メンタルヘルス用語辞典 · 多動・衝動優勢型ADHD

多動・衝動優勢型ADHDとは?
意味・症状・原因・3つのサブタイプとの違い・診断基準・治療法・支援方法をわかりやすく解説

じっとしていられない・衝動的に行動してしまう——これは「悪い性格」ではなく、脳の神経発達の特性です。正しい理解と支援で、生活は大きく改善します。

ABOUT

多動・衝動優勢型ADHDとは

多動・衝動優勢型ADHDは、注意欠如・多動症(ADHD)の3つのサブタイプのひとつです。「じっとしていられない」「衝動的に行動してしまう」症状が特に強く現れます。性格の問題ではなく、脳の神経発達の特性です。

定義

多動・衝動優勢型ADHDの定義

多動・衝動優勢型ADHD(DSM-5では「注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害(ADHD)、多動性・衝動性優勢型」)は、注意欠如・多動症(ADHD)の3つのプレゼンテーション(表現型)のひとつです。不注意症状よりも多動性・衝動性の症状が診断基準を大きく上回る状態が6ヵ月以上持続するタイプです。

このタイプは特に幼児期から学童期にかけて目立ちやすく、「落ち着きのない子」「問題児」と誤解されやすいですが、その行動は意図的なものでも育ちの問題でもなく、脳の前頭前野—皮質下回路の発達的な特性に起因しています。適切な支援と環境整備によって、大きく改善することができます

🧠

なぜ「止められない」のか——脳科学的な理解

多動・衝動優勢型ADHDでは、前頭前野の「ブレーキシステム」(抑制制御)が十分に機能しません。脳内のドーパミンとノルアドレナリンのシグナルが通常と異なるため、「やりたい!」という衝動が「今はやめよう」という抑制より強くなりやすいのです。これは意志力の問題ではなく、神経回路の問題です。

「悪い子」ではありません多動・衝動優勢型ADHDの子どもや成人は、しばしば「問題行動」「非常識」として批判されます。しかし、その行動の多くは「やりたくてやっている」のではなく、「やめたくてもやめられない」という神経発達の特性から生じています。適切な支援を受けることで、大きく変わることができます。相談窓口として、各都道府県の精神保健福祉センターや発達障害者支援センターが利用でき、どこに相談すればよいかわからないときの第一歩として活用できます。
サブタイプ比較

ADHDの3つのサブタイプ

ADHDには3つの表現型(プレゼンテーション)があります。同じ「ADHD」でも、主に現れる症状が異なります。

多動・衝動優勢型ADHD
じっとしていられない・衝動的に行動してしまう症状が前面に出るタイプ。不注意症状も一定程度あるが、多動性・衝動性が診断の主な根拠となる。幼児期・学童期に目立ちやすく、周囲からも「落ち着きのない子」として早期に気づかれることが多い。
多動性が目立つ衝動制御が困難幼少期に気づかれやすい男児に多い
🌫
不注意優勢型ADHD
不注意・集中困難・忘れ物が主症状のタイプ。多動性が目立たないため「おとなしい子」「ぼんやりしている子」と見られやすく、診断が遅れることが多い。特に女児・女性に多いとされ、大人になってから気づかれるケースも少なくない。
不注意が主症状多動は目立たない診断が遅れがち女性に多い
🔄
混合型ADHD
不注意症状と多動・衝動性症状の両方が診断基準を満たすタイプ。ADHDの中で最も多いとされる。症状が多岐にわたるため、日常生活への影響が大きい場合が多い。
両方の症状あり最も多いタイプ日常影響が大きい
💡
ADHDの表現型は年齢とともに変化することがあります。幼少期に多動・衝動優勢型だった方が、思春期以降は不注意症状が目立つ混合型に変化することもあります。定期的な再評価が大切です。
有病率

多動・衝動優勢型ADHDの頻度

5%
世界の学齢期の子どもの約5%にADHDが存在。日本では約6〜7%との報告も
3
多動・衝動優勢型は男児に多く、女児の約3倍。成人では性差が縮まる
60%
子どものADHDの約60%が成人後も何らかの症状が持続する
多動・衝動優勢型は最も「目立つ」タイプのため、幼児期・学童期に診断されるケースが多い反面、「成長したら治る」と誤解されやすいです。症状が持続する場合は成人後も継続的な支援が必要です。
受診の目安

こんな時は受診を検討してください

以下の様子が6ヵ月以上続き、学校・家庭・社会生活に影響がある場合は専門機関への相談をお勧めします(受診を検討すべきチェックポイント・子ども)。

  • 🔍授業中・食事中など、着席が求められる場面で席を離れてしまう
  • 🔍順番やルールが守れず、友達とトラブルが絶えない
  • 🔍衝動的な言動が原因でけがをすることがある
  • 🔍感情の爆発(パニック・かんしゃく)が激しく長引く
  • 🔍課題に取り掛かれない・始めてもすぐ別のことをしてしまう
  • 🔍先生や保護者から「落ち着きがない」「乱暴」と繰り返し指摘される
💡
「まだ様子を見ましょう」と言われ続けても、気になる場合は小児科・発達外来・児童精神科への受診を躊躇わないでください。早期の支援ほど、長期的な成果が良くなります。
SYMPTOMS

多動・衝動優勢型ADHDの症状

多動性(体が動き続ける・しゃべりすぎる)と衝動性(考える前に行動してしまう)が主な症状です。日常生活のさまざまな場面で困難が生じます。

主症状

多動性・衝動性の症状

🪑
じっとしていられない
授業中や会議中に席を離れてしまう、体の一部をそわそわと動かし続ける(足を揺らす、鉛筆をたたく、体をくねらせるなど)といった行動が見られます。「落ち着きがない」「マナーが悪い」と周囲から誤解されがちですが、本人も努力しているにもかかわらず体が動いてしまう状態です。
🏃
走り回る・高いところに登る
状況をわきまえず走り回ったり、高い場所に登ったりする行動が幼児期から学童期に顕著です。「危険を考えない」のではなく、衝動を抑制する脳の機能が十分に働かないために起こります。成人後は「内なる多動」として、頭の中が常にせわしなく回っているような感覚に変化することがあります。
🗣
しゃべりすぎる
一方的に話し続ける、相手の話に割り込む、会話のボリュームを調整できないといった特徴が見られます。「話しすぎ」「空気が読めない」と評価されることもありますが、会話を止めるブレーキ機能(抑制制御)が働きにくいために生じる症状です。
エンジンで動かされているように動き続ける
「エネルギーが尽きない」「エンジンがかかりっぱなし」と表現されるほどの活発さが持続します。就寝しても頭が眠らない感覚、体が疲れているのに止まれない感覚を訴える方もいます。この特性がうまく活かせれば大きな強みになりますが、コントロールが難しいと消耗します。
多動は「外から見えにくくなる」だけで消えない成人になると「席を離れる」「走り回る」といった外から見える多動は減ります。しかし「頭の中がいつも忙しい」「じっとしていると落ち着かない」という「内なる多動」として経験され続ける方も多いです。
成人での変化

成長に伴う症状の変化

多動・衝動優勢型ADHDの症状は、成長とともに変化していきます。子どもの頃に顕著だった「走り回る」「座っていられない」といった行動的な多動は、青年期以降に減少する傾向があります。しかし、多動性・衝動性が完全に消えるわけではなく、形を変えて持続することがほとんどです。

🧒 子どもの頃(幼児〜学童期)
外から見える多動
授業中に席を離れる/教室・廊下を走り回る/手足を常に動かす/大声・しゃべりすぎ/順番を待てない
🧑 大人になってから
内なる多動・衝動
会議中に内心そわそわする/頭の中が常に忙しい感覚/衝動的な発言・決断/感情の爆発・怒りの制御困難/衝動買い・リスク行動
「大人になったらADHDは治る」は誤りです。症状の表れ方が変化するだけで、約60%は成人後も臨床的に意味のある症状が続きます。成人での診断・支援も非常に重要です。
CAUSES

原因とメカニズム

多動・衝動優勢型ADHDは、遺伝子・脳の機能・環境の複合的な要因で生じます。「育て方が悪い」「根性が足りない」ことが原因ではありません。

🧬強い遺伝的背景

ADHDは遺伝性が非常に高い疾患で、遺伝率は約70〜80%と推定されています。両親のどちらかがADHDの場合、子どもへの遺伝リスクは約50%とされています。ドーパミンやノルアドレナリンの受容体・トランスポーターに関連する遺伝子(DRD4、DRD5、DAT1等)の多型が関与しています。複数の遺伝子が組み合わさって発症リスクを高める「多因子遺伝」の形式をとります。

  • 遺伝率70〜80%(最も遺伝性の高い精神疾患の一つ)
  • DRD4・DRD5(ドーパミン受容体遺伝子)の多型
  • DAT1(ドーパミントランスポーター遺伝子)の多型
  • 家族歴:親がADHDなら子の約50%に影響
ADHDは「脳の多様性」の一形態ADHDは障害としての側面だけでなく、「脳の多様性(ニューロダイバーシティ)」の一形態とも捉えられています。多動・衝動性は、適切な環境と支援があれば「エネルギーの高さ」「発想の豊かさ」「行動力」という強みにもなります。
DIAGNOSIS

診断の流れと基準

ADHDの診断は、DSM-5(アメリカ精神医学会の診断基準)に基づいて行われます。問診・行動観察・心理検査などを組み合わせた総合的な評価が必要です。

DSM-5診断基準

多動・衝動優勢型ADHDのDSM-5診断基準

DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)では、ADHDの診断に以下の5つの基準を満たすことが求められます。多動・衝動優勢型は、多動性・衝動性の症状が診断基準の中心となります。

CRITERION A
症状の要件
多動性・衝動性の症状が9項目中6項目以上(17歳以上では5項目以上)、もしくは不注意症状が9項目中6項目以上(多動・衝動優勢型の場合は多動・衝動性が主)、少なくとも6ヵ月以上持続していること。
CRITERION B
発症時期
症状の一部が12歳以前から存在していること。「大人になってから突然ADHDになる」ことはなく、幼少期からの特性です。
CRITERION C
複数の場面での出現
症状が2つ以上の場面(学校・職場・家庭など)で見られること。特定の状況・人物に対してのみ問題が生じる場合はADHDとは言いません。
CRITERION D
機能障害
症状が社会的・学業的・職業的な機能を明らかに妨げていること。症状があっても、日常生活への影響がない場合は診断されません。
CRITERION E
除外診断
統合失調症や他の精神障害ではうまく説明できないこと。また、これらの疾患の経過中にのみ生じているのではないこと。
💡
DSM-5では多動性・衝動性の9つの症状のうち6項目以上(17歳以上は5項目以上)が診断に必要です。代表的な多動・衝動症状には「しばしば手足をそわそわ動かす」「しばしば席を離れる」「しばしば順番を待てない」「しばしば他人の会話や活動に割り込む」などがあります。
評価の流れ

診断評価の流れ

ADHDの診断は、問診だけで決まるものではなく、複数の情報源からの総合的な評価によって行われます。

STEP 1
詳細な問診(発達歴・生活歴)
幼少期からの行動の特徴、学校・家庭での様子、症状の始まりと経過を詳しく聞きます。保護者や学校からの情報(親や教師の評価票)も重要な情報源です。
STEP 2
行動観察・診察場面での様子
診察中の言動、課題への取り組み方、集中力、会話の様子などを観察します。ただし、診察場面では症状が現れにくいことも多いため、この評価だけで診断を下すことはありません。
STEP 3
心理検査・神経心理学的検査
WISC・WAIS(知能検査)、コナーズ評価尺度、QbTest(注意機能・衝動性の客観的評価)などを実施し、認知機能の特徴を評価します。
STEP 4
医学的除外診断
甲状腺機能亢進症、睡眠障害、不安障害、感覚処理障害など、ADHDに似た症状を示す他の疾患を除外します。
STEP 5
総合判断と診断説明
すべての情報を統合して診断を行い、本人・家族に診断の意味、治療・支援の選択肢、予後について丁寧に説明します。
合併症

多動・衝動優勢型ADHDでよく見られる合併症

多動・衝動優勢型ADHDは、他の神経発達症・精神疾患を合併することが非常に多いです。合併症を見逃すと治療が不十分になるため、包括的な評価が重要です。

約40〜60%
反抗挑戦性障害(ODD)
指示に従わない・反抗的・怒りっぽいといった問題が持続する。多動・衝動優勢型との合併が特に多い。
約25%
素行障害(CD)
攻撃性・破壊行動・ルール違反などが持続する。早期介入なく放置すると出現リスクが高まる。
約25〜50%
不安障害
「失敗したらどうしよう」という不安と、衝動的な行動が複雑に絡み合う。治療方針が変わる。
約30〜40%
学習障害(LD)
読み書き・計算の特定の困難が合併。学業不振の背景に両者が絡んでいることが多い。
約10〜30%
チック症・トゥレット症候群
チック(不随意の運動・発声)とADHDの合併は多い。刺激薬使用の際は注意が必要。
約20〜50%
自閉スペクトラム症(ASD)
ASDとADHDの合併(AuDHD)は非常に多い。両者を見分けることは難しいが、治療方針に影響する。
合併症があっても治療を受けることは可能です。ただし、合併症の種類によって治療の優先順位や選択肢が変わるため、包括的な評価のもとでの個別化された治療計画が大切です。
TREATMENT

治療・支援の方法

多動・衝動優勢型ADHDの治療は、薬物療法・心理社会的支援・環境調整の三本柱が基本です。「治す」というよりも「うまく付き合えるようになる」ことを目指します。継続的な通院には自立支援医療制度を活用することで、医療費の自己負担を大幅に軽減できます。

薬物療法

薬物療法——脳のブレーキを助ける

多動・衝動優勢型ADHDに対する薬物療法は、前頭前野のドーパミン・ノルアドレナリン機能を改善し、抑制制御(ブレーキ機能)を高めます。約70〜80%の患者で有効であり、適切な薬物療法は安全かつ最も確実な方法のひとつです。継続的な服薬が必要な場合、自立支援医療制度を申請することで医療費の負担が軽減されます。

第一選択薬

中枢神経刺激薬(メチルフェニデート)

コンサータ(徐放型)が日本で処方可能です。前頭前野のドーパミン・ノルアドレナリンを増加させ、抑制制御や注意機能を改善します。多動・衝動優勢型ADHDに対して特に高い効果が示されており、約70〜80%の患者で有効です。効果が現れるのが速く(内服後30〜60分)、学校や仕事のある平日のみ服用するなどの柔軟な使用も可能です。依存性・乱用リスクがあるため、規制薬物として管理されています。

非依存性・安全

非刺激薬(アトモキセチン:ストラテラ)

ノルアドレナリンの再取り込みを選択的に阻害します。刺激薬と異なり依存性がなく、1日を通じて安定した効果が続きます。効果が現れるまで4〜8週間かかりますが、衝動性・多動性の改善に加え、不安症状の合併がある場合にも有効です。18歳未満には特に有用で、乱用リスクのある環境では第一選択となる場合があります。

多動・衝動性に有効

グアンファシン(インチュニブ)

ノルアドレナリンα2A受容体に作用し、前頭前野の機能を改善します。多動性・衝動性・感情の調節に特に有効とされています。眠気・血圧低下などの副作用があるため、就寝前の服用が多いです。刺激薬との併用も可能で、単独でも十分な効果が得られます。

💡
「薬で性格が変わる」は誤解ADHDの薬は「性格を変える」ものではなく、「脳のブレーキを補助する」ものです。服用中も「自分らしさ」は変わりません。「薬のせいで別の子になった」という親御さんの心配は理解できますが、多くの場合「本来の落ち着いた自分が出てきた」と感じる方が多いです。薬に関する疑問や不安は、処方医や薬剤師に遠慮なく相談してください。
心理療法・支援

心理社会的支援——環境と行動を変える

薬物療法が「脳を助ける」のに対し、心理社会的支援は「スキルと環境を整える」アプローチです。薬との組み合わせが最も効果的です。心理社会的支援は医療機関のほか、精神保健福祉センターや発達障害者支援センターでも受けられます。

感情・行動の管理

認知行動療法(CBT)

ADHD特有の衝動的な行動パターン・感情爆発・先延ばし行動に対し、認知行動療法が有効です。衝動が生じたとき「一時停止する」スキルの練習、感情を言語化するトレーニング、問題解決スキルの習得などを行います。成人ADHDにおいては薬物療法との併用で特に効果が高まります。

保護者向け

ペアレント・トレーニング

子どもの多動・衝動行動に対する保護者の対応スキルを高めるプログラムです。命令の出し方、ポジティブな強化(ほめ方)、無視(バッドビヘイビアの消去)などを学びます。子どもの行動改善だけでなく、保護者のストレス軽減にも効果があります。

対人スキルの向上

ソーシャルスキルトレーニング(SST)

多動・衝動優勢型ADHDでは、衝動的な言動が対人関係のトラブルを引き起こしがちです。SSTでは「待つ」「聞く」「順番を守る」「怒りを言葉にする」などの対人スキルをロールプレイで練習します。グループ形式で行うことが多く、同じ特性を持つ仲間との交流にもなります。

学校での支援

学校での合理的配慮——環境を整える

多動・衝動優勢型ADHDの子どもにとって、学校環境の整備は治療と同じくらい重要です。日本でも「障害者差別解消法」により、学校での合理的配慮が求められています。学校でできる合理的配慮の例を以下に示します。

  • 座席の配慮前列・壁際など、刺激が少なく教師の目が届きやすい座席配置。窓や廊下側は視覚的な誘惑が多いため避ける。
  • 短い指示・具体的な指示「ちゃんとしなさい」ではなく「今から10分間、教科書の15ページを読みます」のように、具体的・短い指示を出す。
  • 定期的な「動く時間」の確保授業中に「配布物を配ってもらう」「黒板を消してもらう」など合法的に動ける機会を意図的に作る。
  • 試験時間の延長・別室受験衝動的な誤答・見直し不足への対応として、試験時間の延長や別室受験などの合理的配慮を申請できる場合がある。
  • ポジティブ強化を重視するできたことを具体的にほめる。「静かにできたね」「最後まで座っていたね」など小さな成功を積極的に認める。
合理的配慮は「特別扱い」ではなく、「公平な学習機会」を保障するものです。必要に応じて学校側と積極的に相談し、子どもに合った環境を整えましょう。支援を求めることに迷ったときは、各都道府県の精神保健福祉センターや発達障害者支援センターが相談窓口として機能しており、地域の専門機関への橋渡しをしてもらえます。医療的な支援が継続的に必要な場合は、自立支援医療制度によって通院医療費の自己負担を軽減できる仕組みもあります。
DAILY LIFE

日常生活でできること

多動・衝動優勢型ADHDとうまく付き合うためには、環境を整え、自分の特性を理解した工夫が重要です。一度にすべてを変えようとせず、一つひとつ試してみましょう。支援が必要なときは精神保健福祉センターや発達障害者支援センターに相談することで、地域のサポートにつながることができます。

タイマーを相棒にする
「あと5分でやめる」「10分間は作業に集中する」というルールをタイマーで管理しましょう。目に見える形で時間を管理することで、衝動的な行動を抑えやすくなります。スマートウォッチやスマートスピーカーを活用すると便利です。時間の感覚(時間盲)が弱いADHDには特に有効です。
📝
書いて外部化する
頭の中で考えるだけでは衝動に負けてしまいます。「やりたいことリスト」「後でやるリスト」「やってはいけないことリスト」を紙やアプリに書き出し、衝動が生じたとき「リストを確認する」ことをルールにしましょう。思考を外部化することで、衝動をワンクッション置いて判断できます。
🏋
適度な運動で多動エネルギーを発散
多動のエネルギーを「良い方向」に向けることが重要です。ランニング、水泳、格闘技、ダンスなど、体を大きく動かす運動を日課にしましょう。運動後は脳のドーパミン・ノルアドレナリンが増加し、集中力・衝動制御の改善が期待できます。特に有酸素運動は「脳の薬」とも言われます。
🎯
「待ち時間」を設計する
衝動的な行動(買い物、SNS投稿、感情的な返信など)をしたくなったら「24時間待つ」ルールを設定しましょう。ショッピングカートに入れても翌日まで購入しない、怒りのメールは書いてから送信せずに1時間後に読み返すなど。衝動と行動の間に「間(ま)」を作ることが鍵です。
🌿
環境を整えて誘惑を排除
スマートフォンを視界から外す、SNSアプリを削除またはブロック時間を設定する、作業場所を整理整頓するなど、「誘惑されにくい環境」を意図的に作りましょう。ADHD脳は環境刺激に非常に敏感です。環境設計で衝動のきっかけそのものを減らすことが最も効率的な戦略の一つです。
💊
薬の服用習慣を確立する
薬を毎日同じタイミングで飲む習慣をつけましょう。「歯磨き後に飲む」「朝食とセットにする」など、既存の習慣と紐づけることでルーティン化しやすくなります。薬の効果が切れる時間帯(夕方〜夜など)に衝動が強くなりやすいため、その時間帯の重要な作業・会話は薬が効いている時間に移動するのも有効です。
🗣
「一時停止ワード」を決める
怒りや衝動的な発言が出そうになったとき、自分の心の中で唱える合言葉(「ストップ」「3秒待つ」「ここで言わない」など)を事前に決めておきましょう。信頼できる人(家族・パートナー)にも協力してもらい、「あのサイン」で気づかせてもらう仕組みを作ることも効果的です。
🌙
睡眠の質を最優先する
睡眠不足はADHD症状を著しく悪化させます。多動・衝動優勢型ADHDでは夜なかなか眠れない(就寝困難)ことが多く、睡眠の乱れが翌日の制御困難につながります。ブルーライトカット、就寝ルーティン、一定の就寝時間を守ることが最も基本的かつ効果的な生活習慣改善です。
「自分を責めない」が最初の一歩多動・衝動優勢型ADHDの方は、長年「問題のある自分」として扱われてきた経験から、自己肯定感が著しく低下していることが多いです。「できないのは意志が弱いから」ではなく「脳の特性」であることを理解し、自分に優しくなることが、すべての改善の出発点です。困り感が続く場合は、各都道府県の精神保健福祉センターや発達障害者支援センターに相談することで、地域の支援につながることができます。また、継続通院が必要な場合は、自立支援医療制度を活用することで医療費の自己負担が軽減されます。
関連用語

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FOR FAMILY & FRIENDS

周囲の人にできること

多動・衝動優勢型ADHDの子どもや成人を支える方へ。「意志の問題ではない」という理解が、すべてのサポートの出発点です。地域の精神保健福祉センターや発達障害者支援センターでは、家族向けの相談・講座も提供しています。

対応のポイント

してほしいこと・避けてほしいこと

「なぜできないの?」という言葉は本人を最も傷つける言葉のひとつです。多動・衝動優勢型ADHDは、やりたくてやっているわけではなく、止めたくても止められない神経発達の特性です。批判や叱責を繰り返すと、本人の自己肯定感がさらに低下し、二次的なうつや不安を生みやすくなります。「どうすれば助けられるか」という視点で関わることが、長期的な関係を築く上で大切です。

✅ してほしいこと
  • 「わざとやっている」「やればできる」という誤解を捨て、神経発達の特性として理解する
  • できたことを具体的に、すぐにほめる(タイムリーなポジティブフィードバック)
  • 「やめなさい」より「〇〇しよう」という代替行動を示す指示を心がける
  • ルールは少なく・明確に・一貫して守る(複雑なルールは守れない)
  • 通院・服薬・療育の継続をさりげなくサポートする
  • 本人の「得意なこと・好きなこと」を見つけ、積極的に活かす機会を作る
  • 「問題のある子」ではなく「違う配線を持つ子」として関わる
❌ 避けてほしいこと
  • ×「なぜじっとできないの!」と怒鳴る——怒りで症状は改善せず、自己肯定感を損なうだけです
  • ×「甘やかしているからだ」「しつけが悪い」と保護者を責める——ADHDは養育態度が原因ではありません
  • ×「もっと頑張れば治る」「気合いが足りない」——ADHDは意志の力では制御できない神経発達の特性です
  • ×診断・治療を拒否する——早期介入ほど長期的な予後が良くなります
  • ×薬を飲ませることに過度な罪悪感を持つ——適切な薬物療法は安全かつ有効です
  • ×きょうだいや同年代の子と比較する——ADHDの子どもを追い詰める最も傷つく言葉の一つです
「長所」を見つける目を持つ多動・衝動優勢型ADHDの方は、エネルギーが高く行動力があり、新しいことへの好奇心が旺盛で、危機的状況での直感的な判断力に優れることがあります。「問題」の裏にある「強み」を見つけ、それを活かせる環境を一緒に考えてみてください。本人が「自分はダメだ」という自己イメージに縛られているとき、支える側の「あなたには素晴らしいところがある」という視点が、回復の大きな力になります。地域の相談窓口(精神保健福祉センターや発達障害者支援センター)では、家族向けの相談も受け付けています。一人で抱え込まず、専門家のサポートを積極的に利用してください。
支える側のケア

支える側のセルフケア

多動・衝動優勢型ADHDの子どもや成人を支える日々は、喜びがある一方で、疲弊感・無力感・孤立感を感じることも少なくありません。支える側の方の心身のケアも非常に重要です。「自分が頑張らなければ」という思いが強くなりすぎると、支える側自身が燃え尽き症候群(バーンアウト)に陥ることがあります。一人で抱え込まず、精神保健福祉センターや家族向けの相談窓口を利用することを強くお勧めします。

🏠
ペアレントトレーニングを活用する
「どう対応すればよいのかわからない」という保護者の方に向けたペアレントトレーニング(PT)は、各地の発達支援センターや医療機関で提供されています。具体的な対応スキルを学ぶことで、関わり方が変わり、子どもの行動も改善しやすくなります。
👥
家族会・自助グループに参加する
「うちの子だけ」という孤独感は大きな心理的負担です。ADHD・ASの会、LD親の会など、同じ経験を持つ保護者・当事者のグループに参加することで、情報を得ながら精神的なサポートを受けられます。
💆
自分自身のストレスを管理する
怒りや疲弊が限界に達してからでは遅いです。定期的に自分の感情を振り返り、必要であれば支援者側のカウンセリングや相談窓口を活用しましょう。あなたが健康でいることが、家族全体の健康につながります。

一人で抱え込まないで。
相談してみませんか。

「じっとしていられない」「衝動的に動いてしまって後悔する」「周囲に迷惑をかけてしまう」——ADHD多動性・衝動性優勢型のつらさを一人で抱えないでください。どうかあなたの悩みをきかせてください。

今すぐ話したい方へ——相談窓口
ココトモ相談するチャット相談・無料
いのちの電話0120-783-55624時間・無料
よりそいホットライン0120-279-33824時間・無料
精神保健福祉センター各都道府県に設置平日・無料相談

このページの情報は、医師による診断や治療に代わるものではありません。症状が気になる場合は、心療内科・精神科への受診をご検討ください。通院医療費の自己負担を1割に軽減できる自立支援医療制度も活用できます。

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