緊急措置入院・応急入院とは?
精神科緊急入院の仕組みと家族の対応を解説
深夜に家族が激しく興奮している、自分を傷つけようとしている——そのような場面で、どこに連絡し、どんな手続きが行われるのか。緊急措置入院(精神保健福祉法第29条の2)と応急入院(第33条の7)の定義・要件・手続きの流れ、72時間制限、患者の権利、退院後の制度まで、家族が知っておきたい情報をすべてまとめました。
緊急措置入院とは(精神保健福祉法第29条の2)
緊急措置入院は、通常の措置入院手続きをとる時間的余裕がないほど急を要する場合に、簡略化された手続きで強制的に精神科病院等へ入院させることを可能とする制度です。
緊急措置入院の定義
緊急措置入院(きんきゅうそちにゅういん)とは、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)第29条の2に規定された入院制度です。通常の措置入院(第29条)を行うための手続きをとる余裕がないほど急を要する場合に、簡略化された手続きで強制的に精神科病院等へ入院させることを可能とする制度です。
精神保健福祉法の条文では、緊急措置入院は次のように定義されています。「都道府県知事は、急速を要し、第29条第1項の規定による手続をとることができない場合において、その指定する指定医をして診察をさせた結果、その者が精神障害者であり、かつ、直ちに入院させなければその精神障害のために自身を傷つけ又は他人を害するおそれが著しいと認めたときは、その者を第29条の規定による措置を執るために必要な手続が執られるまでの間、精神科病院又は指定病院に入院させることができる」(第29条の2第1項)。
緊急措置入院の要件
緊急措置入院が認められるためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
- 急速を要すること通常の措置入院手続き(精神保健指定医2名による診察等)をとる時間的余裕がないほど緊急の状況であること。
- 精神障害者であること診察を行った精神保健指定医が、その者が精神障害者であると判断すること。
- 自傷他害のおそれが著しいこと単に「おそれがある」だけでなく、「直ちに入院させなければ自身を傷つけ又は他人を害するおそれが著しい」と認められること(通常の措置入院より高い緊急性が要求される)。
- 都道府県知事の命令都道府県知事(または政令指定都市の市長)の命令によること。
通常の措置入院では「自傷他害のおそれがある」で足りますが、緊急措置入院では「著しくおそれがある」という、より高度な緊急性が要件とされています。これは、手続きの簡略化(指定医1名)を補うためのバランスを取った設計です。
緊急措置入院を可能とする精神科病院
緊急措置入院は、通常の精神科病院または都道府県知事が指定する指定病院に対して行われます。なお、精神科救急の受け入れには、各都道府県の精神科救急医療システムの一環として、輪番制や当直体制によって対応できる病院が指定・調整されています。
緊急措置入院の根拠法令と歴史的背景
精神保健福祉法は1950年の「精神衛生法」を起源とし、1987年に「精神保健法」、1995年に現在の「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」に改正されました。緊急措置入院の規定は、精神科救急の充実と患者の権利保護のバランスを取りながら、制度が整備されてきた歴史があります。
- 1987年の精神保健法精神科病院への入院形態が整理・整備される。
- 1999年の改正精神科救急医療体制の整備が法的に位置づけられる。
- 2013年の改正医療保護入院の要件変更(保護者制度の廃止等)。
- 2022年の改正医療保護入院の在り方の見直し、退院後支援の強化。
応急入院とは(精神保健福祉法第33条の7)
応急入院は、自傷他害のおそれがない場合でも、急を要し家族等の同意を得ることができない場合に、精神保健指定医の判断で72時間以内の入院を可能とする制度です。
応急入院の定義と目的
応急入院(おうきゅうにゅういん)とは、精神保健福祉法第33条の7に規定された入院制度です。緊急措置入院とは異なり、自傷他害のおそれがない場合でも、急を要し、かつ家族等の同意を得ることができない場合に、精神保健指定医の判断で72時間以内の入院を可能とする制度です。
応急入院の主な目的は、深夜や休日など家族と連絡がとれない状況でも、精神的に不安定な状態にある方が適切な医療を受けられるようにすることです。「自傷他害のおそれ」を要件とする緊急措置入院よりも適用範囲が広く、より多くの緊急場面に対応できます。
応急入院の要件
精神保健福祉法第33条の7では、応急入院の要件を以下のように定めています。
- 医療及び保護の依頼があった者精神医療が必要だとの要請・依頼がある者であること。
- 急速を要すること直ちに入院させなければならない緊急性があること。
- 家族等の同意を得ることができない医療保護入院(家族の同意による入院)の手続きをとる時間的余裕がないこと(深夜・休日・家族と連絡不能など)。
- 精神障害者であること指定医が診察し、精神障害者と判定すること。
- 医療及び保護を図る上で著しく支障がある直ちに入院させなければ医療・保護の観点から重大な支障が生じること。
- 任意入院が行われる状態にない本人の同意による入院が得られない状態であること。
応急入院指定病院
応急入院を受け入れることができるのは、都道府県知事が指定した応急入院指定病院に限られます。一般の精神科病院すべてで応急入院を行えるわけではありません。各都道府県の精神科救急医療システムの中核を担う病院が応急入院指定病院として指定されており、深夜・休日も受け入れ体制を整えています。
- ✓各都道府県に複数の応急入院指定病院が指定されている
- ✓精神科救急情報センター(各都道府県)が受け入れ先の紹介・調整を行う
- ✓地域によって「基幹型」「協力型」など体制が異なる
特定医師による応急入院
原則として、応急入院の判断は精神保健指定医が行います。しかし、「緊急その他やむを得ない理由があるとき」は、精神保健指定医に代えて特定医師(精神科の経験を一定以上持つ医師)が応急入院の判断を行うことができます。ただし、特定医師による場合、入院期間は12時間に限られます(精神保健指定医による場合は72時間)。12時間以内に精神保健指定医が診察し、継続入院の要否を判断します。
通常の措置入院との違い
精神保健福祉法では入院形態が複数定められています。それぞれの違いを正しく理解することで、緊急時の制度活用がスムーズになります。
精神保健福祉法の入院形態一覧
精神保健福祉法では、入院形態を大きく以下のように分けています。緊急措置入院・応急入院はいずれも72時間という期間制限のある「緊急版」の入院制度です。
緊急措置入院と通常措置入院の主な相違点
緊急措置入院と通常の措置入院(第29条)は、どちらも「自傷他害のおそれ」を要件とする強制入院ですが、いくつかの重要な違いがあります。
- 精神保健指定医の診察人数通常の措置入院は精神保健指定医2名の診察結果が一致する必要があるのに対し、緊急措置入院は1名の診察で足りる。手続きの厳格性を緩和することで、急速に対応できるようにしている。
- 自傷他害のおそれの程度通常の措置入院では「自傷他害のおそれがある」で足りるが、緊急措置入院では「自傷他害のおそれが著しい」という、より高い緊急性が必要。手続きを簡略化した分、適用条件を厳しくしている。
- 入院期間通常の措置入院には原則的な期間制限がなく(症状が消退するまで継続できる)、緊急措置入院は72時間以内に限定される。
- その後の手続き緊急措置入院後は、都道府県知事がすみやかに通常の措置入院とするかどうかを決定しなければならない。
- 費用負担通常の措置入院と同様、費用は原則として公費(都道府県)負担となる。
応急入院と医療保護入院の主な相違点
応急入院は医療保護入院(第33条)の「緊急版」ともいえる制度です。以下の点で異なります。
- 家族等の同意医療保護入院は家族等(配偶者、親権者、扶養義務者など)の同意が必要。応急入院は家族等の同意を得ることができない場合に適用される。
- 入院期間医療保護入院には原則的な期間制限がない(定期的な入院継続の要否確認はある)のに対し、応急入院は72時間以内に限定される。
- 費用負担医療保護入院は通常の医療費負担(保険適用)となるが、応急入院は入院先病院が費用を負担する形になる(その後、医療保護入院等に切り替えた場合は通常の保険適用に戻る)。
各入院形態の使い分けのイメージ
本人の同意なし・家族の同意あり → 医療保護入院
自傷他害のおそれあり・通常手続き可能 → 措置入院
自傷他害のおそれ著しく急速・指定医2名不能 → 緊急措置入院(72時間)
急速・家族連絡不能・自傷他害不問 → 応急入院(72時間)
緊急入院の手続きの流れ
緊急措置入院・応急入院がどのように進むか、発見・通報から入院決定、72時間以内の判断までの流れを確認しましょう。
緊急措置入院の手続きフロー
緊急措置入院が行われるまでの一般的な手続きの流れを説明します。実際の流れは都道府県によって異なる場合があります。
応急入院の手続きフロー
応急入院の一般的な手続きの流れは以下の通りです。
入院時の告知義務
精神保健福祉法は、非自発的入院(本人の同意なしの入院)に際して、患者への告知を義務付けています。入院形態を問わず、以下の事項について書面により告知しなければなりません。
- ✓入院する理由(根拠法条)
- ✓処遇に関する制限の内容と理由
- ✓退院請求・処遇改善請求の方法
- ✓精神医療審査会への申請方法
- ✓入院中に受けられる支援(精神保健福祉士等)についての案内
告知は入院時に行われ、本人に理解できるよう配慮しながら説明されます。理解が困難な場合でも、書面の交付は必須です。
精神科救急システムの仕組み
夜間・休日にも精神科医療を必要とする方が適切な医療にアクセスできるよう、各都道府県では精神科救急医療体制が整備されています。
精神科救急医療体制とは
精神科救急医療体制は、夜間・休日においても精神科医療を必要とする方が適切な医療にアクセスできるよう整備された体制です。精神保健福祉法第19条の11に基づき、都道府県が精神科救急医療体制の確保に努める義務が定められています。
精神科救急の体制は都道府県ごとに異なりますが、一般的には以下の機能を持つ体制が整備されています。
精神科救急情報センターとは
精神科救急情報センターは、各都道府県(一部の政令指定都市)に設置されている電話相談窓口です。精神的な問題を抱えた本人や家族が夜間・休日に相談でき、適切な医療機関を紹介・調整してもらえます。
精神科救急情報センターの電話番号は都道府県によって異なります。厚生労働省の「夜間休日精神科救急医療機関案内窓口」一覧や、各都道府県の精神保健福祉センターのウェブサイトで確認できます。
センターでは、精神保健福祉士・看護師・医師などの専門職が電話に対応し、症状の緊急度・受け入れ可能な病院の空き状況などを確認しながら、適切な医療機関を紹介します。
精神科救急と一般救急の違い
精神科救急は一般救急(身体救急)と異なる特性を持っています。この違いを知ることで、緊急時に適切な対応が取りやすくなります。
精神科救急では、身体的な危険(転倒・骨折等)とは異なり、「本人が強く拒否している」「暴れている」「安全に移送できない」といった困難が生じやすいため、警察との連携が必要になる場面も多くあります。
精神科救急と保健所の役割
保健所は精神科救急においても重要な役割を果たします。精神保健福祉法第47条に基づき、保健所長は精神障害者の医療及び保護に必要な調整・支援を行う機能を持っています。
- 通報受理警察官・医療機関等からの通報を受理し、都道府県知事に報告する。
- 相談対応精神障害者の家族や本人からの相談に応じる(平日日中)。
- 実態調査通報された案件について状況を調査し、措置入院・緊急措置入院の判断材料を提供する。
- 医療機関の調整入院先の調整や退院後の地域生活支援の連絡調整を行う。
自傷他害のおそれがある場合の対応
精神保健福祉法における「自傷他害のおそれ」の定義と、家族や周囲の人が緊急時に取れる具体的な対応ステップを解説します。
自傷他害のおそれとは何か
精神保健福祉法における「自傷他害のおそれ」とは、精神障害を原因として、本人が自分自身を傷つけるか、または他者を傷つけるおそれがある状態を指します。この「おそれ」の判断は、精神保健指定医が診察を通じて行います。
「自傷のおそれ」には、自殺企図・自傷行為(リストカット等)・過量服薬などが含まれます。「他害のおそれ」には、暴力行為・暴力の脅迫・物品の破壊などが含まれます。
緊急時の具体的な対応ステップ
家族や周囲の人が「今すぐ危険な状況」と判断した場合の対応ステップです。
自殺念慮・自傷行為が疑われる場合の対応
家族が「死にたい」と言っている、または自傷行為をしていることに気づいた場合の対応について説明します。
過去に自殺未遂がある場合の注意
過去に自殺未遂歴がある場合、次の自殺企図のリスクが高いことが研究で示されています。特に退院直後・薬の変更直後・生活上の大きなストレスが重なった時期は注意が必要です。
- ✓かかりつけ医に「過去の自殺未遂歴」を必ず伝える
- ✓定期受診を継続する(症状が安定しているときでも)
- ✓薬の管理を家族が行う(過量服薬リスクの低減)
- ✓「死にたい」という言葉が出たら、すぐに対応する(「また言っている」と流さない)
- ✓緊急連絡先(精神科救急情報センター・かかりつけ医の緊急連絡先)を事前にリストアップしておく
家族が取れる行動・警察への相談
精神科的緊急事態に直面した家族が、何をすべきか・何をしてはいけないか、警察や保健所への相談方法、家族自身のセルフケアまで解説します。
精神科的緊急時に家族が最初にすべきこと
家族が精神科的緊急事態に直面した場合、何をすべきか、何をしてはいけないかを知っておくことが非常に重要です。
警察(110番)に相談・通報するケース
精神科的緊急時に警察に通報・相談することは、適切かつ合法的な対応です。精神保健福祉法第23条では、警察官が自傷他害のおそれがある精神障害者を発見した場合、保健所長を通じて都道府県知事に通報する義務を定めています。
以下のような状況では、警察(110番)への連絡を検討してください。
- ✓本人が刃物・凶器を持っているか、暴力を振るっている
- ✓建物の高い場所(屋根・窓辺)に登るなど、墜落の危険がある
- ✓「死ぬ」と言いながら道路に飛び出そうとしている
- ✓家族への暴力行為が現に起きている、または差し迫っている
- ✓本人が行方不明になっており、自傷他害のおそれがある
警察に連絡する際には、「精神的に不安定な家族がいて、自傷他害のおそれがある」と状況を具体的に説明すると、警察が精神保健福祉法に基づく対応を取ることができます。警察官の対応を受けた後、保健所経由で都道府県知事への通報が行われ、必要であれば緊急措置入院の手続きに進みます。
家族から保健所・精神保健福祉センターへの相談
緊急状況ではないが、家族の精神症状が悪化して心配な場合は、保健所や精神保健福祉センターへの相談が有効です。
家族の心理的負担とセルフケア
精神疾患を持つ家族の緊急対応を繰り返すことは、家族自身の心身に大きな負担をかけます。家族が燃え尽きないためのセルフケアも重要です。
- 家族会への参加全国精神障害者家族会連合会(みんなねっと)など、同じ経験を持つ家族同士でつながれるコミュニティが各地にあります。
- 精神保健福祉センターの家族相談本人だけでなく家族へのカウンセリング・相談を提供している機関もあります。
- 「一人で抱え込まない」意識精神科的緊急事態は、家族だけでは解決できないことがほとんどです。専門家・支援機関に助けを求めることが、本人のためにも家族のためにも重要です。
入院中の期間制限(72時間)とその後の移行
緊急措置入院・応急入院はいずれも72時間という厳しい期間制限があります。72時間以内に行われる評価・判断と、その後の入院形態への移行を解説します。
72時間の意味と法的根拠
緊急措置入院・応急入院はいずれも72時間(3日間)という厳しい期間制限があります。この72時間制限は、精神保健福祉法第29条の2第2項(緊急措置入院)および第33条の7(応急入院)に定められています。
72時間制限が設けられている理由は以下の通りです。
- 患者の権利保護強制入院は本人の自由を制約するものであるため、必要最小限の期間に限定することで人権を保護する。
- 正式な手続きへの移行促進72時間以内に、より手続きの整った入院形態(通常の措置入院・医療保護入院・任意入院)に移行するか、退院するかを判断させる。
- 手続きの簡略化のトレードオフ緊急時の手続き簡略化(指定医1名・都道府県知事命令不要など)を認めるかわりに、期間を厳しく限定する。
72時間以内に行われる評価・判断
緊急措置入院・応急入院の72時間の間に、以下の評価・判断が行われます。
① 精神保健指定医による再評価:入院直後に行われた評価に加えて、入院後の経過観察を踏まえた再評価が行われます。
② 正式な入院形態の検討:以下の選択肢の中から、最も適切な対応が選ばれます。
- 任意入院への移行本人が入院に同意する場合。
- 医療保護入院への移行家族等の同意が得られた場合。
- 通常の措置入院への移行自傷他害のおそれが継続し、指定医2名の診察一致がある場合。
- 退院入院の必要性がなくなったと判断された場合。
③ 家族への連絡:入院後、速やかに家族への連絡が行われます(家族の存在が確認できる場合)。
通常の措置入院への移行
緊急措置入院から通常の措置入院に移行するためには、改めて精神保健指定医2名による診察を行い、両名の診察結果が「自傷他害のおそれがある精神障害者」であることで一致する必要があります。
通常の措置入院に移行した場合の特徴は以下の通りです。
- 期間制限がない症状が改善し、自傷他害のおそれが消退したと判断されるまで入院を継続できる。
- 費用は公費負担措置入院の医療費は原則として都道府県が負担する(ただし、本人の収入等に応じて一部自己負担が生じる場合がある)。
- 定期的な審査措置入院者については、精神医療審査会による定期的な入院継続の要否審査が行われる。
- 退院の決定都道府県知事が症状の消退を確認した後、措置入院の解除(退院)を決定する。
医療保護入院への移行
応急入院から医療保護入院への移行は、以下の要件を満たした場合に行われます。
- ✓精神保健指定医が診察し、医療保護入院が必要と判断する
- ✓家族等(配偶者・親権者・扶養義務者・後見人等)のいずれかが入院に同意する
- ✓または市区町村長が同意する(家族等がいない場合)
2024年の精神保健福祉法改正により、医療保護入院の在り方が見直されました。入院期間の上限設定・退院促進・退院後生活環境相談員の選任などが強化され、医療保護入院が長期化しないよう制度が整備されています。
患者の権利保護と精神医療審査会
非自発的入院中の患者にも、告知・退院請求・処遇改善請求などの権利が法律で保障されています。独立した審査機関である精神医療審査会の役割を解説します。
入院中の患者の権利
精神保健福祉法は、非自発的入院中の患者の権利を保護するための規定を設けています。強制入院中であっても、以下の権利は保障されます。
精神医療審査会とは
精神医療審査会は、精神科病院への入院の要否・処遇の適否を審査する第三者機関です。都道府県および政令指定都市に設置されており、精神科医・法律家・有識者(精神保健福祉士等)で構成されます(精神保健福祉法第12条)。
精神医療審査会の主な機能は以下の通りです。
- 定期報告の審査措置入院者・医療保護入院者について、病院からの定期報告に基づき入院継続の要否を審査する。
- 退院請求・処遇改善請求の審査患者または家族等からの退院・処遇改善の請求を受けて、審査を行い都道府県知事に意見を述べる。
- 独立性の確保精神医療審査会は、精神科病院や都道府県行政から独立した立場で審査を行う。
退院請求・処遇改善請求の手続き
措置入院・緊急措置入院・医療保護入院・応急入院中の患者またはその家族等は、都道府県知事に対して退院または処遇改善を請求することができます。
この手続きの存在を知ることが、患者の権利を守る第一歩です。病院・保健所・精神保健福祉センターに問い合わせることで、手続きの方法を確認できます。
精神科病院入院患者への支援者(精神保健福祉士等)
精神科病院には精神保健福祉士(PSW)が配置されており、入院患者・家族の相談支援・権利擁護・退院支援を担います。入院中に権利侵害や処遇の問題を感じた場合は、まず院内の精神保健福祉士に相談することを勧めます。
また、各都道府県の精神保健福祉センターも、入院患者・家族からの権利擁護に関する相談を受け付けています。
退院後の支援と利用できる制度
2022年改正以降強化された退院後支援計画、自立支援医療制度、障害福祉サービス、精神障害者保健福祉手帳など、退院後の生活を支える制度を紹介します。
退院後支援計画(2022年改正以降)
2022年の精神保健福祉法改正により、措置入院者の退院後支援が強化されました。都道府県・政令指定都市は、措置入院者が退院した場合に、適切な医療の提供等が確保されるよう努めなければならないとされています。
退院後支援計画は、患者本人・家族・医療機関・保健所・福祉サービス関係者が連携して作成します。計画には以下が含まれます。
- ✓退院後の通院・治療計画(担当医・病院の確保)
- ✓居住場所の確保・住宅支援
- ✓障害福祉サービスの利用計画
- ✓緊急時の対応方針(再入院が必要になった場合の連絡先等)
- ✓就労・社会参加への支援計画
自立支援医療制度(精神通院医療)の活用
緊急措置入院・応急入院・措置入院で入院した後、外来通院が継続的に必要になる場合は、自立支援医療制度(精神通院医療)を活用することで医療費の自己負担を大幅に軽減できます。
- 対象精神疾患で継続的な外来治療が必要な方。
- 給付内容指定した精神科・心療内科の外来診察・投薬・精神科デイケア等。
- 申請先市区町村の障害福祉担当窓口(精神科医の診断書が必要)。
- 有効期間1年間(更新可能)。
- 精神保健福祉センターへの問い合わせ制度の詳細は、各都道府県・政令指定都市の精神保健福祉センターに相談できます。
障害福祉サービスの活用
精神障害者が地域で安定して生活できるよう、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスが利用できます。退院後の生活を支える主なサービスを紹介します。
精神障害者保健福祉手帳
一定の精神障害の状態にある方が取得できる精神障害者保健福祉手帳は、各種福祉サービスの利用・税制優遇・公共交通機関の割引などを受けられます。
- 等級1級(最も重度)・2級・3級の3段階。
- 申請先市区町村の障害福祉担当窓口。
- 必要書類精神科医の診断書または自立支援医療(精神通院医療)受給者証の写し。
- 有効期間2年間(更新可能)。
地域精神保健福祉センターへの相談
退院後の生活で困ったことがあれば、精神保健福祉センターに相談することを勧めます。精神保健福祉センターは、精神科医・精神保健福祉士・臨床心理士等の専門職が在籍し、本人・家族からの無料相談を受け付けています。
- ✓退院後の通院先・支援機関の紹介
- ✓社会復帰・就労に関する相談
- ✓家族の対応方法に関する相談・支援
- ✓自立支援医療・障害福祉サービスの申請サポート
- ✓デイケア・家族教室などのプログラムの案内
緊急入院・精神科救急に関する7つの質問
A. 最大の違いは「自傷他害のおそれ」の要件の有無です。緊急措置入院(第29条の2)は、精神障害のために自分や他者を傷つけるおそれが著しい場合に適用され、都道府県知事の命令によって行われます。応急入院(第33条の7)は自傷他害のおそれを要件とせず、急を要し家族等の同意が得られない場合に、指定病院の精神保健指定医の判断で行われます。どちらも72時間以内の入院制限という点は共通しています。また、費用負担の点でも違いがあり、緊急措置入院は公費負担、応急入院は病院が費用を立て替える形になります。
A. まず、絶対に一人にしないことが最優先です。「死にたいの?」と直接聞くことをためらわないでください。自殺についてオープンに話すことは、リスクを高めません。危険な道具(刃物・薬・ロープ等)があれば遠ざけてください。夜間・休日であれば精神科救急情報センター(都道府県ごとに電話番号が異なります)か、いのちの電話(0120-783-556)・よりそいホットライン(0120-279-338)に連絡してください。生命の危険が差し迫っている場合は119番(救急)か110番(警察)に連絡してください。平日日中であれば、かかりつけの精神科医や保健所への連絡も有効です。
A. 緊急措置入院の費用は、原則として都道府県(公費)が負担します。通常の措置入院と同様の扱いです。ただし、本人の所得状況によっては一部自己負担が生じる場合があります。応急入院の場合は、入院先の病院が費用を立て替え、その後の入院形態(任意入院・医療保護入院等)に移行した際に通常の医療費負担(健康保険等)となります。費用の詳細については、入院した病院のソーシャルワーカー(精神保健福祉士)または保健所に相談してください。
A. はい、精神保健福祉法の要件を満たす場合、本人の同意なしに入院させることができます。緊急措置入院・措置入院・医療保護入院・応急入院はいずれも「非自発的入院」であり、本人が強く拒否していても適用できます。ただし、これらの入院には厳格な法的要件があり、精神保健指定医による診察と判断が必要です。「暴れているから入院させたい」という家族の希望だけでは入院させることはできません。精神科救急情報センター・保健所・精神保健福祉センターに相談し、専門家の判断を経ることが必要です。
A. 72時間以内に、別の入院形態(任意入院・医療保護入院・通常の措置入院)に移行するか、退院するかを決定する必要があります。72時間を超えて緊急措置入院または応急入院を継続することは法律上認められていません。もし継続的な入院が必要と判断された場合は、通常の措置入院(精神保健指定医2名の診察一致が必要)・医療保護入院(家族等の同意が必要)・任意入院(本人の同意が必要)のいずれかに切り替えます。医療機関がこの手続きを行う責任を持っており、家族が特別な手続きをする必要はありません。
A. まず、退院前にかかりつけの精神科医・病院の緊急連絡先・精神科救急情報センターの電話番号を確認しておくことが大切です。再び症状が悪化した場合、①かかりつけ医に連絡する、②精神科救急情報センターに連絡する、③緊急性が高い場合は119番・110番に連絡する、という順で対応します。再入院が必要になる場合もありますが、それは回復の過程で起こりうることです。「また入院になってしまった」と落ち込む必要はありません。退院後の支援体制(外来通院・訪問看護・地域活動支援センター等)を利用しながら、地域で安定した生活を続けることを目指してください。自立支援医療制度(精神通院医療)を活用すると、通院の医療費負担を軽減できます。
A. 精神科救急情報センターの電話番号は都道府県ごとに異なります。厚生労働省のウェブサイト「夜間休日精神科救急医療機関案内窓口」のPDF(各都道府県の窓口一覧)で確認できます。また、お住まいの都道府県の精神保健福祉センターのウェブサイトや、管轄の保健所でも電話番号を案内しています。緊急事態が起きる前に、お住まいの地域の精神科救急情報センターの番号をスマートフォンに登録しておくことを強くお勧めします。
一人で抱え込まないで。
相談してみませんか。
緊急入院や精神科救急のことで不安を抱えていませんか。本人のことも、家族自身のつらさも、どうかあなたの大切な悩みをここに聞かせてください。
このページの情報は、医師による診断や治療に代わるものではありません。緊急の場合は精神科救急情報センター・119番・110番にご連絡ください。自立支援医療制度(精神通院医療)の活用で、精神科・心療内科への継続通院の医療費自己負担が原則1割に軽減されます。市区町村の福祉窓口または精神保健福祉センターにご相談ください。
