ネットいじめ(サイバーいじめ)とは?
定義・種類・特徴・心理的影響・対処法・相談窓口を徹底解説
インターネットやSNSを通じて行われるいじめ「ネットいじめ」。米国の13〜17歳の約58%が経験し、日本でも2023年度の重大事態認知件数は1,306件と過去最多。24時間続く継続性、デジタルタトゥーの永続性、自殺リスクなど、その深刻さと7つの形態・5つの特徴・5ステップの対処法・法的対応・相談窓口まで、必要な情報をすべてまとめました。
ネットいじめ(サイバーいじめ)とは
ネットいじめとは、インターネットやSNS・メッセージアプリなどのデジタル技術を使って行われるいじめや嫌がらせのこと。スマートフォンの普及やSNSの浸透に伴い被害は急速に拡大し、2025年の調査では米国の13〜17歳の学生の約58%が経験。日本でも2023年度の重大事態認知件数が1,306件と過去最多を記録しました。
ネットいじめの定義
ネットいじめ(サイバーいじめ、英語:cyberbullying)とは、インターネットやデジタル技術を通じて行われるいじめおよび嫌がらせのこと。SNS、メッセージアプリ、メール、オンラインゲーム、掲示板、動画共有サイトなどのデジタルプラットフォームを利用して、特定の個人に対して意図的かつ繰り返し行われる攻撃的な行動を指します。
文部科学省はネット上のいじめを「一定の人間関係のある者から、パソコンや携帯電話(スマートフォン等を含む)などのネット端末を経由して、物理的・心理的な攻撃が加えられ、被害者が精神的苦痛を感じているもの」と定義しています。重要なポイントは、被害者が精神的苦痛を感じているかどうかが判断基準になること。加害者が「冗談だった」と主張しても、受け手が苦痛を感じていれば該当します。
ネットいじめは、デジタル空間で行われるため時間や場所の制約がなく、テキスト・画像・動画・音声など多様なメディアを通じて行われます。さらにインターネット上の情報は瞬時に広範囲に拡散し、一度広まった情報を完全に削除することは極めて困難です。
ネットいじめが社会問題化した背景
スマートフォンの急速な普及——総務省調査では中学生の約8割、高校生はほぼ全員がスマートフォンを所有し、子どもたちは常にインターネット接続環境で生活しています。
SNSの浸透——LINE、Instagram、X(旧Twitter)、TikTok、YouTubeなどは若者のコミュニケーションの主要手段となる一方、グループチャットやストーリーなど閉鎖的な空間でのいじめは外部から発見が困難です。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック以降、オンライン授業やリモート交流の一般化でデジタル空間での人間関係トラブルが増加。日本では2023年度のいじめ重大事態認知件数が1,306件と過去最多、米国では2025年に13〜17歳の約58%がサイバーいじめを経験と報告され、国際的な課題となっています。
法律の枠組み
日本では2013年に「いじめ防止対策推進法」が施行され、いじめを「児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているもの」と定義。インターネットいじめも明確に法律の対象です。
2022年には侮辱罪が厳罰化され、ネット上の誹謗中傷への抑止力が強化されました。これは、SNS上で誹謗中傷を受けたプロレスラー・木村花さんの事件がきっかけです。法定刑が「拘留又は科料」から「1年以下の懲役若しくは禁錮又は30万円以下の罰金」に引き上げられました。
さらにプロバイダ責任制限法の改正により、発信者情報開示請求の手続きが簡素化され、被害者が加害者を特定しやすくなりました。
ネットいじめの種類と具体例
ネットいじめには7つの主な形態があります。それぞれに特徴的な手口と関連する法律があり、適切な対応のためには種類を理解することが第一歩です。
ネットいじめの7つの形態
下のタブをタップすると、各形態の詳しい手口と関連法律が表示されます。
SNSや掲示板、メッセージアプリでの誹謗中傷や悪口の書き込み。2025年の調査ではネットいじめ経験者の約15.7%が「オンラインでの悪意のある名前や悪口」を報告。SNSの投稿やコメント欄で個人を名指しして悪口、掲示板やチャットで容姿・性格・能力を馬鹿にする、DMで暴言や脅迫、Ask.fmやマシュマロなど匿名質問サービスでの攻撃メッセージなど。家族や友人にまで攻撃が及ぶこと、一人の書き込みに同調者が増える「炎上」型もある。名誉毀損罪・侮辱罪に該当する可能性。
デジタル空間における仲間外れ。2025年の調査では約20%の学生が「グループチャットからの排除」を経験。LINEなどのグループから意図的に退出させる・最初から入れない、SNSグループで特定の人だけ招待しない、特定の人の投稿だけ「いいね」やコメントをしない、オンラインゲームでチームに入れない、「裏グループ」を作って悪口を言うなど。外部から見えにくく「ただ仲良くないだけ」と片付けられがちだが、思春期の子どもにとって仲間集団への所属は自己肯定感と密接で、深刻なダメージを与える。
他人のプライベートな情報や画像を本人の同意なく公開・拡散する行為。一度拡散されると完全な削除が極めて困難で、被害が長期化する。恥ずかしい写真や動画の無断投稿、盗撮画像の拡散、プライベートメッセージのスクリーンショット公開、住所・電話番号・家庭環境などの個人情報の暴露、恋愛関係破綻後の親密な画像の報復公開(リベンジポルノ)など。2014年施行のリベンジポルノ防止法、未成年者の場合は児童ポルノ禁止法違反の重大犯罪。
他人になりすましてSNSアカウントを作成し、評判を傷つける行為。被害者の社会的信用を毀損し、身に覚えのない発言で人間関係を破壊される危険がある。他人の名前や写真でアカウント作成して不適切投稿、他人のアカウントに不正ログインして装って嫌がらせメッセージ、出会い系サイトに他人の写真と個人情報を無断登録、なりすましでオンラインゲーム内で問題行動を起こしアカウント停止に追い込むなど。不正アクセス禁止法違反・名誉毀損罪・詐欺罪に該当しうる。
インターネット上で特定の個人を執拗に監視しつきまとう行為(サイバーストーキング)。SNSの投稿やアクティビティを常に監視し全投稿にコメント、位置情報をチェックして行動追跡、複数アカウントを使い分けて繰り返しメッセージ、ブロックされても新アカウントでつきまとう、相手の交友関係を調べ上げて友人にまで接触するなど。被害者に強い恐怖感と不安感を与え、実際の付きまといにエスカレートするケースもある。ストーカー規制法の対象。
オンライン上の議論で意図的に攻撃的・挑発的な発言を行い、相手を激怒させ議論を妨害する行為。日本では「炎上」「荒らし」とも。SNS投稿への大量の攻撃的コメント、オンラインゲームでの意図的な挑発(トローリング)、掲示板で不快な投稿の繰り返し、動画配信中のコメント欄への攻撃メッセージ連投など。集団で個人に対して行われる場合は深刻ないじめになる。インフルエンサーのフォロワーが個人を集中攻撃する「ファンネル攻撃」も甚大なダメージ。
性的な内容のメッセージや画像を電子的に送受信させる行為の強要。恋愛関係を利用して性的画像の送信を要求、「別れる」「秘密をばらす」と脅す、一度送られた画像で追加要求(セクストーション)、断ると「信用できない」「愛していない証拠」と精神的に追い込むなど。未成年者へのセクスティング強要は児童ポルノの製造に該当する重大犯罪。成人間でも強要罪・脅迫罪に該当。絶対に要求に応じず、信頼できる大人や相談窓口に。
ネットいじめの特徴——従来のいじめとの違い
ネットいじめは従来の対面いじめとは異なる5つの特有の性質を持ち、被害をより深刻で長期的なものにします。一方で、唯一被害者に有利に働く特徴も存在します。
ネットいじめの5つの特徴
ネットいじめの原因と背景
ネットいじめの発生には、加害者の心理・環境的要因・被害者のリスク要因が複雑に絡みます。原因を理解することは、予防と支援の両面で重要です。なお、いじめの責任は常に加害者にあり、被害リスク要因は責任の所在を意味するものではありません。
加害者側の心理的要因
- オンライン脱抑制効果匿名性や物理的距離感により、対面では抑制される攻撃性がオンラインでは解放される。画面越しでは相手の苦痛を直接感じにくく共感性が低下する。
- 自己肯定感の低さ自分に自信がない人が他者を攻撃して一時的な優越感を得ようとする。自分自身がいじめや虐待の被害者で、ストレスを攻撃で発散するケースも。
- 集団心理・同調圧力特定の個人を攻撃することが「正義」のような雰囲気が形成される。「みんなが批判しているから自分も」と判断力が低下し加担する。
- 嫉妬・競争心相手の成功や人気に対する嫉妬から陰湿な攻撃を行う。承認欲求が強い思春期では、フォロワー数や「いいね」数の競争がいじめにつながる。
環境的・社会的要因
- デジタルリテラシー教育の不足使い方は知っていても、適切なオンラインコミュニケーションや行動の影響について教育が不足している。
- 家庭環境保護者がインターネット・SNSの知識を持たないと適切な見守りが困難。家庭内暴力や虐待がある場合、攻撃性をオンラインで再現するリスクが高まる。
- 学校文化・学級の雰囲気いじめを容認する雰囲気の学級ではオフラインのいじめがオンラインに拡張されやすい。多様性尊重の文化は予防に効果的。
- プラットフォームの設計匿名投稿、フォロワー数の可視化、「いいね」やコメントのランキング表示など、SNSの設計思想がいじめを助長する場合がある。事業者責任が求められている。
被害者側のリスク要因(責任ではなく予防のための知見)
- オフラインでもいじめ被害既にオフラインでいじめを受けている場合、それがオンラインに拡張されるリスクが高い。
- SNSの利用時間が長い利用時間が長いほどネットいじめに遭遇する機会が増える。
- 個人情報の頻繁な公開プライベートな内容を頻繁に公開していると、攻撃の対象になりやすい。
- マイノリティ属性LGBTQ+、障害のある子ども、外国にルーツを持つ子どもなどは差別や偏見に基づくネットいじめのリスクが高い。LGBTQ+の若者の経験率は有意に高いとする研究がある。
加害者と被害者の関係性
学校の同級生や先輩後輩から発生するケースが多いですが、ネットいじめには特有の関係性パターンがあります。
加害者と被害者の立場の逆転——対面で強い立場の人がネット上では攻撃を受ける側になる。逆に対面では物静かな人が匿名空間で攻撃的になることも。
面識のない人からのいじめ——SNS投稿がバイラル拡散すると、見知らぬ人からの大量攻撃にさらされる。この場合、加害者は被害者を個人として認識せず、「ネット上の対象」として非人間的に扱う。
ネットいじめの心理的影響
ネットいじめは被害者のメンタルヘルス・自己肯定感・学業・身体・命にまで深刻かつ広範な影響を及ぼします。研究で示された具体的な影響を見ていきます。
メンタル・身体・社会生活に及ぶ7つの影響
ネットいじめと自殺の関連
ネットいじめと自殺の関連は最も深刻な問題の一つ。複数の研究が、ネットいじめの被害経験と自殺念慮(自殺について考えること)・自殺企図(自殺を試みること)との間に有意な関連があることを報告しています。
ネットいじめの被害者は、いじめを受けていない子どもと比較して自殺念慮を抱くリスクが約2〜3倍高いとする研究もあります。特に、オフラインのいじめとネットいじめの両方を同時に経験している場合、自殺リスクはさらに高まります。
ネットいじめに関連した自殺(サイバーブリサイド)は国内外で複数報告され、社会的な注目を集めています。日本でもネットいじめを苦にした子どもの自殺が報道され、その深刻さが広く認識されるようになっています。
・いのちの電話(0120-783-556、24時間対応)
・よりそいホットライン(0120-279-338、24時間対応)
・チャイルドライン(0120-99-7777、18歳以下専用)
あなたの命は何よりも大切です。
日本の統計データ
文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」によると、2023年度のいじめ重大事態認知件数は1,306件と過去最多。「パソコンや携帯電話等で、ひぼう・中傷や嫌なことをされる」というネットいじめに分類される行為は一定の割合を占めています。
総務省の調査では、小中学生のインターネット利用率は90%超でSNS利用も増加。インターネット利用の低年齢化に伴い、ネットいじめも低年齢化する傾向が見られます。
法務省の人権擁護機関が扱う「インターネット上の人権侵害」に関する相談件数も増加傾向にあり、SNSでの誹謗中傷・プライバシー侵害・差別的書き込みが深刻化しています。
世界の統計データ——10年で経験率がほぼ倍増
Cyberbullying Research Centerの2025年調査では、米国の13〜17歳の学生の約58%が生涯でサイバーいじめを経験、約33%が直近30日間に経験と報告されています。
注目すべきは、経験率が年々上昇していること。生涯経験率は2016年の33.6%から2025年の58.2%へ、直近30日間の経験率も2016年の16.5%から2025年の32.7%へと倍増しています。
2026年の調査では、約37%のティーンエイジャーがサイバーいじめを経験と報告し、SNSプラットフォームが最も一般的な場所として挙げられています。
プラットフォーム別の統計
いじめが発生する場所は時代とともに変化。かつては掲示板・メールが主でしたが、現在はSNS・メッセージアプリが中心です。
米国の調査では、サイバーいじめが最も多く発生するプラットフォームとしてInstagram、Snapchat、TikTok、Discord、Facebookが挙げられています。日本ではLINEでのいじめ(グループチャット排除、既読無視、悪口書き込みなど)が最多と報告されています。
オンラインゲーム内のいじめも増加。ゲーム内チャット暴言、意図的妨害(グリーフィング)、チームからの排除などが報告されています。
ネットいじめを見分けるサイン
子どもがネットいじめを受けているサインを早期に察知することは、被害を最小限にする鍵です。行動・精神・身体それぞれの変化に注意してください。
行動面の変化
最も顕著なのはデバイス使用に関する行動の変化。日常生活でも友人関係や登校など全般に変化が現れます。
- ✓スマートフォン・パソコンを見た後に急に落ち込む、感情的になる
- ✓デバイスを隠す、画面を見られることを極度に嫌がる
- ✓SNSアカウントを突然削除する、または利用を急にやめる
- ✓通知音に過敏に反応する、または通知をすべてオフにする
- ✓深夜までスマートフォンを使い続ける、または逆にまったく触らなくなる
- ✓登校を渋る、不登校になる
- ✓友人関係の急な変化(仲の良かった友人と急に距離を置く)
- ✓部活動や趣味への興味の喪失、外出を避ける
- ✓攻撃性の増加やイライラ、自室にこもりがち
精神面・身体面・学業面の変化
- ✓気分の落ち込みや急な涙、不安感の増大
- ✓自己否定的な発言の増加
- ✓「もう嫌だ」「消えたい」といった絶望的な言葉
- ✓自傷行為の痕跡(手首の傷など)※緊急対応が必要
- ✓頭痛・腹痛などの身体症状
- ✓食欲の急激な変化(食べなくなる・過食)
- ✓不眠・悪夢・朝起きられない
- ✓体重の急激な変化、疲労感
- ✓成績の急激な低下、集中力低下、宿題への意欲喪失
気づいたときの初期対応
サインに気づいた場合、まず大切なのは子どもを責めたり叱ったりしないこと。「なぜ言わなかったの」「なぜそんなサイトを見ていたの」と問い詰めると、子どもをさらに追い詰めます。
安心して話せる環境を作りましょう。「何かつらいことがあるなら、いつでも話を聞くよ」「あなたの味方だよ」という姿勢を示し、話し始めたら最後まで否定せずに聞いてあげてください。
打ち明けてくれたら「話してくれてありがとう」「あなたは悪くない」と伝え、一緒に対応策を考えていくことを約束してください。この初期対応の適切さが、その後の回復プロセスに大きな影響を与えます。
ネットいじめ対処の5ステップ
ネットいじめの予防策
ネットいじめを未然に防ぐには、デジタルリテラシー教育・自衛策・共感性育成・保護者の関わりという4つの柱が必要です。
情報リテラシー・デジタルシチズンシップ教育
デジタルシチズンシップとは、デジタル技術を安全かつ責任を持って使用するための知識・スキル・態度のこと。子どもたちに教えるべき内容は以下です。
- ✓オンラインでの発言が人を傷つける可能性があること
- ✓一度インターネットに投稿した情報は取り消せない可能性があること
- ✓匿名であっても法的責任を問われる可能性があること
- ✓他人のプライバシーを尊重すること
- ✓困った時は大人に相談すること
学校だけでなく家庭でも継続的に行うことが重要。一回限りの講演会ではなく、日常的な会話の中で話し合う機会を設けましょう。子どもの年齢やデジタルスキルに応じた段階的な教育が効果的です。
プライバシー設定と自衛策
SNSのプライバシー設定と個人情報の管理が重要です。
- ✓アカウントを非公開(鍵付き)に設定する
- ✓位置情報の公開をオフにする
- ✓知らない人からのメッセージ・フォローリクエストを制限する
- ✓投稿の公開範囲を友人のみに限定する
- ✓本名・学校名・住所・電話番号などの個人情報を公開しない
- ✓制服や校章が写った写真を投稿しない
- ✓位置が特定できる写真(自宅付近)を投稿しない
- ✓パスワードを定期的に変更し、二段階認証を設定する
- ✓見知らぬ人からのメッセージ・リクエストには慎重に対応
共感性とコミュニケーション能力の育成
技術的対策だけでなく共感性(エンパシー)の育成が欠かせません。自分の発言や行動が相手に与える影響を想像する力を育てることで、加害行為を抑制できます。
- ✓ロールプレイ(役割交換)を通じて被害者の気持ちを体験する授業
- ✓感情の認識と表現のトレーニング
- ✓衝動的な行動を抑制するアンガーマネジメント教育
- ✓対面でのコミュニケーション能力を高めるグループワーク
- ✓多様性を尊重する態度の育成
- ✓傍観者教育(「いいね」を押さない、リツイートしない、被害者を支持するメッセージ、大人に報告)
保護者のモニタリングと関わり方
「監視」ではなく「見守り」の姿勢が大切。過度な監視は子どもの反発を招き、問題が起きた時に相談しにくくなります。
- ✓子どもと一緒にSNSの使い方やルールを話し合う
- ✓インターネットの利用時間について家族でルールを決める
- ✓子どもが使用しているアプリやSNSについて理解する
- ✓日常的にオンラインでの出来事について会話する
- ✓「何かあったらいつでも相談してね」と繰り返し伝える
- ✓保護者自身がデジタルリテラシーを高める
保護者自身がデジタルリテラシーを高め、子どもの使用するSNSやアプリの機能・プライバシー設定・通報の仕方を知っておくことで、問題発生時に迅速に対応できます。
ネットいじめの法的対応
ネットいじめは内容によって刑事・民事の責任を問える行為です。発信者情報開示請求や損害賠償請求、削除要請といった法的手段を理解しておきましょう。
適用される可能性のある法律
発信者情報開示請求
加害者が匿名の場合、発信者情報開示請求でプロバイダやSNS事業者に加害者情報の開示を求められます。プロバイダ責任制限法に基づく手続きです。
2022年の法改正により手続きが簡素化。従来はコンテンツプロバイダとアクセスプロバイダへの開示請求を別々に行う必要がありましたが、改正後は一つの裁判手続きで行えるようになり、被害者の負担が軽減されました。
弁護士への相談を推奨。経済的に余裕のない方は法テラス(日本司法支援センター)で無料法律相談・弁護士費用立替制度を利用できます。
損害賠償請求
精神的苦痛を受けた場合、加害者に対して損害賠償請求(慰謝料請求)が可能。民法709条の不法行為に基づき、故意または過失による違法行為で損害が生じた場合に認められます。
慰謝料の相場は数万円〜数百万円で、被害が深刻なケース(PTSD発症、不登校、自殺未遂など)ではより高額が認められることがあります。
未成年者が加害者の場合は原則として保護者(親権者)が損害賠償責任を負います。学校での出来事に起因する場合は、学校設置者(自治体・学校法人)への安全配慮義務違反に基づく賠償請求も検討できます。
削除要請・差止請求
誹謗中傷・プライバシー侵害投稿の削除を求める方法は3段階。
① プラットフォームへの直接削除要請——多くのSNSで利用規約に基づく削除手続きが用意されています。
② プロバイダ責任制限法に基づく送信防止措置請求——プラットフォームが応じない場合、プロバイダに削除を求める手続き。
③ 裁判所への仮処分申立——通常の裁判より迅速な対応が期待できる法的手段。
検索エンジンの検索結果に不適切な情報が表示される場合、検索エンジン事業者に対して検索結果の削除を求める「忘れられる権利」の行使も検討できます。
子どもが被害者の場合
最も重要なのは子どもの話を否定せずに聞くこと。「大げさに考えすぎ」「気にしなければいい」「ネットを見なければいい」といった言葉は、子どもの苦痛を軽視し、相談への抵抗感を高めます。
具体的な対応として、まず気持ちに寄り添い「話してくれてありがとう」「あなたは悪くない」と伝える。次に一緒に証拠を保存し、今後の対応を相談。必要に応じて学校・専門相談窓口・弁護士・警察などに相談します。
子どもの同意なくスマートフォンを取り上げたり、SNSを一方的に禁止したりすることは避けてください。これは「罰」と感じられ、被害に遭ったことへの罪悪感を強めてしまいます。代わりに、安全な利用ルールを子どもと一緒に考えましょう。
心理的なケアも重要。子どもの精神状態に注意し、必要に応じてスクールカウンセラーや心療内科・精神科への受診を検討してください。自殺念慮や自傷行為のサインがある場合は、直ちに専門家の支援を受けてください。
子どもが加害者の場合
頭ごなしに叱りつけるのではなく、なぜそのような行為をしたのかを冷静に聞くこと。加害行為の背景にはストレス・孤立感・自己肯定感の低さ・家庭内の問題が隠れている場合があります。
自分の行為が相手にどのような影響を与えたかを具体的に考えさせることが重要。「もし自分が同じことをされたらどう感じるか」を考えさせるのは効果的なアプローチです。
明確に「してはいけないこと」と伝え、被害者への謝罪と投稿削除を行わせる。必要に応じて学校・被害者保護者との話し合いに参加。法律違反の可能性がある場合は、その深刻さも理解させる必要があります。
家庭でのインターネット利用ルール作り
ルールは一方的に押し付けるのではなく、子どもと話し合いながら決めることで自主的に守るようになります。含めるべき内容は以下です。
- 利用時間の上限
- 利用できる時間帯(深夜は使用しないなど)
- 個人情報の取り扱い方
- 知らない人とのやり取りに関するルール
- 困った時の相談先の確認
- 定期的なルールの見直しの機会
フィルタリングソフトやペアレンタルコントロール機能の利用も検討。ただしこれらは補助的なツールで、最も重要なのは日常的な親子のコミュニケーションです。
学校でのネットいじめへの対応
学校はいじめ防止対策推進法に基づき、組織的・継続的にネットいじめに対応する義務があります。早期発見・対応フロー・情報モラル教育の3つが柱です。
早期発見の取り組み
定期的なアンケート調査はいじめ実態把握の基本。ネットいじめに特化した質問項目を含め、匿名回答を可能にすることで正確な実態が把握できます。
教職員の研修も重要。ネットいじめの種類・特徴・発見ポイント・対応方法について全教職員が共通理解を持ち、SNSの最新動向やネットスラングについての知識を更新し続けることが必要です。
スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーの配置・活用、「いじめ相談ボックス」の設置、オンライン相談窓口の開設など、子どもたちが声を上げやすい仕組みづくりが大切です。
発見時の対応フロー(6段階)
発達段階に応じた情報モラル教育
小学校低学年——「人を傷つけることを言わない」「困ったら大人に相談する」など基本ルール。
小学校高学年——「個人情報の大切さ」「著作権・肖像権」「ネット上での適切な振る舞い」。
中学校——「SNSのリスクと適切な使い方」「ネットいじめの法的責任」「デジタルフットプリントの概念」「批判的思考力の育成」。
高校——「デジタルシチズンシップの概念」「情報発信者としての責任」「社会問題としてのネットいじめ」。
効果的な教育方法は、ケーススタディ、ロールプレイ、ディスカッション、外部講師(警察・弁護士・情報セキュリティ専門家など)による講演。一回限りでなく、教育課程に組み込まれた継続的な取り組みが重要です。
SNS・プラットフォーム別の特徴と対策
主要なSNS・サービスごとに、ネットいじめの典型パターンと使える対策機能が異なります。お子さんの利用しているサービスに合わせて確認してください。
主要プラットフォーム6つの特徴と対策
ネットいじめからの回復プロセス
回復は一直線に進むのではなく、波のように良い時期と悪い時期を繰り返しながら徐々に改善していきます。4つの段階・専門家のサポート・レジリエンス育成が鍵です。
回復の4段階
専門家による心理的サポート
最も身近に利用できる専門家。定期的な面談を通じて気持ちを聴き、適切な支援につなげる。
ネットいじめ被害者に対して最も研究されている心理療法の一つ。否定的思考パターン(「自分が悪い」「誰も助けてくれない」)を特定し、現実的・適応的な思考に置き換える。
PTSD症状を呈している場合に特に効果的。
対人関係スキルを回復させ、新しい友人関係を築く自信をつける。
うつ病・不安障害の症状が重い場合は薬物療法と心理療法の併用が効果的な場合がある。
レジリエンス(回復力)の育成
レジリエンスとは困難や逆境から立ち直る力。ネットいじめの経験を乗り越え、再び前に進むためにレジリエンスの育成が重要です。
- 安定した対人関係の構築(信頼できる人とのつながり)
- 問題解決能力の育成(困難に対処する具体的なスキル)
- 感情コントロールの学習(自分の感情を認識し適切に表現)
- 自己効力感の強化(「自分にはできる」という感覚)
- 意味づけの能力(困難な経験を成長の機会として捉え直す)
保護者や教育者は、成功体験の機会を提供し、失敗しても安全に挑戦できる環境を整え、努力やプロセスを認めて褒めることが大切。「結果」ではなく「努力」を評価することで、困難に直面しても諦めない力が育まれます。
デジタルデトックスと健全なオンライン活動の再開
回復過程では一時的にインターネット・SNS利用を控える「デジタルデトックス」が有効な場合があります。永久的禁止ではなく、心の回復のための一時的な措置として位置づけることが重要です。
期間中は対面交流・アウトドア活動・読書・スポーツ・創作活動など、オフラインでの充実した時間を過ごすことが推奨されます。デジタル空間以外にも自分の居場所があると実感できます。
再開する際は段階的に。信頼できる少数の友人とのやり取りから始め、徐々に活動範囲を広げます。プライバシー設定見直し、新しいアカウント作成、ブロックリスト整備などを行ってから再開することも検討してください。
電話相談窓口(すべて無料)
オンライン相談窓口
電話での相談が難しい場合は、オンラインでの相談も可能です。
パソコン・スマホからネット上の人権侵害について相談。24時間受付、後日メール回答。
総務省委託機関。ネット上の違法・有害情報の相談、削除方法のアドバイス。
一般社団法人セーファーインターネット協会。違法・有害情報の通報を受け付け、削除要請。
いじめ・嫌がらせの相談・通報窓口。
法的サポート
法テラス(日本司法支援センター、0570-078374)——経済的に余裕のない方に無料法律相談・弁護士費用立替制度。ネットいじめの法的対応を弁護士に無料で相談できます。
弁護士会の法律相談——各地の弁護士会が運営。ネット上の人権侵害に詳しい弁護士に相談し、発信者情報開示請求や損害賠償請求の具体的な法的手段についてアドバイスを受けられます。
子どもの人権110番(0120-007-110)——法務省の人権擁護機関が運営する子ども専用窓口。いじめ・体罰・虐待など子どもの人権に関する相談を受け付けます。
よくある質問
A. ネットいじめ(サイバーいじめ)とは、インターネットやSNS、メッセージアプリ、オンラインゲームなどのデジタル技術を通じて行われるいじめや嫌がらせのことです。誹謗中傷の書き込み、個人情報の無断公開、なりすまし、仲間外れ、プライベートな画像の拡散など、様々な形態があります。従来の対面でのいじめと異なり、24時間365日続く可能性があること、不特定多数に拡散すること、匿名性が高いことなどの特徴があります。
A. まず、いじめの証拠(スクリーンショット、URL、日時など)を保存してください。次に、信頼できる大人(保護者、教師、スクールカウンセラーなど)に相談しましょう。加害者をブロック・通報し、直接対応しないことも重要です。深刻な場合は、法務局の人権相談窓口(0570-003-110)やネットいじめ専門の相談窓口に連絡してください。証拠があれば、プロバイダ責任制限法に基づく削除要請や発信者情報開示請求も可能です。
A. ネットいじめの内容によっては、刑法上の犯罪に該当する場合があります。具体的には、名誉毀損罪(刑法230条)、侮辱罪(刑法231条)、脅迫罪(刑法222条)、強要罪(刑法223条)、ストーカー規制法違反などが適用される可能性があります。また、2022年に施行された「侮辱罪の厳罰化」により、ネット上での誹謗中傷に対する罰則が強化されました。民事上も、損害賠償請求の対象となります。
A. ネットいじめを受けている子どもには、いくつかの特徴的なサインがあります。スマートフォンやパソコンを見た後に急に落ち込む、デバイスを隠すようになる、SNSアカウントを突然削除する、登校を渋る、食欲や睡眠の変化、成績の低下、友人関係の急な変化、イライラや攻撃性の増加などです。これらの変化に気づいたら、責めずに寄り添い、安心して話せる環境を作ることが大切です。
A. まず、いじめ行為を直ちにやめてください。そして、自分の行為が相手にどのような影響を与えたかを真剣に考えましょう。可能であれば、被害者に誠意を持って謝罪してください。投稿した内容は速やかに削除しましょう。また、なぜいじめ行為をしてしまったのか、自分の気持ちと向き合うことも重要です。保護者や信頼できる大人に相談し、必要に応じてカウンセリングを受けることも検討してください。加害行為の背景にはストレスや自己肯定感の低さがある場合もあり、専門家のサポートが役立ちます。
A. SNSでの悪口が名誉毀損に該当するかどうかは、具体的な内容や状況によって判断されます。名誉毀損罪は「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した」場合に成立します(刑法230条)。SNSの投稿は不特定多数が閲覧できるため「公然」の要件を満たしやすく、個人を特定できる形で社会的評価を低下させる内容であれば、名誉毀損に該当する可能性があります。事実の摘示がない場合でも、侮辱罪(刑法231条)が適用される場合があります。
A. 学校は、いじめ防止対策推進法に基づき、ネットいじめを含むすべてのいじめに対応する義務があります。具体的には、情報モラル教育の実施、相談体制の整備、早期発見のためのアンケート調査、発見時の迅速な対応(被害者の保護、加害者への指導、保護者への連絡)、関係機関との連携などが求められます。また、重大事態が発生した場合は、調査委員会を設置して事実関係を明らかにする必要があります。
A. ネットいじめと通常のいじめには、いくつかの重要な違いがあります。ネットいじめは24時間365日続く可能性があり、学校や家庭など場所を問わず被害を受けます。匿名性が高く、加害者の特定が困難な場合があります。一度拡散された情報は完全な削除が難しく、被害が長期化・広範化しやすいです。また、不特定多数が加害に参加しやすく、傍観者が加害者に転じるリスクも高いです。一方で、デジタルデータとして証拠が残りやすいという特徴もあります。
一人で抱え込まないで。
相談してみませんか。
つらい気持ちを抱えていませんか。どうかあなたの大切な悩みをココトモに聞かせていただきたいです。
このページの情報は、医師による診断や治療に代わるものではありません。症状が気になる場合は、心療内科・精神科への受診をご検討ください。
