メンタルヘルス用語辞典 · 季節性感情障害

季節性感情障害(SAD)とは?
冬季うつの症状・原因・治療法を詳しく解説

季節性感情障害(SAD)は、冬の日照時間の減少が引き金となり、毎年繰り返す気分障害です。「冬はいつも調子が悪い」は治療で改善できます。原因のメカニズムから光療法を中心とした治療法、日常のケア、家族のサポートまで、必要な情報をすべてまとめました。

ABOUT SAD

季節性感情障害(SAD)とは、どんな病気か

季節性感情障害(SAD)は、特定の季節に繰り返し抑うつ症状が現れる気分障害です。最も多いのは秋〜冬に発症する「冬季うつ」で、日照時間の減少が大きく関わっています。適切な治療で症状をコントロールできます。

定義

季節性感情障害の定義——「冬の気分の落ち込み」では済まない

季節性感情障害(Seasonal Affective Disorder:SAD)は、特定の季節に繰り返し抑うつエピソードが生じる気分障害です。DSM-5-TRでは、うつ病(大うつ病性障害)や双極性障害の「季節型」サブタイプとして分類されています。「冬になると毎年気分が落ち込む」のは単なる「寒さが嫌い」ではなく、脳の神経伝達物質や体内時計の異常が関わる医学的な状態です。

SADの最大の特徴は、症状に明確な季節パターンがあることです。秋から冬にかけて症状が現れ、春から夏に自然に改善する——このサイクルが少なくとも2年連続して認められることが診断の要件です。毎年同じ時期に「調子が悪くなる」経験を繰り返している場合、それは性格や気の持ちようの問題ではなく、治療で改善できる病気です。

冬の気分の落ち込み(ウィンターブルー)
一時的で軽度な気分の変化
冬に少し気分が沈むのは多くの人に見られる自然な反応。日常生活への支障は軽微で、数日〜1週間程度で回復する。
季節性感情障害(SAD)
治療が必要な気分障害
秋〜冬にかけて数か月間にわたり抑うつ症状が続き、仕事・学業・人間関係に深刻な支障が生じる。過眠・過食・著しい疲労を伴い、毎年繰り返す。
「毎年のこと」は見逃さないで「冬はいつもこうだから仕方ない」と諦めていませんか? SADは適切な治療で症状を大幅に改善できます。「毎年同じ時期に調子が悪くなる」と気づいたことが、治療への第一歩です。
有病率

季節性感情障害は、珍しい病気ではない

SADは世界的に認知されている疾患であり、特に高緯度地域で高い有病率を示します。

2.4%
一般人口における生涯有病率は0.5〜2.4%。うつ病患者の10〜20%が季節型
4
女性の発症率は男性の約4倍。20〜30代の若年女性に最も多い
80%
適切な光療法で約50〜80%の患者が症状の改善を実感する
日本では北海道や東北地方など、冬の日照時間が短い地域で有病率が高い傾向があります。ただし、関東以南でも発症することは珍しくありません。
冬型と夏型

冬型SADと夏型SAD——ほとんどは冬型

SADには「冬型」と「夏型」の2つのタイプがあります。全体の約80〜90%は冬型で、夏型は比較的まれです。両者は症状の特徴が大きく異なります。

❄️ 冬型SAD(全体の80〜90%)
• 過眠・朝起きられない
• 過食(炭水化物への渇望)
• 体重増加
• 著しい疲労感
• 社会的引きこもり
秋〜冬に発症、春に改善
☀️ 夏型SAD(全体の10〜20%)
• 不眠
• 食欲低下・体重減少
• 不安・焦燥感
• 激しい易怒性
• 攻撃的な行動
春〜夏に発症、秋に改善
この記事では、最も一般的な「冬型SAD」を中心に解説します。夏型SADが疑われる場合も、精神科・心療内科への相談をお勧めします。
受診の目安

こんな場合は専門医への相談を

以下のチェックリストに3つ以上当てはまる場合は、精神科・心療内科でSADの可能性について相談することをお勧めします。

⚠️SADを疑うべきチェックポイント
  • 🔍
    秋〜冬になると毎年気分が落ち込み、春になると回復するパターンが2年以上続いている
  • 🔍
    冬になると過眠(10時間以上の睡眠)で朝起きられなくなる
  • 🔍
    冬に甘いものや炭水化物への渇望が止められず、体重が増加する
  • 🔍
    冬の間、仕事や学業のパフォーマンスが明らかに低下する
  • 🔍
    冬になると人と会うことが億劫になり、社会的に引きこもりがちになる
  • 🔍
    体が鉛のように重く、疲労感が抜けない
  • 🚨
    「消えてしまいたい」「死にたい」と思うことがある
⚠️
希死念慮がある場合は、すぐに相談を重度のSADでは「死にたい」という考えが浮かぶことがあります。このような場合は、一人で抱え込まず、すぐに相談窓口や医療機関に連絡してください。📞 いのちの電話:0120-783-556(24時間・無料)
SYMPTOMS

季節性感情障害の症状

SADの症状は冬型と夏型で大きく異なります。それぞれの特徴を知っておくことが、早期発見と適切な対処につながります。

😔
持続的な抑うつ気分
秋から冬にかけて、毎日のように気分が沈み込む。「冬が来ると暗い気持ちになる」という感覚が毎年繰り返される。日照時間の減少に連動して症状が深まり、春が近づくと自然に改善していく。
🛏
過眠・起床困難
夜の睡眠時間が長くなり(10〜12時間以上)、朝起きるのが極めて困難になる。日中も強い眠気があり、昼寝をしても眠気がとれない。冬になると「冬眠モード」に入ったように感じる方もいる。
🍽
過食・炭水化物への渇望
甘いもの、パン、パスタ、米など炭水化物を強烈に欲する。これはセロトニンの減少を補おうとする脳の反応と考えられている。冬の間に5〜10kg以上体重が増加する人もいる。
🔋
著しい疲労感・倦怠感
体が重く、エネルギーが枯渇したように感じる。簡単な家事や仕事にも膨大な労力が必要。「鉛のような重さ」を手足に感じる人もいる。十分に眠っても疲れがとれない。
🎯
興味・喜びの喪失
以前は楽しめていた趣味や活動に関心が持てなくなる。友人と会うことが億劫になり、社会的な引きこもりが進む。「何をしても楽しくない」という状態が冬の間ずっと続く。
🧠
集中力・判断力の低下
仕事や勉強に集中できず、ミスが増える。決断に時間がかかり、効率が大幅に落ちる。冬に業績や成績が下がるパターンが毎年繰り返される場合、SADの可能性を考えるべき。
👥
社会的引きこもり
人付き合いを避けるようになり、約束をキャンセルすることが増える。家にこもりがちになる。「冬は人に会いたくない」が毎年繰り返される場合は注意が必要。
💭
希死念慮(重症の場合)
重症のSADでは「消えてしまいたい」「死にたい」という考えが浮かぶことがある。特に日照時間が最も短い12月〜1月は注意が必要。このような考えが浮かんだら、すぐに相談してほしい。
💡
「非定型うつ」の特徴冬型SADの症状(過眠・過食・鉛様麻痺)は「非定型うつ病」の特徴と重なります。これは一般的なうつ病(不眠・食欲低下)とは逆のパターンであり、見逃されやすい特徴です。
CAUSES & RISK FACTORS

季節性感情障害の原因とリスク要因

SADの発症には、日照時間の減少、セロトニン・メラトニンの変動、概日リズムの乱れ、遺伝的素因など、複数の要因が関わっています。

SADの原因は完全には解明されていませんが、現時点で最も有力な仮説は「日照時間の減少が脳内の神経伝達物質と体内時計に影響を及ぼす」というものです。以下の4つの要因が複合的に関わっていると考えられています。

☀️日照時間の減少

SADの最も重要な環境因子は、秋冬の日照時間の減少です。太陽光は脳内のセロトニン産生を促進し、メラトニン分泌を調節する役割を担っています。日照時間が短くなると、セロトニンの活性が低下し、うつ症状が引き起こされます。高緯度地域(北欧、カナダ北部など)でSADの有病率が高いのは、このメカニズムを裏づけています。日本でも、東北地方や北海道などの北部地域で有病率が高い傾向があります。

  • 太陽光がセロトニン産生を促進
  • 日照不足→セロトニン活性の低下→うつ症状
  • 高緯度地域ほど有病率が高い
  • 日本でも北部地域で多い傾向
SADは「気の持ちよう」や「冬が嫌いなだけ」ではありません。脳の生理的なメカニズムが関わる病気です。自分を責めず、適切な治療を受けましょう。
DIAGNOSIS

季節性感情障害の診断

SADの診断は、季節パターンの確認と他の疾患との鑑別が鍵になります。

診断基準

DSM-5-TRによる診断基準

DSM-5-TRでは、SADは独立した診断カテゴリーではなく、うつ病や双極性障害に「季節型(with seasonal pattern)」の特定用語を付けて診断します。以下の条件を満たす必要があります。

「季節型」の診断要件
1.特定の季節(通常は秋〜冬)に抑うつエピソードが始まる規則的なパターンがある
2.特定の季節(通常は春〜夏)に完全寛解(または、うつから躁・軽躁への転換)が起こる
3.過去2年間に、季節に関連した抑うつエピソードが2回以上あり、非季節性のエピソードがそれを上回っていない
4.季節的な心理社会的ストレス因(毎年冬に失業するなど)では説明できない
受診の際は、「何月頃から症状が出て、何月頃に改善するか」という季節パターンを具体的に伝えることが大切です。過去2〜3年分の記録があると、診断精度が格段に上がります。
鑑別診断

他の疾患との鑑別

SADと似た症状を示す疾患がいくつかあり、正確な鑑別が重要です。

うつ病(非季節型)
季節パターンがない。年間を通じて症状が出る。不眠・食欲低下が典型的
甲状腺機能低下症
疲労、体重増加、過眠がSADに類似。血液検査で鑑別可能
双極性障害
春〜夏に躁・軽躁に転じる場合、双極性障害の季節型の可能性
慢性疲労症候群
疲労が主症状だが季節パターンがない。感染後の発症が多い
月経前症候群(PMS)
月経周期に連動した症状。SADと併存することもある
ビタミンD欠乏症
冬季に多い。骨痛、筋力低下も伴う。血液検査で確認
TREATMENT

季節性感情障害の治療法

SADには効果的な治療法が複数あります。光療法を中心に、薬物療法、認知行動療法などを組み合わせることで、症状を大幅に改善できます。

光療法

光療法(高照度光照射療法)——SADの第一選択治療

光療法はSADに対する最もエビデンスの豊富な治療法であり、第一選択治療として推奨されています。10,000ルクスの光療法用ライトボックスの前に毎朝20〜30分座ることで、約50〜80%の患者が症状の改善を実感します。

光療法Q&A
Q. 照度はどれくらい?
A. 10,000ルクスの光療法用ライトが標準。一般的な室内照明(300〜500ルクス)では不十分。
Q. 1日どれくらい?
A. 10,000ルクスの場合、朝20〜30分が目安。2,500ルクスの場合は2時間必要。
Q. いつ行う?
A. 起床直後の朝が最も効果的。午後〜夜の使用は不眠を引き起こす可能性がある。
Q. いつから効果が出る?
A. 多くの人が1〜2週間で改善を実感。最大効果は4〜6週間で得られることが多い。
Q. いつまで続ける?
A. 秋〜冬のシーズンを通じて毎日続けることが推奨される。春に日照時間が増えたら徐々に減らす。
Q. 副作用はある?
A. まれに頭痛、眼精疲労、吐き気が生じるが、多くは軽度。双極性障害がある場合は躁転のリスクがあるため、医師の指導のもとで行う。
💡
光療法の選び方光療法用ライトは10,000ルクス以上の照度があり、UV(紫外線)カット機能がついている医療グレードの製品を選びましょう。安価な製品には照度が不十分なものもあります。購入前に主治医に相談するのがベストです。
その他の治療

薬物療法・心理療法・補助療法

光療法だけでは十分な効果が得られない場合や、中等度〜重度のSADの場合は、以下の治療法を併用します。

薬物療法(SSRI・SNRI)中等度〜重度

中等度〜重度のSAD、または光療法だけでは不十分な場合に使用されます。SSRI(フルオキセチン、セルトラリン等)が最も多く使用され、セロトニンの再取り込みを阻害することで効果を発揮します。バプロピオン(ウェルブトリン)は米国ではSADの予防投与としてFDA承認を受けています。薬の効果が出るまで2〜4週間かかるため、秋の始まりに開始し、春まで継続するのが一般的です。

認知行動療法(CBT-SAD)再発予防に優れる

SADに特化した認知行動療法(CBT-SAD)は、冬に対するネガティブな思考パターン(「冬は何もできない」「暗い季節は最悪だ」等)を修正し、冬でも楽しめる活動を計画的に取り入れる行動活性化を組み合わせます。6週間の構造化プログラムとして実施されることが多く、光療法と同等の効果が報告されています。さらに、翌年以降の再発予防効果は光療法を上回るという研究結果があります。

ビタミンD補充療法補助的治療

冬季の日照不足はビタミンD欠乏をもたらし、これがSADの症状を悪化させる可能性があります。血中ビタミンD濃度が低い場合、サプリメントによる補充が症状改善に役立つことがあります。ただし、ビタミンD単独でSADを治療できるというエビデンスは限定的であり、光療法や薬物療法の補助として位置づけられます。1日800〜2000IUの補充が目安とされます。

運動療法光と運動の二重効果

定期的な有酸素運動はうつ症状の改善に効果があります。特に屋外での運動は、自然光を浴びる効果も加わり、SADの症状緩和に二重の効果が期待できます。週150分(1日30分×5日)の中等度の有酸素運動が推奨されます。曇りの日でも屋外の光は室内よりはるかに明るい(曇天でも2,000〜10,000ルクス)ため、外に出ることが重要です。

SADの治療は「毎年繰り返す」ことを前提に、予防的に行うのが最も効果的です。症状が出始めてからではなく、毎年調子が悪くなる時期の1〜2か月前から光療法や薬物療法を開始しましょう。
DAILY LIFE

日常生活でできること

治療と並行して、日々の生活習慣を工夫することで、SADの症状を軽減し、冬をより快適に過ごすことができます。

☀️
朝、光を浴びる習慣をつくる
起床後すぐにカーテンを開け、自然光を取り入れましょう。可能であれば朝15〜30分の散歩を。曇りの日でも屋外は室内より数倍明るいです。光療法用ライトを朝食時に使用するのも効果的です。
🌙
睡眠リズムを一定に保つ
毎日同じ時間に起床し、就寝することが重要です。冬になると過眠になりやすいですが、10時間以上の睡眠はかえって倦怠感を悪化させます。起床時間を一定にし、昼寝は30分以内に留めましょう。
🏃
定期的に体を動かす
週150分の有酸素運動を目標にしましょう。できれば屋外で、日中の明るい時間帯に行うと効果的です。ウォーキング、ジョギング、サイクリングなど、無理なく続けられるものがベストです。
🥗
バランスの良い食事を心がける
炭水化物への渇望に任せず、たんぱく質、野菜、果物をバランスよく摂りましょう。トリプトファン(セロトニンの原料)を含む食品(バナナ、ナッツ、大豆、乳製品)を意識的に取り入れると良いでしょう。
👥
社会的なつながりを維持する
冬は引きこもりがちになりますが、意識的に人と会う予定を入れましょう。週に1回でも友人や家族と過ごす時間をつくることが、孤立を防ぎ、気分の改善につながります。
🏠
室内環境を明るくする
カーテンを開けて自然光を最大限に取り込み、室内照明も明るめに設定しましょう。壁を明るい色にしたり、鏡を使って光を反射させたりすることも有効です。デスクに光療法用ライトを置くのも良いでしょう。
📅
冬の「楽しみ」を計画する
冬を「我慢する季節」ではなく「楽しむ季節」に変える工夫をしましょう。温泉、鍋料理、冬ならではのスポーツやイベントなど、冬に楽しめる活動を計画的に予定に入れることが、行動活性化の観点から有効です。
💊
秋から予防的に対策を始める
SADは毎年繰り返すことがわかっているため、「毎年この時期に調子が悪くなる」と感じたら、秋のうちから光療法や薬物療法を予防的に開始しましょう。症状が出てからの治療より、予防的介入の方が効果的です。
すべてを完璧にやる必要はありません。まずは「朝に光を浴びる」——このひとつだけでも、大きな変化が期待できます。小さな一歩から始めてみましょう。
関連する用語
うつ病非定型うつ病双極性障害概日リズム光療法ビタミンDセロトニン
FOR FAMILY & FRIENDS

周囲の人にできること

SADは毎年繰り返す疾患です。「また冬か」と構えるのではなく、正しい知識と具体的なサポートで、本人と一緒に冬を乗り越えましょう。

対応のポイント

してほしいこと・避けてほしいこと

✅ してほしいこと
「冬になると毎年調子が悪くなる」というパターンを理解し、怠けや甘えではなく病気の症状であることを認識する
朝一緒に散歩するなど、光を浴びる活動を穏やかに促す——強制ではなく「一緒にやろう」の姿勢で
冬の間の家事や生活の負担を分担し、本人のエネルギー低下をサポートする
社会的な孤立を防ぐため、無理のない範囲で外出や人との交流の機会を作る手助けをする
過食を責めず、一緒にバランスの良い食事をとる工夫をする
「春になれば良くなる」ことを伝え、希望を持てるよう支える
症状が重い場合は、医療機関の受診に同行する
❌ 避けてほしいこと
「気合いが足りない」「冬が嫌いなだけでしょ」と症状を軽視する
「いつまで寝ているの」と過眠を責める——これは病気の症状
過食や体重増加を批判する——炭水化物への渇望は脳の生理的な反応
「外に出れば元気になる」と無理に活動を強要する
毎年同じ症状が出ることに対して「また今年も」とうんざりした態度を見せる
本人の代わりに勝手に治療方針を決める
支える側のケア

支える側のセルフケア

毎年冬にパートナーや家族の調子が悪くなるのを見るのは、支える側にとっても大きなストレスです。ご自身の健康も大切にしてください。

☀️
一緒に光を浴びる
朝の散歩を一緒にしたり、明るいカフェでモーニングを食べたり。本人だけでなく、支える側の気分改善にもつながります。
📅
冬の楽しみを一緒に計画する
温泉旅行、季節の料理、冬のイベントなど、冬を「楽しみな季節」に変える計画を一緒に立てましょう。行動活性化の効果もあります。
💬
気持ちを共有する
「また冬が来て大変だね」と気持ちを受け止めつつ、「でも前回より早く対策を始められたね」と前向きな面にも目を向けましょう。
🛁
自分自身の時間を確保する
支える側も冬の日照不足の影響を受けています。自分自身の光療法やセルフケアも怠らないようにしましょう。
「一緒に冬を乗り越える」という姿勢が力になりますSADは毎年やってきますが、毎年治療の経験値が蓄積されていきます。「去年はこうだったから、今年はもっと早く対策を始めよう」——そんな前向きなサイクルを一緒に作っていけると良いですね。
WORKPLACE & SUPPORT

職場でのSAD対策と社会的サポート

SADは職場のパフォーマンスにも大きな影響を与えます。職場での配慮や利用できる制度を知っておくことが、症状を抱えながら働き続けるための力になります。

職場での対策

職場でできること・求められる配慮

SADによる症状(集中力低下・疲労感・欠勤傾向)は、本人の努力不足ではなく、医学的な状態によるものです。職場での理解と適切な配慮が、症状を抱えながらも働き続けることを可能にします。

🪟
席・環境の配慮
窓際の自然光が入る席への変更をリクエストできます。デスクに光療法用ライトを置くことも職場の配慮として認められるケースが増えています。オフィスの照明をLED昼白色(5,000K以上)に変えるだけでも効果があります。
フレックスタイムの活用
日照時間が限られる冬は、できるだけ日中の明るい時間帯に外に出られるよう、勤務時間を調整することが有効です。フレックスタイム制や在宅勤務を活用し、昼休みに15分でも屋外を歩く習慣をつくりましょう。
📋
産業医・EAPへの相談
職場に産業医や保健師がいる場合、SADについて相談することで、職場への配慮の依頼や医療機関の紹介を受けられます。EAP(従業員支援プログラム)が導入されている場合、無料でカウンセリングを受けられることもあります。
📄
自立支援医療制度の活用
精神科・心療内科に継続的に通院する場合、自立支援医療制度(精神通院医療)を申請すると医療費が原則1割負担に軽減されます。申請は通院する医療機関と市区町村の窓口で行えます。所得に応じた月額上限額も設けられており、医療費の経済的負担を大幅に減らせます。
🤝
合理的配慮の申請
SADの症状が仕事に支障をきたす場合、主治医の診断書をもとに職場に合理的配慮を申請できます。障害者雇用促進法に基づき、事業者は合理的配慮提供義務を負っています。具体的には業務量の調整、繁忙期のシフト配慮、通院のための早退・遅刻の許可などが含まれます。
💡
自立支援医療制度で医療費を軽減精神科・心療内科に継続通院している方は「自立支援医療制度(精神通院医療)」を申請できます。医療費が原則1割負担になり、所得に応じた月額上限も設定されます。通院先の医師または市区町村の福祉窓口にご相談ください。
子ども・学生のSAD

子どもや青年期のSAD——見逃されやすいサイン

SADは成人だけの疾患ではありません。9〜19歳の子どものうち1.7〜5.5%に季節性感情障害の症状があると報告されています。子どもの場合、大人とは異なる形で症状が現れることが多く、見逃されやすい点に注意が必要です。

子ども・青年期のSADに見られるサイン
成績の季節的な低下
毎年冬になると成績が下がり、春に回復するパターン。集中力・記憶力の低下が主因
冬の不登校・遅刻の増加
朝起きられない(過眠)により、冬になると遅刻・欠席が増える
イライラ・かんしゃく
大人の「気分の落ち込み」とは異なり、子どもは不機嫌・易怒性として現れやすい
友達との交流減少
冬に急に内向きになり、放課後の遊びや部活動への参加を避けるようになる
過食・体重増加
お菓子や炭水化物を強く欲し、冬の間に体重が増加する
疲れやすさ・やる気のなさ
「疲れた」「何もしたくない」という言葉が冬に増える。やる気が出ない
保護者・学校の先生へ「毎年冬になると成績が落ちる」「毎年この時期に元気がなくなる」というパターンに気づいたら、まず小児科または児童精神科に相談してみてください。子どもの場合も光療法は有効とされており、早期介入が重要です。
RELAPSE PREVENTION

再発予防——毎年の冬を「乗り越えられる季節」に変える

SADは毎年繰り返しますが、「どうせまた今年もダメだ」と諦める必要はありません。計画的な予防策により、症状の重さや期間を大幅に減らすことができます。

SADの大きな特徴は、発症時期が予測可能であることです。「毎年10月ごろから調子が悪くなる」とわかっていれば、9月のうちから対策を始めることができます。以下の5ステップを参考に、再発予防プランを立ててみましょう。

1
毎年の「SAD日記」をつける

症状が出始めた日、回復した日、そのとき使った対策を記録しておきましょう。毎年のパターンが見えてくることで、「今年は10月20日頃から始まる」と予測でき、予防的に光療法を開始するタイミングが明確になります。

2
秋のうちに準備を整える

光療法用ライトを秋に点検・購入しておく。主治医の予約を9月〜10月に入れておく。ビタミンDの採血を秋に行い、不足があれば補充を開始する。冬の活動計画(旅行、趣味、友人との約束)を秋のうちから立てておく。

3
認知行動療法(CBT-SAD)で思考を修正する

「冬は何もできない」「毎年この時期は最悪だ」というネガティブな思考パターンを、CBT-SADで修正しましょう。専門家と一緒に「冬でも楽しめること」のリストを作り、行動活性化を計画することで、翌年以降の再発予防効果が光療法を上回るという研究結果があります。

4
ソーシャルサポートを確保する

信頼できる家族・友人・主治医のネットワークを整えておきましょう。「冬は症状が出やすい」と事前に周囲に伝えておくことで、症状が出たときにスムーズにサポートを求められます。孤立を防ぐことが再発予防の重要な柱のひとつです。

5
体の準備を整える

秋から有酸素運動を習慣化し、体力・セロトニン産生能力を高めておく。睡眠リズムを崩さないよう、秋から就床・起床時間を一定に保つ。ビタミンD・トリプトファンを含む食事を意識する。これらの積み重ねが冬の発症を防ぎ、発症しても軽症で済む体をつくります。

💡
CBT-SADの再発予防効果認知行動療法(CBT-SAD)は、光療法と同等の即効性を持ちながら、翌年以降の再発予防効果においては光療法を上回るという研究結果(Rohan et al.)が示されています。「今の症状を改善する」と同時に「来年のための準備をする」両方の視点で治療に取り組みましょう。
ビタミンDと食事

ビタミンD・食事でSADを予防する

冬季の日照不足はビタミンD欠乏をもたらします。ビタミンDは脳内のセロトニン合成を促進する酵素に関与しており、欠乏するとSADの症状が悪化する可能性があります。日本人の推奨摂取量は1日8.5μg(340IU)ですが、SADの予防・改善には800〜2,000IU程度の補充が検討されることもあります(主治医と相談を)。

ビタミンDを多く含む食品
サーモン・サバ・サンマなどの魚(特に脂の多い魚)
きくらげ・干しシイタケ(天日干し)
卵黄
強化食品(ビタミンD添加牛乳・シリアル)
タラ肝油(サプリメント)
セロトニン合成を助ける食品
バナナ・アボカド(トリプトファン源)
ナッツ類(くるみ・アーモンド)
大豆製品(豆腐・納豆・豆乳)
乳製品(牛乳・チーズ・ヨーグルト)
炭水化物(適量):トリプトファンの脳への取り込みを助ける
日本人は魚介類の摂取量が多く、ビタミンDの供給源として魚が重要な役割を果たしています。冬の食事に意識的に魚を取り入れることが、SADの予防に役立つ可能性があります。
FAQ

よくある質問

季節性感情障害(SAD)について、患者さんやご家族からよく寄せられる質問にお答えします。

他にも疑問や不安なことがあれば、ひとりで抱え込まず、精神科・心療内科または精神保健福祉センターにご相談ください。

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このページの情報は、医師による診断や治療に代わるものではありません。精神科・心療内科への継続通院には自立支援医療制度(精神通院医療)が利用でき、医療費が原則1割負担になります。お住まいの市区町村窓口にご相談ください。また、精神保健福祉センター(各都道府県設置)では、こころの健康に関する相談を無料で受け付けています。

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