公認心理師とは?
資格・仕事内容・臨床心理士との違いを徹底解説
2017年に法制化された日本初の心理職国家資格「公認心理師」。定義・倫理義務・臨床心理士との違い・受験資格・5つの活躍領域・年収・カウンセリングの受け方・費用と保険適用まで、利用者と資格を目指す方の両方に必要な情報を網羅的にまとめました。
公認心理師とは——定義と国家資格としての位置づけ
公認心理師は2017年9月施行の公認心理師法に基づく日本初の心理職国家資格です。厚生労働省と文部科学省が共管し、科学的根拠に基づく心理的支援を提供することを職務とします。
公認心理師の定義
公認心理師(こうにんしんりし)とは、2017年9月に施行された「公認心理師法」(平成27年法律第68号)に基づく、日本初の心理職国家資格です。厚生労働省と文部科学省が共管する国家資格であり、心理に関する支援が必要な人に対して、科学的根拠に基づく心理的支援を提供することを主な職務とします。
「国家資格」であることの意味
公認心理師が国家資格である点は、心理職の世界において非常に重大な意味を持ちます。国家資格とは、国(法令)が定めた試験に合格し、登録を行うことで名乗れる資格のことです。
医療分野では、2018年度から公認心理師のみが診療報酬の加算(「心理支援加算」等)の対象となる場合があり、病院・クリニックでの心理職の採用において公認心理師資格の有無が重要視されるようになっています。
公認心理師法第2条が定める4つの業務
公認心理師法第2条は、公認心理師の業務を以下の4つに定義しています。
公認心理師の倫理義務(4つの法定義務)
公認心理師法は、資格保有者に対して以下の義務を課しています。
- 信用失墜行為の禁止(第40条)公認心理師の信用を傷つけるような行為を行ってはならない。
- 秘密保持義務(第41条)業務上知り得た秘密を正当な理由なく他に漏らしてはならない。公認心理師でなくなった後も同様。
- 連携義務(第42条)支援対象者に主治医がいる場合はその指示に従い、いない場合は適切な医師への受診を促す。
- 資質向上の責務(第43条)公認心理師としての資質の向上に努めなければならない。
公認心理師が誕生した背景と歴史
2015年の法制化以前、日本には心理職の国家資格がありませんでした。社会的需要の高まりと国際的な標準化の流れが、国家資格化を後押ししました。
法制化以前の心理職の状況
公認心理師法が成立する2015年以前、日本には心理職の国家資格が存在しませんでした。心理相談・カウンセリングを行う専門家として広く知られていた「臨床心理士」は、日本臨床心理士資格認定協会が認定する民間資格に過ぎませんでした。
そのため、資格のない「カウンセラー」「心理士」と名乗る人物でも心理相談業務を行うことができ、支援の質にばらつきがあるという問題がありました。また、医療現場での心理職の法的位置づけが不明確であることも、多職種連携の障壁となっていました。
公認心理師法の成立から試験開始まで
第1回試験は、法施行前に心理職として働いていた人たちのための「経過措置ルート(現任者特例)」を含む大規模な試験となりました。受験者数は約7万人に上り、これは第1回試験としては異例の規模でした。
国家資格化を推進した5つの社会的背景
公認心理師法の成立を後押しした社会的背景として、以下の要因が挙げられます。
- 精神疾患患者数の増加うつ病をはじめとする精神疾患の患者数が300万人を超え、メンタルヘルス専門職の法的整備が急務となった。
- 学校現場での需要増加いじめ、不登校、自殺問題への対応としてスクールカウンセラーの需要が高まり、専門性の担保が求められた。
- 多職種連携の必要性医療・福祉・教育の現場で、医師・看護師・社会福祉士などと連携して働く心理職の法的位置づけが必要とされた。
- 国際的な標準化の流れアメリカ・イギリス・ドイツなど多くの国で心理職の国家資格制度が整備されており、日本でも整備が求められた。
- 東日本大震災後の心理支援ニーズ2011年の震災後、被災地での心理的支援の需要が急増し、心理職の専門性と法的位置づけへの関心が高まった。
公認心理師と臨床心理士の違い
最も問い合わせの多い「公認心理師と臨床心理士の違い」を、資格の種別・法的根拠・受験資格・更新の有無など10項目で徹底比較します。精神保健福祉士(PSW)との違いも含めて解説します。
国家資格 vs 民間資格——3つの心理・精神医療資格
公認心理師と臨床心理士の最も根本的な違いは、資格の種別です。公認心理師は国(厚生労働省・文部科学省)が認定する国家資格であるのに対し、臨床心理士は公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会が認定する民間資格です。
ただし、臨床心理士は1988年に創設されて以来、30年以上にわたって心理職の事実上の標準資格として機能してきた歴史があります。現場での認知度・信頼度は依然として高く、特に教育分野(スクールカウンセラー)では臨床心理士が要件とされてきた経緯もあります。
公認心理師と臨床心理士の比較表
「どちらを選べばよいか」——利用者の視点から
カウンセリングや心理支援を受けたい方にとって、公認心理師と臨床心理士のどちらに相談すべきかという問いの答えは、どちらでも構いません。両者の業務内容に本質的な差異はなく、重要なのは資格の種別よりも、その専門家が自分の抱えている問題(うつ・不安・トラウマ・発達特性・職場ストレスなど)を得意としているかどうか、そして相談しやすい関係が築けるかどうかです。近年では両方の資格を持つ専門家も増えています。
精神保健福祉士(PSW)との違い
心理・精神医療の分野には、もうひとつの国家資格として精神保健福祉士(PSW)があります。精神保健福祉士は福祉の専門職であり、心理的支援よりも生活支援・社会復帰支援・関係機関との連絡調整を主な役割とします。公認心理師が「心理的側面からの支援」を行うのに対し、精神保健福祉士は「社会的側面からの支援」を担うと理解するとわかりやすいでしょう。
公認心理師になるには——受験資格・試験概要・合格率
公認心理師の受験資格は複数のルートがあります。試験の概要・合格率の推移・対策のポイントまで、これから資格を目指す方に必要な情報をまとめました。
受験資格の3つのルート
公認心理師国家試験の受験資格は、複数の「ルート(区分)」によって定められています。現在(2026年時点)で有効な主なルートは以下の通りです。
4年制大学で公認心理師養成カリキュラムの指定科目(心理学概論・臨床心理学概論・知覚心理学・学習心理学・感情心理学など25科目程度)を修得して卒業した後、大学院(修士課程)で指定科目を修了するルート。学部で80時間以上、大学院で450時間以上の実習が必要。大学院修了後すぐに受験資格が得られる(実務経験不要)。
4年制大学で指定科目を全て修得して卒業(区分Aと同様)した後、厚生労働省が定める認定施設で心理に関する支援業務に2年以上従事するルート。認定施設の認定基準を満たす施設での実務経験が必要(すべての職場が該当するわけではない)。
公認心理師法施行前(2017年以前)に大学・大学院に入学していた人や、すでに心理職として勤務していた人のために設けられた特例ルート。すでに終了または縮小しており、Gルート(5年以上の実務経験者向け)については第5回試験(2022年)をもって終了。
どの大学・大学院を選ぶべきか
公認心理師を目指す上で、大学・大学院選びは非常に重要です。以下のポイントを確認しましょう。
- 公認心理師養成カリキュラムへの対応文部科学省が定めた指定科目を全て開講している大学・大学院を選ぶ。対応していない学校では受験資格が得られない。
- 実習施設の充実度学部80時間・大学院450時間の実習要件を満たせる実習先を確保しているかを確認する。
- 教員の専門性担当教員の専門領域(認知行動療法・精神分析・発達心理学など)が自分の関心と一致しているか。
- 大学院進学実績学部から指定大学院への進学実績・サポート体制を確認する。
公認心理師試験の基本情報
出題範囲——4つの主要領域
公認心理師試験の出題範囲は、ブループリント(試験設計表)に基づき、心理学の幅広い分野をカバーします。主な出題領域を以下に示します。
- 心理学基礎知覚・認知心理学、学習・言語心理学、感情・人格心理学、社会・集団・家族心理学、発達心理学、神経心理学。
- 臨床心理学精神疾患の基礎知識(うつ病・統合失調症・不安障害・発達障害など)、心理的アセスメント(知能検査・人格検査・神経心理学的検査)、心理療法・カウンセリング(認知行動療法・精神分析・人本的心理学など)。
- 関連法律・制度公認心理師法・精神保健福祉法・障害者総合支援法・学校教育法・労働者メンタルヘルス関連法規。
- 事例問題医療・教育・福祉・司法・産業の各現場を舞台にした事例問題が全問題の約3分の1を占める。実践的な判断力が問われる。
合格率の推移
公認心理師試験の合格率は、回によって大きく異なります。これは経過措置ルートの対象者が含まれた初期の試験と、通常ルートのみの試験では受験者の背景が異なるためです。
合格率は概ね50〜70%の範囲で推移しており、医師(国試合格率約90%)や看護師(約89%)と比べると低めです。しかし、受験資格を得ること自体(大学4年+大学院2年)が高いハードルであり、受験者の多くは相応の専門教育を受けているため、一概に難易度を比較することは難しい点に注意が必要です。
試験対策のポイント
- ブループリントを熟読する試験センターが公表するブループリント(試験設計表)で各領域の出題割合を把握し、重点領域に時間を配分する。
- 事例問題の演習を重視試験の3分の1を占める事例問題は、単純な暗記では対応できない。過去問・模擬試験で実践的な思考力を養う。
- 法律・制度の整理関連法律(精神保健福祉法・障害者総合支援法・労働安全衛生法など)の条文・制度の枠組みは頻出。整理ノートを作成する。
- DSM-5・ICD-11の精神疾患分類精神疾患の診断基準・症状・治療法は必須知識。最新版の分類体系を把握しておく。
- 予備校・通信講座の活用市販のテキストに加え、公認心理師専門の予備校や通信講座を活用することで、効率的な対策が可能。
公認心理師の仕事内容——4つの業務の実際
公認心理師法第2条が定める4つの業務(心理査定・心理相談・関係者支援・教育啓発)の具体的な内容を、用いる検査・心理療法・実践例とともに解説します。
心理的アセスメント(心理査定)で用いる検査
心理的アセスメント(心理査定)とは、支援対象者の心理状態・認知機能・パーソナリティ・行動特性などを多角的に評価する業務です。面接・行動観察・心理検査を組み合わせて行います。アセスメントの結果は、支援方針の立案・医師への情報提供・家族への説明などに活用されます。
心理的支援(カウンセリング・心理療法)の主な手法
心理的支援は、公認心理師の最も中核的な業務です。個人カウンセリング・グループカウンセリング・心理療法など、さまざまな形式で行われます。
関係者への支援
公認心理師は、支援対象者本人だけでなく、その関係者(家族・保護者・教師・職場の上司など)に対しても相談・助言・指導を行います。
- ✓子どものメンタルヘルス問題を抱えた保護者へのペアレントトレーニング
- ✓うつ病を発症した社員の家族への心理教育(illness educationを含む)
- ✓医療機関での病棟スタッフ向けメンタルヘルス支援・コンサルテーション
- ✓学校の教師へのコンサルテーション(支援の難しい生徒への関わり方の助言)
心の健康に関する教育・情報提供(心理教育・啓発活動)
心理教育・啓発活動も公認心理師の重要な業務です。個別支援にとどまらず、集団・地域・社会全体へのアプローチが含まれます。
- ✓企業でのストレスチェック制度の実施・結果説明・高ストレス者へのフォロー
- ✓学校でのSOS教育(自分のサインに気づく・誰かに相談する力を育てる)
- ✓精神保健福祉センターでの住民向け心の健康講座
- ✓うつ病・統合失調症・発達障害の当事者・家族への心理教育グループ
- ✓医療機関での患者向け疾患教育プログラムの実施
公認心理師の活躍の場——5つの領域
公認心理師の活動分野は厚生労働省の「公認心理師の活動状況等調査」で5つの主要領域に分類されます。最新の調査(令和5年度)では教育分野が27.1%で最も多く、保健医療・福祉が続きます。
5つの主要活動領域と分布
公認心理師の活動分野は、厚生労働省が実施する「公認心理師の活動状況等調査」において5つの主要領域に分類されています。最新の調査(令和5年度)では、教育分野が27.1%で最も多く、次いで保健医療分野(約30%という調査もある)、福祉分野が続きます。
5つの活動領域の詳細
主な職場:精神科病院・クリニック、一般病院(内科・小児科・産婦人科・緩和ケア病棟など)、保健所、精神保健福祉センター
主な職場:小学校・中学校・高等学校・特別支援学校、教育委員会、教育相談センター、大学の学生相談室
主な職場:児童相談所、児童養護施設、発達支援センター(発達障害者支援センター)、障害者支援施設、高齢者福祉施設(老人保健施設・グループホーム)、母子生活支援施設、DV被害者シェルター
主な職場:家庭裁判所(家裁調査官とは別職種)、少年院、少年鑑別所、刑務所・拘置所、保護観察所、犯罪被害者支援センター
主な職場:企業の健康管理室・EAP(従業員支援プログラム)、産業医と連携するクリニック、独立開業(産業カウンセラーとしての業務委託)
主な対象:うつ病・双極性障害・統合失調症・不安障害・強迫症・PTSDの患者、身体疾患を持つ患者の心理的支援(リエゾン精神医学)
主な対象:不登校・いじめ・発達障害・虐待・家庭問題・メンタルヘルス上の困難を抱える児童・生徒
主な対象:虐待を受けた子ども、発達障害児・者、知的障害者、高齢者(認知症含む)、DV・ドメスティックバイオレンス被害者
主な対象:非行少年、刑事施設入所者、更生保護対象者、犯罪被害者・その遺族
主な対象:職場でのストレス・ハラスメント・適応障害・うつ病を抱える労働者、休職中・復職を目指す社員
具体的業務:外来での個別カウンセリング、入院病棟での心理支援、心理検査・アセスメント、精神科デイケアでのグループ活動の運営、医師・看護師・精神保健福祉士との多職種チーム連携
具体的業務:児童・生徒との個別面談、保護者へのカウンセリング、教師へのコンサルテーション、校内委員会・支援チームへの参加、危機介入(自傷・自殺企図後の緊急対応)
具体的業務:子どもへのプレイセラピー、発達障害の診断補助(心理検査)、障害者への生活支援と心理的ケア、認知症のアセスメントと家族支援
具体的業務:心理査定(アセスメント)による処遇方針の提言、更生プログラム(性犯罪者向け・薬物依存者向けなど)の実施、犯罪被害者へのトラウマケア
具体的業務:ストレスチェック制度(50人以上の事業場で義務)の実施・高ストレス者への面接勧奨、復職支援プログラム(リワーク)の実施、職場環境改善のための助言、管理職向けメンタルヘルス研修
特徴:公認心理師は医師の指示の下で業務を行う義務があり(連携義務)、チーム医療の一員として機能する。診療報酬の加算対象となる業務が増えており、医療機関での需要が高い。
特徴:スクールカウンセラーは非常勤(週1〜2日程度)での配置が多く、複数校を掛け持ちするケースが多い。文部科学省は全校配置を推進しており、需要が高まっている。
特徴:生活上の困難を抱えるさまざまな人への心理的支援を行う領域。
特徴:公認心理師の活動領域の中では割合が少ないが(数%)、求められる専門性が高く、やりがいも大きい分野。
特徴:産業分野では公認心理師単独ではなく、産業医・産業保健師・社会保険労務士などと連携して働くことが多い。企業内常勤は少なく、外部EAP事業者として複数企業を担当するケースが多い。
公認心理師の年収・給与の実態
公認心理師の活動状況等調査によると、年収の分布は「300万円以上400万円未満」が21.3%と最も多く、次いで「400万円以上500万円未満」が17.7%。他の医療専門職と比べて低めの水準が課題です。
公認心理師の年収概況
公認心理師の活動状況等調査によると、年収の分布は「300万円以上400万円未満」が21.3%と最も多く、次いで「400万円以上500万円未満」が17.7%となっています。全体的に、他の医療専門職と比べて低めの水準であることが課題として指摘されています。
活動領域別の年収帯
年収を上げるための5つの方法
- 複数資格の取得公認心理師+臨床心理士の両方を持つことで求人の幅が広がる。
- 特定分野の専門性認知行動療法・EMDRなどの専門研修を修了し、特定の心理療法の専門家として認知される。
- 産業分野へのシフト相対的に給与水準が高い産業・EAP分野への転職。
- 独立開業個人カウンセリングルームの開設。リスクはあるが、自由度が高く収入を伸ばせる可能性がある。
- 管理職・スーパーバイザーへの昇進経験を積み、後輩の督促・管理を行う立場になることで収入増につながる。
公認心理師に相談する方法・受け方
公認心理師に相談できる範囲、6つの相談ルート、初回カウンセリングの流れ、費用と保険適用の仕組み、自立支援医療制度の活用まで、利用者目線で具体的に解説します。
公認心理師が扱える相談の範囲
公認心理師は、精神科医とは異なり薬の処方は行えませんが、幅広い心理的問題に対応できます。以下に、公認心理師に相談できる主な内容を挙げます。
公認心理師と医師の役割分担
公認心理師はあくまで「心理職」であり、医師とは異なる役割を担います。
公認心理師に相談する6つのルート
公認心理師のカウンセリングを受けるには、いくつかのルートがあります。自分の状況や希望する形式に合ったルートを選びましょう。
- 精神科・心療内科での紹介(院内カウンセリング)精神科や心療内科を受診し、主治医に「心理士のカウンセリングも受けたい」と伝えると、院内の公認心理師・臨床心理士を紹介してもらえる場合があります。医師の指示のもとで行われるため、健康保険が適用される「心理療法」として認められるケースがあります。
- 民間のカウンセリングルーム・相談室独立して開業している公認心理師に直接予約を入れる方法。医師の紹介なしに相談できるため、気軽に利用しやすいですが、費用は自費(保険適用外)となります。
- オンラインカウンセリングビデオ通話・チャット・電話を使ったオンライン形式のカウンセリング。自宅から受けられるため、移動が難しい方や対面に抵抗がある方に適しています。
- 精神保健福祉センター各都道府県・政令指定都市が設置する公的機関。精神科医・精神保健福祉士・公認心理師が在籍し、無料で相談できます(ただし待ち時間が長い場合があります)。
- 学生相談室・スクールカウンセラー在学中の場合、学校に配置されているスクールカウンセラー(多くが公認心理師または臨床心理士)に無料で相談できます。
- 職場のEAP(従業員支援プログラム)勤務先がEAP契約を結んでいる場合、外部の公認心理師に無料でカウンセリングを受けられます。会社に知られない形で相談できる点が特徴です。
初回カウンセリングの流れ
カウンセリングが初めての方は、何をどう話せばよいかわからず不安を感じることも多いでしょう。一般的な初回の流れを説明します。
オンラインカウンセリングのメリット・デメリット
近年、オンラインカウンセリングは急速に普及しています。主なメリットとデメリットを理解した上で選びましょう。
カウンセリング費用の相場と保険適用
公認心理師によるカウンセリングの費用は、実施場所や形式によって大きく異なります。
「カウンセリングは保険が使えないの?」という疑問はよく聞かれます。原則として、公認心理師が単独で行う心理カウンセリング(自由診療)は健康保険が適用されません。しかし、以下の条件を満たす場合は保険適用となることがあります。
- 精神科・心療内科に通院中で、医師の指示のもとで実施される場合「通院精神療法」として診療報酬が算定される。医師が実施するものだけでなく、医師の指示のもと公認心理師が実施する場合も含まれる。
- 「心理支援加算」が適用される場合精神科に通院し、公認心理師・臨床心理士が介入することで加算が認められる診療報酬コードがある(2018年度より整備)。
自立支援医療制度(精神通院医療)を活用する
費用が心配な方への低コスト・無料の選択肢
カウンセリングの費用が負担に感じられる方は、以下の低コスト・無料の選択肢を検討してください。
- 精神保健福祉センターの無料相談各都道府県・政令指定都市に設置。公認心理師・精神保健福祉士・精神科医による無料相談が可能。
- いのちの電話・よりそいホットライン無料の電話相談窓口。専門家ではない相談員が対応することもあるが、24時間いつでも話を聞いてもらえる。
- ハローワークの就労支援就労に関するメンタルヘルスの相談は、ハローワークの専門相談員(一部は公認心理師)に無料で相談できる場合がある。
- 地域の福祉相談市区町村の福祉事務所・地域包括支援センターで、精神保健分野の相談を受け付けている場合がある。
公認心理師の選び方と相談すべきタイミング
自分に合った公認心理師を選ぶための3つのポイント(専門分野・相性・資格経験)と、「こんな状況なら相談を」という具体的なサインを紹介します。早期相談が回復の近道です。
専門分野を確認する
公認心理師にも、得意とする分野・手法があります。自分の悩みに合った専門領域を持つ公認心理師を選ぶことが重要です。
- うつ・不安が中心の悩み認知行動療法(CBT)を専門とする公認心理師を選ぶと効果的。
- 過去のトラウマ・性被害トラウマ専門の心理療法(EMDR・TF-CBT)を習得している公認心理師。
- 発達障害(ADHD・ASD)発達支援の経験が豊富な公認心理師。
- 子ども・思春期の問題小児・思春期分野の経験が豊富な公認心理師。
- 職場のストレス・キャリア産業カウンセリング・EAPの経験がある公認心理師。
- 家族・夫婦関係家族療法・カップルカウンセリングの訓練を受けた公認心理師。
「相性」を重視する——治療同盟の重要性
カウンセリングの効果に最も影響するのは、理論や技法よりも治療同盟(therapeutic alliance)——つまりカウンセラーとの信頼関係・協働関係の質です。心理療法の研究では、一貫して「治療同盟の強さ」が治療成果の予測因子として最も重要であることが示されています。
- ✓初回のカウンセリング後に「この人に話していてよかった」と感じるかどうかを大切にする
- ✓「安全に話せる」「否定されない」「理解してもらえている」という感覚が持てるかどうか
- ✓相性が合わないと感じた場合は、遠慮なく別の公認心理師に変えてよい。それはカウンセラーへの不満ではなく、自分に合ったサポートを求める正当な行動
資格・経験・研修歴を確認する
- 公認心理師登録番号厚生労働省の「公認心理師登録者名簿」で検索することで、資格の有効性を確認できる。
- 臨床心理士資格の有無両資格を持つ専門家は、より幅広い研修・スーパービジョンを受けている可能性が高い。
- 専門研修の修了歴CBT資格認定協会の認定、EMDRセラピスト資格、家族療法の認定など、専門研修の修了歴は技法の習熟度の指標となる。
- スーパービジョンの受講定期的にスーパービジョン(より上位の専門家による指導・教育)を受けている公認心理師は、専門性維持・向上への意欲が高い。
こんな状況なら相談を検討してください
- ✓2週間以上、気分の落ち込み・無気力・楽しめないという状態が続いている
- ✓不安・心配・緊張が強く、日常生活に支障が出ている
- ✓パニック発作(動悸・息切れ・強い恐怖感)が繰り返される
- ✓過去のつらい体験がフラッシュバックとして蘇る
- ✓眠れない・食欲がない・疲れがとれないという状態が1ヶ月以上続いている
- ✓人間関係でいつも同じパターンの問題が起きる
- ✓仕事・学校に行けない、または行くのが非常につらい
- ✓「死にたい」「消えてしまいたい」という気持ちがある
- ✓自分でもわからない理由で涙が止まらない・感情のコントロールが難しい
いのちの電話:0120-783-556(24時間・無料)
よりそいホットライン:0120-279-338(24時間・無料)
精神保健福祉センター(お住まいの都道府県の窓口)
「まだ大丈夫」と思っているうちに相談を
心理的な問題は、「深刻でなければ相談してはいけない」ということは全くありません。むしろ、問題が軽いうちに、症状が固定化する前に相談することで、早期に回復しやすくなります。
- ✓「このくらいで相談したら大げさ」と思わないでください——公認心理師は深刻な問題だけでなく、日常的なストレスや悩みの相談にも対応しています
- ✓早期介入の効果:うつ病・不安障害は早期に適切なケアを受けるほど、回復が早く再発リスクも低くなることが研究で示されています
- ✓「弱い」から相談するのではありません——自分の状態を正確に把握して専門家のサポートを求めることは、むしろ賢明な判断です
公認心理師に関する7つのQ&A
A. 目安として、「薬が必要かもしれない」または「はっきりした病気かどうか確かめたい」という場合は、まず精神科・心療内科(医師)を受診することをお勧めします。うつ病・双極性障害・統合失調症・不安障害などの診断と薬物療法は医師の領域です。一方、「悩みを聞いてほしい」「自分のパターンを理解したい」「特定の問題に対処する方法を学びたい」という場合は、公認心理師のカウンセリングが適しています。多くのケースでは「精神科受診で診断・薬物療法+公認心理師でカウンセリング」という組み合わせが最も効果的です。
A. 厚生労働省の公認心理師登録者名簿(オンラインで検索可能)で、登録番号・氏名・登録年月日を確認できます。相談先の公認心理師に登録番号を尋ねることも、プロとしての対応を確かめる方法のひとつです。公認心理師の名称を無断で名乗ることは公認心理師法第44条で禁止されており、30万円以下の罰金が科されます。ただし「カウンセラー」「心理士」「心理カウンセラー」という名称には法的保護がないため、これらの名称を使う専門家が公認心理師であるとは限りません。
A. はい。公認心理師には秘密保持義務(守秘義務)があり(公認心理師法第41条)、業務上知り得た秘密を正当な理由なく第三者に漏らすことは禁止されています。職場・家族・友人に知られることはありません。ただし、①本人や第三者の生命に重大な危険が差し迫っている場合(自殺リスクが非常に高い、他者への危害が予見される等)、②法律で開示が義務づけられている場合(児童虐待の通告義務等)は、守秘義務の例外として情報を共有することがあります。こうした例外の扱いについては、初回カウンセリングで確認しておくことをお勧めします。
A. 効果が現れる期間は、問題の種類・重さ・選ぶ心理療法によって大きく異なります。一般的な目安として、軽度〜中等度のうつ・不安障害に対する認知行動療法(CBT)では12〜20回のセッションで有意な改善が得られることが多いです。一方、長年の性格的なパターンや複雑なトラウマ、対人関係の根本的な問題に取り組む場合は、数年にわたる継続的なサポートが必要になることもあります。初回の面談で公認心理師からおおよその見通しを聞いてみましょう。また、数回通って「効果を感じない」と思ったら、正直に公認心理師に伝えることが大切です。方針を変えたり、別の専門家に相談したりすることも選択肢です。
A. いいえ、公認心理師には薬の処方権はありません。薬の処方は医師(精神科医・内科医など)のみが行える業務です。公認心理師は心理的支援(カウンセリング・心理療法・アセスメント)を通じて支援を行います。うつ病・不安障害・双極性障害・統合失調症などで薬物療法が必要な場合は、精神科・心療内科への受診が必要です。なお、公認心理師は医師と連携する義務(連携義務)があり、支援対象者に主治医がいる場合はその指示に従い、いない場合は適切な医師への受診を促すことが法律で定められています。
A. はい、子ども(未成年者)も公認心理師に相談できます。学校に配置されているスクールカウンセラー(多くが公認心理師または臨床心理士)は、小学生〜高校生を主な対象としています。また、児童相談所・発達支援センターにも公認心理師が配置されており、発達障害・不登校・いじめ・虐待など子どもに関わる問題の専門的な支援を受けることができます。子ども向けの支援では、言葉で話すカウンセリングだけでなく、プレイセラピー(遊戯療法)——おもちゃ・砂箱・絵画などを通じて心を表現する方法——も使われます。未成年の場合、保護者の同意が必要なことが多いですが、一部の相談機関では子ども自身からの相談にも対応しています。
A. 「精神科やカウンセリングに行くのは弱い人だ」「病気でもないのに行ってはいけない」という気持ちは、多くの方が感じていることです。しかし、心の問題への対処は「弱さ」ではなく「自己ケアの実践」です。身体の病気に対して医師に診てもらうのと同じように、心の問題に対して専門家に支援を求めることは、自然で賢明な行動です。日本のメンタルヘルスリテラシーは徐々に向上しており、カウンセリングを利用することへの偏見は少なくなっています。また、守秘義務により周囲に知られることはありません。まずは「一度だけ話してみる」という軽い気持ちで扉を開いてみてください。
一人で抱え込まないで。
相談してみませんか。
心のことで誰かに話を聞いてほしいと感じていませんか。どうかあなたの大切な気持ちをココトモに聞かせていただきたいです。
このページの情報は、医師による診断や治療に代わるものではありません。症状が気になる場合は、心療内科・精神科への受診をご検討ください。自立支援医療制度(精神通院医療)を利用すると、精神科・心療内科への通院医療費の自己負担が原則1割に軽減されます。市区町村の福祉担当窓口または精神保健福祉センターにご相談ください。
