性的DVとは?
定義・種類・具体例・心理的影響・被害者心理・対処法・相談窓口を徹底解説
性的DV(性的ドメスティック・バイオレンス)とは、配偶者やパートナーに対して性的な行為を強要したり、性的な場面で相手の意思を無視したりする暴力行為。たとえ婚姻関係にあっても相手の同意なく行われる性的行為はDVに該当します。定義・種類・心理・影響・法的対応・回復・相談窓口まで、必要な情報をすべてここにまとめました。
性的DVとは
性的DV(性的ドメスティック・バイオレンス)とは、配偶者やパートナーに対し性的な行為を通じて相手を支配・コントロールする暴力行為。婚姻関係にあっても、相手の同意なく行われる性的行為はDVに該当します。
性的DVの定義
性的DV(性的ドメスティック・バイオレンス)とは、配偶者やパートナーに対して、性的な行為を通じて相手を支配・コントロールする暴力行為のことです。内閣府男女共同参画局はDVの一形態として『性的暴力』を定義しており、性行為の強要、避妊に協力しない行為、中絶の強要、ポルノビデオや雑誌を見せるなどの行為がこれに含まれるとしています。
本質は『性』を手段とした『支配と権力の行使』にあります。加害者は性的行為を通じて相手を支配し、自分の優位性を示そうとします。これは愛情や親密さの表現とは本質的に異なる、相手の同意・尊厳・身体的自律性を無視した暴力行為です。
婚姻関係やパートナー関係にあっても、相手の同意のない性的行為はDVに該当します。『夫婦だから』『付き合っているから』『結婚しているから』性的行為に応じる義務があるという考えは誤り。すべての性的行為は双方の自由な同意に基づいて行われるべきものです。WHO調査では、全世界で女性の3人に1人以上(約4,350万人以上の米国女性)が親密なパートナーからの性的暴力・身体的暴力・ストーキングを生涯で経験しているとされています。
性的DVが認識されにくい背景
性的DVはDVの中で最も認識されにくく相談のハードルが高い形態とされています。背景には複数の要因があります。
①『夫婦間での性行為は当然』『配偶者は性的要求に応じるべき』という社会的認識が根強く、被害者が自分の経験をDVと認識することを妨げる。②性的な被害について話すことへの強い心理的障壁——プライベートな領域として親しい友人や家族にさえ相談しにくく、特に日本社会では性に関する話題を公に語ることへの抵抗感が強い。③被害者自身の羞恥心や自責感——『自分が誘発したのではないか』『もっとはっきり断るべきだった』といった自責の念が開示を妨げる。④法律面での長年の課題——2017年以前は配偶者間での強姦が刑事犯罪として明確化されていなかった。2017年改正で『強制性交等罪』に変更され配偶者間適用が明確化、2023年改正で『不同意性交等罪』が新設された。
性的DVと「同意」の概念
性的DVを理解する上で最も重要な概念が『同意(コンセント)』。すべての性的行為は自由で積極的な同意に基づいて行われるべきもの。同意とは、圧力や強要・脅迫・恐怖のない状態で、相手が自由意思に基づいて性的行為に『はい』と言うことです。
- 同意はいつでも撤回できる——性的行為の途中であっても『やめたい』と言えば、その時点で同意は撤回される。
- 過去の同意は将来の同意ではない——前回同意していたとしても今回も同意しているとは限らない。
- 沈黙は同意ではない——抵抗しないことは同意を意味しない。恐怖や凍りつき反応で声が出ない・抵抗できない場合がある。泥酔状態や意識朦朧では有効な同意を与えられない。
- 関係性は包括的同意ではない——パートナーであっても毎回の性的行為について個別の同意が必要。『配偶者だから』『彼女(彼氏)だから』応じる義務は一切ない。
5つの主要な形態と具体例
タブを切り替えて各形態の具体例を確認してください。
相手の同意なく性行為を強要すること。暴力や脅迫を伴う明白なケースだけでなく、精神的な圧力や懐柔によって行われるケースも含む。
相手が望まない特定の性的行為を強制すること。相手の性的な好みや限界を無視し、嫌がる行為を強要する重大な暴力行為。
避妊に協力しない、または妊娠・中絶を強制する行為。被害者のリプロダクティブ・ライツを侵害し、人生に重大かつ不可逆的な影響を及ぼす。『リプロダクティブ・コアション』とも呼ばれる。
性的な場面での侮辱・嘲笑・屈辱を与える行為。性に関連した精神的な暴力で、自己肯定感と身体イメージを著しく傷つける。
パートナーの性的な行動を過度に監視・制限する行為。嫉妬や独占欲から、性的な観点でコントロールしようとする。『あなたのため』と正当化されるが、支配の表れ。
- 相手が拒否しても性行為を行う
- 疲れている・体調が悪い・気分が乗らないと言っているのに性行為を要求
- 断ると不機嫌になる・怒る・暴力を振るうなどの報復をちらつかせ従わせる
- 『浮気をする』『離婚する』『生活費を渡さない』と脅して応じさせる
- 酩酊状態や睡眠中の相手に対して性的行為を行う
- 性行為に応じないと長期間無視する(サイレント・トリートメント)
- 相手が嫌がる特定の性行為(肛門性交など)を強要
- 暴力的な性的行為を強いる
- ポルノグラフィーの視聴を強要
- ポルノで見た行為の再現を強要
- 性的な行為を撮影することを強要
- 第三者との性的行為を強要
- 売春を強要
- コンドームの使用を拒否
- 避妊薬の使用を禁止、または避妊薬を隠す・捨てる
- 被害者が望まない妊娠をさせる
- 逆に、被害者が望む妊娠を妨害
- 中絶を強要
- 逆に、被害者が望む中絶を妨害
- 相手の身体(体型・性器・性的反応)を嘲笑
- 『お前は下手だ』『魅力がない』『他の人のほうがよかった』と侮辱
- 性的な写真や動画を本人の同意なく第三者に見せる・ネット公開
- 性生活の詳細を本人の同意なく他者に話す
- 性的な場面で支配的・屈辱的な振る舞いを強いる
- 異性との交友関係をすべて禁止
- 相手の服装を『挑発的だ』として制限
- 外出時に誰とどこに行くかを逐一報告させる
- 浮気を疑って携帯電話やSNSを常にチェック
- パートナーの性的指向やジェンダーアイデンティティを否定
- 自慰行為を禁止
被害者を縛る4つの心理メカニズム
メンタルヘルスへの深刻な影響
身体への直接的・間接的な影響
性的DVは直接的・慢性的・リプロダクティブの3領域で身体に影響します。
- 暴力を伴う性的行為による打撲・裂傷・骨折などの外傷
- 性器の損傷
- 意図しない妊娠
- 性感染症(STI/STD)の感染リスク増大
- WHO調査:IPV被害女性の42%が暴力の結果として怪我を報告
- 慢性的な痛み(慢性骨盤痛・頭痛・背中の痛み)
- 消化器系の問題(過敏性腸症候群・慢性的腹痛・吐き気)
- 慢性疲労
- 免疫機能の低下による感染症の頻発
- 睡眠障害
- 食欲の異常(過食や拒食)
- 避妊非協力による望まない妊娠のリスク
- 妊娠中DVによる早産・低体重児出産・流産・胎児への外傷リスク
- 産後うつの発症リスク上昇
- コンドーム拒否によるHIV・梅毒・クラミジア・淋菌感染症リスク
日本の統計データ
内閣府『男女間における暴力に関する調査』によれば、配偶者から性的暴力を受けた経験がある女性は一定の割合に上ります。性的DVは被害者が声を上げにくい特性があり、実際の被害者数は統計を遥かに超えると推定されています。
日本性科学会の調査によれば『夫からの性行為の強要』を経験したことがある既婚女性は約1割。レイプ被害の加害者の半数以上が配偶者やパートナーであるという調査結果もあり、『見知らぬ人からの被害』というイメージとは大きく異なる実態が明らかに。DV相談窓口への性的DVに関する相談は年々増加傾向にあり、これは被害の増加だけでなく社会的認知度の向上も反映しています。
世界の統計データ
WHO調査によれば全世界で約3人に1人の女性が生涯で親密なパートナーからの身体的暴力または性的暴力を経験。米国NISVS(National Intimate Partner and Sexual Violence Survey)2016/2017調査では約4,350万人の女性と2,070万人の男性が生涯でIPVを経験。Nature Medicine 2023年掲載『Burden of Proof Study』ではIPV暴露と精神健康上の問題(うつ病・不安障害)、幼少期の性的虐待と成人期の健康問題との間に有意な関連が確認されています。
性的DVと身体的・精神的・経済的暴力
性的DVは多くの場合、身体的暴力と併存します。性的行為の際に暴力を振るう、拒否への報復として暴力を行使する、暴力後に『仲直り』として性行為を強要する——身体的痛みと性的屈辱を同時に受けることでトラウマがさらに深刻化します。
精神的暴力・経済的暴力とも密接に関連。『お前は魅力がないから他の誰も相手にしない』という精神的攻撃は自己肯定感を低下させ脱出を困難に。『性的要求に応じなければ生活費を渡さない』という経済的脅しは性的強要の手段に。DVは一つの形態だけで起こることは稀で、複数の形態が複合的に組み合わさるのが一般的。性的DV被害者は同時に身体的・精神的・経済的暴力の被害者でもある場合が多いのです。
不同意性交等罪・保護命令・離婚慰謝料
2023年改正で『強制性交等罪』から『不同意性交等罪』に。同意しない意思を形成・表明・全うすることが困難な状態にさせて性交等をした場合に処罰。要因は①暴行・脅迫、②心身の障害、③アルコール・薬物、④睡眠・意識不明瞭、⑤不意打ち、⑥恐怖・驚愕、⑦虐待に起因する心理的反応、⑧経済的・社会的関係上の地位による影響力。法定刑は5年以上の有期拘禁刑。配偶者間でも適用。
2024年改正で保護命令の対象が身体的暴力だけでなく精神的暴力や性的暴力にも拡大。接近禁止命令・退去命令・電話等禁止命令・子どもへの接近禁止命令・親族等への接近禁止命令など。違反は1年以下の懲役または100万円以下の罰金。
性的DVは民法770条1項5号『婚姻を継続し難い重大な事由』に該当し、裁判離婚の理由として認められる。性的DVを理由とした慰謝料請求も可能で、高額な慰謝料が認められるケースも。証拠の確保(医療機関の診断書、メッセージの記録、日記、相談機関への相談記録)が重要。DV問題に精通した弁護士への相談を推奨。
対処法と回復プロセス
安全確保・証拠保全・相談・心理支援の4ステップと、4段階の回復プロセス、自己肯定感の回復、親密な関係の再構築を解説します。
性的DVへの対処の4ステップ
回復の4段階と自己肯定感の回復
回復は段階的なプロセスで、一直線に進むものではなく前進と後退を繰り返しながら徐々に回復に向かいます。回復の速度は個人差が大きく、自分のペースで進むことが大切です。
自己肯定感の回復:自分の感情を認識し尊重する(『感じていることは正しい』と自分に言い聞かせる)、小さな成功体験を積み重ねる、セルフケアを日常的に行う、否定的なセルフトークに気づき修正する、支援的な人間関係を築く。『あなたは悪くない』——性的DVの責任は100%加害者にあります。
親密な関係の再構築:自分のペースを尊重する、『ノー』と言う権利を常に持っていることを認識する、パートナーとオープンなコミュニケーションを取る、不安やトリガーをパートナーに共有する、必要に応じてカップルセラピーを利用する。すべての人が新しいパートナーシップを持つ必要はなく、一人で幸せに生きることも立派な選択です。
被害者を支える対応・二次被害を避けるために
性的DV被害を打ち明けてくれた人への対応はその人の回復に大きな影響を与えます。
性的DVの相談窓口——9つの選択肢
一人で悩まず、専門家に相談してください。どの窓口も無料・匿名で対応します。
愛着障害・パートナー関係・複雑性PTSD
幼少期の性的虐待は愛着・対人関係・複雑性PTSDという形で長期的に心身に影響を与えます。回復のための制度・セルフケアも整理します。
性的虐待と愛着障害
愛着とは特定の人物との間に形成される情緒的な絆。乳幼児期に養育者から一貫した温かいケアを受けることで『世界は安全だ』『人は信頼できる』という基本的信頼感を育む。養育者からの性的虐待や見て見ぬふりは『守ってくれるはずの人が傷つける人でもある』というパラドクスとなり、不安定型愛着あるいは無秩序型愛着をもたらす。無秩序型愛着の子どもは養育者に近づきたい気持ちと恐れる気持ちが同時にあり、行動が一貫せず感情調節が困難になる。
不安型愛着:パートナーに強く依存し、少しの距離感にも強い不安や見捨てられ恐怖を感じ、過剰に気を引こうとしたり試す行動をとる。回避型愛着:親密さそのものを恐れ、深い関係になることを避ける、感情的つながりを遮断。これらは幼少期経験への自然な適応反応で『自分はおかしい』と責める必要はない。アタッチメント理論に基づくカウンセリングやスキーマ療法で安定方向へ変えていける。
『人は信頼できない』という深い信念は友人・職場・恋愛などあらゆる対人関係に影響。初対面の距離感調節が難しい(過度に打ち解けるor頑なに距離を置く)、本音を打ち明けられない、親切に『下心があるのでは』と疑う、グループで疎外感を感じやすい。社会的孤立はうつ病やPTSD症状を悪化させ回復を妨げる。支援者やカウンセラーとの関係を通じ『安全な他者との関係』を経験し直すことが回復の鍵。
性的虐待が親密なパートナー関係に与える影響
身体的親密さへの恐怖・嫌悪感(抱擁やキスでもフラッシュバックや強い不安)、性的場面でのフラッシュバック(特定の体位・暗さ・匂いがトリガー)、感情の麻痺・解離(親密な場面でぼーっとする・感情を感じられなくなる)、自己犠牲的セックス(NOと言えず不本意な行為に応じる)、過剰な性的行動(性的没入でコントロール感を求める)。意志の弱さや欠陥ではなくトラウマが脳と心理に与えた影響の結果。
開示するかどうか、いつ・どのように開示するかはあなたが決める権利を持つ。誰にでも話す必要はない。安心できる場所と時間帯を選び、『話したいことがある』と前もって伝える。詳細を全部話す必要はなく『過去につらい経験があって○○のときに不安になりやすい』という伝え方で十分。『どう接してほしいか』のリクエストも伝えるとパートナーがサポートしやすい。打ち明けられたパートナー側は『話してくれてありがとう』と寄り添うだけで十分で、解決しようとしたり詳細を根掘り葉掘り聞かない。
健全な関係に境界線設定は不可欠。『NOと言うと関係が壊れる』『境界線を引く権利がない』という思い込みは捨ててよい。身体的境界線(どの触れ方が安心か・何が不安か)、感情的境界線(どの話題・言動が傷つくか)、時間的境界線(一人になりたい時間の確保)を言葉で伝える練習を。『嫌だ』『怖い』『止めてほしい』はすべて正当。
虐待を受けた人が必ず虐待をするわけではない。世代間連鎖は存在するが、適切な支援で十分断ち切れる。自分の経験を認識し専門家のサポートを求められる親は、子どもに敏感で温かいケアを提供できることが多い。産前・産後の精神保健支援、地域の子育て支援センター、精神保健福祉センターに相談を。
複雑性PTSDと性的虐待の慢性的影響
一度きりの衝撃的出来事による通常PTSDに対し、複雑性PTSD(C-PTSD)は長期反復的トラウマ(幼少期の慢性的虐待、長期間のDVなど)で生じる。2019年WHOのICD-11に正式追加。通常PTSDの三大症状(侵入・回避・過覚醒)に加え『自己組織化の障害(DSO)』——感情調節の困難、否定的自己概念(深い恥・自分は根本的に欠陥がある信念)、対人関係の困難——が加わる。適切な治療で回復可能で『治らない』ものではない。
些細なことで激しく動揺or感情を感じられない。怒り・恐怖・悲しみ・羞恥心が突然押し寄せる一方、喜びや愛情を感じることが難しい。仕事での集中困難、慢性疲労、対人関係でのトラブル、アルコールや食事・自傷行為による感情調節(不適切な対処行動)。意志が弱いのではなく圧倒的なトラウマへの心の適応反応。弁証法的行動療法(DBT)やマインドフルネスに基づいた治療法が効果的。
トラウマは『身体に刻まれる』。慢性的な筋肉の緊張や痛み(特に骨盤底筋・肩・首)、触れられることへの過敏性または感覚の麻痺、自分の身体から切り離されたような感覚(離人症)、息が詰まる・胸が締め付けられる感覚、消化器系の慢性不調。ソマティック・エクスペリエンシング(SE)、身体志向トラウマ療法、ヨガ・タイ極拳など身体を動かすアプローチが有効。
自立支援医療制度(精神通院医療)で医療費自己負担が原則1割に軽減(PTSD・うつ病・解離性障害などの診断時、市区町村の障害福祉担当窓口で申請)。精神保健福祉センター(各都道府県・政令指定都市設置)は無料で相談を受け付け、トラウマや対人関係の困難にも対応、医療機関やカウンセリング機関への紹介も。自助グループ参加も回復に重要な役割。
ゆっくりお風呂・好きな音楽・自然の中の散歩・信頼できる人と話す——小さな行動が神経系を落ち着かせ安全感を取り戻す助けに。マインドフルネス(呼吸への意識、ボディスキャン瞑想、グラウンディング技法)はフラッシュバックや解離症状の管理に効果的、スマホアプリでも手軽。睡眠・食事・適度な運動も心身の回復に直接貢献。『いい日』も『つらい日』もそれが回復のリアルな姿で、調子の悪い日も『回復の一部』と受け止める。
多様な被害者:男性・LGBTQ+当事者の経験
性的虐待や性的DVは性別や性的指向を問わず起こります。男性被害者・LGBTQ+当事者・支援者へのガイドを整理します。
男性・LGBTQ+・支援者へのガイド
性的虐待や性的DVの被害者は女性だけではない。『男性は性被害を受けない』『男性が被害者であるはずがない』という社会的偏見から開示しにくい。『男らしくない』と思われる恐怖、強い羞恥心、相談窓口が女性想定で利用しにくい、加害者が女性の場合『それは被害ではない』と言われる、同性からの被害で性的指向への誤解を受ける。男性も正当な支援を受ける権利を持つ。よりそいホットライン 0120-279-338 など男性被害者対応の専門支援者がいる窓口を積極的に利用してほしい。
LGBTQ+当事者は性的虐待や性的DVの被害リスクが高いとする調査結果がある。相談窓口の相談員がLGBTQ+を理解していない可能性への不安、性的指向・ジェンダーアイデンティティ開示への不安、『同性間のDVはDVではない』という誤解、トランスジェンダーであることを理由に医療機関でケアを断られる経験、性的指向・ジェンダー否定の『コンバージョン(転換)行為』と性的虐待が組み合わさる場合など。LGBTに特化した相談窓口(よりそいホットラインの専門オペレーター)やLGBTQ+理解のある支援者・医療機関への相談を。
回復のプロセスは非線形で『なぜまだ回復していないのか』『もう大丈夫なはず』と外から急かすことは逆効果。本人のペースを尊重し『あなたが回復を決めたとき、ここにいる』という姿勢で長期的に寄り添うことが最も力強いサポート。支援者自身も二次的トラウマ(代理トラウマ)や燃え尽き症候群に陥りやすいため、定期的に自分自身の感情を整理し、必要であれば支援者向けスーパービジョンやカウンセリングを利用。支援者が心身健全であることが継続的支援の土台。
13のよくある質問
A. 性的DV(性的ドメスティック・バイオレンス)とは、配偶者やパートナーに対して性的な行為を強要したり、性的な場面で相手の意思を無視したりする暴力行為です。具体的には、性行為の強要、避妊への非協力、望まない性的行為の強制、性的な侮辱や屈辱、ポルノの視聴強要、性的画像の撮影強要などが含まれます。たとえ婚姻関係にあっても相手の同意のない性的行為はDVに該当します。
A. はい、夫婦間であっても性的DVは成立します。2017年の刑法改正により配偶者間でも強制性交等罪(旧・強姦罪)が適用されることが明確化されました。さらに2023年の刑法改正で新設された『不同意性交等罪』では、配偶者間での性的暴力もより明確に処罰対象となりました。『夫婦だから性行為に応じる義務がある』というのは誤った認識であり、パートナーの同意のない性的行為は犯罪です。
A. 医療機関の診断書・受診記録(身体的な怪我や精神的症状の証拠)、日記やメモ(いつどのようなことがあったかの記録)、メッセージやメールの記録、相談機関への相談記録、第三者の証言(DVの事実を打ち明けた友人や家族)などが有効です。性暴力被害直後は入浴や着替えをせず、できるだけ早く産婦人科やワンストップセンターを受診し、証拠の採取を行ってもらうことが重要です。
A. 性暴力被害者のためのワンストップ支援センター(#8891)では産婦人科診察・相談・カウンセリング・法的支援まで一貫した支援を受けられます。DV相談+(0120-279-889)は24時間対応で電話・メール・チャットでの相談が可能。配偶者暴力相談支援センター(各都道府県設置)でも専門相談員が対応します。警察(#9110)への相談も可能です。
A. 性的DVは法律上の離婚原因である『婚姻を継続し難い重大な事由』(民法770条1項5号)に該当し得ます。性行為の強要、暴力を伴う性的行為、望まない妊娠の強制などが継続的に行われている場合、裁判でも離婚が認められる可能性が高いです。また性的DVを理由とした慰謝料請求も可能です。離婚を検討する場合は証拠を保全した上で、DV問題に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。
A. パートナーを自分の所有物と考える支配的な思考、性行為は配偶者の義務だという誤った信念、相手の感情や身体的苦痛への共感性の欠如、外面が良く社会的には『いい人』として振る舞う二面性、暴力後に優しくなる(ハネムーン期)サイクル、相手の性的自律性を認めない態度などの特徴が見られることがあります。ただし加害者の外見や社会的地位からDVの有無を判断することは困難です。
A. PTSD、うつ病、不安障害、解離症状、性機能障害、自己肯定感の著しい低下、対人関係の困難、睡眠障害、摂食障害、アルコールや薬物への依存、自殺念慮などが報告されています。これらの症状は専門的な心理治療やカウンセリングにより改善が可能です。
A. 性的DVは配偶者やパートナーなど親密な関係にある人からの性的暴力を指すのに対し、性犯罪は法律上の犯罪として定義される性的行為全般を指します。性的DVの中には性犯罪(不同意性交等罪、不同意わいせつ罪など)に該当する行為も含まれます。2023年の刑法改正により配偶者間での不同意性交等も明確に犯罪として処罰されるようになりました。
A. 性的虐待の経験が対人関係に影響を与えることは非常によくあることです。愛着の問題、信頼の困難、境界線の設定の難しさ、感情調節の困難などが絡み合っています。これらの困難は『あなたのせい』ではなく、過去の被害に対する心の自然な反応です。トラウマに特化した心理療法(EMDR、スキーマ療法、弁証法的行動療法など)や愛着に焦点を当てたカウンセリングが効果的です。精神保健福祉センター(無料相談可能)やワンストップ支援センター(#8891)に相談することから始められます。
A. フラッシュバックは過去のトラウマが『まだ終わっていない』ことを脳が訴えているサインです。現在の安全な状況でも過去の経験と似たトリガー(触れ方・暗さ・匂いなど)があると脳が過去の危険な状況と同様の反応をしてしまいます。意志で止められるものではなく神経学的反応です。パートナーにフラッシュバックが起きること、どのような状況で起きやすいかを伝えることで適切なサポートを得やすくなります。EMDRはフラッシュバックの治療に高い効果があるとされ、トラウマ専門のカウンセラーに相談することをお勧めします。
A. 自立支援医療制度(精神通院医療)は精神科・心療内科に継続的に通院する必要がある方の医療費負担を軽減する制度です。対象疾患はうつ病、PTSDを含む各種精神疾患であり、性的虐待のトラウマによるPTSD、複雑性PTSD、解離性障害、うつ病、不安障害なども対象です。通常3割の医療費自己負担が原則1割(所得によってはさらに軽減)に。申請は市区町村の障害福祉担当窓口で行い、主治医の意見書が必要です。
A. 都道府県および政令指定都市に設置されている、精神保健と福祉に関する総合的な相談・支援機関です。精神科医・精神保健福祉士・公認心理師・看護師などの専門家が在籍し、精神的健康に関するあらゆる相談を無料で受け付けます。性的虐待のトラウマ、PTSD、対人関係の困難、うつ病、不安障害など幅広く対応。電話・来所(予約制の場合あり)、一部地域ではオンライン相談も。精神科・心療内科への受診が難しい方の入り口としても活用できます。
A. 通常のPTSDは一度の衝撃的な出来事(事故・自然災害・一度の性暴力など)によって生じるのに対し、複雑性PTSD(C-PTSD)は長期間にわたる反復的なトラウマ(幼少期からの継続的性的虐待、長期間のDVなど)によって生じます。C-PTSDは通常PTSDの3症状(侵入・回避・過覚醒)に加えて、感情調節の困難、深い恥や自己否定感、慢性的な対人関係の困難という『自己組織化の障害』が加わります。C-PTSDはWHOのICD-11(2019年)で正式に認定されました。
一人で抱え込まないで。
相談してみませんか。
つらい気持ちを抱えていませんか。性的DVは深刻な人権侵害であり、あなたは何も悪くありません。どうかあなたの大切な悩みをココトモに聞かせていただきたいです。
このページの情報は、医師による診断や治療に代わるものではありません。症状が気になる場合は、心療内科・精神科への受診をご検討ください。自立支援医療制度(精神通院医療)を利用すると通院医療費の自己負担が軽減されます。お住まいの市区町村窓口または精神保健福祉センターにご相談ください。
