メンタルヘルス用語辞典 · 誹謗中傷被害

誹謗中傷被害とは?
心理的影響・PTSD・法的対処・相談窓口・回復まで徹底解説

SNSや匿名掲示板での誹謗中傷は、被害者の心と人生を根底から揺るがします。被害がもたらす心理的・身体的ダメージ、緊急対処、証拠保全と法的手続き、メンタルヘルスの治療と公的支援制度まで、被害者と支援者のために必要な情報をすべてまとめました。

ABOUT

誹謗中傷被害とは

誹謗中傷被害とは、根拠のない悪口・侮辱・虚偽情報の拡散・個人情報の暴露などの攻撃的行為によって、精神的・社会的・経済的な損害を被ること。SNSや匿名掲示板での攻撃は、被害者の心と人生を根底から揺るがす深刻な社会問題です。

定義

誹謗中傷被害の定義

誹謗中傷被害(ひぼうちゅうしょうひがい)とは、他者による根拠のない悪口、侮辱、虚偽情報の拡散、個人情報の暴露などの攻撃的行為によって、精神的・社会的・経済的な損害を被ることを指します。インターネットやSNSが普及した現代社会においては、対面での誹謗中傷だけでなく、オンライン上での攻撃——いわゆるネット誹謗中傷被害が急激に増加しており、その被害は被害者の心と生活に深刻な影響を与えています。

誹謗中傷被害の本質的な問題は、「言葉の暴力」が持つ破壊力です。物理的な暴力と異なり、言葉による攻撃は目に見えないがゆえに、周囲から理解されにくく、被害者が孤立しがちです。また、インターネット上の誹謗中傷は瞬時に世界中に拡散し、削除が困難なため、その被害は時間と空間を超えて継続するという特徴があります。

2020年以降、社会的認識が深まる2020年の木村花さん事件以降、日本社会でも誹謗中傷被害の深刻さが広く認識されるようになりましたが、今なお毎年数万件以上の被害が報告されています。「たかがネットの書き込み」では済まされません。
批判との違い

誹謗中傷と「批判」の違い

誹謗中傷被害の当事者がしばしば直面する問題のひとつが、「批判」との境界線です。批判と誹謗中傷は、以下の観点から明確に区別されます。

正当な批判 — 対象
行為・発言・作品など具体的な事柄
誹謗中傷 — 対象
人格・容姿・属性など個人そのもの
正当な批判 — 根拠
事実や証拠に基づいている
誹謗中傷 — 根拠
根拠がない、または事実を歪めている
正当な批判 — 目的
改善・議論の促進・公共の利益
誹謗中傷 — 目的
相手を傷つけること・社会的評価の低下
正当な批判 — 法的扱い
表現の自由として保護
誹謗中傷 — 法的扱い
名誉毀損・侮辱罪・不法行為に該当しうる
💡
気にしすぎではありません誹謗中傷の被害者は「批判を受け入れられない感受性が高い人」ではありません。誹謗中傷は正当な批判とは本質的に異なり、受けた人が傷つくのは当然のことです。「気にしすぎだ」「メンタルが弱い」という周囲の言葉は、誹謗中傷被害の本質を理解していない誤った評価です。
心の問題である理由

誹謗中傷被害が「心の問題」である理由

誹謗中傷被害は、単なる「嫌な経験」ではなく、医学的に治療を必要とする可能性のある心の問題です。研究では、誹謗中傷被害が以下のような神経生物学的変化を引き起こすことが示されています。

🧪
ストレスホルモンの慢性的上昇
コルチゾールやアドレナリンが長期にわたって過剰分泌され、脳と身体に有害な影響を与える。
扁桃体の過活動
脳の感情処理中枢である扁桃体が過敏になり、些細な刺激にも強い不安・恐怖反応を示すようになる。
🧠
前頭前皮質の機能低下
理性的な判断や感情コントロールを担う前頭前皮質の機能が低下し、衝動的な行動や思考の歪みが生じやすくなる。
🌀
神経可塑性への影響
慢性的なストレスが海馬の萎縮を引き起こす可能性があり、記憶・学習・感情調節に長期的な影響を及ぼしうる。

これらの変化は、誹謗中傷被害が「気のもちよう」では解決できない、身体的・神経生物学的な問題であることを示しています。専門家への相談と適切な治療が必要な理由がここにあります。

STATISTICS

誹謗中傷被害の実態と統計

日本における誹謗中傷被害は、近年急速に拡大しています。被害者の多くが孤立し助けを求められない状況にあり、技術的・社会的な複合要因が背景にあります。

被害規模

日本における被害の規模

日本における誹謗中傷被害の主要な統計データを示します。

約3割
ネット・SNS上で誹謗中傷を受けたことがあると回答した日本人の割合(2024年調査)
5,000件超
総務省支援事業「違法・有害情報相談センター」への年間相談件数(8年連続)
18.3%
SNS等利用者のうち過去1年間に誹謗中傷被害を受けた割合(総務省2023年調査)
約半数
誹謗中傷被害を受けても誰にも相談しなかった被害者の割合

総務省の2023年調査では、SNS等の利用者のうち2割弱(18.3%)が過去1年間に誹謗中傷被害を経験しており、年代別では20代(23.9%)と30代(22.3%)での被害が特に多いことが明らかになっています。

2024年の民間調査では、誹謗中傷被害の内容として以下が報告されています。

容姿や性格・人格への悪口
66.9%
虚偽情報を流された
51.3%
個人情報をさらされた
28.3%
相談できない実態

被害者が相談できない実態

誹謗中傷被害の深刻な問題のひとつは、被害者の多くが孤立し、助けを求めることができないことです。被害者の約半数が「誰にも相談しなかった」と回答しています。

相談しなかった主な理由:

  • 相談しても解決しないと思った
  • 大げさだと思われるのが怖かった
  • 恥ずかしかった

法的手続きを取った被害者はさらに少なく、多くのケースが泣き寝入りに終わっています。泣き寝入りは被害者の心理的回復を著しく妨げる要因となっています。

知っておきたいこと誹謗中傷被害を受けて苦しんでいるのはあなただけではありません。日本全国で毎年数万人以上が同様の苦しみを経験しており、助けを求めることは正しい選択です。相談することで状況が改善する可能性があります。
増加要因

誹謗中傷被害の増加要因

誹謗中傷被害が年々増加している背景には、複合的な社会的・技術的要因があります。

  • SNSの普及と利用者層の拡大スマートフォンの普及によりSNSが老若男女に浸透し、誹謗中傷の「場」が急速に拡大した。
  • 匿名性の悪用仮名・匿名アカウントで気軽に書き込める環境が、攻撃行動のハードルを下げた。
  • 拡散速度の加速リポスト・シェア機能により、誹謗中傷が瞬時に世界規模で拡散するようになった。
  • 炎上メカニズムの構造化SNSのアルゴリズムが感情的・攻撃的なコンテンツを優先して表示・拡散する構造になっている。
  • コロナ禍以降のストレス増大社会不安、経済的困難、孤立感が増し、ストレスのはけ口として誹謗中傷が行われるケースが増加した。
  • AI・ディープフェイクの悪用生成AIにより、実在の人物の顔・声を悪用したディープフェイク誹謗中傷が新たな問題として台頭している。
TYPES & FEATURES

誹謗中傷被害の種類と特徴

誹謗中傷被害は形態によって被害者への影響や法的対処が異なります。ネット誹謗中傷は対面とは異なる特有の深刻さを持ち、特定の集団がより被害を受けやすい傾向があります。

主な形態

オンライン誹謗中傷の主な形態

誹謗中傷被害の代表的な8つの形態を整理します。

💢
直接的な罵倒・侮辱
「死ね」「消えろ」「ブス」「キモい」などのSNSへの書き込み。最も一般的な形態。侮辱罪(刑法231条)に該当しうる。
📰
名誉毀損的な虚偽情報の拡散
事実無根の情報を「本当のこと」として拡散し、社会的評価を傷つける。名誉毀損罪(刑法230条)に該当しうる。
🆔
個人情報の暴露(ドキシング)
本名・住所・職場・家族情報・電話番号などをインターネット上に晒す。プライバシー権侵害として民事上の損害賠償請求が可能。
🎭
なりすまし
被害者のふりをして不適切な投稿を行い、評判を傷つける。不正アクセス禁止法違反・名誉毀損に該当しうる。
🔥
集団的な攻撃(炎上)
「拡散希望」などと呼びかけ、多数の人間が組織的に特定の個人を攻撃するように煽る。
🚫
リベンジポルノ・性的嫌がらせ
性的な画像・動画の無断公開や性的侮辱。リベンジポルノ防止法・性的姿態等撮影処罰法(2023年)の対象。
🤖
ディープフェイク被害
生成AIを使い、実在の人物の顔・声を悪用したフェイク画像・動画を作成・拡散する新型の誹謗中傷。
📨
持続的な嫌がらせ(サイバーストーキング)
特定の個人に対して長期にわたって繰り返し攻撃的なメッセージを送り続ける。
ネットの特有性

ネット誹謗中傷被害の特有の深刻さ

対面での誹謗中傷と比較して、インターネット上の誹謗中傷被害には特有の深刻さがあります。

  • 永続性一度インターネット上に投稿された誹謗中傷は、たとえ削除されても魚拓やキャッシュとして残り続ける可能性がある。
  • 拡散性数秒で数百万人に拡散しうる。リポスト・まとめサイト転載により被害が雪だるま式に拡大する。
  • 逃げ場のなさ自宅にいても、スマートフォンがあれば攻撃が届く。24時間365日、安全な場所がない状態になりやすい。
  • 匿名性による加害者特定の困難被害者は攻撃者が誰なのかわからない状態で恐怖を感じ続ける。この不確かさが精神的ダメージを増幅させる。
  • 目に見えない傷外傷がないため周囲に被害の深刻さが伝わりにくく、「たいしたことない」と軽視されやすい。
  • 証拠保全の難しさ加害者が書き込みを削除すれば証拠が消える。プロバイダのログ保存期間(通常3〜6ヶ月)を過ぎると加害者の特定が困難になる。
被害を受けやすい人

誰が誹謗中傷被害を受けやすいのか

誹謗中傷被害は誰にでも起こりうるものですが、統計的に被害リスクが高い集団があることも事実です。

  • SNSで発信活動をしている人ブロガー、YouTuber、インフルエンサー、タレント、作家など。発信量が多いほど標的になりやすい。
  • 女性・性的少数者性別・性的指向を理由とした誹謗中傷は特に深刻で、性的な嫌がらせを受けるリスクが高い。
  • 若者・10代学校いじめとネット上の誹謗中傷が連動し、逃げ場のない状況になりやすい。自尊心の形成途上であるため心理的ダメージが深刻になる。
  • 公人・政治家・経営者社会的注目度が高いため攻撃対象になりやすい。ただし、公人であっても人格攻撃は誹謗中傷にあたる。
  • 紛争・炎上の当事者SNS上の議論・炎上に巻き込まれた個人。当初は「悪いことをした人」と認識されていた人が、後に誹謗中傷の被害者となることも多い。
  • 過去に被害歴のある人一度被害を受けると、継続的に同じ加害者から攻撃されることがある。また過去の被害体験がトラウマとなり、新たな書き込みに対する感受性が高まる。
PSYCHOLOGICAL IMPACT

誹謗中傷被害が心理に与える影響

誹謗中傷被害は急性期の激しい感情反応から、慢性的な自己否定・対人不信、そして身体症状にまで広く影響を及ぼします。「気のせい」では片付けられない深刻な反応です。

急性期の反応

急性期の心理反応

誹謗中傷被害を受けた直後に生じる急性期の心理反応は、人によって異なりますが、以下のようなものが一般的です。

😵
強いショック・混乱
「なぜ自分が?」「何が起きているのかわからない」という茫然自失の感覚。
😡
激しい怒り
加害者への強い怒り。「やり返したい」「訴えてやりたい」という衝動。
😨
恐怖と不安
「次は何が来るのか」「現実の生活にまで影響が及ぶのか」という恐怖感。
😢
深い悲しみと絶望感
傷つけられたことへの悲しみ、「もう終わりだ」という絶望感。
😶
恥・羞恥心
「なぜ自分はこんな目に遭うのか」「自分に問題があるのか」という不当な自責感。
🌫
現実感の喪失(解離)
「これは夢ではないか」「現実のことと思えない」という解離感覚。
慢性的ダメージ

慢性的な心理的ダメージ

誹謗中傷被害が継続したり、急性期の反応が適切にケアされないままになると、以下のような慢性的な心理的ダメージが蓄積されます。

  • 自己肯定感・自尊心の破壊大量の否定的メッセージで「自分は価値のない人間だ」という信念が内面化される。脳はネガティブ情報に強く反応する「ネガティビティバイアス」を持つため、100件の応援より1件の誹謗中傷の方が強く記憶に残る。
  • 慢性的な不安と過覚醒常にSNSの反応を確認せずにいられない、または逆に極端にSNSを恐れる。些細な通知音にも過剰に反応する状態。
  • 対人不信と社会的孤立「誰が攻撃しているのかわからない」という不信感から、人間関係全般に不信を抱くようになる。新しい人間関係を築くことへの強い恐怖。
  • 自己表現の萎縮SNSだけでなく、対面での発言や表現活動全般に対して自己検閲を強める。創作活動、職業活動、社会参加が制限される。
  • アイデンティティの揺らぎ他者から投げつけられた否定的な評価を自分のアイデンティティの一部として内面化してしまうリスク。
  • 加害者への強迫的な注目加害者のSNSを繰り返し確認し続ける、エゴサーチをやめられないなど、自らが傷つく行動を繰り返してしまう。
身体的影響

身体的影響

心理的ストレスは必ず身体にも影響を及ぼします。誹謗中傷被害者が訴えることの多い身体症状には以下のものがあります。

🌙
睡眠障害
入眠困難、中途覚醒、悪夢の反復。誹謗中傷の内容が夢に出てくるケースも多い。
🍽
食欲の変化
食欲不振による体重減少、またはストレス性の過食。
🪫
慢性疲労感
十分に休んでも疲れが取れない。「生きているだけで疲れる」という感覚。
🤕
頭痛・腹痛・消化器症状
ストレス性の緊張性頭痛、胃痛、過敏性腸症候群様の症状。
💗
動悸・息切れ
SNSの通知を見るたびに胸がドキドキする。パニック発作様の症状。
🦠
免疫機能の低下
慢性ストレスによるコルチゾール過剰分泌が免疫を抑制し、風邪・感染症にかかりやすくなる。
⚠️
身体症状が続く場合は受診をこれらの身体症状が2週間以上続く場合は、心療内科・精神科または内科への受診をお勧めします。「気のせいだ」「我慢すれば治る」と思って放置すると、症状が慢性化するリスクがあります。
MENTAL DISORDERS & SUICIDE

うつ病・PTSD・適応障害と自殺リスク

誹謗中傷被害は複数の精神疾患の発症リスクを著しく高め、自殺念慮・自殺行動とも有意に関連します。早期の専門家への相談が回復を早めます。

精神疾患

誹謗中傷被害によって発症しやすい精神疾患

誹謗中傷被害は、以下の精神疾患の発症リスクを著しく高めることが研究によって示されています。精神保健福祉士による解説では、「誹謗中傷が終わった後でもうつ病を発症することがあり、十何年も経った後に精神疾患として現れる場合もある」と指摘されています。

🌧
うつ病(大うつ病性障害)
気分の落ち込み、興味・喜びの喪失、倦怠感、集中力低下、自己否定感、睡眠障害、食欲変化などが2週間以上続く状態。誹謗中傷被害者に最も多く見られる精神疾患。
PTSD(心的外傷後ストレス障害)
特に深刻な誹謗中傷(個人情報の暴露、性的被害、長期にわたる組織的攻撃)はトラウマ体験として記録され、フラッシュバック、回避行動、過覚醒、否定的な認知・気分変化などのPTSD症状を引き起こす。
🌀
複雑性PTSD(C-PTSD)
長期・反復的な誹謗中傷被害によって生じやすい。感情調節の困難、慢性的な空虚感、対人関係の永続的な困難、アイデンティティの混乱などを特徴とする。
📉
適応障害
誹謗中傷という明確なストレス要因に対して、うつ症状・不安症状が生じ、日常生活に支障が出ている状態。うつ病の診断基準をすべて満たさない場合にもしばしば適用される。
👥
社会不安障害(社交恐怖症)
人から見られることへの強い恐怖が生じ、外出・人との交流を回避するようになる。
💥
パニック障害
SNSの通知・特定の言葉・人との接触をきっかけとしたパニック発作が繰り返し生じる状態。
うつ病チェック

うつ病の主な症状チェック

以下の症状が2週間以上ほぼ毎日続いている場合は、うつ病の可能性があります。精神科・心療内科への受診をご検討ください。

  • ほとんど一日中、気分が落ち込んでいる
  • これまで楽しめていたことに興味・喜びを感じられなくなった
  • 食欲が著しく減退または増加した
  • 眠れない、または眠りすぎる
  • 動作や思考が遅くなったように感じる、または落ち着かない
  • 疲れやすく、気力がわかない
  • 「自分は価値がない」「誹謗中傷されるのは自分が悪いから」と感じる
  • 物事に集中できない、判断がうまくできない
  • 「死にたい」「消えてしまいたい」という気持ちがある
PTSDチェック

PTSDの主な症状チェック

誹謗中傷被害から1ヶ月以上経過しても、以下のような症状が続く場合はPTSDの可能性があります。

  • 再体験症状(フラッシュバック)誹謗中傷の内容・受けたときの衝撃が、意図せず鮮明に蘇る。悪夢として繰り返し体験する。
  • 回避症状誹謗中傷を思い出させるもの(SNS、特定のウェブサイト、加害者に関連するものなど)を必死に避けようとする。
  • 過覚醒常に緊張している。些細な刺激(通知音、特定の言葉など)に強い反応を示す。イライラしやすい、集中できない。
  • 否定的な認知と気分「誰も信用できない」「世界は危険だ」「自分は傷ついた存在だ」という否定的な信念が固定化している。喜びや幸福感を感じられない。
専門家への相談をためらわないで「誹謗中傷ごときで精神科に行くのは大げさだ」と思う必要はありません。誹謗中傷被害による精神的苦痛は、心療内科・精神科が専門とする正当な診療対象です。早期の相談が回復を早めます。
自殺リスク

誹謗中傷被害と自殺リスク

⚠️
このセクションには自殺に関する記述が含まれますつらいと感じた場合は、無理に読み進めず、ページ下部の相談窓口に連絡してください。今すぐ助けが必要な場合は、いのちの電話(0120-783-556)またはよりそいホットライン(0120-279-338)に電話してください。

誹謗中傷被害は、自殺念慮や自殺行動のリスクを有意に高めることが複数の研究で明らかになっています。国内外の研究で、サイバーハラスメント・誹謗中傷被害が将来的な自殺念慮・自殺行動リスクの上昇と有意に関連することが確認されています。日本では2020年に、SNS上の誹謗中傷を受けたプロレスラー・木村花さんが亡くなる事件が発生し、誹謗中傷と自殺の深刻な関係が社会に衝撃を与えました。被害者が女性である場合、被害の内容が性的なものである場合、被害が長期化・反復している場合などに、特にリスクが高まります。

特に以下の条件が重なる場合、自殺リスクが著しく高まります:

  • !誹謗中傷が長期化・組織的に行われている
  • !個人情報が特定・拡散されている(ドキシング)
  • !職場・学校など現実生活への影響が出ている
  • !信頼できる相談相手がいない(社会的孤立)
  • !すでにうつ病・PTSD等のメンタルヘルス問題を抱えている
  • !過去に自傷・自殺未遂の経験がある
  • !アルコールや薬物の使用が増加している

周囲が気づくべきサイン:誹謗中傷被害者が自殺を考えている可能性を示すサインには、以下のようなものがあります。周囲の人はこれらのサインに注意してください。

  • 「死にたい」「消えたい」「もう終わりにしたい」「いなくなりたい」という言葉を口にする
  • SNSやブログに「お世話になりました」「さようなら」などの投稿をする
  • 急に大切にしていたものを人にあげようとする
  • それまで関心のあったことへの興味を突然失う
  • 急に静かになった、または逆に妙に落ち着いて見える(覚悟を決めた状態の可能性)
  • 自傷行為の痕跡がある
  • 誰とも連絡を取らなくなる、引きこもる
  • 「自分がいなくなった方がみんな幸せになる」という発言

これらのサインに気づいた場合は、ためらわずに直接「死にたいと思っているの?」と尋ねてください。自殺について尋ねることが自殺を促進するという誤解がありますが、研究ではその逆であることが示されています。「気にかけてくれている人がいる」という事実を伝えることが、命を救う可能性があります。そして、すぐに専門の相談窓口や医療機関につなげてください。

📞
今すぐ助けが必要な場合いのちの電話:0120-783-556(24時間・無料)/よりそいホットライン:0120-279-338(24時間・無料)/チャイルドライン:0120-99-7777(18歳以下・16:00-21:00)
あなたが誹謗中傷で受けた傷は本物です。そしてその痛みを感じることは、あなたが弱いからではありません。つらいときに助けを求めることは、勇気ある行動です。
EMERGENCY STEPS

被害を受けたときの緊急対処ステップ

誹謗中傷被害に気づいたら、自分の心と証拠を守ることを最優先に。6つのステップを順に進めることで、心理的ダメージの拡大を防ぎ、法的対処の道を開けます。

6ステップ

緊急対処の6ステップ

気づいた直後から実行できる、優先順位の高い順に並べた対処ステップです。

STEP 1
今すぐSNSから距離を置く
誹謗中傷の書き込みをこれ以上読み続けないことが最優先。SNSの通知をすべてオフにする/該当アプリをスマートフォンから一時的に削除する/アカウントを非公開にするか一時ログアウト/エゴサーチ(自分の名前・IDの検索)を止める。読み続けることは心理的ダメージを蓄積させるだけです。
被害認識直後
STEP 2
証拠を保全する
スクリーンショット撮影(投稿内容・日時・URL・アカウント名がすべて画面内に収まるよう、複数枚+バックアップ)/URLをメモに記録/Wayback Machineなどウェブアーカイブに保存/時系列で整理/自分での保全に限界がある場合は弁護士・公証人に依頼。プロバイダのログ保存期間(3〜6ヶ月)を過ぎる前に行う。
24時間以内推奨
STEP 3
信頼できる人に相談する
一人で抱え込むことが最も危険。誰かに話すことで孤立感が和らぎ、ダメージの蓄積を防げる。「大したことない」と言われても自分の辛さは正当だと知っておく/相談相手がいなければ よりそいホットライン・精神保健福祉センターへ/仕事・学業への影響があれば職場・学校の関係者にも伝える。
並行実施
STEP 4
プラットフォームに削除申請・報告
各SNS・掲示板の通報機能を使う/2025年4月施行の情報流通プラットフォーム対処法により、大規模プラットフォーム(X、Meta、Google、TikTok等)は削除申出から原則14日以内の回答が義務化/対応が遅い場合はセーファーインターネット協会「誹謗中傷ホットライン」(削除率約80%)へ/削除申請前に必ず証拠保全を。
証拠保全の後
STEP 5
法的対処・相談窓口の検討
悪質な誹謗中傷(名誉毀損、脅迫、個人情報暴露、性的被害)は弁護士へ/法テラス(0570-078374)で資力を問わず無料法律相談/警察庁のサイバー犯罪相談窓口(各都道府県警察に対策窓口あり)/違法・有害情報相談センター(総務省)/みんなの人権110番(0570-003-110)。
被害確認後速やかに
STEP 6
メンタルヘルスのケアを最優先に
2週間以上、強い落ち込み・不安・不眠・フラッシュバックが続く場合は心療内科・精神科を受診/自立支援医療制度を使えば自己負担が原則1割/精神保健福祉センターに無料相談/生活リズム(食事・睡眠・運動)の維持/自分を責めないこと——誹謗中傷は加害者の問題であり、あなたの罪ではありません。
継続実施
自分を責めないで誹謗中傷は加害者の問題であり、あなたの「罪」ではありません。「何が書かれているか確認しなければ」という衝動に駆られても、まず自分を守ることを優先してください。
RECOVERY & TREATMENT

メンタルヘルスの治療と回復

誹謗中傷被害からの回復は急性期・亜急性期・慢性期・統合期と段階を経て進みます。専門的心理療法・薬物療法・日常のセルフケアを組み合わせることで、深い回復が可能です。

回復の段階

回復の段階を知る

誹謗中傷被害からの心理的回復は、直線的ではなく、良い日と悪い日を繰り返しながら少しずつ進んでいきます。回復の段階を知っておくことで、「まだこんな状態なのか」という自己批判を減らすことができます。

急性期
被害直後〜数日
混乱・パニック・強い怒りや悲しみが生じやすい。最優先事項は「自分の安全確保」。SNSから距離を置き、信頼できる人に連絡することが最初のステップ。
被害直後
亜急性期
数日〜数週間
急性の感情反応が少し落ち着いてくる一方、不眠・フラッシュバック・過覚醒などが続く。この時期から専門家への相談を始めることが推奨される。
数日〜数週間
慢性期
数週間〜数ヶ月
表面上は落ち着いているように見えても、回避行動・自尊心の低下・対人不信などが持続する。専門的な心理療法が最も有効な時期。
数週間〜数ヶ月
統合期
数ヶ月〜数年
体験を自分の人生の一部として意味づけ、少しずつ日常生活を取り戻していく。この段階でポストトラウマティック・グロース(PTG:心的外傷後成長)が生じることもある。
数ヶ月〜数年
心理療法

専門的な心理療法

誹謗中傷被害からの回復に効果が示されている主な心理療法を紹介します。いずれも、精神科・心療内科・カウンセリングルームで受けることができます。

認知行動療法(CBT)

「自分には価値がない」「もう社会に出られない」などの否定的な自動思考のパターンを特定し、より現実的・適応的な思考に修正する。行動活性化(うつ状態での行動量の回復)も重要な要素。

トラウマフォーカスドCBT(TF-CBT)

誹謗中傷をトラウマ体験として扱い、トラウマ記憶の処理と認知の再構成を組み合わせた専門的な介入法。

EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)

眼球運動などの両側性刺激を使い、トラウマ記憶の処理を促進する。PTSDに対する国際的なガイドラインで推奨される治療法。

マインドフルネスストレス低減法(MBSR)

誹謗中傷に関する反芻思考(ぐるぐると同じことを考え続ける)への対処に特に有効。「今この瞬間」への注意の訓練。

コンパッション・フォーカスト・セラピー(CFT)

自己への思いやり(セルフ・コンパッション)を高め、誹謗中傷によって生じた恥・自己批判に対処する。「自分を責めすぎる」傾向の強い被害者に特に有効。

暴露・反応妨害法(ERP)

SNSを見ることへの強い恐怖(回避行動)に段階的に向き合い、恐怖反応を低減させる技法。必ず専門家の指導のもとで行うこと。

薬物療法

薬物療法

うつ病・PTSD・不安障害が診断された場合、精神科・心療内科での薬物療法が回復を支えます。

  • SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)うつ病・PTSD・社会不安障害・パニック障害の第一選択薬。フルボキサミン、パロキセチン、エスシタロプラム、セルトラリンなど。
  • SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)うつ病・不安障害の治療薬。デュロキセチン、ベンラファキシンなど。
  • 睡眠薬・抗不安薬重篤な睡眠障害や急性の強い不安に対して短期的に使用。依存性に注意が必要。
  • 重要薬の効果が現れるまでには通常2〜4週間かかる。自己判断で中止しないことが大切。
セルフケア

日常生活でできるセルフケア

専門的な治療と並行して、日常生活でのセルフケアが回復を支える重要な柱となります。

  • 基本的な生活リズムの維持決まった時間に起き、食事をとり、夜は寝る。シンプルに見えて回復の最も重要な基盤。
  • 身体を動かすウォーキング、ヨガ、ストレッチなど。運動はセロトニンやBDNF(脳由来神経栄養因子)の分泌を促し、うつ・不安の症状を軽減する効果が研究で示されている。
  • エクスプレッシブ・ライティング(表現的記述)誹謗中傷を受けたときの体験と感情を、誰かに読ませることを意識せず、紙に書き出す。研究では、トラウマ体験を書くことが心理的回復を促進することが示されている。
  • SNSとの関係を見直す回復期は特に、SNSの使用時間・使用方法を意識的にコントロールする。「見なければならない」という強迫的な使用を避ける。
  • 自然の中で過ごす自然環境には注意回復効果(ART:Attention Restoration Theory)があり、慢性ストレスからの回復を促す。
  • 創造的な活動音楽、絵画、料理、手芸など。創造的活動は感情の表現と処理、そして自己効力感の回復に役立つ。
  • 呼吸法・リラクゼーション4-7-8呼吸法(4秒吸う・7秒止める・8秒吐く)、漸進的筋弛緩法などが自律神経の安定に効果的。
  • 支持的なコミュニティへの参加誹謗中傷被害の経験者同士のオンラインコミュニティ、メンタルヘルスのサポートグループへの参加。
相談タイミング

専門家に相談すべきタイミング

以下のいずれかに該当する場合は、できるだけ早く精神科・心療内科または精神保健福祉センターに相談することをお勧めします。

  • 2週間以上、強い落ち込みや不安が続いている
  • 睡眠障害(入眠困難、中途覚醒、悪夢)が1ヶ月以上続いている
  • 誹謗中傷の内容がフラッシュバックして、日常生活に支障が出ている
  • 仕事・学校に行けなくなっている
  • 「死にたい」「消えたい」という気持ちが生じている
  • 自傷行為をしてしまった
  • アルコールや薬物への依存が疑われる
  • 人と会うことが極度に怖くなっている
PUBLIC SUPPORT & SPECIFIC CONTEXTS

公的支援制度・若者・職場での被害

自立支援医療制度や精神保健福祉センターなどの公的制度を活用すれば、医療費負担を軽減しつつ専門的支援を受けられます。子ども・若者の被害、職場での被害には独自の対処が必要です。

公的支援制度

公的支援制度と相談窓口

誹謗中傷被害でうつ病・PTSD・適応障害・不安障害などを発症した場合、活用できる公的制度・無料相談窓口は多数あります。

  • 自立支援医療制度(精神通院医療)通常3割の医療費自己負担が原則1割に軽減(世帯所得によりさらに軽減または上限設定)。対象はうつ病・PTSD・適応障害・不安障害・統合失調症などで精神科・心療内科に継続通院する方。申請先は市区町村の福祉担当窓口または精神保健福祉センター。必要書類は医師の診断書・申請書・健康保険証など。申請には医師の診断書が必要なため、まず精神科・心療内科を受診することが前提。
  • 精神保健福祉センター各都道府県・政令指定都市に設置。精神科医・精神保健福祉士・臨床心理士による無料相談。誹謗中傷被害による精神的苦痛、うつ・不安・PTSD症状について相談可能。匿名相談OK。治療機関への紹介も。自立支援医療制度の申請窓口としても機能。電話・来所・メールなど複数の方法で受け付け。
  • よりそいホットライン0120-279-338。24時間365日対応の無料相談窓口。どんな悩みでも受け付ける。誹謗中傷被害の精神的つらさも相談可能。
  • いのちの電話0120-783-556。24時間365日対応。特に「死にたい」「消えたい」という気持ちがある場合に連絡。
  • こころの健康相談統一ダイヤル0570-064-556。都道府県・政令市が設置する精神保健福祉センター等への共通ダイヤル。
  • 法テラス0570-078374。法的トラブルに関する無料電話相談。資力によっては弁護士費用の立替制度あり。
  • 違法・有害情報相談センター総務省支援事業。ネット上の誹謗中傷・プライバシー侵害の削除方法に関するアドバイス。
  • みんなの人権110番(法務局)0570-003-110。法務省の人権擁護機関による相談。平日8:30〜17:15。
  • セーファーインターネット協会「誹謗中傷ホットライン」ネット上の誹謗中傷コンテンツの削除を無料で支援(削除率約80%)。
子ども・若者

子ども・若者の誹謗中傷被害

子ども・若者は、誹謗中傷被害を特に受けやすく、かつその影響が長期化しやすい集団です。学校でのいじめとネット上の誹謗中傷が連動するケースが多く、24時間365日逃げ場のない状況になりやすい。ネット上の投稿は半永久的に残るため、被害の影響が成人後まで続く場合があります。自己概念・自尊心の形成途上にあるため、誹謗中傷による自尊心の損傷がより深刻で長期的になります。

58.2%
サイバーいじめ・ネットハラスメントを経験した10代の割合(2025年国際統計、2016年比で大幅増)
約50%
被害を受けても誰にも相談しなかった子どもの割合

子どもへの影響:誹謗中傷被害が子ども・青少年に与える影響は、心理・学業・身体の複数の領域に及びます。

  • 精神的影響うつ症状・不安症状の有意な増加。自殺念慮・自殺行動のリスク上昇。学業成績の低下・登校拒否・不登校。
  • 認知への影響注意集中力の低下。反芻思考(同じことを繰り返し考え続ける)。自己評価の慢性的な低下。
  • 対人関係への影響友人関係の回避。教師・大人への不信感。将来的な信頼関係構築の困難。
  • 身体症状頭痛・腹痛・睡眠障害・食欲不振などの心身症状。
  • 長期的影響成人後にまで及ぶ自尊心の低下。PTSDの発症。社会不安障害・対人恐怖症の発症リスク。

保護者が気づくべきサイン:

  • !スマートフォンを使った後に落ち込んでいる、泣いている
  • !「学校に行きたくない」と言いだした
  • !食欲がなくなった、急に体重が減った
  • !不眠・悪夢・夜中に目が覚める
  • !SNSのアカウントを突然削除した、または使わなくなった
  • !特定の友人・グループの話題を極端に避ける
  • !「いなくなりたい」「消えたい」という言葉を口にする

保護者・学校にできること:

  • まず聞く「どうしたの?」と声をかけ、子どもの話をじっくり聞く。「大げさだ」「SNSをやめれば解決する」という反応は避ける。
  • 一緒に証拠を保存するスクリーンショット・URLを一緒に保存する。一人に任せない。
  • 「あなたは悪くない」と伝え続ける子どもが自分を責めている場合、繰り返し加害者側の責任であることを伝える。
  • 学校に報告・連携担任・スクールカウンセラー・養護教諭に状況を報告し、学校としての対応を求める。
  • 専門家に相談する子どもの人権110番(0120-007-110)、各都道府県の教育相談窓口、スクールカウンセラー、小児・思春期専門の心療内科へ。
  • 必要に応じて法的対処悪質なケースでは弁護士・警察への相談も視野に入れる。
職場での被害

職場での誹謗中傷被害

誹謗中傷被害は、SNSや匿名掲示板だけでなく、職場環境においても深刻な問題となっています。

職場の誹謗中傷・ハラスメントの主な形態:

  • 社内チャット・メールでの攻撃Slack、Teams、社内メールなどでの侮辱的な書き込み・メッセージ。
  • 社外の口コミサイトへの投稿OpenWork、Glassdoorなどでの事実無根の投稿。退職者による元職場・元同僚への誹謗中傷。
  • カスタマーハラスメント(カスハラ)顧客・取引先からの過度な攻撃的クレーム、SNSでの晒し行為。
  • 社内での風評流布職場内で事実無根の噂を流し、特定の従業員の評判を傷つける。

職場の誹謗中傷がメンタルヘルスに与える影響:

  • !うつ病・適応障害の発症リスクの著しい上昇
  • !モチベーション・生産性・創造性の低下
  • !休職・退職を余儀なくされるケース
  • !職場全体の心理的安全性・雰囲気の悪化
  • !組織への帰属意識・信頼感の喪失

職場での誹謗中傷への対処法:

  • 証拠の保全問題のある書き込み・メッセージのスクリーンショットを保存する。日時・差出人・内容が明確に記録されるようにする。
  • 上司・人事部門への報告会社のハラスメント対応窓口・人事部門に証拠を持って報告する。
  • 労働基準監督署・都道府県労働局への相談職場でのハラスメントは労働法上の問題でもある。「総合労働相談コーナー」(厚生労働省)に無料で相談できる。
  • EAP(従業員支援プログラム)の活用多くの企業がEAP(外部カウンセリングサービス)を導入している。会社のEAPを活用してカウンセリングを受ける。
  • 弁護士への相談職場内の誹謗中傷が労働法上のハラスメント(パワハラ)に該当する場合、損害賠償請求・解雇無効等の法的手続きを検討する。
FOR FAMILY & SUPPORTERS

家族・支援者にできること、よくある質問

支援者の存在は被害者の回復に大きな影響を与えます。一方で、誤った関わり方は被害を深めるリスクも。支援者自身のセルフケアも欠かせません。

対応のポイント

支持者としてできること・してはいけないこと

誹謗中傷被害からの回復において、家族・友人・パートナーなどの「支持者」の存在は極めて重要です。研究では、社会的サポートの有無が誹謗中傷被害のメンタルヘルスへの影響を大きく左右することが示されています。たった一人でも「自分の味方がいる」と感じられることが、回復の速度と深さに大きな違いをもたらします。

✓ してよいこと
まず「聞く」こと——解決策やアドバイスを提示する前に、被害者の話をじっくり聞く。「大変だったね」「辛かったね」という共感の言葉を伝える
「あなたは悪くない」と繰り返し伝える——被害者は自分に落ち度があるのではないかと自責する傾向があるため、加害者の問題であることを繰り返し伝える
SNS管理のサポート——衝動的に誹謗中傷を読み続けることを防ぐ。通知のオフ設定、アプリの一時削除を一緒に行う
専門家への相談を一緒に検討する——「病院に行くほどでもない」と思い込んでいる場合、一緒に受診を検討。必要であれば付き添う
日常的なサポート——食事を一緒に食べる、散歩に誘う、映画を見るなど、「普通の日常」を一緒に過ごすことが回復を助ける
✗ してはいけないこと
「大げさだ」「気にするな」という言葉を使う
「ネットのことくらいで」と被害を軽視する
解決策を一方的に提示する
被害者の感情を否定する
24時間対応しようと無理をする(共感疲労につながる)
💡
軽視の言葉を絶対に使わない「ネットのことくらいで」「気にするな」「大げさだ」という発言は、被害者の孤立感をさらに深めます。痛みを認め、共感の言葉を伝えることが、回復への最大の支えです。
支援者のケア

支援者が陥りがちな「支援疲れ」への対処

誹謗中傷被害者を支え続けることは、支持者自身にも精神的な負担をかけます。支援者自身のケアも大切です。

  • 共感疲労(Compassion Fatigue)に注意他者の苦しみに長期間向き合うことで、支援者自身が心理的に疲弊する状態。「もう聞いていられない」「どうせ変わらない」という気持ちが生じてきたら休憩のサイン。
  • 自分も誰かに話す被害者の話を一人で抱え込まず、信頼できる第三者(友人、カウンセラー)に話す。
  • 適切な距離感を保つ24時間対応する必要はない。「今日は話を聞けない」と伝えることも大切。燃え尽きれば結果的に被害者のためにならない。
  • 支援者自身のセルフケア自分の睡眠・食事・運動・趣味の時間を確保する。必要であれば自身もカウンセリングを活用する。
FAQ

よくある質問

Q. 誹謗中傷を受けたことを精神科に相談してもいいのですか?

A. もちろんです。誹謗中傷被害による精神的苦痛は、心療内科・精神科が専門とする正当な診療対象です。「ネットのことで精神科に行くのは大げさだ」と感じる必要はありません。誹謗中傷は研究によってうつ病・PTSD・適応障害・不安障害などを引き起こすことが医学的に示されています。「辛い」と感じている時点で、専門家に相談する十分な理由があります。受診の際は「いつから」「どのような誹謗中傷を受けているか」「現在どのような症状があるか」を伝えると、適切な診断と治療を受けやすくなります。

Q. 匿名の誹謗中傷でも犯人を特定できますか?

A. はい、法的手続きにより特定できる可能性があります。2022年に改正されたプロバイダ責任制限法(現:情報流通プラットフォーム対処法)により、「発信者情報開示命令」という手続きが創設され、従来よりも短期間・低コストで加害者を特定できるようになりました。ただし、IPアドレスのログ保存期間は通常3〜6ヶ月程度のため、被害を認識したらできる限り早く証拠を保全し、弁護士に相談することが重要です。法テラス(0570-078374)で無料の電話法律相談を受けることができます。

Q. 誹謗中傷を無視し続ければ解決しますか?

A. 一時的・散発的な書き込みであれば、反応しないことが最善のケースも多いです(反応することで攻撃がエスカレートするリスクがあるため)。しかし「無視し続ければ必ず解決する」とは限りません。誹謗中傷が継続的・組織的である場合、個人情報が暴露されている場合、名誉毀損・脅迫に該当する悪質な内容の場合は、積極的な対処(プラットフォームへの報告、法的手段の検討)が必要です。また、「無視している」つもりでも、心の中では確実にダメージを受けているケースがほとんどです。法的・メンタルヘルスの両面からのケアを並行して行うことをお勧めします。

Q. リツイート(リポスト)だけでも法的責任を問われますか?

A. はい、可能性があります。2020年の最高裁判決では、名誉毀損的な内容のツイートをリツイートしたこと自体が名誉毀損にあたりうると判断されました。「元の投稿者が悪い」「自分は拡散しただけ」という主張は通用しない場合があります。リポスト・シェアは「その情報を広めることに同意した」とみなされる可能性があるため、内容の真実性や他者の名誉への影響を確認してから行うことが重要です。

Q. 被害から何年も経ちますが、今でも精神的に苦しいです。治るのでしょうか?

A. 回復は可能です。ただし、誹謗中傷被害、特に深刻なケースや長期間継続したケースでは、複雑性PTSDやうつ病が慢性化することがあり、自然に回復することは難しい場合があります。専門家(精神科・心療内科・心理士)による適切な治療(認知行動療法、EMDR、薬物療法など)を受けることで、症状を大幅に改善できる可能性があります。「被害から時間が経っているから手遅れだ」ということはありません。むしろ、今からでも専門的なサポートを受けることで回復への道が開けます。精神保健福祉センターへの相談から始めてみてください。

Q. 子どもがネット上で誹謗中傷を受けています。どうすればいいですか?

A. まず、お子さんの話をしっかり聞いてください。「大したことない」「スマホをやめればいい」という反応は避けてください。次に行うべきことは、①スクリーンショットで証拠を保存する、②学校の担任・スクールカウンセラーに報告する、③子どもの人権110番(0120-007-110)や各都道府県の教育相談窓口に相談する、④心理的なケアが必要と感じたら、小児・思春期専門の心療内科やスクールカウンセラーにつなぐ、⑤悪質なケースは弁護士・警察サイバー犯罪相談窓口への相談を検討する。最も大切なのは、お子さんに「あなたは悪くない、必ず守る」と伝え続けることです。

Q. 加害者を特定・訴えるためにはどれくらいの費用と時間がかかりますか?

A. 発信者情報開示命令の申立てから加害者を特定するまでには、概ね数ヶ月程度かかります(以前は半年〜1年以上かかっていましたが、2022年の法改正により大幅に短縮されました)。弁護士費用の目安は30万〜100万円程度で、事案の複雑さによって変動します。加害者が特定された後の民事訴訟(損害賠償請求)では、さらに追加の費用と時間がかかります。法テラスの電話相談(0570-078374)で費用の概算を確認することができます。また、弁護士費用が払えない方のために、法テラスの「弁護士費用立替制度」も利用できます(資力要件あり)。

誹謗中傷被害でつらい
あなたへ

「ネットのことくらいで」と自分を責めないでください。あなたが受けた傷は本物です。一人で抱え込まず、ココトモに話してみませんか。専門のカウンセラーがあなたの話を聞きます。

今すぐ話したい方へ——相談窓口
ココトモ相談するチャット相談・無料
いのちの電話0120-783-55624時間・無料
よりそいホットライン0120-279-33824時間・無料

このページの情報は、医師による診断や治療に代わるものではありません。症状が気になる場合は、心療内科・精神科への受診をご検討ください。

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