メンタルヘルス用語辞典 · いじめ

いじめとは?
定義・種類・心理的影響・対処法・相談窓口を徹底解説

いじめ防止対策推進法での法的定義から、いじめの種類・具体例、心と体への深刻な影響、被害者・保護者の対処法、回復のプロセス、相談窓口まで——苦しむ本人と支える周囲の方に向けて、必要な情報をここにまとめました。

ABOUT BULLYING

いじめとは

いじめは子どもから大人まで、あらゆる年齢層で発生する深刻な社会問題です。文部科学省の調査では、小中高等学校におけるいじめの認知件数は過去最多を更新し続けています。被害者の心に深い傷を残し、うつ病・不安障害・PTSD、さらには自殺にまでつながることがあります。

法的定義

いじめ防止対策推進法における定義

日本においていじめは、2013年に施行された「いじめ防止対策推進法」第2条で法的に定義されています。「児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているもの」と規定されます。

人的関係
学校外も含まれる
同じ学校だけでなく、塾やスポーツクラブなど学校外で関わりのある児童生徒からの行為も対象。
行為の種類
心理的・物理的影響
殴る蹴るの身体的暴力だけでなく、悪口・無視・仲間はずれ・金品強要も含む。
ネットも対象
SNS・メッセージアプリ
インターネットを通じた行為も法的に明確に含まれる。
基準
被害者の苦痛
被害者が苦痛を感じていれば、加害者の意図に関わらず該当し得る。
判断の基準は「被害者が苦痛を感じているか」加害者が「冗談のつもりだった」「遊びだった」と言っても、被害者が苦痛を感じていればいじめに該当します。1回の行為であっても、内容が深刻であればいじめとして認定されます。
国際的な定義

国際的に共有される3つの要素

国際的には、いじめ(bullying)は一般に次の3要素で定義されます。

  • 意図的な攻撃行動相手を傷つけることを意図した行動であること。
  • 力の不均衡(パワーインバランス)体格・人数・社会的地位などの力の差があること。
  • 反復性繰り返し行われること(ただし1回でも深刻なものは含むとする見解も多い)。

米国CDC(疾病対策予防センター)も同様の定義を採用しています。日本のいじめ防止法は、国際的な定義と比べて「反復性」の要件を明示しない点が特徴で、1回の行為でも深刻ないじめとなり得るという認識に基づいています。

現状と統計

認知件数は過去最多を更新中

文部科学省の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」によると、いじめの認知件数は過去最多を更新し続けています。これは「いじめが増えた」だけでなく、いじめへの意識の高まりや早期発見の取り組みにより、以前は見逃されていたいじめが「認知」されるようになった側面もあります。

🌍
国境を越える普遍的な問題国際的には世界の子どもの約3分の1がいじめを経験しているとする研究もあり、いじめは国や文化を超えた普遍的な問題です。一方で、いじめを苦にした自殺や不登校は依然として深刻な状況にあります。
TYPES

いじめの種類と具体例

いじめは身体的なものだけでなく、言葉・関係性・ネット・経済的なものまで多様です。形態によって発見の難易度が異なり、見えにくいものほど長期化しやすい傾向があります。

5つの種類

いじめの5つの形態

タブで切り替えて、それぞれの特徴を確認できます。

👊身体的いじめ

殴る、蹴る、突き飛ばす、物を投げる、つねる、髪を引っ張る、プロレス技を「遊び」と称してかける、持ち物を壊す・隠す・捨てる、金品を強要する(カツアゲ)など、身体に直接的な暴力を加える形態。最も可視化しやすいが、傷を隠されると表面化しないこともある。

ネットいじめは特に深刻ネットいじめは加害者が匿名性を利用して行うため行為がエスカレートしやすく、拡散のスピードが極めて速く、一度投稿された内容は完全に削除することが困難(デジタルタトゥー)です。被害を受けた場合はスクリーンショットで証拠を保存し、速やかに学校・保護者・相談窓口に報告してください。
場面別

小学校・中学校・高校での具体例

同じ「いじめ」でも、年齢段階によって典型的な現れ方が異なります。

🎒
小学校
仲間はずれ、「○○菌がうつる」と避ける、ランドセルへの落書き、容姿のからかい、給食・掃除の班で避ける、嫌な役を押し付ける、替え歌など。
📚
中学校・高校
LINEグループでの悪口、クラス全体での無視、更衣室で服を隠す、上靴をトイレに捨てる、「パシリ」、テストの答えを見せろと脅す、犯罪行為の強要、盗撮画像の流通、部活での暴言・暴力、恋愛を利用したいじめ。
見落とされがち

「遊び」の顔をしたいじめ

「遊び」「ふざけ合い」として見過ごされがちな行為も、被害者が苦痛を感じていればいじめに該当します。

  • 「いじり」「冗談だよ」と言いながら特定の人をネタにして笑いを取る行為。被害者が笑っていても、本心から楽しんでいるとは限らない。
  • 「罰ゲーム」ゲームの負けを理由に恥ずかしいことをさせる行為。「本人も楽しんでいる」と言われるが、実は断れない状況にある。
  • 「プロレスごっこ」「遊び」と称して技をかける行為。一方だけが常にかけられる側であれば、いじめの可能性が高い。
  • 「ノリ」「空気」による強制「みんなやってる」「空気を読め」と同調圧力で不本意な行動を強いる。
  • 「無視」のデジタル組織化LINEグループで特定の人だけ既読無視・返信しない、デジタルなシカト。
💡
「本人が嫌がっていなければいじり」と言われがちですが、力関係が不均等な中で「嫌だ」と言えない状況自体が問題です。「本人も笑っている」は免罪符にはなりません。
WHY IT HAPPENS

いじめが発生する背景・原因

いじめは個人の問題であると同時に、集団・環境・社会の要因が複雑に絡み合って発生する現象です。背景を知ることは「悪いのは誰か」を裁くためではなく、根本的な防止と回復のために必要です。

4つの要因

集団・加害者・学校・デジタル環境

いじめの背景にある主要な要因を4つの観点から整理します。

👥集団の中で生まれる構造

同調圧力、傍観者効果、スケープゴーティング(集団のストレスを一人の標的に向けて結束を維持)、責任の分散、暗黙の権力構造——いじめは加害者個人だけでなく、集団心理のメカニズムによって発生・持続する。

  • 「みんながやっているから」という同調圧力
  • 「誰かが止めるだろう」という傍観者効果
  • 集団内のストレスを標的に向けるスケープゴーティング
  • 責任の分散による行為のエスカレート
  • クラス・部活内の暗黙の序列の固定化
四層構造モデル

森田洋司の「四層構造」——加害・被害だけでない構造

いじめ研究者の森田洋司は、いじめを「四層構造」で捉えるモデルを提唱しました。いじめは加害者と被害者の二者関係だけでなく、周囲の子どもの態度に大きく影響されます。

被害者
いじめの直接的な対象となっている子ども。
加害者
いじめを直接行っている子ども。
観衆
はやし立てたり面白がって見ている子ども。加害者を助長する。
傍観者
見て見ぬふりをしている子ども。「自分には関係ない」「関わると自分が標的に」と感じている。
鍵は「傍観者」を「仲裁者」に変えること傍観者が声を上げることで、いじめは急速に減少するとされています。研究では、傍観者が何らかの行動を取った場合、いじめが10秒以内に止まる可能性が高いと示されています。「傍観者にならない力」を育てることが、いじめ防止の核心です。

なお、いじめの加害者の中には、自身が家庭で虐待を受けていたり、別の場面で被害者であったりする子どももいます。行為を正当化するものではありませんが、加害者を単に「悪い子」として排除するだけでは根本的な解決には至りません。背景への支援も並行して必要です。

IMPACT

いじめが心身に与える影響

いじめは「子ども同士のトラブル」では片付けられない、深刻な健康被害をもたらします。心理面・身体面・長期的なライフコース全般に影響が及びます。

心理的影響

急性期に現れる心理的反応

いじめを受けている最中、被害者にはさまざまな心理的反応が現れます。

😨
恐怖と不安
学校への強い恐怖、「今日も何かされるのでは」という絶え間ない不安。
🌑
孤立感と絶望感
「誰も助けてくれない」「自分は一人ぼっちだ」という深い孤独。
🪞
自責感
「自分に問題があるからいじめられる」と自分を責めてしまう。
🌧
怒りと無力感
理不尽さへの怒りと、それをどうにもできない無力感。
🤐
恥辱感
いじめられていることが恥ずかしく、周囲に知られたくない。
💔
信頼の喪失
友人や大人を信じられなくなる。「誰を信じても裏切られる」という認知。
💡
うつ病・不安障害・PTSDの発症リスクいじめ被害者はそうでない子と比べて、うつ病の発症リスクが2倍以上に高まるとされます。社交不安障害・分離不安・PTSD(フラッシュバック・回避・過覚醒・認知の変化)も生じ得ます。
身体への影響

心理的ストレスが現れる身体症状

特に子どもは感情を言葉で表現するのが難しいため、身体症状として「体からのSOS」が現れます。

  • 腹痛・胃痛学校に行く前や月曜日の朝に特に強くなる。
  • 頭痛緊張型頭痛が多い。授業中や休み時間に悪化することがある。
  • 吐き気・嘔吐朝起きると気持ち悪い、食事が喉を通らない。
  • 睡眠障害寝つけない、悪夢、夜中に目が覚める。
  • 食欲・体重の変化食欲減退または過食。急激な体重増減。
  • 夜尿(退行現象)以前なかったおねしょが再び始まる。
  • 免疫力低下・慢性疲労風邪を引きやすい、常にだるい、疲れが取れない。
保護者の方へ朝になると腹痛・月曜に体調が悪くなる・以前は楽しんでいた活動を避ける——こうした変化が見られたら、いじめを含む学校でのストレスを疑ってください。身体的な原因が見つからない場合は、心理的な要因を探ることが大切です。
長期的な影響

子ども時代のいじめは大人になっても残る

子ども時代のいじめは、成人後もさまざまな精神的健康上の問題として影響を及ぼし続けることが多くの研究で明らかになっています。被害から後遺症までの典型的な経過を時系列で見てみましょう。

幼少期
いじめ被害の発生
心身の苦痛を感じる行為を継続的に受ける。被害者は自責感と恥辱感から、しばしば沈黙する。
在学中
急性期
うつ・不安・PTSDの発症
持続的な悲しみ、興味の喪失、社交不安、フラッシュバック、回避、過覚醒。被害者はそうでない子と比べてうつ病発症リスクが2倍以上高いとされる。
被害中〜直後
思春期
自尊心の低下と自殺リスク
自殺念慮・自傷行為のリスクが有意に上昇。家庭問題や精神疾患と複合するとさらに高まる。
中高生期
成人期
遅発性のトラウマ反応
職場での対人困難、恋愛・夫婦関係の問題、慢性的な低自己評価、過剰な気遣いと自己犠牲、原因不明の身体症状。
20代以降
複雑性PTSD
長期化したトラウマの後遺症
情動調節困難、否定的な自己概念、対人関係障害、解離症状、身体症状の慢性化。境界性パーソナリティ障害や双極性障害と誤診されることもある。
未治療の場合
💡
遅発性のトラウマ反応職場で少し強い言葉をかけられただけで子どもの頃のフラッシュバックが起きる、親密な相手を信頼できない、過剰な気遣いと自己犠牲——「なぜ自分はこんなに生きにくいのか」と感じる大人の中に、子ども時代のいじめのトラウマが根底にあるケースがあります。「もう昔のことだから」と我慢する必要はありません。

2026年の東京医科歯科大学等の研究では、いじめ被害によるストレスが糖化ストレス(終末糖化産物)を増加させ、うつ病や精神症状のリスクを高める可能性が示唆されています。社会的・経済的にも、学歴・就労・生涯収入・社会的孤立への影響が報告されています。

自殺リスク

いじめは自殺リスクを高める重大な要因

いじめは自殺のリスクを高める重大な要因です。被害者は自殺念慮を抱くリスクが有意に高く、自傷行為のリスクも増加します。家庭問題や精神疾患と複合するとリスクはさらに高まります。加害者もまた長期的には自殺リスクが高まるという研究結果があります。

🆘
「死にたい」と感じたら、今すぐ相談を「死にたい」「消えてしまいたい」という気持ちが少しでもある場合は、今すぐ相談してください。いのちの電話(0120-783-556)、チャイルドライン(0120-99-7777)、よりそいホットライン(0120-279-338)は24時間・無料で相談できます。あなたは一人ではありません。
SIGNS

いじめのサインと気づき方

いじめを受けている子どもは、恥ずかしさや報復への恐れから、自分から打ち明けないことが多くあります。周囲の大人が日常の小さな変化に気づくことが、早期発見の鍵となります。

子どものサイン

保護者が気づきたい10のサイン

子どもはいじめを受けていても、親に打ち明けないことが少なくありません。次のようなサインに注意してください。

  • 学校に行きたがらない、朝起きられない
  • 持ち物がなくなる・壊れている、服が汚れる・破れる
  • 原因不明の頭痛・腹痛・吐き気
  • 成績の急激な低下
  • 友達の話をしなくなる、一人でいることが増える
  • スマホを見て急に暗い表情になる
  • お小遣いがすぐなくなる、お金を持ち出す
  • 食欲・睡眠の変化
  • 急に暴力的になる、または極端にふさぎ込む
  • 自傷行為(リストカット等)
サインは「点」ではなく「変化」で捉える一つひとつの行動はささいに見えても、「以前と違う」「短期間に複数当てはまる」ときは要注意です。「最近どう?」と話を聞く時間を意識的に作ってみてください。
犯罪に該当するいじめ

いじめと刑法上の犯罪

いじめの内容によっては、刑法上の犯罪に該当する場合があります。

  • 暴行罪・傷害罪:殴る・蹴る・物を投げる・怪我を負わせる
  • 脅迫罪・恐喝罪:「殺すぞ」と脅す、脅して金品を要求する
  • 強要罪:万引きなどの犯罪行為を強制する
  • 名誉毀損罪・侮辱罪:SNS等で虚偽を広める・公然と侮辱する
  • 器物損壊罪・窃盗罪:持ち物を壊す・盗む
  • 児童ポルノ禁止法違反:裸の画像を撮影・拡散する
14歳以上は刑事責任を問われ得る14歳以上の少年が犯罪に該当するいじめを行った場合、刑事責任を問われる可能性があります。14歳未満の場合も児童相談所への通告や少年審判の対象となります。内容が犯罪に該当する場合は、警察への相談(#9110)も選択肢の一つです。
SUPPORT

被害者と保護者の対処

いじめを受けたとき、一人で抱え込む必要はありません。具体的なステップを踏みながら、信頼できる大人と一緒に動いていくことが、解決と回復への最短ルートです。

あなたへ

いじめを受けている人へのメッセージ

もし今あなたがいじめを受けているなら、次のことを知ってほしいです。

あなたは悪くないいじめの原因はあなたにはありません。「自分が変われば止まる」と思う必要はなく、悪いのはいじめる側です。誰かに話すことは「弱さ」ではなく勇気ある行動です。学校に行くのがつらいなら休んでいい。あなたの命と心の健康が、何よりも大切です。家族・先生・スクールカウンセラー・電話相談——あなたの味方は必ずいます。
5つのステップ

被害者ができる具体的なステップ

焦って全部を一度にやろうとしなくていいです。今日できそうなことから一歩ずつ進めてください。

STEP 1
信頼できる大人に相談する
保護者、担任、スクールカウンセラー、保健室の先生、祖父母、塾の先生——誰でも構いません。身近な人に話しにくければ、電話・チャット相談も使えます。
最初の一歩
STEP 2
記録を残す
いつ・どこで・誰から・何をされたかをメモに残し、SNSのいじめはスクリーンショットで保存。後で相談や法的対応をする際の重要な証拠になります。
並行して継続
STEP 3
身を守る
暴力の危険があればその場を離れ、信頼できる友人と一緒にいる。危険を感じたら迷わず110番通報。安全の確保が最優先です。
危険時
STEP 4
自分を大切にする
つらいときは無理をしない。好きなことをする時間、安心できる場所で過ごす時間を意識的に作る。心と体の休息が回復の土台になります。
回復期
STEP 5
環境を変えることも選択肢
転校、通信制高校、フリースクール、適応指導教室、転居——いじめの環境から離れることは「逃げ」ではなく、心と体を守る正当な選択です。
必要に応じて
💡
環境を変えることは「逃げ」ではない転校・通信制高校・フリースクール・適応指導教室・転居——いじめが起きている環境から距離を置くことは、心と体を守るための正当な選択です。「学校は絶対に行かなければならない場所」という思い込みを外すことが、回復の第一歩になることがあります。
保護者の対応

子どもが打ち明けたとき・学校への相談

子どもが打ち明けてくれたとき、最初の対応がその後の信頼関係と回復を大きく左右します。

  • まず聴く:最後まで否定せずに聴く。「大したことない」「あなたにも原因が」は絶対に言わない
  • 「あなたは悪くない」:責任が子ども自身にはないことを明確に伝える
  • 「話してくれてありがとう」:打ち明けた勇気を認める
  • 「一緒に考えよう」:一人で解決しなくていいこと、親が守ることを伝える
  • 子どもの意向を尊重:どうしたいか確認し、勝手に動かない

学校への相談では、感情的にならず事実を冷静に伝え、記録(日時・内容・証拠)を整理して持参します。担任だけでなく管理職・スクールカウンセラーにも相談し、対応方針を文書化。学校の対応が不十分な場合は、教育委員会・外部機関(法務局・警察・法テラス等)への相談も検討してください。

感情的に学校に怒鳴り込まない子どもの気持ちを無視して感情的に学校へ怒鳴り込むと、子どもは「話さなければよかった」と後悔し、二度と打ち明けてくれなくなる可能性があります。冷静に、子どもの気持ちに寄り添いながら進めてください。
相談窓口

一人で悩まないで——主な相談窓口

電話・チャットで匿名・無料で相談できる窓口があります。「こんなことで相談していいのかな」と思わなくて大丈夫です。

  • チャイルドライン 0120-99-7777 (18歳まで対応。無料・匿名。チャット相談も可)
  • 24時間子供SOSダイヤル 0120-0-78310 (24時間・無料・全国対応)
  • 子どもの人権110番 0120-007-110 (法務省・無料電話相談)
  • よりそいホットライン 0120-279-338 (24時間・無料)
  • いのちの電話 0120-783-556 (24時間・無料)
  • 警察相談専用電話 #9110 (犯罪に該当するいじめの相談)
RECOVERY

いじめからの回復のプロセス

いじめの傷は、時間が経てば自然に治るものではありません。安全の確保・信頼関係・専門家の支援を組み合わせ、自分のペースで少しずつ進めていくことが回復の道筋です。

6つの要素

回復を支える6つの要素

いじめからの回復には、次のような要素がそろうことが大切です。

🛡
安全の確保
いじめの環境から離れ、安全な場所を確保する。これが回復のすべての前提となる。
🤝
信頼できる人との繋がり
家族・友人・カウンセラー・教師など、安心して頼れる人の存在が回復の基盤になる。
🌊
感情の表現と処理
怒り・悲しみ・恐怖などの感情を安全な場で表現し、処理していく。
🌱
自尊心の回復
自分の価値を再認識し、「自分はこのままでいい」という感覚を取り戻す。
🎯
新しい成功体験
新しい環境や活動の中で、肯定的な経験を少しずつ積み重ねる。
🏘
学校以外の居場所
フリースクール・習い事・オンラインコミュニティなど、学校以外で安心できる場の存在が回復力を高める。
💡
学校以外の居場所を持つ学校だけが世界のすべてではありません。フリースクール・オルタナティブスクール、適応指導教室、地域の習い事・スポーツ、オンラインコミュニティ、家庭内での肯定的な体験——別の場所で「できた」「楽しい」と感じる経験が、レジリエンス(回復力)を育てます。
複雑性PTSD

長期化した場合の複雑性PTSD

長期にわたるいじめや深刻ないじめを経験した場合、通常のPTSDを超えた複雑性PTSD(C-PTSD)に発展することがあります。繰り返されたトラウマ体験によって生じる障害で、次のような特徴があります。

  • 情動調節の困難:怒り・悲しみ・恐怖が急激に変化し自分でコントロールしにくい
  • 否定的な自己概念:「自分はダメ」「価値がない」という深く固定化した自己否定
  • 対人関係の障害:信頼できない・親密さへの強い恐怖、または逆に依存的
  • 解離症状:離人感、記憶の空白、感情の麻痺
  • 身体症状の慢性化:原因不明の痛み、疲労感、消化器系の不調

治療は「安全の確立 → トラウマの処理 → 社会への再統合」の3段階で進めることが推奨されています。複雑性PTSDは以前は境界性パーソナリティ障害や双極性障害と誤診されることがあったため、いじめ経験を医療機関に詳しく伝えることが大切です。

専門家の支援

専門家による支援と治療法

いじめのトラウマには、エビデンスのある複数の治療法があります。「一つの方法で全員に効く」わけではないので、専門家と相談しながら自分に合うものを選びます。

🌱
スクールカウンセラー
学校配置のカウンセラーによる相談。無料で利用でき、最初の相談先として有効。
🌱
認知行動療法(CBT)
いじめによって形成された否定的な思考パターンを修正していく治療法。エビデンスが豊富。
🌱
EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)
眼球を左右に動かしながらトラウマ記憶を処理。WHOもPTSD治療として推奨。
🌱
TF-CBT(トラウマフォーカスト認知行動療法)
子どものトラウマ治療に特化したCBT。保護者も参加し家族ぐるみで回復を支える。
🌱
PE療法(持続エクスポージャー療法)
安全な環境でトラウマ体験を段階的に振り返り、恐怖反応を和らげる。
🌱
DBT(弁証法的行動療法)
感情調節スキルを学び、複雑性PTSDの情動不安定に対処する治療法。
🌱
プレイセラピー/家族療法
年少児には遊びを通じてトラウマを処理。家族療法は家族全体で回復を支える。
🌱
薬物療法
うつ症状・不安・睡眠障害が強い場合、SSRI等の抗うつ薬や抗不安薬が処方されることがある。心理療法と組み合わせて効果を発揮する。
経済的支援も活用できる継続的な通院が必要な方には「自立支援医療制度(精神通院医療)」があります。通常3割の医療費自己負担が原則1割に軽減され、世帯収入に応じた月額上限額も設定されます。市区町村の障害福祉課で申請できます。精神保健福祉センター(全国69か所)でも相談・医療機関紹介が受けられます。
FOR FAMILY & SUPPORTERS

周囲の人ができるサポート

家族・友人・教師・地域——いじめに苦しむ人を支える周囲の関わり方が、回復の質を大きく左右します。「励まし」のつもりが逆効果になることもあるため、ポイントを押さえましょう。

対応のポイント

してよいこと・してはいけないこと

子どもがいじめを打ち明けてくれたとき、保護者・教師・周囲の大人が取れる対応を整理します。

DO
回復を支える対応
  • 子どもの話を最後まで否定せずに聴く
  • 「あなたは悪くない」と明確に伝える
  • 「話してくれてありがとう」と勇気を認める
  • 「一緒に考えよう」と安心させる
  • 子どもの意向を尊重する
  • 事実を整理して冷静に学校へ相談する
DON'T
逆効果になる対応
  • 「そんなの大したことない」と否定する
  • 「あなたにも原因があるのでは」と責める
  • 感情的に学校へ怒鳴り込む
  • 他の子と比較する
  • 「学校には絶対行きなさい」と強要する
  • 本人の意向を無視して勝手に動く
子どもに沈黙を強いないために子どもの気持ちを尊重し、勝手に動かない。「あなたは悪くない」「話してくれてありがとう」「一緒に考えよう」——この3つの言葉が、信頼と回復の土台を作ります。
未然防止と早期発見

学校・地域でのいじめ防止

いじめは個人の力だけでなく、学校・保護者・地域が一体となって取り組むことで、発生・長期化を防ぐことができます。

  • 居場所づくり:多様性を認め合う学級・学校づくり、道徳・人権教育の充実
  • 傍観者教育:「傍観者にならない力」を育てる教育、ソーシャルスキルトレーニング
  • 定期アンケート・個別面談:匿名アンケートと教師の観察で早期発見
  • 複数相談ルート:担任・スクールカウンセラー・養護教諭・管理職など複数の相談先を周知
  • 組織的対応:担任一人で抱え込まず、学校全体で対応
  • 地域・専門職の連携:PTA、民生委員、スクールソーシャルワーカー、警察・司法との連携

2013年のいじめ防止対策推進法は、学校・保護者・地域が一体となって取り組む体制を求めています。「チーム学校」として多職種が連携することが、早期発見・解決の鍵となります。

FAQ

よくある質問

Q. 子どもがいじめを受けているようですが、本人が認めません。どうすればいいですか?

A. 打ち明けないのは恥ずかしさ・親への気遣い・報復への恐れが理由です。無理に聞き出すのではなく「何があっても味方だよ」「いつでも話を聴くよ」というメッセージを伝え続けてください。同時に学校(担任・スクールカウンセラー)に状況を共有し、観察と対応を依頼することが大切です。

Q. いじめで不登校になっています。学校に行かせるべきですか?

A. 無理に行かせる必要はありません。いじめが続く環境に送り出すことはさらなる被害につながります。まずは心身の安全と回復を最優先に。学校との連携で安全な復帰条件を確認するか、適応指導教室・フリースクールなどの代替的な学びの場を検討しましょう。

Q. いじめの加害者に法的な責任を問うことはできますか?

A. 内容が暴行・傷害・脅迫・恐喝・名誉毀損などの犯罪に該当する場合、警察への被害届や刑事告訴が可能です。14歳以上は刑事責任を問われ得ます。加害者やその保護者への民事上の損害賠償請求、学校設置者への責任追及も可能なケースがあります。弁護士への相談をおすすめします。

Q. ネットいじめの証拠はどう保存すれば?

A. スクリーンショットを撮影し、投稿者のアカウント名・投稿日時・内容が分かる形で保存してください。削除される前に早急に。掲示板の場合はURLも記録。学校への相談や警察への被害届で活用できます。

Q. 大人になっても子どもの頃のいじめのトラウマに苦しんでいます。

A. 子ども時代のいじめのトラウマが大人になっても残ることは珍しくありません。「もう昔のことだから」と我慢する必要はありません。心療内科やカウンセラーに相談し、認知行動療法・EMDR・TF-CBTなどの適切な治療を受けることで症状の改善が期待できます。

Q. 我が子がいじめの加害者だと言われました。

A. まず冷静に事実関係を確認してください。学校から具体的な内容を聴き、お子さんにも話を聴く。重要なのは行為を明確に否定すること(「やってはいけない」と伝える)と、お子さん自身を否定しないこと(「お前はダメだ」と言わない)です。背景にある問題(ストレス・家庭環境・友人関係)にも目を向け、必要な支援を行ってください。

Q. 傍観者の立場にいる子どもにはどう伝えれば?

A. 「一人で止めようとしなくていい」「先生に知らせるのは裏切りではない」「『つらそうだけど大丈夫?』と声をかけるだけでも助けになる」と伝えてください。研究では傍観者が何らかの行動を取ると、いじめが10秒以内に止まる可能性が高いとされています。

Q. 精神保健福祉センターはどこにありますか?

A. 各都道府県と政令指定都市に設置され、全国に69か所あります。心の健康に関するあらゆる相談を無料で受け付けており、いじめによる精神的ダメージ・うつ症状・不眠・引きこもり等にも対応。電話・面接どちらも可能で、医療機関の紹介も行っています。

Q. 心療内科の受診費用が心配です。

A. 継続通院が必要な方には「自立支援医療制度(精神通院医療)」があります。通常3割の自己負担が原則1割に軽減され、世帯収入に応じた月額上限額も設定されます。申請は市区町村の障害福祉課などで行い、医師の診断書が必要です。

いじめのつらさを
一人で抱え込まないで

あなたは悪くない。誰かに話すことは「弱さ」ではなく勇気ある行動です。子どもさん本人も、見守る保護者の方も、ココトモにお気持ちを聞かせてください。

今すぐ話したい方へ——相談窓口
ココトモ相談するチャット相談・無料
いのちの電話0120-783-55624時間・無料
よりそいホットライン0120-279-33824時間・無料

このページの情報は、医師による診断や治療に代わるものではありません。症状が気になる場合は、心療内科・精神科への受診をご検討ください。

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