メンタルヘルス用語辞典 · 急性ストレス障害

急性ストレス障害(ASD)とは?
症状・原因・治療法をわかりやすく解説

急性ストレス障害は、トラウマ体験の直後に発症する一時的な精神的反応です。多くは自然に回復しますが、適切な対応がPTSDへの移行を防ぎます。症状から治療法、セルフケア、周囲のサポートまで詳しく解説します。

ABOUT ACUTE STRESS DISORDER

急性ストレス障害(ASD)とは

急性ストレス障害(ASD)は、トラウマ体験の直後(3日〜1か月以内)に発症する一時的な精神的反応です。多くの場合は自然に回復しますが、適切な対応がPTSDへの移行を防ぎます。

定義

急性ストレス障害の定義——トラウマ直後の心の反応

急性ストレス障害(Acute Stress Disorder / ASD)は、トラウマ的な出来事を体験、目撃、または直面した後、3日から1か月以内に発症する精神疾患です。DSM-5では「心的外傷およびストレス因関連障害群」に分類されています。再体験(フラッシュバック)、解離症状、回避、覚醒亢進、ネガティブな気分の5つの症状カテゴリーから9つ以上の症状が認められる場合に診断されます。多くの場合は時間の経過とともに自然に回復しますが、約半数がPTSDに移行するとされるため、早期の適切な介入が重要です。

正常なストレス反応
トラウマ後の自然な反応
つらい出来事の後、一時的に不眠、不安、集中力低下が生じるのは正常です。通常は数日で徐々に回復します。
急性ストレス障害
臨床的に意味のある症状
症状が3日以上持続し、日常生活に著しい支障をきたす。解離症状(現実感の喪失)が顕著。適切な介入がPTSD予防に重要。
あなたの反応は「異常な出来事への正常な反応」です恐ろしい体験の後にフラッシュバックや不安、不眠が起こるのは、脳が危険に対処しようとする正常な反応です。多くの場合は時間とともに回復しますが、症状が続く場合は専門家に相談してください。
PTSDとの違い

ASDとPTSDの違い——発症時期と期間で区別する

ASDとPTSDは症状が類似していますが、発症時期と持続期間によって区別されます。ASDは早期介入の重要な機会であり、ここでの適切な対応がPTSDへの慢性化を防ぐ鍵となります。

急性ストレス障害(ASD)
トラウマ後3日〜1か月
発症時期:トラウマ後3日〜1か月。
持続期間:3日〜1か月。
解離症状:顕著。
予後:多くが自然回復。
早期介入の意義:PTSD予防に重要。
PTSD(心的外傷後ストレス障害)
トラウマ後1か月以降
発症時期:トラウマ後1か月以降。
持続期間:1か月以上。
解離症状:ある場合もない場合も。
予後:慢性化しやすい。
早期介入の意義:症状の慢性化予防。
💡
ASDの症状が1か月以上持続する場合、PTSDの診断に切り替わります。早期の介入がPTSDへの移行を防ぐ鍵です。
有病率

急性ストレス障害の発症率

ASDは決して稀な疾患ではありません。トラウマの種類によって発症率は大きく異なりますが、誰にでも起こりうる反応です。

6〜33%
トラウマ体験者のうち約6〜33%がASDを発症(トラウマの種類により異なる)
約50%
ASD患者のうち約50%がPTSDに移行するとされる
自然回復
適切な対応により多くの方が自然に回復する
受診の目安

専門家に相談すべきサイン

以下に当てはまるサインが見られたら、専門家への相談を検討してください。早めの受診がPTSDへの移行を防ぎます。

  • トラウマ体験から3日以上経っても症状が改善しない
  • フラッシュバックや悪夢が繰り返し起こる
  • 眠れない日が続いている
  • 現実感がなく、夢の中にいるように感じる
  • トラウマを思い出させる場所や状況を完全に避けている
  • 仕事や日常生活に支障が出ている
  • アルコールや薬物で症状を紛らわそうとしている
  • !「死にたい」「消えてしまいたい」と感じることがある
SYMPTOMS

急性ストレス障害の症状

ASDの症状は5つのカテゴリーに分類されます。解離症状が特に顕著なのがASDの特徴です。こころと体の両面に症状が現れます。

主要症状と身体症状

こころと体に現れる症状

ASDでは、トラウマ体験の記憶・解離・回避・過覚醒・気分の変化という5つの主要症状とともに、自律神経の乱れによる身体症状が高頻度で現れます。

🔥
侵入症状(再体験)
トラウマ体験の記憶が突然鮮明によみがえります(フラッシュバック)。悪夢として現れることもあります。トリガー(きっかけ)に触れると、あたかも再びその場にいるかのような感覚に襲われ、激しい苦痛や身体反応(動悸、発汗、震え)を伴います。何の前触れもなく突然起こることもあり、本人にとって非常に恐ろしい体験です。
😶
解離症状
急性ストレス障害で特に顕著な症状です。現実感の喪失(周囲が夢の中のように感じる:離人感/現実感消失)、感情の麻痺(何も感じない状態)、体験の一部についての記憶の欠落(解離性健忘)、自分が自分でないように感じる感覚などが含まれます。これらは極度のストレスから心を守るための防御反応ですが、日常生活に大きな支障をきたします。
🚫
回避症状
トラウマを思い出させるあらゆるもの——場所、人、会話、活動、物、状況——を避けるようになります。交通事故の後に車に乗れなくなる、暴行を受けた場所に近づけなくなるなどが典型的です。トラウマについて考えること自体を避け、話題にすることを拒む場合もあります。回避は短期的には不安を下げますが、長期的には回復を妨げます。
覚醒症状
常に危険に備えた警戒状態(過覚醒)が続きます。不眠(特に入眠困難)、集中力の低下、イライラ・怒りの爆発、過度な驚愕反応(小さな音にびくっとする)、常に周囲を見張る行動が見られます。交感神経が過剰に活性化した状態が続き、身体が「休息モード」に切り替わりません。
😰
ネガティブな気分
持続的に陽性の感情(幸福感、満足感、愛情)を経験できなくなります。世界が色を失ったように感じ、以前楽しめていたことへの興味が消えます。悲しみや怒りすら感じられない「感情の空白」状態になることもあります。
これらの症状は「異常な出来事への正常な反応」です。脳と身体が危険から自分を守ろうとしているのです。多くの場合は時間とともに回復します。
CAUSES & RISK FACTORS

急性ストレス障害の原因とリスク要因

ASDは生命の危機を感じるようなトラウマ体験の直後に発症します。原因は大きく4つのカテゴリーに分けられ、回復を妨げる悪化因子も知られています。

4つの原因

ASDを引き起こす4つのトラウマ類型

ASDの原因となるトラウマ体験は、事故・災害、暴力・犯罪、医療関連、突然の喪失の4類型に整理できます。

🚗事故・自然災害

交通事故、労災事故、火災、地震、津波、台風、洪水などの突発的な出来事が原因となります。自分自身が被害に遭った場合だけでなく、他者の深刻な事故を目撃した場合や、家族が巻き込まれたことを知った場合にも発症しうります。救急隊員、消防士、警察官などの支援者も、繰り返しの曝露により発症するリスクがあります。

  • 交通事故(加害者・被害者とも)
  • 自然災害(地震、津波、洪水等)
  • 火災・爆発
  • 深刻な事故の目撃
悪化の誘因

回復を妨げる要因——悪化リスク

トラウマ後の回復過程で、以下の要因は症状の悪化やPTSDへの移行を促進します。意識的に距離を取ることが回復を助けます。

トラウマを想起させるトリガー
95%
睡眠不足
85%
孤立・サポートの欠如
80%
メディアでの類似事件の報道
70%
法的手続き・保険手続き
65%
周囲の無理解
60%
💡
※ リスクの相対的な大きさを示すイメージ図です。とくに睡眠不足と孤立はコントロール可能な要因のため、優先的に対処することが重要です。
TREATMENT

急性ストレス障害の治療法

ASDの多くは適切な対応で自然に回復します。早期の介入がPTSDへの移行を防ぎます。心理的介入が中心で、薬物療法は補助的に用いられます。

心理的介入

心理的介入——回復を支える4つの柱

ASDの治療の中核は心理的介入です。エビデンスのある4つの方法を組み合わせて、自然回復を促進し、PTSDへの移行を予防します。

トラウマ焦点型認知行動療法(TF-CBT)最もエビデンスが強い

ASDの治療およびPTSDへの移行予防に最も強いエビデンスがある治療法です。トラウマ体験についての認知(「自分が悪い」「世界は危険だ」等)を検討し修正する認知的要素と、トラウマ関連の刺激に段階的に向き合う曝露的要素を組み合わせます。通常5〜6回の短期セッションで行われ、発症後できるだけ早期(数週間以内)に開始することが推奨されます。PTSDへの移行率を有意に低下させることが実証されています。

心理教育回復の土台

トラウマ反応が「異常な状況への正常な反応」であることを理解する心理教育は、回復の土台です。「あなたの反応は異常ではない」「多くの人が同じ反応を示す」「時間とともに多くの場合は自然に回復する」という正確な情報を提供します。症状の意味を理解することで不安が軽減し、回復への希望が生まれます。家族への心理教育も重要です。

リラクゼーション訓練過覚醒の緩和

過覚醒状態を和らげるための技法を学びます。腹式呼吸、漸進的筋弛緩法、グラウンディング技法(5-4-3-2-1法等)、マインドフルネスなどが含まれます。これらの技法は自律神経のバランスを回復し、「安全モード」への切り替えを助けます。特にグラウンディング技法はフラッシュバック時に現在に戻るための即効性のあるスキルです。

サイコロジカル・ファーストエイド(PFA)トラウマ直後の支援

トラウマ直後(発症後数日以内)に提供される心理的な応急処置です。安全の確保、基本的なニーズの充足、情緒的な安定化、情報提供、社会的サポートへのつなぎなどを行います。「傾聴」「寄り添い」「実際的な支援」が中心であり、トラウマの詳細を聞き出すこと(デブリーフィング)は推奨されていません。誰もが提供できるスキルです。

薬物療法

薬物療法——症状管理の補助として

薬物療法症状管理の補助

ASDに対する薬物療法のエビデンスは限定的ですが、症状の管理に有用な場合があります。不眠には短期間のベンゾジアゼピン系薬物や非ベンゾジアゼピン系睡眠薬が使用されることがあります。ただし、ベンゾジアゼピンのPTSD予防効果は証明されておらず、長期使用は推奨されません。プロプラノロール(β遮断薬)のトラウマ直後投与がPTSD予防に有効かどうかの研究も進められていますが、まだ確定的ではありません。

治療の注意点

治療における重要な注意点

⚠️
心理的デブリーフィングは推奨されないトラウマ直後に体験を詳細に語らせる「心理的デブリーフィング」は、以前は標準的に行われていましたが、現在の研究ではPTSD予防に効果がないばかりか、むしろ悪影響を及ぼす可能性があるとされています。「話したくなければ話さなくていい」が現代のスタンダードです。
多くの人はトラウマ体験の後、自然に回復します。焦る必要はありません。ただし、症状が1か月以上続く場合、あるいは悪化する場合は、早めに専門家に相談してください。
RECOVERY PROCESS

回復のプロセスと経過

トラウマ体験後の回復は人によって異なります。回復の軌跡、子どもへの影響、職場復帰のステップを理解することが、焦らず回復するための助けになります。

回復の軌跡

5つの回復パターン——あなたはどのタイプ?

トラウマ研究の知見によると、トラウマを体験した人の回復は大きく5つのパターンに分類されます。最も多いのは「回復力型」で、約65%の方が比較的早期に日常生活を取り戻します。これは「弱い」「強い」ではなく、個人の資源(ソーシャルサポート、心理的柔軟性、トラウマ歴など)の違いによるものです。どのパターンでも、適切な支援を受けることで回復が促進されます。

🛡️
回復力(レジリエント)型約65%
トラウマ後も症状が最小限にとどまり、日常生活を概ね維持できるタイプ。事前の社会的サポートや心理的資源が豊富な場合に多く見られます。
🌱
回復(リカバリー)型約20%
初期に中等度〜重篤な症状が現れますが、時間とともに徐々に回復するタイプ。適切な介入を受けることで回復が促進されます。多くのASD患者がこのタイプに当てはまります。
⚠️
慢性化型約8%
症状が改善せず、中等度〜重篤な状態が継続するタイプ。PTSDへの移行リスクが最も高く、専門的な治療が不可欠です。
📈
遅発型約4%
初期には症状が軽微でも、数週間〜数か月後に症状が顕在化するタイプ。初期の「大丈夫そう」という印象に惑わされず、経過を観察することが重要です。
🔄
再発・寛解型約3%
症状が周期的に悪化・軽快を繰り返すタイプ。記念日反応(トラウマの周年)や生活上のストレスが引き金となることが多いです。
「遅い回復」は失敗ではありません回復のスピードは人それぞれです。周囲の人が早く回復しているように見えても、それはあなたとトラウマの性質が異なるためです。「なぜ自分だけ」と自分を責めず、今の自分のペースを尊重してください。
子どもへの影響

子どものトラウマ反応——年齢別サイン

子どもはトラウマ体験をうまく言語化できないため、行動の変化として症状が現れることが多いです。年齢によって反応の仕方が異なるため、年齢に応じた理解とサポートが重要です。「いつもと違う」と感じたら、早めに専門家に相談することを検討してください。

就学前(〜6歳)
  • 遊びの中でトラウマを再現する(外傷遊び)
  • 退行現象(おねしょ、指しゃぶりの再出現)
  • 分離不安の強化(親から離れられない)
  • 悪夢・夜泣きの増加
  • 新しいことへの強い恐怖
学童期(7〜12歳)
  • 学業成績の急激な低下
  • 友人関係の変化(孤立や攻撃性)
  • 腹痛・頭痛など身体症状の訴え
  • 「死」への関心や質問の増加
  • 集中力の著しい低下
思春期・青年期(13〜18歳)
  • 自傷行為や危険な行動
  • アルコール・薬物の試用
  • 学校の欠席・不登校
  • 友人や家族からの引きこもり
  • 希死念慮・自殺念慮
💡
子どものトラウマ反応は、大人とは異なる形で現れます。「外傷遊び」(トラウマを遊びで再現する)は子ども特有の反応で、記憶を処理しようとする自然なプロセスです。無理に止めず、安全に見守ることが大切です。
職場復帰

職場復帰のための4ステップ

ASD後の職場復帰は段階的に進めることが重要です。無理に早期復帰すると症状が悪化するリスクがありますが、長期の休業もまた回復を遅らせる場合があります。主治医と相談しながら、以下のステップを参考に進めてください。

STEP 1
まず休む——回復最優先期(トラウマ後1〜2週間)
トラウマ直後は「安全・休息・栄養・睡眠」を最優先にします。職場への連絡は家族や信頼できる人に任せ、自分の回復に専念してください。「早く仕事に戻らなければ」という焦りは回復を遅らせます。
トラウマ後1〜2週間
STEP 2
医療機関への受診——症状評価と治療開始期
症状が3日以上続く場合は心療内科・精神科を受診します。主治医に職場の状況を伝え、診断書が必要かどうか相談します。休職が必要な場合は、傷病手当金などの制度を活用できます。
1〜4週間
STEP 3
段階的な社会復帰——リハビリ期
完全回復を待ってからではなく、「70〜80%の状態」で段階的に復帰するのが一般的です。最初は短時間勤務、在宅ワークなど負担の少ない形から始め、徐々に通常業務に戻します。リワークプログラムを活用することも有効です。
症状安定後
STEP 4
職場への開示と配慮のお願い——環境調整期
職場に対し、トラウマの詳細を話す必要はありませんが、配慮が必要な事項(急な騒音、特定の業務の一時的な免除など)は伝えることで働きやすさが向上します。産業医・EAPサービスを活用することも検討してください。
復帰移行期
傷病手当金と自立支援医療制度の活用を休職中は健康保険の傷病手当金(給与のおよそ3分の2)を受給できる場合があります。また、通院医療費は自立支援医療制度(精神通院医療)を申請することで1割に軽減されます。まずは主治医や精神保健福祉センターに相談してください。
GROUNDING & COPING SKILLS

グラウンディング技法と対処スキル

フラッシュバックや強い不安が起きたとき、「今ここ」に意識を戻すためのスキルを身につけることで、症状をコントロールしやすくなります。

5-4-3-2-1法

グラウンディング技法:5-4-3-2-1法

グラウンディング(grounding)とは、フラッシュバックや解離症状が起きたときに「今、現実にいる」ことを感覚で確認する技法です。5つの感覚を使う「5-4-3-2-1法」は、最も広く使われるグラウンディング技法の一つで、特別な道具や場所を必要とせず、どこでも実践できます。

STEP 5
👁️ 視覚:今、目に見えるもの5つを声に出して言う
例:「机、窓、カーテン、植物、照明」
STEP 4
🤚 触覚:今、体が触れているもの4つを感じる
例:「椅子の背もたれ、足の裏の床、服の感触、手のひら」
STEP 3
👂 聴覚:今、聞こえる音3つに意識を向ける
例:「外の車の音、エアコンの音、自分の呼吸の音」
STEP 2
👃 嗅覚:今、感じられる匂い2つを探す
例:「コーヒーの香り、外の空気の匂い」
STEP 1
👅 味覚:今、口の中に感じる味1つを意識する
例:「歯磨き後のミント味」
ゆっくりと、声に出して行うのがポイントですフラッシュバック中は頭の中で行おうとしても難しいことがあります。声に出すこと、ゆっくり丁寧に感覚に注意を向けることが「今ここに戻る」助けになります。最初はフラッシュバックが起きていない落ち着いた状態で練習しておくと、いざという時に使いやすくなります。
その他の対処スキル

日常で使えるその他の対処スキル

グラウンディングの他にも、ASDの症状に対処するための科学的根拠のある技法があります。これらを組み合わせて使うことで、より効果的に症状を管理できます。

🌬
4-7-8呼吸法
4秒で鼻から吸い、7秒息を止め、8秒かけて口からゆっくり吐き出す呼吸法。副交感神経を活性化させ、過覚醒状態を鎮静化します。1日2〜3回、各4サイクル行うのが目安です。
💪
漸進的筋弛緩法
体の各筋肉群を順番に緊張させ、力を抜くことを繰り返す技法。筋肉の緊張を意識的にコントロールすることで身体の「戦闘態勢」を解除します。就寝前に行うと睡眠の質が改善します。
🧊
コールドウォーター法
強い感情的苦痛やフラッシュバック時に、冷水で顔を洗う・冷たいものを握るなど、冷たい刺激を使う方法。迷走神経を刺激して心拍数を下げ、感情的な「ブレーキ」をかける効果があります。
📓
感情日記法
毎日5〜10分、今日感じた感情と身体の状態を短く記録する方法。症状のパターンやトリガーを把握でき、治療者との情報共有にも役立ちます。スマートフォンのメモアプリでも構いません。
DAILY LIFE

日常生活でできること

トラウマ直後の適切なセルフケアが回復を支えます。安全・睡眠・つながりを軸に、無理のないルーティンを整えましょう。

セルフケア

日常で取り入れたい8つのセルフケア

🏠
安全な環境を確保する
物理的にも心理的にも安全だと感じられる環境を確保しましょう。トラウマの現場から離れ、信頼できる人のそばにいることが大切です。
🌬
呼吸法を練習する
過覚醒やフラッシュバック時に、4-7-8呼吸法(4秒吸う、7秒止める、8秒で吐く)や腹式呼吸が役立ちます。呼吸に集中することで「今、ここ」に意識を戻すことができます。
🌙
睡眠を最優先にする
規則正しい睡眠時間を確保しましょう。寝室を安全で快適な環境にし、就寝前のカフェインやアルコールを避けます。悪夢が頻繁な場合は主治医に相談してください。
🤝
サポートを受け入れる
一人で抱え込まず、家族や友人のサポートを受け入れましょう。「話したくない時は話さなくていい」ことを周囲にも伝え、自分のペースを守ってください。
📺
メディアへの曝露を制限する
類似したトラウマ的な出来事のニュース報道を繰り返し見ることは回復を妨げます。情報は必要最小限にとどめ、反復的な報道視聴を避けましょう。
📅
日常のルーティンを維持する
可能な範囲で日常のルーティン(起床時間、食事、散歩等)を維持しましょう。予測可能な生活リズムが安全感を高めます。無理に「普通の生活」に戻る必要はありません。
🚶
軽い運動を取り入れる
散歩やストレッチなどの軽い運動は、過覚醒を和らげ、睡眠の質を改善します。激しい運動は交感神経を活性化させるため、穏やかな運動から始めましょう。
📝
症状の経過を記録する
日々の症状の強さ、トリガー、睡眠状況などを簡単に記録しましょう。症状が改善しているか、悪化しているかの判断材料になり、受診時にも役立ちます。
まずは「安全を確保する」「睡眠を取る」「信頼できる人のそばにいる」——この3つを最優先にしてください。
関連する用語
PTSD複雑性PTSD解離性障害パニック障害トラウマインフォームドケアグラウンディング
FOR FAMILY & FRIENDS

周囲の人にできること

トラウマ直後の適切なサポートが、回復を助けPTSDへの移行を防ぎます。「そばにいるだけ」で十分な支援になります。

対応のポイント

してほしいこと・避けてほしいこと

トラウマを抱える人への接し方には、回復を助けるものと、かえって状態を悪化させるものがあります。違いを意識してみましょう。

✅ してほしいこと
  • トラウマ反応が「異常な状況への正常な反応」であることを理解する
  • そばにいること、安全を提供することが最大のサポートであることを知る
  • 「話したい時に聴くよ」と伝え、無理に話させない
  • 基本的なニーズ(食事、睡眠、安全な居場所)を支える
  • 「あなたのせいではない」「時間がかかっても大丈夫」と伝える
  • 症状が4週間以上続く場合や悪化する場合は専門家への相談を勧める
  • 自分自身のケアも大切にする
❌ 避けてほしいこと
  • 「早く忘れなさい」「もう終わったことでしょ」と言う
  • トラウマ体験の詳細を無理に聞き出す(デブリーフィングは推奨されない)
  • 「あなたは強い人だから大丈夫」と安易に励ます
  • 飲酒や薬物で対処することを勧める・容認する
  • 回復のスピードを急かす
  • 本人の回避行動を批判する(回避は一時的な防御反応)
「そばにいるだけ」で十分ですトラウマ直後の人に必要なのは、アドバイスではなく「安全な存在」です。何も特別なことをしなくても、そばにいて、基本的なニーズを支えるだけで十分な支援になります。
SUPPORT & INSTITUTIONS

相談できる場所・支援機関

一人で抱え込まず、専門の相談機関を活用してください。日本には様々な支援窓口があり、医療費を軽減する制度も整っています。

支援機関

急性ストレス障害で利用できる相談窓口

  • 心療内科・精神科ASDの診断・治療の中心となる医療機関。投薬とカウンセリングの両方を受けられます。初診時に「トラウマ体験の後から症状が出た」と伝えてください。
  • 精神保健福祉センター各都道府県に設置された公的な相談機関。無料で精神科ソーシャルワーカーや心理士に相談できます。医療機関への紹介や福祉サービスの案内も行っています。
  • いのちの電話24時間無料で話を聞いてくれる電話相談窓口。特に夜間や休日に「誰かと話したい」と感じるときに利用できます。フリーダイヤル:0120-783-556
  • よりそいホットライン24時間365日、どんな悩みでも受け付ける電話・テキスト相談窓口。性暴力被害・自殺念慮など緊急性の高い相談にも対応。フリーダイヤル:0120-279-338
  • ワンストップ支援センター(性暴力被害)性暴力被害を受けた方の医療・法律・相談を一か所で受けられます。被害直後から相談可能で、証拠保全にも対応しています。
  • 犯罪被害者支援センター犯罪被害を受けた方とその家族を支援する民間団体。法律・医療・経済など多面的なサポートを提供しています。
精神保健福祉センターは「入口」として最適です精神保健福祉センターは、どの精神科を受診すればいいかわからない場合や、受診前に相談したい場合の入口として最適です。無料で専門家に相談でき、地域の医療機関への紹介も受けられます。
医療費支援

自立支援医療制度——通院医療費を1割に

急性ストレス障害の治療のために精神科・心療内科に通院する場合、自立支援医療制度(精神通院医療)を利用することで、医療費の自己負担が通常の3割から1割に軽減されます。収入に応じた月額の自己負担上限額も設定されており、医療費の不安なく治療を続けることができます。

  • 対象継続的に通院治療が必要な精神疾患(急性ストレス障害・PTSDを含む)のある方
  • 軽減内容自己負担が原則1割に軽減(通常は3割)
  • 月額上限収入に応じた月額負担上限額が設定されます
  • 申請窓口市区町村の障害福祉窓口、または精神保健福祉センター
  • 必要書類申請書、主治医の診断書、健康保険証、収入確認書類など
  • 有効期間1年間(更新可能)
💡
「精神疾患の診断書が必要」と聞くと敷居が高く感じるかもしれませんが、主治医が申請のサポートをしてくれます。まずは通院している医療機関のスタッフに「自立支援医療を申請したい」と伝えてみましょう。
FAQ

よくある質問

急性ストレス障害について多く寄せられる疑問にお答えします。

よくある質問

急性ストレス障害についてのQ&A

Q. 急性ストレス障害は自然に治りますか?

A. 多くの場合(約70%)、適切な休息とサポートがあれば1か月以内に自然に回復します。ただし、約30%の方は回復が遷延し、約半数がPTSDに移行するリスクがあります。症状が改善しない場合、悪化する場合は専門家への受診をためらわないでください。

Q. 病院に行くべきタイミングはいつですか?

A. トラウマ体験から3日以上経ってもフラッシュバック・悪夢・解離症状・強い不安が続く場合は受診を検討してください。「死にたい」「消えたい」という気持ちがある場合は今すぐ相談してください。心療内科・精神科・かかりつけ医のいずれでも初期相談できます。

Q. 仕事を続けながら治療できますか?

A. 症状の重さによります。軽〜中等度であれば、通院治療と業務の両立は可能な場合があります。ただし、トラウマに関連した業務(例:交通事故後に運転が必要な仕事)は一時的に免除してもらうことが望ましいです。主治医と相談しながら無理のない範囲で対応してください。

Q. 子どもにASDの症状が出たらどうすれば?

A. 子どもはトラウマ反応を言葉で表現できないことが多く、行動の変化(退行、攻撃性、不登校など)として現れます。まず安全で安心できる環境を作り、「あなたのせいではない」「守るよ」と伝えてください。症状が2週間以上続く場合は、児童精神科・小児科・スクールカウンセラーに相談しましょう。

Q. アルコールで気を紛らわせてもいいですか?

A. 飲酒はトラウマ症状を一時的に和らげる「自己治療」として使われることがありますが、根本的な治療にはならず、アルコール依存症のリスクを高めます。また、睡眠の質を低下させ、感情の調整を困難にします。代替として、腹式呼吸・グラウンディング技法・信頼できる人との会話をお勧めします。

Q. フラッシュバックが起きたらどうすればよいですか?

A. フラッシュバックが起きたら「今、ここにいる」ことを確認するグラウンディング技法が有効です。5-4-3-2-1法(見えるもの5つ、触れるもの4つ、聞こえるもの3つ、匂い2つ、味1つを数える)を試してください。深呼吸と足の裏を床につける感覚に意識を向けることも助けになります。

Q. PTSD と急性ストレス障害はどう違うのですか?

A. 主な違いは発症時期と期間です。ASDはトラウマ後3日〜1か月以内に発症し、1か月未満続きます。PTSDはトラウマ後1か月以上経過してからも症状が続く場合に診断されます。ASDの段階で適切な治療を受けることが、PTSDへの移行を防ぐうえで最も重要です。

Q. 医療費が心配です。何か支援制度はありますか?

A. 自立支援医療制度(精神通院医療)を利用すると、精神科・心療内科の通院医療費の自己負担が原則1割に軽減されます(通常3割)。収入に応じた月額上限額も設定されています。申請は市区町村の障害福祉窓口または精神保健福祉センターで受け付けています。また、休職中は傷病手当金(給与の3分の2程度)の支給を受けられる場合があります。

疑問や不安は、専門家に直接相談できますここに答えのない疑問や、より詳しく知りたいことがあれば、精神保健福祉センター(無料)や受診している医療機関に相談してください。「こんなことを聞いていいのか」という遠慮は不要です。

一人で抱え込まないで。
相談してみませんか。

トラウマ後のつらさは、あなただけの問題ではありません。どうかあなたの大切な悩みをココトモに聞かせていただきたいです。

今すぐ話したい方へ——相談窓口
ココトモ相談するチャット相談・無料
いのちの電話0120-783-55624時間・無料
よりそいホットライン0120-279-33824時間・無料

このページの情報は、医師による診断や治療に代わるものではありません。症状が気になる場合は、心療内科・精神科への受診をご検討ください。

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