メンタルヘルス用語辞典 · 胃痛

胃痛とは?
原因・ストレス・自律神経・神経性胃炎・機能性ディスペプシアとの関係をわかりやすく解説

「仕事のプレッシャーが強くなると胃が痛む」「検査では異常なしと言われたのに胃の不調が治らない」——。胃痛は身近な症状ですが、ストレス・自律神経・不安障害・うつ病など、メンタルヘルスと深く関わります。原因・メカニズム・治療法・セルフケア・受診の目安まで、心と体の両面から包括的に解説します。

ABOUT STOMACH PAIN

胃痛とは——定義と基本知識

胃痛は最もありふれた身体症状の一つですが、その原因はストレスや自律神経の乱れ、不安障害やうつ病といったメンタルヘルスの問題と深く関わっていることが少なくありません。

定義

胃痛の定義と感じ方のパターン

胃痛(いつう)は、医学的には「心窩部痛(しんかぶつう)」「上腹部痛」と呼ばれ、みぞおち(胸骨の下端)付近に感じる痛みや不快感のことです。「胃が痛い」と表現される場合でも、実際には胃だけでなく、十二指腸、食道下部、膵臓、胆嚢など、みぞおち周辺の臓器に原因があることもあります。

胃痛の感じ方には、原因疾患を推測する手がかりとなる、さまざまなパターンがあります。

キリキリした痛み
鋭い痛み。胃酸による刺激、胃けいれんが疑われます。
💢
シクシクした鈍い痛み
持続的な鈍痛。慢性胃炎、機能性ディスペプシアなどで多いタイプです。
💥
ズキズキする痛み
拍動性の痛み。炎症が強い場合に感じられます。
🪨
重苦しい感じ
胃もたれ、膨満感。胃の運動低下が関与しています。
🔥
灼熱感
胸やけのような焼ける感じ。逆流性食道炎、胃酸過多が疑われます。
🆘
差し込むような激しい痛み
急性の強い痛み。胃・十二指腸穿孔、急性膵炎など緊急性が高い状態です。
どのくらいの人に起こる?

胃痛は身近な症状——数字で見る実態

胃痛は最もありふれた身体症状の一つです。日本人を対象とした調査では、上腹部の症状(胃痛、胃もたれ、膨満感など)を経験したことのある人は、成人の約20〜30%にのぼるとされています。特にストレスとの関連では、いくつかの統計が注目されます。

50〜70%
胃痛で受診した人のうち、器質的異常が見つからない割合
10〜20%
日本人の機能性ディスペプシア有病率
2
ストレスの多い職場での発症率(報告)
40〜60%
不安障害・うつ病患者に消化器症状(胃痛含む)
日常生活への影響

胃痛が日常生活に与える影響

「胃痛くらいで大げさ」と思うかもしれませんが、慢性的な胃痛は生活の質を大きく低下させます。胃痛は次のような領域で日常を蝕みます。

🍽
食事
食べることへの恐怖、食欲低下、食事量の減少、栄養不足。
💼
仕事・学業
集中力の低下、痛みによるパフォーマンス低下、欠勤・欠席の増加。
🛌
睡眠
夜間の胃痛で目が覚める、痛みが気になって寝つけない。
😟
精神面
「何か重い病気かも」という不安、痛みの持続によるイライラやうつ状態。
👥
社会生活
会食を避ける、外出が億劫になる。
心と体の両面からのケアが必要特にストレスが原因の胃痛は、身体だけを治療しても改善しないことがあります。心と体の両面からアプローチすることで、改善が期待できます。
MECHANISM

胃痛のメカニズム——なぜ胃が痛くなるのか

ストレスは胃酸・粘膜・運動・感覚という4つのルートで胃痛を引き起こします。「ストレスで胃が痛い」は単なる比喩ではなく、科学的に証明された身体現象です。

攻撃因子と防御因子

胃の防御機構と攻撃因子のバランス

胃は強力な胃酸(pH 1〜2の強酸性)を分泌して食物を消化しますが、通常は胃の粘膜が粘液やアルカリ性の重炭酸イオンで保護されています。この「攻撃因子(胃酸・ペプシン)」と「防御因子(粘液・粘膜の血流・重炭酸イオン)」のバランスが保たれることで、胃は自分自身を消化してしまうことなく機能しています。

このバランスが崩れると、胃酸が粘膜を傷つけて炎症や潰瘍が生じ、胃痛として感じられます。ストレスは、攻撃因子を増強させると同時に防御因子を低下させるため、胃痛の大きな原因となります。

ストレスの経路

ストレスが胃痛を引き起こす4つの経路

ストレスが胃痛を引き起こす経路は主に以下の4つです。

🧪
胃酸分泌の変化
ストレスを感じると副交感神経(迷走神経)の活動が変化し、胃酸の分泌が乱れます。急性ストレスでは胃酸分泌が一時的に抑制されることがありますが、慢性ストレスでは胃酸の過剰分泌が起こりやすくなります。過剰な胃酸が胃粘膜を刺激して、キリキリとした痛みが生じます。
🛡
胃粘膜の防御力低下
ストレスにより交感神経が活性化すると、胃の血管が収縮して粘膜への血流が減少します。血流が減ると、粘液の分泌が減り、粘膜の修復能力も低下するため、胃酸に対して脆弱な状態になります。
胃の運動異常
ストレスは胃の蠕動運動に影響を与えます。胃の運動が亢進するとけいれん性の痛みが生じ、逆に運動が低下すると食べ物が胃に長くとどまり、膨満感やもたれ感として感じられます。
🧠
内臓過敏性(中枢性感作)
慢性的なストレスは、脳が胃腸からの信号を「痛い」と解釈する閾値を下げます。通常は痛みとして感じないような胃の伸展や運動でも、「胃が痛い」と強く感じるようになります。これが「内臓過敏性」と呼ばれる状態で、機能性ディスペプシアの重要なメカニズムの一つです。
脳腸相関

脳腸相関——心と胃をつなぐ4つの仕組み

脳と腸(消化管)は、迷走神経、ホルモン、免疫系、腸内細菌叢を介して双方向に密接なコミュニケーションをとっています。この「脳腸相関(brain-gut axis)」により、心理的なストレスが直接的に胃の機能に影響を与えます。

  • セロトニン全体の約90%が消化管に存在します。ストレスによるセロトニンの変動が胃の運動や感覚に影響します。
  • CRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)ストレス反応の中心物質。胃の運動抑制や内臓過敏性の亢進に関与します。
  • 迷走神経脳と消化管をつなぐ主要な神経。ストレスにより活動が変化し、胃酸分泌や胃の運動に影響を与えます。
  • 腸内細菌叢ストレスは腸内フローラのバランスを崩し、消化管の炎症や機能異常を促進します。
「気のせい」ではなく実際の身体現象「ストレスで胃が痛い」は単なる比喩ではなく、科学的に証明されたメカニズムによって実際に起こる身体現象です。心と胃は神経やホルモンを介して密接につながっています。
CAUSES

胃痛の原因——6つのカテゴリ

胃痛の原因は非常に多岐にわたります。ストレスから感染症、生活習慣、薬剤、機能性・器質性の疾患まで、6つのカテゴリで整理してみましょう。

原因の全体像

胃痛の原因——6つのカテゴリで整理

胃痛の原因は大きく以下の6つに分類できます。タブを切り替えて、それぞれの主な原因と特徴を確認できます。

😰ストレス・心理的要因

仕事のプレッシャー、人間関係、経済的不安、家庭の問題、環境変化など、さまざまなストレスが胃に影響します。

  • 慢性ストレス
  • 不安障害
  • うつ病
  • 過労
  • 睡眠不足
ストレス・心理

ストレス・心理的要因による胃痛

胃痛の原因として最も多いものの一つがストレスです。仕事のプレッシャー、人間関係のトラブル、経済的な不安、家庭の問題、環境の変化など、さまざまなストレスが胃に影響します。

  • 急性ストレス試験前、面接前、プレゼン前など、一時的に強いストレスがかかった時に急激に胃が痛みます。
  • 慢性ストレス長期間にわたるストレス(仕事の過重労働、人間関係の不和など)により、常に胃の調子が悪い状態が続きます。
  • 不安先のことを心配し続ける全般性不安障害や、特定の場面を恐れる社交不安障害に伴い、胃痛が慢性化します。
  • うつ病うつ病の身体化症状として胃痛が現れることがあります(仮面うつ病)。
  • 適応障害新しい環境への適応困難によるストレスが胃に集中して現れます。
ピロリ菌感染

ピロリ菌感染——慢性胃炎・潰瘍・胃がんの主因

ヘリコバクター・ピロリ菌は、胃の粘膜に住み着く細菌で、慢性胃炎や胃・十二指腸潰瘍、胃がんの主要な原因です。日本人の約35%(高齢者ではさらに高い割合)がピロリ菌に感染しているとされています。

  • ピロリ菌は胃粘膜に炎症を起こし、防御因子を低下させる
  • 胃酸の分泌パターンを変化させる
  • 除菌治療(抗菌薬+胃酸分泌抑制薬の組み合わせ)で根治が可能
  • 除菌により胃・十二指腸潰瘍の再発率が大幅に低下する
生活習慣

生活習慣による胃痛

日々の食習慣と嗜好品は、胃酸の分泌・粘膜の状態・運動機能に直接影響します。次のような要素は胃痛のリスクを高めます。

  • 暴飲暴食一度に大量に食べると胃が過度に膨張し、痛みが生じる。
  • 早食いよく噛まずに食べると胃への負担が増す。
  • 不規則な食事食事時間がバラバラだと胃酸分泌のリズムが乱れる。
  • カフェインコーヒー、紅茶、エナジードリンクは胃酸分泌を促進する。
  • アルコール胃粘膜を直接刺激して炎症を起こす。
  • 喫煙胃粘膜の血流を減少させ、粘液の分泌を低下させる。胃潰瘍のリスクを高める。
  • 辛い食べ物カプサイシンが胃粘膜を刺激する。
  • 食後すぐに横になる胃酸の逆流を招きやすい。
薬剤性

薬剤性の胃痛

薬の副作用で胃痛が起こることは非常に多いです。特に以下の薬には注意が必要です。

  • NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)ロキソプロフェン(ロキソニン)、イブプロフェン、ジクロフェナクなど。胃粘膜の防御因子であるプロスタグランジンの合成を阻害し、胃粘膜障害を引き起こします。
  • アスピリン低用量でも長期使用で胃粘膜障害のリスクがあります。
  • ステロイド(副腎皮質ホルモン)特にNSAIDsとの併用で胃潰瘍のリスクが大幅に増加します。
  • 抗菌薬一部の抗菌薬は消化管への副作用があります。
  • 鉄剤胃粘膜への直接的な刺激があります。
  • ビスホスホネート(骨粗鬆症治療薬)食道・胃粘膜への刺激があります。
⚠️
市販NSAIDsの使用に注意市販の痛み止め(NSAIDs)は手軽に使える分、胃への影響に注意が必要です。胃痛がある方がNSAIDsを使用する場合は、空腹時を避け、胃薬(PPIやH2受容体拮抗薬)を併用することを検討してください。
STRESS & AUTONOMIC

ストレス・自律神経と胃痛

自律神経のバランスの乱れは、胃痛の直接的な原因となります。コルチゾールなどのストレスホルモンも、慢性的に胃を傷つけます。

自律神経

交感神経と副交感神経の胃への影響

自律神経は交感神経と副交感神経の2つに分かれ、それぞれ胃に対して異なる影響を与えます。

項目
交感神経
活動モード
副交感神経
リラックスモード
胃の運動
抑制する
促進する
胃酸の分泌
抑制する
促進する
胃粘膜の血流
減少させる
増加させる
胃粘液の分泌
減少させる
増加させる
活性化する場面
ストレス、緊張、運動時
食後、リラックス時、睡眠時

ストレスにより交感神経が持続的に優位になると、胃粘膜の血流が減少し、粘液の分泌が低下します。一方で、ストレスの反動で副交感神経が急激に活性化すると、胃酸が過剰に分泌されます。このように、自律神経のバランスの乱れが胃痛の直接的な原因となります。

痛みのパターン

ストレス性の胃痛の5つのパターン

ストレスに関連した胃痛にはいくつかのパターンがあり、いつ・どのように痛むかで背景の自律神経状態が異なります。

ストレスを感じた時に即座に胃が痛む
交感神経の急激な活性化による胃のけいれんや血流低下。
ストレスが続いた後に胃が痛む
慢性的な自律神経の乱れによる胃粘膜の防御力低下と胃酸の過剰分泌。
🌴
ストレスから解放された時に胃が痛む
いわゆる「休日病」。緊張が解けて副交感神経が急激に優位になり、胃酸分泌が増加する。
🌅
朝起きた時に胃が痛む
仕事や学校への予期不安、コルチゾールの朝の急上昇が関与。
🍴
食事の前後に胃が痛む
食事自体が消化管の活動を促し、ストレスで過敏になった胃に痛みが生じる。
自律神経失調症

自律神経失調症と胃痛

自律神経失調症では、交感神経と副交感神経のバランスが崩れることで、胃を含む全身にさまざまな症状が現れます。胃痛は自律神経失調症の代表的な消化器症状の一つです。自律神経失調症に伴う胃痛の特徴は次の通りです。

  • 検査をしても器質的な異常が見つからない
  • ストレスの強さや精神状態と連動して症状が変動する
  • 頭痛、めまい、動悸、発汗、不眠などの他の自律神経症状を伴うことが多い
  • 天候の変化や季節の変わり目に悪化しやすい
  • 疲労や睡眠不足で悪化する
ストレス潰瘍

慢性ストレスと「ストレス潰瘍」

強いストレスが持続すると、胃粘膜の防御力が著しく低下し、実際に胃粘膜にびらん(ただれ)や潰瘍が生じることがあります。これが「ストレス潰瘍」です。特に以下のような状況では、ストレス潰瘍のリスクが高まります。

  • 重篤な疾患でICU(集中治療室)に入院している場合
  • 大手術の後
  • 重度の精神的ストレス(喪失体験、事故、災害など)
  • 慢性的な過重労働

日常的なストレスでここまで重篤な潰瘍が生じることは稀ですが、慢性ストレスがピロリ菌感染やNSAIDsの使用と重なると、潰瘍のリスクは格段に高まります。

コルチゾール

コルチゾールと慢性胃痛——ストレスホルモンの胃への影響

ストレスに反応して副腎から分泌されるコルチゾール(ストレスホルモン)は、急性の適応反応として重要な役割を持ちますが、慢性的に高い状態が続くと消化管に有害な影響を与えます。

  • 胃粘膜への直接作用コルチゾールは胃粘膜の防御因子(プロスタグランジン、粘液)の産生を抑制し、炎症性サイトカインの産生を増加させる。
  • 胃酸分泌への影響コルチゾールはCRHを介して消化管の活動を変化させ、胃酸分泌のパターンを乱す。
  • 消化管の免疫機能低下慢性的なコルチゾール過剰は腸管免疫を抑制し、感染リスクを高める。
  • 睡眠との悪循環コルチゾール高値は睡眠の質を下げ、睡眠不足がさらにコルチゾールを上昇させる悪循環を生む。

慢性ストレス状態では、コルチゾールの調節異常(朝に急上昇しにくい、常に中程度の高値が続くなど)が起こりやすく、これが胃痛を含む多彩な身体症状の背景にあることが研究で示されています。

NERVOUS GASTRITIS

神経性胃炎(ストレス性胃炎)

ストレスや精神的な緊張が原因で起こる胃の炎症・機能異常。「精神的に弱い」から起こるのではなく、真面目で責任感が強い人ほどなりやすい状態です。

神経性胃炎とは

神経性胃炎の定義と特徴

神経性胃炎(ストレス性胃炎)は、ストレスや精神的な緊張が原因で起こる胃の炎症・機能異常を指す一般的な用語です。医学的には「機能性ディスペプシア」や「慢性胃炎」の一部として位置づけられます。神経性胃炎には以下のような特徴があります。

  • ストレスや精神的な負荷がある時に症状が悪化する
  • 休日やリラックスしている時は症状が軽減する傾向がある
  • 胃カメラでは明確な病変が見つからないか、軽度の胃炎のみ
  • 市販の胃薬では十分に改善しない
  • 症状が長期間(数週間〜数か月以上)にわたって続く
症状

神経性胃炎の症状

神経性胃炎では、胃痛だけでなく多彩な消化器症状が現れます。複数の症状が同時に出ることもよくあります。

💢
みぞおちの痛み
キリキリ、シクシクとした不快な痛み。
🪨
胃もたれ・膨満感
食べたものがいつまでも残っている感じ。
🤢
吐き気
むかつきや吐き気を伴うことが多い。
🍽
食欲不振
食欲が湧かず、食事量が減る。
🔥
胸やけ
みぞおちから胸にかけての灼熱感。
💨
げっぷ
頻繁なげっぷ、胃の張り感。
😖
胃のむかつき
持続的な不快感。
🥄
早期満腹感
少し食べただけでお腹がいっぱいになる感覚。
なりやすい人

神経性胃炎になりやすい人の傾向

神経性胃炎になりやすい傾向として、以下の特徴が挙げられます。

  • 完璧主義で自分に厳しい
  • 周囲の評価を気にしやすい
  • ストレスを溜め込みやすい(我慢する傾向がある)
  • 心配性で先のことを考えすぎる
  • 責任感が強く、仕事を抱え込みやすい
  • 感情を表に出すのが苦手
  • 生活リズムが不規則
  • 睡眠不足が続いている
「気にしすぎ」ではなく真面目さの裏返し神経性胃炎は「気にしすぎ」や「精神的に弱い」から起こるわけではありません。真面目で責任感が強い人ほどなりやすいという特徴があります。自分を責めず、適切な治療を受けることが大切です。
FUNCTIONAL DYSPEPSIA

機能性ディスペプシア(FD)

胃カメラや血液検査で明らかな器質的異常がないにもかかわらず、胃痛・胃もたれ・早期満腹感などが慢性的に続く状態。「気のせい」ではなく、適切な治療で改善できます。

機能性ディスペプシアとは

機能性ディスペプシア(FD)とは

機能性ディスペプシア(FD:Functional Dyspepsia)は、胃カメラや血液検査で明らかな器質的異常がないにもかかわらず、胃痛、胃もたれ、早期満腹感、心窩部灼熱感などの症状が慢性的に続く状態です。

機能性ディスペプシアは「食後愁訴症候群(PDS)」「心窩部痛症候群(EPS)」の2つのタイプに分けられます。胃痛が主な症状の場合は心窩部痛症候群に該当することが多いです。

メカニズム

機能性ディスペプシアの6つのメカニズム

機能性ディスペプシアの背景には、複数の要因が重なっています。

  • 胃の運動機能異常胃の適応性弛緩(食べ物が入った時に胃が広がる反射)の障害や排出機能の低下。
  • 内臓過敏性胃からの信号に対する脳の感受性が過剰に高まっている状態。
  • 胃酸胃酸の分泌量自体は正常でも、過敏になった粘膜が少量の胃酸にも反応して痛みを感じる。
  • ピロリ菌ピロリ菌感染が関与している場合がある。
  • 十二指腸の微小炎症十二指腸粘膜の好酸球やマスト細胞の増加が報告されている。
  • 心理社会的要因ストレス、不安、うつが症状の発症・悪化に深く関与している。
診断基準

Rome IV基準による診断

機能性ディスペプシアの診断には、以下の3つの条件を満たす必要があります(Rome IV基準)。

基準 ①
症状のいずれかがある
食後のもたれ感、早期満腹感、心窩部痛、心窩部灼熱感のうち1つ以上がある。
Rome IV
基準 ②
器質的疾患がない
症状を説明できる器質的疾患がない(上部消化管内視鏡検査を含む)。
Rome IV
基準 ③
症状の持続期間
診断の6か月以上前に症状が出現し、過去3か月間は症状が持続している。
Rome IV
治療

機能性ディスペプシアの治療

機能性ディスペプシアには複数の治療選択肢があり、症状や個人の状態に応じて組み合わせます。

  • 消化管運動改善薬アコチアミド(アコファイド)が保険適用。胃の運動を改善する。
  • 胃酸分泌抑制薬PPI(プロトンポンプ阻害薬)やH2受容体拮抗薬。
  • 漢方薬六君子湯が代表的。食欲やグレリン分泌を改善する。
  • 抗うつ薬低用量の三環系抗うつ薬やミルタザピンが効果を示す場合がある。
  • 認知行動療法症状への過度な心配や不安を修正する。
  • ピロリ菌除菌感染がある場合、一部の患者で症状改善が期待できる。
「異常なし」=「問題なし」ではない機能性ディスペプシアは「検査で異常がない=問題がない」のではなく、胃の機能的な異常が実際に起こっている状態です。2013年からは保険適用の治療薬(アコチアミド)もあり、適切な治療で改善が期待できます。
MENTAL HEALTH

胃痛とメンタルヘルス

不安障害・うつ病は胃痛と密接に関連します。「心と体は別々」ではなく、自律神経・ホルモン・脳腸相関を通じて深くつながっています。

不安障害

不安障害と胃痛

不安障害は胃痛と密接に関連する精神疾患です。不安に伴う持続的な交感神経の活性化が、胃の運動異常、胃酸分泌の変化、内臓過敏性の亢進を引き起こし、慢性的な胃痛につながります。

全般性不安障害
持続的な不安と胃痛
慢性的な心配に伴い、持続的に胃が痛む・重い感じが続きます。
社交不安障害
対人場面での胃痛
人前での会食や発表の前後に胃が痛むパターン。
パニック障害
発作時の激しい胃痛
パニック発作時に胃の激しい痛みや不快感。その後も残遺症状として胃痛が続くことがあります。
適応障害
環境変化に伴う胃痛
環境の変化(転職、引っ越しなど)に伴うストレスで胃痛が発症します。
うつ病

うつ病と胃痛

うつ病と胃痛の関連には以下のパターンがあります。気分の落ち込みが目立たないタイプもあるため、慢性的な胃痛が続く場合は精神面のチェックも重要です。

  • 仮面うつ病気分の落ち込みよりも胃痛などの身体症状が前面に出るタイプ。消化器内科で検査しても異常がなく、複数の医療機関を受診している(ドクターショッピング)場合に疑われます。
  • うつ病に伴う自律神経の乱れ消化管の機能が低下し、胃痛、食欲不振、便秘などが生じます。
  • 抗うつ薬の副作用一部の抗うつ薬は消化器症状を引き起こすことがあります。
  • 不安の併存うつ病の約半数に不安障害が併存し、不安に伴う胃痛が加わります。
心身症

胃痛と心身症

心身症とは、心理的な要因が発症や経過に深く関わっている身体疾患のことです。胃痛を引き起こす疾患の中で、心身症として認識されることが多いのは以下の疾患です。

  • 機能性ディスペプシア
  • 過敏性腸症候群
  • 胃・十二指腸潰瘍(ストレスが関与している場合)
  • 逆流性食道炎(ストレスが関与している場合)

心身症の治療では、身体面の治療だけでなく、ストレスへの対処法や心理的なサポートが必要です。心療内科は、このような心身両面からのアプローチを専門とする診療科です。

「気の持ちよう」と言われて悩んでいる方へ「検査で異常がないから大丈夫」「気の持ちようだ」と言われて悩んでいる方は、心療内科の受診を検討してみてください。心と体の両面からアプローチすることで、改善が期待できます。
DRUG SIDE EFFECTS

薬の副作用と胃痛

精神科で処方される薬の中にも、胃痛を引き起こしやすいものがあります。自己判断で中止せず、主治医に相談することが基本です。

精神科の薬

胃痛を引き起こしやすい精神科の薬

代表的な精神科の薬と、胃痛が起こるメカニズムを整理します。同じ系統の薬でも、薬剤ごとに胃への影響は異なります。

💊
SSRI
代表的な薬剤:パロキセチン、セルトラリン、エスシタロプラム
メカニズム:セロトニンの変動による消化管への影響。開始初期に多い。
💊
SNRI
代表的な薬剤:デュロキセチン、ベンラファキシン
メカニズム:SSRIと同様の機序で消化器症状を引き起こす。
💊
リチウム
代表的な薬剤:炭酸リチウム
メカニズム:消化管への直接刺激。嘔気、下痢も伴うことが多い。
💊
バルプロ酸
代表的な薬剤:デパケン
メカニズム:消化管刺激。徐放製剤で軽減可能な場合がある。
💊
コリンエステラーゼ阻害薬
代表的な薬剤:ドネペジル
メカニズム:コリン作動性作用で胃酸分泌促進。
対処

薬剤性胃痛への対処

薬の副作用で胃痛が起きたときは、自己判断で薬を中止せず、以下のステップを主治医と相談してください。

  • 自己判断で薬を中止しない
  • 食後に服用することで胃への負担を軽減
  • PPIやH2受容体拮抗薬の併用を主治医に相談
  • 用量や服用タイミングの調整
  • 別の薬への変更を検討
DIAGNOSIS

胃痛の検査と診断——何科を受診すべきか

まずは消化器内科で器質的疾患を除外し、必要に応じて心療内科・精神科と連携するのが基本的な流れです。

診療科

状況別・受診すべき診療科

胃痛の背景や併存症状によって、適した診療科は変わります。次の表を目安にしてください。

状況
胃痛が主な症状
→ 消化器内科(胃腸内科)
状況
検査で異常がなく、ストレスが関与
→ 心療内科
状況
不安やうつの症状も伴う
→ 心療内科、精神科
状況
市販薬で改善しない胃痛
→ 消化器内科
状況
どこに行けばよいかわからない
→ まずはかかりつけ医、内科
検査

胃痛で行われる主な検査

胃痛の原因を特定するために、複数の検査を組み合わせて行います。

  • 上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)胃・食道・十二指腸の粘膜を直接観察。潰瘍、炎症、腫瘍の有無を確認する最も重要な検査。
  • ピロリ菌検査尿素呼気試験、血中抗体、便中抗原、迅速ウレアーゼ試験など。
  • 血液検査血算、CRP、肝機能、腎機能、膵酵素(アミラーゼ、リパーゼ)、甲状腺機能。
  • 腹部超音波検査胆嚢、膵臓、肝臓の異常を確認。
  • 腹部CTより詳細な画像検査。膵炎、腫瘍の評価。
TREATMENT

胃痛の治療法——原因に応じたアプローチ

器質性疾患には病気そのものへの治療、機能性疾患や心理的要因には消化管運動改善薬・心理療法・抗うつ薬・漢方薬など、原因に応じた選択肢があります。

基本方針

胃痛治療の基本方針

胃痛の治療は、原因に応じて以下のように分かれます。

  • 器質的疾患の治療潰瘍ならPPI+ピロリ菌除菌、逆流性食道炎ならPPI、胆石なら手術など。
  • 機能性ディスペプシアの治療消化管運動改善薬、PPI、漢方薬。
  • ストレス・心理面の治療認知行動療法、抗不安薬、抗うつ薬。
  • 生活習慣の改善食事、睡眠、ストレス管理。
  • 薬剤性の場合原因薬の調整、胃薬の併用。
胃酸を抑える薬

胃酸分泌を抑える4種類の薬

胃痛の薬物治療の中心となる、胃酸分泌を抑える薬を整理します。それぞれ効き方と用途が異なります。

💊
PPI(プロトンポンプ阻害薬)
代表薬:オメプラゾール、ランソプラゾール、エソメプラゾール
特徴:胃酸分泌を強力に抑制。潰瘍、逆流性食道炎の第一選択。
💊
P-CAB(カリウムイオン競合型酸ブロッカー)
代表薬:ボノプラザン(タケキャブ)
特徴:PPIよりも速効性がある新しいタイプの酸分泌抑制薬。
💊
H2受容体拮抗薬
代表薬:ファモチジン、ラニチジン
特徴:PPIよりやや弱いが、夜間の胃酸分泌抑制に有効。
💊
制酸薬
代表薬:水酸化アルミニウム・マグネシウム
特徴:即効性があるが持続時間が短い。症状が出た時の頓服に。
ストレス関連治療

ストレス関連の胃痛に対する治療

心理的要因が大きい胃痛には、心理療法・抗不安薬・抗うつ薬・漢方薬・マインドフルネスなど多角的な選択肢があります。

  • 認知行動療法(CBT)「胃が痛いのは重病かも」という不安認知を修正し、ストレスへの対処法を学ぶ。
  • SSRI/SNRI不安障害やうつ病の治療として。間接的に胃痛の改善にもつながる。
  • 低用量三環系抗うつ薬アミトリプチリン10〜25mgなどを就寝前に。内臓過敏性を軽減する効果が期待できる。
  • 抗不安薬短期的にベンゾジアゼピン系薬を使用。
  • 漢方薬半夏厚朴湯(不安を伴う消化器症状に)、六君子湯(食欲不振、胃もたれに)、安中散(胃痛に)。
  • マインドフルネス症状への過剰な注意や不安を軽減する。
ピロリ菌除菌

ピロリ菌の除菌療法

ピロリ菌に感染している場合は、除菌療法が行われます。除菌は胃痛の再発予防だけでなく、胃がんリスクの低下にもつながります。

  • 一次除菌:PPI(またはP-CAB)+アモキシシリン+クラリスロマイシンを7日間服用
  • 一次除菌の成功率は約70〜80%
  • 不成功の場合は二次除菌(クラリスロマイシンをメトロニダゾールに変更)
  • 二次除菌まで含めると約95%以上が除菌成功
  • 除菌により胃・十二指腸潰瘍の再発率が劇的に低下し、胃がんのリスクも減少する
心療内科の総合的治療

心療内科・精神科での総合的治療——胃痛×メンタルヘルスへのアプローチ

ストレス・不安・うつに関連した胃痛に対し、心療内科・精神科では消化器内科と連携しながら以下のような総合的アプローチが行われます。

  • 診断的評価生活歴・ストレス歴・精神症状の詳細な評価。器質的疾患との鑑別確認。
  • 心理教育「脳腸相関」や「内臓過敏性」についての説明。「気のせいではない」ことの確認が治療的意義を持つ。
  • 認知行動療法(CBT)痛みの破局的解釈(「また始まった、今日も何もできない」など)を修正。ストレスへの対処スキルを身に着ける。
  • 薬物療法抗不安薬・抗うつ薬(SSRI/SNRIまたは少量の三環系)により内臓過敏性を緩和。消化管運動改善薬と併用されることが多い。
  • リラクゼーション法の指導腹式呼吸、自律訓練法、漸進性筋弛緩法を習得し、ストレス反応を身体レベルで和らげる。
  • 生活習慣の包括的改善睡眠・運動・食事・社会的サポートを含めた全体的な生活の見直し。

心療内科への受診を迷っている方は、「胃の不調でメンタルの影響を疑っている」と率直に伝えることで、適切な初期評価を受けることができます。

SELF-CARE

胃痛のセルフケア——自分でできる対処法

胃痛が起きた時の即効性のある対処、日々のストレス管理、胃に優しい生活習慣、マインドフルネスまで——身体と心の両面からのケアが回復を助けます。

即効性のある対処法

胃痛がある時の即効性のある対処法

胃痛を感じた時に、すぐにできる6つの対処を紹介します。

温める
みぞおちにカイロや温タオルを当てる。胃の血流が改善し、けいれんが和らぐ。
🛏
楽な姿勢をとる
右側を下にして横になる(胃の出口が右側にあるため、内容物が流れやすい)。
🫁
深呼吸
腹式呼吸で副交感神経を活性化し、胃の緊張を和らげる。
🍵
白湯を飲む
温かいお湯をゆっくり飲むことで胃が温まり、痛みが和らぐ。
💊
胃薬を服用する
市販の制酸薬(スクラート、サクロンなど)や胃腸薬で対処。
🚫
食事を控える
痛みが強い時は無理に食べず、胃を休ませる。
ストレス管理

ストレス管理——胃痛を遠ざける生活設計

ストレスのコントロールは、慢性的な胃痛の改善・予防に直結します。

  • 十分な睡眠7〜8時間の良質な睡眠を確保。睡眠不足は胃痛を悪化させる。
  • 適度な運動ウォーキングやヨガ、ストレッチ。激しい運動は避ける。
  • リラクゼーション深呼吸、瞑想、マインドフルネス、自律訓練法。
  • 趣味の時間ストレス解消になる活動に時間を割く。
  • 仕事の負荷調整過重労働を避け、適切な休憩をとる。
胃に優しい生活習慣

胃に優しい生活習慣

食事の取り方や嗜好品との付き合い方を整えるだけで、胃の負担は大きく変わります。

  • 食事は1日3食、規則正しい時間に
  • よく噛んでゆっくり食べる(1口30回を目安に)
  • 暴飲暴食を避ける
  • 食後すぐに横にならない(30分以上経ってから)
  • 就寝前2〜3時間は食事を避ける
  • 喫煙は胃粘膜に悪影響。禁煙が望ましい
  • アルコールは適量に(できれば控える)
マインドフルネス

マインドフルネスと胃痛——「今ここ」に集中する練習

マインドフルネスは、現在の瞬間に意図的に注意を向け、判断なく観察する実践です。胃痛に関連する不安・ストレスの軽減に有効であることが複数の研究で示されています。

胃痛に対するマインドフルネスの効果:

  • 胃の痛みや不快感への「破局的な解釈」を和らげる(「また始まった、今日は最悪だ」という思考パターンの軽減)
  • 副交感神経を活性化し、胃の緊張を緩める
  • 痛みへの過剰な注意(過覚醒)を和らげ、生活への支障を軽減する
  • ストレスへの耐性を高め、胃痛の引き金となるストレス反応を小さくする

実践方法——「胃へのボディスキャン」:

STEP 1
楽な姿勢で座るか横になり、目を閉じる
STEP 2
ゆっくりと腹式呼吸を数回行い、身体をリラックスさせる
STEP 3
意識を胃の周辺に向け、そこで感じる感覚(締め付け、熱感、重さなど)を「良い・悪い」の判断をせずに観察する
STEP 4
「痛みと戦わず、ただ感じる」という姿勢で3〜5分続ける
2〜4週間で症状の変化を感じる人が多い毎日5〜10分の実践から始めることで、2〜4週間後に症状の変化を感じる方が多いとされています。スマートフォンのマインドフルネスアプリ(Headspace、Calmなど)を活用するのも効果的です。
DIET

胃痛がある時の食事の工夫

「消化の良いもの」を「少量ずつ」「ゆっくり」食べるのが基本。胃に優しい食品・負担になる食品・調理法のポイントを整理します。

胃に優しい食品

胃に優しい食品——おすすめのカテゴリ

胃痛がある時に積極的に選びたい食品を、カテゴリ別に整理します。

  • 主食おかゆ、雑炊、うどん、食パン(トーストがベター)。
  • タンパク質豆腐、白身魚(タラ、カレイなど)、鶏ささみ、卵(半熟がベスト)。
  • 野菜大根、かぶ、じゃがいも、にんじん、かぼちゃ(よく加熱して)。
  • 果物バナナ、りんご(すりおろし)、桃。
  • 乳製品ヨーグルト、温めた牛乳。
  • 飲み物白湯、ほうじ茶、ハーブティー(カモミール、ペパーミント)。
胃に負担のかかる食品

胃に負担のかかる食品——避けたい8カテゴリ

胃痛がある時には避けたい、または控えめにしたい食品です。

  • 脂肪の多い食品揚げ物、天ぷら、ラーメン、脂身の多い肉。
  • 刺激の強い食品唐辛子、カレー、キムチ、わさび。
  • 酸味の強い食品柑橘類、酢の物、トマト(大量の場合)。
  • 繊維の多い食品ごぼう、たけのこ、セロリ(消化に時間がかかる)。
  • 甘味の強い食品チョコレート、ケーキ、アイスクリーム(胃酸分泌を促進)。
  • カフェインコーヒー、紅茶、緑茶、エナジードリンク。
  • 炭酸飲料胃を膨張させ、不快感を増す。
  • アルコール胃粘膜を直接刺激する。
調理法

調理法の工夫

同じ食材でも、調理法によって胃への負担は大きく変わります。

  • 「煮る」「蒸す」「茹でる」が胃に優しい調理法
  • 「揚げる」「炒める」は脂肪が多くなるため控える
  • 食材は小さく切り、よく加熱して柔らかくする
  • 薄味を心がける(塩分の摂りすぎも胃粘膜に負担)
  • 温かい料理の方が胃に優しい(冷たすぎるものは避ける)
少量でも何か口にする胃痛がある時は「消化の良いもの」を「少量ずつ」「ゆっくり」食べることが基本です。無理に食べる必要はありませんが、全く食べないと胃酸が胃壁を刺激してかえって悪化することがあります。少量でも何か口にするようにしましょう。
WHEN TO VISIT

胃痛で受診すべき目安

緊急を要するサイン、早めに受診した方がよいサイン、様子を見てよいサイン——3つのレベルで判断のポイントをまとめます。

すぐに受診(救急)

すぐに受診(救急受診)すべき場合

以下のサインがある場合は、救急受診を検討してください。

  • !突然の激しい胃痛(腹痛)で冷や汗が出る
  • !吐血(血を吐く)または黒色便(タール便)がある
  • !高熱を伴う
  • !腹部が板のように硬くなっている
  • !痛みが背中にも響く(膵炎の可能性)
  • !意識がぼんやりしている
早めに受診

早めに受診した方がよい場合

緊急ではないものの、放置すると重い疾患の発見が遅れる可能性があるサインです。

  • 胃痛が2週間以上続いている
  • 市販の胃薬を飲んでも改善しない
  • 体重減少や食欲低下を伴う
  • 食事がとれなくなっている
  • 仕事や日常生活に支障が出ている
  • ストレスや不安との関連が疑われる(仕事の日だけ痛いなど)
  • NSAIDsを常用している
  • 40歳以上で初めて胃痛が出現した
様子を見てよい

様子を見てよい場合

以下のような一時的な胃痛は、セルフケアで様子を見て構いません。

  • 食べ過ぎ・飲み過ぎの後の一時的な胃痛
  • 市販の胃薬で改善する一時的な胃痛
  • 緊張場面での一時的な胃痛(すぐに収まる場合)
⚠️
40歳以上は定期的な胃カメラを胃痛を「よくあること」と放置していると、潰瘍や重篤な疾患の発見が遅れる可能性があります。特にピロリ菌の感染や胃がんは早期発見・早期治療が重要です。40歳以上の方は、症状がなくても定期的な胃カメラ検査をおすすめします。
FAQ

よくある質問

胃痛に関する、よく寄せられる質問にお答えします。

Q&A

胃痛に関するQ&A

Q. ストレスで胃が痛いのは本当ですか?

A. はい、ストレスで胃が痛くなることは科学的に証明されています。ストレスを受けると、自律神経のバランスが乱れ、胃酸の分泌が増加する一方で胃粘膜の防御力が低下します。また、胃の筋肉がけいれんしたり、消化管の感受性が高まったりすることで痛みが生じます。「脳腸相関」と呼ばれる脳と消化管の密接なつながりにより、心理的なストレスが直接的に胃の機能に影響を与えるのです。

Q. 胃痛が続くのですが何科を受診すればいいですか?

A. まずは消化器内科(胃腸内科)を受診し、胃カメラなどの検査で器質的な異常がないか確認することをおすすめします。検査で異常がなく、ストレスや不安との関連が強い場合は、心療内科の受診も検討してください。心療内科は心と体の両面からアプローチする専門科です。どこに行けばよいか迷う場合は、まずかかりつけ医に相談するとよいでしょう。

Q. 検査で異常がないのに胃が痛いのはなぜですか?

A. 検査で器質的な異常が見つからないのに胃痛が続く場合、「機能性ディスペプシア」の可能性があります。機能性ディスペプシアは、胃の運動機能の異常、内臓過敏性(通常は痛みとして感じないような刺激を痛みとして感じる)、ストレスや心理的な要因が複合的に関与して起こります。決して「気のせい」ではなく、適切な治療で改善できる状態です。

Q. 胃痛にすぐ効く対処法はありますか?

A. 即効性のある対処法として、①みぞおちを温める(カイロや温タオル)、②深呼吸(4秒吸って8秒吐く)を数回行う、③白湯をゆっくり飲む、④右側を下にして横になる、⑤市販の制酸薬(スクラートなど)を飲む、などがあります。胃のけいれんによる痛みの場合は、温めることで血流が改善し、痛みが和らぐことが多いです。

Q. 胃痛がある時は何を食べればいいですか?

A. 胃痛がある時は「消化の良いもの」を「少量ずつ」「ゆっくり」食べるのが基本です。おすすめはおかゆ、うどん、豆腐、白身魚、バナナ、すりおろしりんごなど。調理法は煮る・蒸す・茹でるが胃に優しいです。脂っこいもの、辛いもの、カフェイン、アルコール、炭酸飲料は避けてください。全く食べないと胃酸が胃壁を刺激するので、少量でも何か口にしましょう。

Q. ピロリ菌はどうやって調べますか?治療できますか?

A. ピロリ菌の検査は、尿素呼気試験(息を吐いて調べる)、血液検査(ピロリ菌の抗体)、便中抗原検査、胃カメラ時の迅速ウレアーゼ試験などがあります。感染が確認された場合は、PPIまたはP-CAB+2種類の抗菌薬を7日間服用する除菌療法で治療します。成功率は一次除菌で約70〜80%、二次除菌まで含めると約95%以上です。保険適用で治療できますので、胃痛が続く方はぜひ検査を受けてください。

Q. 市販の胃薬はどれを選べばいいですか?

A. 胃痛のタイプによって適した市販薬が異なります。①キリキリする痛み(胃酸過多)→制酸薬(スクラート、太田胃散など)またはH2ブロッカー(ガスター10など)、②胃もたれ・膨満感→消化管運動改善薬(ガスモチンなど)、③胃のけいれん→ブスコパンAなどの鎮痙薬。ただし、市販薬は一時的な対処であり、2週間以上胃痛が続く場合は医療機関を受診してください。

Q. 胃痛とうつ病は関係がありますか?

A. はい、関係があります。うつ病では自律神経のバランスが崩れ、消化管の機能が低下して胃痛が起こることがあります。特に「仮面うつ病」では、気分の落ち込みよりも胃痛などの身体症状が前面に出るため、消化器内科で検査しても異常が見つからず、原因が特定されにくいことがあります。慢性的な胃痛に加えて、睡眠障害、疲労感、集中力の低下、興味の減退などがある場合は、心療内科や精神科の受診を検討してください。

Q. 胃痛を予防する方法はありますか?

A. 胃痛の予防には、①規則正しい食事(1日3食、決まった時間に)、②よく噛んでゆっくり食べる、③暴飲暴食を避ける、④カフェイン・アルコールを控えめにする、⑤禁煙する、⑥十分な睡眠をとる、⑦適度な運動をする、⑧ストレスへの対処法を持つ(深呼吸、瞑想、趣味など)、⑨NSAIDsの乱用を避ける、⑩ピロリ菌の検査・除菌を受ける、などが有効です。特にストレス管理と食生活の改善が予防の二本柱です。

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「胃が痛くて眠れない」「ストレスで毎日のように胃が痛む」「検査しても異常なしと言われたのに苦しい」——胃痛の苦しさは、あなたの気持ちの弱さではありません。心と身体は深くつながっており、ストレスや不安が胃にリアルな痛みを引き起こすことは科学的に証明されています。どうかあなたの悩みをきかせてください。

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このページの情報は、医師による診断や治療に代わるものではありません。症状が気になる場合は、心療内科・精神科への受診をご検討ください。通院医療費の自己負担を1割に軽減できる自立支援医療制度も活用できます。

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