スマホゲーム依存とは?
ガチャ課金・ゲーム障害の症状・脳のメカニズム・治療法を徹底解説
「気づいたら何時間もゲームをしていた」「ガチャが止められない」「学校や仕事に支障が出ている」——WHOがICD-11で「ゲーム行動症」を正式な疾患として認定したスマホゲーム依存について、メカニズム・症状・ガチャ課金の特殊性・治療法・回復のステップまで徹底解説します。
スマホゲーム依存とは
スマホゲーム依存は、スマートフォンのゲームアプリの使用をコントロールできなくなり、日常生活に深刻な支障をきたしているにもかかわらず、ゲームを続けてしまう状態。WHOはICD-11で「ゲーム行動症」を正式な疾患として認定しました。
スマホゲーム依存の定義
スマホゲーム依存とは、スマートフォンのゲームアプリの使用をコントロールできなくなり、日常生活(学業・仕事・人間関係・健康)に深刻な支障をきたしているにもかかわらず、ゲームを続けてしまう、またはエスカレートさせてしまう状態を指します。ゲーム依存はスマートフォンに限った問題ではありませんが、いつでもどこでも手元にあるスマホの特性が依存のリスクを特に高めています。
WHO(世界保健機関)は2019年にICD-11(国際疾病分類第11版)において「ゲーム行動症(Gaming Disorder)」を正式な疾患として収載しました(2022年1月発効)。これにより、ゲーム依存は「意志の弱さ」や「単なる遊びすぎ」ではなく、治療が必要な医学的状態であることが国際的に認められました。
WHO・ICD-11による診断基準
ICD-11では、ゲーム行動症は持続的または反復的なゲーム行動(オンラインまたはオフライン)に加えて、以下の条件を満たす場合に診断されます。
- コントロールの喪失ゲームの開始・頻度・強度・持続時間・終了・状況に関するコントロールができない。「あと5分」が1時間になり、「今日は控えよう」が気づけば何時間もプレイしている状態。
- 優先順位の逆転他の生活上の関心事や日常活動よりもゲームの優先度が著しく高くなっている。食事・睡眠・入浴・勉強・仕事よりもゲームが優先される状態。
- 問題の継続・エスカレーションゲームにより否定的な結果(学業不振・失職・健康問題・人間関係の破綻など)が生じているにもかかわらず、ゲームを続ける、またはエスカレートさせる。
- 持続期間上記の行動パターンが12か月以上持続している場合に診断される。ただし、すべての症状が存在し重度の場合はより短い期間でも診断可能。
スマホゲーム依存の疫学
ゲーム依存の有病率は調査によって幅がありますが、一般的には人口の1〜10%程度とされています。日本においては、厚生労働省の研究班(2019年)の調査で、ネット依存が疑われる中高生が推計93万人に上るとされ、そのうち多くがゲーム使用に関連していると指摘されています。
スマホゲーム依存は、従来のPC・コンソールゲーム依存とは異なる特徴を持ちます。スマホは24時間手元にあり、通勤・通学中や休憩時間など「隙間時間」にもプレイでき、プッシュ通知やログインボーナスなどの仕組みがプレイを促します。また、ガチャ(ランダム型アイテム提供方式)や課金システムなど、ギャンブル的要素を含む点も大きな特徴です。
年齢・性別では、10〜20代の若年層に多く見られますが、30〜40代のスマホゲーム依存も増加傾向にあります。男性にやや多いとされていますが、スマホゲームの普及により性差は縮小傾向にあるとする研究もあります。
スマホゲーム依存が深刻化する社会的背景
スマホゲーム依存が社会的問題として注目される背景には、以下のような要因があります。
- スマホの普及日本の個人のスマートフォン保有率は約80%を超え、中学生でも7割以上がスマホを保有。「はじめてのゲーム」がスマホゲームという世代が増えている。
- 基本無料(F2P)モデルの普及多くのスマホゲームは「基本プレイ無料」で誰でも気軽に始められる。一方で課金(ガチャ・アイテム購入)で収益を上げる構造であり、課金を促すゲームデザインが依存を助長する面がある。
- コロナ禍の影響COVID-19パンデミックによる外出自粛や在宅時間の増加により、世界的にゲーム使用時間が増加。ゲーム依存の相談件数も急増した。
- ソーシャル要素の強化現代のスマホゲームはSNS機能・チャット機能・マルチプレイ機能が充実しており、ゲーム内の人間関係が「やめられない理由」になるケースが増えている。
スマホゲーム依存の脳科学的メカニズム
なぜスマホゲームはこれほど「やめられない」のか。脳の報酬系・前頭前皮質の機能低下・変動比率強化スケジュール・負の強化——4つの神経・心理メカニズムが複雑に絡み合います。
ゲーム依存を生む脳の4つのプロセス
スマホゲーム依存の中核には4つの神経・心理メカニズムがあります。タブを切り替えて詳細を確認してください。
中脳辺縁系ドーパミン経路(VTA→側坐核)が過剰活性化。レベルアップ、ステージクリア、レアアイテム獲得、対戦勝利でドーパミンが放出され、強烈な快感と達成感をもたらす。ドーパミンは「期待と動機づけの物質」で、ガチャ前の期待感の段階で既に放出される。長期依存ではD2受容体のダウンレギュレーションが起こり、より多くのプレイ・より強い刺激(高額課金)が必要となる「耐性」が形成される。
衝動抑制・意思決定・将来計画・自己コントロールを司る前頭前皮質(PFC)の活動低下、灰白質の減少が脳画像研究で報告。「やめなきゃと分かっているのにやめられない」を脳レベルで説明する。前頭前皮質の完全な成熟は25歳頃で、報酬系が10代前半で活発化するのに対し抑制系は追いついていない——このアンバランスが若者を依存に陥りやすくする。
報酬が「不定期に、予測不可能なタイミングで」提供されると行動が最も強く維持されるという学習理論の原理。ガチャはこの応用で、何が出るか分からない不確実性がドーパミン放出を最大化する。実際に報酬を受け取る瞬間よりも「次は当たるかも」の期待の瞬間のほうがドーパミン放出量が多く、スロットマシン・パチンコと全く同じ脳メカニズム。
現実生活でのストレス・不安・孤独感・退屈感・自己否定感などのネガティブな感情を、ゲーム没頭で一時的に回避・軽減できる体験が、ゲーム使用行動を強化する(負の強化)。スマホは手軽にいつでもアクセスでき、即座にストレスから逃れる手段として機能する。背景にうつ病・不安障害・ADHD・社会不安障害・いじめ・家庭の問題などが存在することが多い。
スマホゲームに組み込まれた依存促進メカニズム
スマホゲームには、行動科学に基づいた以下の依存促進メカニズムが組み込まれています。
- ログインボーナス毎日ログインすることに報酬を与え、「1日でも休むと損をする」という心理を生む。
- 期間限定イベント「今だけ」「限定」という希少性の演出が、FOMO(取り残されることへの恐怖)の心理を刺激する。
- 体力(スタミナ)システム一定時間プレイすると体力が尽き、回復を待つか課金で回復する仕組み。「もう少しプレイしたい」欲求と課金誘導を同時に達成。
- ソーシャルプレッシャーギルドイベントや協力プレイで「仲間に迷惑をかけたくない」という社会的義務感を醸成する。
- 進行度の可視化レベル・ランキング・コレクション率など、「もう少しで完成」「あと少しで次のランク」という達成感への期待を持続させる。
- 天井システムと「救済」設計「○○回引けば確定」という天井は一見救済に見えるが、天井まで引かせるための課金誘導でもある。
スマホゲーム依存の症状・兆候
「これって依存かも?」——身体・心理・行動の3領域で生じる症状と、5段階の進行モデルを知ることで、早期の気づきと対処が可能になります。
身体的な症状
心理・精神的な症状
行動面の変化
スマホゲーム依存の5段階
スマホゲーム依存は突然発症するものではなく、段階的に進行します。各段階での特徴を理解することで、早期の気づきと対処が可能になります。
ガチャ・課金依存の特殊性
ガチャ(ランダム型アイテム提供方式)の心理メカニズムはギャンブルと酷似します。「初めは月1,000円のつもりが、気づけば数十万円」——課金依存が進む心理的要因と具体的な対策を整理します。
ガチャを引く時に脳内で起こる4つのフェーズ
ガチャの本質は、不確実な報酬に対してお金(または時間)を投じるという行為であり、その心理的メカニズムはギャンブルと酷似しています。ガチャを引く際、脳内では以下のようなプロセスが起こっています。
- 期待フェーズガチャ画面を開き、「今回こそ当たるかも」と期待する段階。ドーパミンが急上昇し、興奮と期待で心拍数が上がる。
- 演出フェーズガチャの演出(光り方・エフェクト・効果音の変化)が結果を予告するように設計されており、期待と不安が最高潮に達する。この「焦らし」がドーパミン放出をさらに増幅させる。
- 結果フェーズ(当たり)目当てのアイテムが出た場合、強烈な快感(ドーパミン急上昇)が生じ、この体験が脳に強く記憶される。「もう一回あの快感を味わいたい」という渇望が生まれる。
- 結果フェーズ(はずれ)はずれた場合は落胆するが、「次こそは」という期待がすぐに生じ、再びガチャを回す行動につながる。これは「ニアミス効果」と呼ばれ、もう少しで当たりそうだった体験が逆説的に行動を強化する。
課金依存が進行しやすい6つの心理的要因
ガチャを中心とした課金依存は経済的問題を直接引き起こす点で特に深刻です。初めは「月に1,000円くらい」のつもりが、気づけば月に数万円・数十万円の課金をしているケースは珍しくなく、生活費を課金に充てる・借金をする・家族のお金を持ち出すといった深刻な事例もあります。
課金依存の予防と対策——5つの具体策
課金がエスカレートする前に、以下の具体的な対策を講じることが重要です。
- 課金の「見える化」課金履歴を定期的に確認し、月ごとの合計額を紙やスプレッドシートに記録する。数字で「見える化」することで使いすぎに気づきやすくなる。
- 課金予算の設定月の課金上限を明確に決め、それを超えたら絶対に課金しないルールを設ける。各ストアのペアレンタルコントロール機能やスクリーンタイム機能を活用。
- 決済手段の制限クレジットカード情報を端末から削除し、課金にはプリペイドカードを使用する。プリペイドなら物理的に上限が決まるため衝動的な高額課金を防げる。
- 冷却時間の導入ガチャを引きたいと思った時、すぐに引かず24時間待つルールを設ける。衝動は時間とともに減衰するため、翌日にはそれほど引きたくなくなっていることが多い。
- 確率の冷静な理解ガチャの排出確率を冷静に計算する。例えば確率1%のキャラを引くのに期待値は100回(≒約30,000円)。「100%当たるまで」の金額を事前計算し他の用途と比較する。
スマホゲーム依存のリスク要因
誰がゲーム依存になりやすいのか。個人・環境・ゲームデザインの3つのレベルでリスク要因を整理することで、予防と早期対応のヒントが見えてきます。
個人のリスク要因
- 年齢子ども・思春期(10〜18歳)は前頭前皮質の発達が未熟で衝動コントロール能力が低いため最もリスクが高い年代。20代前半も引き続きリスクが比較的高い。
- 精神疾患の併存うつ病、不安障害、ADHD、社会不安障害、ASD(自閉スペクトラム症)などの精神疾患がある場合、ゲーム依存のリスクが高まる。ゲームがこれらの症状の自己治療として機能するため。
- 低い自尊感情現実世界での自己評価が低い人が、ゲーム内での成功や承認によって自己価値感を補おうとするケース。
- 対人関係の困難現実の人間関係に困難を感じている人が、ゲーム内の(比較的リスクの低い)人間関係に居場所を見出すケース。
- 衝動性衝動的な性格傾向のある人は、ゲームの即時的な報酬に引き込まれやすい。
- ストレス対処スキルの不足ゲーム以外のストレス対処法を持っていない人は、ストレス時にゲームに頼りやすい。
環境のリスク要因
- 家庭環境親子関係の不和、過干渉または放任、家庭内の不安定さ(虐待・DV・両親の離婚など)は子どものゲーム依存リスクを高める。
- 学校・社会でのストレスいじめ、友人関係のトラブル、学業のプレッシャー、進路への不安などが現実逃避としてのゲーム使用を促進。
- ゲームへのアクセスの容易さ自室に個人のスマホがある、Wi-Fi環境が整っている、親の監督がないなど、ゲームに制限なくアクセスできる環境。
- 周囲の影響友人やクラスメートの間でゲームが流行している場合、「仲間外れになりたくない」という社会的圧力がゲーム開始・継続の動機に。
- 他の余暇活動の不足部活動・習い事・趣味などゲーム以外の楽しい活動や居場所がない場合、ゲームへの依存度が高まりやすい。
ゲームデザインのリスク要因
- ガチャ(ランダム報酬)変動比率強化スケジュールにより、最も強い行動維持力を持つ報酬設計。
- ソーシャル要素ギルド・チーム・ランキング・PvP(対人戦)などの社会的競争と協力の仕組み。
- エンドレスなコンテンツ更新定期的な新キャラ・新イベント・新ストーリーの追加により「やり尽くした」と感じる機会がない。
- ログインボーナス/デイリーミッション毎日プレイすることに報酬を与え、習慣化を促す設計。
- 損失回避デザイン「ログインしないと○○を逃す」という損失回避心理を利用した設計。
- プッシュ通知「体力が回復しました」「イベント開始!」「フレンドが助けを求めています」など、ゲームへの復帰を常に促す通知。
子ども・若者のスマホゲーム依存
子ども(特に10〜18歳)の脳は発達途上で、ゲーム依存の影響を最も受けやすい年代です。思春期特有の発達課題との関連、年齢別のスクリーンタイム目安を知ることが、健全な使用への第一歩です。
子どものゲーム依存の特徴
子ども(特に10〜18歳)のスマホゲーム依存は、大人とは異なるいくつかの特徴があります。
- 脳の発達への影響発達途上の脳は可塑性が高く、ゲームへの依存が脳構造に長期的な影響を与える可能性が指摘されている。特に前頭前皮質の発達が阻害されるリスクがあり、将来的な自己制御能力や意思決定能力に影響する可能性。
- 不登校との関連日本ではゲーム依存と不登校の関連が大きな問題に。「学校に行きたくない→ゲームに逃避→昼夜逆転→さらに学校に行けない」という悪循環が形成されやすい。
- 社会性発達への影響対面でのコミュニケーション機会の減少により社会的スキルの発達が阻害される可能性。ゲーム内のコミュニケーションは限定的で、非言語コミュニケーション(表情・声のトーン・身振り)を学ぶ機会にならない。
- 身体発達への影響運動不足・睡眠不足・栄養の偏りは成長期の子どもにとって特に深刻。視力低下・肥満・骨密度の低下などのリスク。
- 課金トラブル親のクレジットカードを無断使用してのゲーム課金が社会問題化。国民生活センターには子どものオンラインゲーム課金に関する相談が年間数千件寄せられている。
思春期特有の心理とゲーム依存
思春期は、アイデンティティの確立・仲間集団への帰属・親からの自立といった重要な発達課題に取り組む時期です。ゲームがこれらの発達課題と結びつくことで、依存が深まることがあります。
- アイデンティティ現実世界でのアイデンティティが確立しにくい(自分に自信がない、何が得意か分からない)場合、ゲーム内での強いキャラクターや高いランキングが「自分の価値」のように感じられる。
- 仲間への帰属同じゲームをプレイすることがクラスメートとのコミュニケーション中心になっている場合、「ゲームをやめる=仲間から外れる」と感じる。
- 自己効力感学業や対人関係で自己効力感(「自分はできる」感覚)が得にくい場合、ゲーム内での成功体験が唯一の自己効力感の源泉になることがある。
- 感情調整思春期は感情の波が大きい時期だが、ゲームが感情調整の主な手段(イライラ時にゲームで発散、悲しい時にゲームで忘れる)になると、適切な感情調整スキルが育ちにくい。
年齢別のスクリーンタイム目安
各国の専門機関が推奨するスクリーンタイム(娯楽目的のスマホ・ゲーム使用時間)の目安は以下の通りです。ただし一般的な目安であり、個々の状況に応じて柔軟に判断する必要があります。
スマホゲーム依存セルフチェック
過去6か月の状況を振り返り、20の質問でいまの状態を確認しましょう。このチェックリストは自己理解のための参考であり、医学的な診断に代わるものではありません。
コントロールに関する質問
- 1「あと5分だけ」のつもりが30分以上になることが頻繁にある
- 2ゲーム時間を減らそうとしたが、うまくいかなかった
- 3食事や入浴の時間を削ってまでゲームをすることがある
- 4寝る直前までゲームをしており、睡眠時間が減っている
- 5通勤・通学中、授業中・勤務中にもゲームのことが気になる
課金に関する質問
- 6月の課金額が自分で設定した予算を超えることがある
- 7ガチャを引く前にワクワクして止められない感覚がある
- 8課金した後に後悔するが、また課金してしまう
- 9課金額を家族や友人に正直に言えない
- 10生活費を削ってまで課金したことがある
生活への影響に関する質問
- 11ゲームが原因で遅刻、欠勤、不登校になったことがある
- 12成績や仕事のパフォーマンスが低下している
- 13ゲーム以外の趣味や活動への興味が薄れた
- 14家族や友人との対面での交流時間が明らかに減った
- 15ゲームのせいで家族と口論になることがある
心理面に関する質問
- 16ゲームができない時にイライラする、落ち着かない
- 17ゲーム内の出来事で現実の気分が大きく左右される
- 18ゲームをしていない時もゲームのことを考えている
- 19現実の生活よりもゲームの世界のほうが楽しいと感じる
- 20ゲームをしている時間が唯一の安らぎだと感じる
スマホゲーム依存の治療アプローチ
ゲーム依存は治療可能です。認知行動療法(CBT)を中核に、家族療法・動機づけ面接法・薬物療法・入院型プログラムまで、エビデンスのある5つの治療アプローチを解説します。
エビデンスのある5つの治療アプローチ
いずれの治療も「ゲームを取り上げる」のではなく、本人の自律性を尊重しながら依存の背景にある問題に取り組むことを基本とします。
回復を支える日常の習慣
ゲームに頼らない生活を取り戻すための7つの実践。デジタル環境の整備から代替活動・生活リズム・運動・マインドフルネス・社会的つながり・将来ビジョンまで、無理なく続けられる方法を紹介します。
日常で実践できる、7つの習慣
完璧を目指す必要はありません。できそうなものから一つずつ取り入れてください。脳のドーパミンシステムは時間をかければ必ず回復します。
家族・周囲の方へ
大切な人のスマホゲーム依存に向き合う家族・周囲の方へ。「やってはいけないこと」と「効果的なサポート」を理解し、家族自身のケアも忘れないでください。
してはいけないこと・効果的なサポート
ゲーム依存の家族への接し方には、回復を助けるものと逆に状態を悪化させるものがあります。違いを意識してみましょう。
家族自身のケア——自分を責めないで
家族のゲーム依存に向き合うことは大きなストレスです。特に子どものゲーム依存については「自分の育て方が悪かったのでは」と自責の念にかられる親御さんも少なくありません。
しかし、ゲーム依存は子育ての失敗ではありません。ゲームデザインの巧みさ・社会環境・本人の特性など複合的な要因が関わっています。過度な自責はご家族自身の心身の健康を損ない、長期的なサポートの質を下げてしまいます。
- 自助グループへの参加同じ悩みを持つ親の会やオンラインコミュニティに参加する。
- 家族相談の利用精神保健福祉センターの家族相談を利用する。
- 自分の時間の確保自分自身の趣味やリフレッシュの時間を確保する。
- 協力体制づくり配偶者や家族と協力し、一人で抱え込まない。
誤解と真実・よくある質問
スマホゲーム依存にまつわる代表的な誤解と真実、そして相談現場でよく寄せられる質問をまとめました。正しい理解が回復と予防の第一歩です。
スマホゲーム依存にまつわる6つの誤解と真実
真実:脳の報酬系(ドーパミン経路)の過剰活性化と前頭前皮質の機能低下という脳の機能変化に基づく状態。WHOがICD-11で正式な疾患認定したのは「意志の問題」ではなく「医学的状態」であることを示す。スマホゲームは行動科学に基づいた依存促進設計がなされており、「やめられない」のは脳とゲームデザインの相互作用の結果。
真実:物理的に取り上げても根本的解決にはならない。背景にはストレス対処スキル不足・社会的孤立・精神疾患併存・家庭や学校の問題など複合的要因がある。ゲームだけを取り除いても根本問題が解決されなければ、別の依存(SNS・動画・買い物など)に移行するリスク。
真実:課金の有無だけで判断されない。無課金でも長時間プレイにより睡眠不足・学業低下・社会的孤立・身体健康問題が生じている場合は依存状態。逆に少額課金でも生活に支障がなければ問題ない。問題の本質は「ゲームによって生活の質が損なわれているかどうか」。
真実:自然に治るケースもあるが、治療なしに改善しないケースも多い。背景に精神疾患や社会的問題がある場合それらが解決されなければ依存も持続。子ども時代のゲーム依存が不登校・学歴中断・社会性発達阻害につながり、成人後の社会適応に長期的影響を及ぼす可能性も。早期介入が重要。
真実:プロのeスポーツ選手は長時間プレイするが、計画的な練習でありコーチやチームの管理下で行われる。依存症との違いは「コントロールの有無」「生活の質への影響」。プロは練習時間を管理し食事・運動・休息のバランスを取り職業的目標を持つ。一方依存ではコントロールを失い生活の質が低下しているのにプレイを続ける。「長時間=依存」ではない。
真実:適度なゲーム使用には認知機能の向上(空間認識・反応速度・問題解決能力)、ストレス解消、社会的つながり(オンライン友人関係)、創造性の刺激などのメリットがあるとする研究もある。問題は「ゲームそのもの」ではなく「コントロールを失った過度なゲーム使用」。全否定ではなく健全な付き合い方の模索が大切。
よくある質問
A. 長時間プレイしているだけでは依存症とは言えません。WHO(ICD-11)の診断基準では、①ゲームのコントロールができない、②生活の中でゲームの優先度が著しく高い、③問題が起きているにもかかわらずゲームを続ける・エスカレートさせる、という条件を満たし、これが12か月以上(重症なら短期間でも可)持続している場合に「ゲーム行動症」と診断されます。つまり生活への悪影響があるかどうかが判断の鍵です。趣味として楽しく長時間プレイしているが仕事や学業・人間関係に問題がなくやめようと思えばやめられる場合は依存症には該当しません。
A. ガチャ課金が止められない状態はギャンブル依存と類似した脳のメカニズムが働いている可能性があります。まず即効的な対策として、①クレジットカード情報をアプリから削除、②App Store/Google Playの購入にパスワード認証を毎回要求する設定、③月の課金上限を設定(各ストアの機能やフィルタリングソフトを活用)、④課金総額を紙に書き出して「見える化」、⑤信頼できる人に状況を話す、ことから始めましょう。それでもコントロールできない場合は依存症の専門外来や精神保健福祉センターに相談を。課金依存は恥ずかしいことではなく、脳の報酬系が巧みに刺激された結果であり専門的な支援で改善できます。
A. スマホやゲーム機を突然取り上げることは本人にとって非常に強いストレスであり、暴力的な反応を引き起こすことがあります。これは「離脱症状」に近い反応です。急に取り上げるのではなく、①まず本人の話を聞きゲームの何が楽しいのかを理解、②一緒にルールを話し合い(親が一方的に決めるのではなく)段階的に使用時間を減らす、③ゲーム以外の楽しい活動を一緒に見つける、④約束が守れたら褒める、というステップが重要です。暴力がエスカレートする場合や不登校が長期化している場合は児童精神科やゲーム依存の専門外来への受診を検討してください。
A. ADHD(注意欠如・多動症)やASD(自閉スペクトラム症)のある方はゲーム依存のリスクがやや高いとする研究があります。ADHDの方は刺激追求傾向が強くゲームの即時的な報酬に惹かれやすい特性、ASDの方はゲーム内の予測可能なルールや限定的な社会的交流を好む傾向がありゲームの世界に没頭しやすい場合があります。ただし発達障害があるからといって必ずゲーム依存になるわけではなく、適切な環境調整や代替活動の確保によりリスクを軽減できます。発達障害が背景にある場合はゲーム依存だけでなく根本的な発達障害の支援も並行して行うことが重要です。
A. 必ずしも完全断ゲームが必要なわけではありません。アルコール依存症では「完全断酒」が基本ですが、ゲーム依存の場合は日常生活に支障のない範囲でのコントロール使用(適度なゲーム利用)を目標とするアプローチも有効とされています。ただし特定のゲーム(ガチャ要素のある課金ゲームなど)がトリガーとなっている場合はそのゲームからの完全離脱が必要な場合もあります。どのようなゴール設定が適切かは個人の状況によって異なり、治療者と相談しながら現実的で持続可能な目標を設定することが大切です。
A. オンラインゲームではギルド・クランなどのチームに所属し、仲間との協力プレイやコミュニケーションが大きな楽しみになります。「仲間に迷惑をかけたくない」「自分が抜けるとチームが成り立たない」という責任感や、ゲーム内の人間関係でしか得られない居場所感覚がやめられない大きな要因になることがあります。この場合ゲーム内の関係を否定するのではなく、現実世界でも安心できる人間関係や居場所を少しずつ増やしていくことが重要です。またチームメンバーに事情を正直に話しプレイ時間を制限する理解を得ることも一つの方法です。
A. 日本では久里浜医療センター(神奈川県)が国内初のゲーム依存専門外来として知られています。そのほかにも各地域の依存症専門医療機関・精神保健福祉センター・児童精神科・心療内科などでも相談・治療を受けられます。厚生労働省のウェブサイトでは都道府県ごとの依存症専門医療機関の一覧が公開されています。またまずは精神保健福祉センター(各都道府県に設置、無料)に電話相談することをお勧めします。専門外来の待ち時間が長い場合もあるので、早めの相談が大切です。
A. 違います。ゲーム依存は脳の報酬系(ドーパミン神経回路)が過剰に活性化され前頭前皮質による衝動コントロール機能が低下した状態です。特にスマホゲームは変動比率強化スケジュール(ガチャ)・ソーシャルプレッシャー(ログインボーナス・ギルドイベント)・エンドレスなコンテンツ更新など依存を促進する巧みなゲームデザインが組み込まれています。「やめられない」のは意志の問題ではなく脳の機能変化とゲームデザインの相互作用による結果です。WHOがゲーム行動症を正式な疾患として認定したのもこれが医学的な問題であることを示しています。
「やめたいのにやめられない」
そんなあなたへ
スマホゲーム依存は意志の弱さではなく、脳と巧妙なゲームデザインの相互作用によるものです。一人で抱え込まず、ココトモに話してみませんか。ご家族からの相談も歓迎です。
このページの情報は、医師による診断や治療に代わるものではありません。症状が気になる場合は、心療内科・精神科への受診をご検討ください。
