メンタルヘルス用語辞典 · ウェルビーイング

ウェルビーイング(well-being)とは?
PERMA5要素・高める方法・職場活用をわかりやすく解説

単に『病気でない』を超えて、『良く生きている状態』を指すウェルビーイング。セリグマンのPERMAモデル、ヘドニアとエウダイモニア、日常の実践10選、職場や社会の動向、メンタルヘルスとの関係、ライフステージごとの課題まで、ポジティブ心理学に基づく必要な情報をすべてまとめました。

ABOUT WELL-BEING

ウェルビーイングとは

ウェルビーイング(well-being)とは、心身ともに良好な状態で、満たされた人生を生きていることを指します。単に『病気ではない』だけでなく、『充実して幸せに生きている』という積極的な状態です。

定義

WHOが示す包括的な健康観

ウェルビーイングは、世界保健機関(WHO)の憲章(1948年)の『健康』の定義に由来します——『健康とは、単に病気や虚弱でないということではなく、身体的・精神的・社会的に完全に良好な状態(well-being)である』。つまり『病気がない』状態ではなく『良好な状態』そのものを指し、健康の積極的側面を表す言葉として使われてきました。

現代ではこの概念がさらに広がり、幸福感・生きがい・自己実現・社会的つながりなど、人間の生の質を多面的に捉える『傘のような概念』として使われています。心理学、経済学、医学、教育学、経営学など、幅広い分野で中心概念となっています。

💡
ウェルビーイングと幸福(happiness)の違い『幸福』が一時的な感情状態を指すことが多いのに対し、『ウェルビーイング』はより持続的で包括的な『良い状態』を指します。一瞬の楽しさだけでなく、意味・つながり・成長・健康を含む『人生全体の質』が対象です。セリグマンは『happiness』という曖昧な言葉を避けて『well-being』を使うようになりました。
歴史

ウェルビーイング研究の歴史

ウェルビーイング研究は、1960年代にエド・ディーナーらが『主観的ウェルビーイング(Subjective Well-Being:SWB)』を提唱したことから始まりました。SWBは『感情的な幸福(ポジティブ感情が多く、ネガティブ感情が少ない)』と『認知的な満足(人生満足度)』の2つの要素から成ります。

1990年代末、マーティン・セリグマンが『ポジティブ心理学』を提唱。それまでの心理学が『病気・異常』ばかりを扱ってきたことへの反省から、『人間の強み・幸福・繁栄』を科学的に研究する分野として確立されました。2011年、セリグマンは著書『Flourish(邦題:ポジティブ心理学の挑戦)』の中で、幸福より広い概念として『PERMA』モデルを提唱しました。

近年ではOECDが『Better Life Index』を発表し、GDPに代わる社会の豊かさの指標として各国が国民のウェルビーイング測定に取り組んでいます。日本でも岸田政権下で『新しい資本主義』の一環としてウェルビーイングが政策課題となり、2023年には首相官邸にウェルビーイングに関する有識者懇談会が設置されました。

注目の背景

なぜ今ウェルビーイングが注目されるのか

ウェルビーイングが世界的な注目を集める背景には、複数の社会的・経済的・心理的な要因があります。

💰
GDPの限界
GDPが豊かさの唯一の指標でないことへの気づきが世界的に広がっています。
🧠
メンタル不調の増加
心の問題・メンタルヘルス不調の増加が、ウェルビーイングへの注目を加速させています。
🏢
生産性との関連
従業員のエンゲージメント・生産性とウェルビーイングは密接に関連しています。
👥
孤立・孤独の問題化
現代社会で孤立・孤独が深刻な社会問題として浮上しています。
🌱
SDGsとの親和性
持続可能な社会の構築とウェルビーイングは親和性が高い概念です。
👶
非認知能力の重視
教育における『非認知能力』重視の流れの中で重要視されています。
🌍
生きる意味への問い
VUCA時代の『生きる意味』を問い直す動きが広がっています。
ウェルビーイングは個人の心の問題にとどまらず、企業経営・教育政策・国の指標といったマクロな領域でも中心テーマになっています。
PERMA MODEL

PERMAモデル——ウェルビーイングの5要素

マーティン・セリグマンが2011年に提唱した、持続的な幸福(flourishing)を構成する5つの次元。それぞれが独立した価値を持ち、他のために犠牲にならない要素として選ばれました。

5要素

PERMA——5つの構成要素

PERMAはセリグマンが選んだ5要素の頭文字です。それぞれをタブで切り替えて、内容と実践のヒントを確認できます。

😊Positive Emotion(ポジティブ感情)

喜び・感謝・愛情・希望・楽しさ・誇りなどのポジティブな感情を日常的に経験すること。バーバラ・フレドリクソンの『拡張−構築理論』によれば、ポジティブ感情は思考の幅を広げ、長期的な心身のリソースを構築します。

  • 3つのよいこと日記
  • 感謝の手紙
  • 好きな音楽を聴く
  • 自然の中を歩く
  • 笑う時間を作る
💡
5要素はそれぞれ独立して測定可能で、どれも『他の何かのための手段』ではなく、それ自体が追求される目的として位置づけられています。
3つの基準

PERMAの3つの選定基準

セリグマンはPERMAの5要素を、次の3つの厳しい基準で選定しました。

CRITERION 1
ウェルビーイングに本質的に貢献する
他の何かのためではなく、それ自体として追求される価値があること。
CRITERION 2
他の要素のために追求されない
例えば『お金を稼ぐ』は幸福のための手段だが、PERMAの要素は手段ではなく目的。
CRITERION 3
独立して定義・測定できる
他の要素と混同せず、独立した概念として測定できること。
バランス

5要素のバランスが大切

PERMAは『5要素のどれかを最大化すればよい』という話ではありません。人によって重みの置き方は違いますが、すべての要素がバランスよく満たされることが持続的な幸福につながります。一つの要素が欠けていると、他で補えません。

『仕事ばかりの人』のウェルビーイング仕事で没頭(E)と達成(A)があっても、人間関係(R)と意味(M)が欠けていると、ある日突然『何のために生きているのか』という虚無感に襲われます。定年後にウェルビーイングが急落する人の多くは、このパターンです。5つのバランスを意識しましょう。
TWO APPROACHES

ヘドニア vs エウダイモニア——2つのアプローチ

ウェルビーイングには古代ギリシャから続く2つの哲学的系譜があります。快楽(ヘドニア)と有意味性(エウダイモニア)です。

2つの哲学

ヘドニアとエウダイモニアの違い

ウェルビーイング研究は古代ギリシャ哲学の2つの伝統を引き継いでいます。一方はヘドニア(快楽主義的伝統)、もう一方はエウダイモニア(自己実現的伝統)です。

🌊 ヘドニア(hedonia)
快楽・喜びの最大化
快楽の最大化と不快・苦痛の最小化を目指します。主観的な感情・満足を重視。代表はエド・ディーナーのSWB(主観的ウェルビーイング)で、測定はポジティブ感情+人生満足度。例:美味しい食事、楽しい旅行。
🌳 エウダイモニア(eudaimonia)
自己実現・美徳・意味の追求
潜在能力の発揮と長期的な成長・繁栄を追求します。代表はキャロル・リフのPWB(心理的ウェルビーイング)で、測定は自己受容・目的・成長・関係性・自律・環境制御の6次元。例:子育て、創作活動、社会貢献。

興味深いのは、これらが対立するものではなく、補完し合う関係にあるということ。『楽しいだけの人生』も『意味だけの人生』も長期的には満足できず、両方のバランスが必要であることが研究で示されています。ハッピネスと意味の両方を追求する人が、最も高いウェルビーイングを示します

PWB

キャロル・リフの心理的ウェルビーイング(PWB)6次元

リフはエウダイモニアを6つの次元で測定する尺度を開発しました。エウダイモニア的ウェルビーイングを科学的に評価する代表的な指標として、世界中で使われています。

🪞
自己受容(self-acceptance)
ポジティブ・ネガティブ両方の自分を受け入れる感覚。
🤝
ポジティブな関係性
温かく信頼できる人間関係を築いている状態。
🌱
個人的成長
自己を成長させ続ける感覚があること。
🎯
人生の目的
自分の人生の方向性と意味を感じていること。
🏛
環境制御
自分の人生を自分で管理できているという感覚。
🕊
自律性
自分の価値観に沿って生きられていること。
PWBの6次元は、PERMAと重なる部分も多くあります。どちらか一つを採用するのではなく、自分が今どこを伸ばしたいかを見つける手がかりとして使うのが現実的です。
PRACTICE

ウェルビーイングを高める10の実践

エビデンスのある、今日から始められるシンプルな実践です。どれも特別な道具や才能は必要ありません。

10の実践

日常で実践できる、10の方法

どれか一つに絞らず、できそうなものから少しずつ取り入れてください。10個すべてを一度に始める必要はありません。最も惹かれるもの1つから始めて、2〜3週間続けてみるのが現実的です。

PRACTICE 01
3つのよいこと日記(Three Good Things)
セリグマンが開発した最もシンプルで効果的な介入。毎晩寝る前に、その日あった『よかったこと』を3つ書き、それぞれなぜそれが起きたかを書きます。複数のRCTで、うつ症状の改善と幸福感の向上が実証されています。
毎晩・寝る前
PRACTICE 02
感謝の手紙(Gratitude Letter)
過去に自分を助けてくれた人(先生・親・友人など)への感謝を手紙に書き、できれば直接読んで伝える。このワークは実施から1か月後も幸福感の向上が継続することが示されています。
年に数回
PRACTICE 03
親切な行為(Random Acts of Kindness)
週1日、意識的に5つの小さな親切をする。誰かにドアを開ける、同僚にコーヒーを買う、見知らぬ人に微笑む——こうした行為は『する側』の幸福度を大きく上げます。
週1日・5つ
PRACTICE 04
強みの活用(Using Signature Strengths)
VIA強みテスト(無料)で自分の『トップ5強み』を知り、それを新しい方法で1日1回使ってみる。自分の強みを知り、日常で使うことで『自分らしさ』の充実感が得られます。
1日1回
PRACTICE 05
マインドフルネス瞑想
毎日10分、呼吸に意識を向ける練習。ストレス軽減・感情調整・集中力向上など多面的な効果が研究で示されています。アプリ(Headspace, Calm, Insight Timer)も有効です。
毎日10分
PRACTICE 06
運動習慣
週3回以上の中強度運動(早歩き・ジョギング・水泳など)。運動は抗うつ薬と同等の効果があり、幸福感・認知機能・睡眠の質を改善します。『運動すると気分が良くなる』は科学的事実です。
週3回以上
PRACTICE 07
社会的つながりへの投資
週1回は大切な人と対面または電話で話す。SNSの『いいね』ではなく、深い会話が大切です。孤独はタバコ15本分の健康リスクがあるという研究もあります。
週1回以上
PRACTICE 08
自然との接触
週1回、30分以上の自然の中での時間。森・公園・海辺など。『ネイチャードーズ(自然の処方箋)』と呼ばれ、ストレスホルモンの低下・気分改善が実証されています。
週1回30分
PRACTICE 09
良質な睡眠
7〜9時間の規則的な睡眠。睡眠不足は幸福感を直撃します。同じ時刻に寝起きする・寝室を暗く涼しく保つ・就寝前のスマホを避ける——基本を守るだけで大きな違いが出ます。
7〜9時間
PRACTICE 10
目的の再発見
定期的に『自分の人生の目的は何か』『何のために生きているのか』を問い直す。ジャーナリング・カウンセリング・コーチングなどが有効です。目的があるとストレス耐性と回復力が劇的に高まります。
定期的に
小さな一歩から始めよう10個すべてを一度に始める必要はありません。どれか1つ、最も惹かれるものから始めて、2〜3週間続けてみてください。小さな変化の積み重ねが、大きなウェルビーイングの向上につながります。
神経科学

なぜ実践が効果を持つのか——ポジティブ心理学の神経科学

ウェルビーイング向上の実践が効果を持つ背景には、脳科学・神経科学の知見があります。感謝・親切・運動といった行動は、ドーパミン・セロトニン・オキシトシンといった神経伝達物質の分泌を促し、脳の報酬系を活性化します。特に感謝の実践は、前頭前皮質の活動を高め、不安や恐れに関わる扁桃体の反応を抑制することが神経画像研究で確認されています。

また、マインドフルネス瞑想の継続は、海馬(記憶・学習に関わる脳部位)の灰白質密度を増加させ、扁桃体を縮小させるという研究結果もあります(ハーバード大学・Sara Lazar博士)。これらは脳の可塑性(ニューロプラスティシティ)を示しており、大人になってからでも脳の構造は変えられることを示しています。

🧠
ハビット・スタッキングで続ける新しい習慣を既存の行動に『くっつける』ハビット・スタッキングが、実践の継続に有効です。例えば『朝コーヒーを飲みながら3つのよいこと日記を書く』というように、すでにある習慣のあとに新しい習慣を追加することで、継続率が大きく高まります。BJ・フォッグの『タイニーハビット』もこのアプローチです。
続けるコツ

実践を妨げる『心理的障壁』とその乗り越え方

ウェルビーイングの実践を始めても続かない理由として、次のような心理的障壁が挙げられます。第一に『完璧主義』——毎日完璧にやらなければという思い込みが、少しの失敗で挫折を引き起こします。第二に『効果への懐疑』——「自分には効かないだろう」という先入観が取り組み自体を妨げます。第三に『時間の言い訳』——忙しいを理由に後回しにし続けるパターンです。

1
2分ルールで始める
実践の最小バージョンから開始。「3つのよいこと」も、最初は1つでOK。小さく始めることで心理的ハードルを下げます。
2
実施記録をつける
カレンダーに×印をつけるだけでも、継続の動機づけになります。『チェーンを壊すな』方式でモチベーションを維持します。
3
アカウンタビリティ・パートナーを持つ
実践を誰かに宣言し、週1回報告し合う。社会的コミットメントが継続率を3倍に高めるという研究があります。
4
失敗を記録しない
できなかった日をカウントするより、できた日に注目する。失敗への過剰な注意は自己批判を強め、継続を妨げます。
教育

子どもとウェルビーイング——教育現場の取り組み

文部科学省は2023年度より、学校教育における子どもたちのウェルビーイング向上を政策課題として明記しました。OECD教育2030プロジェクトも『Student Agency(生徒の主体性)』をキーワードに、学力だけでなくウェルビーイングを教育の目標として位置づけています。

実践女子大学のウェルビーイング・プロジェクトをはじめ、国内複数の大学・学校でPERMAモデルを活用したプログラムが導入されています。特に『強みの発見』と『感謝の実践』は、子どもの自己効力感と社会情緒的スキル(SEL)の向上に効果が確認されています。

📚
SEL(社会情緒学習)
感情認識・共感・自己制御などを授業に組み込む。
💪
強み発見プログラム
VIA強みテストの子ども版を活用し、それぞれの強みを発見する。
🙏
感謝の時間
週1回、クラスで感謝を言い合う文化づくり。
🌱
成長マインドセット教育
『能力は伸ばせる』という信念の醸成。
🤝
ピアサポート
子ども同士が支え合う仕組みづくり。
AT WORK

職場のウェルビーイング

従業員のウェルビーイングは、個人の幸福だけでなく、企業の生産性・創造性・定着率に直結します。ウェルビーイング経営は近年の経営課題の中心です。

投資の理由

なぜ企業がウェルビーイングに投資するのか

ウェルビーイングへの投資は、慈善的な発想ではなく、経営的合理性に基づいています。複数の研究で具体的なリターンが示されています。

📈
生産性31%向上
幸福度の高い社員は生産性が31%高い(オックスフォード大研究)。
💡
創造性3倍・売上37%増
創造性が3倍、売上が37%高いという結果が報告されています。
🤝
離職率の大幅低下
ウェルビーイングが高い職場では離職率が大幅に低下します。
🏥
病欠・医療費削減
病欠日数が減少し、医療費が削減される効果があります。
エンゲージメント向上
エンゲージメント・顧客満足度の向上につながります。
🌍
採用競争力の強化
優秀な人材の採用競争力につながります。
ギャラップ5次元

職場ウェルビーイングの5次元(ギャラップ社モデル)

ギャラップ社は職場のウェルビーイングを5つの次元で整理しました。仕事に直接かかわるキャリアだけでなく、社会・経済・身体・地域という人生全体の領域が含まれます。

DIMENSION 1
キャリア・ウェルビーイング
仕事が好きで、毎日やりがいを感じている状態。
WORK
DIMENSION 2
ソーシャル・ウェルビーイング
職場に信頼できる人間関係がある。
SOCIAL
DIMENSION 3
ファイナンシャル・ウェルビーイング
経済的なストレスから解放されている。
MONEY
DIMENSION 4
フィジカル・ウェルビーイング
健康で活力に満ちている。
BODY
DIMENSION 5
コミュニティ・ウェルビーイング
住んでいる地域・所属するコミュニティに貢献している。
COMMUNITY
企業施策

企業ができる10の施策

職場ウェルビーイング向上のために企業が取り組める代表的な施策は次の10種類です。

  • 目的・ビジョンの明確化と共有
  • 心理的安全性の高い職場文化
  • 仕事の自律性(ジョブクラフティング)の推奨
  • 学習・成長機会の提供
  • 運動・健康プログラムの導入
  • マインドフルネス・EAPの提供
  • 柔軟な働き方・休暇制度
  • 成果の承認と祝福の文化
  • 多様性・包摂性(D&I)の推進
  • ウェルビーイング指標の定期的測定
心理的安全性

心理的安全性とウェルビーイングの深い関係

Googleが5年間の調査(プロジェクト・アリストテレス)で明らかにした『最も生産的なチームの共通点』は、メンバーのスキルでも経験でもなく『心理的安全性』でした。心理的安全性とは、『このチームでは、リスクを取っても安全だ』という共有された信念です。

心理的安全性はウェルビーイングと密接に連動します。心理的安全性が高い職場では、従業員の意味(M)・人間関係(R)・達成(A)の各次元が向上し、ウェルビーイング全体が高まることが確認されています。逆に心理的安全性が低い環境では、慢性的なストレスとバーンアウトリスクが高まります。

🔍
心理的安全性を高める4つの行動エドモンドソン(ハーバード大学)によれば、リーダーが①自分の失敗を認める、②質問を歓迎する、③率直なフィードバックを求める、④挑戦を奨励する——の4つの行動を取ることが、チームの心理的安全性を高める最も効果的な方法です。
バーンアウト

バーンアウト(燃え尽き症候群)とウェルビーイング

バーンアウトはウェルビーイングの対極に位置する状態です。WHO(2019年改訂版ICD-11)はバーンアウトを『慢性的な職場のストレスが適切に管理されないことから生じる症候群』と定義し、3つの特徴(消耗感・シニシズム・効力感の低下)で描写しています。

Christina Maslachの研究によれば、バーンアウトは個人の問題ではなく、職場環境の問題です。過剰な仕事量・コントロールの欠如・報酬の不足・公平性の欠如・コミュニティの崩壊・価値観の不一致という『バーンアウトの6つの不一致』が原因とされます。したがって、バーンアウト予防の責任は個人だけでなく、組織にもあります。

  • 初期サイン慢性的な疲労・職場への皮肉・効力感の低下。
  • 中期サイン感情の麻痺・人間関係の回避・身体症状の出現。
  • 重症サイン出勤困難・抑うつ・パニック発作の発生。
  • 予防のポイント仕事量の管理・意味の再確認・休息の確保・サポート体制の整備。
測定

職場ウェルビーイングの測定と可視化

日本では、2015年から従業員50名以上の事業所に『ストレスチェック制度』が義務づけられています。しかしストレスチェックは『不調の早期発見』が目的であり、ウェルビーイングを積極的に測定するものではありません。企業が本格的にウェルビーイング向上に取り組むには、より広範な指標の測定が必要です。

NTTデータ経営研究所(2024年)のレポートでは、一人ひとりのウェルビーイングを涵養するため、PERMAモデルや主観的幸福感の定期的サーベイと、その結果をマネジメントに反映するサイクルが重要と指摘されています。具体的には、四半期ごとのパルスサーベイ・1on1ミーティングでのウェルビーイング対話・職場環境改善のフィードバックループが有効です。

SOCIETY

社会全体のウェルビーイング——政策・国際動向

個人や企業の問題を超えて、国や国際機関がウェルビーイングを重要な政策課題として取り組んでいます。

世界の動き

世界と日本の政策動向

ウェルビーイングは個人の心理学的課題から、国家・国際機関の政策アジェンダへと拡大しています。代表的な動きは以下の通りです。

  • ブータン(1972〜)『GNH(国民総幸福量)』で有名。1972年から国家指標として採用。
  • イギリス(2010〜)2010年から国民のウェルビーイング測定を開始(ONS Well-being Index)。
  • ニュージーランド(2019〜)2019年に『ウェルビーイング予算』を世界で初めて導入。
  • OECD『Better Life Index』で加盟国のウェルビーイングを比較。
  • 日本(2021〜)2021年の骨太方針にウェルビーイングを明記、2023年に首相官邸で懇談会設置。
  • 国連世界幸福度報告(World Happiness Report)を毎年発表。
GDPを超えて

『GDPを超えて』の議論

20世紀の後半から、『GDP(国内総生産)だけでは国の豊かさを測れない』という問題意識が高まりました。経済成長しても、環境が破壊され、人間関係が希薄化し、メンタルヘルスが悪化するなら、本当に豊かな社会と言えるでしょうか?

スティグリッツ報告(2009年、ノーベル経済学賞受賞者ジョセフ・スティグリッツらによる報告書)は、GDPを補完する指標として、主観的ウェルビーイング・健康・教育・環境・人間関係・社会的つながりなどを測ることを提言しました。この流れは現在、各国のウェルビーイング政策の土台になっています。

🌍
新しい豊かさの指標ウェルビーイング指標は、単なる学術概念ではなく、政策決定・予算配分・企業経営の現場で実際に使われ始めています。『お金より幸せ』ではなく『お金だけでは測れない幸せ』への注目が広がっています。
日本の現状

日本のウェルビーイングの現状

国連の『世界幸福度報告2023』で日本は147か国中47位。先進国の中では依然として低い順位です。日本の低さの要因として、『主観的な自由度』『寛容さ』『社会的サポート』のスコアが相対的に低いことが指摘されています。

日本人は客観的指標(長寿・治安・所得)では世界トップクラスですが、『自分の人生を自由に選べる』『他者を信頼できる』という主観的評価が低い特徴があります。この『客観と主観のギャップ』を埋めることが、日本のウェルビーイング向上の課題とされています。

測定方法

ウェルビーイングの測定方法——主要な尺度と国際比較

ウェルビーイングを科学的に測定する主な尺度として、以下が広く使用されています。エド・ディーナーの『SWLS(生活満足尺度)』は5項目で人生全体の満足度を測る古典的尺度です。セリグマンの『PERMA-Profiler』は23項目でPERMAの5次元を包括的に測定します。キャロル・リフの『PWB尺度』は42〜84項目でエウダイモニア的ウェルビーイングを測定します。OECDの『Better Life Index』は11の政策領域(住宅・所得・雇用・コミュニティ・教育・環境・市民参加・健康・生活満足度・安全・仕事と生活のバランス)で国際比較します。

日本では、ウェルビーイング学会が2021年第2四半期から四半期ごとに主観的ウェルビーイング調査を実施しており、2024年第4四半期の結果が2025年3月に公表されました。また、第一生命経済研究所は2025年の世界幸福度ランキングを踏まえ、日本のウェルビーイング向上にはファイナンシャル・ウェルビーイング(経済的な安心感)の強化が重要であると指摘しています。

📊
主観的指標と客観的指標の組み合わせが重要ウェルビーイングの測定には、GDP・寿命・犯罪率などの客観的指標だけでなく、『自分が幸せだと感じているか』という主観的指標が不可欠です。日本は客観的指標では高スコアでも、主観的指標が低い『幸福のパラドックス』が顕著です。この乖離の原因として、社会的比較・自己評価の低さ・謙遜文化などが挙げられています。
経済的安心

ファイナンシャル・ウェルビーイングと経済的安心

ウェルビーイングの重要な一側面が、経済的な安心感——ファイナンシャル・ウェルビーイングです。単に収入が高いということではなく、『現在の生活費を賄える』『予期せぬ出費に対応できる』『将来の経済的見通しがある』という包括的な安心感を指します。

第一生命経済研究所(2025年)によれば、日本では老後の経済的不安が主観的幸福感を大きく押し下げていることが示されています。特に単身世帯・非正規労働者・若年層では、将来の生活への不確実性がウェルビーイングを慢性的に低下させています。経済的リテラシーの向上・社会保障制度の理解・緊急資金の準備などが、ファイナンシャル・ウェルビーイング向上の鍵となります。

💴
自立支援医療制度
精神科・心療内科の医療費を最大9割減額できる制度。
📋
傷病手当金
就労不能時に標準報酬日額の3分の2を最長1年6か月支給。
🏛
精神保健福祉センター
各都道府県に設置、無料相談・支援窓口。
📞
生活困窮者自立支援制度
生活や就労の困難に対する包括的な相談支援。
デジタル時代

デジタル時代のウェルビーイングと課題

スマートフォンとSNSの普及により、現代人のウェルビーイングは新たな課題に直面しています。スクリーンタイムの増加・SNS上の比較・情報過多・デジタル依存は、特に若者のメンタルヘルスに影響を与えています。ジョナサン・ハイトの研究は、スマートフォンが10代の精神的健康の悪化と強く関連していることを示しています。

一方で、デジタル技術はウェルビーイングを支援するツールにもなります。マインドフルネスアプリ・感謝日記アプリ・オンラインカウンセリング・ウェルビーイング測定ツールなど、テクノロジーが介入の民主化を後押ししています。重要なのは、テクノロジーを主体的にコントロールし、デジタル・ウェルビーイングを意識した使い方をすることです。

📱
デジタル・ウェルビーイングの実践①就寝1時間前はスマホを見ない、②SNSの通知をすべてオフにする、③食事中はスマホをテーブルに置かない、④1日1回の『スクリーンフリー時間』を設ける——これらのルールを設けるだけで、睡眠・集中力・対人関係が改善するという研究があります。
MENTAL HEALTH

心の不調とウェルビーイング

メンタルヘルスの問題はウェルビーイングに深刻な影響を与えますが、ウェルビーイングの向上はメンタルヘルスの回復・予防にも貢献します。この双方向の関係を理解することが重要です。

2軸モデル

精神的健康の2軸モデル——不調がなくても幸福ではない

『メンタルヘルスの問題がない』ことと『ウェルビーイングが高い』ことは、別の次元の話です。コリー・キーズが提唱した『精神的健康の2軸モデル』では、症状の有無(縦軸)とウェルビーイングの高低(横軸)を組み合わせて、4つの象限で精神的健康を捉えます。

QUADRANT A
症状なし × ウェルビーイング高
フラリッシング(flourishing)。理想的な状態。精神的健康の問題がなく、充実して生きている。
FLOURISHING
QUADRANT B
症状なし × ウェルビーイング低
ラングイッシング(languishing)。病気ではないが空虚・無気力・意味のなさを感じている状態。コロナ禍で急増。
LANGUISHING
QUADRANT C
症状あり × ウェルビーイング高
回復中の充実。うつや不安の症状がありながらも、意味・つながりを感じている状態。回復力を示す。
RECOVERING
QUADRANT D
症状あり × ウェルビーイング低
重篤な不調。専門的な治療と支援が最も必要な状態。
SEVERE
ラングイッシングに気づくアダム・グラントが2021年に書いたニューヨーク・タイムズの記事『There's a Name for the Blah You're Feeling: It's Called Languishing』が世界的に反響を呼びました。『なんとなく空虚で、やる気も出ないが、うつというほどでもない』——これがラングイッシングです。この状態の人は、小さなウェルビーイング実践から始めることが有効です。
うつ病

うつ病とウェルビーイング——回復を支える視点

うつ病はウェルビーイングを広く損ないます。PERMAのすべての次元——ポジティブ感情の減退、没頭の困難、人間関係の回避、意味の喪失、達成感の欠如——が影響を受けます。しかし、うつ病の治療において、ウェルビーイングの向上介入(ポジティブ心理学的アプローチ)を標準治療と組み合わせることで、回復を促進し再発を予防できることが示されています。

セリグマンらが開発した『Well-Being Therapy(WBT)』は、うつ病・不安障害の再発予防に特化したポジティブ心理学的介入で、通常のCBTと組み合わせることで再発率を大幅に低下させるという研究成果があります。

  • 回復初期休息・睡眠・基本的ケアを最優先に。
  • 安定期3つのよいこと日記・感謝の実践を少しずつ取り入れる。
  • 維持期人間関係の再構築・意味の再発見に取り組む。
  • 継続期運動・マインドフルネス・強みの活用で再発予防。
重症期には無理は禁物うつの重症期に無理にポジティブな実践をしようとすると、できない自分への自己批判がむしろ症状を悪化させることがあります。重症期は治療(薬物療法・精神療法)を優先し、ウェルビーイング実践は安定してから少しずつ取り入れましょう。担当医・カウンセラーと相談の上で進めてください。
不安・ストレス

不安・ストレスとウェルビーイングへの影響

慢性的な不安・ストレスは、ウェルビーイングの全次元に影響します。特に、慢性ストレスはコルチゾール(ストレスホルモン)の持続的分泌を引き起こし、海馬の萎縮・免疫機能の低下・睡眠障害・集中力低下をもたらします。これらはPERMAのEとA(没頭・達成)を特に妨げます。

日本の職場では、仕事に関するストレスを感じている労働者が58%(厚生労働省令和4年調査)に達しています。主なストレス要因は、仕事の質・量・人間関係・将来の見通しの不安です。職場のウェルビーイング向上施策は、こうしたストレス要因の軽減から始める必要があります。

専門的サポート

専門的サポートを求めることの大切さ

ウェルビーイングが低下し、日常生活に支障が出るようなつらさが2週間以上続く場合は、専門家への相談を検討してください。心療内科・精神科では、適切な診断と治療(薬物療法・精神療法)を受けることができます。『精神科に行くのは敷居が高い』と感じる方は、まずかかりつけ医や保健センター、精神保健福祉センターへの相談から始めるのも良い方法です。

精神保健福祉センターは、各都道府県・政令指定都市に設置されており、精神科医・臨床心理士・精神保健福祉士などが相談に応じています。電話相談・来所相談が利用可能で、地域の医療機関への紹介もしてもらえます。費用は無料です。また、精神科・心療内科への通院が始まった場合は、自立支援医療制度(精神通院医療)を活用することで、医療費の自己負担を1割に抑えることができます。

LIFE STAGE

ライフステージ別のウェルビーイング

ウェルビーイングの課題は年代によって大きく異なります。子ども・青年期・中年期・高齢期それぞれの特徴と、効果的な実践を紹介します。

4つのライフステージ

年代別のウェルビーイングの課題

エリクソンの発達段階論や愛着理論、最新の縦断研究をもとに、各ライフステージで重要なテーマを整理します。

CHILD(0〜12歳)
安全な愛着と遊びが基盤
子どものウェルビーイングの基盤は、安定した愛着関係(アタッチメント)と自由な遊びです。ジョン・ボウルビィの愛着理論によれば、幼少期に安全基地(secure base)として機能する養育者との関係が、生涯を通じたウェルビーイングの土台となります。過度な管理や過剰な習い事より、子ども自身が主体的に遊び・探索する時間の確保が重要です。文部科学省の第4期教育振興基本計画(2023〜2027年)では、子どもたちのウェルビーイングを教育の目標として明記し、自己肯定感・非認知能力・社会情緒的スキルの育成を重視しています。
愛着・遊び
TEEN(13〜25歳)
アイデンティティと社会的つながり
青年期のウェルビーイングの中心課題は、アイデンティティの確立(『自分は何者か』の探求)と、同世代との社会的つながりです。エリクソンの発達段階論では、この時期の主な課題を『アイデンティティ対役割の拡散』と定義しています。近年、SNS・スマートフォンの普及が青年のウェルビーイングに影響を与えています。オンラインでの比較・承認欲求・サイバーいじめがリスク要因となる一方、オンラインコミュニティが孤立を防ぐ保護要因にもなります。デジタルリテラシーと健全なSNS利用の教育が急務です。
アイデンティティ
ADULT(26〜65歳)
仕事・家族・自己実現のバランス
中年期のウェルビーイングの課題は、仕事・家族・自己実現の複数の役割を統合することです。エリクソンは『世代性(generativity)』——次世代の育成や社会への貢献——をこの時期の中心課題としました。多くの研究で、人への貢献感・仕事の意味・家族との質の高い時間が、中年期のウェルビーイングの主な予測因子であることが示されています。また、中年危機(midlife crisis)という概念も知られていますが、実際には中年期にウェルビーイングが最低になるU字型カーブが多くの国で確認されています(50歳前後が最低点)。この時期に意味の再発見・関係性の見直し・身体的健康への投資が特に重要です。
世代性
SENIOR(65歳以上)
統合・知恵・つながりの維持
高齢期のウェルビーイングは、身体的な衰えを補うだけの精神的・社会的資源が鍵になります。エリクソンは高齢期の課題を『自我の統合』——これまでの人生を受け入れ意味を見出すこと——と定義しました。多くの研究で、高齢期でも適切なサポートがあればウェルビーイングは高く維持できることが示されています。ハーバード成人発達研究(85年以上継続、世界最長の幸福研究)は、『老後の幸福の最大の予測因子は良質な人間関係である』と結論づけています。定年後に急激にウェルビーイングが低下する人の多くは、職場以外の人間関係が薄い傾向があります。定年前からコミュニティや趣味のつながりを構築しておくことが重要です。
統合・つながり
ジョブクラフティングで仕事に意味を見出すジョブクラフティングとは、与えられた仕事の内容・関係性・認知的意味づけを自分で変化させ、仕事をより意味のあるものにする行動です。同じ業務でも『誰のために・何のためにやっているか』という意味づけを変えるだけで、エンゲージメントと仕事の満足感が大きく変わります。上司への相談なしにできる最強のウェルビーイング向上策の一つです。
青年期

青年期に効果的な5つの実践

青年期は、自分らしさを見つけ、深いつながりと健全な習慣を作る大切な時期です。次の5つは特に効果が確認されています。

🎯
価値観・強みの探求
自分の価値観・強みを探る(VIA強みテストが有効)。
🤝
深い友人関係
SNSの『いいね』より対面の時間を重視した友人関係の構築。
🌱
成長マインドセット
失敗から学ぶ姿勢の獲得。
📵
デジタルデトックス
意図的なデジタルデトックスの習慣化。
🏃
定期的な運動
脳の発達と精神的健康に直結する運動習慣。
高齢期

高齢期のウェルビーイングを支える5つの実践

高齢期に良質な人間関係・身体活動・認知刺激を維持することは、ハーバード成人発達研究を含む複数の長期研究で支持されています。

👥
コミュニティ参加
定期的なコミュニティ参加(サークル・ボランティア・宗教コミュニティ)。
🧠
認知的刺激
読書・パズル・新しいスキル学習で脳の活性化。
🚶
身体活動
日常的な身体活動で転倒予防・認知機能維持。
🌿
世代間交流
孫・地域の子どもとの世代間交流。
📖
回顧録・自分史
回顧録・自分史の作成で人生の統合と意味づけ。
FAQ

よくある質問

ウェルビーイングについて読者からよく寄せられる質問にお答えします。

Q&A

ウェルビーイングをめぐる11の質問

Q. ウェルビーイングと幸福は同じ意味ですか?

A. 重なる部分はありますが、同じではありません。『幸福』は一時的な感情状態を指すことが多く、『ウェルビーイング』はより持続的で包括的な『良い状態』を指します。ウェルビーイングは『意味』『成長』『つながり』など、瞬間的な快楽を超えた要素を含みます。セリグマンも『happiness』という曖昧な言葉を避けて『well-being』を使うようになりました。

Q. お金があれば幸せになれますか?

A. ある程度までは相関しますが、基本的な生活ニーズが満たされると、お金とウェルビーイングの相関は弱まります。特に人間関係・意味・健康といった要素は、お金で直接買えないため、高所得者でもウェルビーイングが低いケースは多くあります。

Q. ウェルビーイングを高めるのにどれくらい時間がかかりますか?

A. 介入研究では、2〜4週間の実践で測定可能な変化が現れることが多いです。ただし持続的な変化には習慣化が必要で、3か月以上の継続が推奨されます。筋トレと同じく、継続が鍵です。

Q. うつ病とウェルビーイングの関係は?

A. うつ病の時期はウェルビーイングが一時的に大きく低下します。治療と並行して、小さなウェルビーイング向上の実践(3つのよいこと日記など)を取り入れることで、再発予防にも役立ちます。ただし重症期には無理せず、治療を優先してください。

Q. ポジティブでいなきゃいけないのですか?

A. いいえ。ウェルビーイングは『無理にポジティブでいる』ことではありません。ネガティブな感情も人生の大切な一部で、否定すると『毒性のポジティブさ』になります。すべての感情を受け入れつつ、全体として充実した人生を生きることが大切です。

Q. 企業の『ウェルビーイング経営』は本当に効果がありますか?

A. 適切に実施されれば効果的です。ただし『形だけのウェルビーイング施策』は逆効果のこともあります。真のウェルビーイング経営は、制度だけでなく文化・リーダーシップ・心理的安全性の根本的な改善を伴います。

Q. 日本のウェルビーイングはなぜ先進国の中で低いのですか?

A. 世界幸福度ランキング2024では日本は143か国中51位で、G7の中で最下位です。主な要因として、①自分の人生を自由に選べるという感覚(自律性)の低さ、②他者への信頼・寛容さの低さ、③謙遜文化による主観的評価の低め申告、④長時間労働と人間関係の希薄化、⑤将来への経済的不安——が指摘されています。客観的指標(健康寿命・治安・インフラ)は世界トップクラスですが、主観的な充実感とのギャップが大きいことが特徴です。

Q. ウェルビーイングと回復力(レジリエンス)はどう違いますか?

A. レジリエンスは『逆境から立ち直る力』であり、ウェルビーイングの重要な構成要素の一つです。ウェルビーイングが高い人はレジリエンスも高い傾向がありますが、両者は異なる概念です。レジリエンスはストレス対処の能力を指し、ウェルビーイングは日常の充実・意味・つながりを含む幅広い状態を指します。レジリエンスを高める実践(感謝・マインドフルネス・社会的サポート)は、ウェルビーイング向上にも直結します。

Q. ウェルビーイングの向上に専門家の支援は必要ですか?

A. 日常的な実践(感謝日記・運動・つながりの強化など)は自分でできますが、うつ・不安・バーンアウトなど心理的苦痛が強い場合は、専門家の支援が大きな助けになります。認知行動療法(CBT)・ポジティブ心理学に基づくコーチング・カウンセリングは、ウェルビーイング向上に科学的根拠があります。まずはかかりつけ医や地域の精神保健福祉センターに相談することもできます。費用については、自立支援医療制度(精神通院医療)を活用することで、医療費の自己負担を大幅に軽減できます。

Q. VIA強みテストはどこで受けられますか?

A. VIA(Values in Action)強みテストは、VIA Instituteの公式サイト(viacharacter.org)で無料で受けられます。240問の設問に答えることで、24のキャラクター強みがランキング形式で表示されます。日本語版も利用可能です。また、金沢工業大学心理科学研究所では日本語版PERMA-Profilerを無料で提供しています。これらのツールを使って自分のウェルビーイングの現状を把握することが、実践の第一歩です。

Q. ウェルビーイングと宗教・スピリチュアリティの関係は?

A. 研究では、宗教的・スピリチュアルな実践がウェルビーイング(特に意味・M)と正の相関を示すことが多いです。ただし宗教的である必要はなく、自然・芸術・ボランティア・瞑想などを通じた『超越的なつながり』も同様の効果をもたらします。大切なのは、自己を超えた何かとのつながりを感じる経験です。

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このページの情報は、医師による診断や治療に代わるものではありません。つらい状態が続く場合は、心療内科・精神科への受診をご検討ください。精神科・心療内科への通院医療費は、自立支援医療制度を利用することで自己負担を最大1割に軽減できます。お住まいの市区町村窓口または精神保健福祉センターにご相談ください。

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