産業医とは?
役割・面談内容・メンタルヘルスへの対応を完全解説
「産業医に呼ばれたけれど何を話せばいいの?」「会社に相談内容がバレるのでは?」「休職・復職のとき産業医はどう関わるの?」——労働安全衛生法に基づく産業医の役割・選任義務・面談の流れ・守秘義務・主治医との連携まで、働く人が知っておきたいすべてを包括的に解説します。
産業医とは——定義と法的根拠
産業医(さんぎょうい)は、労働安全衛生法第13条に基づき事業所に選任される、労働者の健康管理を専門とする医師です。臨床医が「治療」を担うのに対し、産業医は「予防」と「職場環境の改善」を担います。
産業医の定義と役割の本質
産業医(さんぎょうい)とは、事業場において労働者の健康管理などについて、専門的な立場から指導・助言を行う医師のことです。労働安全衛生法第13条に基づき、一定規模以上の事業所では産業医を選任することが事業者に義務付けられています。
一般の臨床医(かかりつけ医・主治医)が病気の「治療」を目的とするのに対し、産業医の視点は「予防」と「職場環境の改善」に向けられています。個人の疾患を診るのではなく、職場という集団の中で労働者全体の健康水準を高めることが産業医の本質的な使命です。
- 根拠法令労働安全衛生法第13条(産業医等)
- 主な目的労働者の健康障害の予防、職場環境の改善、心身の健康の保持・増進
- 視点の違い臨床医は「病気と個人」を診るのに対し、産業医は「予防と職場全体」を見る
- 診断・治療はしない産業医は面談を行うが、診断書の発行や薬の処方など医療行為は担当しない
産業医になるための4つの要件
産業医は医師免許を持っているだけではなれません。労働安全衛生法施行令および関係省令で定められた以下の4つのいずれかの要件を満たす必要があります。
このように、産業医は産業保健に関する専門的なトレーニングを受けた医師です。特にメンタルヘルス対策が重視される現代では、精神科・心療内科の専門医資格を持つ産業医も増えています。
嘱託産業医と専属産業医
産業医には、事業場の規模によって2種類があります。
産業医の選任義務——何人以上の企業に必要か
労働安全衛生法第13条により、常時50人以上の労働者を使用する事業場では、産業医の選任が事業者に義務付けられています。2019年の法改正により、産業医の権限と独立性が大幅に強化されました。
事業場規模ごとの選任義務
労働安全衛生法第13条により、常時50人以上の労働者を使用する事業場では、産業医を選任することが事業者に義務付けられています。50人未満の事業場でも、医師や地域産業保健センターの活用が推奨されています。
「常時50人以上」の詳細な判断基準
「常時50人以上」の判断にあたっては、いくつかの注意点があります。
- 「常時」の意味一時的・季節的な増員ではなく、常態として雇用している労働者の数。一時的に50人を超えても常態でない場合は義務が生じないが、常態として50人を超えれば義務が発生する。
- パート・アルバイトも含むパートタイム労働者・アルバイト・派遣社員も、継続的に雇用されていれば「常時使用する労働者」に含まれる。
- 事業場単位での判断「事業場」は会社全体ではなく、一つの拠点(本社・支社・工場ごと)で判断する。本社に300人いても、支社に50人いれば支社でも産業医選任が必要。
- 選任後の届出産業医を選任したら、所轄の労働基準監督署に「産業医選任報告書」を提出しなければならない。
改正労働安全衛生法で強化された産業医の権限
2019年4月施行の改正労働安全衛生法では、産業医の権限と独立性が大幅に強化されました。この改正は、産業医が事業者の顔色を見て適切な意見を述べられないという問題への対応として行われたものです。
産業医の役割と12の業務内容
産業医の業務は「産業保健の5管理」と呼ばれる枠組みで整理されており、労働安全衛生規則第14条で12の具体的職務が定められています。
産業医の5つの管理領域
産業医の業務は「産業保健の5管理」と呼ばれる枠組みで整理されています。この5管理は、職場における健康障害を予防するための包括的なアプローチです。
法令で定められた12の具体的な職務
労働安全衛生規則第14条では、産業医が行うべき具体的な職務として以下の12項目が定められています。
ストレスチェック制度と産業医の役割
2015年12月施行のストレスチェック制度は、メンタルヘルス不調の一次予防を目的とした年1回の検査です。常時50人以上の事業場で義務付けられています。
ストレスチェック制度とは
ストレスチェック制度は、2015年12月に施行された労働安全衛生法の改正により導入された制度で、常時50人以上の労働者を使用する事業場では年1回のストレスチェックの実施が義務付けられています(50人未満は努力義務)。
ストレスチェックは、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防ぐための「一次予防」を目的としています。チェックにより自分のストレス状態を知り、高ストレス状態の労働者には医師(産業医)との面接指導につなげることで、メンタルヘルス不調の早期発見・対処を図ります。
- 実施者産業医・保健師・精神保健福祉士など(医師・保健師が担当することが多い)
- 対象常時雇用する労働者(派遣労働者は派遣元が実施)
- 頻度年1回以上
- 内容仕事のストレス要因・心身のストレス反応・周囲のサポートの3領域(57項目の職業性ストレス簡易調査票が標準的に使用される)
- 結果の通知結果は直接労働者本人に通知される。事業者に結果が知らされるのは、本人が同意した場合のみ
高ストレス者への面接指導——産業医の義務的役割
ストレスチェックで「高ストレス者」と判定された労働者が、医師(多くの場合産業医)との面接指導を申し出た場合、事業者は面接指導を実施することが義務付けられています。面接指導の申し出は労働者の権利であり、事業者はこれを拒否できません。
- 面接指導の申し出高ストレス者と判定された労働者が事業者(または産業医)に申し出ることで実施
- 実施期限申し出から原則として1か月以内に実施する必要がある
- 面接の内容ストレスの原因・心身の状態・業務の状況などを確認し、医師が就業上の配慮についての意見を事業者に提出
- 不利益取扱いの禁止面接指導を申し出たことを理由に、事業者が解雇・降格・減給などの不利益な取扱いをすることは法律で禁止されている
集団分析と職場環境改善——産業医の予防的役割
産業医はストレスチェックの結果を個人レベルだけでなく、部署・職種などの集団単位で分析(集団分析)し、ストレスの高い部署や職種を特定して職場環境の改善を提案する役割も担っています。
- 集団分析部署・職種・年齢層などのグループ単位でストレス傾向を分析。個人が特定されない形で活用される
- 職場環境改善の提案集団分析の結果に基づき、業務量・業務内容・職場のコミュニケーション・上司のマネジメントスタイルなどの改善を産業医が事業者に提案
- 衛生委員会での報告分析結果と改善計画は衛生委員会で共有・審議される
精神疾患・メンタルヘルス不調への対応
うつ病・適応障害・不安障害・パニック障害などの精神疾患や、それに至らないメンタルヘルス不調への対応は、現代の産業医の最も重要な業務の一つです。
職場のメンタルヘルス問題の実態
現代の職場では、うつ病・適応障害・不安障害・パニック障害などの精神疾患や、精神疾患には至らないものの「メンタルヘルス不調」と呼ばれる状態の労働者が増加しています。厚生労働省の調査では、メンタルヘルス上の理由による休職者・退職者を出した企業が年々増加しており、産業医の役割はますます重要になっています。
- 仕事に関する強いストレスを感じている労働者は全体の約6割(厚生労働省「労働安全衛生調査」)
- 精神障害による労働災害(労災)の請求件数は年々増加傾向にある
- 精神疾患による長期休職者は、復職できずに退職となるケースも少なくない
- うつ病・適応障害などのメンタルヘルス不調は、早期発見・早期対応が回復の鍵
産業医がメンタルヘルス不調に対応する5ステップ
産業医がメンタルヘルス不調を抱える労働者に対応するプロセスは、以下のように進みます。
産業医の「診断」と主治医の「診断」の違い
産業医はメンタルヘルス不調者と面談しますが、「診断」は行いません。精神疾患の診断(うつ病・適応障害など)は、主治医(精神科医・心療内科医)が行うものであり、産業医の役割は「就業上の措置に関する意見提供」です。
産業医が「受診勧奨」する場面
産業医は、面談や職場の情報などから以下のような状態が疑われる場合、精神科・心療内科への受診を勧めます(受診勧奨)。
- !2週間以上にわたり、気分の落ち込み・意欲の低下・睡眠障害・食欲不振などが続いている
- !仕事のパフォーマンスが著しく低下し、ミスが増えている
- !職場で突然泣いたり、感情のコントロールが難しくなっている
- !「消えたい」「仕事に行けない」「もう限界」という発言がある
- !体重の著しい変化・身体症状(頭痛・腹痛・動悸)が続いている
- !アルコールへの依存傾向が見られる
休職・復職における産業医の役割
産業医は休職を「命令」する権限はなく、事業者への意見提出にとどまります。復職判断では「病気が治ったか」ではなく「決められた時間に出勤し、業務に見合った労務を提供できる状態か」を基準とします。
産業医は休職を「命令」できるか
よく誤解されますが、産業医が労働者に対して直接「休職しなさい」と命令することはできません。産業医の権限は、事業者に対して意見を提出することにとどまります。休職の決定は、主治医の診断書と産業医の意見書をもとに、最終的には事業者(会社)が行います。
- 主治医の診断書「うつ病のため、〇か月の休養が必要」などの診断書を主治医が発行する。これが休職手続きの出発点となる。
- 産業医の意見書産業医は、職場の状況・業務内容・労働者の状態を踏まえ、就業上の措置に関する意見を事業者に提出する。
- 事業者の判断主治医の診断書と産業医の意見書をもとに、事業者が休職命令を出す。
休職中の産業医との関わり
休職中も、産業医との関わりは続く場合があります。特に長期休職の場合、産業医は定期的に労働者の状態を確認し、復職に向けた準備を支援します。
- 状態確認の面談休職中に定期的(月1回など)に産業医と面談し、回復の進捗を確認する場合がある。
- 復職準備プランの立案産業医が主治医と連携しながら、復職に向けたスケジュールや職場環境の調整を計画する。
- リワークプログラムの紹介精神疾患からの復職支援プログラム(リワーク)への参加を促す場合もある。
- 職場への情報提供休職者の状態について、本人の同意のもと、上司・人事担当者に必要な範囲で情報を共有する。
復職可否の判断基準
産業医が復職の可否を判断する際の基準は「病気が治ったかどうか」ではなく、「決められた時間に出勤し、一定時間、担当業務に見合った労務を提供できる状態かどうか」です。これは精神疾患(うつ病・適応障害など)に特有の重要な視点です。
なぜなら、精神疾患は症状が波のように変動するため、「症状がなくなった」≠「仕事ができる状態に戻った」となるケースが多く、復職直後の再燃・再休職のリスクが高いからです。
試し出勤・リハビリ出勤制度
多くの企業では、産業医が主導して「試し出勤(リハビリ出勤・慣らし勤務)」という制度を活用します。これは、本格的な復職の前に段階的に職場復帰を試みるものです。
- 目的復職直後の再燃・再休職リスクを下げるため、段階的に仕事への適応を確認する。
- 内容最初は短時間(数時間)の通勤訓練から始め、徐々に勤務時間・業務量を増やしていく。
- 産業医の役割試し出勤の計画立案・状態確認・本格復職への判断。
- 主治医との連携試し出勤の経過を主治医に報告し、医学的な評価をもらいながら進める。
産業医が復職を認めない場合
主治医が「復職可能」と判断していても、産業医が「まだ難しい」と意見を述べるケースがあります。これは主治医と産業医の視点の違いから生じます。
- 主治医の視点患者の日常生活能力の回復を見て「生活できる状態になった」と判断。
- 産業医の視点「その職場の、その業務を、その労働条件でこなせるか」という仕事特有の負荷を踏まえた判断。
主治医と産業医の意見が異なる場合、多くの企業では産業医の意見を重視します。主治医の意見書と産業医の意見書の両方をもとに、人事部門・上司・本人を交えた「復職判定会議」で最終的な判断が行われるのが理想的な体制です。
産業医面談の流れと内容——何を話すべきか
産業医面談の所要時間は通常20〜60分程度。長時間労働・高ストレス・健康診断後・メンタル不調・復職・定期相談の6つの場面で実施されます。
産業医面談が実施される主なケース
産業医との面談(面接指導)が実施されるのは、以下のような場合です。
産業医面談の一般的な流れ(20〜60分)
産業医面談の所要時間は通常20〜60分程度です。面談の流れは以下の通りです。
産業医面談で「何を話すべきか」——具体的な内容
産業医面談を有効活用するために、以下の点を中心に正直に話すことが大切です。
面談前に準備しておくと良いこと
- ✓直近1か月の睡眠・食欲・気分の状態をメモしておく
- ✓仕事上の困りごとや具体的なストレス要因を整理しておく
- ✓体の症状があれば、その種類・頻度・強さを記録しておく
- ✓「会社にどうしてほしいか(配慮してほしいこと)」を考えておく
- ✓すでに精神科・心療内科を受診している場合は、その情報(診断名・投薬)を産業医に伝えると連携がスムーズ
産業医の守秘義務——会社に情報は伝わるか
産業医には労働安全衛生法第105条と刑法第134条(秘密漏示罪)による法的な守秘義務が課せられています。面談内容を本人の同意なく会社に伝えることは原則禁じられています。
産業医の守秘義務——2つの法的根拠
産業医には法的な守秘義務が課せられています。根拠は以下の2つです。
- 労働安全衛生法第105条「健康診断、面接指導等に従事した者は、その実施に関して知り得た労働者の秘密を漏らしてはならない」と規定されている。
- 刑法第134条(秘密漏示罪)医師としての守秘義務。職務上知り得た人の秘密を正当な理由なく漏示した場合、刑事上の責任を問われうる。
これにより、産業医は面談で知り得た情報(病状・家族状況・個人的な悩みなど)を、本人の同意なく事業者(会社)に伝えることは原則として禁じられています。
会社に伝わること・伝わらないこと
産業医面談の結果として会社(人事部門・上司)に伝わるのは、「就業上の措置に関する意見」だけです。具体的にどの情報が伝わり、どの情報が伝わらないかを整理します。
守秘義務の例外——緊急時
産業医の守秘義務には例外があります。本人または周囲の人の生命・身体に危険が及ぶ可能性がある緊急の場合は、守秘義務よりも生命の保護が優先されます。
- !「死にたい」という強い自殺念慮があり、具体的な計画がある場合
- !自傷行為を繰り返している場合
- !他者に危害を加える可能性がある場合
これらの緊急ケースでは、産業医は本人の同意がなくても、家族や医療機関への連絡・会社への報告を行うことがあります。これは緊急避難的な判断であり、守秘義務の趣旨に反するものではありません。
産業医との相談がうまくいかない場合
「産業医面談が形式的だった」「あまり意味がなかった」と感じる労働者は少なくありません。その背景を理解し、別の窓口や活用のコツを知っておきましょう。
「産業医が意味がない」と感じる5つの理由
産業医面談を受けた労働者の中には、「あまり意味がなかった」「形式的な面談だった」と感じる方もいます。その背景にはさまざまな要因があります。
産業医との相談がうまくいかない場合の対処法
産業医との面談がうまくいかないと感じた場合、以下の方法を試してみてください。
- 別の産業保健スタッフに相談する保健師・産業看護師・カウンセラーなど、産業医以外の産業保健スタッフに相談する窓口がある場合はそちらを利用する。
- 人事部門・EAPに相談する従業員支援プログラム(EAP)が導入されている企業では、外部の心理士に無料で相談できる。
- 主治医に相談するすでに精神科・心療内科にかかっている場合は、主治医に産業医との関係についても相談する。
- 産業医の変更を求める産業医との関係がどうしてもうまくいかない場合、人事部門を通じて産業医の変更を求めることも可能(ただし会社の判断による)。
- 労働組合に相談する労働組合がある場合は、組合を通じて働きやすい環境の整備を求めることができる。
- 産業保健総合支援センターに相談する各都道府県に設置されている「産業保健総合支援センター(さんぽセンター)」では、産業保健に関する無料相談を行っている。
産業医面談を有効活用するためのコツ
- ✓事前に話す内容をメモする:「今日はこれを伝えよう」と決めてから面談に臨む。面談中に頭が真っ白になることを防ぐ
- ✓「〇〇してほしい」を明確に伝える:何を変えてほしいか、どんな配慮が必要かを具体的に伝えると、産業医が会社に提案しやすくなる
- ✓「この内容は会社に伝えないでほしい」と言う:守秘義務を確認しながら、自分が開示を望まない情報は明確に伝える
- ✓主治医の診断書・意見書を持参する:主治医の医学的見解を産業医に伝えることで、面談がより具体的な支援につながりやすくなる
産業医とかかりつけ医(主治医)の連携、小規模職場の対応、よくある質問
産業医と主治医は補完関係にあります。50人未満の職場でも公的リソースを活用できます。最後によくある質問もまとめました。
産業医と主治医の役割の違いを理解する
精神疾患やメンタルヘルス不調に対応する際、産業医と主治医(精神科医・心療内科医)は異なる役割を持ちながら連携します。この2者の違いを理解することが、適切な支援を受けるうえで重要です。
- 主治医(精神科・心療内科)あなたの「病気を治す」ために、診断・薬物療法・心理療法などを行う医療の専門家。医療機関で診察を受け、治療費は保険診療で自己負担が発生する。
- 産業医あなたが「仕事を健康に続ける(または復帰する)」ために、職場の文脈から支援する専門家。会社が費用を負担し、あなたに費用はかからない。
この2者は補完的な関係にあります。主治医は「あなたの身体・心」を診て、産業医は「あなたと職場の関係」を診るイメージです。両方を活用することで、より包括的な支援が受けられます。
産業医と主治医の連携の実際
産業医と主治医が直接連絡を取る場合(情報共有・意見交換)は、必ず本人(労働者)の同意が必要です。労働者の健康情報は個人情報の中でも特に機微な情報であり、厳格に保護されなければなりません。
- 診断書・意見書を通じた間接的な連携主治医が発行した診断書・意見書を産業医が参考にするのが最も一般的な連携の形。
- 直接の情報共有産業医が主治医に直接連絡を取る場合は、事前に本人の同意書を取得する。
- 復職時の連携復職判定のために産業医と主治医が連携する場合、本人を交えた三者面談が行われることもある。
産業医と主治医の意見が食い違う場合
復職判断などで産業医と主治医の意見が異なるケースがあります。この場合の対応として、以下の点を押さえておきましょう。
- 産業医は「職場の実態に照らした就業可能性」を判断し、主治医は「医学的な病状の改善度」を評価しているため、視点の違いが生じやすい
- 意見の相違が生じた場合は、産業医と主治医が直接意見交換(本人同意のもと)することが最も有効
- 第三者の専門家(主治医とは別の精神科医)の意見を求めることも選択肢
- 最終的な復職の決定は事業者(会社)が行うが、労働者は不服があれば異議を申し立てることができる
産業医がいない職場でのリソース
産業医の選任義務がない50人未満の事業場でも、労働者のメンタルヘルスを支援するための公的リソースが用意されています。
- 産業保健総合支援センター(さんぽセンター)各都道府県に設置された、産業保健に関する総合的な支援センター。事業者・労働者からの相談を無料で受け付けており、小規模事業場向けの支援が充実している。
- 地域産業保健センター地区医師会が運営する、主に50人未満の事業場向けの産業保健サービス。産業医面談・メンタルヘルス相談を無料または低コストで利用できる。
- 精神保健福祉センター各都道府県・政令指定都市に設置されており、精神科医・精神保健福祉士・心理士による無料相談を実施。労働者本人が直接相談できる。
- こころの耳(厚生労働省)働く人のメンタルヘルスに特化した厚生労働省のポータルサイト。電話・SNS・メール相談窓口の紹介も掲載されている。
自分でできるメンタルヘルスのセルフケア
産業医が身近にいない場合でも、以下のセルフケアを実践することが重要です。
- セルフチェックの活用厚生労働省のストレスチェックツール(「こころの耳」掲載)を定期的に活用し、自分のストレス状態を把握する。
- 労働時間の管理残業が月45時間を超えたら要注意のサイン。月80時間超は健康リスクが著しく高まる「過労死ライン」。
- ラインケアの活用上司や同僚が「管理職によるメンタルヘルス対策(ラインケア)」の研修を受けている場合は積極的に活用する。
- EAP・カウンセリングの利用会社が従業員支援プログラム(EAP)を導入している場合は、外部カウンセラーに無料で相談できる機会を積極的に活用する。
精神科・心療内科への受診と支援制度
産業医がいない環境でメンタルヘルスに不調を感じた場合、精神科・心療内科への受診が最も直接的な支援につながります。受診にあたっては以下の公的支援制度も活用できます。
- 自立支援医療制度(精神通院医療)うつ病・適応障害・不安障害などで精神科・心療内科に継続通院する場合、医療費の自己負担が原則3割から1割に軽減される。申請は市区町村の福祉担当窓口または精神保健福祉センターで行う。
- 傷病手当金精神疾患により仕事を休んだ場合、健康保険から「傷病手当金」として給与の約2/3が最長1年6か月支給される。
- 障害年金精神疾患が重症で就労困難な場合、障害基礎年金・障害厚生年金を申請できる。
よくある質問
A. ストレスチェック後の高ストレス者に対する産業医面談(面接指導)は、労働者本人が申し出た場合のみ実施されるものです。したがって、高ストレス判定を受けても面談を断ることは制度上可能です。ただし、長時間労働(月80時間超)に対する面接指導は、事業者が指定した場合には義務的な面があります。健康診断後の面接も同様です。面談を拒否したからといって、直ちに不利益な扱いを受けることはありませんが、自身の健康管理のためにも可能な限り受けることをお勧めします。
A. 産業医には労働安全衛生法第105条および刑法第134条(秘密漏示罪)による守秘義務があります。面談で話した具体的な内容(病名・家族の問題・上司との関係など)は、本人の同意なく会社に伝えることは原則として禁じられています。会社に伝わるのは「就業上の措置に関する意見」(例:「残業を月20時間以内に制限することを推奨する」)のみです。ただし、自殺念慮など生命の危険がある緊急ケースでは守秘義務の例外となりえます。不安な場合は面談の冒頭で「どの情報を会社に伝えますか?」と確認するとよいでしょう。
A. 産業医はメンタルヘルス不調への対応はしますが、治療(薬の処方・心理療法の実施)は行いません。産業医の役割は、就業上の措置に関する意見を事業者に提出すること、および精神科・心療内科への受診を勧奨することです。うつ病・適応障害・不安障害などの精神疾患の治療は、精神科・心療内科の主治医が担当します。産業医は「職場における支援」、主治医は「医療的な治療」と役割が分かれており、両方を活用することが最も効果的です。
A. 主治医が「休職が必要」と診断書を発行しても、実際の休職手続きには会社の就業規則や産業医の関与が必要な場合があります。多くの企業では、主治医の診断書をもとに産業医が就業上の意見書を提出し、会社が最終的に休職命令を出す流れとなります。産業医面談を受けることで、職場の状況に即した配慮(業務量の調整・部署異動・休職の期間)について具体的な意見が出てきます。主治医の診断書がある場合は、それを産業医面談に持参すると話がスムーズです。
A. 産業医が選任されていない職場でも、利用できるリソースはあります。まず、各都道府県に設置されている地域産業保健センターでは、50人未満の事業場の労働者を対象とした無料の産業保健サービス(医師相談・メンタルヘルス相談)を提供しています。また、精神保健福祉センター(各都道府県・政令指定都市に設置)では、精神科医・心理士・精神保健福祉士による無料相談を受け付けています。職場のメンタルヘルスについては、厚生労働省の「こころの耳」ポータルサイトも参考になります。症状が続く場合は、精神科・心療内科への受診をためらわないでください。
A. 産業医が「異常なし」と判断しても、あなたが感じているつらさは本物です。産業医はメンタルヘルスの専門家ではない場合もありますし、面談の時間が短く十分に状態を把握しきれないこともあります。まずは精神科・心療内科を受診し、主治医にあなたの状態をしっかり話してください。主治医が発行した診断書があれば、再度産業医面談を求め、より具体的な就業上の配慮を求めることができます。また、精神保健福祉センターやウェブカウンセリングを利用することも選択肢です。「産業医に言ってもダメだった」と諦めず、別の窓口に相談してください。
A. 産業医面談の費用はすべて事業者(会社)が負担します。労働者に費用は発生しません。産業医は事業者との契約に基づいて活動しており、その報酬は会社から支払われます。健康診断後の面接指導、ストレスチェック後の高ストレス者面談、長時間労働者への面接指導なども同様に費用は会社負担です。また、面談のための就業時間は労働時間として取り扱われ、面談を理由に給与が控除されることはありません。
職場のストレスを
一人で抱え込まないで
産業医に相談しづらい、相談しても伝わらない——そんなときは、職場の外に話せる場所もあります。あなたの大切な悩みを、ココトモに聞かせてください。
このページの情報は、医師による診断や治療に代わるものではありません。症状が気になる場合は、心療内科・精神科への受診をご検討ください。
