コデペンデンシー(共依存)とは?
5つの中核症状・アダルトチルドレン・回復のステップを徹底解説
「相手のためにと思って尽くしているのに報われない」「困っている人を放っておけず、自分のことは後回し」「誰かに必要とされることでしか安心できない」——共依存は、他者との関係に過度に依存し、自分自身を見失う状態です。定義・5つの中核症状・原因・アダルトチルドレンとの関係・回復のステップまで、必要な情報をすべてここにまとめました。
コデペンデンシー(共依存)とは
共依存は、自分と特定の相手との関係に過度に依存し、その関係性に囚われている状態です。1970年代のアメリカで、アルコール依存症者の妻たちの観察から生まれた概念で、現在では依存症の家族にとどまらず、幅広い人間関係のパターンを説明する枠組みとして用いられています。
共依存の定義
コデペンデンシー(Co-dependency、共依存)とは、自分と特定の相手との関係に過度に依存し、その関係性に囚われている状態を指します。共依存の人は、自分自身の感情やニーズよりも相手の感情やニーズを優先し、相手の世話をしたり問題を解決したりすることに自己の存在価値を見出す傾向があります。
共依存は単なる「優しすぎる性格」や「世話好き」ではありません。その根底には「自分には価値がない」「誰かに必要とされなければ存在する意味がない」という深い自己否定感があり、それを相手の世話をすることで埋めようとする心理メカニズムが働いています。結果として、相手のためと思ってしていることが実は相手の自立を妨げ(イネイブリング)、自分自身も疲弊し傷つくという悪循環に陥ります。
共依存の本質——「関係への嗜癖」
共依存は「人間関係への嗜癖(アディクション)」と表現されることがあります。アルコール依存の人がお酒をやめられないように、共依存の人は特定の関係パターン(相手を世話する、相手に尽くす、相手に合わせる)をやめられません。
共依存と「健全な相互依存」の違い
人間は社会的な存在であり、他者と支え合って生きていくのは自然なことです。大切なのは、「共依存(co-dependency)」と「健全な相互依存(interdependence)」を区別することです。
- 自分のニーズ○ 健全な相互依存:自分のニーズも相手のニーズも大切にする× 共依存:相手のニーズを優先し、自分のニーズを無視する
- 境界線○ 健全な相互依存:明確な境界線を保ちつつ助け合う× 共依存:境界線が曖昧で、相手の問題を自分の問題にする
- 動機○ 健全な相互依存:相手を大切に思う気持ちから× 共依存:「必要とされたい」「見捨てられたくない」
- 自己価値○ 健全な相互依存:自分自身の中に価値を感じられる× 共依存:相手に必要とされることで初めて価値を感じる
- 相手の自立○ 健全な相互依存:相手の自立と成長を支援する× 共依存:相手が自立すると不安になる(自分が不要になるから)
- 感情○ 健全な相互依存:自分の感情と相手の感情を区別できる× 共依存:相手の感情に巻き込まれ、自分の感情が分からなくなる
- 一人の時間○ 健全な相互依存:一人でいることも楽しめる× 共依存:一人でいることに強い不安を感じる
共依存概念の歴史
「共依存(Co-dependency)」という言葉は、1970年代のアメリカで生まれました。アルコール依存症の治療に携わる援助者たちが、依存症者本人だけでなく、その家族(特に妻やパートナー)もまた深刻な心理的苦痛を抱えていることに気づいたのが始まりです。
当初、アルコール依存症者の妻たちは「co-alcoholic(コ・アルコホリック)」と呼ばれていました。彼女たちは夫の飲酒問題を管理しようとし、夫の代わりに問題を解決し、夫の行動の結果から夫を守ろうとしましたが、結果として夫は問題に直面する機会を失い、依存症がさらに悪化するという皮肉な構造が明らかになりました。
やがてこの概念は、薬物依存・ギャンブル依存、さらには依存症以外の問題を抱える人の家族・パートナーにも当てはまることが認識され、より広い「co-dependency(共依存)」へと発展しました。
共依存の5つの中核症状
ピア・メロディが提唱した「5つの中核症状」モデルは、共依存の臨床的理解の基盤となっています。すべての共依存行動の土台にある5つの心理的問題を確認していきましょう。
💎 自尊心の問題
内的な自己価値の感覚を持つことが困難。「自分には価値がある」と心の底から感じることができず、常に他者との比較や評価で自分の価値を判断しようとする。
🚧 境界線の問題
自分と他者の間に適切な「境界線(バウンダリー)」を引くことが困難。「ここまでが自分の領域、ここからが相手の領域」という心理的な線引きができない。
🔍 現実認識の問題
自分自身の感情、ニーズ、欲求を正確に認識することが困難。「自分は何を感じているのか」「何がしたいのか」「どんな人間なのか」が分からない。幼少期に「あなたの感情は重要ではない」というメッセージを繰り返し受け取った結果、感情を抑圧し他者に合わせるスキルだけが発達した。
🔗 依存とニーズに関する問題
自分のニーズを適切に認識し、それを他者に伝えて助けを求めることが困難。
⚖ 節度に関する問題
物事の「ちょうどいい加減」が分かりにくい。行動・感情表現・思考・関係性のすべてにおいて「極端」になりやすい。
共依存の行動パターン
共依存は5つの中核症状を土台に、4つの代表的な行動パターンとして日常に現れます。自分の中の「クセ」として見つけていきましょう。
日常に潜む4つの共依存パターン
相手が自分の問題に直面し、その結果を引き受ける機会を奪ってしまう行為。本人は「助けている」つもりが、実際には相手の問題を維持・悪化させる。
- アルコール依存の夫が二日酔いで出勤できない時、会社に「体調不良」と嘘の電話をする
- 子どもが宿題をしないことを叱るのではなく、代わりに宿題をやってあげる
- パートナーのギャンブルの借金を繰り返し肩代わりする
- 友人の問題を全面的に引き受け、自分の生活を犠牲にして解決しようとする
- 部下のミスを常にカバーし、上司に報告しない
根底には「相手が苦しむのを見ていられない」という自己の苦痛を回避する動機と、「必要とされたい」という欲求がある。相手の成長と自立を妨げる結果になる。
他者の期待に応え、喜ばせ、衝突を避けることに過度に注力する。「NO」と言うことが非常に困難で、本心では嫌でも要求を受け入れてしまう。
- 本心では行きたくない飲み会に、断れずに毎回参加する
- 自分の意見と異なっていても、相手の意見に同意する
- 相手の気分を害しないように、常に言葉を選んで話す
- 頼まれごとをどれだけ抱えていても、新しい頼みを引き受けてしまう
- 自分が本当にしたいことよりも、相手が喜ぶことを優先する
背景には「嫌われたくない」「見捨てられたくない」という深い恐怖がある。
「相手に合わせる」と同時に「相手をコントロールしようとする」両面性。目的は「自分の安全」を確保すること——相手の行動が予測できないと自分が傷つくリスクがあるため。
- パートナーの行動を常に把握しようとする(メールをチェックする、行動を詮索する)
- 「あなたのためを思って」と言いながら、相手の行動や選択を誘導する
- 相手が自分の思い通りに動かないと怒りや失望を感じる
- 家族のスケジュールや活動をすべて自分が管理したがる
- アドバイスを求められていないのに、「こうすべきだ」と言う
自分のニーズを後回しにして相手に尽くすことを美徳と感じる。「自分さえ我慢すればうまくいく」「相手のために犠牲になることは素晴らしいことだ」という信念が、自己犠牲を正当化し維持する。
長期的には恨みと疲弊を蓄積させる。「こんなに頑張っているのに感謝されない」「自分ばかり損をしている」という被害者意識が募り、やがて怒りが爆発したり、体の症状として現れる。
共依存セルフチェック——20の質問
日常の自分の行動や感情を振り返り、当てはまるものをチェックしてみましょう。5つのカテゴリ・各4項目で構成されています。
5〜10個:共依存の傾向が見られます。自分のパターンに注意を払い、カウンセリングや書籍での学びを検討してみましょう。
11〜15個:共依存の傾向がかなり強い状態です。カウンセリングや自助グループへの参加を強くお勧めします。
16個以上:深刻な共依存状態の可能性が高いです。専門家のサポートを受けることが回復の第一歩です。
共依存の原因と背景
共依存パターンは「弱い性格」ではなく、幼少期の環境で身につけた適応の結果です。どのような土壌で形成されるのかを理解することが、自分を責めずに回復へ進む助けになります。
機能不全家族での幼少期体験
共依存の最も大きな原因は、機能不全家族(dysfunctional family)での幼少期体験です。機能不全家族とは、子どものニーズよりも親のニーズが優先され、子どもが安全に感情を表現し成長できる環境が提供されない家庭を指します。
- 依存症のある家庭親のアルコール依存、薬物依存、ギャンブル依存などにより家庭が混乱。子どもは親の世話をする「小さな大人」の役割を強いられる。
- 精神疾患のある家庭親のうつ病、双極性障害、パーソナリティ障害などにより、子どもが感情的なケアテイカーの役割を担わされる。
- 虐待のある家庭身体的虐待、精神的虐待、性的虐待、ネグレクト(養育放棄)が存在。子どもは「自分が悪いからこうなる」と信じ込み、親の機嫌を取ることでサバイバルする。
- 過干渉・過保護の家庭子どもの自律性を尊重せず、親が過度にコントロールする。または、子どもに自分の感情的ニーズを満たすことを期待する(感情的な近親姦)。
- 感情表現が禁じられた家庭「泣くな」「怒るな」「弱音を吐くな」と感情表現を禁じられた環境。子どもは感情を抑圧し、「良い子」でいることでサバイバルする。
幼少期に学んだサバイバルスキル
共依存的な行動パターンは、もともとは幼少期に安全でない環境で生き延びるために身につけた「サバイバルスキル」です。子ども時代の対処法が、大人になっても自動的に作動し続けることが問題になります。
社会文化的な要因——日本社会と共依存
共依存は個人の問題だけではなく、社会文化的な要因も影響します。特に日本社会では、以下のような価値観が共依存的な行動パターンを強化する面があります。
- 「自己犠牲」の美化自分を犠牲にして他者に尽くすことが「美徳」とされる文化。「滅私奉公」「相手のために」という言葉が肯定的に使われる。
- 「和」の重視個人の意見や感情よりも集団の調和を優先する文化。NOと言うことが「わがまま」「自分勝手」と見なされやすい。
- ジェンダー規範「女性は優しく従順であるべき」「男性は弱さを見せるべきではない」というジェンダー規範が、共依存的なパターンを助長する。
- 「親孝行」の圧力どれだけ機能不全な親でも「親には感謝すべき」「親を敬うべき」という圧力が、自分の傷つき体験を否認させる。
アダルトチルドレン(AC)と共依存
アダルトチルドレンと共依存は、コインの表裏の関係にあります。子ども時代に身につけた信念と役割が、大人の関係パターンとしてどう現れるのかを見ていきます。
アダルトチルドレン(AC)とは
アダルトチルドレン(Adult Children、AC)とは、機能不全家族のもとで育ち、子ども時代の体験が大人になってもトラウマとして影響を与えている人を指します。もともとはACOA(Adult Children of Alcoholics:アルコール依存症の親のもとで育った大人)という概念から始まりましたが、現在ではアルコール依存に限らず、あらゆる機能不全家族の出身者を含む広い概念として使われています。
アダルトチルドレンの最大の特徴は、自尊感情(自己肯定感)の低さです。「自分には価値がない」「自分は愛されるに値しない」という根深い信念を持ち、これがさまざまな生きづらさの根底にあります。この自尊感情の低さが、まさに共依存の中核症状の一つと一致します。
アダルトチルドレンが取りやすい「役割」
機能不全家族の中で、子どもたちはそれぞれ特定の「役割」を無意識に引き受けます。この役割は大人になっても継続し、共依存パターンの一部として機能します。
ACが共依存に陥りやすい理由——5つの信念
アダルトチルドレンが共依存に陥りやすい理由は、幼少期の体験が以下のような「信念」を形成するためです。これらは幼少期には事実に基づいていたかもしれませんが、大人になった今もそのまま適用されていることが問題です。
- 「自分のニーズは重要ではない」→ 他者のニーズを優先する
- 「愛されるためには何かをしなければならない」→ イネイブリング、過度な世話
- 「感情を出すと危険」→ 感情の抑圧、境界線の問題
- 「世界は安全ではない」→ コントロール欲求、過度な警戒
- 「自分が頑張れば家族(相手)は変わる」→ 変化への非現実的な期待
共依存と愛着スタイル——不安型・回避型の関係
共依存のパターンは、しばしば幼少期に形成された「愛着スタイル」と密接に関連しています。愛着理論では、人間は乳幼児期の養育者との関係から「安全型」「不安型(不安定・アンビバレント型)」「回避型」「混乱型(恐れ・回避型)」のいずれかの愛着スタイルを発達させると考えられています。
共依存と最も関連が深いのは「不安型愛着」です。不安型愛着の人は「自分は愛されるに値しない」という核心的な信念を持ち、相手に見捨てられることへの恐怖から、相手のニーズを優先することで関係を維持しようとします。「自分が尽くさなければ相手は去ってしまう」「完璧に相手の期待に応えなければ愛されない」という信念が、共依存の行動の根底にあることが多いです。
共依存が人間関係に与える影響
共依存は恋愛・夫婦・親子・職場——あらゆる関係に現れます。場面別にどのようなパターンとして表れるのかを確認しましょう。
恋愛・パートナー関係に現れるパターン
共依存は恋愛・パートナー関係において最も顕著に現れます。共依存の人は、以下のような関係パターンを繰り返す傾向があります。
親子関係——世代間連鎖
共依存は親子関係にも深い影響を与えます。共依存の親は、子どもに対して以下のようなパターンを示すことがあります。
- 過保護・過干渉子どもが困らないように先回りし、子どもの自立の機会を奪う。
- 子どもへの感情的依存子どもを「自分の感情的な支え」として頼り、子どもに親の世話役を期待する(世代間逆転)。
- 条件付きの愛情「良い子」でいることを条件に愛情を与え、子どもの自由な感情表現を制限する。
- 子どもを通じた自己実現自分が果たせなかった夢や目標を子どもに投影し、子ども自身の意思を無視する。
職場の人間関係——バーンアウトに至る前に
共依存は職場でも影響を及ぼします。同僚の仕事を常に引き受ける、上司の不合理な要求にNOと言えない、チームのために自分を犠牲にしすぎる、他者の評価に過度に敏感で仕事のパフォーマンスが不安定になるなどのパターンが見られます。結果として、燃え尽き症候群(バーンアウト)に陥りやすくなります。
共依存の治療と回復
共依存からの回復は「自分自身を取り戻す旅」です。専門的な治療・自助グループ・3つの回復段階・境界線の作り方・日常の習慣の5つの軸で、立体的に取り組んでいきます。
カウンセリング・心理療法
共依存からの回復において、カウンセリング・心理療法は最も効果的なアプローチの一つです。
自助グループ——仲間とともに歩む回復
共依存からの回復において、自助グループは非常に大きな力を持ちます。「自分と同じ経験をしている人がいる」という実感は、孤立感を和らげ、回復の希望を与えてくれます。
- CoDA(Co-Dependents Anonymous)共依存からの回復を目指す12ステッププログラムの自助グループ。日本でもミーティングが開催されている。
- アラノン(Al-Anon)アルコール依存症者の家族・友人のための自助グループ。共依存の問題も中心的に扱われる。全国各地でミーティングが開催。
- ナラノン(Nar-Anon)薬物依存症者の家族のための自助グループ。
- ACA/ACOAアルコール依存症の家族のもとで育ったアダルトチルドレンのための自助グループ。
回復のプロセス——3つの段階
共依存からの回復は、一般的に以下の3つの段階を経て進みます。
健全な境界線の作り方
境界線(バウンダリー)とは、「自分はどこまで許容でき、どこからは許容できないか」を定める心理的・行動的なラインです。健全な境界線があることで、自分の感情・時間・エネルギー・身体を守りつつ、他者と適切な関係を保つことができます。
共依存からの回復において、境界線を設定する練習は最も重要で、最も難しいステップです。以下の5ステップで練習していきましょう。
回復を支える4つの日常習慣
「自分を大切にする」を毎日の練習にしていきます。共依存の方にとってセルフケアは革命的なこと——最初は罪悪感を伴いますが、自分が満たされていなければ他者に真の意味で与えることはできません。
周囲の方へ・誤解と真実・FAQ
共依存の方を支える家族・パートナー・友人へのメッセージ、そしてよくある6つの誤解、10の質問への回答をまとめました。
共依存の方の周囲にいる方へ
共依存の方のパートナーや家族の中には、相手が共依存のパターンを変え始めた時に戸惑いを感じる方もいます。これまで「何でもしてくれていた」人が急にNOと言い始めたり、自分の時間を優先し始めたりすることは、関係の変化を意味するからです。
しかし、共依存のパターンからの回復は、当人のためだけでなく、関係全体のためにもなります。共依存関係は表面的には「うまくいっている」ように見えても、内部では両者が傷つき続けている状態です。一方が変わることで、関係性全体がより健全な方向に変化する可能性があります。
- ✓回復のプロセスを応援し、境界線の設定を尊重する
- ✓相手が「NO」と言った時に、それを受け入れる(責めない)
- ✓「以前のほうが良かった」と言わない
- ✓共依存について自分も学ぶ(共依存は関係性の問題であり、片方だけの問題ではない)
- ✓必要に応じてカップルカウンセリングを検討する
共依存にまつわる6つの誤解と真実
真実:共依存の概念は依存症者の家族の観察から生まれましたが、現在では依存症の家族に限定されない広い概念として理解されています。共依存パターンは、依存症のない関係(職場、友人関係、恋愛関係全般)でも見られます。機能不全家族で育った方は、パートナーが依存症でなくても共依存パターンを持つことがあります。
真実:歴史的に共依存は「アルコール依存症者の妻」の問題として認知されたため、女性の問題と誤解されがちです。しかし共依存は性別を問わず生じます。男性の共依存は「コントロール」「問題解決」「感情の抑圧」として現れることが多く、見えにくい面がありますが、確実に存在します。
真実:共依存は「生まれつきの性格」ではなく、「学習された行動パターン」です。幼少期の環境で身につけた対処法であるため、意識的な学び直しと実践によって変えることができます。回復には時間がかかりますが、カウンセリング、自助グループ、日常的な実践を通じて、より健全な関係パターンを身につけることは十分に可能です。
真実:他者を大切にすること自体は良いことです。しかし、「尽くす」ことが自分のニーズの無視、自尊心の補填、相手のコントロールの手段になっている場合は、それは「愛」ではなく「共依存」です。健全な関係では「与えること」と「受け取ること」のバランスが取れています。一方的に尽くし続ける関係は、長期的には両者を傷つけます。
真実:共依存からの回復は、優しさや思いやりを失うことではありません。むしろ、自分と相手の両方を大切にできるようになることです。「自分を犠牲にして相手に尽くす」のではなく、「自分を大切にしながら、相手も大切にする」——それが回復の先にある健全な関係のあり方です。回復後は、より選択的に、より意識的に、より持続可能な形で、他者に対して思いやりを示せるようになります。
真実:深い愛情と共依存は混同されやすいですが、本質的に異なります。健全な愛情は相手の自立と成長を支え、自分自身の人生も大切にしながら相手と関わります。一方、共依存は「相手が自分を必要としている状態を維持することへの依存」であり、相手の自立は自分の「存在価値」を脅かすものとして無意識に妨げられます。「愛しているからこそ何でもしてあげたい」という感覚は本物の感情ですが、それが相手の問題解決の機会を奪い、自分を傷つけているとすれば、その「愛」のあり方を問い直す必要があります。愛することと、自分を犠牲にすることは別です。
よくある質問
A. 共依存(コデペンデンシー)は、DSM-5やICD-11に独立した精神疾患として収載されていません。そのため、厳密には「病気」ではなく、対人関係の「パターン」や「傾向」として位置づけられています。しかし、共依存が深刻な場合は、うつ病、不安障害、適応障害などの精神疾患を併発することが多く、治療の対象となります。共依存そのものが「病名」でなくても、あなたの苦しみは本物であり、専門的なサポートを受ける価値は十分にあります。
A. 共依存は「関係性」の問題であり、一方だけの問題ではありません。共依存関係では、一方が過度に世話をする「ケアテイカー(世話役)」の役割を担い、もう一方が問題を抱えながらケアを受ける側になるという相補的な構造があります。両者がこの構造から利益を得ている(ケアテイカーは「必要とされること」で自己価値を得、もう一方は問題に直面せずに済む)ため、どちらか一方だけが変わっても関係性は変わりにくい面があります。ただし、回復はまず自分から始めることが重要です。相手を変えることはできませんが、自分の行動パターンを変えることで、関係性全体に変化をもたらすことは可能です。
A. 大きな違いは3つあります。①動機:健全な優しさは「相手を大切にしたい」という純粋な動機から来ますが、共依存的な世話は「必要とされたい」「見捨てられたくない」「自分の価値を確認したい」という自分自身のニーズが動機です。②境界線:優しい人は自分と相手の境界を保ちつつ助けますが、共依存の人は相手の問題を自分の問題として引き受け、境界が曖昧です。③持続性:健全な世話は、自分が疲れたり相手に改善が見られない場合に調整できますが、共依存では相手の状態に関わらず(むしろ相手が苦しむほど)世話をやめられません。あなたの「優しさ」が自分を犠牲にする方向に働いているなら、振り返ってみる価値があります。
A. パートナーが依存症だからといって、あなたが必ず共依存であるとは限りません。しかし、以下のパターンがあれば共依存の可能性を検討する価値があります:①パートナーの飲酒/薬物使用/ギャンブルを管理・監視しようとする、②パートナーの問題の尻拭いを繰り返す(借金の返済、職場への言い訳など)、③パートナーが改善しないのは「自分の頑張りが足りないから」と感じる、④パートナーの問題を外部に隠す、⑤パートナーのために自分の生活(友人関係、趣味、仕事)を犠牲にしている。もし心当たりがあれば、依存症の家族向けの自助グループ(アラノン、ナラノンなど)への参加や、カウンセリングを検討してください。
A. 共依存の回復には明確な「完治」というゴールがあるわけではなく、自己理解を深め、行動パターンを少しずつ変えていく継続的なプロセスです。カウンセリングに通い始めて数か月で変化を実感する方もいれば、数年にわたる取り組みが必要な方もいます。回復の速度は、共依存の程度、幼少期の経験の深さ、現在の環境、サポートの有無によって異なります。大切なのは「完璧に治ること」ではなく、「以前の自分よりも少し自分を大切にできるようになる」という小さな進歩の積み重ねです。
A. 共依存に関連する自助グループとして、日本で活動しているものには以下があります。①CoDA(コーダ:Co-Dependents Anonymous)——共依存からの回復を目指す自助グループ。12ステッププログラムに基づく。②アラノン(Al-Anon)——アルコール依存症者の家族・友人のための自助グループ。共依存の問題も扱います。③ナラノン(Nar-Anon)——薬物依存症者の家族・友人のための自助グループ。④ACOA/ACA(Adult Children of Alcoholics)——アルコール依存症の親のもとで育った人のための自助グループ。いずれも無料で、匿名で参加できます。「自分の話を聞いてもらえる場所」「同じ経験をした仲間がいる場所」として、回復の大きな助けになります。
A. 恋愛を避ける必要はありませんが、共依存のパターンに気づかないまま恋愛に進むと、同じような苦しい関係を繰り返してしまうリスクがあります。まずは自分の共依存パターンを理解し、ある程度の回復のプロセスを進めてから恋愛に臨むほうが、健全な関係を築きやすくなります。具体的には、①自分のニーズと感情を認識できるようになる、②「NO」と言えるようになる、③一人でいることに耐えられるようになる、④自分の価値を相手の反応に依存しないで感じられるようになる、という段階まで回復が進むと、より健全な恋愛関係を築く土台ができます。
A. はい、共依存の家庭環境で育つことは、子どもの発達と心理に大きな影響を与えます。共依存の親がいる家庭では、しばしば機能不全家族(ディスファンクショナルファミリー)の特徴が見られます。例えば、親のニーズを優先するために自分の感情を抑制することを学ぶ、「問題は家庭の外に出してはいけない」という暗黙のルールの中で育つ、親の機嫌を読み取るために過剰に敏感になる(ハイパービジランス)、過度な責任感や完璧主義を身につけるといったパターンです。このような環境で育った子どもは「アダルトチルドレン(AC)」として、成人後も機能不全家族の中で学んだ思考・行動・感情パターンを引き継ぎやすくなります。しかし、こうした背景があることに気づき、専門家(ACA/ACOA自助グループ、カウンセリング)のサポートを受けることで、回復は可能です。
A. 共依存は恋愛・家族関係だけでなく、職場の人間関係にも現れます。職場での共依存パターンとして、①「自分がいないとプロジェクトが回らない」という感覚を求めて過剰に働く(ワーカホリズムとの関連)、②同僚や後輩のミスを自分がカバーし続ける(イネイブリング)、③上司や同僚の機嫌を読み取り、不満や意見を言えない、④「頼まれたことを断れない」という感覚から過度な残業を続ける、⑤職場での承認・感謝を得ることが自己価値の主要な源になっている、⑥問題のある上司・同僚との関係を「自分が変われば良くなる」と思い込んで耐え続けるといったパターンが見られます。職場での共依存が深刻な場合、過労、燃え尽き症候群(バーンアウト)、うつ病、適応障害につながることがあります。産業カウンセラーや職場の相談窓口(EAP)、またはカウンセリングへの相談を検討してください。
A. 「自分を大切にする」という言葉は共依存の回復でよく使われますが、長年自分を後回しにしてきた方には、具体的に何をすれば良いかわからないことが多いです。自分を大切にするとは、①自分の気持ちや感情に気づき、それを否定しないこと(「こう感じてはいけない」という内なる声に抵抗する)、②自分のニーズを相手に伝えられること(小さなことから「これが欲しい」「これは嫌だ」を表現する)、③自分の時間、エネルギー、お金を自分のために使える「余白」を意識的に作ること、④他者の問題に巻き込まれそうになったとき、「これは私の問題ではない」と立ち止まる内なる声を育てること、⑤「相手の気分を良くすること」より「自分の正直な気持ち」を優先できる場面を少しずつ増やすこと、を指します。最初は罪悪感を感じることが多いですが、それは長年の「自分を後回しにするのが当然」という思い込みからの反応です。カウンセラーの助けを借りながら、少しずつ練習していきましょう。
「自分がいないと、あの人はダメになる」と
感じてしまうあなたへ
「あの人のためなら何でもできる」「なぜ自分ばかり頑張っているんだろう」——共依存の苦しさは、自分を後回しにし続けることの疲弊から来ています。あなた自身を大切にすることが、あなたにも周りの人にも必要なことです。一人で抱え込まず、ココトモに話してみませんか。
このページの情報は、医師による診断や治療に代わるものではありません。症状が気になる場合は、心療内科・精神科への受診をご検討ください。通院医療費の自己負担を1割に軽減できる自立支援医療制度も活用できます。
