メンタルヘルス用語辞典 · グループ療法

グループ療法(集団療法)とは?
ヤーロムの11因子・種類・効果・受け方を徹底解説

グループ療法(集団療法・集団精神療法)は、複数の人がファシリテーターのもとで体験を分かち合い、心理的な回復・成長を促す心理療法です。ヤーロムが体系化した11の治療的因子、CBGT・SST・MBCT・DBT・サイコドラマなどの種類、個人療法との違い、日本での受け方と費用まで、必要な情報をすべてここにまとめました。

ABOUT GROUP THERAPY

グループ療法とは

グループ療法(集団療法・集団精神療法)は、複数の人が同じ場に集まり、治療者のファシリテートのもとで話し合いや体験を共有することによって、心理的な回復や成長を促す心理療法の一形態です。

定義

グループ療法の定義

グループ療法(集団療法・集団精神療法)とは、複数のクライエントが同じ場に集まり、訓練を受けた治療者(セラピスト・心理士・精神科医など)のファシリテートのもとで、言語的・非言語的な相互作用を通じて心理的な変化・回復・成長を目指す治療的アプローチです。

一般的には3名以上のメンバーが参加し、定期的な頻度で一定時間集まることが多く、グループという場そのものが「治療の道具(therapeutic tool)」として機能します。個人療法が治療者とクライエントの一対一の関係性に焦点を当てるのに対し、グループ療法はメンバー同士の相互作用・共感・フィードバック・対立・支持を通じて、日常の人間関係に近い状況の中で変化が生まれます。

日本語での呼称について「グループ療法」「集団療法」「集団精神療法」「グループセラピー」「グループカウンセリング」など様々な呼称が使われますが、おおむね同じ概念を指します。医療機関では「集団精神療法」または「集団療法」、カウンセリング領域では「グループカウンセリング」「グループセラピー」が多く使われます。本記事では「グループ療法」を中心呼称として使用します。
基本構造

グループ療法の基本的な構造

グループ療法には様々な形式がありますが、一般的な構造として以下の要素が含まれます。

  • 参加人数通常5〜12名程度が理想的とされる。少なすぎると相互作用が乏しくなり、多すぎると一人ひとりへの注目が薄れる。
  • セッション時間60〜120分程度が一般的。外来グループでは90分が多い。
  • 頻度週1回が標準的だが、デイケアでは週複数回、集中的なプログラムでは毎日実施される場合もある。
  • 期間短期(8〜16回程度)から長期(1年以上継続)まで目的により大きく異なる。
  • 治療者1名または2名(共同リーダー制)の訓練を受けた専門家がファシリテーターを務める。
  • オープン/クローズド開始後に新メンバーが加入できる「オープングループ」と、最初に決めたメンバーで終結まで進む「クローズドグループ」がある。
治療的である根拠

グループ療法が「治療的」である根拠

グループ療法が単なる「集まり」ではなく治療的に機能するのはなぜでしょうか。アーヴィン・ヤーロムは「グループそのものがミクロコスモス(縮小版の社会)として機能する」と述べています。私たちの心理的問題の多くは対人関係の中で生じ、対人関係の中でこそ癒えるものです。グループという小さな社会の中で、各自が普段の対人パターンを再演し、それに気づき、変えていくことができます。

また、「自分だけがこんなに苦しいのではない」という普遍性(universality)の感覚は、孤立感に苦しむ多くのクライエントに深い安堵をもたらします。治療者との一対一の関係では体験できない、メンバー同士の等身大の共感と支持が、グループ療法固有の治療力の源泉です。

HISTORY

グループ療法の歴史

20世紀初頭にアメリカで生まれたグループ療法は、ヤーロムの理論化を経て世界に広がり、日本でも医療・福祉・教育の幅広い領域で実践されています。

起源

グループ療法の起源

グループ療法の歴史は20世紀初頭に遡ります。アメリカの内科医ジョセフ・プラット(Joseph Hersey Pratt)が1905年に結核患者のグループを対象として「クラス(class)」という形で集団指導を開始したことが、グループ療法の最初期の実践として広く知られています。プラットは患者同士が共に学び励まし合うことで、病気への適応と精神的な強さが高まることを観察しました。

その後、精神科の領域でもグループの治療的可能性が注目され、1930〜40年代にはジェイコブ・モレノ(Jacob Moreno)がサイコドラマを開発し、S・R・スラブソン(S. R. Slavson)が神経症の患者を対象とした集団療法を体系化しました。第二次世界大戦中には多数の傷ついた兵士を限られた人員で治療するための手段として集団療法が急速に発展し、戦後の精神医療に広く普及しました。

ヤーロムの貢献

ヤーロムの貢献と理論的基盤の確立

集団精神療法の理論化に最も大きな貢献をしたのが、スタンフォード大学の精神科医アーヴィン・D・ヤーロム(Irvin D. Yalom, 1931年〜)です。ヤーロムは1970年に主著『グループサイコセラピー(The Theory and Practice of Group Psychotherapy)』を発表し、集団療法の治療的因子を体系的に整理しました。この著作は現在も集団精神療法のバイブルとして世界中の臨床家・研究者に参照され続けています。

ヤーロム以降、認知行動療法・弁証法的行動療法・マインドフルネスなど第三世代の心理療法が集団形式で実施されるようになり、グループ療法の適応範囲と理論的多様性はさらに広がっています。

日本での展開

日本における集団精神療法の展開

日本における集団精神療法は、第二次世界大戦後の精神科病院での実践が始まりとされています。その後、精神科デイケアの普及とともに集団活動が広く取り入れられ、1983年(昭和58年)には一般社団法人日本集団精神療法学会が設立されました。

現在、日本での集団精神療法の実践は精神保健分野にとどまらず、児童養護施設や少年院などの司法領域、学校のスクールカウンセリング領域、地域福祉サービスなど、幅広い場で行われるようになっています。2010年代以降は集団認知行動療法(CBGT)がうつ病・不安障害の治療プログラムとして医療機関に普及し、厚生労働省の診療報酬体系にも位置づけられています。

11 THERAPEUTIC FACTORS

ヤーロムの11の治療的因子

ヤーロムは集団療法に固有の治療的力を「療法的因子(therapeutic factors)」と名付け、11の因子として体系化しました。グループ療法が単に「複数人でカウンセリングを受ける」のとは本質的に異なる理由を、これらの因子が説明します。

治療的因子とは

治療的因子とは何か

これらは個人療法には存在しないか、グループという文脈においてより強力に機能する要素です。11因子は互いに独立しているわけではなく、グループの中で複合的に作用します。どの因子が特に重要かは参加者の問題・グループの成熟度・治療目標によって異なりますが、研究では「凝集性」「対人関係の学習」「カタルシス」が特に重要視される傾向があります。

11の因子

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🌅因子1:希望をもたらすこと(Instillation of Hope)

精神的な苦しみを抱えた人の多くは「自分は絶対に良くならない」「もう手遅れだ」という絶望感を持っています。グループに参加することで、自分より回復が進んでいるメンバーを目の当たりにし、「自分も回復できる」という現実的な希望を得られます。治療の初期段階で特に重要な因子です。

💡
これら11因子の理解は、自分がグループ参加で何を体験しているか・なぜグループが効くのかを言語化する助けになります。
TYPES

グループ療法の主な種類

グループ療法には目的・理論・構造の異なる多様なタイプがあります。代表的な8つを紹介します。

8つのタイプ

代表的な8つのグループ療法

いずれもヤーロムの治療的因子を共有しつつ、構造化の度合いや理論的背景が異なります。受けたいテーマや問題に合わせて選択されます。

TYPE 1
精神力動的グループ療法(対人関係グループ療法)
ヤーロムの理論を中心とした、グループ内の「今ここ(here and now)」での相互作用に焦点を当てるアプローチ。構造化は比較的少なく、メンバーが自由に話し合う中でグループ内のダイナミクスが展開する。治療者はグループプロセスを観察し、対人パターンについてコメントやフィードバックを行う。神経症レベルの機能を持つクライエントや長期的な人格的変化を目指す人に適する。
非構造/長期
TYPE 2
集団認知行動療法(CBGT)
認知行動療法(CBT)の技法をグループ形式で実施する。うつ病・不安障害・社交不安障害・パニック障害・強迫症などに豊富なエビデンスがある。構造化されたプログラム形式で、自動思考の識別・認知の歪みの修正・行動実験などを学び、ホームワークで日常実践を促す。8〜16回の短期集中プログラムが多く、日本の精神科医療でも導入が広がる。個人CBTと同等の効果が複数のメタ分析で示されている。
構造化/8〜16回
TYPE 3
SST(ソーシャルスキルトレーニング)
認知行動療法に基づくリハビリテーション技法で、対人関係スキルをグループで体験的に学ぶ。日本では1980年代後半から精神科リハビリテーションの中心的手法となり、特に統合失調症の社会復帰支援で広く活用される。「挨拶の仕方」「断り方」「感謝の伝え方」「困ったときの助けの求め方」などをロールプレイで練習。「良いところ見つけ(正のフィードバック)」「改善のための提案」という構造があり、批判ではなく建設的な学習の場として機能する。
構造化/長期可
TYPE 4
心理教育グループ
特定の精神疾患や心理的問題について、正確な知識・情報・対処スキルをグループ形式で伝える。疾病理解・服薬管理・再発予防・ストレスマネジメントなどがテーマ。双極性障害・統合失調症・依存症・摂食障害など慢性疾患の方が主な対象で、当事者だけでなく家族向けの心理教育グループも多い。「家族心理教育」はEBP(エビデンス・ベースト・プラクティス)として国際的に認められた実践。
構造化
TYPE 5
サイコドラマ(心理劇)
ジェイコブ・モレノが開発した技法で、ドラマ(即興劇)を通じて過去の体験や内的世界を表現・探索する。主人公(プロタゴニスト)が自分の人生の場面を即興で演じ、他のメンバーが補助自我として参加。言語だけでは表現しにくい体験を身体的・感情的に体験し深い洞察と浄化が起きる。過去のトラウマシーンを修正した形で演じ直す「余剰現実(surplus reality)」はトラウマ治療に応用される。日本では精神科病院・福祉施設・スクールカウンセリングで実践。
体験的
TYPE 6
マインドフルネスベースのグループ療法
今この瞬間の体験に意図的に注意を向け評価せず観察する態度をグループ形式で実践。代表的プログラムにうつ病再発予防のマインドフルネス認知療法(MBCT)と、ストレス軽減のマインドフルネスストレス低減法(MBSR)がある。8週間・週1回のプログラムで瞑想・ボディスキャン・分かち合いを組み合わせる。MBCTはうつ病再発率を有意に下げる強いエビデンスがあり、英国NICEガイドラインでも推奨されている。
8週間
TYPE 7
弁証法的行動療法グループスキルトレーニング(DBT)
マーシャ・リネハンが境界性パーソナリティ障害(BPD)治療のために開発した治療法。現在は自傷・自殺念慮・感情調節困難・物質依存など幅広い問題に適用される。標準構成では個人療法に加えグループスキルトレーニングが含まれる。グループでは「マインドフルネス」「対人関係の効果性」「感情調節」「苦悩耐性」の4つのスキルモジュールを体系的に学ぶ。
構造化/4モジュール
TYPE 8
エンカウンターグループ・感受性訓練グループ
カール・ロジャーズのベーシック・エンカウンターグループは、参加者が本来の自己を取り戻し人間的成長を促すことを目的とした非構造化アプローチ。「成長」「自己実現」「コミュニティ形成」を目的とする場合が多く、健常者や学生・教員のグループにも応用される。日本では大学キャンパスや研修プログラムで実施され、心理職の訓練の一環としても重要視される。「自分らしさとは何か」「他者とどう深く繋がるか」をグループの今ここの体験を通じて探求する。
非構造/成長型
CBGTのエビデンス

集団認知行動療法のエビデンス

集団CBT(CBGT)は、個人CBTと同等の効果があることが複数のメタアナリシスで示されています。うつ病に対しては再発予防効果、社交不安障害に対しては特に強い効果が確認されています。また、個人CBTと比較してコスト効率が高い(1名の治療者が複数のクライエントを同時に支援できる)という実用的メリットもあります。

「自分に合うタイプ」は受けたい変化と問題の質によって変わります。主治医や心理士と相談しながら選びましょう。
DISTINCTION

グループ療法と個人療法の違い

個人療法とグループ療法は対立するものではなく、目的に応じて使い分け・組み合わせられます。両者の根本的な違いを整理します。

根本的な違い

相互作用の主体が違う

個人療法とグループ療法の最大の違いは「相互作用の主体」です。

相互作用の主体
個人療法
治療者とクライエントの二者関係が治療の舞台。
相互作用の主体
グループ療法
メンバー同士の多数の関係性が同時並行で展開し、治療者だけでなくメンバー全員が治療的資源となる。
項目別比較

項目別に比べる

フィードバックの源
個人療法主に治療者からのフィードバック
グループ療法治療者+多様なメンバーからのフィードバック
孤立感の軽減
個人療法治療者との関係による間接的な軽減
グループ療法「自分だけではない」という普遍性の直接体験
プライバシー
個人療法完全に守られる
グループ療法グループ内での守秘義務はあるが、他メンバーに情報が伝わる
個別対応
個人療法個人の状況に完全に合わせられる
グループ療法グループの流れに合わせる必要がある
費用
個人療法比較的高額になりやすい
グループ療法1回あたりの費用は一般的に低い
社会的スキルの練習
個人療法限定的
グループ療法グループそのものが対人関係の練習場になる
適した問題
個人療法深刻なトラウマ、重症例、プライバシーの高い問題
グループ療法対人関係の問題、孤立感、社会復帰、再発予防
個人療法の出番

個人療法でしか対応できないこともある

グループ療法が多くの面で優れていても、すべての問題に適しているわけではありません。重篤な解離症状、急性期の危機状態、深刻な性的虐待のトラウマなど、高度な個別対応が必要な場合は、まず個人療法が優先されます。

実際の臨床では個人療法とグループ療法を組み合わせる「複合アプローチ」が効果的な場合も多く、個人療法で基盤を作りつつグループ療法で対人関係の問題に取り組む、あるいはグループ療法で得た洞察を個人療法で深めるという使い方がされます。

EVIDENCE & TARGETS

効果のエビデンスと対象疾患

1970年代以降、膨大な研究が積み上げられ、グループ療法は多くの精神疾患に対して個人療法と同等の効果を持つことが示されています。

全体的なエビデンス

全体的なエビデンスの状況

グループ療法の効果については1970年代以降、膨大な量の研究が蓄積されています。全体としては、グループ療法が個人療法と同等の効果を持つことが多くの研究で示されており、「効果がない」「有害である」という根拠はほとんどありません。

一方で、グループ療法には個人療法にない固有の効果(普遍性の体験、社会的スキルの発達、愛他的体験など)があり、対人関係の問題・孤立感・社会復帰というテーマでは個人療法を上回る効果が示される領域もあります。

同等
個人CBTとの効果比較(うつ病・不安障害)
44%減
MBCTによるうつ病再発リスクの低減(高再発リスク群)
約8%
グループ参加者に重大な心理的損傷が生じたとの研究報告(注意点)
疾患別の効果

疾患別の効果——4つの代表領域

🌧
うつ病・気分障害
グループCBTは個人CBTと同等の効果が複数研究で確認。集団心理教育(特に双極性障害)は再発率低下・入院日数短縮・社会機能改善の強いエビデンスがある。MBCTはうつ病3回以上経験の高再発リスク群で再発リスクを最大44%低下させ、英国NICEガイドラインおよびWHO精神保健ガイダンスで推奨される。
😰
不安障害・社交不安
社交不安障害(SAD)に対するグループCBTは個人CBTと同等以上の効果という研究がある。「グループという社交的な場そのものが社交不安の暴露療法として機能する」ためと解釈される。グループ内で自己開示し他者の反応を受ける体験が「他者から否定される」恐怖に直接アプローチし、普遍性の体験も軽減に強く働く。
🍷
依存症・物質使用障害
アルコール・薬物依存症の治療におけるグループアプローチは長い歴史と豊富なエビデンスを持つ。CBT的集団精神療法のほか12ステッププログラム(AA・NA)に代表される自助グループ的アプローチとの組み合わせも広く行われる。①仲間感覚と普遍性、②愛他的体験(先輩が後輩を助けることで両者が回復)、③社会的孤立の解消、④行動変容支援が有効性の理由。
🧠
統合失調症・重篤な精神疾患
心理教育・SST・支持的集団療法は服薬アドヒアランス向上、再入院率低下、社会機能改善、QOL向上に効果が示されている。急性期よりも安定期の維持・社会復帰支援で重要な役割。精神科デイケアにおけるグループ活動は地域生活維持の中核的治療機能を果たす。
特に有効な疾患

グループ療法が特に有効な疾患・問題

グループ療法は以下の疾患・問題に対して特に有効とされています。

🌧
うつ病・抑うつ状態
孤立感の解消、認知の歪みへの気づき、再発予防スキルの獲得。
😰
不安障害
社交不安障害・パニック障害・全般性不安障害に対し、不安への段階的な暴露、普遍性の体験。
🧠
統合失調症(安定期)
SST、社会復帰支援、再発予防。服薬アドヒアランスの向上にも有効。
双極性障害
心理教育、感情調節スキル、再発のサインの共有。
💔
PTSD・複雑性PTSD
トラウマの安全な開示、普遍性の体験、相互サポート。
🍷
依存症・嗜癖行動
仲間感覚、回復のモデリング、再発防止スキル。
🍽
摂食障害
体型・食行動の歪んだ認知の修正、孤立感の解消。
🎭
境界性パーソナリティ障害
DBTスキルトレーニング、感情調節、対人関係スキル。
🚪
社会的孤立・引きこもり
グループそのものが対人関係の練習の場となる。
🩺
がん患者・慢性疾患患者
病気への適応、QOL向上、死への実存的向き合い。
🕊
悲嘆・喪失
喪失体験の共有、悲嘆プロセスの正常化。
🧩
発達障害(ASD・ADHD)
ソーシャルスキルの獲得、生きづらさの共有。
向かない場合

グループ療法が向かない場合

すべての人がグループ療法に向いているわけではありません。以下の場合は個人療法を優先するか、グループ参加前に個人療法での準備が必要です。

  • 急性期の精神症状急性精神病エピソード、重篤なうつ病(日常生活が送れない状態)、自傷・自殺企図の切迫した危機状態。
  • 重篤な反社会的・破壊的行動グループのほかのメンバーに対して危険を及ぼす可能性がある場合。
  • 深刻な個人情報保護の必要性開示された場合に重大な結果をもたらす情報を持っている場合。
  • グループへの強い抵抗グループという形式そのものへの強い恐怖・拒否がある場合。まず個人療法でグループへの準備を整える。
  • 認知機能の著しい低下グループのプロセスについていくことが困難な場合。
⚠️
急性期は個人療法を優先急性精神病エピソードや自傷・自殺企図の切迫した危機状態では、まず個人療法と必要に応じた医療的介入を受けてください。グループへの参加はその後の段階で検討します。
HOW IT WORKS

実際の流れ・受け方・費用

グループ療法に参加する具体的な流れ、ルール、グループ発達の段階、メリット・デメリット、日本での受け方と費用までを整理します。

参加の流れ

グループ参加の典型的な流れ

グループの種類によって具体的な流れは異なりますが、対人関係グループ(ヤーロム型)の典型的な流れを示します。事前面接からチェックアウトまで、各段階に役割があります。

PHASE 1
事前の個別面接(インテーク/プレグループ面接)
現在の症状・問題・治療目標の確認、グループ療法の形式・目的・ルール(守秘義務など)の説明、グループへの適性の評価、参加への同意と疑問点の解消、グループへの期待・不安の確認。グループへの不安を軽減し導入をスムーズにする重要なステップ。
参加前
PHASE 2
チェックイン
各メンバーが今日の状態・気持ち・今日持ってきたテーマを一言ずつ話す。グループへの入口として機能する。
10〜15分
PHASE 3
グループ作業
テーマを持ち込んだメンバーがより詳しく話し、他のメンバーが反応・共感・フィードバックを返す。治療者はグループプロセスを観察しながら適宜介入する。
50〜80分
PHASE 4
チェックアウト
今日のセッションで感じたこと・気づいたことを一言ずつ話して終わる。次回へのつながりを持てる形で締めくくる。
10〜15分

構造化グループ(CBT・心理教育・SSTなど)では毎回のテーマが予め決まっており、セッションはより教育的・演習的な内容になります。どちらの形式でも「今ここ」での体験と振り返りを大切にします。

ルールと守秘義務

グループのルールと守秘義務

安全なグループを維持するために、参加者が守るべき基本的なルールが設定されます。

  • 守秘義務グループで聞いた個人的な情報はグループの外に漏らさない。グループ療法の最も重要なルールの一つ。
  • 定期的な参加グループの凝集性を維持するため、できる限り毎回参加する。
  • グループ内での誠実な関与自分が感じていること・考えていることを正直に共有することを心がける。
  • グループ外での関係に関するルールメンバー同士がグループ外で親密な関係(友人・恋人など)を持つことはダイナミクスを複雑にするため推奨されない場合がある。
  • 暴力・威圧の禁止身体的・言語的な暴力はグループ内で許容されない。
発達段階

グループの5つの発達段階(タックマン)

グループは時間の経過とともに発達していきます。タックマンのグループ発達モデルでは以下の5段階が示されています。

🌱
形成期(Forming)
参加者が互いを知ろうとする段階。礼儀正しいが表面的な交流が多い。「このグループは安全か」を探る。
混乱期(Storming)
メンバー間の対立や治療者への批判が生じる段階。うまく乗り越えると凝集性が高まる。
📐
規範形成期(Norming)
グループのルールや関係性が安定し、凝集性が生まれる段階。
🌳
遂行期(Performing)
グループが最も生産的に機能する段階。深い自己開示と相互サポートが生まれる。
🌅
終結期(Adjourning)
グループの終わりに向けて、別れと回顧の作業が行われる段階。適切な終結は治療的に非常に重要。
メリット

グループ療法のメリット

前述のヤーロムの治療的因子と重なりますが、より具体的なメリットとして以下が挙げられます。

🤝
「自分だけではない」という安堵
孤独感・恥の感覚・「自分はおかしい」という思い込みが和らぐ。
👀
多様な視点の獲得
一人の治療者ではなく、さまざまな背景・年齢・体験を持つ複数のメンバーからフィードバックを得られる。
🎭
リアルな対人関係の練習
グループは「安全」でありながら「現実に近い」対人関係の場として機能する。
💝
「与える」体験
自分も誰かの役に立てるという体験が自尊心の回復につながる。
🌟
希望のモデル
回復が進んでいるメンバーの姿が「自分も良くなれる」という希望をもたらす。
💰
コスト効率
1回あたりの費用が個人療法と比べて低くなりやすい。
デメリット

デメリット・注意点

グループ療法には多くの利点がある一方で、以下のようなデメリット・注意点もあります。

🎯
個別対応の限界
グループの流れや他メンバーの状況に影響されるため、一人ひとりの状況に完全に合わせることが難しい場合がある。
🔒
プライバシーの制限
他のメンバーが存在するため完全なプライバシーは保てない。守秘義務のルールはあるがそれが完全に守られる保証はない。
🤐
自己開示のしにくさ
グループの初期段階では他のメンバーがいるために個人的な内容を話しにくいと感じる人も多い。
「有害な変化」のリスク
一部研究では参加者の約8%に重大な心理的損傷が生じたという報告もある。グループダイナミクスが悪い方向に作用する場合がある。
📅
スケジュールの制約
特定の曜日・時間に通わなければならず、生活スタイルによっては参加が難しい。
🧩
グループへの適合性
特定のグループの雰囲気・メンバー構成が自分に合わない場合がある。
遅い変化
個人療法と比べ、個人の深い問題に直接アプローチする時間が少なくなりがち。
⚠️
グループ療法参加中に気をつけることグループ参加中に「このグループが自分に合わない」「参加後にいつも気持ちが悪くなる」「メンバーから傷つけられた」と感じたら、治療者に率直に伝えることが大切です。良いグループ療法の治療者はこうしたフィードバックを重要な情報として扱います。グループを一方的に「我慢」し続ける必要はありません。
日本で受けるには

日本でグループ療法を受ける方法

日本でグループ療法を受ける場は、医療機関・カウンセリング機関・公的機関・オンラインなど多岐にわたります。

  • 精神科デイケア精神科病院・精神科診療所が実施する日中の通所型リハビリテーション。グループ活動(作業・SST・心理教育・認知行動療法グループなど)が中心。医療保険が適用され、自立支援医療制度を利用することで自己負担を大幅に軽減できる。
  • 外来グループ療法外来患者を対象に週1〜2回程度実施されるグループ。集団認知行動療法・集団心理教育・対人関係グループなど。診療報酬上の「集団精神療法」として保険適用。
  • 入院グループ療法入院中の患者を対象とした、病棟内でのグループ活動。治療共同体アプローチや、SST・心理教育が含まれる。
  • 大学附属の心理相談室比較的低料金でグループカウンセリングを提供している機関もある。
  • 民間のカウンセリングセンターテーマ別のグループ(発達障害・トラウマ・自己肯定感など)を設けていることがある。費用は機関によって異なる。
  • 精神保健福祉センター各都道府県・政令指定都市に設置。グループ療法や心理教育プログラムを無料または低料金で実施していることがある。
  • オンライングループ療法COVID-19以降、ビデオ会議ツールを使ったオンライングループ療法も増加。対面と同等の効果があることが示されつつある。

探し方として次のルートがあります。

  • かかりつけの精神科・心療内科に相談:主治医に「グループ療法を受けてみたい」と伝えるのが最初のステップ。医療機関内のプログラムへの紹介、または専門機関への紹介を受けられることが多い
  • 精神保健福祉センターに問い合わせ:各都道府県の精神保健福祉センターは、地域の精神科医療・グループ療法に関する情報提供を行っている
  • 日本集団精神療法学会のウェブサイト:集団精神療法の専門家の情報や関連資料が掲載されている
  • 精神科デイケアの見学・体験:多くの精神科デイケアでは見学・体験参加が可能。実際の雰囲気を感じてから参加を決められる
費用と公的支援

費用と公的支援制度

精神科・心療内科でのグループ療法(集団精神療法)は医療保険が適用されます。3割負担の場合、1回あたり数百円〜数千円程度が目安ですが、プログラム内容・時間・施設によって異なります。精神科デイケアは1日(6時間)利用で通常3割負担の場合2,000〜3,000円程度の自己負担となりますが、自立支援医療制度(精神通院医療)を利用することで自己負担が原則1割に軽減されます。

自立支援医療制度(精神通院医療)は、精神疾患のために精神科・心療内科に継続的な通院が必要な場合に医療費の自己負担を原則1割に軽減する制度です。グループ療法を含む精神科デイケア・外来治療に広く適用されます。

  • 対象疾患統合失調症、うつ病・躁うつ病、不安障害、てんかん、薬物・アルコール依存症、PTSDなど、継続的な精神科通院が必要な精神疾患がある方。
  • 申請窓口住んでいる市区町村の福祉担当窓口(障害福祉課など)。
  • 必要なもの主治医の診断書(自立支援医療用の書式)、マイナンバーカードまたは住民票、保険証など。
  • 所得に応じた上限自己負担には月額の上限(2,500円〜20,000円)が設定されており、生活保護受給世帯は自己負担なし。
  • 有効期間1年間(毎年更新が必要)。
デイケアの費用の実例自立支援医療制度を利用した場合、住民税非課税世帯では月額上限2,500〜5,000円で精神科デイケアに参加できます。週5日通所しても月に2,500円という場合もあり、経済的な負担を大幅に抑えながら継続的なグループ療法を受けることができます。申請は最寄りの市区町村窓口または精神保健福祉センターで相談できます。
自助グループとの違い

自助グループとの違い

「グループ療法」と「自助グループ(セルフヘルプグループ)」はしばしば混同されますが明確な違いがあります。

自助グループ
当事者・仲間が中心
リーダーは当事者または回復した仲間。目的は仲間のサポート・情報共有・生きることの支え。費用は無料または実費のみが多い。専門的介入はなくピアサポート中心。AA(断酒会)・NA・うつ病友の会・当事者会など。
グループ療法
専門家がリードする治療
リーダーは訓練を受けた専門家(心理士・医師など)。目的は精神症状の改善・心理的変化・スキル習得。医療費・カウンセリング費がかかる。治療者が積極的に介入し、一定の構造・ルールに基づく。集団認知行動療法・SST・デイケアグループなど。
💡
自助グループは専門的な治療ではありませんが、「同じ体験を持つ仲間とつながる」点でグループ療法の「普遍性」「愛他性」「希望をもたらすこと」などの因子を自然に体験できる場です。グループ療法と自助グループを並行して活用することで、より包括的な回復支援が可能になります。
MAKE IT WORK

参加を最大限に活かすために

グループ療法の成果は参加者自身の関わり方で大きく変わります。最初の不安への向き合い方、参加中の心構え、そしてよくある疑問への答えをまとめます。

参加前の不安

最初の参加前の不安への対処

グループ療法への参加前には「知らない人と話すのが怖い」「自分のことを話したくない」「グループに馴染めなかったらどうしよう」という不安を感じる人がほとんどです。この不安は自然なものであり、グループに参加しているメンバーの多くも同じ不安を抱えて最初のセッションに来ています。

最初のセッションで深い自己開示を求められることはなく、まず「聞く側」として参加することも十分な関与です。「まず1回参加してみる」という小さな一歩が、グループ療法の第一歩です。事前の個別面接で不安を詳しく話しておくことも、参加のハードルを下げる有効な方法です。

成果を上げる心構え

グループ参加で成果を上げるための心構え

最初から完璧に関与できる人はいません。しかし以下の姿勢でグループに臨むことが、より深い変化につながります。

  • 定期的・継続的に参加する:グループの凝集性と信頼関係はセッションを重ねることで育まれる。「つらいから休む」という回避的な欠席はグループ参加を阻む
  • 観察者にとどまらない:最初は難しくても、できる範囲で自分のことを話し、他のメンバーに反応する
  • 「今ここ」の体験に注目する:グループの中でリアルタイムに感じること(「あの人の話を聞いてなぜか怒りを感じた」「この人に近づきたい」など)を大切にする
  • フィードバックを大切にする:他のメンバーや治療者からのフィードバックは、自分への「鏡」として受け取る。防衛的にならずにまず受け取ってみる
  • グループで感じたことを持ち帰る:セッション後に感じたこと・気づいたことを日記などに書き留め、日常生活での変化に生かす
「続ける」ことが最大の力グループの治療力は時間とともに発酵します。すぐに変化を求めず、自分のペースで継続することを大切にしてください。
FAQ

よくある質問

Q. グループ療法は個人カウンセリングより効果が低いですか?

A. 多くの研究では、グループ療法は個人療法と同等の効果があることが示されています。うつ病・不安障害・依存症などでは個人CBTとグループCBTの効果に有意差がないというメタアナリシス結果があります。むしろ対人関係の問題・孤立感・社会復帰の支援という観点ではグループ療法固有の治療力が発揮されます。どちらが優れているかというよりも「その人の問題にどちらがより適しているか」で選ぶべきです。

Q. 話すのが苦手でも参加できますか?

A. はい、参加できます。グループ療法では最初から活発に話すことが期待されているわけではありません。「聞くだけ」の参加も初期段階では重要な関与です。他のメンバーの話を聞き、うなずいたり「わかる」と思ったりする体験も、グループの一員としての貴重な参加です。多くの参加者が「最初は話せなかったが少しずつ話せるようになった」と報告しています。

Q. 他のメンバーに自分のことが知られるのが怖いです。

A. グループ療法では守秘義務のルールが設定されており、参加者はグループで聞いた情報をグループ外に漏らさないことに合意します。ただしこれは「完全なプライバシー」の保証ではありません。どこまで自己開示するかは各参加者自身がコントロールできます。「今日はここまで話す」「この部分はまだ話せない」という判断は常に自分にあります。信頼できると感じてから少しずつ開示していくプロセスが自然な形です。

Q. 精神科に通院していなくてもグループ療法を受けられますか?

A. 医療機関のグループ療法(精神科デイケア・集団精神療法)は医師の判断のもとで行われるため、精神科・心療内科への通院が必要です。一方、民間のカウンセリング機関・精神保健福祉センター・大学附属相談室などでは医療機関への通院を前提としないグループプログラムが実施されている場合があります。精神保健福祉センターに問い合わせると地域の情報を教えてもらえます。

Q. グループ療法にどのくらい通えばよいですか?

A. グループの種類によって大きく異なります。集団認知行動療法などの構造化プログラムでは8〜16回(2〜4ヶ月)程度が一つの目安です。対人関係グループ療法やデイケアでは数ヶ月〜1年以上の継続が推奨されることもあります。「何回通えばよいか」よりも「今の自分にどのような変化が必要か」という治療目標をもとに、治療者と相談しながら期間を決めていくのが最も適切です。

Q. グループ療法の治療者に必要な資格・訓練は?

A. グループ療法は高度な専門性を必要とします。日本では、医師(精神科)・公認心理師・臨床心理士などの資格を持ち、グループ療法に特化した訓練・スーパービジョンを受けた専門家が担当します。一般社団法人日本集団精神療法学会では集団精神療法士の資格認定を行っています。グループ療法を受ける際は治療者の資格・訓練歴を確認することも大切です。

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自立支援医療制度(精神通院医療)を利用すると、精神科・心療内科でのグループ療法・デイケアの自己負担が原則1割に軽減されます。申請は市区町村の福祉担当窓口または精神保健福祉センターへ。このページの情報は、医師による診断や治療に代わるものではありません。症状が気になる場合は、心療内科・精神科への受診をご検討ください。

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