メンタルヘルス用語辞典 · イネーブリング

イネーブリングとは?
意味・具体例・やめ方をわかりやすく解説

イネーブリングとは、本人のためと思ってとっている行動が、実際には問題行動(依存症・ひきこもりなど)を維持・強化してしまう関わり方のことです。善意から生まれる行動が回復を妨げている仕組み、具体的なパターン、そしてどう変わっていけるかを詳しく解説します。

ABOUT ENABLING

イネーブリングとは

イネーブリングとは、本人のためと思ってとっている行動が、実際には問題行動を維持・強化してしまう関わり方のことです。愛情から生まれる行動が、知らず知らずのうちに回復を妨げていることがあります。

定義

イネーブリングの定義——「善意の妨害」

イネーブリング(Enabling)とは、英語の "enable"(可能にする・手助けする)を語源とする言葉で、主に依存症や問題行動の文脈で使われます。表面上は支援や援助に見えるものの、実際には問題行動を「可能に」してしまう——つまり継続させ、維持させ、深刻化させてしまう関わり方を指します。

日本語では「共依存的支援」「問題行動の維持行動」などとも表現されますが、「イネーブリング」という言葉が最も端的にその本質を表しています。問題のある人への対処法を検討する際、医療・心理の専門家がもっとも重視する概念のひとつです。

重要なのは、イネーブリングをしている人に悪意はほとんどないという点です。「相手を助けたい」「苦しむ姿を見ていられない」「家族として当然の責任だ」という真摯な思いから行動しています。だからこそイネーブリングは複雑であり、やめることが非常に難しいのです。

短期的には
問題が「解決したように見える」
借金が返済される、危機的状況が回避される、職場への欠勤が隠蔽されるなど、目の前の問題が一時的に解消したように感じられる。支援する側も「役に立てた」という安心感を得る。
長期的には
問題が維持・深刻化する
本人が問題に直面する機会がなくなり、「助けてもらえる」というパターンが強化される。問題の根本原因への対処が遅れ、依存症や問題行動が慢性化・重症化していく。
イネーブリングは愛情の裏返しイネーブリングをしている方の多くは、誰よりも相手のことを心配し、誰よりも深く悩んでいます。「やめなければ」と思いながらもやめられない自分を責める必要はありません。適切なサポートを受けながら、少しずつパターンを変えていくことが大切です。
サポートとの違い

健全なサポートとイネーブリングの違い

「サポートする」と「イネーブリングする」は、外見上は非常に似ています。どちらも相手のためを思った行動です。違いは、その行動が長期的に相手の自立と回復を促進するか、それとも問題行動を維持・強化するかにあります。

サポート(健全な支援)
自立を促し、成長を支える
相手が自分の力で問題を解決できるよう、適切な距離を保ちながら見守り、必要なときに必要な支援をする。相手の成長・自立を促し、問題への対処能力を高める関わり方。「一緒に考える」「方法を教える」など。境界線があり、相手の力を信じる関わり方。
イネーブリング(問題のある支援)
依存を強化し、成長を妨げる
短期的には助けているように見えるが、実際には相手が問題に直面する機会を奪い、依存や問題行動を維持・強化してしまう。「代わりにやってあげる」「問題を隠す」「尻ぬぐいをする」など。境界線がなく、依存を強化し、問題を隠蔽する関わり方。
💡
「助けること」と「問題を回避させること」は違う「本当に助けること」は、相手が問題と向き合い、自分の力で乗り越えていけるよう支えることです。問題から遠ざけ、結果を肩代わりすることは、短期的には優しく見えても、長期的には相手の力を奪ってしまいます。
よくある場面

どんな関係でイネーブリングは起こる?

イネーブリングは特定の関係に限らず、様々な人間関係の中で発生します。最も多く見られるのは以下のような関係です。

👨‍👩‍👦
親子関係
子どものアルコール・薬物問題、ギャンブル依存、ひきこもりなどで、親がイネーブリングに陥ることが非常に多い。「子どものことは親が何とかしなければ」という責任感が強く働く。
💑
夫婦・パートナー関係
アルコール依存症、ギャンブル依存症、DV加害者などのパートナーとの関係でイネーブリングが生じやすい。「別れられない理由」が複雑に絡み合っている場合が多い。
👫
兄弟姉妹関係
問題のある兄弟姉妹を助け続けるパターン。「家族だから」という義務感や罪悪感が境界線の設定を難しくする。
👥
友人・職場関係
友人のギャンブルの借金を肩代わりする、問題のある同僚の仕事を代わりにこなすなど。距離感の取り方が難しい関係でもイネーブリングは起こる。
セルフチェック

イネーブリングのセルフチェックリスト

以下の項目に当てはまるものがあれば、あなたの関わり方がイネーブリングになっている可能性を検討してみてください。チェックの数よりも、「思い当たる」という実感が大切です。

  • 🔍相手の行動の尻ぬぐいを何度もしてきた
  • 🔍相手の問題を周囲(職場・学校・親族)から隠したことがある
  • 🔍「もし助けなければ最悪の事態になる」という恐怖から行動していると感じる
  • 🔍相手のことを心配して眠れない夜がある
  • 🔍相手の機嫌に合わせて自分の行動を変えている
  • 🔍「この人には私が必要だ」という気持ちが強い
  • 🔍自分のニーズや楽しみを後回しにして相手のために動いている
  • 🔍「あなたのためだよ」と言いながら怒りや疲れを感じていることがある
  • 🔍相手が変わらないことに絶望しながらも、同じサポートを続けている
  • 🔍友人・家族に相手の問題を話すことができず、孤立していると感じる
💡
5つ以上に当てはまる場合は、アラノンなどの自助グループへの参加や、カウンセラーへの相談を検討してみてください。「イネーブリングをしているかもしれない」と気づいたこと自体が、変化への大切な第一歩です。
PATTERNS

イネーブリングのよくある行動パターン

イネーブリングには様々な形がありますが、共通しているのは「目の前の苦しみを和らげようとする善意の行動が、長期的には問題を維持・強化してしまう」という構造です。

行動パターン

代表的なイネーブリングの8つのパターン

以下は依存症・問題行動の家族・友人に見られる典型的なイネーブリング行動です。一つひとつは些細に見えても、継続することで問題の慢性化につながります。

💸
金銭的な援助・尻ぬぐい
アルコール依存症の家族のために飲み代を出したり、ギャンブル依存症のパートナーの借金を繰り返し返済したりすること。「このお金があれば立ち直れる」と信じているが、実際には依存行動を続けるための資金を提供していることになる。問題の深刻さを先送りにし、本人が「このくらいなら何とかなる」と学習してしまう。
🙈
問題を隠す・嘘をつく
アルコール依存症の夫の代わりに職場に「体調不良で休みます」と電話する、子どもの不登校を学校に隠すなど。本人を守ろうとする動機から行動しているが、結果として問題が社会的に可視化されず、本人が真剣に問題と向き合う機会が失われる。「バレなければいい」という意識を本人に植え付けてしまう危険性もある。
🔄
何度も同じ問題を解決する
「もう二度としない」という言葉を信じて、同じ失敗を繰り返すたびに助け続けること。最初の1〜2回は理解できるが、それが繰り返されることで「失敗しても誰かが助けてくれる」というパターンを学習させてしまう。本人の中に「責任を取らなくていい」という無意識の期待が形成され、変化への動機が薄れていく。
😤
怒りや批判を引き受ける
問題のある行動をする家族のために、周囲からの批判や怒りを「仕方ない事情がある」と弁護し、矢面に立つこと。本人が直接批判を受ける機会を奪うため、行動の結果から学ぶことができなくなる。長期的には支援者自身が疲弊し、精神的な健康を損なうリスクも高い。
🏡
環境を整えすぎる
「ストレスをかけないように」「刺激になることを排除しよう」と、過度に問題者の周囲を管理すること。例えばアルコール依存症の人のために家からお酒を全て撤去したり、摂食障害の家族のために特別食のみを準備したりすること。本人が自分でストレスに対処するスキルを身につける機会を奪ってしまう。
💬
問題のある行動を正当化する
「あの人がああいうことをしたから仕方ない」「職場のストレスがひどいのだから飲まないとやっていられない」など、問題行動に対して外部要因による正当化を行い続けること。本人の自己責任感が育ちにくくなり、変化への動機付けが困難になる。
🚫
問題への直接対話を回避する
「言っても聞かないから」「かえって悪化するから」と、問題について正面から話し合うことを避け続けること。問題が「見えないふり」をされることで、本人は自分の行動がどれほど周囲に影響を与えているかを認識しにくくなる。回避は短期的な平和をもたらすが、長期的には問題の慢性化を招く。
🧸
過度な責任の肩代わり
家事、育児、仕事の責任など、本来本人が担うべき役割を全て引き受けること。「できないから仕方ない」という気持ちはわかるが、これにより本人は自分の問題に向き合わず、支援者は燃え尽きに向かっていく。依存関係が固定化され、本人の回復意欲も低下しやすい。
境界線の具体例

イネーブリングから健全な対応へ——具体的な例

「では実際にどう対応すれば良いのか」という具体例を見ていきましょう。境界線を設けることは、相手を拒絶することではなく、相手の自立と回復を信じることです。

状況:相手がお金を貸してほしいと言ってくる(ギャンブル・飲酒のため)
従来のイネーブリング対応「もう少しだけなら…」とお金を渡してしまう
健全な境界線のある対応「お金は貸せないけれど、専門機関を一緒に探すことはできる」と伝える
状況:アルコールで問題を起こした相手の代わりに職場に電話する
従来のイネーブリング対応「体調不良です」と代わりに電話してしまう
健全な境界線のある対応「電話は自分でしてほしい。それが難しければ医療機関に行くことを考えて」と伝える
状況:相手が暴言を吐いてくる
従来のイネーブリング対応謝ったり我慢したりして、その場をやり過ごす
健全な境界線のある対応「今はそういう言葉を受け入れられないので、落ち着いたら話そう」と伝えてその場を離れる
状況:相手の問題行動に関して親族から質問される
従来のイネーブリング対応「大丈夫です」と隠して、一人で抱え込む
健全な境界線のある対応「今、専門家のサポートを受けながら対応している」と正直に話す
「冷たい」のではなく「信頼している」境界線を設けることを「冷たい」「見捨てた」と感じる方は多いです。しかし境界線は「あなたには自分の問題を解決する力がある、と信じているから」という表明でもあります。真の愛情は、相手の力を信じることから始まります。
MECHANISM

なぜイネーブリングは起こるのか

イネーブリングは意地悪や無知から生まれるのではありません。愛情、恐怖、罪悪感、依存関係など、人間の深いところにある感情と心理から生まれます。

心理メカニズム

イネーブリングを引き起こす心理メカニズム

イネーブリングは一つの原因から生まれるのではなく、複数の心理的要因が複雑に絡み合って形成されます。以下の4つのカテゴリが主要な要因として挙げられます。

❤️深い愛情と共感から生まれる行動

イネーブリングのほとんどは、悪意ではなく深い愛情と共感から始まります。「苦しんでいる人を助けたい」「家族が傷つくのを見たくない」という気持ちは、極めて自然な人間の感情です。特に長年一緒に過ごした家族や親しい人に対しては、苦しみを共有する気持ちが強く働きます。しかしこの愛情が、適切な境界線の設定を困難にさせることがあります。「助けることが愛情」という信念が強いほど、イネーブリングに陥りやすくなります。

  • 「助けるのが愛情」という思い込み
  • 苦しみを共有したい気持ち
  • 家族が失敗するのを見ていられない
  • 「見捨てた」と思われたくない恐怖
家族システム

家族システムとしてのイネーブリング

イネーブリングは個人の問題である前に、家族システム全体の問題として理解する必要があります。家族療法(Family Systems Theory)の観点では、家族は一つのシステムであり、一人のメンバーの行動は他のすべてのメンバーに影響を与えます。

機能不全家族のシステムでは、しばしば次のような固定された役割分担が形成されます。それぞれの役割が、家族全体のバランスを保つ機能を果たしながらも、本来の自分らしさを抑えていきます。

👤
問題を抱える人(IP)
依存症・問題行動の当事者。「患者」として識別されるが、実際には家族全体のシステムを反映している。
👤
イネーブラー
問題を隠し、尻ぬぐいをする人。多くは主要な保護者(配偶者・親)。善意で行動しているが問題を維持させる。
👤
英雄(Hero)
家族の名誉を守るために過剰に頑張る子ども。完璧主義・成績優秀。問題から目を逸らすための「証拠」になる。
👤
スケープゴート
家族の怒りや不満の矛先になる子ども。問題行動で注目を集める。実は家族の問題を「代表」して表現している。
👤
道化師(Mascot)
ユーモアで家族の緊張をやわらげる役割。問題から注意を逸らすが、自身は深刻な感情を表現できない。
👤
迷子(Lost Child)
目立たず、感情を表に出さず、存在感を消す。衝突を避けるために「いない」ようにふるまう。
家族システムの問題は、「問題を抱える一人」だけを治療しても解決しません。家族全体がシステムとして変化することが、根本的な回復への道です。家族療法や家族向けプログラムが重要な理由はここにあります。
共依存との関係

イネーブリングと共依存の関係

イネーブリングと共依存(Co-dependency)は深く関連しています。共依存とは、他者の問題行動を軸に自分の生き方が形成されてしまっている状態を指します。共依存の人は、問題のある相手を助けることに自分の存在意義を見出し、相手が回復してしまうと「自分の役割がなくなる」という無意識の恐れを抱くことがあります。

共依存の背景には、幼少期の機能不全家族での経験が多く関与しています。「自分のニーズを抑えて他者のケアをすることが愛情」と学んできた人は、大人になってもこのパターンを繰り返しやすいのです。共依存は病理ではなく、困難な環境への適応戦略として発達したものですが、大人になってからは問題を引き起こします。

共依存の主な特徴
他者中心の生き方のパターン
  • 自己犠牲的な行動パターン
  • 他者のケアを通じた自己定義
  • 自分のニーズを後回しにする
  • 「ノー」と言えない
  • 感情を感じることを恐れる
  • 境界線の設定が極めて困難
回復に向けた視点
自分の人生を取り戻す
  • 自分のニーズを認識・尊重する練習
  • 「ノー」と言う権利があると気づく
  • 相手の問題は相手のものと認識する
  • 自助グループへの参加
  • 心理療法(特にACOAプログラム)
  • 自分への思いやり(セルフコンパッション)
IMPACT

イネーブリングが本人と家族に与える影響

イネーブリングは関わる全員に影響を与えます。問題を抱える本人だけでなく、支援しているイネーブラー自身、そして家族全体の健康に深刻な影響を及ぼします。

本人への影響

問題を抱える本人への影響

イネーブリングは、短期的には問題を抱える人を「救っている」ように見えますが、長期的には回復の機会を奪い、問題をより深刻にさせることがあります。

📉
回復意欲の低下
問題の結果から守られ続けることで、変化の必要性を実感しにくくなります。「困ったら助けてもらえる」という学習が成立し、自ら変わろうとする動機が薄れていきます。
🧩
自己効力感の喪失
自分で問題を解決する経験を奪われ続けると、「自分には何もできない」という無力感が強まります。依存が深まるほど、自己効力感(自分はやれるという感覚)は失われていきます。
⚖️
問題の慢性化・悪化
適切な介入なしに問題が続くことで、深刻さが増していきます。アルコール依存症であれば健康被害や社会的損失が積み重なり、ギャンブル依存であれば借金が膨らみ続けます。
🚪
真の問題から目を背ける
イネーブリングによって問題の表面的な症状のみが抑えられ、根本的な原因(トラウマ、精神疾患、ストレスなど)に向き合う機会が遠ざかります。
⚠️
「底を打つ」ことの重要性依存症の回復においては、「底を打つ(自分が本当に困った状態になる)」ことが変化への動機につながることがあります。イネーブリングはこの「底を打つ」機会を繰り返し先送りにしてしまいます。
イネーブラーへの影響

支援者(イネーブラー)自身への影響

イネーブリングをしている人は、「相手のために」行動しているため、自分自身が受けているダメージに気づきにくい傾向があります。しかし長期にわたるイネーブリングは、支援者自身の心身の健康に深刻な影響を与えます。

🔋
慢性的な疲弊・燃え尽き
問題のある人のために自分の時間・エネルギー・お金を使い続けることで、慢性的な疲労と燃え尽き症候群(バーンアウト)に陥るリスクが高まります。
😢
精神的健康の悪化
常に問題を抱えた人の状態を心配し、コントロールしようとすることで、不安、抑うつ、睡眠障害などのメンタルヘルス問題が生じることがあります。
👤
自分自身のニーズの無視
相手のために動くことに全力を注ぐあまり、自分自身の心身の健康、趣味、社会的関係などを長期にわたって後回しにしてしまいます。
💔
関係の歪み・悪化
イネーブリングによって形成された関係は、本来の対等なパートナーシップとは大きく異なります。一方が常に「世話をする人」、もう一方が「世話をされる人」という固定化した役割が関係を歪ませます。
😤
蓄積した怒りと怨恨
表面上は献身的に支援しながら、内心では「これだけやっているのに変わらない」という怒りと怨恨が蓄積していきます。この感情が爆発したり、関係全体の崩壊につながることもあります。
🧱
社会的孤立
問題のある家族や友人のことを他人に相談できず、「恥ずかしい」「迷惑をかけたくない」と抱え込んだ結果、徐々に社会的なつながりが失われることがあります。
子どもへの影響

家庭内の子どもへの影響

問題行動のある親とイネーブリングをする親がいる家庭で育つ子どもたちは、独特の影響を受けます。機能不全家族の中での成長は、子どもの心理的発達に長期的な影響を残すことがあります。

🎭
役割の固定化
英雄、スケープゴート、道化師、迷子などの固定された役割を強いられ、本来の自分らしさを発揮できなくなる。
😰
慢性的な不安の発達
「今日は何が起きるかわからない」という家庭環境の中で、慢性的な不安感と過覚醒状態が習慣化する。
🔮
問題パターンの世代間継承
「助けることが愛情」「自己犠牲が美徳」といった価値観を学び、大人になってから自分もイネーブリングを繰り返しやすくなる。
💔
愛着障害のリスク
不安定な家庭環境は安定した愛着形成を妨げ、大人になってからの対人関係・親密な関係に困難を生じさせることがある。
ACOA(Adult Children of Alcoholics / 機能不全家族で育った成人)向けの自助グループやカウンセリングは、幼少期の経験を処理し、新しい関係パターンを身につけるための有効な支援です。
RECOVERY

イネーブリングから回復するために

イネーブリングをやめることは、相手を見捨てることではありません。相手の力を信じ、自分自身を大切にする選択です。回復は一夜にして起こるものではなく、一歩一歩のプロセスです。

回復のステップ

イネーブリングから抜け出す6つのステップ

イネーブリングのパターンから抜け出すには、段階的なアプローチが有効です。焦らず、専門家の力を借りながら進めることが大切です。

STEP 01
イネーブリングに気づく
回復の第一歩は、自分がイネーブリングをしていることを認識することです。「私は相手を本当に助けているのか、それとも問題を維持させているのか」という問いを自分自身に向けましょう。長年のパターンは無意識に行われるため、気づくこと自体に大きな勇気と自己洞察が必要です。ジャーナリング(日記)や信頼できる人との対話が気づきを促します。
認識
STEP 02
境界線を設定する
「自分はどこまで関われるか」という限界(境界線)を明確にし、相手にも伝えることが重要です。境界線は相手を罰するためではなく、自分を守り、健全な関係を作るためのものです。最初は「冷たい人間に思われる」「関係が壊れるかもしれない」という恐怖が生じますが、適切な境界線は長期的に双方の健康を守ります。
線引き
STEP 03
自分のサポートを得る
イネーブリングから抜け出すためには、支援者自身がサポートを受けることが不可欠です。アラノン(Alanon)やナラノン(Naranon)などの自助グループ、カウンセリング、信頼できる人との対話などが助けになります。「相手の問題を解決しようとするのではなく、自分自身の回復に集中する」という視点の転換が鍵です。
自助・専門援助
STEP 04
問題は本人のものと認識する
どれだけ愛しているとしても、問題を抱えているのは本人であり、その問題を解決できるのも本人だけです。代わりに解決しようとすることは、相手の成長の機会を奪うことになります。「問題を持つのは本人で、本人が解決の主体」という認識を持つことが、真の支援への転換点となります。
視点の転換
STEP 05
一貫性を保つ
新しい行動パターンを確立するには時間がかかります。境界線を設定しても、相手が「前みたいにやってくれないの?」と反発することがあります。また自分自身も「やっぱり助けてあげたほうがいいかも」と揺れ動くことがあります。専門家のサポートを受けながら、一貫した行動を継続することが、長期的な変化の鍵です。
継続
STEP 06
専門的サポートを活用する
イネーブリングが深刻な依存症(アルコール依存、薬物依存、ギャンブル依存など)と関連している場合、専門的な医療・心理支援が不可欠です。依存症専門の医療機関、家族支援プログラム、カウンセリングなどを活用しましょう。一人で抱え込まず、専門家の助けを借りることが回復を大幅に早めます。
専門援助
自己ケア

支援者自身のセルフケアの重要性

イネーブリングから回復する上で、最も見落とされがちなのが「支援者自身のセルフケア」です。相手のことを心配するあまり、自分自身の心身の状態を後回しにし続けることが、燃え尽き症候群や深刻なメンタルヘルス問題につながります。

🧘
自分の感情と向き合う時間
日記、瞑想、カウンセリングなどを通じて、自分自身の感情を認識し、表現する練習を続けましょう。
👥
自助グループへの参加
同じ経験を持つ仲間と分かち合う場は、孤独感を解消し、新しい視点を得る機会になります。
🌿
趣味・楽しみの時間を確保
「相手のため」ではなく「自分のため」の時間を意図的に作ることが、心の回復に不可欠です。
🏃
身体的健康の維持
睡眠、食事、運動など基本的な身体ケアを怠らないことが、精神的な強さの基盤となります。
🗣
信頼できる人に話す
秘密を抱え込まず、信頼できる人(友人、支援者、専門家)に状況を打ち明けることが助けになります。
📚
情報を学ぶ
依存症やイネーブリングについて学ぶことで、自分の行動パターンへの理解が深まり、変化の動機になります。
CRAFT

「CRAFT」——効果的なコミュニケーション技法

CRAFT(Community Reinforcement and Family Training)は、依存症の家族向けに開発された、科学的に効果が実証されている支援アプローチです。イネーブリングをやめながら、依存症の人が治療につながるよう動機づけていく方法論を学べます。

CRAFT
コミュニケーションスキルの改善
怒りや批判ではなく、落ち着いた具体的なコミュニケーションを学びます。
CRAFT
強化と消去
望ましい行動(断酒・節酒など)を強化し、問題行動を強化しない方法を練習します。
CRAFT
問題解決スキル
危機的状況への対処法、安全確保の方法を学びます。
CRAFT
支援者自身の生活の改善
支援者自身の生活の質を高めることが、相手への影響力を高めることを学びます。
CRAFTは依存症専門の医療機関や支援施設で学ぶことができます。家族向けプログラムが提供されている施設を探してみてください。
SUPPORT

支援の受け方——一人で抱え込まないために

イネーブリングの問題を抱えているのはあなただけではありません。同じ経験を持つ仲間や専門家のサポートを活用することで、孤立せずに前を向いていけます。

利用できる支援

イネーブラーが利用できる支援リソース

一人で抱え込まずに利用できる、家族・友人向けの支援リソースを紹介します。同じ経験を持つ仲間と話せる自助グループは、孤立感の解消に特に効果的です。

  • アラノン(Al-Anon)
    アルコール依存症の家族・友人のための自助グループ。世界中に支部があり、日本でも各地で定期的にミーティングが行われています。同じ経験を持つ仲間と話すことで、孤立感が解消され、新しい視点を得ることができます。https://www.al-anon.or.jp/
  • ナラノン(Nar-Anon)
    薬物依存症の家族・友人のための自助グループ。12ステッププログラムをベースに、家族がどう自分自身の回復に取り組むかを学べる場です。
  • ギャマノン(Gam-Anon)
    ギャンブル依存症の家族・友人のための自助グループ。ギャンブル依存症によって影響を受けた家族が集まり、互いの経験を分かち合います。
  • 家族向けカウンセリング
    依存症専門のカウンセラーや精神科医に相談することで、専門的な視点から家族全体のパターンを分析し、具体的な対処法を学ぶことができます。
専門家への相談

こんな時は専門家に相談してください

以下のような状況に当てはまる場合は、一人で抱え込まず、早めに専門家のサポートを求めることをお勧めします。

  • 自分または家族に身体的な安全のリスクがある(暴力、自傷、過量服薬など)
  • 精神的な疲弊が激しく、日常生活に支障が出ている
  • うつ症状・不安症状・睡眠障害が持続している
  • 問題のある家族の言動により、自分が人格を否定された感覚がある
  • 一人でイネーブリングをやめようとしたが、どうしても繰り返してしまう
  • 子どもが家族の問題行動に巻き込まれ、精神的な影響を受けている
💡
「相談するほどのことではないかも」と思う必要はありません。あなたが感じている苦しさは、十分に支援を受ける理由になります。ココトモ(チャット相談)でも、お気持ちをお話しいただけます。

一人で抱え込まないで。
相談してみませんか。

「助けたいのに、どうしたらいいかわからない」——その思いを、誰かに話してみませんか。ココトモのチャット相談で、お気持ちをお聴かせください。

今すぐ話したい方へ——相談窓口
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いのちの電話0120-783-55624時間・無料
よりそいホットライン0120-279-33824時間・無料

このページの情報は、医師による診断や治療に代わるものではありません。症状が気になる場合は、心療内科・精神科への受診をご検討ください。

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