メンタルヘルス用語辞典 · 経済的DV

経済的DVとは?
定義・種類・チェックリスト・心理的影響・対処法・支援制度を徹底解説

配偶者やパートナーから金銭面で支配され、経済的な自由を奪われる経済的DV。生活費を渡さない・収入を管理する・働くことを禁じるなどDV事例の約99%に含まれる普遍的な形態でありながら、被害者自身が「これはDVなのか」と気づきにくい問題です。定義・種類・加害者の特徴・心身への影響・高度な支配戦術・対処法・法的対応・支援制度・回復プロセスまでを徹底的に解説します。

ABOUT FINANCIAL ABUSE

経済的DVとは

経済的DV(経済的ドメスティック・バイオレンス)は、配偶者やパートナーが金銭面で一方的に相手を支配し、経済的自由を奪う行為です。身体的暴力を伴わない場合も多く、被害者自身が「これはDVなのだろうか」と疑問を感じてしまうケースが少なくありません。

定義

経済的DVの定義

経済的DV(経済的ドメスティック・バイオレンス)とは、配偶者やパートナーが金銭面で一方的に相手を支配し、経済的な自由を奪う行為のことを指します。生活費を渡さない、相手の収入を管理する、働くことを禁止する、借金を強要する、財産を隠す、お金の使い道を細かくチェックするなど、経済的な手段を用いて相手を支配・コントロールする行為全般を含みます。

DVには身体的暴力・精神的暴力(モラハラ)・性的暴力・経済的暴力の4つの形態があり、経済的DVはこの中の経済的暴力に該当します。これらは単独で発生することもありますが、多くの場合、複数の形態が複合的に組み合わさって行われます。

内閣府の「配偶者暴力に関する調査」では、配偶者から「生活費を渡さない」「相手の財産を勝手に処分する」などの経済的暴力を受けた経験がある女性は一定の割合に上ることが報告されています。米国の調査では、DV事例の約99%に何らかの経済的虐待が含まれているとされており、経済的DVはDVの中で最も普遍的な形態の一つと考えられています。

お金の問題ではなく支配の問題経済的DVは「お金の問題」ではなく「支配と虐待の問題」です。配偶者やパートナーから経済的な自由を奪われ苦痛を感じている場合は、被害を受けている可能性があります。
見過ごされやすい理由

なぜ経済的DVは見過ごされやすいのか

経済的DVは他の形態のDVに比べて見過ごされやすいという特徴があります。

第一に、身体的暴力のような明確な証拠(あざ・傷跡)が残らないため、外部から判別しにくい。被害者自身も「暴力を振るわれていないからDVではない」と考えてしまいがちです。

第二に、「お金の管理は夫がする」「妻は家計のやりくりを任されているだけ」といった役割分担として正当化されやすい。日本の伝統的な家庭観では家計管理を一方が担うことが一般的とされてきた文化的背景があり、経済的支配がDVとして認識されにくい環境があります。

第三に、被害者が経済的に加害者に依存している場合、声を上げることが困難。生活費供給を断たれる恐怖や、経済的自立の見通しが立たないことから、被害を訴えられないケースが多くあります。

第四に、米国の調査ではアメリカ人の78%が経済的虐待をDVとして認識しておらず、社会全体の認知度の低さも一因。日本でも「お金のことは夫婦の問題」「贅沢を言っているだけ」と理解されないことが多いのが実情です。

DV防止法との関係

経済的DVとDV防止法

日本のDV防止法(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律)は、当初は身体的暴力を中心に保護対象としていましたが、その後の改正で精神的暴力も一部の保護命令対象に含まれるようになりました。

経済的DVについて直接「経済的暴力」を定義した法律はありませんが、行為が精神的苦痛をもたらす場合には精神的暴力の範疇として保護対象になりえます。生活費を渡さない行為は、民法上の婚姻費用分担義務(民法760条)の不履行に該当し、家庭裁判所に婚姻費用の分担を求める調停申立てが可能です。

2024年の法改正では、DV防止法の保護命令の対象が拡大され、精神的暴力や性的暴力も含まれるようになりました。経済的DVに関連する行為もより広く法的保護の対象となることが期待されています。

統計データ

数字で見る経済的DVの実態

日本では、内閣府の「男女間における暴力に関する調査」によると、配偶者から何らかのDVを受けた経験がある女性は約4人に1人とされ、うち経済的暴力経験者も一定の割合を占めます。配偶者暴力相談支援センターへの相談件数は年間約12万件、DV相談+への相談件数も増加傾向です。ただし経済的DVについての独立した統計データは十分に整備されておらず、被害者がDVと認識していないケースも多いため、統計上の数字は氷山の一角と考えられます。

99%
DV事例に経済的虐待が含まれる割合(米国調査)
78%
経済的虐待をDVと認識していない人の割合(米国)
90%
DV被害者が経済的虐待を経験している割合(豪州調査)
約12万件
配偶者暴力相談支援センターへの年間相談件数(日本)

英国Surviving Economic Abuse(SEA)の調査では、経済的虐待は身体的暴力と同程度に被害者に深刻な影響を与え、虐待的関係を離れた後も長期にわたり経済的困難に直面し続けることが明らかになっています。豪州の調査ではDV被害者の約90%が経済的虐待を経験しており、経済的理由が暴力的関係にとどまる主要因の一つと示されています。

TYPES

経済的DVの6つの種類と具体例

経済的DVは様々な形態で行われ、複数のパターンが組み合わさることも多くあります。それぞれの目的は「日常生活の支配」「経済的自立の阻害」「社会的孤立」「自律性の剥奪」「経済的搾取」「行動のコントロール」と異なりますが、共通するのは支配と搾取です。

6つの種類

経済的DVの代表的な6パターン

下のタブから各種類の具体例を確認できます。多くの被害者は複数のパターンを同時に経験しており、ひとつでも当てはまる場合は専門相談窓口への連絡を検討してください。

💸生活費を渡さない・制限する

配偶者に十分な収入があるにもかかわらず、食費・光熱費・住居費・医療費・子どもの教育費など基本的な生活費を意図的に渡さない、または極端に少額しか渡さない行為。月収が十分でも数万円程度しか渡さない、食費が家族分の食事を賄えない、給食費・教材費を支払わない、必要な医療費を出さない、光熱費を拒否し電気・ガスを止められる、被害者が実家や知人から借金して生活費を賄う状況に追い込むなどのケースがある。

💡
目的別の整理生活費の制限=日常生活の支配/収入・財産管理=経済的自立の阻害/就労妨害=社会的孤立と依存強化/支出監視=自律性の剥奪/借金強要=経済的搾取/報酬・罰=行動のコントロール。
他のDVとの関係

経済的DVと他のDVの複合的な構造

経済的DVは、しばしば他の形態のDVと組み合わさって行われます。組み合わさることで被害の深刻さは単独の場合より大幅に増大し、被害者は自分の判断や感覚を信じられなくなります。

  • 身体的暴力生活費を求めると殴られる、お金の使い方で口答えすると暴力を振るわれるなど経済的要求が暴力の引き金になる。怪我を負わせた後に治療費を出さない形の経済的DVも。併存すると深刻さは大幅に増大。
  • 精神的暴力(モラハラ)「お前は何もできない」「稼ぎもないくせに」「金食い虫」などの言葉が経済支配を補強。被害者は自分の判断や感覚を信じられなくなり、経済的DVを被害として認識できなくなる。
  • 性的暴力性的要求に従わないと生活費を削減するなど、性的強要と経済支配が結びつくケースがある。
  • 社会的孤立交際費がない・交通費がない・自分のお金がないことで友人や実家との関係が断たれる。「分離戦略」と呼ばれるDVの典型的手法であり、相談相手・客観的判断材料を失わせる。
CHECKLIST

経済的DVチェックリスト

以下の項目に当てはまるものがないか確認してみてください。複数該当する場合は経済的DVの被害を受けている可能性があり、一つでも該当する場合は専門相談窓口への相談をお勧めします。

15項目チェック

被害者向けチェックリスト(全15項目)

すべての状況を網羅しているわけではありませんが、自己認識のためのツールとして活用してください。

  • 1生活に必要な十分なお金をもらえていない
  • 2配偶者(パートナー)の収入や貯蓄の額を知らない
  • 3自分の収入を配偶者(パートナー)にすべて管理されている
  • 4自分名義の銀行口座やクレジットカードを持つことを許されていない
  • 5買い物のたびにレシート提出を求められ細かくチェックされる
  • 6自分のために使えるお金(お小遣い)がまったくない、またはごくわずか
  • 7友人との付き合いや外出のための費用を使うと怒られる
  • 8働きたいと思っているが配偶者(パートナー)に禁止されている
  • 9仕事に行くことを妨害される(出勤前に喧嘩をふっかけるなど)
  • 10お金を使うことに常に罪悪感や恐怖を感じている
  • 11配偶者(パートナー)は自分の趣味や交際に自由にお金を使っている
  • 12自分名義の借金を作るよう強要されたことがある
  • 13生活費が足りず実家や友人に借金をしている
  • 14「俺(私)がいなければお前は生きていけない」と言われたことがある
  • 15お金のことで口論になると暴力や暴言を受ける
活用方法

チェックリストの活用方法

重要なのは、あなたが配偶者やパートナーとの関係において経済面で「不公平だ」「おかしい」「つらい」と感じているかどうかです。その感覚は正しいものです。健全なパートナーシップでは家計に関する情報が共有され、お金に関する重要な決定は双方の合意のもとで行われます。一方的な管理や支配は対等な関係ではありません。

チェックリストの結果を持って専門の相談窓口に相談することをお勧めします。相談員があなたの状況を客観的に評価し、適切な支援につなげてくれます。相談は匿名でも可能です。

⚠️
あなたは悪くありません経済的DVの被害に気づくことは回復への第一歩です。「自分が悪い」「贅沢を言っているだけ」と自分を責める必要はありません。経済的DVは加害者の責任です。困っている場合はDV相談+(0120-279-889、24時間対応)に電話してみてください。
PROFILE OF ABUSER

経済的DV加害者の特徴

加害者には共通して見られる典型的なパターンがあります。これらを知ることは、被害を客観的に理解し「自分の側に問題があるのではないか」という自責感から抜け出す助けになります。

4つの特徴

加害者に見られる典型的な特徴

加害者の言動を「個性」や「夫婦間の問題」として一般化せず、構造的なパターンとして認識することが、回復への重要な視点となります。

👑
支配欲とコントロール欲求
家庭内での権力を握りたい欲求が経済支配として表出。パートナーの経済的自立を脅威と感じ、就労妨害・社会的つながりの遮断で無力な状態を維持。子どもにも向けられ、お小遣い管理・教育や進路の一方的決定として現れる。
🎭
外面の良さと二面性
職場では有能、友人には気前よく、親族からは「いい旦那(奥さん)」と評価されることが多い。被害者が助けを求めても「あの人がそんなことをするはずがない」と信じてもらえず孤立する。家庭外では惜しみなく使う一方、家庭内では極端に制限する矛盾した行動も。
🛡
正当化と責任転嫁
「お金の管理ができないお前のためにやっている」「家族のため節約しているだけ」「お前の金銭感覚がおかしい」と加害をパートナーの欠点のせいにする。「稼いでいるのは自分だから決めて当然」と支配を権利として主張するが、婚姻中の収入は夫婦の共有財産であり一方的な管理権は存在しない。
🔄
世代間連鎖の可能性
加害者自身がDV家庭で育ったケースもある。ただしDV家庭で育った全員が加害者になるわけではなく、多くは反面教師として健全な関係を築く。加害者がカウンセリングで自分の根源にある問題に向き合えば変化は可能。ただし被害者が「待つ」必要はなく、被害者の安全が最優先。
加害者の「外面の良さ」と「家庭内の支配」のギャップが大きいほど、被害者は孤立しがちです。あなたの感じているおかしさは、外の人には見えていないだけで、確かに存在します。
IMPACT

経済的DVの心理的・身体的影響

経済的DVは被害者の心と体に深刻な影響を及ぼします。長期化するとうつ病・不安障害・複雑性PTSDのリスクが高まり、慢性的な身体症状も現れます。子どもへの影響も無視できません。

心理的影響

心と体に及ぼす4つの影響

経済的DVは「殴られないから軽い」のではありません。長期的・慢性的なストレスが心身を蝕みます。

💔
自己肯定感・自尊心の低下
「お金の管理ができない」「判断力がない」「無能だ」と言われ続け、「自分には何もできない」という無力感に支配される。日常の些細な買い物にも許可が必要な生活は「一人前の大人として扱われていない」屈辱感を生み、社会的交流の機会を奪い孤立感を深める。
🌧
うつ病・不安障害のリスク
慢性的なお金の心配、加害者の顔色をうかがい続ける緊張、将来の見通しのなさが精神を蝕む。気分の落ち込み・興味や喜びの喪失・疲労感・集中力低下・睡眠障害・食欲変化、過度の心配・落ち着きのなさ・筋肉の緊張・パニック発作などが現れる。
🔗
学習性無力感とトラウマ・ボンディング
「お金を管理しても取り上げられる」「働こうとしても妨害される」「助けを求めても理解されない」経験の繰り返しで「何をしても無駄」という諦めが生まれる。経済的依存は心理的依存も生み、「この人がいなければ生きていけない」という信念=トラウマ・ボンディングが虐待関係を維持する。
🤕
身体的影響
慢性ストレスは頭痛・胃痛・下痢・便秘・不眠・慢性疲労・免疫機能の低下・高血圧を引き起こす。生活費不足から栄養不良に陥る危険、子どもの成長発達への影響、必要な医療を受けられず疾患悪化のリスクもある。身体的暴力を伴えば打撲・骨折・切り傷も加わる。
💡
「自分がうつだから物事がうまくいかない」と考えがちですが、実際にはDV被害がうつの原因であることを理解することが重要です。
複雑性PTSD

長期被害が引き起こす複雑性PTSD

長期間にわたる経済的DVは複雑性PTSD(Complex PTSD:C-PTSD)を引き起こす可能性があります。複雑性PTSDは単回の外傷的出来事による通常のPTSDとは異なり、繰り返し・長期間にわたるトラウマ的経験によって発症するとされ、DVのような長期的虐待関係はその主な原因の一つです。

  • 感情調節の困難(強烈な感情の波、感情のしびれ)
  • 否定的な自己認識(自分は欠陥がある・価値がないという感覚)
  • 対人関係の困難(信頼関係を築けない、孤立感)
  • フラッシュバックや悪夢などのPTSD症状
  • 解離症状(現実感の喪失、記憶の空白)

治療法としてはトラウマに焦点を当てた認知行動療法(TF-CBT)、眼球運動脱感作再処理法(EMDR)、ソマティックエクスペリエンス(SE)、弁証法的行動療法(DBT)などが有効とされています。これらの治療を行う精神科・心療内科の受診時には、自立支援医療制度(精神通院医療)の利用により、通院医療費の自己負担が原則1割(世帯所得に応じて月額2,500円〜5,000円の上限あり)に軽減されます。申請は市区町村の障害福祉担当窓口で、主治医の診断書(自立支援医療用)と申請書類を提出。有効期間は1年で、継続には更新手続きが必要です。

⚠️
医療費が心配な方へ精神保健福祉センターは各都道府県・政令指定都市に設置されている公的機関で、精神科医・心理士・精神保健福祉士による相談・カウンセリング、自立支援医療制度の案内、医療機関や支援団体との連携が原則無料で受けられます。連絡先はこころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)で案内されます。
子どもへの影響

経済的DVが子どもに与える影響

経済的DV家庭の子どもは、直接的影響と心理的影響、そして長期的影響を受けます。

  • 直接的な影響生活費不足で十分な食事・衣服・学用品が得られない、医療機関を受診できない、学校行事や習い事に参加できないなど基本ニーズが満たされない。給食費未納・学用品の不足・行事不参加から同級生のいじめや差別を受けるリスクが高まる。
  • 心理的な影響親同士の経済的口論を目撃する「面前DV」の被害者として深刻な心理影響を受ける。不安障害・うつ症状、自己肯定感の低下、攻撃性の増大または過度な萎縮、学業成績低下、友人関係の困難、睡眠障害、退行行動、お金への過度な不安や執着などが現れる。「自分が悪いからお金がないんだ」「自分がいなければ家族は楽になる」と自分を責める場合も。
  • 長期的影響と世代間連鎖の予防成人後の対人関係やお金の捉え方に長期影響。経済的支配を「普通」と捉えたり、自身が加害者・被害者になるリスクが高まる場合がある。ただし連鎖は必然ではなく、子ども向けカウンセリング・心理教育、健全な大人のモデル、学校でのDV予防教育で断ち切れる。最重要は子と共に安全に逃れること、子の心理回復は安全確保後に始まる。
罪悪感を持つ必要はないDV被害者の親は子どもに及ぼしている影響に罪悪感を抱きがちですが、最も重要なのはDVのある環境から子どもとともに安全に逃れることです。子どもの心理的回復は、安全な環境が確保された後から始まります。
ADVANCED TACTICS

経済的DVの高度な支配戦術

加害者は単に「お金を渡さない」だけでなく、巧妙な心理的・経済的戦術を組み合わせて被害者を支配します。これらを言語化することは、被害者が自分の状況を客観視し、適切な対処につなげる第一歩です。

4つの戦術

加害者が用いる4つの巧妙な戦術

📁
財産情報の隠蔽と情報格差の利用
給与明細・源泉徴収票を見せない、銀行口座の残高を教えない、不動産や投資を一切開示しない、保険の加入内容を伝えない。「情報の非対称性」が最強の支配道具となり、被害者は「本当に苦しいのか・十分なお金があるのに渡さないのか」さえ判断できない。婚姻費用分担調停や離婚調停では弁護士を通じて「調査嘱託」「文書送付嘱託」を申し立て、給与明細・源泉徴収票・預金通帳・確定申告書の開示を求めることが可能。
🚷
経済的アイソレーション(孤立化)
交際費を認めず友人との付き合いを断ち、交通費を渡さず実家への帰省を不可能にし、携帯電話の使用を監視・制限して家族や友人との連絡を遮断。「もったいない」「電話料金が高い」と言い訳を積み重ね、被害者を少しずつ外の世界から切り離す。孤立した被害者は加害者の言動が「おかしい」と気づく機会も失う。DV相談+(0120-279-889)やDV相談ナビ(#8008)、精神保健福祉センターの利用が突破口。
💳
クレジット・スコアの悪用と信用破壊
被害者名義のクレジットカードを無断使用し限度額まで使い切る、被害者名義のローンを作って返済しない、被害者名義の口座を過剰に引き落とす、連帯保証人にした上で意図的に債務不履行を起こす。信用情報の毀損で離婚・別居後にカードが作れない、アパートの審査に通らない、就職で不利になる。加害者はこれを「人質」として「俺のそばを離れれば生活できない」と脅す。弁護士に相談し債務整理(任意整理・自己破産)の検討、法テラスの費用立替制度の活用が必要。
🌫
ガスライティングによる現実認識の歪曲
「そんなに渡しているのに何が不満だ」「お前の金銭感覚がおかしいから足りない」「みんな同じ生活なのにお前だけ贅沢」と言い続け、被害者の現実認識を意図的に歪める。被害者は「自分の使い方が悪いのかも」「自分が無駄遣いしているだけかも」と自己批判するようになり、DVを認識できず援助を求められなくなる。第三者(相談員・カウンセラー・弁護士)に話し客観評価を求めること、精神保健福祉センターでの心理支援が回復に有効。
💡
戦術を「名前」で認識する「これはガスライティング」「これは経済的アイソレーション」と名前で認識することで、被害者は加害行為を客観的に捉え直せます。これは回復過程における重要なステップです。
HOW TO ACT

対処法と法的対応

経済的DVから抜け出すには、認識→証拠→相談→安全計画→経済的自立の順で段階的に進めます。同時に、法的手段(婚姻費用分担請求・保護命令・離婚・通告)も活用できます。

5ステップ

経済的DVから抜け出す5つのステップ

STEP 1
状況を認識する
チェックリストで自分の状況を客観的に評価する。「自分が悪いのではないか」「贅沢を言っているだけではないか」と思いがちだが、パートナーによる経済的支配や搾取はどんな状況でも正当化されない。ガスライティングで自分の感覚を疑うようになっていても、「おかしい」「つらい」と感じる感覚は正しい。
自己認識
STEP 2
証拠を集める
家計簿・通帳のコピー、配偶者の収入を示す資料(源泉徴収票・給与明細)、DV発言のメッセージ/メールのスクショ、日記・メモ(日時・内容の記録)、医療機関の受診記録、相談機関への相談記録を収集。加害者がアクセスできない場所(信頼できる友人・家族のもと、クラウドストレージ、職場のロッカー)に保管。スマホ・PCは監視されている可能性に注意。
安全に慎重に
STEP 3
相談する
DV相談ナビ(#8008)で最寄り窓口へ転送。DV相談+(0120-279-889)は24時間・電話/メール/チャット対応。配偶者暴力相談支援センターは全国に設置されDV専門相談員が対応。弁護士相談は法テラス(0570-078374)の無料法律相談を利用。匿名相談可・秘密厳守。
匿名・秘密厳守
STEP 4
安全計画を立てる
緊急時の避難先(一時保護施設、親族・友人宅)、必要書類のコピー(戸籍謄本・住民票・保険証・年金手帳・パスポート・運転免許証)、当面の生活費、子どもの学校・保育園への連絡方法、携帯の安全性確認(位置追跡アプリの有無)、支援機関との連携を含める。DV相談員と一緒に作成するのが望ましい。
DV相談員と作成
STEP 5
経済的自立に向けた準備
自分名義の銀行口座を開設し少しずつ貯蓄を始める。パート・アルバイトなど収入手段を確保。ハローワークの「マザーズコーナー」、就労支援制度を活用。生活保護・児童扶養手当・住居確保給付金など公的支援制度の情報を事前に集める。「自立できないから逃げられない」と感じる方も、利用できる制度は想像以上に多い。
少しずつ着実に
「すぐに自立しなければ」と焦る必要はありません。情報を集め、専門家と一緒に計画を立てることが、安全で確実な脱出につながります。
法的対応

経済的DVに対する法的手段

日本の法制度では、経済的DV被害者を守るための様々な法的手段が用意されています。

婚姻費用分担請求

民法760条により夫婦は資産・収入に応じて婚姻費用(食費・住居費・衣服費・医療費・子の養育費)を分担する義務がある。家庭裁判所に「婚姻費用分担請求調停」を申立て、調停委員を介して話し合い金額を決定。成立すれば裁判上の和解と同じ効力を持ち、不払い時は強制執行(給与差押え)が可能。不成立時は審判で裁判官が決定。算定には「婚姻費用算定表」(夫婦の年収と子の人数・年齢ベース)を用いる。

保護命令の申立て

DV防止法に基づき被害者の安全確保のために発令される命令。接近禁止命令(付きまとい禁止)、退去命令(共同住居からの退去)、電話等禁止命令、子どもへの接近禁止命令などがある。2024年改正で保護命令の対象が拡大され、精神的暴力も含まれるようになった。違反時は1年以下の懲役または100万円以下の罰金。地方裁判所に申立て、弁護士のサポートが望ましい。

離婚と慰謝料・財産分与

経済的DVは民法770条1項5号「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当しうる。長期の生活費不渡り・就労妨害・経済的搾取が証拠化されれば裁判離婚が認容される可能性が高まる。慰謝料は数十万〜数百万円の範囲で認められる事例あり。財産分与は原則均等(2分の1ルール)。財産隠匿には弁護士を通じた財産調査で対応。

児童虐待としての通告

経済的DVが子どもに影響している場合(十分な食事・必要な医療・教育機会の剥奪等)はネグレクトとして児童虐待防止法上の通告対象。児童相談所全国共通ダイヤル「189(いちはやく)」へ通告。通告は義務、秘密は守られる。

刑事的側面

経済的DV自体を直接処罰する法律はないが、生活費を渡さず生活困窮させる行為は「保護責任者遺棄罪」、借金強要は「強要罪」に該当する可能性がある。DV防止法は精神的暴力も保護対象としており、身体的・精神的暴力を伴う場合は保護命令申立ても可能。

💡
弁護士費用に不安がある場合は法テラス(0570-078374)の無料法律相談・費用立替制度を活用できます。経済的に余裕がない方を対象に、経済的DVの法的対応について弁護士に無料相談ができます。
SUPPORT SYSTEMS

支援制度・相談窓口

「お金がない」「行く場所がない」と感じていても、利用できる公的支援制度・相談窓口は想像以上に多く存在します。一人で抱え込まず、まずは相談から始めましょう。

公的支援制度

利用できる6つの公的支援制度

経済的DV被害者が活用できる公的支援は、住居の確保から生活費の保障、子育て支援、法的支援まで多岐にわたります。

一時保護施設(シェルター)
配偶者暴力相談支援センター/DV相談+

婦人相談所(女性相談支援センター)付設の一時保護所、民間DVシェルター。宿泊と食事提供、生活費の心配なく安全に過ごせる。子連れ入所可、所在地は秘密。

生活保護
福祉事務所

最低限度の生活を保障する制度。DV被害者は住所地の福祉事務所で申請、住所不定でも受理されうる。生活扶助・住宅扶助・医療扶助・教育扶助が支給される。

児童扶養手当・児童手当
市区町村役所

児童扶養手当はひとり親家庭の生活安定と児童福祉のための制度(18歳に達する日以後の最初の3月31日まで)。DVで事実上のひとり親状態でも対象。児童手当は中学校卒業まで、別居後は実際に養育する側が受給可能。

母子父子寡婦福祉資金貸付金
福祉事務所

ひとり親家庭の経済的自立支援。技能習得資金・住宅資金・修学資金・生活資金などの種類があり、無利子または低利子。

住居確保給付金
自立相談支援機関

離職・廃業や収入減少で住居を失うおそれがある方に家賃相当額を支給。原則3か月、最長9か月まで延長可。DVで住居を失った場合にも利用可能。

法テラス
0570-078374

無料法律相談、弁護士費用立替制度を提供。経済的DVの法的対応(婚費・離婚・慰謝料・保護命令)について弁護士に無料相談可。

相談窓口

経済的DVの相談窓口一覧

DV専門・法律・生活支援・心理支援、それぞれの分野の窓口があります。複数を組み合わせて利用することで、包括的な支援を受けられます。

📞
DV相談ナビ(#8008)
最寄り窓口に転送全国共通の電話番号。お住まいの地域の配偶者暴力相談支援センターに転送され、専門相談員が対応。
📞
DV相談+(プラス)
24時間・多言語対応0120-279-889。電話・メール・チャットでの相談可。10言語の外国語にも対応。一時保護への接続も可能。
📞
配偶者暴力相談支援センター
対面相談・自立支援全国の都道府県・市区町村に設置。相談・情報提供・一時保護・自立支援を実施。対面相談可。
📞
よりそいホットライン
総合相談窓口0120-279-338。24時間対応。DVを含む様々な悩みを受付、外国語対応も可能。
📞
精神保健福祉センター
心の問題への専門支援こころの健康相談統一ダイヤル0570-064-556。精神科医・心理士・精神保健福祉士による相談、自立支援医療制度(精神通院医療)の案内、医療機関や支援団体との連携。費用は原則無料。
📞
日本司法書士会連合会
法的支援DV被害者への法的支援を実施。各地の弁護士会もDV被害者向けの法律相談を行っている。
📞
児童相談所全国共通ダイヤル
189(いちはやく)経済的DVが子に影響している場合のネグレクト通告先。通告は義務、秘密は守られる。
あなたは一人ではありません相談することは弱さの表れではなく、勇気ある一歩です。今すぐ逃げることが難しくても、まずは相談するだけで構いません。DV相談+(0120-279-889)は24時間対応で、匿名相談も可能です。
RECOVERY

回復と離婚後の生活再建

経済的DVからの回復は安全確保→心理的回復→経済的自立→人間関係の再構築という長期プロセスです。離婚後の財産分与・養育費・住居・就労支援・中長期の経済設計まで、計画的に進めましょう。

回復プロセス

4つの回復フェーズ

回復のペースは人によって大きく異なります。「こんなに時間がかかっている自分はダメだ」と自分を責める必要はありません。

PHASE 1
安全の確保と生活の安定化
加害者から物理的に離れ安全を確保。一時保護施設利用、親族・友人宅への避難、新住居の確保。生活保護・児童扶養手当・住居確保給付金など公的支援を活用。配偶者暴力相談支援センターや福祉事務所の相談員が手続きをサポート。
最優先
PHASE 2
心理的な回復
カウンセリング・心理療法。認知行動療法(CBT)は否定的思考パターンの修正と自己肯定感の回復に有効。トラウマに焦点を当てたTF-CBT・EMDRはPTSD症状改善に役立つ。DV被害者向けグループカウンセリングや自助グループへの参加で「自分だけではない」安心感が得られる。
時間がかかる
PHASE 3
経済的自立の再建
自分名義口座の開設と管理、家計管理(家計簿・予算)の習得、就活・職業訓練、資格取得、貯蓄計画・保険加入など将来の生活設計。ハローワーク「マザーズコーナー」、各自治体の就労支援、民間就労支援団体の活用。
段階的に
PHASE 4
健全な人間関係の再構築
信頼できる友人・家族とのつながりを大切に。地域コミュニティ・趣味のグループ・子育てサークルへ参加し新しい関係を築く。家計管理は双方の合意と透明性に基づくこと、経済決定は共同で行うこと、お金は支配の道具ではないことを原則として心に留める。
少しずつ
離婚後の生活再建

離婚後に取り組む4つの課題

別居・離婚後の生活再建は財産分与・就労支援・住居確保・中長期計画の4本柱で進めます。

財産分与と養育費の確保

婚姻中に形成された財産は原則2分の1ずつ分割(2分の1ルール)。財産隠匿には弁護士を通じた財産調査で対応。養育費は「養育費算定表」を参考に双方の収入に応じて設定。不払いに備え公正証書を作成し強制執行認諾条項を付ける。2020年の民事執行法改正で「財産開示手続」が強化され、相手方の勤務先・口座情報の調査がしやすくなり、不払いへの抑止力が高まっている。

ひとり親家庭のための就労支援

ハローワーク「マザーズコーナー」でキャリアコンサル・求人紹介・保育所情報。「自立支援教育訓練給付金」は看護師・介護福祉士・保育士などの資格取得学費の一部(最大20万円または受講費用の60%)を支給。「高等職業訓練促進給付金」は看護師・介護福祉士・保育士・歯科衛生士・美容師・社会福祉士・製菓衛生師・調理師などの2年以上の養成機関通学中(最大3年)月額10万円(市町村民税課税世帯は7万500円)を支給。

住居の確保と生活基盤の整備

公営住宅(都道府県営・市区町村営)への優先入居制度をDV被害者・ひとり親家庭向けに設ける自治体が多い。住居確保給付金は家賃相当額を原則3か月(最長9か月)支給。シングルマザー・シングルファーザー向けシェアハウスや、母子生活支援施設(母子寮:18歳未満の子を養育するひとり親家庭が入所、生活支援員のサポートを受け自立を目指す)も選択肢。申請は市区町村の福祉事務所。

中長期的な経済的自立

家計簿で収支を把握する習慣が経済的自立の第一歩。手取りの少なくとも10%を貯蓄に回し、緊急時に備え生活費3〜6か月分を確保。子の教育費の積立計画も早めに。生命保険・医療保険を見直し必要な保険に加入。市区町村の無料「くらしの窓口相談」やファイナンシャルプランナーの無料相談会も活用できる。

⚠️
焦らず一歩ずつ経済的DV被害からの回復には時間がかかります。「早く自立しなければ」と焦る必要はありません。生活に行き詰まりを感じたら、福祉事務所や自立相談支援機関(生活困窮者支援窓口)に遠慮なく相談してください。精神的なつらさが続く場合は精神保健福祉センターや心療内科への相談を検討し、必要であれば自立支援医療制度(精神通院医療)を活用しましょう。
セルフケア

回復を支える日常のセルフケア

専門治療と並行し、日常のセルフケアも回復の重要な支えとなります。深刻な症状がある場合は専門家への相談が優先です。

  • 規則正しい生活リズムの維持(睡眠・食事・適度な運動)
  • 感情を表現する場の確保(日記、信頼できる人に話す)
  • 小さな成功体験の積み重ね(家計を自分で管理、好きなことに少しお金を使う)
  • マインドフルネスや深呼吸などストレス軽減法の実践
  • 同じ経験を持つ仲間とのグループへの参加
長期間にわたって受け続けた経済的DVの影響から回復するには、それ相応の時間が必要です。自分自身に対して思いやりを持ち、一歩ずつ前に進んでいくことが大切です。
FAQ

よくある質問

経済的DVに関してよく寄せられる質問にお答えします。判断に迷ったら、専門の相談窓口に連絡してみてください。

Q&A

経済的DVのよくある質問

Q. 経済的DVとは何ですか?

A. 配偶者やパートナーが金銭面で一方的に相手を支配し、経済的な自由を奪う行為です。具体的には生活費を渡さない、働くことを禁止する、収入を全額管理する、お金の使い道を細かくチェックする、借金を強要する、クレジットカードを使わせないなどが含まれます。身体的暴力を伴わない場合も多いですが、被害者の自立を妨げ精神的に大きなダメージを与える深刻なDVの一形態です。

Q. 生活費をもらえないのは経済的DVですか?

A. 配偶者に十分な収入があるにもかかわらず、生活に必要な費用を渡してもらえない場合は、経済的DVに該当する可能性が高いです。食費・光熱費・住居費・医療費・子どもの教育費など基本的な生活費を意図的に渡さない行為は典型的な経済的DVのパターンです。家庭の収入が低く渡せない場合とは区別が必要なので、判断に迷う場合は専門の相談窓口に相談してください。

Q. 経済的DVを受けている場合、離婚できますか?

A. 民法770条1項5号「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する可能性があり、長期の生活費不渡り・就労妨害・財産隠匿などが認められれば裁判で離婚が認められるケースがあります。経済的DVを理由とした慰謝料請求も可能です。法テラス(0570-078374)では無料法律相談が受けられます。

Q. 経済的DVの証拠はどう集めればいいですか?

A. 家計簿や通帳のコピー(生活費が不十分の証明)、配偶者の収入を示す資料(源泉徴収票・給与明細のコピー)、DVに関するメッセージ・メールのスクリーンショット、日記・メモ(日時・内容の記録)、医療機関の受診記録(精神的影響の証明)、相談機関への相談記録などが有効です。配偶者に気づかれないよう注意して集めてください。

Q. 経済的DVの加害者にはどのような特徴がありますか?

A. 支配欲が強く家庭内の権力を金銭的にコントロールしようとする、外面がよく周囲からは「いい人」と思われている、自分の金銭感覚が正しいと信じ相手の管理能力を否定する、家計の収支を相手に開示しない、相手の就労や社会参加を制限しようとする、自分の趣味や交際には自由に使う一方で配偶者の支出を厳しく制限する、などの特徴があります。

Q. 経済的DVは犯罪ですか?

A. 経済的DV自体を直接処罰する法律はありませんが、関連する行為が犯罪に該当する場合があります。生活費を渡さず生活困窮させる行為は「保護責任者遺棄罪」、借金強要は「強要罪」に該当する可能性があります。DV防止法は精神的暴力も保護対象としており、身体的・精神的暴力を伴う場合は保護命令の申立ても可能です。

Q. 経済的DVから逃げたいのですが、お金がありません。どうすればいいですか?

A. お金がない状態でも利用できる支援制度があります。配偶者暴力相談支援センターやDV相談+(0120-279-889)に相談してください。一時保護施設(シェルター)では生活費の心配なく安全に過ごせます。生活保護の申請、母子父子寡婦福祉資金の貸付、児童扶養手当、住居確保給付金などの公的支援、法テラスの弁護士費用立替制度も利用可能です。経済的不安から逃げ出せないと感じても、必ず道はあります。

Q. 夫が家計を管理しているのは経済的DVですか?

A. 配偶者の一方が家計を管理すること自体は必ずしも経済的DVに該当しません。問題は、家計管理が一方的な支配や搾取の手段として使われている場合です。家計の収支を相手に開示しない、相手の個人的支出を極端に制限する、自由に使えるお金(お小遣い)がまったくない、相手が家計について意見を言えない雰囲気がある場合は経済的DVの可能性があります。健全な家計管理は双方の合意と透明性に基づくものです。

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このページの情報は、医師による診断や治療に代わるものではありません。症状が気になる場合は、心療内科・精神科への受診をご検討ください。

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