メンタルヘルス用語辞典 · ハラスメント

ハラスメントとは?
種類・心身への影響・対処法・予防をわかりやすく解説

ハラスメントは職場・学校・家庭などあらゆる場で起こりうる「尊厳の侵害」です。パワハラ・セクハラ・モラハラなど多様な種類と、心身への深刻な影響、法律・相談機関・対処ステップ、組織的な予防策までを網羅的に解説します。

ABOUT HARASSMENT

ハラスメントとは

ハラスメントとは、言葉や行動によって相手に不快感・苦痛・損害を与える行為の総称です。職場・学校・家庭・地域社会など、あらゆる場で起こりうる深刻な問題であり、被害者の心身に長期的なダメージを与えます。

定義

ハラスメントの定義——「嫌がらせ」を超えた問題

「ハラスメント(harassment)」は英語で「嫌がらせ」を意味しますが、現代においては単なる不快行為にとどまらず、相手の尊厳を傷つけ、精神的・身体的・社会的に損害を与える広義の概念として使われています。

ハラスメントの特徴は、その行為が「繰り返し」「継続的に」行われることにより、被害が深刻化する点です。一度の不快な言動でも問題ですが、慢性的なハラスメントは被害者の自尊心・精神的健康・社会生活を根本的に破壊します。

一時的な「不快な言動」
誰にでも起こりうる摩擦
人間関係において、誰でも相手を傷つけてしまうことはあります。しかし、それを自覚・謝罪し、繰り返さない努力をすることで関係修復が可能です。意図せず相手を不快にさせた場合でも、相手が苦痛を感じたという事実は重要です。
ハラスメント
継続的・反復的な尊厳の侵害
権力・優位性・関係性などを背景に、継続的・反復的に相手の尊厳を傷つける行為。「冗談のつもり」「指導のつもり」という加害者の主観は関係なく、被害者が受けた苦痛・損害が判断の基準となります。本人の意図に関わらず成立する点が重要です。
⚠️
「受け取り方の問題」ではない——ハラスメント判断の基準ハラスメントかどうかの判断基準は、加害者の「意図」ではなく、被害者が「合理的にどう感じたか」です。「そんなつもりはなかった」「みんなに言っていること」という言い訳は通用しません。一般的な感覚を持つ人が不快・苦痛に感じる行為であれば、ハラスメントが成立します。また、行為が業務・教育として正当化できる範囲を超えているかどうかも重要な判断基準です。
加害者が気づいていないケースも多いハラスメントの加害者の多くは、自分の行為がハラスメントであるという認識を持っていません。「指導している」「冗談を言っている」「コミュニケーションを取っている」という認識のまま、被害者を深く傷つけている場合があります。だからこそ、組織的な教育・啓発が不可欠です。
社会的背景

なぜ今、ハラスメントが問題になっているのか

ハラスメントという概念が社会的に認知され始めたのは、日本では1990年代以降のことです。「セクシャルハラスメント(セクハラ)」という言葉が広まり、その後「パワーハラスメント(パワハラ)」「モラルハラスメント(モラハラ)」など様々なハラスメントの概念が定着してきました。

背景には、労働環境の変化(非正規雇用の増加による立場の不安定化)、価値観の多様化(権威主義的な上下関係への疑問)、SNSの普及(被害の可視化・情報共有の容易化)、そして法整備の進展(ハラスメント防止法の制定)などがあります。以前は「当たり前」「仕方のないこと」として見過ごされてきた行為が、ようやく「問題」として認識されるようになってきたのです。

30%超
職場でパワハラを受けたことがあると回答した労働者の割合(厚労省調査)
1位
都道府県労働局への相談件数で「いじめ・嫌がらせ」が長年トップを維持
70%超
ハラスメントを受けたにもかかわらず、誰にも相談しなかった被害者の割合
📊
ハラスメント被害を受けた方の多くが「誰にも相談しない」という選択をしています。「大げさと思われる」「報復が怖い」「証拠がない」などの理由がありますが、一人で抱え込むことが最も危険です。相談することは勇気ある行動です。
共通する特徴

あらゆるハラスメントに共通する特徴

ハラスメントの種類は多岐にわたりますが、すべてのハラスメントに共通する特徴があります。この特徴を理解することで、自分が受けている行為がハラスメントかどうかを判断する助けになります。

権力・優位性の濫用
職位・年齢・性別・情報・知識・人間関係などの優位性を背景に行われることが多い
🔄
継続性・反復性
一度きりの行為でも問題だが、繰り返されることで被害が深刻化する
🎭
加害者の無自覚
「指導」「冗談」「愛情」として正当化し、自分の行為がハラスメントだと認識していない場合が多い
🪤
被害者の自責感
「自分が悪い」「過敏すぎる」という認識を植え付けられ、被害を申告しにくくなる
👁
第三者には見えにくい
被害者と加害者の二者間で起こることが多く、証拠が残りにくい
📉
心身への深刻な影響
放置すると心的外傷・うつ病・身体疾患に発展し、長期的な回復が必要になる
「ハラスメントかどうか」で悩む必要はない「これはハラスメントなのか、それとも自分の感じ方が問題なのか」と悩む方は多いです。しかし、まず大切なのは「自分がとても辛い」という事実です。ハラスメントの定義に当てはまるかどうかより、「今、苦しんでいる」という自分の感覚を大切にしてください。専門家に相談することでその苦しみに名前をつけ、対処する方法を一緒に考えることができます。
被害を受けたら

ハラスメント被害に気づいたらまず知ってほしいこと

ハラスメントの被害に気づいたとき、多くの方が「自分が悪いのかもしれない」「これくらいで騒ぐのは大げさだ」という思いに囚われます。これ自体がハラスメントによって引き起こされた認知の歪みです。

💡まず知ってほしい5つのこと
あなたは悪くない——ハラスメントの責任は100%加害者にあります
「大げさ」ではない——苦痛を感じているあなたの感覚は正常な反応です
一人で解決しようとしなくていい——相談・支援を求めることは正当な権利です
証拠を残すことが大切——記録・保存しておくことで後の対応がしやすくなります
必要であれば距離を取ることも選択肢——身を守ることを最優先してください
🆘
今すぐ誰かに話してほしい一人で抱え込み続けることは、心身を深く傷つけます。今すぐ信頼できる人、または相談機関に連絡してください。話すことで、状況が変わり始めます。
実態・統計

日本のハラスメントの実態

厚生労働省の調査によれば、職場でのハラスメントの実態は深刻です。「都道府県労働局に対する相談件数」において、「いじめ・嫌がらせ」は2012年以降、すべての相談種別の中で第1位が続いています。

ハラスメント被害の実態(主要統計)
パワハラ被害経験(過去3年間)
31.4%
セクハラ被害経験(過去3年間・女性)
10.2%
ハラスメント後に相談しなかった
70%超
ハラスメントで精神疾患を発症した
約20%
ハラスメントで離職した
約15%
企業のハラスメント相談窓口設置率
約60%

※ 出典:厚生労働省「職場のハラスメントに関する実態調査」等。数値は調査年度・調査対象により異なる。

TYPES OF HARASSMENT

ハラスメントの種類と特徴

現代社会では多様な種類のハラスメントが認識されています。それぞれの特徴・定義・法的位置づけを理解することが、予防・対処の第一歩です。

主な種類

代表的なハラスメント6種類

日本で特に問題となっている主なハラスメントの種類を以下に示します。それぞれの特徴・影響・法的位置づけを理解することで、予防と対処に役立てることができます。

💼
パワーハラスメント(パワハラ)
職務上の地位や人間関係の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的な苦痛を与える行為。上司から部下への過度な叱責、無視、仕事の取り上げや過大な要求などが含まれる。2022年4月から中小企業にも防止措置が義務化された。
職場上下関係権力乱用
🚫
セクシャルハラスメント(セクハラ)
性的な言動によって相手に不快感・苦痛を与える行為。職場での性的な冗談、身体への接触、交際の強要など。「対価型」(性的言動への拒否が不利益に繋がる)と「環境型」(性的言動により職場環境が不快になる)の2種類がある。男女雇用機会均等法で防止措置が義務化されている。
性的言動職場学校あらゆる場面
💬
モラルハラスメント(モラハラ)
言葉や態度、文章などによって相手の人格や尊厳を傷つける精神的な暴力。表面上は暴力的に見えにくく、「気のせい」「過敏すぎる」と被害者自身が気づきにくい。職場・家庭・友人関係などあらゆる関係性で起こりうる。継続的・反復的な精神的虐待の一形態とも言える。
精神的暴力言葉態度気づきにくい
🤱
マタニティハラスメント(マタハラ)
妊娠・出産・育児に関連して職場で受ける不利益な扱いや精神的苦痛を与える行為。妊娠を理由とした解雇・降格・自主退職の強要、「妊娠するな」という発言、育休取得への嫌がらせなど。男女雇用機会均等法・育児介護休業法で禁止されている。
妊娠出産育児職場不利益
🛒
カスタマーハラスメント(カスハラ)
顧客や取引先から従業員に対する著しく迷惑な行為。過度なクレーム、暴言・侮辱、長時間の拘束、SNSでの晒し行為など。2020年代から社会的に注目が高まり、厚生労働省もガイドラインを策定。従業員を守る組織的対応が求められるようになっている。
顧客クレーム過度な要求暴言
🎓
アカデミックハラスメント(アカハラ)
大学・研究機関における指導的立場の者(教授・准教授等)が、学生・院生・研究員などに対して行う権力を背景にした不当な行為。研究テーマの独断的変更強要、卒業・修了の不当な妨害、研究成果の横取り、人格否定的な発言など。閉鎖的な研究室環境で起こりやすく、被害者が声を上げにくい構造的問題がある。
大学研究室指導関係閉鎖環境
新たな類型

社会の変化とともに生まれた新たなハラスメント

社会環境の変化(テクノロジーの普及、ダイバーシティの進展、価値観の多様化など)に伴い、新たなタイプのハラスメントも生まれています。

🤱
パタニティハラスメント(パタハラ)
男性の育休取得や子育てに関わろうとする行動を嘲笑・妨害する行為。「男が育休を取るな」という圧力が典型例。
💻
テクノロジーハラスメント(テクハラ)
ITツールの習熟度の差を利用して相手を馬鹿にしたり、過大な作業を課す行為。デジタルデバイドを利用したハラスメント。
🌈
SOGIハラスメント(SOGIハラ)
性的指向(Sexual Orientation)や性自認(Gender Identity)に関する差別的言動。「ホモ」「オカマ」等の侮蔑的表現、アウティング(本人の同意なく性的指向等を暴露する)も含まれる。
🏠
リモートハラスメント(リモハラ)
テレワーク環境を悪用したハラスメント。勤務時間外の頻繁な連絡、カメラのオン強要、プライベート空間への過度な干渉など。
🍺
アルコールハラスメント(アルハラ)
飲酒を強要したり、飲めない人を馬鹿にする行為。飲み会での一気飲みの強要も含まれ、死亡事故に繋がるケースもある。
📱
SNSハラスメント(SNSハラ)
SNSを通じた誹謗中傷、不快な投稿へのタグ付け、プライベートな画像の無断投稿など。ネットいじめとも重なる領域。
複合・重複

ハラスメントは複合的に起こる

現実のハラスメント被害は、単一の種類に当てはまるとは限らず、複数のハラスメントが同時・連続的に起こることがよくあります。例えば、上司からの過度な業務指示(パワハラ)に加え、性的な冗談(セクハラ)が繰り返される、といったケースです。

また、特定のハラスメントから別のハラスメントに発展するケースもあります。例えば、カスタマーハラスメントを受けた従業員が、その対応を誤ったとして上司からパワハラを受ける、という「二次被害」的なケースです。

複合ハラスメントは被害がより深刻になる複数のハラスメントを同時に受けている場合、精神的ダメージは単独の場合より大幅に大きくなります。「ひとつひとつは小さいこと」と思わず、複合的な苦痛の深刻さを認識し、早めに専門家に相談してください。
PSYCHOLOGICAL IMPACT

ハラスメントが心身に与える影響

ハラスメントは一時的な苦痛にとどまらず、長期的・深刻な心身へのダメージをもたらします。放置すると精神疾患・身体疾患に発展し、回復に長い時間がかかります。

精神的影響

ハラスメントがもたらす精神的ダメージ

ハラスメントは、被害者の心に多岐にわたる深刻な影響を与えます。症状は人によって異なりますが、多くの方に共通するパターンがあります。

😰
PTSD(心的外傷後ストレス障害)
ハラスメント被害はトラウマ体験として記憶に刻まれ、PTSDを引き起こすことがあります。フラッシュバック(加害者の言動が突然頭によみがえる)、悪夢、過覚醒(些細なことで驚く)、回避(職場・加害者に関連する場所・状況を避ける)などの症状が現れます。
😔
うつ病・抑うつ状態
継続的なハラスメントにより、無力感・絶望感・自己否定感が蓄積されます。「自分が悪いのか」「なぜこんなに苦しいのか」という思いが繰り返され、睡眠障害、食欲低下、集中力の低下、気力の消失といったうつ症状が現れます。重症化すると希死念慮を伴う場合もあります。
😟
適応障害
ハラスメントというストレスに対する過剰な反応として、仕事に行けなくなる、特定の場所・人物への強い恐怖・回避行動が現れます。ストレス要因(ハラスメント行為・加害者)から離れると症状が緩和されやすいのが特徴ですが、放置すると慢性化します。
😨
不安障害・パニック障害
「また何か言われるのではないか」「見られている」という慢性的な緊張・不安状態が続きます。特に加害者が現れやすい状況(朝礼、会議など)で強い不安やパニック発作が起こることもあります。自律神経の乱れも生じやすく、動悸・息切れ・発汗などの身体症状を伴います。
😡
怒り・自責感の混乱
「なぜ自分だけ」という怒りと、「自分が悪かったのかも」という自責感の間で揺れ動き、感情が混乱します。この自責感はハラスメントの本質的特徴のひとつであり、加害者側が「被害者に問題がある」という認識を植え付けることで生じます。専門家のサポートなしに整理することが難しい状態です。
🫥
自己効力感・自尊心の低下
ハラスメントを継続的に受けることで、「自分には価値がない」「何をしても無駄だ」という学習性無力感が形成されます。本来の能力が発揮できなくなり、仕事・対人関係においても自信を喪失します。回復には長い時間と適切なサポートが必要です。
🔇
社会的孤立
ハラスメントの被害者は「誰にも信じてもらえない」「相談しても無駄」という無力感から、周囲へのSOSを出すことをやめてしまいがちです。孤立が深まると相談・支援へのアクセスがさらに困難になり、精神的な苦痛が増大します。
💭
認知の歪み(マインドコントロール的効果)
長期間にわたるハラスメントは、被害者の認知に影響を与えます。「自分はダメだ」「こんな扱いを受けて当然だ」という歪んだ自己認識が形成され、ハラスメントから離れた後も回復を妨げる要因となります。特にモラハラ・DVでこの傾向が強く見られます。
身体的影響

ストレスが身体に現れる——身体症状

精神的なストレスは必ず身体にも影響を与えます。「身体的な問題がないのに体調が悪い」という状態(心身症・身体表現性障害)は、ハラスメントによるストレスで起こりやすいものです。

🍽
食欲不振・過食
ストレス反応として食欲が極端に低下したり、逆に過食が起こったりします。
🌙
睡眠障害
不眠・過眠・悪夢など、睡眠の質が著しく低下します。眠れないことによる疲労蓄積が回復を妨げます。
💓
自律神経症状
動悸、息切れ、めまい、手の震え、発汗過多、過呼吸など自律神経の乱れによる症状が現れます。
💢
頭痛・肩こり・腰痛
慢性的なストレスと筋緊張により、身体の特定部位に痛みが集中します。
🫁
免疫機能の低下
風邪をひきやすくなる、口内炎・肌荒れが頻発するなど、免疫機能の低下が現れます。
💊
消化器症状
胃痛、胃もたれ、下痢・便秘を繰り返す過敏性腸症候群なども、ストレスと関連して現れます。
🏥
「原因不明の体調不良が続く」場合、ハラスメントによる慢性ストレスが原因である可能性があります。内科で異常が見つからない場合は、心療内科・精神科への相談も検討してください。心と身体はつながっています。
長期的影響

ハラスメントが残す長期的なダメージ

ハラスメントが終わった後も、影響は長期間にわたって続くことがあります。これはハラスメントが「トラウマ(心的外傷)」として記憶に刻まれるためです。

🧠
フラッシュバック——加害者の言葉・顔・状況が突然頭によみがえり、パニックになる
😰
回避行動——加害者に関連する場所・状況を避け続け、行動範囲が狭まる
💔
対人不信——「人を信頼してはいけない」という認識が形成され、新たな人間関係が築けなくなる
😔
慢性的な自己否定——「自分はダメだ」「価値がない」という感覚が持続する
😢
将来への希望喪失——キャリア・人間関係・生活全般への意欲が失われる
🔄
再被害リスク——トラウマから回復していないと、次の環境でも似たような被害を受けやすくなる
回復には時間がかかるが、必ず回復できるハラスメントによる傷は深く、回復には時間がかかります。しかし、適切なサポート(心理療法・医療・社会的支援)を受けることで、必ず回復できます。「なぜ傷が癒えないのか」と自分を責めないでください。回復のペースは人それぞれです。
SUPPORT & RECOVERY

サポートと回復

ハラスメントの傷から回復するためには、適切なサポートと時間が必要です。自分を責めず、一歩ずつ回復に向けて歩んでください。

セルフケア

まず自分を守るためのセルフケア

ハラスメント被害を受けている方、または受けた方がまず大切にしてほしいのは、自分自身を守ることです。セルフケアは回復の基盤となります。

📝
感情を書き出す
「何があって、どう感じたか」をノートやアプリに書き出すことで、感情の整理ができます。
🤝
信頼できる人との対話
一人で抱え込まず、信頼できる人に話すだけでも気持ちが楽になります。
🏥
専門家への相談
カウンセラーや心療内科・精神科への相談を躊躇しないでください。早めの相談が回復を早めます。
🌿
自律神経を整える習慣
深呼吸、ストレッチ、入浴、自然の中での散歩など、リラクゼーションを日課にします。
📵
加害者・職場から距離を置く
休職・異動・転職など、物理的な距離を取ることも重要な選択肢です。「逃げること」は正当な自己防衛です。
💊
必要な医療・休養を受ける
症状が重い場合は、投薬・休職などの医療的対応を検討します。「まだ大丈夫」と無理をしないことが大切です。
「逃げる」ことは正当な選択肢ハラスメント環境から離れることを「逃げ」と考え、自分を責める方は多いです。しかし、心身を守るために距離を置くことは、正当かつ重要な選択肢です。休職・転職・引っ越しなど、自分を守るための行動を躊躇わないでください。
専門家サポート

専門家によるサポート——心理療法と医療

ハラスメントによる精神的ダメージが深刻な場合は、専門家のサポートが不可欠です。

🧠
認知行動療法(CBT)
ハラスメントによって形成された「自分は悪い」「世界は危険だ」という認知の歪みを修正します。トラウマに特化したTF-CBT(トラウマフォーカス認知行動療法)も有効です。
👁
EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)
トラウマ記憶の処理に特に効果的な療法です。フラッシュバックや過覚醒などのPTSD症状の軽減に高い効果が示されています。
📖
ナラティブセラピー
自分の経験を「物語」として語り直すことで、ハラスメント体験を自分の人生の一部として統合し、新たな自己像を構築します。
💊
薬物療法
うつ病・PTSDが発症している場合、抗うつ薬(SSRI等)・抗不安薬などの薬物療法が有効です。心療内科・精神科で処方を受けることができます。
👥
グループ療法・自助グループ
同じ経験を持つ人々とのつながりが、「自分だけではない」という安心感と回復の力を与えます。ハラスメント被害者のための自助グループが全国にあります。
回復のプロセス

ハラスメントからの回復プロセス

ハラスメントからの回復は、直線的ではなく螺旋状に進みます。良い時期と悪い時期を繰り返しながら、全体的には回復していくイメージです。

第1段階
安全の確保
まず物理的・精神的な安全を確保することが最優先です。ハラスメント環境からの脱出、信頼できる人との繋がりを作ることが重要です。
第2段階
感情の表出・整理
怒り・悲しみ・自責感・恐怖などの感情を、安全な環境(信頼できる人、カウンセラー)の中で表現・整理します。感情を「なかったこと」にしないことが大切です。
第3段階
認知の修正
「自分が悪かった」「自分は価値がない」という歪んだ認知を、「悪いのは加害者だ」「自分には価値がある」という適切な認知に修正します。心理療法の重要な目標です。
第4段階
日常生活の再建
少しずつ日常生活の機能を取り戻します。仕事・人間関係・趣味などへの再参加を、無理なく段階的に行います。
第5段階
統合・成長
ハラスメント体験を自分の人生の一部として統合し、そこから何かを学んだという感覚(Post-traumatic Growth:外傷後成長)が生まれることもあります。ただし、これは「ハラスメントが良いことだった」という意味ではありません。
回復のペースは人それぞれ「なぜまだ回復しないのか」と自分を責める必要はありません。回復には個人差があり、ハラスメントの期間・種類・個人の背景によって異なります。焦らず、専門家とともに自分のペースで歩んでください。
PREVENTION & CULTURE

予防と組織文化

ハラスメントを根絶するためには、個人の努力だけでなく、組織・社会レベルでの取り組みが不可欠です。心理的安全性の高い文化を育てることが、最も効果的な予防策です。

組織的予防

組織がすべき6つの予防策

ハラスメントの予防は、個人レベルではなく組織レベルで取り組むことが不可欠です。法的義務として課せられている措置に加え、組織文化の醸成が根本的な解決につながります。

📋
明確なハラスメント防止方針の策定・周知
組織のトップが「ハラスメントを絶対に許さない」という姿勢を明示し、防止方針を全従業員に周知することが基本です。方針に具体的な定義・禁止行為・対応手順を明記します。
🎓
定期的な研修・教育の実施
管理職・一般社員それぞれを対象に、ハラスメントの定義・事例・影響・対応方法についての研修を定期実施します。「知らなかった」では済まない時代です。
📞
相談窓口の整備・運用
社内外に複数の相談窓口を設置し、相談しやすい環境を整えます。相談者の秘密厳守・不利益取り扱い禁止を明示することが重要です。匿名相談ができる仕組みも有効です。
🔍
早期発見・迅速な対応
ハラスメントは早期に対応するほど深刻化を防げます。定期的な従業員アンケートや1on1ミーティングで組織の状態を把握します。相談があった際は迅速に調査・対応します。
🌱
心理的安全性の高い職場文化の醸成
「何でも言い合える」「失敗しても責められない」という心理的安全性の高い職場文化がハラスメントの温床を取り除きます。多様性の尊重、コミュニケーションの活性化が鍵です。
💪
加害者への厳正な対応・被害者サポート
ハラスメントが確認された場合、加害者への指導・処分を適切に行うことが組織全体へのメッセージとなります。同時に被害者への継続的なサポート(配置換え・休職支援・相談継続等)も不可欠です。
傍観者の役割

傍観者(第三者)ができること

ハラスメントの現場に居合わせた第三者(傍観者)の行動が、被害の深刻化を防ぐうえで大きな役割を果たします。「自分には関係ない」「下手に関わると面倒なことになる」と思いがちですが、傍観者の積極的な行動が組織文化を変えます。

🛑
その場で止める
「ちょっと待ってください」と声を上げる。加害者に「その発言は問題がある」と伝える。
🤝
被害者に寄り添う
後で被害者に「大丈夫ですか?」と声をかける。「一人じゃない」という安心感を与える。
📝
記録・証言する
目撃した内容を記録し、必要に応じて証人になる意思を伝える。
📣
上司・相談窓口に報告する
直接介入が難しければ、上司や相談窓口にハラスメントが起きていることを報告する。
傍観者から行動者へ——あなたの一言が職場を変えるハラスメントの傍観者が「それはおかしい」と声を上げることは、被害者にとって大きな救いになるだけでなく、組織全体に「ハラスメントは許容されない」というメッセージを発信します。勇気を持った一歩が、職場文化を変えます。
健全な文化づくり

心理的安全性の高い組織文化をつくるために

ハラスメントが起こりにくい組織の最大の特徴は「心理的安全性」の高さです。心理的安全性とは、「チームの中で誰もが発言でき、失敗しても責められず、自分らしくいられる」という感覚です。

心理的安全性を高めるための実践例
上司が「私も間違えることがある」と率先して弱みを見せる
「なぜそれを言わなかったのか」より「教えてくれてありがとう」という反応を心がける
多様な意見を歓迎し、「変なことを言う人だ」という雰囲気をなくす
1on1ミーティングで、業務以外の感情・悩みを話せる時間を定期的に設ける
「叱責」より「フィードバック」——改善点を具体的・建設的に伝える文化を育てる
成功だけでなく、小さな「頑張り」や「挑戦」を認め、称える
ハラスメントのない組織は生産性も高い研究によれば、心理的安全性の高い組織は、生産性・創造性・従業員の定着率が高いことが示されています。ハラスメント防止は「コスト」ではなく、組織の競争力を高める「投資」です。

一人で抱え込まないで。
相談してみませんか。

ハラスメントの被害は、あなたのせいではありません。つらい気持ちをぜひ聞かせてください。

今すぐ話したい方へ——相談窓口
ココトモ相談するチャット相談・無料
いのちの電話0120-783-55624時間・無料
よりそいホットライン0120-279-33824時間・無料
ハラスメント悩み相談室0120-714-864厚労省委託・無料

このページの情報は、医師による診断や治療に代わるものではありません。症状が気になる場合は、心療内科・精神科への受診をご検討ください。

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