メンタルヘルス用語辞典 · 自殺予防

自殺予防とは?
サインの見極め・ゲートキーパー・相談窓口を網羅

自殺予防(Suicide Prevention)は、念慮・企図・既遂を防ぐ多層的な取り組みです。日本の現状から、危機のサイン、ゲートキーパーの役割、医療的支援、子ども・若者の予防、自死遺族のケア、相談窓口まで——あなたや大切な人の命を守るために必要な情報を、ひとつにまとめました。

ABOUT SUICIDE PREVENTION

自殺予防とは

自殺予防とは、自殺念慮・自殺企図・自殺既遂を防ぐために行われる一連の取り組みです。個人レベルの援助希求行動の促進から、地域・社会レベルの啓発活動、国家レベルの政策まで幅広い階層での介入が含まれます。

定義

自殺予防(Suicide Prevention)とは

自殺予防(Suicide Prevention)とは、自殺念慮・自殺企図・自殺既遂を防ぐために行われる一連の取り組みのことを指します。個人レベルでの援助希求行動の促進から、地域・社会レベルでの啓発活動、そして国家レベルの政策立案に至るまで、幅広い階層での介入が含まれます。

多層的アプローチが鍵自殺は単一の原因では起きません。だからこそ、個人・家族・地域・社会のあらゆる層で同時に手を打つことが、命を守る最も効果的な道です。
WHOと国の方針

WHOと日本の取り組み

世界保健機関(WHO)は自殺を「公衆衛生上の深刻な問題」と位置づけており、適切な支援と介入によって多くの自殺は防ぐことができると明言しています。

日本においても、自殺対策基本法(2006年制定)に基づき、国・地方自治体・民間団体が連携して自殺予防に取り組んでいます。2025年には自殺対策基本法の改正により、こどもを含む自殺対策がさらに強化されました。

本記事の範囲

本記事で扱う内容

本記事では、自殺予防の基本的な考え方から、危機のサインの見分け方、具体的な支援の方法、そして日本で利用できる相談窓口や制度まで、網羅的に解説します。もしあなた自身または大切な人が今この瞬間つらい気持ちを抱えているなら、どうかひとりで抱え込まず、まずこのページを最後まで読んでみてください。

🚨
今すぐ危険を感じているあなたへ具体的な計画があるなど、命に関わる差し迫った状況なら、迷わず救急(119)・警察(110)に連絡してください。よりそいホットライン(0120-279-338)・いのちの電話(0120-783-556)も24時間対応です。
STATISTICS

日本の自殺の現状:知っておくべき数字

厚生労働省と警察庁が共同で発表した「令和6年中における自殺の状況」(2025年3月28日公表)をもとに、日本の自殺の現状を整理します。

全体の数字

2024年の自殺者数と傾向

2024年(令和6年)の自殺者数は20,320人でした。前年から1,517人減少し、統計開始以降2番目に少ない数値となりましたが、依然として年間2万人以上の命が失われている深刻な状況が続いています。

20,320
2024年の自殺者数(前年比 -1,517人/統計開始以降2番目に少ない)
16.4
2024年の自殺死亡率(人口10万人当たり)
529
2024年の小中高生の自殺者数(1980年以降で過去最多)
2.12
男性13,801人/女性6,519人 — 男性が女性の約2.12倍
1位
15〜39歳の死因第1位は自殺(日本の特徴的課題)
2006
自殺対策基本法の制定年(2025年改正でこども対策強化)
性別・年代別

性別・年代別の特徴

2024年の統計では、男性13,801人・女性6,519人と、男性が女性の約2.12倍となっています。

男性
40〜50代に多い
過労・失業・経済的困窮との関連が指摘されている。
女性
20〜30代の割合が比較的高い
人間関係の悩みや産後うつなどが背景にあるケースも少なくない。
子どもの状況

深刻化する子どもの自殺

特に深刻なのは子どもたちの状況です。2024年における小学生・中学生・高校生の自殺者数は529人で、前年から16人増加し、統計が存在する1980年以降で過去最多を記録しました。

学業への悩み、いじめ、家庭内の問題などが主な原因として挙げられており、子どもへの自殺予防対策が急務となっています。

国際比較

自殺死亡率と国際比較

2024年の自殺死亡率(人口10万人当たりの自殺者数)は16.4でした。先進国の中では依然として高い水準にあり、特に若年層(15〜39歳)における死因の第1位が自殺となっている点は、日本の特徴的な課題です。

経済的なセーフティネットの不足、精神科受診へのスティグマ(偏見・差別)、孤立した社会構造などが複合的に影響していると考えられています。

原因・動機

自殺の原因・動機

警察庁のデータによると、自殺の原因・動機として最も多いのは「健康問題」であり、うつ病や統合失調症などの精神疾患が深く関わっています。次いで「経済・生活問題」「家庭問題」「勤務問題」と続きます。

ただし、自殺はひとつの原因で起きるのではなく、複数の要因が重なり合って生じることがほとんどです。「80問題(高齢の親と引きこもりの子)」「ヤングケアラー」「孤独死予備軍」など、社会的な孤立が自殺リスクを高める構造的な問題も指摘されています。

💡
原因の理解は「個人の責任」を問うためではなく、「社会としてどこに手を打てば命が守れるか」を見出すために必要です。
RISK FACTORS

自殺リスクを高める要因

自殺は「突然起きるもの」ではなく、多くの場合、様々なリスク要因が積み重なって生じます。リスク要因を理解することで、早期発見・早期介入につなげることができます。

4つのカテゴリ

リスク要因の4つの領域

自殺リスク要因は、精神医学的・心理的・社会的環境的・生物学的の4つに大きく分けられます。実際の事例では、これらが複合的に絡み合います。

🧠精神医学的要因

自殺と最も強く関連する要因。うつ病・双極性障害・統合失調症・アルコール/薬物依存症・境界性パーソナリティ障害・PTSDなど。重症うつ病は特に注意。ただし精神疾患があれば必ず自殺念慮が生じるわけではなく、適切な治療でリスクを大幅に軽減できる。

  • うつ病(最も強い関連)
  • 双極性障害(躁うつ病)
  • 統合失調症
  • アルコール・薬物依存症
  • 境界性パーソナリティ障害
  • PTSD
精神疾患があっても治療で救える精神疾患があるからといって必ず自殺念慮が生じるわけではなく、適切な治療を受けることでリスクを大幅に軽減できます。精神科・心療内科への受診を恥ずかしいことだと思わず、早めに専門家に相談することが自殺予防の第一歩です。
WARNING SIGNS

自殺のサインに気づく:見逃してはいけない変化

自殺を考えている人は、多くの場合、何らかのサインを周囲に発信しています。そのサインに気づき、適切に対応することが、命を救うことにつながります。「まさかあの人が」という事態を防ぐためにも、サインを覚えておきましょう。

4種類のサイン

言葉・行動・感情・身体——4つの観点で見る

💬
直接的な言葉
「死にたい」「消えてしまいたい」「もう終わりにしたい」など、はっきりとした表現。
🗨
間接的な言葉
「みんなに迷惑をかけて申し訳ない」「私がいなくなったほうが楽」「もう疲れた」「先が見えない」。
📱
SNS・日記
「死」「消えたい」「楽になりたい」などのキーワード頻出。投稿頻度の急激な増減も警戒すべき変化。
💡
「最近なんとなく様子がおかしい」という直感は大切にしてください。複数のサインが重なるとき、特に注意が必要です。
GATEKEEPER

ゲートキーパーとして:大切な人を支えるために

「ゲートキーパー」とは、自殺の危険を示すサインに気づき、適切な対応をとることができる人のことです。医療や福祉の専門家だけでなく、家族・友人・職場の同僚・学校の先生など、誰でもゲートキーパーになることができます。

4つの役割

ゲートキーパーに期待される4つの役割

厚生労働省は「自殺総合対策大綱」においてゲートキーパーの養成を重点施策として位置づけており、専門職向け研修から一般市民向け研修まで幅広い研修を提供しています。期待される役割は次の4つです。

ROLE 1
変化に気づく
いつもと違う様子、サインに気づく観察力を持つ。「元気がなくなった」「口数が減った」「ため息が増えた」「食欲がなさそう」など、小さな変化も見逃さない。
観察
ROLE 2
じっくり耳を傾ける
気になる変化に気づいたら声をかけ、話を聞く。「解決策を提示しよう」「励まそう」と焦らず、まず相手の気持ちを受け止める。「つらかったんだね」「話してくれてありがとう」が孤立感を和らげる。
傾聴
ROLE 3
支援先につなげる
問題を一人で抱え込まず、専門の相談窓口や医療機関につなげる。「一緒に相談してみない?」と寄り添いながら、橋渡しをする。
連携
ROLE 4
温かく見守る
支援につないだ後も継続的に気にかけ、「いつでも話を聞くよ」というメッセージを伝え続ける。定期的に連絡を取り、孤立させない。
継続
直接聞くことを恐れない

「死にたいと思っているの?」と聞くことは害ではない

「死にたいと思っているの?」と直接聞くことで自殺を誘発するのでは、と心配する方が多いですが、研究によると、そのような直接的な質問は自殺リスクを高めないことが示されています。むしろ、「誰かが自分のことを真剣に心配してくれている」と感じることで、危機状態から抜け出すきっかけになることがあります。

ただし、自殺を話題にする際は、「死ぬ方法を一緒に考える」「自殺を止められないならしかたない」などの発言は絶対に避けてください。「あなたの命は大切だ」「あなたに生きていてほしい」という気持ちをしっかりと伝えることが重要です。

支援者自身のケア

支援者自身のケアも忘れずに

大切な人の自殺を防ごうとするとき、支援者自身も大きな精神的負担を負います。「もっと何かできたのではないか」という自責感、常に気を張り続けることによる疲弊、相手の苦しみを受け取ることによる二次的ストレスなど、支援者のメンタルヘルスも重要です。

自分だけで全てを抱え込もうとせず、専門家や支援機関に相談しながら、自分自身も大切にしてください。あなたが倒れたら、目の前の人を支えることもできなくなります。
研修制度

ゲートキーパー研修

  • 専門職向け研修5.5時間。医療・福祉・教育・行政等の専門職向け。
  • 一般市民向け研修1〜2時間。誰でも参加でき、家族・友人・同僚・教師など、誰でもゲートキーパーになれる。
CRISIS INTERVENTION

自殺危機への介入:今すぐできること

もし今、目の前にいる人が「死にたい」と言っていたり、自殺しようとしている兆候があったりする場合の対応をまとめます。

対応ステップ

危機的状況への対応ステップ

STEP 1
その場を離れず寄り添う
「ここにいるよ」という存在感が重要。一人にしない。
存在
STEP 2
直接尋ねる
「死にたいの?」と落ち着いた声で直接聞く。「今、死のうとしているの?」「何か方法を考えているの?」と危機の具体性を確認する。研究上、直接的な質問は自殺リスクを高めないことが示されている。
確認
STEP 3
手段を遠ざける
具体的計画がある場合(薬を溜めてある、縄を用意したなど)は特に緊急性が高い。手段となる物(薬・刃物など)を安全な場所に移す。
安全確保
STEP 4
緊急通報・専門連絡
今すぐ危険があるなら救急(119)・警察(110)・精神科救急相談窓口へ。強い自殺念慮がある場合はよりそいホットライン(0120-279-338)・いのちの電話(0120-783-556)に一緒に電話、または精神科の救急外来や精神保健福祉センターへ連絡を促す。
連絡
🚨
具体的な計画があるときは緊急対応「薬を溜めてある」「縄を用意した」などの具体的な計画がある場合は、特に緊急性が高い状況です。一人にせず、すぐに救急(119)・警察(110)または精神科救急相談窓口へ。
してよいこと/いけないこと

支援者の言葉——してよいこと・してはいけないこと

危機介入の際、相手をさらに追い詰める言葉や、後の連携を妨げる約束を避けることが重要です。

✓ してよいこと
「死にたいの?」と直接落ち着いて聞く
「つらかったんだね」「話してくれてありがとう」と受け止める
「あなたの命は大切だ」「生きていてほしい」と伝える
存在感を示し、そばにいる
支援先(窓口・医療機関)に一緒につながる
支援後も継続的に気にかけ、孤立させない
✗ してはいけないこと
「そんなこと考えちゃダメ」と否定する
「死ぬなんてわがまま」と道徳的に責める
「もっと大変な人はいる」と比較する
「秘密にするから何でも話して」と約束する(専門家連携の障壁になる)
「気合でなんとかなる」「もっと頑張れ」と精神論を説く
死ぬ方法を一緒に考える/自殺を止められないならしかたない、と言う
💡
「気合でなんとかなる」「もっと頑張れ」という精神論的な発言も逆効果です。うつ病などの精神疾患は意志の力だけでは克服できない病気であり、「頑張れない自分」をさらに責めさせることになりかねません。
MEDICAL CARE

精神科・心療内科での治療:自殺予防の医学的アプローチ

自殺念慮の背景に精神疾患がある場合、適切な治療を受けることが自殺予防の根幹となります。精神疾患は他の身体疾患と同様に、適切な医療を受けることで改善する病気です。

うつ病治療

うつ病の治療と自殺予防

自殺と最も関連の深いうつ病の治療は、主に薬物療法(抗うつ薬)精神療法(特に認知行動療法)の組み合わせが標準的です。「精神科に行くのは恥ずかしい」「薬を飲み始めたら一生やめられない」などの誤解から受診をためらう方も多いですが、早めの受診が回復への近道です。

⚠️
アクティベーション症候群に注意抗うつ薬は通常2〜4週間で効果が現れますが、治療開始初期は気力が戻る前に自殺への衝動が生じやすい「アクティベーション症候群」に注意が必要です。この時期は周囲のサポートが特に重要です。
3つの柱

自殺予防の医学的アプローチ——3つの柱

💊
薬物療法(抗うつ薬等)
抗うつ薬は飲み始めてすぐに効果が出るわけではなく、通常2〜4週間程度で効果が現れる。治療開始初期は気力が戻る前に自殺への衝動が生じやすい「アクティベーション症候群」に注意が必要で、この時期は周囲のサポートが重要。リチウム(双極性障害治療薬)は自殺リスクを下げる効果が複数の研究で示されている。
🧠
認知行動療法(CBT)(精神療法)
歪んだ思考パターン(「私はダメな人間だ」「状況は絶対に変わらない」など)を同定し、より現実的・適応的な考え方に修正する心理療法。うつ病の再発予防にも効果があることが多くの研究で示されている。
🏥
入院治療(安全確保)
強い自殺念慮がある場合、安全確保の観点から入院治療を勧めることがある。24時間の観察体制で集中的な治療を受けられる安全な環境。任意入院(本人同意)・医療保護入院(家族等同意)・措置入院(自傷他害のおそれが著しく知事の命令)の3形態がある。
入院は「怖い場所」ではない「入院=怖い場所」ではなく、「命を守るための安全な場所」として捉えていただければと思います。24時間の観察体制のもと、危機的状態から脱出するための環境が提供されます。
安全計画

安全計画(Safety Plan)の作成

外来治療においては、「安全計画(Safety Plan)」の作成が有効とされています。これは、自殺念慮が強まったときにどうするかを事前に決めておくもので、個人に合わせて以下のステップを設計します。

  • ①危機のサインを知る
  • ②自分でできる対処法のリストを作る
  • ③信頼できる人に連絡する
  • ④専門の相談窓口に電話する
  • ⑤安全な場所に移動する
手段の制限

手段の制限(Means Restriction)

自殺予防の観点から重要なのが「手段の制限」です。自殺念慮が強い人の周囲から、自殺の手段となりうるものを取り除くことが、命を救うことに直結します。衝動的な自殺企図の多くは、「手段がすぐそこにある」ことで起きると言われています。

  • 自宅環境の整理大量の薬・刃物・ロープなど、自殺の手段となりうるものを取り除く。衝動的な自殺企図の多くは「手段がすぐそこにある」ことで起きる。
  • 薬の管理処方薬を家族が管理する/薬の包装を1錠ずつ開封する設計にする(公衆衛生的環境介入)。
  • 公共空間の対策橋の欄干を高くするなどの環境介入。公衆衛生的な自殺予防として効果が示されている。
YOUTH

子ども・若者の自殺予防

2024年における小中高生の自殺者数は529人と過去最多を更新しました。15〜39歳の死因第1位が自殺という現実は、日本社会が早急に取り組むべき課題です。

子どもの自殺の特徴

成人とは異なる、子どもの自殺の特徴

  • 衝動性の高さ子どもの自殺は衝動的に起きることが多く、「死」という概念の理解が大人と異なる。
  • いじめ・学業ストレス直接的なきっかけになることが多い一方、背景に家庭内問題や発達障害・精神疾患が隠れていることも少なくない。
  • 長期休暇明け特に9月1日前後に自殺者が増える傾向。日本の特徴的なデータ。
💡
頭ごなしの否定をしない子どもが「死にたい」と言ったとき、親や教師が「そんなこと言ってはダメ」と頭ごなしに否定すると、子どもは「どうせわかってもらえない」と感じ、誰にも相談できなくなってしまいます。まず「そう思うほどつらかったんだね」と受け止め、話を聞く姿勢を示すことが大切です。
学校でできる予防

学校現場でできる自殺予防

📚
いのちの教育
いのちの大切さを学ぶ「Life Skills Education」が学校現場で実施されている。
🆘
SOS出し方教育
SOSの出し方に関する授業。文部科学省「子供に伝えたい自殺予防~学校における自殺予防教育導入の手引き~」に基づき年齢に応じた教育が推進。
👩‍🏫
スクールカウンセラー
スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーの活用。学校内に相談できる大人がいることを知らせる。
💬
SNS・チャット相談
電話が苦手な若者向けに、SNSやチャットによる相談窓口を整備。よりそいホットラインもLINE/チャット相談を実施。
「誰かに話していい」「助けを求めていい」という文化を学校で育てることが、子どもの自殺予防につながります。
若者向け窓口

若者向けのSNS・チャット相談

電話が苦手な若者向けに、SNSやチャットによる相談窓口も整備されています。厚生労働省の「よりそいホットライン」(0120-279-338)はSNS相談も行っており、LINEやチャットで相談することができます。「話す」ことへの抵抗が高い若者でも、文字を打つことで少し楽になれる場合があります。

SURVIVORS

自殺未遂後のケア:生存者へのサポート

自殺未遂(自殺企図)を経験した人は、その後も自殺既遂のリスクが高い状態が続きます。救急搬送後の適切なフォローアップ体制の整備が、命をつなぐうえで極めて重要です。

課題と支援

救急搬送後のケアと生存者の支援

  • 救急搬送後のフォロー不足日本では身体的治療後に精神科的フォローを受けずに帰宅してしまうケースが多い。WHO等は自殺未遂後のケースマネジメント・定期的フォローアップ連絡(Follow-up Contact)の有効性を示している。
  • リエゾン精神医学の充実救急部門と精神科の連携(リエゾン精神医学)の充実が求められている。
  • 生存者の複雑な感情「なぜ生きているのか」という混乱・羞恥心・周囲への申し訳なさ・再び死にたいという気持ちなど、複雑な感情を抱える。「助かってよかった」とすぐに思える人ばかりではなく、回復には時間がかかる。
  • ピアサポート自殺未遂の経験を持つ仲間と繋がることで「一人じゃない」「回復できる」という希望が生まれる。
焦らず寄り添い続ける「助かってよかった」とすぐに思える人ばかりではなく、回復には時間がかかることを周囲が理解し、焦らず寄り添い続けることが大切です。
BEREAVED FAMILY

自死遺族へのサポート

大切な人を自殺で亡くした遺族(自死遺族)は、強烈な自責感と複雑性悲嘆(Complicated Grief)を抱えることが多く、自身も自殺リスクが高まることが知られています。自死遺族へのサポートも、自殺予防の重要な柱です。

複雑性悲嘆と支援

複雑性悲嘆の特徴と支援先

  • 複雑性悲嘆(Complicated Grief)自殺による死別は事故・病気の死別とは異なる特有の苦しみ。「なぜ死を選んだのか」への答えが永遠に得られない苦しさ、自分が防げたはずだという罪悪感、社会的スティグマへの恐れなど複合的な苦悩。
  • 自死遺族支援団体全国各地に「自死遺族支援団体」「自死遺族グループ(分かち合いの会)」がある。同じ経験を持つ人々と分かち合うことで孤立感を和らげる。
  • 精神保健福祉センター遺族向けの相談も受け付けている。
  • グリーフカウンセリング悲嘆カウンセリングを提供する専門家への相談も有効。資格や経験を確認したうえで信頼できる専門家を探す。
  • 遺族自身の自殺リスク自死遺族は自身も自殺リスクが高まることが知られており、サポートは自殺予防の重要な柱。
💡
同じ経験を持つ人々と悩みを分かち合うことで、孤立感を和らげ、回復への道を歩んでいくことができます。「分かち合いの会」や精神保健福祉センターの遺族相談、グリーフカウンセリングを活用してください。
SOCIAL POLICY

自殺予防の社会的・制度的取り組み

個人・家族レベルでの取り組みに加え、社会全体として自殺を防ぐ環境を整えることも重要です。日本では2006年の「自殺対策基本法」制定以来、法的基盤に基づいた取り組みが進んでいます。

主な制度・施策

日本の主な自殺予防制度・施策

  • 自殺対策基本法(2006年制定/2025年改正)自殺を「社会的な問題」と位置づけ、国・地方公共団体・事業主・国民それぞれの責務を定めた法律。2025年改正でこどもを含む自殺対策がさらに強化された。
  • 自殺総合対策大綱(2022年10月閣議決定)「誰も自殺に追い込まれることのない社会の実現」を目標に、ゲートキーパーの養成・相談窓口の充実・地域レベルの対策強化などを推進。
  • ストレスチェック制度(2015年〜)50人以上の事業所に実施が義務化。高ストレス者には医師による面接指導の機会が提供され、過労・ハラスメントによる精神的追い詰めを早期発見・対処する仕組み。
  • 職場メンタルヘルス対策管理職向けのメンタルヘルス研修、EAP(従業員支援プログラム)の導入なども推進。
  • 自立支援医療制度(精神通院医療)精神科・心療内科の通院医療費の自己負担を原則1割に軽減(通常3割)。所得に応じた月額上限あり。住民税非課税世帯は自己負担ゼロになる場合も。申請は各自治体の福祉担当課・保健センターで。
  • 生活困窮者自立支援制度就労支援・住居確保給付金・生活福祉資金の貸付など。生活保護の申請は社会保障制度として当然の権利。
制度は使うためにある「生活保護の申請をすること」は恥ずかしいことではなく、社会保障制度として当然の権利です。「使える制度は使う」という発想で、経済的な危機から脱出する道を探してください。
MEDIA

メディアと自殺予防:ウェルテル効果とパパゲーノ効果

自殺の報道やフィクション作品の自殺の描写は、模倣自殺を引き起こすことも、希望を届けることもあります。メディアの影響を理解することは、社会全体での自殺予防の基盤です。

2つの効果とSNS

ウェルテル効果・パパゲーノ効果・SNS

ウェルテル効果
1774年ゲーテ『若きウェルテルの悩み』の主人公の自殺を模倣した若者が相次いだ史実に由来。有名人の自殺が詳細に報道された後、同様の手段による自殺が増加する現象。WHOや各国メディア関係者向けに「自殺手段を詳細に報道しない」「自殺を美化・ロマンティック化しない」「相談窓口を必ず紹介する」などのガイドラインが定められている。
🌟
パパゲーノ効果
モーツァルト『魔笛』のパパゲーノが絶望的状況から立ち直る場面に由来。「死にたいほどつらかったが乗り越えた」という当事者経験を紹介することで、「自分も乗り越えられるかもしれない」という希望を届け、自殺率を下げる効果が研究で示されている。
📱
SNSと自殺予防
誹謗中傷・ネットいじめによるリスク増大と同時に、支援情報の迅速な拡散、孤立した人々が繋がる場、ピアサポートコミュニティの形成など予防ツールとしても活用。各プラットフォームも自殺関連の検索・投稿に相談窓口を表示する機能を導入。
💡
リカバリーのストーリーを伝える「死にたいほどつらかったが、それを乗り越えた」という当事者の経験は、自殺念慮を持つ人に希望を届け、自殺率を下げる効果があります。リカバリー(回復)のストーリーを社会に伝えることの重要性が、近年ますます認識されています。
FOR YOU

今つらい気持ちを抱えているあなたへ

もしあなた自身が今、死にたいという気持ちやつらい気持ちを抱えているなら、このページを読んでくれていることに、まず感謝します。そのつらさは、あなたが弱いからではありません。それだけ追い詰められた状況にあるということです。

伝えたいこと

死にたいという気持ちは「終わらせたい」叫び

死にたいという気持ちは、「今の状況から逃げ出したい」「この苦しみを終わらせたい」というサインであることが多いです。それは「死ぬことそのもの」を望んでいるのではなく、「今のこの状態を終わらせたい」という切実な叫びです。その苦しみを受け止めてくれる人は、必ず存在します。

「助けを求める」は弱さではない「助けを求める」ことは弱さではありません。それは、生きようとする強さの表れです。一人で抱え込まず、下のCTAを参考に、今すぐ誰かに連絡を取ってみてください。
今夜できる一歩

今夜は今夜だけを乗り越える——小さな行動

今すぐ大きなことをする必要はありません。今夜は今夜だけを乗り越えることを目標にしてみてください。そういった小さな行動が、危機の瞬間を乗り越える力になることがあります。

📩
信頼できる人に一言
LINEやメッセージを送る。「今ちょっとつらい」だけでも構いません。
相談窓口に電話する
よりそいホットライン・いのちの電話など。文字での相談(SNS相談)も可能。
🚶
近くのコンビニまで歩く
場所を変えるだけで気持ちが少し変わることがあります。
🍵
何か飲む・食べる
温かい飲み物が体と心を少し緩めます。
🚿
温かいシャワー
身体の感覚に注意を戻し、危機の瞬間をやり過ごす助けに。
セルフケア

自分を守るためのセルフケア

危機的な状況にないときも、日頃から自分のメンタルヘルスを守るためのセルフケアが重要です。身体的な基盤を整えることは、精神的な回復力(レジリエンス)を高めます。

😴
十分な睡眠
レジリエンス(回復力)の身体的な基盤。
🥗
バランスの取れた食事
心身の状態を支える土台。
🏃
適度な運動
気分の安定とストレス耐性に寄与。
👥
信頼できる人との繋がり
孤立を防ぐ最大の保護要因。
💛
セルフコンパッション
完璧主義を手放し、自分に優しくする。
🎨
趣味・楽しみの時間
小さな楽しみがメンタルヘルスを守る。
📓
自分の状態の観察
日記をつける、ストレスを10段階で自己評価。悪化の兆候に早めに気づく。
💡
「自分の状態を観察する」習慣を持つと、悪化の兆候に早めに気づき、対処することができます。日記やストレスの10段階評価をぜひ試してみてください。
HOTLINES

日本の主な自殺予防相談窓口一覧

自殺予防のための相談窓口は複数あります。深夜・早朝でも対応しているものも多くあるため、「こんなことで電話してもいいの?」と思わず、気軽に連絡してみてください。

窓口リスト

7つの主要相談窓口

いのちの電話0120-783-556
毎日16時〜21時、毎月10日は8時〜翌8時/無料/一般社団法人日本いのちの電話連盟運営、全国53か所のセンター、ボランティア相談員が傾聴
よりそいホットライン0120-279-338
24時間365日・無料/社会的包摂サポートセンター運営/DV・生活困窮・性的マイノリティの悩みなど幅広く対応/SNS相談あり/岩手・宮城・福島県には専用回線
こころの健康相談統一ダイヤル0570-064-556
厚生労働省設置/都道府県・政令指定都市の公的精神保健相談機関につながる/対応時間は地域により異なる
いのちSOS0120-061-338
自殺総合対策推進センター/通話料無料/24時間対応(一部時間帯は転送あり)
子どもの人権110番0120-007-110
18歳以下の子ども・若者向け/いじめ・家庭の問題など
チャイルドライン0120-99-7777
18歳以下の子ども向け/学校・家庭の悩みを安心して話せる
精神保健福祉センター各都道府県・政令指定都市
医師・看護師・精神保健福祉士・心理士等の専門家が在籍/精神保健・精神医療・社会復帰の総合的相談支援/受診・手帳・制度申請の相談可/「都道府県名+精神保健福祉センター」で検索
どの窓口でもよい、まずは連絡を「こんなことで」と遠慮する必要はありません。話すことが苦手なら、よりそいホットラインのSNS相談やチャイルドラインの利用も検討してください。
FAQ

よくある質問

自殺予防に関してよく寄せられる質問と回答をまとめます。

7つの質問

支援者・本人・家族からのよくある質問

Q. 「死にたい」と言っている人を一人にして帰ってしまいました。大丈夫でしょうか?

A. 今すぐ再連絡を取ることをお勧めします。「さっき話してくれたこと、やっぱり心配で電話した」と一言伝えるだけでも構いません。一人にした後に状況が悪化する可能性があるため、電話やメッセージで安否を確認し、必要に応じてよりそいホットラインなどの専門機関に相談してください。

Q. 家族がうつ病で自殺念慮があります。どう接すればよいですか?

A. まず、焦らず「今そこにいる」ことが大切です。「頑張れ」「元気を出して」という言葉は避け、「つらいんだね」「話してくれてありがとう」という姿勢で聞きましょう。主治医に家族としての不安を相談すること、精神保健福祉センターのご家族向け相談を利用することも効果的です。支援者自身も一人で抱え込まないようにしてください。

Q. 自殺予防の薬はありますか?

A. 特定の薬が「自殺を直接防ぐ」というわけではありませんが、うつ病・双極性障害・統合失調症などの治療によって自殺リスクを大幅に下げることができます。また、リチウム(双極性障害の治療薬)は自殺リスクを下げる効果が複数の研究で示されています。精神科・心療内科に相談してください。

Q. 自殺念慮があると言ったら、強制入院させられますか?

A. 「死にたい気持ちがある」というだけで強制入院になることは通常ありません。精神科では症状の重さや状況に応じて入院の必要性を判断します。入院形態には任意入院(本人の同意)・医療保護入院(家族等の同意)・措置入院(自傷他害のおそれが著しい場合に知事の命令)があります。まずは受診して、正直に気持ちを伝えてください。

Q. 自立支援医療の申請はどうすればよいですか?

A. かかりつけの精神科・心療内科の主治医に「自立支援医療を申請したい」と伝えると、診断書(意見書)を書いてもらえます。その診断書を持って、お住まいの市区町村の窓口(障害福祉担当課など)に申請書類を提出します。申請が受理されると自己負担が1割になる受給者証が発行されます。精神保健福祉センターでも申請方法について相談できます。

Q. SNSで「死にたい」と投稿している人を見かけました。何か対応できますか?

A. その人を知っている場合は、ダイレクトメッセージやコメントで「心配している、話を聞かせて」と声をかけてみましょう。知らない人の場合も、「つらいんだね、相談できる場所があるよ」とよりそいホットラインの番号などを伝えることができます。緊急性が高いと判断した場合(場所が特定できる、手段を準備しているなど)は、プラットフォームの通報機能を使うとともに、警察(110番)に相談することも選択肢です。

Q. 支援者自身のメンタルヘルスはどうケアすればよいですか?

A. 大切な人の自殺を防ごうとするとき、支援者自身も大きな精神的負担を負います。「もっと何かできたのでは」という自責感、常に気を張り続ける疲弊、相手の苦しみを受け取ることによる二次的ストレスなど。自分だけで全てを抱え込もうとせず、精神保健福祉センターや専門家・支援機関に相談しながら、自分自身も大切にしてください。

一人で抱え込まないでください
あなたの命は、かけがえのないものです

「死にたい」という気持ちは、今のこの苦しみを終わらせたいという切実な叫びです。あなたの話を、真剣に聞いてくれる場所があります。ココトモのチャット相談から、専門の電話窓口まで——あなたが繋がりやすい方法で、まず一歩を踏み出してみてください。

今すぐ話したい方へ——相談窓口
ココトモ相談するチャット相談・無料
いのちの電話0120-783-55624時間・無料
よりそいホットライン0120-279-33824時間・無料

このページの情報は、医師による診断や治療に代わるものではありません。症状が気になる場合は、心療内科・精神科への受診をご検討ください。命に関わる差し迫った危険がある場合は、迷わず119・110番に連絡してください。

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