メンタルヘルス用語辞典 · 歯科恐怖症

歯科恐怖症とは?
原因・症状・克服法をわかりやすく解説

歯科恐怖症は、歯科治療への圧倒的な恐怖から受診できなくなる状態です。恐怖の段階から症状・原因・悪循環のメカニズム・鎮静法や心理療法を中心とした治療法・受診のコツ・周囲のサポートまで、必要な情報をすべてまとめました。

ABOUT DENTAL PHOBIA

歯科恐怖症とは、どんな状態か

歯科恐怖症は、歯科治療に対して圧倒的な恐怖を感じ、痛みや症状があっても受診できなくなる状態です。「怖がり」や「我慢不足」ではなく、脳の恐怖反応に根ざした問題であり、専門的な配慮と治療で克服が可能です。

定義

歯科恐怖症の定義——「怖がり」ではなく「恐怖症」

歯科恐怖症(Dental Phobia / Odontophobia)は、歯科治療に対する恐怖が日常的な不安の範囲を大きく超え、必要な治療を受けられないほど強い恐怖状態を指します。限局性恐怖症の一種であり、DSM-5では「血液・注射・外傷型」または「状況型」に分類されます。単なる「歯医者が苦手」とは質的に異なり、パニック発作、失神、激しい身体反応を伴うことがあります。

一般的な歯科不安
多くの人が感じる緊張
歯科受診前に少し緊張する。治療中は不快だが耐えられる。必要であれば受診でき、日常生活に大きな支障はない。成人の約60〜80%がこの程度の不安を持つ。
歯科恐怖症
受診不能になる圧倒的恐怖
歯科のことを考えるだけで強い不安に襲われる。受診を何年も回避し、口腔状態が深刻に悪化。パニック発作や失神を経験することも。専門的な配慮・治療が不可欠。
歯科恐怖症は「甘え」ではありません歯科恐怖症は脳の恐怖回路が過剰に反応している状態であり、意志の力だけではコントロールできません。「我慢すればいい」というアドバイスは、問題の本質を理解していない場合の言葉です。
有病率

歯科恐怖症は珍しくない

歯科恐怖症は、世界中で非常に多くの方が抱えている問題です。

5〜10%
日本の成人のうち、受診不能なレベルの歯科恐怖症を抱える人の割合
75%
歯科治療に対して何らかの恐怖心を感じる人の割合(全体)
2
女性は男性の約2倍、歯科恐怖症を発症しやすい
歯科恐怖症は「自分だけ」の問題ではありません。日本だけでも数百万人が同じ悩みを抱えています。恐怖症に対応できる歯科医院は確実に増えており、あなたに合ったアプローチが見つかるはずです。
恐怖のレベル

歯科恐怖の3段階——どこからが「恐怖症」か

歯科への恐怖は、軽度の不安から受診不能な恐怖症まで連続的なスペクトラムをなしています。3つの段階の違いを把握しましょう。

歯科不安(Dental Anxiety)軽度〜中等度

歯科受診に対して緊張や不安を感じるが、必要であれば受診できる状態。成人の約60〜80%が何らかの歯科不安を抱えている。予約前にドキドキする、治療中に緊張するといった段階。日常レベルのストレスであり、病的ではないが放置すると恐怖症に発展する可能性がある。

受診は可能成人の60〜80%緊張・不安レベル
歯科恐怖(Dental Fear)中等度〜重度

歯科受診に対して強い恐怖を感じ、受診を先延ばしにする傾向がある状態。予約を入れても直前にキャンセルする、何年も受診を避けるなどの回避行動が始まる。特定のトリガー(ドリルの音、注射、口の中に器具を入れられる感覚)に対して強い反応を示す。

受診を先延ばし回避行動の開始特定トリガーへの強い反応
歯科恐怖症(Dental Phobia)重度

歯科受診に対して圧倒的な恐怖を感じ、痛みや症状があっても受診できない状態。パニック発作、失神、激しい身体症状を経験する。歯科のことを考えるだけで強い不安に襲われ、夜眠れなくなることも。口腔内の状態が深刻に悪化し、全身の健康にも影響が及ぶ。日本の成人の約5〜10%が該当。

受診不能パニック発作を伴う成人の5〜10%口腔健康の深刻な悪化
相談の目安

こんな状態なら、助けを求めましょう

以下のサインがある場合は、歯科恐怖症外来や心療内科への相談を検討してください。

  • 歯の痛みや不調があるのに、恐怖のために歯科を受診できない
  • 歯科の予約を入れても、直前にキャンセルしてしまう
  • 歯科受診の前日から眠れない、食事ができないほどの不安がある
  • 歯科治療中にパニック発作を起こしたことがある
  • 何年も歯科を受診しておらず、口腔内の状態が悪化している
  • 歯科恐怖のために食事・会話・笑顔に支障が出ている
  • 歯科恐怖を誰にも相談できず、孤立感を感じている
  • 歯の問題で全身の健康に影響が出始めている
💡
歯科恐怖症は「歯科医」と「心理の専門家」の両方からアプローチするのが理想的です。まずは歯科恐怖症外来のある歯科医院、または心療内科・不安症の専門クリニックに相談しましょう。
SYMPTOMS

歯科恐怖症の症状

歯科恐怖症では、歯科治療を予期した段階から心理的・身体的症状が現れます。これらは「怖がり」ではなく、脳の恐怖回路が過剰に活性化した結果です。

症状一覧

心理的症状・身体的症状

😰
予期不安と不眠
歯科受診の数日〜数週間前から強い不安が始まります。予約日が近づくにつれて不安が増大し、前夜は眠れなくなることも。「何をされるかわからない」「痛いに違いない」という破局的思考が止まりません。
🏃
回避行動と先延ばし
歯科受診を何年も先延ばしにします。予約を入れても直前にキャンセル。痛みがあっても市販の鎮痛薬で凌ぎ続ける。「もう少し様子を見よう」と自分を説得し続けますが、問題は確実に悪化していきます。
🚨
パニック発作・パニック様症状
治療椅子に座った瞬間や、ドリルの音を聞いた時にパニック発作を起こすことがあります。動悸、発汗、呼吸困難、「逃げなければ」という切迫した衝動。治療の中断を余儀なくされることも少なくありません。
💭
コントロール喪失への恐怖
口を開けた状態では話すことも動くこともできず、完全に無防備になるという感覚。「痛い時に止めてもらえないのではないか」「自分の意思が無視されるのではないか」という恐怖が中心にあります。
😔
恥と自責感
「歯医者が怖いなんて大人として情けない」「こんなになるまで放置した自分が悪い」と強い自責感を抱えています。口腔内の状態を見られることへの恥ずかしさが、さらに受診のハードルを上げます。
🔄
トラウマのフラッシュバック
過去の歯科治療での恐怖体験が、まるで今起きているかのように鮮明に蘇ります。痛みの記憶、歯科医の態度、押さえつけられた感覚——これらがトリガーとなり、現在の治療への恐怖を増幅させます。
💡
恥と自責のサイクルに注意歯科恐怖症の多くの方が「怖くて行けない→口腔状態が悪化→さらに行くのが怖い」という悪循環に加え、「こんなことで怖がる自分は情けない」という自責感にも苦しんでいます。恐怖症は脳の問題であり、あなたの性格の弱さではありません。
CAUSES

歯科恐怖症の原因

歯科恐怖症は、過去のトラウマ体験、心理的要因、間接的な学習、感覚過敏など、複数の要因が組み合わさって形成されます。

4つの要因

歯科恐怖症をつくる4種類の原因

タブを切り替えてそれぞれの原因カテゴリの詳細を確認できます。多くの場合、複数の要因が重なり合って恐怖が形成されています。

😣過去の歯科治療でのトラウマ

歯科恐怖症の最も一般的な原因は、過去の歯科治療での痛みや恐怖体験です。特に幼少期に、十分な説明や同意なしに痛みを伴う治療を受けたり、押さえつけられて治療されたりした体験は、強いトラウマとなります。歯科医に怒られた、嫌な思いをしたといった対人的な体験も重要な要因です。成人の歯科恐怖症患者の約85%が、過去の歯科治療での嫌な体験を報告しています。

  • 幼少期の痛みを伴う歯科治療
  • 説明なく進められた処置
  • 押さえつけられた体験
  • 歯科医の態度(怒る・叱る・急かす)
  • 麻酔が効かない状態での治療
歯科恐怖症の原因は人それぞれです。「はっきりしたきっかけがない」場合もあり、原因がわからなくても治療に取り組むことは可能です。大切なのは「なぜ怖いか」ではなく「どうすれば安全に治療を受けられるか」です。
VICIOUS CYCLE

歯科恐怖症の悪循環

歯科恐怖症の最も深刻な問題は、恐怖→回避→口腔状態の悪化→さらなる恐怖という悪循環です。このサイクルを理解し、どこかで断ち切ることが回復への鍵です。

悪循環サイクル

歯科恐怖症の悪循環サイクル

恐怖→回避→悪化→さらなる恐怖、という連鎖は次の5ステップで進みます。

STEP 1
😰歯科恐怖・不安
過去のトラウマや不安により、歯科受診に対する強い恐怖が生じる
STEP 2
🚫受診の回避
恐怖のため歯科受診を先延ばしにする。何年も受診しないことも
STEP 3
🦷口腔状態の悪化
虫歯の進行、歯周病の悪化、歯の喪失が起こる
STEP 4
😣より複雑な治療の必要
悪化した分、治療が大がかりに。痛み・時間・費用が増大
STEP 5
😱恐怖のさらなる増大
「こんなになるまで放置した」という恥と、「ひどい治療になる」という恐怖の両方が増す
🔄
このサイクルが繰り返され、恐怖と口腔状態の悪化がエスカレートしていきます。早めに介入することが重要です。
断ち切るポイント

悪循環を断ち切るポイント

悪循環のどの段階からでも介入できます。最も効果的なのは「受診の回避」を断ち切ることです。ただし、いきなり治療を受ける必要はありません。

まずは「カウンセリングだけ」「検査だけ」「クリーニングだけ」と、小さなステップから始めましょう。安全な歯科体験を1つずつ積み重ねることで、脳の恐怖記憶が上書きされていきます。

また、心理的なアプローチ(CBT・暴露療法)を並行することで、恐怖の根本原因に取り組むことができます。

口腔の問題は全身に影響します歯周病は心疾患、糖尿病、認知症、早産のリスク要因であることが研究で示されています。歯科恐怖症の克服は、口の健康だけでなく、全身の健康を守ることにつながります。
TREATMENT

歯科恐怖症の治療法と対応

歯科恐怖症には、歯科側のアプローチ(鎮静法・配慮ある治療環境)と心理側のアプローチ(CBT・暴露療法)の両方があります。あなたの恐怖のレベルに応じた方法を選ぶことが大切です。

歯科的アプローチ

歯科側の対応——安全な治療環境を作る

歯科側からは、恐怖症に配慮した環境づくりと鎮静法の選択肢があります。恐怖のレベルや治療内容に合わせて選ばれます。

最重要の第一歩
歯科恐怖症に理解のある歯科医院の選択
歯科恐怖症の治療は「安全な歯科体験」を積み重ねることから始まります。恐怖症に理解のある歯科医院を選ぶことが最も重要な第一歩です。十分な時間をかけたカウンセリング、治療前の丁寧な説明、ペースのコントロール権を患者に委ねる姿勢、「いつでも止められる」というサインの取り決めなどが、安全な歯科体験の基盤です。「歯科恐怖症外来」を設けている歯科医院も増えています。
段階的に慣れる
段階的暴露(段階的脱感作法)
不安の低い状況から徐々に慣れていく方法です。最初は歯科医院の外観を見るだけ→待合室に座る→診察室に入る→治療椅子に座る→口を開ける→簡単な検査→クリーニング→治療、と段階的に進めます。各段階で十分に安心できてから次に進むため、恐怖が管理可能な範囲に保たれます。認知行動療法の専門家と歯科医が連携すると効果的です。
意識下でリラックス
笑気吸入鎮静法
笑気ガス(亜酸化窒素)と酸素の混合ガスを鼻から吸入し、意識がある状態でリラックス効果を得る鎮静法です。「ふわふわした」「心地良い」感覚で、恐怖や痛みが和らぎます。効果の発現と消失が早く、治療後30分程度で通常状態に戻ります。安全性が高く、多くの歯科医院で利用可能です。軽度〜中等度の歯科恐怖に特に有効。
重度の恐怖に有効
静脈内鎮静法(セデーション)
点滴から鎮静薬(ミダゾラム、プロポフォールなど)を投与し、うとうとした状態(意識下鎮静)で治療を受ける方法です。治療中の記憶がほとんど残らないため、恐怖体験の蓄積を防ぐ効果もあります。重度の歯科恐怖症に対して最も効果的な鎮静法のひとつ。モニタリング設備と訓練された歯科医師・スタッフが必要です。
最終手段
全身麻酔下での歯科治療
完全に意識がない状態で歯科治療を行います。重度の歯科恐怖症で他の鎮静法が不十分な場合、複数の治療が必要で一度に行いたい場合、知的障害や自閉症スペクトラム障害で通常の治療が困難な場合に選択されます。全身麻酔に伴う一般的なリスクがあるため、適応の判断は慎重に行われます。大学病院や総合病院の歯科で実施されます。
心理的アプローチ

心理側の対応——恐怖の根本に取り組む

心理面のアプローチは、恐怖そのものを軽減するための治療です。代表的なのが認知行動療法(CBT)です。

根本的な恐怖の解消
認知行動療法(CBT)
歯科恐怖の背景にある認知の歪み(「麻酔は絶対に効かない」「歯科医は患者の痛みを気にしない」)を修正し、段階的暴露と組み合わせて恐怖を軽減します。リラクゼーション技法(腹式呼吸法、漸進的筋弛緩法)の訓練も含まれます。歯科恐怖症に対するCBTの有効性は複数の研究で実証されています。
鎮静法は「恐怖を感じずに治療を受ける方法」であり、CBT・暴露療法は「恐怖そのものを軽減する方法」です。理想的には両方を組み合わせ、安全な歯科体験を積みながら恐怖の根本に取り組むアプローチが最も効果的です。
先進的アプローチ

VR療法・EMDR・マインドフルネスによる最新アプローチ

近年、歯科恐怖症の治療に活用される先進的な心理的アプローチが注目されています。従来の認知行動療法を補完または代替する手法として、世界各国の研究機関で効果が検討されています。

VR(仮想現実)療法最新技術

VRゴーグルを装着し、仮想空間内で歯科治療環境に段階的に慣れていく手法です。実際の歯科医院に足を踏み入れる前にバーチャル空間で治療の流れを体験することができ、不安の事前軽減に効果的です。また、治療中にVR映像を視聴して意識をそらす「ディストラクション(注意転換)療法」としても用いられます。xCura社の「XR Therapy」など、商業ベースのシステムも登場しています。日本でも一部の先進的な歯科医院が導入を始めています。

意識分散効果事前暴露練習リアルタイムリラクゼーション臨床試験で有望
EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)トラウマ処理

EMDR(Eye Movement Desensitization and Reprocessing)は、もともとPTSDの治療として開発されたエビデンスベースの心理療法です。両側性刺激(眼球運動、音、タッピング)を行いながら、過去のトラウマ記憶を再処理します。歯科治療での過去の恐怖体験にトラウマ的要素がある場合(特に小児期の強制的な治療体験など)に、EMDRが歯科恐怖症の根本原因となる記憶の感情的強度を低下させる効果が期待されます。日本EMDR学会に登録された認定治療者のもとで受けることが推奨されます。

PTSD治療に準じたアプローチトラウマ記憶の再処理感情的苦痛の軽減認定治療者が必要
マインドフルネス・呼吸法・漸進的筋弛緩法セルフケア

マインドフルネスは「今この瞬間に意識を向け、判断せずに観察する」実践です。歯科恐怖症においては、「治療が終わったらひどいことになる」といった未来への破局的思考から、今の呼吸・感覚に意識を引き戻す効果があります。腹式呼吸法(4秒吸って・4秒止めて・8秒で吐く「4-4-8呼吸」など)は副交感神経を活性化し、治療中の自律神経の乱れを調整します。漸進的筋弛緩法(各筋肉群を順番に緊張させ弛緩させる)は、全身の筋緊張を自覚して解放するスキルです。これらはアプリや動画で自習でき、歯科受診前の準備練習として効果的です。

自宅で練習可能副交感神経活性化破局的思考の制止治療前後に有効
最新アプローチは既存の治療の「補完」ですVR・EMDR・マインドフルネスはいずれも、歯科恐怖症に理解のある歯科医院と連携した上で取り組むと最大の効果を発揮します。これらだけで歯科恐怖症が「一気に解決」するわけではありませんが、従来の段階的暴露法やCBTと組み合わせることで、回復を大きく後押しします。
PRACTICAL TIPS

歯科受診を乗り越えるためのコツ

歯科恐怖症を抱えながらも受診する際の実践的なアドバイスをまとめました。小さな工夫が、大きな安心感につながります。

受診のコツ

歯科受診を乗り越える8つのコツ

いきなり完璧にやろうとせず、できるところから取り入れてみてください。

🔍
歯科恐怖症に理解のある歯科医院を探す
「歯科恐怖症」「怖がりの方歓迎」「笑気麻酔あり」などのキーワードで検索しましょう。恐怖症外来を設けている歯科医院も増えています。口コミや評判を確認し、初回はカウンセリングのみで治療をしない医院を選ぶと安心です。
💬
事前に恐怖を伝える
「歯科治療がとても怖いです」と正直に伝えましょう。伝えることは恥ずかしいことではありません。むしろ、歯科医にとって重要な情報であり、それに応じた配慮をしてもらえます。電話やメールで事前に伝えておくのも良い方法です。
「ストップサイン」を決めておく
治療中に「止めてほしい」時のサイン(左手を挙げるなど)を事前に歯科医と決めておきましょう。「いつでも自分の意思で止められる」というコントロール感が、恐怖を大幅に軽減します。これは自分の安全を守る権利です。
🎧
気を紛らわせるツールを活用する
イヤホンで音楽やポッドキャストを聴く、サングラスをかけて視覚情報を遮断する、ストレスボールを握る——感覚刺激を管理するツールを持参しましょう。多くの歯科恐怖症外来では、治療中にテレビや動画を視聴できる設備があります。
🧘
呼吸法を練習しておく
腹式呼吸法(4秒吸って4秒吐く)を日常的に練習し、治療前・治療中に実践しましょう。鼻呼吸で行うため、口を開けた状態でも実施できます。身体のリラクゼーションは自律神経を落ち着かせ、恐怖反応を軽減します。
📅
朝一番の予約を取る
1日の最初の予約を取ることで、待ち時間を最小限にでき、予期不安が長引くのを防げます。また、前の患者の治療を待つ間にドリルの音を聞くストレスも避けられます。心身ともに疲れていない朝が最適です。
👤
信頼できる人に付き添ってもらう
家族や友人に付き添ってもらうことで、安心感が得られます。待合室で一人で待つ不安が軽減され、治療後の帰路も安全です。鎮静法を使用する場合は、帰宅時の付き添いが必要になることもあります。
🏆
小さな成功を積み重ねる
最初から完全な治療を目指す必要はありません。「今日は歯科医院の建物に入れた」「カウンセリングだけ受けられた」「検査までできた」——どんな小さな一歩も、脳に「安全な歯科体験」として記憶されます。
最も大切なことは「自分のペースで良い」ということです。何年も歯科に行けなかった方が、初めて歯科医院の建物に足を踏み入れただけでも、それは大きな勇気ある一歩です。焦る必要はまったくありません。
口腔と全身の健康

歯科恐怖症が招く口腔・全身健康への影響

歯科恐怖症で受診を長期間回避すると、口腔内の問題は着実に進行します。そして口腔の問題は、歯だけにとどまらず全身の健康に深刻な影響を与えることが、医学的に明らかになっています。

❤️
心疾患リスクの上昇
歯周病菌(Porphyromonas gingivalis等)は血流に乗って心臓の血管に達し、動脈硬化を促進します。重度の歯周病を持つ人は、心筋梗塞・狭心症のリスクが1.5〜2倍高いことが複数の研究で示されています。
🩸
糖尿病との相互悪化
歯周病は血糖コントロールを悪化させ、逆に糖尿病は歯周病を重症化させます。この双方向の悪化関係により、歯科治療を避け続けることは糖尿病管理にも直接影響します。
🧠
認知症リスクの増大
複数の疫学研究が、歯の喪失(特に咀嚼能力の低下)と認知症発症リスクの関連を示しています。歯周病菌が産生するLPSなどの炎症物質が脳に慢性的な炎症をもたらす可能性も指摘されています。
🤰
妊娠・出産への影響
重度の歯周病は早産・低体重出産のリスク要因です。妊娠中は女性ホルモンの影響で歯周病が悪化しやすく、歯科治療への恐怖から妊娠中に受診を避ける方は特に注意が必要です。
🥗
栄養摂取・QOLの低下
歯の喪失や痛みにより咀嚼能力が低下すると、食べられる食品が限られ、低栄養・偏食につながります。会食や外食を避けるようになり、社会的孤立につながることもあります。
😞
自己肯定感と精神的健康への影響
口腔内の見た目の悪化(歯の変色、欠損、口臭)は、自己肯定感を著しく低下させます。「笑えない」「人と話せない」という状況から、うつ病や社交不安障害が悪化・合併するケースも少なくありません。
💡
口腔健康は「全身の鏡」です歯科恐怖症の克服を先延ばしにすることは、口の問題だけでなく心臓・脳・血糖・精神的健康に影響する複合的な健康リスクを放置することを意味します。小さな一歩から始めることが、全身の健康を守ることに直結しています。
セルフヘルプ

受診前にできるセルフヘルプと準備

歯科受診への最初の一歩を踏み出すために、日常生活でできる準備と心理的なセルフヘルプをまとめました。恐怖度ゼロから始める段階的ステップです。

STEP 1
情報収集のみ(行動不要)
歯科恐怖症に対応している歯科医院をネットで調べる。口コミを読む。電話せず眺めるだけでOK。
STEP 2
電話またはメールで問い合わせ
「歯科治療がとても怖いのですが、相談だけでも可能ですか?」と連絡する。治療の予約ではなく相談の問い合わせから始める。
STEP 3
カウンセリングのみで来院
治療器具に触れない。歯科医と話すだけ。「今日は話すだけ」と決めておく。
STEP 4
診察室・治療椅子に慣れる
椅子に座るだけ。口を開けない。空間・匂い・雰囲気に体を慣らす段階。
STEP 5
簡単な検査のみ
ミラーで歯を見てもらうだけ。この段階ではドリルや注射は行わない。
「完璧にできなくて当然」です。STEP 1から2に進めなくても、それは失敗ではありません。何度でも同じステップを繰り返し、体が「安全だ」と感じるまで待ちましょう。無理なペースで進めると恐怖が増大することがあります。
関連する用語
限局性恐怖症注射恐怖症パニック障害暴露療法認知行動療法血液・注射・外傷型恐怖症
FOR FAMILY & FRIENDS

周囲の人にできること

歯科恐怖症を抱える方を支えるには、恐怖を理解し、安全な一歩を一緒に踏み出すサポートが大切です。

対応のポイント

してほしいこと・避けてほしいこと

関わり方のちょっとした違いが、本人の回復ペースを大きく左右します。

✓ してほしいこと
歯科恐怖症は「根性の問題」ではなく、脳の恐怖反応であることを理解する
「早く歯医者に行きなよ」と急かすのではなく、一緒に恐怖症に理解のある歯科医院を探す
受診に付き添うことを申し出る。待合室にいるだけでも大きな安心感になる
小さな一歩(カウンセリングだけ、検査だけ)を応援し、認める
子どもの場合、歯科受診を「罰」や「脅し」として使わない
自分自身が歯科に対してポジティブな態度を見せる(特に子どもの前で)
✗ 避けてほしいこと
「たかが歯医者くらいで」「大人なんだから我慢して」と恐怖を軽視する
「歯がボロボロになるよ」「手遅れになるよ」と脅して受診を強制する
口腔内の状態を指摘して恥をかかせる
「自分も怖いけど行っている」と比較する
本人の同意なく歯科の予約を取る
子どもに「言うこと聞かないと歯医者に連れて行くよ」と脅す
子どもの歯科恐怖

子どもの歯科恐怖を予防するために

子どもの歯科恐怖症は、最初の歯科体験に大きく左右されます。予防的な取り組みが非常に重要です。

🦷
痛みが出る前に通い始める
1歳半〜2歳頃から定期的に歯科を受診し、「歯医者=痛い場所」ではなく「歯をきれいにしてくれる場所」という印象を作りましょう。予防歯科から始めれば、痛みを伴う治療を経験する前にポジティブな記憶を築けます。
👶
小児歯科専門医を選ぶ
子どもの発達段階を理解し、怖がらせない対応ができる小児歯科専門医を選びましょう。Tell-Show-Do(説明→見せる→行う)の技法を使い、子どものペースに合わせた治療が受けられます。
🚫
歯科を「脅し」に使わない
「歯磨きしないと歯医者で痛いことされるよ」「悪い子は歯医者に連れて行くよ」——こうした脅しは歯科恐怖の種を植えます。歯科をポジティブに語り、「歯を守ってくれるヒーロー」として紹介しましょう。
😊
親の不安を子どもに見せない
親自身が歯科恐怖を抱えている場合、その不安は確実に子どもに伝染します。子どもの前では歯科についてポジティブに話し、自分の恐怖は別の場所で対処しましょう。
子どもの歯科恐怖は予防できる歯科恐怖症の多くは、幼少期の歯科体験に起因します。最初の歯科体験を安全でポジティブなものにすることは、子どもの生涯にわたる口腔健康を守る最大の投資です。
FAQ

歯科恐怖症についてよくある質問

歯科恐怖症について多くの方が疑問に感じることをQ&A形式でまとめました。

FAQ

歯科恐怖症についてのQ&A

上記以外のご質問や、個別の状況についての相談は、歯科恐怖症に対応した歯科医院・心療内科・精神科、または各都道府県の精神保健福祉センターにご相談ください。

一人で抱え込まないで。
相談してみませんか。

歯科恐怖症の悩みを抱えていませんか。どうかあなたの大切な悩みをココトモに聞かせていただきたいです。

今すぐ話したい方へ——相談窓口
ココトモ相談するチャット相談・無料
いのちの電話0120-783-55624時間・無料
よりそいホットライン0120-279-33824時間・無料
精神保健福祉センター各都道府県精神的健康・歯科恐怖相談

このページの情報は、医師による診断や治療に代わるものではありません。歯科恐怖症が気になる場合は、恐怖症に対応した歯科医院や心療内科への相談をご検討ください。経済的な事情で受診に不安がある方は、自立支援医療制度(精神通院医療)を利用することで医療費の自己負担が1割に軽減される場合があります。お住まいの市区町村の福祉窓口にご相談ください。

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