メンタルヘルス用語辞典 · ADHD

ADHD(注意欠如・多動症)とは?
症状・原因・治療法をわかりやすく解説

ADHDは「不注意」「多動性」「衝動性」を特徴とする脳の神経発達の特性です。子どもだけでなく大人にも多く、適切な治療と環境調整で本来の力を発揮できます。3つのタイプの違いから治療薬・日常のライフハック・二次障害の予防まで、必要な情報をすべてまとめました。

ABOUT ADHD

ADHD(注意欠如・多動症)とは、どんな障害か

ADHDは脳の神経発達の偏りにより「不注意」「多動性」「衝動性」が日常生活に支障をきたすレベルで現れる発達障害です。怠けや性格の問題ではなく、脳の機能的な特性であることが科学的に明らかになっています。

定義

ADHDの定義——「困りごと」が生活に支障をきたしている状態

ADHD(Attention Deficit Hyperactivity Disorder:注意欠如・多動症)は、脳の前頭前皮質を中心とした神経発達の偏りにより、年齢に不相応な「不注意」「多動性」「衝動性」が持続的に認められ、学校・職場・家庭など複数の場面で日常生活に支障をきたしている状態です。DSM-5では「神経発達症群」に分類されています。

誰にでもある「うっかり」
一時的・状況的な不注意
疲れている時や興味がない時に注意が散漫になる。十分な休息を取れば改善し、生活全体に大きな支障は出ない。自分でコントロールできる範囲。
ADHD
脳の機能に起因する持続的な困難
「わかっているのにできない」が慢性的に続く。本人の努力だけでは解決できず、学業・仕事・人間関係など複数の場面で困難が生じる。適切な支援と治療が必要。
🧠

なぜ「努力不足」ではないのか

ADHDは脳の前頭前皮質の機能低下と、ドーパミン・ノルアドレナリンという神経伝達物質の不足が原因です。これは意志の力でコントロールできるものではなく、視力が悪い人に「もっとよく見ろ」と言うのと同じくらい的外れな指摘です。適切な治療と環境調整で、本来の力を発揮できるようになります。

ADHDは「障害」であると同時に「特性」でもあるADHDの脳には困難だけでなく、強みもあります。創造性、エネルギッシュさ、過集中による驚異的な集中力、危機対応の強さなど。適切な環境と支援があれば、これらの特性を活かすことが可能です。
有病率

ADHDは、珍しい障害ではない

ADHDは最も一般的な神経発達症のひとつです。データで見ると、その身近さがわかります。

5〜10%
子ども(学齢期)のADHD有病率。クラスに1〜3人いる計算
2.5%
成人のADHD有病率。日本では約300万人と推定される
80〜90%
成人ADHDの未診断率。大多数が支援なく生活している
ADHDの有病率には男女差があります。子どもでは男子が2〜3倍多いですが、これは多動型が男子に多く目立ちやすいため。不注意型の多い女子は見逃されやすく、実際の男女差はもっと小さいと考えられています。
よくある誤解

ADHDにまつわるよくある誤解

ADHDには多くの誤解が存在し、当事者を苦しめています。正しい理解が、適切な支援の第一歩です。

❌ 「ADHDは子どもの障害で、大人になれば治る」
✅ 子ども時代のADHDの60〜70%は成人後も持続します。症状の現れ方は変化しますが、なくなるわけではありません。
❌ 「ADHDは親のしつけが原因」
✅ ADHDの遺伝率は70〜80%です。育て方が原因ではなく、脳の神経発達の偏りによるものです。
❌ 「集中できることがあるならADHDではない」
✅ ADHDの人は「過集中(ハイパーフォーカス)」という特徴を持つことがあり、興味のあることには何時間でも没頭できます。これはADHDを否定する根拠にはなりません。
❌ 「ADHDの薬は依存性が高い」
✅ 適切に処方・管理された治療薬は安全であり、むしろ治療を受けないことで依存症のリスクが高まるという研究結果があります。
❌ 「ADHDは努力不足・甘え」
✅ 脳の機能の問題であり、本人の意志や努力の問題ではありません。適切な治療と環境調整で大幅に改善が可能です。
受診の目安

こんな時は専門機関への相談を

以下に複数当てはまる場合は、精神科・心療内科・発達障害専門外来への受診を検討してください。

📋ADHDを疑うべきチェックポイント
  • 🔍
    忘れ物やケアレスミスが多く、日常生活に支障が出ている
  • 🔍
    集中力が続かず、仕事や勉強が思うように進まない
  • 🔍
    じっとしていることが苦手で、落ち着きがないと言われる
  • 🔍
    衝動的な発言や行動で人間関係のトラブルが多い
  • 🔍
    時間管理が極端に苦手で、遅刻や締め切り遅れが日常的
  • 🔍
    片付けや整理整頓がどうしてもできない
  • 🔍
    子どもの頃から上記のような傾向があった
  • ⚠️
    自分を責め続けて、気分が落ち込んでいる
💡
上記に3つ以上心当たりがあり、子どもの頃から同様の傾向がある場合は、ADHDの可能性について専門家に相談してみてください。ASRS(成人ADHD自己記入式スクリーニング尺度)という簡易チェックツールも活用できます。
THREE TYPES

ADHDの3つのタイプ——不注意・多動衝動・混合

ADHDは症状の現れ方によって「不注意優勢型」「多動・衝動優勢型」「混合型」の3つに分類されます。タイプによって困りごとや必要な支援が異なります。

💭
不注意優勢型
Predominantly Inattentive
注意を持続することが難しく、忘れ物や紛失が多い。ケアレスミスを頻繁にし、整理整頓が苦手。外見上おとなしく、ぼんやりしているように見えることが多いため、特に女性では見逃されやすい。「怠けている」「やる気がない」と誤解されやすく、自己肯定感が低下しやすい。学校では「授業中に上の空」「提出物が出せない」として問題になることが多い。
集中力の欠如忘れ物・紛失が多いケアレスミス女性に多い傾向見逃されやすい
多動・衝動優勢型
Predominantly Hyperactive-Impulsive
じっとしていることが難しく、落ち着きがない。順番を待てず、衝動的に行動する。幼児期〜学童期の男子に多く見られ、「授業中に立ち歩く」「他の子の邪魔をする」として指摘されやすい。大人になると身体的な多動は減少するが、内面的な落ち着きのなさ(精神的多動)として残ることが多い。衝動的な発言や決断、短気などの形で現れる。
落ち着きがない順番を待てない衝動的な行動男子に多い傾向年齢とともに変化
🔄
混合型
Combined
不注意と多動・衝動の両方の特徴を併せ持つタイプで、ADHDの中で最も多い。集中力の欠如と落ち着きのなさの両方があるため、学業や仕事で多方面に困難を抱えやすい。症状の組み合わせは個人差が大きく、状況によって目立つ症状が変わることもある。最も診断されやすいタイプだが、症状が複雑なため包括的な支援が必要になる。
不注意+多動・衝動最も多いタイプ症状が複雑包括的支援が必要個人差が大きい
3つのタイプ比較表
不注意優勢型
多動衝動優勢型
混合型
主な症状
集中困難・忘れ物
落ち着きなし・衝動
両方の症状
性別傾向
女性に多い
男性に多い
男女差少ない
発見されやすさ
見逃されやすい
比較的気づかれやすい
気づかれやすい
子どもの特徴
ぼんやり・忘れ物
立ち歩き・おしゃべり
多方面に困難
大人での現れ方
先延ばし・整理苦手
精神的多動・衝動発言
複合的な困難
頻度
約30〜40%
約10〜15%
約50〜60%
タイプは固定されたものではなく、年齢や環境によって変化することがあります。子ども時代は多動型だった人が、大人になって不注意型の症状が目立つようになることも珍しくありません。
ADULT ADHD

大人のADHD——見過ごされてきた困難

ADHDは子どもだけの障害ではありません。成人の約2.5%がADHDを抱えていますが、その80〜90%が未診断のまま生活しています。大人になってから初めて気づくケースが急増しています。

大人の困りごと

成人ADHDに特徴的な困難

大人のADHDでは、子どもの頃のような目に見える多動は減少しますが、「頭の中の多動」や不注意、衝動性が社会生活のさまざまな場面で困難を引き起こします。特に、社会人になって求められる「自己管理能力」の高さが、ADHD特性との間にギャップを生みます。

💼
仕事での困難
締め切りを守れない、書類の整理ができない、会議で集中できない、優先順位がつけられない。マルチタスクが求められる業務で特に困難が顕著になる。転職を繰り返す傾向もある。
💑
対人関係の問題
約束を忘れる、相手の話を聞いていない、衝動的な発言で相手を傷つける。パートナーや友人から「自分のことしか考えていない」と誤解されやすい。離婚率が高い傾向がある。
💰
金銭管理の困難
衝動買いで出費がかさむ、請求書の支払いを忘れる、家計の把握ができない。クレジットカードの使いすぎや、計画的な貯蓄ができないなど、経済的な問題を抱えやすい。
🏠
家事・生活管理の困難
掃除や洗濯が後回しになる、ゴミ出しを忘れる、冷蔵庫の食材を腐らせる。日常生活のルーティンを維持することが難しく、生活環境が乱れやすい。
📱
先延ばしとデジタル依存
重要なタスクを先延ばしにし、代わりにSNSやゲームに没頭してしまう。ドーパミンを即座に得られる活動に引き寄せられやすく、スマートフォンの使用時間が極端に長くなる傾向がある。
😔
自己肯定感の低下
長年にわたる失敗体験、叱責、「なぜできないのか」という周囲の反応の蓄積により、慢性的に自己肯定感が低い。「自分はダメな人間だ」「努力が足りない」という自己評価が根深く刻まれている。
大人になってから初めてADHDに気づく方の多くは、「ずっと自分はダメな人間だと思っていた」と語ります。診断を受けること自体が、自分を理解し、自分を許す第一歩になります。
データ

大人のADHDに関するデータ

子ども時代にADHDだった人のうち、成人後も症状が持続する割合60〜70%
成人のADHD有病率(世界的な推定)約2.5%
成人ADHDの未診断率(推定)約80〜90%
成人ADHDの平均的な診断年齢30〜40代
💡
「自分も当てはまるかも」と思った方は、ASRS(成人ADHD自己記入式スクリーニング尺度)を試してみてください。これは自己記入式のスクリーニングツールで、6問のパートAだけでも参考になります。ただし、正式な診断には専門医の評価が必要です。
二次障害

見逃してはいけない二次障害のリスク

ADHDが未診断・未治療のまま放置されると、失敗体験の蓄積や周囲との摩擦によって「二次障害」を発症するリスクが大幅に高まります。以下はADHDに併存しやすい状態です。

二次障害のリスク
うつ病の発症リスク
85%
不安障害の発症リスク
80%
自己肯定感の慢性的低下
90%
対人関係の困難
75%
依存症(物質・行動)のリスク
60%
学業・職業上の機能低下
70%

※ リスクの相対的な大きさを示すイメージ図です

うつ病約30〜50%
長年の失敗体験の蓄積が二次的なうつを引き起こす
不安障害約25〜50%
「また失敗するのでは」という予期不安が慢性化
睡眠障害約50〜75%
入眠困難・起床困難が日常的
自閉スペクトラム症約20〜50%
感覚過敏やコミュニケーションの困難を併存
依存症(物質・行動)約15〜30%
ドーパミン不足を補う自己治療としての側面
学習障害(LD)約30〜50%
読字・書字・算数の特定領域の困難
⚠️
二次障害を防ぐためにADHDそのものは「治る」ものではありませんが、早期発見・早期支援によって二次障害を大幅に予防できます。「生きづらさ」を感じているなら、それは甘えではなく、支援が必要なサインかもしれません。
SYMPTOMS

ADHDの症状

ADHDの症状は「不注意」「多動性・衝動性」「身体面の問題」の3つの柱で構成されます。症状の現れ方や強さには個人差があり、同じ人でも状況や年齢によって変化します。

🎯
注意の持続が困難
授業や会議、読書などで長時間集中を維持できない。途中で別のことを考え始め、話の内容を聞き逃してしまう。本人は集中しようと努力しているが、脳が「勝手に」他のことに注意を向けてしまう。
📋
ケアレスミスが多い
仕事や学校の課題で不注意な間違いを繰り返す。数字の転記ミス、書類の記入漏れ、メールの宛先間違いなど。見直しても見落としてしまうことが多く、「注意力がない」と叱られる原因になる。
📦
整理整頓ができない
机の上、カバンの中、部屋が散らかりやすい。書類や持ち物の管理が苦手で、必要なものがどこにあるかわからなくなる。片付けようとしても途中で別のことに気を取られ、かえって散らかることも。
🔑
忘れ物・紛失が頻繁
鍵、財布、スマートフォン、書類などを頻繁になくす。約束や予定を忘れてしまう。「さっきまで持っていたのに」という経験が日常的で、探し物に多くの時間を費やす。
🗓
時間管理が苦手
締め切りに間に合わない、約束の時間に遅刻する。時間の見積もりが甘く、「あと5分でできる」と思ったことに30分かかる。先延ばし(プロクラスティネーション)の傾向が強い。
🔀
タスクの切り替えが困難
逆に、興味のあることには過度に集中してしまう「過集中(ハイパーフォーカス)」の状態になることがある。ゲームや読書に没頭して食事や睡眠を忘れる一方、興味のない作業にはまったく取り組めない。
👂
話を聞いていないように見える
直接話しかけられても上の空に見えることがある。会議中や授業中にぼんやりしてしまい、指名されても何の話だったか思い出せない。聞く意思はあるのに、脳が情報を保持できない。
💡
不注意は「やる気の問題」ではないADHDの不注意は脳の実行機能(エグゼクティブファンクション)の障害によるものです。「注意を向けたくても向けられない」状態であり、意志の力では解決できません。適切な治療と環境調整が必要です。
過集中

過集中(ハイパーフォーカス)——ADHDのもうひとつの顔

ADHDは「注意が散漫」なだけではありません。興味のある対象に対しては、驚異的な集中力を発揮する「過集中(ハイパーフォーカス)」という特性を持つことがあります。

✅ 過集中のメリット
興味のある分野で圧倒的な成果を出せる
創造的な仕事や研究で力を発揮
危機的状況での高い集中力と対応力
趣味や特技で深い専門性を身につけられる
⚠️ 過集中のデメリット
食事や睡眠を忘れて体調を崩す
他の重要なタスクが放置される
没頭しすぎて約束の時間を過ぎてしまう
興味の対象が変わると突然やめてしまう
過集中をうまくコントロールするタイマーをセットして定期的に中断する、「過集中に入ったらやること」を決めておく(水を飲む、ストレッチするなど)、周囲の人に声をかけてもらう約束をするなどの工夫が有効です。
CAUSES & RISK FACTORS

ADHDの原因とリスク要因

ADHDは単一の原因ではなく、遺伝的要因を主軸に、脳の発達・神経伝達物質・環境要因が複合的に関わって生じます。「育て方」や「しつけ」が原因ではありません。

ADHDの発症メカニズムの研究は急速に進展しています。以下の4つの主要因が複合的に関与していると考えられています。

🧠前頭前皮質の機能低下

ADHDでは前頭前皮質(注意・実行機能・衝動制御を司る脳の領域)の活動が低下しています。脳画像研究では、前頭前皮質の体積が定型発達の人より約3〜5%小さいことが報告されています。また、前頭前皮質と大脳基底核、小脳をつなぐ神経回路(前頭線条体回路)の機能不全も確認されています。脳の成熟に遅れがあるという「発達遅延モデル」も提唱されており、ADHDの脳は定型発達の脳より約2〜3年成熟が遅れるとされています。

  • 前頭前皮質の体積が約3〜5%小さい
  • 前頭線条体回路の機能不全
  • 脳の成熟が約2〜3年遅れる(発達遅延モデル)
  • デフォルトモードネットワーク(DMN)の制御異常
発症メカニズム

ADHDの発症メカニズム——脳で何が起きているのか

ADHDの脳では、前頭前皮質を中心とした「実行機能ネットワーク」の機能低下が起きています。このネットワークは注意の制御、作業記憶、衝動の抑制、計画・組織化を担っています。

ADHDの脳で起きていること
1
ドーパミン・ノルアドレナリンの不足
前頭前皮質でのドーパミンとノルアドレナリンの濃度が低下し、神経シグナルの伝達が弱くなる。
2
実行機能の低下
注意の制御、作業記憶、衝動の抑制、時間の認識、感情の調整などの「実行機能」が十分に働かなくなる。
3
デフォルトモードネットワーク(DMN)の制御不全
「ぼんやりする時に活性化するネットワーク」の切り替えがうまくいかず、集中すべき時にも思考がさまよってしまう。
4
報酬系の機能異常
「後で大きな報酬をもらう」より「今すぐ小さな報酬を得る」を選びやすくなる。これが先延ばしや衝動性の背景にある。
ADHDの治療薬は、不足しているドーパミンやノルアドレナリンの働きを補うことで、前頭前皮質の機能を改善します。これは「脳のメガネ」のようなもので、脳が本来の力を発揮できるようにサポートするものです。
TREATMENT & SUPPORT

ADHDの治療と支援

ADHDの治療は「薬物療法」「心理療法」「環境調整」の3本柱で構成されます。適切な治療により、症状を大幅に改善し、本来の力を発揮できるようになります。

薬物療法

薬物療法——脳の機能を補うメガネ

ADHD治療の中心は薬物療法です。ADHDの脳で不足しているドーパミンやノルアドレナリンの働きを補い、前頭前皮質の機能を改善します。日本で処方可能な主な治療薬は以下の3種類です。

中枢刺激薬(メチルフェニデート/コンサータ)第一選択薬

脳内のドーパミンとノルアドレナリンの再取り込みを阻害し、シナプス間隙での濃度を高めることで前頭前皮質の機能を改善します。即効性があり、服薬後30分〜1時間で効果が現れます。コンサータは徐放性製剤で、1日1回の服用で約12時間効果が持続します。ADHD治療の第一選択薬であり、約70〜80%の方に有効とされています。食欲低下、入眠困難、頭痛などの副作用に注意が必要です。

非中枢刺激薬(アトモキセチン/ストラテラ)非刺激薬

ノルアドレナリンの再取り込みを選択的に阻害します。中枢刺激薬と異なり依存性がなく、効果は24時間持続します。ただし効果が十分に発揮されるまで4〜8週間かかるため、即効性を期待する場合には不向きです。悪心、食欲低下、眠気などの副作用があります。刺激薬が使用できない場合や、不安障害を併存する場合に選択されます。

選択的α2Aアドレナリン受容体作動薬(グアンファシン/インチュニブ)多動・衝動に有効

前頭前皮質のα2Aアドレナリン受容体に作用し、ノルアドレナリン系のシグナル伝達を強化します。特に多動・衝動性の改善に効果があり、感情のコントロールにも寄与します。1日1回の服用で効果が持続し、他の薬剤との併用も可能です。眠気、血圧低下、徐脈などの副作用に注意が必要です。

心理療法

心理療法——スキルと自己理解を深める

薬物療法だけでは対処できない「日常生活のスキル不足」や「否定的な自己認知」に対して、心理療法が重要な役割を果たします。

認知行動療法(CBT)スキル獲得

ADHDに特化したCBTでは、時間管理、整理整頓、先延ばしへの対処、感情コントロールなど、実生活で必要なスキルを体系的に学びます。「できない自分」への否定的な認知パターンを修正し、「ADHDの脳の特性に合った対処法」を身につけます。薬物療法と併用することで、より高い効果が期待できます。成人ADHDには薬物療法単独よりもCBTを併用した方が転帰が良いとされています。

コーチング・ペアレントトレーニング行動面の支援

ADHDコーチングは、具体的な目標設定、行動計画の立案、定期的な振り返りを通じて、日常生活や仕事の改善を支援します。ペアレントトレーニング(親訓練)は、ADHDの子どもを持つ保護者向けのプログラムで、子どもの行動への効果的な対応方法を学びます。肯定的な注目を増やし、問題行動には一貫した対応をとるスキルを習得します。

薬に関する注意点

治療薬に関する重要な注意点

⚠ 薬の自己判断での中断・調整は禁物

ADHD治療薬は医師の指示のもとで服用するものです。「効いている気がしない」「副作用がつらい」と感じても、自己判断で服用を中断したり量を変えたりせず、必ず主治医に相談してください。特にコンサータは急な中断で反跳症状が出ることがあります。

💊 薬は「治す」ものではなく「補う」もの

ADHD治療薬は服薬している間だけ効果を発揮します。ADHDを根本的に「治す」のではなく、脳の機能を「補助」するものです。眼鏡をかけている間だけよく見えるのと同じイメージです。だからこそ、薬と併せて環境調整やスキル獲得にも取り組むことが大切です。

治療は「正解がひとつ」ではありません。薬の種類や量、心理療法の組み合わせは、医師と相談しながら自分に合ったものを見つけていくプロセスです。焦らず、一つずつ試していきましょう。
DAILY LIFE

日常生活でできること——環境調整の具体策

ADHDの困りごとは、環境の工夫や具体的なライフハックで大幅に軽減できます。「脳の特性に合った仕組み」を生活に取り入れましょう。完璧を目指す必要はありません。

📋
タスクの見える化・外部化する
頭の中で覚えようとせず、すべてを書き出しましょう。ToDoリスト、カレンダーアプリ、ホワイトボード、付箋などを活用。「1日3つまで」のように最重要タスクを絞ることで、優先順位づけの困難を軽減できます。タスク管理アプリ(Todoist、Notion等)の活用も有効です。
タイマーとアラームを味方にする
時間感覚の弱さを補うため、タイマーを積極的に使いましょう。ポモドーロ・テクニック(25分作業+5分休憩)は、短い集中を繰り返すADHDの脳と相性が良い。予定の10分前にアラームを設定し、遅刻を防止。複数のアラームをセットすることも効果的です。
🏠
「定位置」を決める
鍵、財布、スマホ、書類など、重要なものの置き場所を固定しましょう。玄関にキーフック、カバンの中にポーチなど、「ここに必ず戻す」というルールを作る。探し物の時間を劇的に減らすことができます。忘れ物防止タグ(AirTag等)の活用も有効です。
🧹
「1分ルール」で片付ける
「1分以内でできることは今すぐやる」をルール化。メールの返信、書類のファイリング、食器洗いなど、先延ばしにしがちな小さなタスクを即座に処理します。これだけで日常のタスクの蓄積を大幅に防げます。
📵
刺激を管理する(環境調整)
集中したい時はスマホを別の部屋に置く、通知をオフにする、ノイズキャンセリングイヤホンを使う。デスク周りに不要なものを置かない。「見えるもの=気になるもの」なので、視覚的な刺激を最小限にすることが重要です。
🎵
「ボディダブリング」を活用する
一人では取り組めないタスクでも、誰かがそばにいるだけで集中できることがあります。カフェで勉強する、オンラインで「もくもく会」に参加する、友人と一緒に作業するなど。最近はボディダブリング専用アプリも登場しています。
🌙
睡眠の質を改善する
ADHDの人の50〜75%が睡眠の問題を抱えています。就寝2時間前からブルーライトを減らす、毎日同じ時間に寝起きする、カフェインは午後2時まで、入浴で体温を一度上げてから下げるなど。メラトニンのサプリメントが有効な場合もあります(医師に相談)。
🏃
運動を習慣化する
有酸素運動はドーパミンとノルアドレナリンの分泌を促し、ADHD症状を一時的に改善します。1日30分程度のウォーキング、ジョギング、水泳などが推奨されます。朝の運動は日中の集中力を高める効果があり、「脳のウォームアップ」として特に有効です。
すべてを一度に実践する必要はありません。まずはひとつだけ選んで1週間試してみてください。「自分に合った工夫」を見つけることが大切です。うまくいかなくても、それは「合わなかっただけ」。自分を責めずに、別の方法を試しましょう。
ADHDの人が活かせる強み
💡創造性・発想力
既存の枠にとらわれない独創的なアイデアを生み出せる
エネルギー・行動力
興味のあることに対する驚異的な推進力
🎯過集中の力
好きなことへの圧倒的な集中力と没入感
🚨危機対応力
締め切り直前や緊急時に高いパフォーマンスを発揮
❤️共感力・感受性
感情が豊かで、他者の痛みに敏感に寄り添える
🔄柔軟性・適応力
変化に強く、新しい環境にも素早く適応できる
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このページの情報は、医師による診断や治療に代わるものではありません。症状が気になる場合は、心療内科・精神科への受診をご検討ください。

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