メンタルヘルス用語辞典 · メンタルヘルスプロモーション

メンタルヘルスプロモーションとは?
WHOの理念・3つのレベル・職場と学校の実践をわかりやすく解説

メンタルヘルスプロモーション(Mental Health Promotion)は、精神疾患の予防を超え、すべての人が心の健康を積極的に育てるための包括的アプローチです。WHOオタワ憲章の理念から、日本の職場・学校・地域での実践、個人ができるセルフケアまで、必要な情報をすべてここにまとめました。

ABOUT MENTAL HEALTH PROMOTION

メンタルヘルスプロモーションとは

メンタルヘルスプロモーションは、精神疾患の予防を超えて、すべての人が心の健康を積極的に育て・維持できるよう、個人・組織・社会の各レベルで働きかける包括的なアプローチです。

定義

メンタルヘルスプロモーションの定義

メンタルヘルスプロモーション(Mental Health Promotion)とは、精神的な健康を単に「病気のない状態」としてではなく、積極的に育て・強化し・維持していくための包括的なアプローチです。病気になってから治療するという発想ではなく、すべての人が心の健康を高めることができるよう、個人・環境・社会の各レベルで働きかける予防的・促進的な取り組みを指します。

「病気の不在」ではなく「積極的健康」メンタルヘルスプロモーションが目指すのは、症状をなくすことだけではなく、活力・自己実現・社会参加を含む、人としての豊かな生き方そのものです。
WHO定義

WHOによるメンタルヘルスの定義

世界保健機関(WHO)は、メンタルヘルスを次のように定義しています。

💡
WHOのメンタルヘルス定義個人が自らの可能性を認識し、日常のストレスに対処でき、生産的かつ効果的に働き、地域社会に貢献できるような、満たされた状態。

この定義が示すように、メンタルヘルスは単なる精神疾患の不在ではなく、活力・自己実現・社会参加を含む、人としての豊かな生き方そのものを指しています。メンタルヘルスプロモーションはこの積極的な定義に基づき、人々が精神的に良い状態(ウェルビーイング)を達成・維持できるように、個人のスキル強化から社会環境の整備まで、多面的な支援を展開します。

対象と場面

日本での主な実践の場

日本では、職場・学校・地域コミュニティなどを主な場として、様々な実践が行われています。これらの場面はそれぞれが個人の生活時間の大半を占めるため、メンタルヘルスプロモーションを実効あるものにするうえで欠かせない実践フィールドとなっています。

HISTORY & PHILOSOPHY

歴史的背景と理念

メンタルヘルスプロモーションは、WHOの「ヘルスプロモーション」という大きな枠組みの中に位置づけられ、オタワ憲章を起点に発展してきました。

オタワ憲章

1986年 オタワ憲章とバンコク憲章

ヘルスプロモーションの概念は、1986年にWHOがカナダのオタワで開催した第1回ヘルスプロモーション国際会議で採択された「オタワ憲章」に端を発します。この憲章において、ヘルスプロモーションは次のように定義されました。

💡
オタワ憲章の定義人々が自らの健康とその決定要因をコントロールし、改善することができるようにするプロセス。

さらに2005年のバンコク憲章では、グローバル化した世界における健康課題に対応するため、ヘルスプロモーションの概念が拡張・再確認されました。メンタルヘルスプロモーションは、これらヘルスプロモーションの大きな枠組みの中に位置づけられつつ、精神的健康という固有の領域に特化した実践体系として発展してきました。

5つの優先行動領域

オタワ憲章が示した5つの優先行動領域

オタワ憲章は次の5つの優先行動領域を示し、これらは今日のメンタルヘルスプロモーションにもそのまま応用されています。個人の内面的な変容だけでなく、制度・政策・環境の変革を含む多層的なアプローチこそが、持続可能なメンタルヘルス向上につながると考えられています。

  • 1. 健康的な公共政策の構築健康を全政策の中心に据えるための政策決定者への働きかけ。
  • 2. 支援環境の創出人々が健康的な選択をしやすい環境(職場・学校・地域)を整える。
  • 3. 地域活動の強化住民自身が主体となる地域コミュニティの活動を支援する。
  • 4. 個人技術の開発健康に関する知識・スキル・セルフケア能力を個人に身につけてもらう。
  • 5. 保健サービスの方向転換治療中心から予防・健康増進中心へとサービスを再構成する。
WHOアクションプラン

WHOメンタルヘルスアクションプラン2013–2030

WHOは2013年から「メンタルヘルスアクションプラン2013–2020」を策定し、加盟国におけるメンタルヘルス施策の指針を示しました。このプランは後に2030年まで延長され、「メンタルヘルスアクションプラン2013–2030」として世界各国の政策立案・実践の基盤となっています。掲げられている4つの主要目標は次のとおりです。

🏛
リーダーシップとガバナンスの強化
メンタルヘルスに関する国家レベルの政策・法制度・行政体制を整備する。
🏥
地域に根ざしたサービス提供
地域社会に根ざしたメンタルヘルスサービスと社会ケアサービスを提供する。
🌿
プロモーションと予防の実施
メンタルヘルスプロモーションと精神疾患予防の取り組みを実施する。
📊
情報収集・エビデンス強化
メンタルヘルスに関する情報収集・研究・エビデンスを強化する。

2025年11月にはWHOが「すべての政府部門でメンタルヘルスを促進するための新しいガイドライン」を発表し、いわゆる「あらゆる政策におけるメンタルヘルス(Mental Health in All Policies)」という概念を提唱しました。これは、保健医療省だけでなく、教育・労働・住居・司法・財政など、すべての政府部門がメンタルヘルスの視点を持って施策を立案・実施していくべきという考え方です。

新型コロナウイルスのパンデミック以降、精神的健康への影響が広く認識されたことで、メンタルヘルスプロモーションへの投資と関心はこれまで以上に拡大しています。
日本での発展

日本におけるヘルスプロモーションの歩み

日本においては1988年に「健康教育・ヘルスプロモーション研究会」が設立され、その後学会として発展し、精神保健・産業保健・学校保健など様々な領域でヘルスプロモーションの理念が実践に結びつけられてきました。現在では「健康日本21」や「こころの健康づくり計画」などの国家レベルの施策においても、メンタルヘルスプロモーションの観点が明確に組み込まれています。

CORE CONCEPTS

主要概念と構成要素

メンタルヘルスプロモーションを理解するうえで、ウェルビーイング・レジリエンス・ポジティブメンタルヘルス・社会的決定要因・エンパワーメントという5つの中核概念を押さえることが重要です。

5つの中核概念

メンタルヘルスプロモーションを支える5つの概念

🌟ウェルビーイング(Well-being)

身体的・精神的・社会的に良好な状態のこと。WHOが健康の定義においても強調している概念で、感情的側面(ポジティブな感情の多さ、ネガティブな感情の少なさ)、認知的側面(生活への満足感)、社会的側面(他者とのつながり・社会参加)が含まれます。メンタルヘルスプロモーションは単なる精神疾患予防を超え、このウェルビーイングを高めることを目的とします。

💡
これらの概念は独立しているのではなく、相互に関連し合っています。たとえばエンパワーメントを通じてレジリエンスが育ち、その結果としてウェルビーイングが高まる、というように連動して機能します。
THREE LEVELS

3つのレベルのアプローチ

メンタルヘルスプロモーションは、個人・組織コミュニティ・社会政策という3つのレベルで相互補完的に実施されます。

3つのレベル

個人・組織・社会の各レベルでの取り組み

👤
個人レベル
メンタルヘルスリテラシーの向上、セルフケアスキルの習得、ストレス対処能力の強化。自分の感情・思考パターンに気づくセルフモニタリング、リラクゼーション技法、認知的再評価(物事の見方を柔軟に変える力)、問題解決能力の向上、マインドフルネス実践、身体活動など、科学的根拠に基づく手法が含まれます。
🏢
組織・コミュニティレベル
職場・学校・地域コミュニティでの介入。職場ではストレスチェック制度の活用・職場環境改善・管理職教育・産業医保健師との連携、学校では感情教育プログラム・いじめ防止・相談体制整備、地域では居場所づくり・ピアサポート・高齢者の社会参加促進などが取り組まれます。
🌍
社会・政策レベル
貧困・差別・社会的孤立・劣悪な労働環境などの社会的決定要因に働きかける政策・制度レベルの変革。精神保健福祉法の整備、医療・福祉サービスへのアクセス向上、スティグマ解消、メンタルヘルスに配慮した都市設計・住環境整備などが含まれます。
3つのレベルの連動個人のセルフケアだけでは限界があり、組織や社会の環境整備が伴って初めて持続可能な変化が起こります。逆に、社会制度だけが整っても個人がそれを使いこなせなければ機能しません。3つのレベルが連動することが鍵です。
WORKPLACE

職場におけるメンタルヘルスプロモーション

厚生労働省の調査では職場でストレスを感じている労働者は約6割。2015年には50人以上の事業所でストレスチェック制度が義務化され、職場は実践の最重要フィールドの一つとなっています。

4つのケア

厚生労働省が示す4つのケアの枠組み

厚生労働省が示す職場のメンタルヘルスケアの枠組みは、次の「4つのケア」で構成されています。

🧍
セルフケア
労働者自身によるケア。ストレスへの気づき・対処法の習得、相談することへの抵抗感の低減などが目標とされます。
👔
ラインによるケア
管理監督者によるケア。管理職が部下の変化に早期に気づき、適切に声をかけ・相談に応じる力を身につけることが重視されます。
🩺
事業場内産業保健スタッフ等によるケア
産業医・保健師・心理職などが、専門的見地からのアセスメントと介入を担います。
🏥
事業場外資源によるケア
精神保健福祉センター・EAP(従業員支援プログラム)・医療機関などの事業場外資源との連携。
ポジティブな職場づくり

病気予防から活力向上へ

近年は、病気や不調の予防だけでなく、職場全体の活力・エンゲージメントを高める「ポジティブメンタルヘルス」の観点が注目されています。具体的には次の3つが柱とされ、加えて心理的安全性の確保も重要な要素です。

  • 個別理解と改善社員一人ひとりの業務状況・健康状態について理解し改善する取り組み。
  • コミュニケーション向上信頼関係を構築し組織力を高めるための社内コミュニケーション向上の取り組み。
  • やりがいと活力社員が自らやりがいを感じ仕事から活力を得られる環境づくりの取り組み。
  • 心理的安全性チームの中で自分の意見・疑問・失敗を安心して表現できるという感覚。これが高い職場では、問題の早期発見・共有・解決が促進され、メンタルヘルスとパフォーマンスの両方が向上することが研究で示されています。
💡
心理的安全性が両立を生む心理的安全性が高い職場では問題の早期発見・共有・解決が促進され、メンタルヘルスとパフォーマンスの両方が同時に高まることが研究で示されています。
研修の効果

メンタルヘルス研修の実践的効果

メンタルヘルス研修は、知識の提供だけでなく、ロールプレイやグループワークを取り入れることで実践的なスキルが身につきます。研修を通じて労働者はストレスサインへの気づきを深め、適切なコーピング戦略を習得し、相談や受診に対する抵抗感を下げることができます。

管理職向けには、部下の変化に気づくためのアンテナを高め、適切な傾聴・コミュニケーションスキルを磨く研修が効果的とされています。精神疾患による休職・離職は社会的・経済的に大きな損失をもたらすため、研修への投資はリターンの大きい施策です。

SCHOOL

学校におけるメンタルヘルスプロモーション

子どもや若者のメンタルヘルスは生涯にわたる健康の基盤。文部科学省データでは小・中学生の不登校数は年々増加傾向にあり、学校でのメンタルヘルス支援の必要性が高まっています。

学校での教育

学校で行われているメンタルヘルス教育

学校メンタルヘルスプロモーションの柱の一つは、こころの健康に関する教育です。各学校で次のような取り組みが行われています。とくに「SOSの出し方教育」は、子どもが危機的状況に陥ったときに自ら助けを求められるよう、具体的なスキルを身につけさせることを目的としており、メンタルヘルスリテラシー向上の観点からも重要です。

💭
感情リテラシー教育
感情の認識・表現・調整スキルを育てる授業。自分の気持ちを言葉にする力を養います。
🛡
ストレス対処プログラム
ストレスへの気づきと対処方法を学ぶプログラム。
🚫
いじめ・暴力予防教育
いじめや暴力の予防教育を通じて、安心して学べる学校環境を育てます。
🆘
SOSの出し方教育
子どもが危機的状況に陥ったときに自ら助けを求められるよう、具体的なスキルを身につけさせる教育。メンタルヘルスリテラシー向上の観点からも重要です。
👩‍⚕
スクールカウンセラー(SC)
心理の専門家として、児童生徒・保護者・教職員への相談支援を提供。
🧑‍🤝‍🧑
スクールソーシャルワーカー(SSW)
家庭環境・地域資源・学校をつなぐ社会的支援を担う専門職。
SC・SSW

スクールカウンセラーとスクールソーシャルワーカー

学校に配置されるスクールカウンセラー(SC)は心理の専門家として、児童生徒・保護者・教職員への相談支援を提供します。スクールソーシャルワーカー(SSW)は、家庭環境・地域資源・学校をつなぐ社会的支援を担います。これらの専門職が学校に常駐・巡回することで、早期発見・早期支援の体制が整備されます。

教職員のメンタルヘルス

教職員自身のメンタルヘルスケア

子どもたちのメンタルヘルスを支える教職員自身のメンタルヘルスも重要な課題です。教職員の精神疾患による休職者数は長年高水準で推移しており、文部科学省も「教職員のメンタルヘルス対策」として、学校管理職によるラインケア、相談窓口の整備、業務負担の軽減などを推進しています。

教職員のメンタルヘルスを守ることは、子どもたちへの教育の質を保つうえでも不可欠です。子どもと支える大人、両者を同時に支えていく視点が大切です。
COMMUNITY

地域・コミュニティにおける取り組み

職場や学校に属していない人々、あるいはそれら以外の時間と空間において、地域コミュニティはメンタルヘルスプロモーションの重要な場となります。

地域での支援

精神保健福祉センターから自助グループまで

  • 精神保健福祉センター各都道府県・政令指定都市に設置されている地域住民のメンタルヘルス相談の中核機関。精神疾患はもちろんストレス・悩み・心の健康に関する幅広い相談に、精神保健福祉士・公認心理師・精神科医などが対応します。地域のプロモーション活動の企画・調整・普及啓発も担います。
  • 高齢者支援通いの場(サロン・カフェ・体操教室など)の設置による社会参加の促進、地域包括支援センターによる個別相談・アウトリーチ、認知症予防プログラムの展開など。高齢化社会の日本では、高齢者のうつ病・認知症・社会的孤立への対応が深刻な課題です。
  • 子育て世代支援産後うつの予防・早期発見・支援、子育て不安への対応、育児サポートネットワークの構築。保健センター・子育て支援センター・訪問支援を通じて、孤立しがちな保護者への働きかけが行われます。
  • ピアサポート・セルフヘルプグループ同じ経験・悩みを持つ人同士が支え合う活動。精神疾患の当事者・家族・回復した人たちが経験を分かち合い、互いに力づけ合う自助グループは、孤立感の解消・自己効力感の回復・社会参加の促進に大きく貢献します。
💡
つながりの力ピアサポートやセルフヘルプグループの存在は、孤立感の解消・自己効力感の回復・社会参加の促進という点で、地域のメンタルヘルスプロモーションに大きく貢献します。
SELF-CARE

個人が実践できる7つのセルフケア

メンタルヘルスプロモーションは専門機関や組織だけでなく、私たち一人ひとりが日常生活で実践できる行動の積み重ねが、心の健康を保ち・高める大切な取り組みとなります。

7つの方法

今日から始められる7つのセルフケア

どれか一つに絞らず、できそうなものから少しずつ取り入れてください。「完璧にやる」ことよりも「続けられる方法を見つける」ことを優先しましょう。

METHOD 1
マインドフルネスと呼吸法
「今この瞬間」の自分の状態(思考・感情・身体感覚)に判断せずに注意を向ける実践。毎日5〜10分でも静かに呼吸に意識を向けるだけで、ストレス反応の軽減・感情調節能力の向上・集中力の改善が科学的に確認されています。不安や緊張が高まったときの腹式呼吸は、自律神経を整え心身を落ち着かせる即効性のある方法です。
5〜10分/日
METHOD 2
定期的な身体活動(運動)
運動はメンタルヘルスへの効果が最も強く科学的に支持されているセルフケアの一つ。有酸素運動(ウォーキング・ジョギング・水泳など)はストレスホルモンを低下させ、セロトニン・エンドルフィンの分泌を促します。週150分以上の中強度運動が推奨されますが、「近くまで歩く」「階段を使う」「仕事の合間にストレッチ」など日常動作の中に組み込むことから始めるのも効果的。
週150分目安
METHOD 3
良質な睡眠の確保
睡眠中に脳は記憶の整理・感情処理・細胞修復を行っており、慢性的な睡眠不足は気分の不安定・集中力の低下・ストレス耐性の低下を招きます。睡眠衛生(スリープハイジーン)として、①就寝・起床時間を一定にする、②就寝前のスクリーンタイムを減らす、③寝室を暗く静かに保つ、④カフェインを午後14時以降は控える、が効果的です。
毎日
METHOD 4
人とのつながりを維持する
社会的なつながりは人間の根本的なニーズであり、メンタルヘルスの重要な保護因子。信頼できる人に悩みを打ち明けたり、日常的な会話を楽しんだりするだけで、孤立感が和らぎ感情的なサポートを得られます。テクノロジーを通じたつながりも有効ですが、可能であれば対面コミュニケーションがより深い充足感をもたらします。
日常的に
METHOD 5
意味・目的・楽しみを生活に組み込む
自分の価値観に沿った目標を持ち行動することは、生きがい(ikigai)や自己効力感を高めます。趣味・ボランティア・学習・創作活動など、自分が意味を感じる活動への定期的な取り組みが長期的なメンタルヘルス維持に役立ちます。日々の小さなポジティブな経験に意識的に目を向け、「感謝日記」をつけるのも効果的。
継続的
METHOD 6
感情のセルフモニタリングと記録
自分の感情や思考のパターンに気づくことはセルフケアの出発点。もやもやした気持ちや苦しい感情を頭の中で抱え込むのではなく、日記や手帳に書き出すことで気持ちを客観的に見つめ直せます。自分が何にストレスを感じやすいか、どんなときにエネルギーが高まるかを記録することで、自分に合ったストレス管理の方法が見えてきます。
日々の記録
METHOD 7
専門家への相談・受診の抵抗を下げる
精神的な不調が続くときや自分ひとりで対処しきれないと感じるときは、専門家に相談することが最善のセルフケア。「弱さのサインではなく、適切な助けを求めるための賢明な行動」という認識の転換が大切です。かかりつけ医・精神科・心療内科・公認心理師・臨床心理士、または精神保健福祉センターへの相談が選択肢となります。
必要なとき
「小さく」「具体的に」「続ける」「最近よく眠れているか」「気力・意欲はあるか」「楽しみを感じられているか」「人とのつながりを保てているか」といった問いに向き合い、自分の心の状態をチェックする習慣を持つことが大切です。
LITERACY & STIGMA

メンタルヘルスリテラシーとスティグマ解消

メンタルヘルスリテラシーの向上とスティグマの解消は、メンタルヘルスプロモーションの両輪です。

リテラシーの構成要素

メンタルヘルスリテラシーとは

メンタルヘルスリテラシーとは、精神的健康や精神疾患に関する知識・理解であり、適切な支援を認識・利用する能力のこと。メンタルヘルスプロモーションの重要な柱の一つで、次の要素が含まれます。

  • 1. 精神疾患の正確な知識精神疾患の種類・症状・原因に関する正確な知識を持つこと。
  • 2. スティグマの解消精神疾患へのスティグマ(偏見・差別)を解消すること。
  • 3. 早期認識能力精神的不調のサインを自分自身や周囲の人の中に早期に認識できること。
  • 4. 支援資源へのアクセス利用可能な支援資源(相談窓口・医療機関・福祉サービス)を知り、適切にアクセスできること。
  • 5. 適切なサポート提供精神疾患を持つ人々への適切なサポートの提供方法を知ること。
日本での啓発

日本でのリテラシー向上の取り組み

日本では「こころの耳」(厚生労働省運営のメンタルヘルス情報ポータルサイト)、精神保健福祉センターの普及啓発活動、「こころの健康づくり週間」などを通じて、一般市民のメンタルヘルスリテラシーの向上が図られています。

スティグマの構造

社会的スティグマと自己スティグマ

スティグマには、社会的スティグマ(他者からの偏見・差別)と自己スティグマ(自分自身が内面化した偏見・恥の感覚)があります。スティグマが根強い社会では「弱い人間だと思われる」「仕事を失うかもしれない」「人間関係が壊れる」といった恐れから、精神的不調を感じていても相談や受診を避けてしまう人が多くいます。これは症状の悪化・孤立・回復の遅れにつながり、個人と社会双方にとって大きな損失です。

⚠️
スティグマが回復を遅らせるスティグマによる受診の遅れは、本来防げたはずの悪化や長期化を生みます。「相談すること自体が回復への第一歩」という認識の社会的浸透が求められています。
解消アプローチ

スティグマ解消の4つのアプローチ

スティグマの解消には、次の多面的なアプローチが必要です。メンタルヘルスについてオープンに話せる文化・職場・家族関係の構築こそが、真のメンタルヘルスプロモーションの基盤となります。

正確な情報の普及

精神疾患は一般的な病気であり、回復できるという正しい知識を広める。

メディア・教育での適切な表現

メディアや教育機関における精神疾患の適切な表現・教育を推進する。

当事者の語り

当事者が自らの経験を語ることがスティグマへの強力な対抗手段となる。

政策・制度レベルの保護

政策・制度レベルでの差別禁止・権利保護を整備する。

「助けを求めることは強さの証明である」という価値観が社会に浸透することで、必要なときに必要な支援を受けられる環境が実現します。
DIGITAL TOOLS

デジタルテクノロジーの活用と注意点

スマートフォンアプリ・オンラインカウンセリング・AI技術などのデジタルテクノロジーが、メンタルヘルスプロモーションの新たなツールとして注目されています。

ツールと注意点

デジタル活用の光と影

📱
メンタルヘルスアプリ
マインドフルネス・瞑想アプリ(Headspace、Calmなど)、気分・睡眠・ストレスレベルを記録するトラッキングアプリ、認知行動療法(CBT)に基づいたセルフヘルプアプリ。時間・場所を選ばず手軽にアクセスできる点が強みで、専門的な支援へのアクセスが困難な人にもリーチしやすい。
💬
オンラインカウンセリング・チャット相談
インターネットやスマートフォンを通じた相談は、対面に比べてハードルが低く地理的制約を超えてアクセス可能。若い世代、スティグマが強い人、忙しくて対面相談の時間が取れない人に有効。
デジタルツールの注意点
過度な使用は逆に悪影響となる場合も。SNSの過度な使用による比較・嫉妬・承認欲求の肥大化、情報過多によるストレス、夜間のスクリーンタイムによる睡眠妨害などはデジタル時代のリスク。「デジタルウェルネス」の視点が重要です。
💡
デジタルウェルネスデジタルツールを賢く活用し、自分の心の健康に役立てるための「デジタルウェルネス」の視点も、現代のメンタルヘルスプロモーションに欠かせない観点です。
エビデンス

メンタルヘルスプロモーションの効果と科学的根拠

メンタルヘルスプロモーションの取り組みには、WHOおよび世界各国での研究・実践から多くの科学的エビデンスが蓄積されています。

💼
職場(投資対効果)
職場環境改善・管理職訓練・EAP導入などの包括的プログラム実施企業では、欠勤・休職・離職率の低下と生産性・エンゲージメント向上が報告されています。1ドルの投資に対して4ドルのリターンというWHOの試算は、企業・政府の投資判断の根拠として広く引用されています。
🎓
学校(SELプログラム)
感情・社会的学習(SEL:Social-Emotional Learning)プログラムが子どものウェルビーイング・学業成績・社会的行動に正の影響をもたらすことが多数示されています。学校でのメンタルヘルス教育は早期の問題認識・スティグマ低減・ヘルプシーキング行動を促進します。
🏘
地域・社会
ピアサポート・コミュニティ活動・社会参加促進が、高齢者の抑うつ・孤独感の低減、精神疾患からの回復促進、再発防止に効果的であることが示されています。
🧘
個人
マインドフルネス・運動・認知行動療法(CBT)に基づいたアプローチがストレス軽減・不安・抑うつ症状の改善に有効であることが、多数のランダム化比較試験(RCT)で支持されています。
JAPAN POLICY

日本の施策の現状と課題

日本では精神保健福祉法・労働安全衛生法・自殺対策基本法などのもと、様々なメンタルヘルスプロモーション施策が展開されています。

健康日本21

健康日本21(第三次)におけるこころの健康目標

「健康日本21(第三次)」(2024年から2035年を計画期間とする国民健康づくり計画)では、こころの健康についての目標値が設定されており、次のような項目が掲げられています。

  • 自殺率の低下
  • 職場のメンタルヘルス対策に取り組む事業場の割合の増加
  • メンタルヘルスに関する相談窓口を知っている人の割合の増加
自殺対策

自殺総合対策大綱(2022年改定)

「自殺対策基本法」に基づく「自殺総合対策大綱」(2022年改定)では、自殺の多くがうつ病等の精神疾患と関連しているという認識のもと、精神科医療へのアクセス改善・孤独・孤立対策・相談支援体制の充実などが方針として示されています。

残された課題

日本のメンタルヘルスプロモーションの課題

日本のメンタルヘルスプロモーションには次のような課題が残っています。

  • 課題 1精神科・心療内科へのアクセスに依然として地域間格差があり、特に地方の専門医不足が深刻
  • 課題 2精神疾患に対するスティグマが依然として根強く、受診・相談行動を妨げる障壁となっている
  • 課題 3職場のメンタルヘルス対策は大企業では進んでいるが、中小企業での取り組みは依然として不十分
  • 課題 4子どもや若者のメンタルヘルス支援を担う専門職(スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカー)の配置・処遇改善が課題
自立支援医療制度

自立支援医療制度(精神通院医療)

メンタルヘルスの問題で継続的な医療が必要な方に向け、日本には「自立支援医療制度(精神通院医療)」という公的な医療費軽減制度があります。この制度を利用することで、精神疾患による外来通院にかかる医療費の自己負担が、通常の3割から1割に軽減されます(所得等に応じて月額上限あり)。

対象となるのは、統合失調症・うつ病・双極性障害・不安障害・依存症・発達障害など、精神疾患により継続的な精神科通院が必要と認められる方です。申請は市区町村の窓口(障害福祉担当課)を通じて行い、主治医の診断書が必要となります。

💡
メンタルヘルスに関する医療費の負担を感じている方は、主治医や精神保健福祉センター、または市区町村の担当窓口に相談してみてください。
今日からできること

日常に取り入れるための4つのアクション

メンタルヘルスプロモーションは、大がかりな取り組みだけではなく、日々の小さな行動の積み重ねから始まります。

  • 自分の現状を把握する:睡眠・気力・楽しみ・人とのつながりについてセルフチェックを習慣化する。
  • 無理のないセルフケアを実践する:呼吸・運動・好きなこと・信頼できる人との会話など、自分に合ったリカバリーを見つける。
  • 周囲のメンタルヘルスにも関心を持つ:「最近どう?」の一声が大きな支えになる。心の健康について話せる雰囲気を作る。
  • つらいときは一人で抱え込まない:専門家への相談・受診は、心の健康を守るための賢明な選択。
あなたは一人ではありません心の健康は、幸福な人生・充実した社会の根幹です。メンタルヘルスプロモーションの視点と実践を、一人ひとりが日常に取り入れていくことで、より心豊かな個人・家族・地域・社会が実現できます。

心の健康を、
一人で抱え込まないでください

メンタルヘルスプロモーションの第一歩は「助けを求めること」。あなたの気持ちを話せる場所が、ここにあります。ココトモのチャット相談は無料・匿名で利用できます。

今すぐ話したい方へ——相談窓口
ココトモ相談するチャット相談・無料
いのちの電話0120-783-55624時間・無料
よりそいホットライン0120-279-33824時間・無料

このページの情報は、医師による診断や治療に代わるものではありません。症状が気になる場合は、心療内科・精神科への受診をご検討ください。

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