メンタルヘルス用語辞典 · 認知症

認知症とは?
症状・種類・原因・治療・家族の関わり方をわかりやすく解説

日本に約700万人、世界に5500万人——認知症は誰にとっても身近な問題です。アルツハイマー型・血管性・レビー小体型などの種類、中核症状とBPSD、診断・治療・予防、家族の接し方や公的支援制度まで、必要な情報をすべてここにまとめました。

ABOUT DEMENTIA

認知症とは

認知症とは、脳の神経細胞が傷害・消失することで認知機能が低下し、日常生活に支障をきたす状態です。「物忘れ」だけでなく、見当識・言語・判断力・実行機能など様々な機能に影響します。

定義

認知症の定義——「普通の老化」を超えた認知機能の低下

認知症(Dementia)とは、脳の神経細胞が何らかの原因で傷害・消失することにより、記憶・判断力・言語・実行機能などの認知機能が以前より著しく低下し、日常生活や社会生活に支障をきたす状態の総称です。特定の1つの疾患ではなく、様々な原因疾患(アルツハイマー病・脳血管疾患・レビー小体病など)による症候群として理解されます。

WHO(世界保健機関)によると、認知症の診断には①記憶など複数の認知領域の機能低下、②それが以前の水準から低下していること、③日常生活への支障があること、の3点が必要です。「もの忘れ」だけでなく、時間・場所の見当識や判断力・実行機能の低下が組み合わさることで「認知症」と診断されます。

約700万人
日本の認知症患者数(2023年推計)。65歳以上の約5人に1人
5500万人
世界の認知症患者数(WHO推計)。毎年約1000万人が新たに発症
2050
世界の認知症患者数が約1億5000万人に達すると予測される
認知症は「ボケ」ではありません「認知症=ボケ」「何も分からなくなる病気」というイメージは正確ではありません。認知症は段階的に進行し、特に初期〜中期では本人の感情・自尊心・個性はしっかり保たれています。「その人らしさ」を尊重したケアが非常に重要です。
老化との違い

加齢による物忘れと認知症の違い

「年をとると物忘れが多くなる」のは正常な加齢現象ですが、認知症による記憶障害とは質的に異なります。以下の違いを知ることで、受診の判断に役立てることができます。

正常な老化
加齢による物忘れ
体験の一部を忘れる(「何を食べたか」)。ヒントで思い出せることが多い。「最近物忘れが多いな」と自覚あり。日常生活は普通に送れる。進行はゆっくりか停滞。
認知症
認知症の記憶障害
体験そのものを忘れる(「食べたこと自体」)。ヒントがあっても思い出せない。自覚が乏しい(病識の欠如)。日常生活に支障が出る。徐々に進行する。
MCI(軽度認知障害)

MCIとは——認知症の「一歩手前」の段階

MCI(Mild Cognitive Impairment:軽度認知障害)とは、正常な加齢による物忘れと認知症の中間に位置する状態です。記憶力や判断力などの認知機能が年齢相応の水準よりも低下しているものの、日常生活には大きな支障がない段階を指します。MCIは認知症の「前駆段階」として注目されており、適切な介入によって認知症への移行を遅らせることができると考えられています。

MCIの診断基準(Petersenの基準)

  • 1. 本人または家族による認知機能の低下の訴えがある本人の自覚・周囲の気づきが重要
  • 2. 客観的な認知機能テストで低下が確認できるMMSE・HDS-R・MoCA等で確認
  • 3. 日常生活動作(ADL)は基本的に自立している日常生活に大きな支障はない
  • 4. 認知症の診断基準は満たさない認知症未満の状態
検査
MCIの主な検査
・MMSE(ミニメンタルステート検査)
・HDS-R(改訂長谷川式簡易知能評価スケール)
・MoCA-J(モントリオール認知評価 日本語版)
・頭部MRI・CT(脳萎縮・血管病変の確認)
・SPECT(脳血流量の評価)
・血液検査(甲状腺機能・ビタミン欠乏の除外)
予後
MCIの予後
・年間10〜15%が認知症に移行
・約30〜40%は正常範囲に回復
・残りは長期間MCIにとどまる
・運動・認知トレーニングで移行リスクを低減
・早期介入が最も効果的
MCIの段階での行動が鍵MCIと診断されたからといって、必ずしも認知症になるわけではありません。この段階での生活習慣の改善(運動・睡眠・社会活動・食事)や危険因子の管理が、認知症への移行を防ぐうえで最も効果的です。「MCIかも?」と思ったら、早めに専門医に相談することをお勧めします。
早期発見

認知症の早期発見のために——受診のサイン

認知症は早期に発見・介入するほど、症状の進行を遅らせ、より長く自分らしい生活を維持できます。以下のサインが本人や家族に見られたら、早めに医療機関に相談することをお勧めします。

  • 同じことを何度も聞く・話す
  • 最近の出来事を全く覚えていない
  • 日付・曜日が頻繁にわからなくなる
  • 慣れた道や場所で迷う
  • 言葉が出てこない・「あれ」「それ」が増える
  • 以前できた料理・金銭管理ができなくなった
  • 理由なく怒りやすくなった・性格が変わった
  • 趣味や人付き合いへの意欲がなくなった
💡
まず「もの忘れ外来」へ「もしかして認知症?」と感じたら、かかりつけ医への相談から始めましょう。専門の「もの忘れ外来」「認知症疾患医療センター」への紹介を受けることで、正確な診断と適切な治療・支援につながります。
SYMPTOMS

認知症の症状

認知症の症状は「中核症状」(認知機能の低下)と「BPSD(行動・心理症状)」に大別されます。BPSDは適切なケアによって軽減できる場合があります。

中核症状は、脳の神経細胞が直接傷害されることで生じる認知機能の低下です。すべての認知症で見られ、疾患の進行とともに程度が重くなります。

🧠
記憶障害
最近の出来事を忘れる(新しい記憶から失われていく)。同じことを何度も聞く・話す。大切な約束や服薬を忘れる。物の置き場所を忘れる。初期は「最近のこと」が難しく、遠い記憶(幼少期など)は比較的保たれることが多い。
📍
見当識障害
時間(今日が何日か・何曜日か)・場所(今どこにいるか)・人(目の前の人が誰か)がわからなくなる。外出先で道に迷う。自宅にいながら「家に帰りたい」と言う(自宅を認識できない)。
🔧
実行機能障害
物事の計画・段取り・実行が困難になる。料理の手順がわからなくなる。複数のことを同時にこなせない。家電や機器の操作ができなくなる。金銭管理が困難になる(計算が難しい)。
💬
言語障害
言葉が出てこない(失語)。「あれ」「それ」「なんか」という代名詞が増える。言いたいことはわかっているのに言葉にできないもどかしさを感じる。会話のキャッチボールが難しくなる。
👁
視空間認知障害
物の位置関係・立体認識が困難になる。段差・距離感がわからなくなり転倒しやすくなる。絵が描けなくなる。時計が読めなくなる。人の顔の認識が困難になることもある(相貌失認)。
🔄
判断力・理解力の低下
複雑な状況の判断や問題解決が難しくなる。詐欺・訪問販売の被害を受けやすくなる。自分の状態を正確に評価できなくなる(病識の欠如)。
TYPES OF DEMENTIA

認知症の種類

認知症には様々な種類があり、原因・症状・進行の仕方・治療法がそれぞれ異なります。正確な診断が適切な治療・ケアにつながります。

割合と特徴

認知症の種類別の割合と特徴

日本の認知症患者の約60〜70%がアルツハイマー型認知症ですが、他にも血管性認知症・レビー小体型認知症・前頭側頭型認知症など様々な種類があります。

アルツハイマー型認知症
67%
血管性認知症
20%
レビー小体型認知症
5%
前頭側頭型認知症
3%
その他(混合型等)
5%
アルツハイマー型認知症 67%
最も多い認知症。記憶障害(特に近時記憶)から始まり、徐々に全般的な認知機能が低下する。アミロイドβとタウタンパクの蓄積が原因。
血管性認知症 20%
脳梗塞・脳出血などの脳血管障害に続発。症状が段階的・階段状に悪化する。高血圧・糖尿病などの予防が重要。
レビー小体型認知症 5%
幻視(リアルな幻覚)・パーキンソン症状(動作緩慢・転倒)・認知機能の日内変動が特徴。
前頭側頭型認知症 3%
比較的若い世代(40〜60代)に多い。人格変化・社会的行動の障害・言語障害が先行することが多い。
その他(混合型等) 5%
2種類以上の認知症が混在する混合型認知症、正常圧水頭症・慢性硬膜下血腫による治療可能な認知症なども含まれる。
💡
「治る認知症」もある正常圧水頭症・慢性硬膜下血腫・甲状腺機能低下症・ビタミン欠乏などによる認知症様症状は、適切な治療で改善・回復することがあります。認知症に似た症状でも、まず医療機関での精密検査が重要です。
若年性認知症

若年性認知症——65歳未満で発症する認知症

若年性認知症とは、65歳未満で発症した認知症の総称です。日本では約3.8万人(人口10万人あたり約50人)が罹患していると推計されており、就労・経済・家族への影響が大きいという特徴があります。

原因疾患
原因疾患の内訳
・アルツハイマー型 約52.6%
・血管性認知症 約17.1%
・前頭側頭型認知症 約9.4%
・レビー小体型 約4.5%
・その他(外傷・アルコール等)
課題
特有の課題
・就労困難・収入喪失(発症後約70%が収入減)
・住宅ローン・子育て費用の問題
・配偶者・家族への精神的負担
・高齢者向けサービスとのミスマッチ
・社会的孤立・疎外感

若年性認知症で利用できる制度

  • 精神障害者保健福祉手帳医療費割引・税制優遇・障害者雇用枠での就労継続が可能に
  • 障害年金就労が困難になった場合の所得補償(1〜2級)
  • 自立支援医療(精神通院医療)外来医療費の自己負担が原則1割に軽減
  • 介護保険(40歳以上)若年性認知症は特定疾病として40歳から介護保険が利用可能
  • 若年性認知症コールセンター専門の相談窓口(0800-100-2707、月〜土 10〜15時)
まず「若年性認知症コールセンター」へ若年性認知症と診断されたら、まず「若年性認知症コールセンター」(0800-100-2707)に相談することで、利用できる支援制度・地域の相談窓口・当事者グループなどの情報を得ることができます。1人で抱え込まず、専門家への相談が第一歩です。
CAUSES & RISK FACTORS

認知症の原因とリスク要因

認知症の発症リスクは、変えられない要因(年齢・遺伝)と、生活習慣で変えられる要因の両方があります。予防可能なリスクへの対処が重要です。

リスク要因

認知症のリスク要因——変えられないものと変えられるもの

認知症の最大のリスク要因は「加齢」ですが、生活習慣や環境要因によって発症リスクを変えられる部分も大きいことが研究で示されています。以下は主要リスク要因の影響度のイメージです。

加齢(65歳以上で急増)
95%
遺伝・家族歴(APOE ε4遺伝子等)
75%
高血圧・糖尿病・脂質異常症
70%
喫煙・過度の飲酒
65%
運動不足・肥満
60%
難聴(治療しない難聴)
55%
社会的孤立・抑うつ
50%
低学歴(認知予備能の低さ)
45%
Lancetの研究(2020年)では、40%の認知症ケースが12の修正可能なリスク要因(難聴・高血圧・肥満・喫煙・うつ・糖尿病・身体不活動・社会的孤立・大気汚染・頭部外傷・過度の飲酒・低い教育水準)への介入で予防または発症を遅らせることができると試算されています。
予防・対策

認知症予防のための生活習慣

認知症を「完全に予防できる」という保証はありませんが、以下の生活習慣が発症リスクを低下させることが科学的に示されています。

🏃
定期的な有酸素運動
週150分以上の中強度有酸素運動(ウォーキング・水泳・自転車など)が認知症リスクを約35%減少させるとされています。運動は脳由来神経栄養因子(BDNF)を増加させ、神経細胞の保護・新生を促進します。
🧩
知的活動・学習
読書・パズル・楽器演奏・語学学習などの知的活動が認知予備能を高め、認知症の発症を遅らせる効果があります。「脳を使い続ける」ことが予防の鍵です。
👥
社会的つながりの維持
友人・家族・地域とのつながりが認知症リスクを大幅に低下させます。社会的孤立は認知症の重大なリスク要因であり、定期的な交流が保護要因になります。
💤
十分な睡眠
睡眠中に脳はアミロイドβなどの老廃物をグリンパティクス系によって洗浄します。睡眠不足が続くとアミロイドβが蓄積しやすくなります。7〜9時間の質の高い睡眠が重要です。
血管リスクの管理
高血圧・糖尿病・脂質異常症の早期発見・治療が認知症(特に血管性認知症・アルツハイマー型)の予防に有効です。生活習慣病の管理は認知症予防の基盤です。
🎵
難聴の早期対処
難聴を放置することが認知症の最大の修正可能リスク要因のひとつとされています。補聴器の早期使用が認知症リスクを低下させる可能性が示されています。
TREATMENT & CARE

認知症の治療とケア

認知症には現時点で完全に「治す」方法はありませんが、薬物療法と非薬物的ケアを組み合わせることで症状の進行を遅らせ、生活の質を維持することが可能です。

診断プロセス

認知症の診断——どのように診断されるのか

認知症の診断は、単一の検査で確定できるものではなく、複数の評価を組み合わせて行われます。かかりつけ医や「もの忘れ外来」では、問診・認知機能検査・画像検査などを通じて包括的に評価します。

01
問診・生活歴の聴取
いつから、どのような症状があるか。日常生活への支障の程度。服薬状況・既往歴・家族歴。本人だけでなく、家族からの情報も重要です。
02
認知機能スクリーニング検査
MMSE(30点満点・23点以下で認知症疑い)やHDS-R(30点満点・20点以下で認知症疑い)などの簡易検査で認知機能の全体像を把握します。記憶・見当識・計算・言語・視空間認知などを評価します。
03
神経心理学的検査(詳細評価)
簡易検査で異常が疑われた場合、記憶・注意・実行機能・言語などをより詳細に評価する神経心理検査(ウェクスラー記憶検査・前頭葉機能検査など)を行います。
04
画像検査(CT・MRI・SPECT)
頭部CTやMRIで脳萎縮・脳血管障害・腫瘍などの器質的病変を確認します。SPECTでは脳血流の低下パターンから認知症の種類を推定できます。アミロイドPET(アミロイドβの蓄積確認)は研究・専門機関で実施されます。
05
血液・尿検査
甲状腺機能低下症・ビタミンB12欠乏・梅毒・HIV感染・電解質異常など、「治療できる認知症様状態」を除外するために行われます。
💡
認知症疾患医療センターとは都道府県・政令市が指定する認知症の専門医療機関で、鑑別診断・専門的な医療相談・地域の医療機関や介護施設との連携を担います。「もの忘れ外来」で対応が難しい複雑なケースや、セカンドオピニオンを求める場合に紹介されます。全国に約500か所が整備されています。
薬物療法

認知症の薬物療法

現在の認知症薬は症状の進行を遅らせる「対症療法」が主体です。2023年以降、アミロイドβを標的とした「病態修飾薬」も登場し、早期段階での根本的な治療への期待が高まっています。

第一選択薬
コリンエステラーゼ阻害薬
アリセプト(ドネペジル)・レミニール(ガランタミン)・イクセロン/リバスタッチ(リバスチグミン)アセチルコリンの分解を阻害してコリン作動性神経伝達を高めます。アルツハイマー型・レビー小体型認知症の症状進行を遅らせる効果があります。根本的な治療ではなく「症状を一時的に改善・維持する」薬です。副作用として吐き気・下痢・食欲低下などが生じることがあります。
中等度〜重度
NMDA受容体拮抗薬
メマリー(メマンチン)グルタミン酸によるNMDA受容体の過剰刺激を抑制します。中等度〜重度のアルツハイマー型認知症に使用されます。コリンエステラーゼ阻害薬との併用も行われます。興奮性の神経毒性を抑え、認知機能の悪化を遅らせます。
病態修飾薬(新規)
新規抗アミロイド療法
レカネマブ(レケンビ)等アルツハイマー型認知症の根本原因であるアミロイドβを脳から除去することで病態進行を抑制することを目指す新薬。2023年以降、米国・日本でも承認が進んでいます。早期・前駆期での使用が効果的とされており、今後の発展が期待されます。
薬は「完治」させるものではありません現在の認知症薬(コリンエステラーゼ阻害薬・メマンチン)は「症状の進行を遅らせる」ものであり、完治させる薬ではありません。家族が「薬を飲んでいるのになぜ悪化するの?」と感じることがありますが、薬がなければさらに早く悪化していた可能性があります。
非薬物的ケア

非薬物的ケアアプローチ

薬物療法だけでなく、その人らしさを尊重したケアや環境調整・活動療法などの非薬物的アプローチが、認知症の方の生活の質を大きく左右します。

💬
パーソン・センタード・ケア
認知症の人を「認知症患者」ではなく「一人の人格を持つ人」として尊重するケアの考え方(トム・キットウッドが提唱)。その人の人生史・価値観・好みを理解し、その人らしさを維持することを支援します。
🎵
音楽療法・回想法
音楽が脳の広い領域(特に感情・記憶に関わる部分)を刺激し、認知機能・気分・コミュニケーションを改善します。回想法(過去の思い出を語り合う)も認知機能・自己肯定感に良い影響を与えます。
🏃
運動療法・作業療法
身体的な活動が認知機能の維持・BPSD(行動・心理症状)の軽減に有効です。作業療法では残存する機能を活かしたADL(日常生活動作)の維持を支援します。
🌿
環境調整(認知症フレンドリー設計)
わかりやすい表示・見当識を助ける時計・カレンダー・写真の活用、安全な動線の確保、光環境の整備などの環境調整が生活の質を向上させます。
FOR CAREGIVERS & FAMILY

家族・介護者の方へ

認知症の介護は「愛情だけ」ではできません。正しい知識・適切なサービスの活用・介護者自身のケアが、長期的な介護を可能にします。

接し方

認知症の方への接し方——6つのポイント

🤝
「認知症の人の立場」で理解する
「なぜ同じことを何度も聞くの」「昨日教えたじゃない」という言葉は当事者を傷つけます。認知症の方にとっては「初めて聞く」ことであり、責められているとは思わないように「また教えてくれたんだね」という対応が助けになります。
💡
否定せず、その世界に合わせる
「財布を盗まれた」という妄想を「違います、盗まれていません」と否定することは混乱と激しい感情反応を引き起こします。「それは大変でしたね。一緒に探してみましょうか」と一旦受け入れ、一緒に対応することが有効です。
BPSDへの対処——薬より先に「ケア」を
徘徊・暴力・不眠などのBPSDは、薬での抑制より先に「なぜそのような行動が起きているか」という原因のケアを探ることが重要です。痛み・不快感・恐怖・孤独感・退屈などが背景にある場合が多いです。
🏥
専門機関・サービスを早めに活用する
認知症の診断を受けたら、できるだけ早くデイサービス・訪問介護・ケアマネージャーなどの支援サービスを活用しましょう。「まだ大丈夫」と抱え込むことが介護者の燃え尽きにつながります。
介護者自身のケアを忘れない
認知症介護は心身ともに過酷です。介護者の燃え尽き・うつは非常に多く、「自分が倒れたら介護できない」という現実があります。レスパイトケア(一時的な休息のための入院・ショートステイ)の活用、介護者同士の交流(家族の会)への参加が重要です。
📋
意思決定支援——本人の意向を大切に
認知症が進む前に、本人の意向(どのような生活を送りたいか・終末期医療をどうするか)を確認し、文書化しておくこと(アドバンス・ケア・プランニング)が、後になって本人の意向に沿った支援を可能にします。
介護者の燃え尽きは「失敗」ではありません認知症介護によって介護者がうつ・燃え尽きになることは非常に多く見られます。「もっと頑張らなければ」と思わず、「自分が倒れたら介護できない」という現実を受け入れ、専門家・サービス・家族全体での分担を早めに相談することが最も大切です。
支援サービス

利用できる主な支援サービス

認知症の介護を一人で抱え込まないために、地域には様々な公的・民間の支援サービスがあります。早めの活用が介護者・本人の双方の負担軽減につながります。

  • 居宅介護支援(ケアマネ)介護全体のコーディネート
  • デイサービス・デイケア日中の通所介護・医療的ケア
  • ショートステイ短期間の入所(介護者のレスパイト)
  • 訪問介護・訪問看護自宅での介護・医療サービス
  • 認知症カフェ当事者・家族・専門家の交流の場
  • 認知症家族の会家族同士の情報交換・相談
  • 成年後見制度財産管理・意思決定支援の法的仕組み
  • 地域包括支援センター介護・福祉・医療の総合相談窓口
支援制度

認知症で使える公的支援制度——費用・手続きのガイド

認知症と診断された後は、様々な公的支援制度を活用することで、医療費・介護費の負担を軽減し、より長く自立した生活を続けることができます。制度は複数あり、組み合わせて利用することが重要です。

🏥
自立支援医療制度(精神通院医療) 医療費軽減
精神疾患(認知症を含む)で継続的な通院治療が必要な方の医療費を軽減する制度です。適用されると、病院・薬局・訪問看護の自己負担が原則1割に軽減されます。世帯の所得に応じて月の自己負担上限額も設定されます。申請窓口は市区町村の障害福祉課です。
📋
精神障害者保健福祉手帳 生活支援
精神疾患(認知症を含む)により日常生活や社会活動に相当の制限を受ける方が取得できる手帳です。1〜3級があり、税制優遇・交通機関割引・公共施設利用料減免・障害者雇用枠での就労などの支援を受けることができます。申請には精神科医の診断書が必要です。
💴
高額療養費制度 医療費上限
1か月の医療費が一定額(所得に応じた自己負担限度額)を超えた場合、超過分が払い戻される制度です。認知症の治療・検査が複数の医療機関にわたる場合でも、同一世帯内の合算申請が可能です。
🏡
介護保険制度 介護サービス
65歳以上(または40〜64歳で特定疾病による)の要介護・要支援認定を受けた場合に、デイサービス・訪問介護・ショートステイ・施設入所などの介護サービスが原則1割(所得に応じて2〜3割)で利用できます。ケアマネジャーがケアプランを作成し、必要なサービスを調整します。
成年後見制度 法的保護
判断能力が低下した認知症の方の財産管理・契約行為を支援する法的制度です。家庭裁判所が選任した後見人が、本人に代わって財産管理・法律行為を行います。悪徳業者からの被害防止・重要な意思決定への対応に有効です。
🏢
地域包括支援センター 総合相談
住んでいる地域の高齢者の保健・医療・介護・福祉に関する総合的な相談窓口です。介護保険の申請代行・ケアマネジャーとの連絡調整・成年後見制度の相談など、認知症に関するあらゆる相談に対応します。市区町村ごとに設置されています。
精神保健福祉センターに相談する各都道府県・政令市に設置されている「精神保健福祉センター」では、認知症を含む精神疾患に関する専門的な相談・支援を無料で提供しています。自立支援医療・手帳の申請手続きのサポートや、家族向けの相談にも対応しています。お住まいの都道府県のセンターに気軽にお問い合わせください。
認知症施策

認知症施策推進大綱と認知症基本法——社会全体での取り組み

日本政府は2019年に「認知症施策推進大綱」を策定し、「共生」と「予防」を両輪とした認知症施策を推進してきました。さらに2023年に「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」が成立・施行され、認知症の人の権利擁護と社会参加を法律で保障する枠組みが整備されました。

📜
認知症施策推進大綱(2019年)
①普及啓発・本人発信支援、②予防、③医療・ケア・介護者への支援、④認知症バリアフリー推進・若年性認知症支援、⑤研究開発の5本柱で構成。2025年までを対象期間とした国家的な認知症対策の指針。
認知症基本法(2023年施行)
認知症の人が「尊厳を保持しつつ希望を持って暮らすことができるよう」国・地方公共団体・企業・国民が連携して取り組む法律。認知症の人の意見表明権・社会参加権を明記した画期的な法律。
🏘
地域包括ケアシステム
医療・介護・予防・住まい・生活支援を一体的に提供する「地域完結型」のケア体制。認知症の方が住み慣れた地域で最後まで暮らし続けられることを目指す。
認知症カフェ(オレンジカフェ)
認知症の人・家族・地域住民・専門家が気軽に集える交流の場。孤立防止・情報交換・早期相談につながる地域資源として全国に普及。
FAQ

認知症に関するよくある質問

認知症についてよく寄せられる疑問に、専門的な観点からお答えします。

Q. 認知症は遺伝しますか?

A. 一部の認知症には遺伝的要因があります。アルツハイマー型認知症では「APOE ε4遺伝子」を持つ方はリスクが高まりますが、これはあくまでリスク因子であり、必ず発症するわけではありません。家族性アルツハイマー病(若年発症・常染色体優性遺伝)は全体の1〜5%と少数派です。一方、血管性認知症や前頭側頭型認知症の一部にも遺伝性のものがあります。「家族に認知症がいる=自分も必ず発症する」ということはなく、生活習慣の改善がリスク低減に有効です。

Q. 認知症と診断されたら、運転はできなくなりますか?

A. 道路交通法により、認知症と診断された場合は運転免許の取消し・停止の対象となります。75歳以上の免許更新時には認知機能検査が義務付けられており、「認知症のおそれがある」と判定された場合は医師の診断が求められます。認知症と診断された場合は、安全のため自主的に運転を控えることが強く推奨されます。地域によっては「運転免許自主返納者への支援(バス・タクシー割引など)」もあります。

Q. 認知症の診断を受けたら、仕事は続けられますか?

A. 軽度の認知症・MCIであれば、業務内容によっては就労継続が可能な場合があります。若年性認知症の場合は精神障害者保健福祉手帳を取得することで障害者雇用枠での就労継続ができることがあります。職場への相談・業務内容の調整・短時間勤務への切り替えなどを早めに検討することが重要です。就労継続に関する相談は、地域障害者職業センターや若年性認知症コールセンターでも対応しています。

Q. 認知症の薬はいつまで飲み続けるのですか?

A. コリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジルなど)やメマンチンは、認知症の症状進行を遅らせる効果があるため、基本的には継続的な服用が推奨されます。「飲んでいても改善しない」と感じることがありますが、薬を止めると急激に悪化することがあるため、自己判断での中止は避けてください。服薬の継続・変更・中止については必ず主治医に相談してください。

Q. 認知症の人に「ウソをつく」のは問題ありますか?

A. 認知症ケアにおいて「治療的なウソ(セラピューティック・ライ)」が議論されています。例えば「亡くなった夫はどこ?」という問いに「お父さんは外出中よ」と答えるケースです。現実を突きつけて混乱・悲しみを増幅させるより、その人が感じている感情(安心・つながり)に応えることが優先される場合があります。ただしすべての場面でウソが適切なわけではなく、ケアの倫理的判断として専門家とも相談することが重要です。

Q. 認知症の予防に「脳トレ」は効果がありますか?

A. 特定の「脳トレアプリ」が認知症予防に直接効果があるという強いエビデンスは現時点では限定的です。一方で、読書・楽器演奏・語学学習・社会参加など「実生活に根ざした多様な知的活動」が認知予備能を高め、認知症リスクを低下させることは研究で示されています。最も効果があるとされているのは「有酸素運動」であり、脳トレ単独より、運動・社会的活動・食事改善を組み合わせた多因子介入が有効とされています。

Q. 家族が認知症の診断を拒否している場合はどうすればよいですか?

A. 認知症の診断を拒否することは珍しくなく、「自分がそんな病気のわけがない」「病院に行きたくない」という気持ちは理解できます。無理やり連れて行くのではなく、かかりつけ医への「物忘れ相談」や「健康診断」という名目で受診を促す方法が有効な場合があります。認知症疾患医療センターや地域包括支援センター、精神保健福祉センターでは「家族からの相談」にも対応していますので、まず家族だけで相談することも可能です。

Q. 認知症の進行を完全に止めることはできますか?

A. 現時点では、認知症(特にアルツハイマー型)の進行を完全に止める治療法はありません。ただし、2023年以降に承認されたレカネマブ(レケンビ)などの抗アミロイド薬は病態そのものへの作用を持ち、早期段階での進行抑制に一定の効果が示されています。既存の薬(コリンエステラーゼ阻害薬・メマンチン)も進行を遅らせる効果があります。また、生活習慣の改善・適切なケア・合併症の管理によって、QOL(生活の質)を高水準で維持することは十分可能です。

一人で抱え込まないで。
相談してみませんか。

認知症の介護や、ご家族の物忘れへの不安——つらい気持ちを抱えていませんか。どうかあなたの大切な悩みをココトモに聞かせていただきたいです。

今すぐ話したい方へ——相談窓口
ココトモ相談するチャット相談・無料
いのちの電話0120-783-55624時間・無料
よりそいホットライン0120-279-33824時間・無料

このページの情報は、医師による診断や治療に代わるものではありません。症状が気になる場合は、心療内科・精神科・もの忘れ外来への受診をご検討ください。認知症と診断された場合、自立支援医療制度(精神通院医療)を利用することで通院医療費の自己負担が軽減される場合があります。お住まいの市区町村の障害福祉課または精神保健福祉センターにご相談ください。

keyboard_arrow_up