーパミンのバランスが大きく乱れることが関与しています。特にドーパミン系の過活動が躁状態と関連し、セロトニンの低下がうつ状態と関連します。脳画像研究では、前頭前皮質や扁桃体の機能異常、前帯状皮質の体積減少も報告されています。また、ミトコンドリア機能の異常や神経炎症の関与も近年注目されています。

  • ドーパミン系の過活動(躁状態と関連)
  • セロトニンの低下(うつ状態と関連)
  • 前頭前皮質・扁桃体の機能異常
  • ミトコンドリア機能の異常の関与
再発の誘因

エピソードの誘因——避けるべきリスク

双極性障害では、特定の状況や行動が躁・うつエピソードの引き金(トリガー)になります。これらを知り、避けることが再発予防の鍵です。

再発リスクの高い誘因
睡眠リズムの乱れ
95%
対人関係の深刻なトラブル
80%
服薬の自己中断
85%
大きなライフイベント
70%
アルコール・薬物の使用
65%
季節の変わり目
40%

※ リスクの相対的な大きさを示すイメージ図です

再発の引き金を知っておくことは、自分を守るための大きな力になります。特に睡眠リズムの乱れと服薬中断は、最も避けるべきリスクです。
TREATMENT & RECOVERY

双極性障害の治療法と回復

双極性障害は適切な治療で症状をコントロールし、安定した生活を送ることが可能です。焦らず、自分に合った治療を見つけていきましょう。

薬物療法

薬物療法——治療の柱

双極性障害の治療では、気分安定薬を中心とした薬物療法が基本です。躁とうつの波を小さくし、再発を予防します。

気分安定薬(リチウム・バルプロ酸・ラモトリギン)治療の柱

躁とうつの波を小さくし、再発を予防する基本薬です。リチウムは150年以上の使用歴があり、自殺予防効果も科学的に示されている「金字塔」。バルプロ酸は急速交代型に有効、ラモトリギンはうつ状態の予防に優れます。血中濃度の管理が必要なため、定期的な血液検査を行います。

非定型抗精神病薬急性期に有効

クエチアピン・オランザピン・アリピプラゾールなどが使用されます。躁状態の急性期に効果が高く、クエチアピンは双極性うつにも有効です。気分安定薬と組み合わせることで、より安定した状態を維持できます。体重増加や代謝系の副作用に注意が必要です。

心理療法

心理療法——薬と両輪で回復を支える

薬物療法と心理療法を組み合わせることで、再発率を大幅に低下させることができます。

心理教育セルフケアの要

自分の病気について正しく理解し、気分の波の前兆(プロドローム)を早期に察知するスキルを身につけます。「気分日記(ムードチャート)」をつけ、睡眠時間・活動量・気分の変化を記録する習慣が推奨されます。再発率を約40%低下させるという研究結果があります。

対人関係・社会リズム療法(IPSRT)リズムの安定化

対人関係の問題を整理しながら、毎日の社会的リズム(起床・就寝・食事・運動・社交活動の時間)を安定させる双極性障害に特化した心理療法です。フランク博士により開発され、概日リズムの安定化を通じて再発予防に高い効果が示されています。

認知行動療法(CBT)思考の修正

気分の波に伴う極端な思考パターン(躁状態での誇大的思考、うつ状態での否定的思考)を認識し、より現実的な捉え方に修正します。再発の兆候への早期対処や、ストレスマネジメントのスキルも学びます。薬物療法との併用が推奨されています。

注意点

治療における重要な注意点

⚠️
抗うつ薬の単独使用は危険双極性障害に抗うつ薬を単独で使用すると、躁状態を誘発(躁転)したり、急速交代型への移行を引き起こす危険があります。必ず気分安定薬を基盤とした治療を行ってください。「うつ病の薬で良くならない」と感じたら、双極性障害の可能性を主治医に相談しましょう。
治療は長距離走です。「調子が良い=治った」ではありません。薬の継続と生活リズムの安定が、再発予防の両輪です。
女性と双極性障害

女性特有の課題——妊娠・出産・ホルモン変動

双極性障害は男女ほぼ同等の割合で発症しますが、女性には特有の課題があります。妊娠・出産・産後・月経周期・更年期など、ホルモン変動の大きなライフイベントが気分の波に強く影響するためです。

妊娠を考えている方へ

妊娠中は薬の安全性と再発リスクのバランスが非常に重要です。リチウムには胎児の心臓奇形(エプスタイン奇形)リスクがあり、バルプロ酸は神経管閉鎖障害・発達への影響が知られています。一方、服薬を急に中断すると双極性障害の再発リスクが急激に高まります。

  • 妊娠を希望する段階で必ず精神科主治医に相談する(急な中断は危険)
  • 精神科医と産婦人科医が連携する医療機関を選ぶ
  • ラモトリギンは比較的安全性が高いとされるが、個別の判断が必要
  • 葉酸の補充、定期的な血中濃度管理、超音波検査が推奨される
産後の再発リスク

産後は双極性障害の再発リスクが特に高い時期です。睡眠の乱れ・ホルモン急変・育児ストレスが重なるため、産後2〜4週間は特に注意が必要です。妊娠中に服薬を減量・中断していた場合、産後速やかに主治医と再開のタイミングを相談してください。

  • 産後の気分エピソード発症リスクは一般女性の数倍〜十数倍
  • 「産後うつ」との鑑別が重要(双極性障害の産後エピソードは急激に悪化しやすい)
  • 産後リチウムの再開は再発予防に有効とされる
  • 育児支援・家族のサポート体制を産前から整えておく
💡
月経・更年期との関連月経前の数日間(黄体期後半)に気分が不安定になる「月経前増悪」も双極性障害でよく見られます。更年期も気分の波が乱れやすい時期です。気分日記をつけ、ホルモン変動と波のパターンを主治医と共有しましょう。
DAILY LIFE

日常生活でできること

治療と並行して、日々の生活の中でも再発を防ぎ、安定を保つためにできることがたくさんあります。小さな積み重ねが大きな力になります。

8つの習慣

再発を防ぎ安定を保つ、日々の8つの習慣

📝
気分日記(ムードチャート)をつける
毎日の気分(-5〜+5で評価)、睡眠時間、活動量、服薬状況を記録します。アプリ(Daylio、eMoods等)を活用すると続けやすい。自分の波のパターンが見え、前兆に早く気づけるようになります。
🌙
睡眠リズムを最優先で守る
毎日同じ時間に寝て同じ時間に起きる。これは双極性障害管理の「最重要ルール」です。不規則な睡眠は躁転の最大のリスク要因。徹夜は絶対に避け、夜勤のある仕事も可能なら変更を検討しましょう。
🍷
アルコール・カフェインを控える
アルコールは気分の波を増幅させ、薬の効果も妨げます。躁状態では飲酒量が増えがちなので特に注意。カフェインは睡眠を妨げ、不安や焦燥感を悪化させます。特に午後以降は控えましょう。
👀
信頼できる「気づき役」を持つ
躁状態は自分では「最高に調子が良い」と感じるため気づけません。家族やパートナーに前兆サイン(睡眠の減少、多弁、散財傾向など)を共有し、「いつもと違う」と感じたら教えてもらう約束をしましょう。
💊
薬を自己判断で中断しない
「調子が良い=治った」ではありません。自己中断は再発の最大原因であり、中断後の再発率は80%以上です。副作用が気になる場合は自分で判断せず、必ず主治医に相談してください。
大きな決断は安定期に延期する
退職、高額購入、転居、結婚、離婚などの重要な決断は、躁でもうつでもない安定期に行いましょう。特に躁状態では判断力が歪み、後で深く後悔する決断をしがちです。「48時間ルール」(大きな決断は48時間待つ)を設けるのも有効です。
🏃
適度な運動を習慣化する
週150分程度の有酸素運動はうつ状態の改善に効果的です。ただし躁状態では過度な運動になりがちなので、「毎日30分のウォーキング」など一定のルーティンを守ることが大切。競争的なスポーツより、一人でできる運動がおすすめ。
📋
ストレスマネジメントを学ぶ
ストレスは躁・うつどちらのエピソードも誘発します。呼吸法、マインドフルネス、リラクゼーション技法など、自分に合ったストレス対処法を複数持っておきましょう。定期的にカウンセラーと話すのも有効です。
すべてを完璧にやろうとしなくて大丈夫です。まずは「睡眠リズム」と「服薬の継続」——この2つだけでも守れれば、大きな違いが生まれます。
関連する用語
うつ病気分安定薬対人関係・社会リズム療法気分循環症双極I型障害双極II型障害
FOR FAMILY & FRIENDS

周囲の人にできること

双極性障害のサポートは長期戦です。正しい知識を持ち、ご自身の健康も守りながら、無理のない範囲で寄り添うことが大切です。

対応のポイント

してほしいこと・避けてほしいこと

✅ してほしいこと
「いつもと違うサイン」(睡眠の減少・多弁・散財など)を覚えておき、気づいたら穏やかに伝える
躁状態の行動を頭ごなしに否定せず、「安全」を最優先にしながら主治医に相談する
うつ状態では「頑張れ」と励まさず、「そばにいるよ」「無理しなくていいよ」と寄り添う
薬の服用を見守り、自己中断を防ぐサポートをする(特に「もう治った」と本人が言い始めた時)
クレジットカードの限度額を下げる、大きな契約は安定期まで延期するなど実務的な予防策を講じる
「危機対応プラン」を元気な時に一緒に作っておく(緊急連絡先、受診のタイミング、してほしくないこと等)
家族自身のストレスを軽視せず、家族会やカウンセリングを活用する
❌ 避けてほしいこと
「気合いが足りない」「怠けている」「いつまで寝てるの」と責める
躁状態の本人に正面から反論して対立する(安全でない場合は距離を取る)
「薬に頼るな」「自然に治る」と薬の服用を妨げる
一人ですべてのサポートを抱え込む(家族の燃え尽きは最も危険なリスク因子のひとつ)
本人の病気を恥として隠し、必要な支援を受けさせない
「もう二度とあんなことしないでね」と躁状態での行動を責め続ける
支える側のケア

支える側のセルフケア

双極性障害の家族をサポートすることは、大きなストレスを伴います。支える側が倒れてしまっては、サポートは続きません。ご自身のケアも大切にしてください。

🛁
自分の時間・休息を確保する
24時間サポートは続きません。定期的に息抜きの時間を持ち、自分の生活を犠牲にしすぎないようにしましょう。
👥
一人で抱え込まない
家族会(双極性障害の家族会・全国精神保健福祉会連合会など)やカウンセラーに相談しましょう。同じ立場の人との交流は大きな支えになります。
📚
病気を正しく理解する
「なぜ躁状態になるのか」「なぜ動けないのか」を理解することで、いら立ちや無力感が大幅に減ります。本人を責める気持ちも和らぎます。
📋
危機対応プランを一緒に作る
本人が安定している時に「躁/うつが悪化したらどうするか」を一緒に決めておきましょう。緊急連絡先、受診の基準、してほしいこと・してほしくないことを文書化しておくと、いざという時に冷静に対応できます。
あなた自身が健やかであることが、最大のサポートですご家族の方が穏やかでいられることが、本人にとっても最大の安心材料です。完璧なサポートを目指す必要はありません。「できる範囲で、長く続けられること」が何より大切です。
SUPPORT SYSTEMS

利用できる支援制度とサポート

双極性障害と長くつきあうためには、医療だけでなく社会的な支援制度を賢く活用することが大切です。利用できる制度を知っておきましょう。

医療費の支援

自立支援医療制度——通院費の自己負担を1割に

双極性障害での通院・服薬には継続的な費用がかかります。「自立支援医療制度(精神通院医療)」を利用すると、通常3割の医療費自己負担が1割に軽減されます。所得に応じてさらに上限額が設定され、実質負担がほぼゼロになる場合もあります。

  • 対象:精神科・心療内科への継続的な通院が必要な方
  • 申請窓口:お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口
  • 必要書類:申請書、主治医の診断書、健康保険証、個人番号(マイナンバー)確認書類
  • 有効期間:1年ごとの更新が必要(更新忘れに注意)
  • 指定医療機関での受診が条件(複数登録も可能)
📌
まずは主治医か医療ソーシャルワーカーに相談申請に必要な診断書は主治医に記載してもらいます。手続きがわからない場合は、医療機関の相談員(医療ソーシャルワーカー・精神保健福祉士)に相談してください。
障害者手帳と年金

精神障害者保健福祉手帳・障害年金の活用

双極性障害は「精神障害者保健福祉手帳」の取得対象です。手帳を持つことで、様々なサービスや配慮を受けやすくなります。また、症状が重く就労困難な状態が続く場合は「障害年金」の受給も検討できます。

精神障害者保健福祉手帳
  • 1〜3級(1級が最重度)
  • 税金の控除・減免
  • 公共交通機関の割引
  • 障害者雇用での就職が可能に
  • 公共施設の利用料割引
障害年金
  • 障害基礎年金(1・2級)
  • 障害厚生年金(1〜3級)
  • 就労していても受給できる場合あり
  • 症状の波の経過も評価対象
  • 申請は社会保険労務士に相談も可
📌
「働いているともらえない」は誤解障害年金の審査では、就労していても「援助なしに働けているか」「仕事の種類・内容・援助の内容」が考慮されます。障害者雇用での就労は1〜2級の対象になる場合があります。まずは年金事務所や社会保険労務士に相談してみましょう。
就労・生活支援

就労支援・精神保健福祉センターの活用

双極性障害を抱えながら働き続けるための支援制度が整っています。また、精神保健福祉センターは無料で専門的な相談ができる公的機関です。

🏢
精神保健福祉センター
都道府県・政令市に設置された公的機関。双極性障害に関する相談、家族相談、社会復帰の支援を無料で行います。「どこに相談すればいいかわからない」という方の最初の窓口としても最適です。
💼
就労移行支援事業所
一般就労を目指す方が、就職に向けたスキルトレーニングや職場実習を行う施設です。全国に3,300か所以上あり、障害者手帳がなくても医師の診断書等で利用できる場合があります。
🏭
就労継続支援(A型・B型)
一般就労が難しい時期でも、雇用型(A型)または非雇用型(B型)で働く場を提供します。自分のペースで働く練習をしながら、体調管理のスキルを積むことができます。
👥
双極性障害の当事者会・家族会
同じ経験を持つ仲間との交流は、孤立感の解消や情報共有に大きな力を発揮します。全国精神保健福祉会連合会(みんなねっと)や各地の当事者会を探してみましょう。
FAQ

双極性障害に関するよくある質問

Q. 双極性障害は完治しますか?

A. 双極性障害は現時点では「完治する」というより「うまくコントロールする病気」と考えるのが実態に近いです。適切な治療と生活管理によって、気分の波を小さく保ち、社会生活を支障なく送っている方が多くいます。「完治」にこだわらず「安定した生活の質」を目標にすることで、長く穏やかに過ごすことができます。

Q. うつ病の治療を続けているのに良くなりません。双極性障害の可能性はありますか?

A. 可能性は十分あります。双極性障害の多くは「うつ状態」で最初に受診するため、うつ病と診断されることがよくあります。「過去に異常に元気な時期・眠らなくても平気な時期があった」「抗うつ薬で躁転した経験がある」「うつと躁が交互に来る」という場合は、主治医に「双極性障害の可能性」を明確に伝え、MDQ(気分障害質問票)などのスクリーニングを依頼してみましょう。

Q. リチウムはずっと飲み続けなければなりませんか?

A. 多くの場合、長期(数年〜生涯)の服薬継続が推奨されます。リチウムは再発予防効果が高く、自殺リスクを下げる科学的根拠が示されている唯一の気分安定薬です。副作用(手の震え・多尿・甲状腺機能低下等)が気になる場合は自己判断で中断せず、必ず主治医に相談してください。定期的な血中濃度測定・腎機能・甲状腺の検査を続けることで、長期に安全に使用できます。

Q. 双極性障害でも仕事は続けられますか?

A. 多くの方が、適切な治療と職場の理解・配慮があれば仕事を続けられます。大切なのは「波が来る前に対処できる体制」をつくること。主治医・職場・家族と情報を共有し、繁忙期の調整、テレワーク活用、就労支援制度の利用を検討しましょう。障害者雇用(オープン就労)に切り替えることで、より安定した働き方ができる場合もあります。

Q. 家族がどれだけ心配しても、本人が受診を拒否します。どうすればよいですか?

A. 躁状態では「自分は病気ではない」という病識のなさ(アノソグノシア)が強く出るため、説得が難しい時期があります。無理に押し付けると関係が悪化します。まず家族だけで精神保健福祉センターや精神科に相談し、「家族としてどう関わるか」のアドバイスをもらいましょう。危険な状態(自傷・他害・著しい判断力の低下)があれば、精神科救急や措置入院の相談も選択肢です。

気分の波に振り回されて
つらいあなたへ

躁とうつの繰り返しに疲れていませんか。一人で抱え込まず、ココトモにあなたの気持ちを聞かせてください。

今すぐ話したい方へ——相談窓口
ココトモ相談するチャット相談・無料
いのちの電話0120-783-55624時間・無料
よりそいホットライン0120-279-33824時間・無料

このページの情報は、医師による診断や治療に代わるものではありません。症状が気になる場合は、心療内科・精神科への受診をご検討ください。精神保健福祉センター(各都道府県・政令市)では精神疾患に関する専門相談・生活支援・家族相談を無料で行っています。自立支援医療制度の利用で精神科通院の医療費は原則1割負担になります。

keyboard_arrow_up