メンタルヘルス用語辞典 · 現実感消失

現実感消失(デリアライゼーション)とは?
症状・原因・グラウンディング・治療法を解説

現実感消失(Derealization)は、周囲の世界が霧がかかったように、夢の中のように非現実的に感じられる体験です。「発狂しているわけではない」という事実、離人症との違い、脳科学的なメカニズム、グラウンディング技法、そして治療法まで詳しく解説します。

ABOUT DEREALIZATION

現実感消失(デリアライゼーション)とは

現実感消失とは、周囲の世界が非現実的、夢のような、霧がかかったように感じられる体験です。精神的な危機のサインとして現れることが多く、適切な支援と対処法によって改善が期待できます。

定義

現実感消失とは——世界が「遠い」という体験

現実感消失(Derealization)とは、自分を取り巻く外界の環境、人、物体などが非現実的に感じられる知覚・体験の変容です。目の前の世界が「夢の中のようだ」「霧がかかったようだ」「映画のセットのようだ」「ガラス越しに見ているようだ」という独特の感覚として体験されます。

重要な点は、現実感消失を体験している人は現実検討能力(現実と非現実の区別をつける能力)を保っているということです。「これは現実ではない」と感じながらも、「でも実際には現実のはずだ」という認識は失われていません。これは統合失調症の幻覚・妄想とは根本的に異なる点です。

一時的な体験
健常者でも起こる
一般人口の最大50〜70%が生涯に一度は軽い現実感消失を体験すると報告されています。特に重大なストレス下、睡眠不足時、熱が高い時などに生じる一時的なものは、医学的な問題ではありません。
病的な現実感消失
持続・反復・生活支障
症状が持続する、または繰り返し強く出現して日常生活や社会生活に支障をきたしている場合は、専門的なサポートが必要です。離人症・現実感消失症(DPDR)として診断されることがあります。
🧠
脳科学的なメカニズム現実感消失の発生には、感情処理に関わる扁桃体の活動抑制と、前頭前野による感情抑制の亢進が関与していると考えられています。過剰な不安やストレスへの防衛的な応答として、脳が「感情の蓋」をして感覚を遠ざけるメカニズムが働くとも解釈されています。感覚処理に関わる側頭頭頂接合部の機能変容も報告されています。
「発狂しているわけではありません」現実感消失を初めて体験した人の多くは、「自分は狂ってしまった」「現実に戻れなくなってしまう」と非常に恐怖を感じます。しかし、現実感消失は精神病(統合失調症等)とは異なり、現実認識の能力は保たれています。この体験そのものは危険なものではありません。
離人症との違い

現実感消失と離人症の違い

現実感消失(Derealization)と離人症(Depersonalization)は、しばしば一緒に語られる密接な関係にある体験ですが、「対象が何か」という点で異なります。

現実感消失(Derealization)
外の世界が非現実的に感じられる
中核体験は「外界が対象」。周囲の景色がガラス越しに見える、世界が夢の中のようだ、周りの人が人形のようで現実感がない、霧がかかった感覚——世界が遠く感じる体験。
離人症(Depersonalization)
自分自身が非現実的に感じられる
中核体験は「自己が対象」。自分が自分でないように感じる、自分の体を外から眺めている感覚、感情が自分のものでないようだ——自分が遠く感じる、幽体離脱のような感覚。
両方の症状が同時に出現することが非常に多く、DSM-5では「離人症・現実感消失症(Depersonalization/Derealization Disorder: DPDR)」として一括して診断されます。どちらの症状が強いかは個人によって異なります。
有病率

現実感消失は、意外と多くの人が体験している

現実感消失は、特定の人だけが体験するまれな現象ではありません。実はかなり広く見られる症状です。

50〜70%
生涯に一度は軽度の現実感消失を体験するとされる一般人口の割合
1〜2%
持続的な離人症・現実感消失症(DPDR)の生涯有病率
3番目
精神科・心療内科でうつ・不安に次ぐ訴えの頻度とされる
現実感消失は「自分だけの特殊な状態」ではありません。ストレスや疲労が重なったとき、多くの人が似たような体験をしています。ただし症状が持続・反復し日常生活に影響する場合は、専門家のサポートを受けることが大切です。
関連疾患

現実感消失が見られる主な疾患

現実感消失は単独の診断(DPDR)として現れることもありますが、他の精神疾患や身体疾患の症状として現れることも多くあります。

  • 離人症・現実感消失症(DPDR)最も関連が深い疾患。現実感消失単独または離人症と組み合わさって持続する場合に診断される。
  • パニック障害パニック発作に伴い一時的に現実感消失が出現することが多い。発作への恐怖が症状を維持させる。
  • PTSD・複雑性PTSDトラウマ体験の解離症状として現実感消失が現れる。フラッシュバック時に特に顕著。
  • 全般性不安障害(GAD)慢性的な不安が現実感消失の素地を作る。感情的な過負荷への防衛反応として機能。
  • うつ病重度のうつ状態において現実感消失が伴うことがある。感情麻痺と現実感消失が重複する。
  • 解離性障害解離スペクトラムの一症状として位置づけられる。DID(解離性同一性障害)でも頻繁に出現。
💡
現実感消失が出現している場合、その背景にある疾患の診断と治療が重要です。現実感消失のみを治療しようとするより、根本的な問題(不安障害、トラウマ、うつなど)にアプローチすることで、症状全体が改善することが多くあります。
受診の目安

こんな時は専門家への相談を検討してください

以下のような状態が続いている場合、心療内科・精神科への相談を検討してください。早めに相談することで、回復への道筋が見えやすくなります。

  • 現実感消失の感覚が数時間以上続き、自分でコントロールできない
  • 症状が日常生活(仕事・学業・対人関係)に支障をきたしている
  • 発作的な現実感消失と強い不安・恐怖感が繰り返し起きている
  • トラウマ体験の後から症状が始まった、または悪化した
  • 症状が怖くて特定の場所・状況を避けるようになっている
  • うつ症状・希死念慮・強い不安が伴っている
  • 物質(薬物・アルコール)の使用後に症状が始まった
SYMPTOMS

現実感消失の症状

現実感消失の症状は多岐にわたります。「うまく言葉にできない」「信じてもらえるか不安」と感じる方も多いですが、これらは医学的に認められた症状です。

主な症状

現実感消失で見られる8つの代表的な症状

🌫
霧がかかったような感覚
周囲の景色や物体が、まるで薄い霧やガラス越しに見えるように感じます。色彩が薄れて見えたり、奥行きの感覚が変わったりすることがあります。目の前にあるものが「遠い」「平板だ」と感じ、普段見慣れた場所でさえ不思議な場所のように見えることがあります。
🎭
世界が夢の中のようだ
「今自分は夢を見ているのではないか」「これは映画の中の出来事ではないか」という感覚が生まれます。現実であることは頭ではわかっているのに、感覚的にどうしても現実とは思えないという矛盾した状態が続きます。
🪟
周囲の人や物が非現実的に見える
周りにいる人たちがロボットや人形のように見えたり、生き生きとした存在として感じられなくなります。知っているはずの人の顔が「誰かわからない」ような奇妙な距離感を感じることもあります。
📐
空間・時間の感覚の歪み
距離感や時間の流れが正常に感じられなくなります。「近くのものが遠く見える」「時間が止まっているようだ」「時間の流れがとても速い(または遅い)」といった感覚が生まれます。
🔇
音や感覚の変容
周囲の音が遠くから聞こえるように感じたり、くぐもって聞こえたりします。触覚や痛覚なども変容し、「自分の体が外にある」ような感覚が伴うこともあります。
😶
感情的な平板化
現実感消失に伴い、喜怒哀楽の感情が薄れたように感じることがあります。楽しいはずの場面でも「楽しい」という実感が持てず、感情が遠いところにあるように感じられます。
🧩
既視感・未視感
初めて訪れる場所で「来たことがある」という既視感(デジャビュ)を強く感じたり、逆によく知っている場所なのに「初めて来た」という未視感(ジャメビュ)を感じたりすることがあります。
💭
自己洞察の保持
現実感消失の特徴的な点は、患者が「これは症状だ、現実ではないことはわかっている」という自己洞察を保っていることです。精神病性障害の幻覚・妄想とは異なり、現実検討能力は保たれています。
「うまく説明できない」のは当然です現実感消失の体験は非常に独特であり、言葉で正確に伝えることが難しいと感じる方が多くいます。「変な感じ」「何かがおかしい」という漠然とした表現しかできなくても、それは症状の特性上、当然のことです。専門家はこうした「言語化しにくい体験」を聞き取ることに慣れています。
発症のきっかけ

現実感消失を引き起こす主なきっかけ

現実感消失はさまざまな状況やきっかけによって引き起こされます。主なトリガーを理解することは、予防と対処に役立ちます。

😰強い不安・パニック

パニック発作や強い不安状態において現実感消失が急激に生じることがあります。これは脳が過剰な覚醒状態に対処するための防衛機制として機能していると考えられています。パニック障害の方の約50〜70%が現実感消失を経験するとされています。

  • パニック発作時に出現
  • 強い不安・恐怖感と共起
  • 過換気症候群との関連
  • 一過性で通常は短時間
CAUSES & MECHANISMS

現実感消失の原因とメカニズム

現実感消失は脳の複雑な防衛機制の一つです。「自分が弱いから」「気のせい」ではなく、脳と心の反応として理解することが回復への第一歩です。

脳のメカニズム

現実感消失が起きる脳科学的メカニズム

現実感消失の神経科学的なメカニズムとして、現在最も支持されているモデルは「感情抑制モデル」です。過剰な不安や脅威感に対して、前頭前野が扁桃体(感情反応の中枢)の活動を強く抑制することで、感情的な反応が遮断され、現実との感覚的・感情的なつながりが失われるという考え方です。

STEP 1
強い脅威・ストレスの知覚
パニック、トラウマ体験、強い不安、慢性的ストレスなどが脳に過剰な覚醒状態をもたらす。
トリガー段階
STEP 2
防衛的感情抑制
前頭前野が扁桃体を強く抑制し、感情処理をシャットダウンする(緊急の防衛反応)。
防衛起動
STEP 3
感覚処理の変容
感情・感覚の情報処理が変容し、外界の知覚に現実感・生き生きとした感覚がなくなる。
感覚変容
STEP 4
現実感消失体験
世界が夢のような、遠い、非現実的なものとして体験される。自己洞察は保たれている。
症状発現
「防衛反応」としての理解現実感消失は、脳が「これ以上の感情的な負荷に耐えられない」と判断したときに起動する自己保護メカニズムとも解釈できます。心が壊れているのではなく、心が自分を守ろうとしている反応です。この視点で症状を理解することが、恐怖の軽減につながります。
リスク要因

現実感消失を起こしやすい要因

以下の要因が現実感消失の発症リスクを高めることが知られています。これらの要因は、脳の過剰覚醒状態や感情処理の変容を促しやすい状況を作り出します。

幼少期のトラウマ・虐待体験
90%
パニック障害・不安障害の既往
85%
急性ストレス・心的外傷後
80%
大麻・向精神薬の使用歴
70%
慢性的な睡眠不足・疲労
65%
解離傾向の高い気質
60%

※ リスクの相対的な大きさを示すイメージ図です

TREATMENT & RECOVERY

現実感消失の治療と回復

現実感消失は、適切なアプローチによって改善が期待できます。「一生このままだ」と絶望する必要はありません。治療と自己ケアの組み合わせで、多くの方が回復しています。

心理療法・薬物療法

現実感消失に有効な治療

現実感消失の治療において、心理療法が中心的な役割を果たします。特に認知行動療法(CBT)は現実感消失に対するエビデンスが最も豊富な心理療法です。

認知行動療法(CBT)第一選択の心理療法

現実感消失に対する最もエビデンスが蓄積された心理療法です。現実感消失そのものへの恐怖や、症状をモニタリングし続ける行動(安全確認行動)が症状を維持・悪化させることを理解し、症状への過度な注目を減らすアプローチをとります。段階的曝露(症状が出やすい状況に段階的に向き合う)、注意の外部への再方向づけ(症状への内部的な注目から外部の現実へ)、認知再構成(「これは危険だ」「発狂する」という考えの修正)などの技法が用いられます。

マインドフルネス療法感覚再接続に有効

「今この瞬間」に注意を向けるマインドフルネスの実践は、現実感消失の症状管理に有効であることが示されています。特に感覚への注意(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚を意図的に使う)を通じて、現実とのつながりを取り戻す助けとなります。ただし、マインドフルネス瞑想が一部の患者では逆に離人感を増強させることがあるため、専門家の指導のもとで慎重に実施することが重要です。

EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)トラウマ関連に有効

トラウマに起因する現実感消失・解離症状に対してEMDRが有効なエビデンスがあります。トラウマ記憶の処理を通じて、解離症状全体の改善が期待できます。特にPTSDや複雑性PTSDに伴う現実感消失に適しています。

薬物療法補助的位置づけ

現実感消失症に対して明確にFDA承認された薬剤はありませんが、SSRIやSNRIが関連する不安・うつ症状を改善することで二次的に現実感消失症状が軽減することがあります。ラモトリギン(気分安定薬)が一部の患者で有効であったという報告もあります。ベンゾジアゼピン系は短期的な不安軽減に使用されることがありますが、依存リスクから長期使用は推奨されません。

💡
症状への「注目」を減らすことが鍵現実感消失の維持要因の一つは、症状そのものへの過度な注目と恐怖です。「また出た」「消えたか確認しよう」という内的モニタリングが、かえって症状を長引かせます。CBTでは、症状への注目を減らし、外部の世界に注意を向ける練習を行います。
避けるべきこと

症状を悪化させる行動・パターン

回復を妨げる行動パターンを知ることも、治療上重要です。以下は現実感消失の症状を維持・悪化させることが多いパターンです。

避けるべき行動・思考パターン
  • 症状について過度にモニタリングし続ける(「また出た?」と常に内省する)
  • 現実感消失が怖いので特定の状況を避ける(安全確認行動・回避行動)
  • カフェインや大麻などの症状を悪化させる物質の使用
  • 睡眠不足の継続
  • 過度なストレス状態の放置
  • 「発狂してしまう」「現実に戻れなくなる」という破局的な解釈
  • 一人で症状を抱え込み、周囲に話せずにいること
DAILY LIFE & SELF-CARE

日常生活でできるグラウンディングと自己ケア

現実感消失の症状が出たとき、グラウンディング技法を使うことで「今ここにある現実」に意識を引き戻すことができます。これらの技法は練習によって効果が高まります。

グラウンディング技法

現実感消失時に役立つグラウンディング技法

グラウンディング(grounding)とは、「今ここにある現実」に意識を引き戻すための技法の総称です。現実感消失の発作時や予防的に活用できます。

👁
5-4-3-2-1法(五感グラウンディング)
目で見えるものを5つ、手で触れられるものを4つ、耳で聞こえるものを3つ、匂いを感じられるものを2つ、味を感じられるものを1つ数える。五感を使って「今ここにある現実」に意識を引き戻すテクニックです。現実感消失の発作時に特に有効とされています。
コールドウォーター法
冷水で手を洗う、または氷を握る。強い冷たさの感覚は、現実とのつながりを再び感じさせるアンカーとなります。触覚の刺激は脳を「今ここ」に引き戻す効果があります。
🦶
足の裏を感じる
床に両足をしっかりつけ、足の裏の感覚(重さ、温度、地面との接触)に意識を集中します。「自分が地に足をつけている」という感覚を取り戻す助けになります。靴を脱いで直接地面を踏む方が効果的です。
🍋
強い味・香りを使う
レモンを嗅ぐ、ミントを口に含む、コーヒーの香りを嗅ぐなど、強い感覚刺激を与えることで脳を現実に引き戻します。感覚が「遠い」と感じる現実感消失には、強い感覚入力が助けになります。
🎵
音楽・リズム
リズム感のある音楽を聴く、または体を動かしながら音楽に合わせてリズムをとる。聴覚と身体感覚を同時に使うことで、現実感を取り戻しやすくなります。好きな音楽は感情的なアンカーとしても機能します。
📝
症状日記をつける
症状が出た時間、場所、状況、強度(0〜10点)、その時考えていたこと、トリガーとなったものを記録する。パターンを把握することで、予防的な対策が取りやすくなります。また記録行為自体が「今ここ」への注意を促します。
グラウンディングは「練習」が必要グラウンディング技法は、症状が強い時に初めて試しても難しいことがあります。症状が軽い時や出ていない時から定期的に練習しておくことで、実際に症状が出た時に自動的に使えるようになります。
生活習慣

回復を支える生活習慣

日々の生活習慣を整えることが、症状の予防と回復に大きく寄与します。以下は現実感消失の改善に有効な6つの生活習慣です。

🌙
睡眠の質を改善する
睡眠不足は現実感消失の主要なトリガーです。毎日同じ時間に起床し、就寝前のスマートフォン使用を控え、睡眠環境を整えましょう。7〜9時間の質の良い睡眠が脳の正常な感覚処理を支えます。
🏃
適度な運動
有酸素運動は不安を軽減し、脳の感情調節機能を改善します。週に3〜5回、30分程度の散歩やジョギングが推奨されます。運動中は体の感覚(地面を踏む感覚、呼吸、体の動き)に意識を向けることで、グラウンディング効果もあります。
カフェイン・アルコールを控える
カフェインは不安を増強し、現実感消失のトリガーになりやすいです。アルコールは短期的にはリラックス効果がありますが、睡眠の質を下げ、翌日の不安を増加させます。特に症状が強い時期は摂取量を見直しましょう。
🧘
リラクゼーション練習
腹式呼吸、プログレッシブ筋弛緩法(PMR)、マインドフルネス(専門家の指導のもとで)などのリラクゼーション技法は、自律神経系を安定させ、現実感消失の出現を予防します。1日数分から始めましょう。
📱
スクリーンタイムを意識する
長時間のスマートフォンやPC使用は、感覚的な現実とのつながりを弱め、現実感消失を誘発しやすくすることがあります。特に就寝前と起床直後のスクリーン使用を控えることが有効です。
👥
社会的つながりを保つ
孤立は現実感消失を悪化させます。症状のある中でも、信頼できる人と話す機会を意識的に作りましょう。症状について話せる人がいるだけで、孤独感と恐怖が大幅に軽減されます。
RECOVERY JOURNEY

現実感消失からの回復プロセス

現実感消失からの回復は直線的ではありませんが、正しい理解とサポートがあれば多くの方が改善を経験しています。回復の段階と、よくある誤解を知ることが助けになります。

回復の段階

現実感消失からの回復:5つの段階

回復は人によって速度もプロセスも異なりますが、多くの方が以下のような段階を経て改善を体験しています。段階を「完璧にクリアする」必要はなく、行きつ戻りつしながら回復していくのが自然な姿です。

STAGE 1
症状の理解と正常化
現実感消失が何であるかを正しく理解し、「自分だけがおかしい」という孤立感から解放される段階。脳の防衛機制であること、危険ではないことを学ぶことが回復の土台になります。多くの人が「名前をつけることで楽になった」と述べています。
📖 理解の段階
STAGE 2
トリガーの特定と観察
どのような状況・感情・行動が現実感消失を引き起こすかを日記などで観察します。パターンが見えてくると、発作の予測と予防ができるようになります。「症状日記」の活用が特に有効です。
🔍 観察の段階
STAGE 3
対処スキルの習得
グラウンディング技法、認知再構成、呼吸法など具体的なツールを身につける段階。症状が出ても「できることがある」という感覚が安心感をもたらします。練習を重ねることで自動的に使えるようになります。
🛠 スキル習得
STAGE 4
根本原因へのアプローチ
不安障害、トラウマ、うつなど背景にある問題に心理療法や必要に応じた薬物療法でアプローチします。現実感消失はしばしば「結果」であり、根本にある問題の治療が症状を根本的に改善させます。
🌱 根本対処
STAGE 5
再発予防と生活の再構築
症状が改善した後も、ストレス管理・睡眠・社会的つながりを維持する習慣を続けることが再発予防につながります。「症状が出ても対処できる」という自信が、長期的な回復の鍵です。
🌟 再構築
回復は「波」がある回復の過程では、調子の良い日と悪い日が繰り返されることがあります。「また悪くなった」と感じても、それは後退ではなく回復の自然な一部です。全体的な傾向が改善方向に向かっていれば、波があっても前進しています。
よくある誤解

現実感消失に関するよくある誤解と正しい理解

現実感消失についてはさまざまな誤解が広まっています。正しい情報を持つことは、症状への恐怖を減らし、適切な対処への第一歩となります。

誤解現実感消失は「発狂」の前兆だ

正解現実感消失は精神病(統合失調症等)とは無関係です。現実検討能力(現実とフィクションを区別する力)は保たれており、発狂とは異なります。多くの場合、強い不安・ストレス・疲労への脳の防衛反応です。

誤解一生このままの状態が続く

正解現実感消失は治療可能です。特に根本原因(不安、トラウマ、うつ)への適切なアプローチで症状が大幅に改善するケースが多くあります。早期に専門家のサポートを受けることが予後を改善します。

誤解薬を飲めばすぐ治る

正解現実感消失に直接効く特効薬はまだ確立されていません。しかし認知行動療法(CBT)は高いエビデンスを持ちます。薬は関連する不安やうつを緩和することで間接的に助けになります。

誤解「気のせい」だから我慢すれば治る

正解現実感消失は神経生理学的な変化を伴う実在の症状です。「気のせい」ではなく、脳の感情処理・感覚処理の変容が背景にあります。我慢するだけでは根本的な改善につながらないことが多く、専門家への相談が大切です。

誤解現実感消失があれば運転や仕事はできない

正解症状が強い急性期は安全のため制限が必要なこともありますが、多くの方が治療・対処法を身につけながら日常生活・仕事を継続しています。完全に症状が消えるまで待つ必要はなく、生活の質を維持しながら回復を目指すことができます。

予後について

現実感消失の回復見通し——多くの方が改善しています

現実感消失の予後(長期的な見通し)については、以下のことが研究からわかっています。

  • 完全回復も可能特に発症のきっかけがはっきりしていて(急性ストレス、パニック発作など)、根本原因への治療が適切に行われた場合、完全な回復が期待できます。
  • 早期介入が鍵症状が始まってから早期に専門家のサポートを受けた方が、予後がよいことが知られています。
  • 慢性化するケースも長期にわたって放置した場合や、根本原因(トラウマ、うつ、不安障害)が未治療の場合は慢性化することがあります。しかし慢性的なケースでも治療で改善する方は多くいます。
  • 自然軽快もある軽度の現実感消失の場合、ストレス要因が取り除かれることで自然に改善するケースも多くあります。
  • 生活の質の維持症状が完全に消えなくても、対処スキルを身につけることで日常生活・社会生活の質を維持・向上させることは可能です。
💡
「治らないかもしれない」という恐怖について慢性的な現実感消失を抱える方の多くが「もう一生治らないのでは」という恐怖を感じています。この恐怖自体が症状を悪化させる維持要因になります。認知行動療法では、症状への過度な恐怖を和らげることも重要なテーマです。専門家と一緒に取り組むことで、この恐怖は和らいでいきます。
HOSPITAL & SUPPORT GUIDE

受診ガイドと支援制度

現実感消失の症状で専門家への相談を考えている方へ。受診前の疑問、支援制度の利用方法などをわかりやすく解説します。

こんな症状に注意

専門家への相談を考えるサイン

以下の項目が複数当てはまる、または症状が日常生活に影響している場合は、専門家への相談を検討してください。これは診断ではなく、相談の必要性を考えるための目安です。

  • 周囲の景色や物体が霧がかかったように、または夢の中のように見える
  • 世界が平板に見えたり、色彩が薄く感じられたりする
  • 周りの人がロボットや人形のように見えて生き生きと感じられない
  • 時間の流れや距離感が歪んで感じられる
  • よく知っている場所なのに初めて来たような感覚(ジャメビュ)がある
  • 上記の感覚が数分以上続くことがある
  • 症状が繰り返し、または持続的に起きている
  • 症状のために日常生活(仕事・学業・対人関係)に支障が出ている
これらは医学的診断の代わりにはなりません。症状が気になる場合は必ず専門家(精神科・心療内科)にご相談ください。とくに「症状が繰り返し起きている」「日常生活に支障が出ている」場合は、早めの相談をおすすめします。
受診Q&A

受診・治療に関するよくある質問

専門家への受診を考えている方からよく寄せられる質問にお答えします。

Q. どの診療科を受診すればいいですか?

A. 精神科または心療内科を受診するのが最も適切です。かかりつけ医がいる場合はまずそちらに相談して紹介状を書いてもらうこともできます。「解離症状」「現実感消失」「離人症」というキーワードを伝えると、専門の医師への紹介がスムーズになります。神経学的な原因(てんかん、偏頭痛など)が疑われる場合は脳神経内科も選択肢です。

Q. 初めての受診で何を話せばいいですか?

A. 症状がいつから始まったか、どのような時に出やすいか、生活への影響、これまでのストレスやトラウマ体験などを伝えると診断の助けになります。「うまく説明できない」と感じても大丈夫です。「現実が夢のようで非現実的に感じる」「自分の周りの世界が遠く感じる」という表現で伝えてみましょう。事前にメモを作って持参するのも有効です。

Q. 自立支援医療制度とは何ですか?

A. 自立支援医療(精神通院医療)制度は、精神疾患の治療を継続的に必要とする方の医療費の自己負担を軽減する公的制度です。通常3割の医療費自己負担が1割に軽減されます(所得に応じてさらに軽減あり)。精神科・心療内科に通院している方が対象で、申請は市区町村の担当窓口で行います。現実感消失症(DPDR)も対象となります。

Q. 精神保健福祉センターとは何ですか?

A. 精神保健福祉センターは、都道府県・政令指定都市が設置する精神保健・精神障害者福祉の専門機関です。本人はもちろん、家族や周囲の人からの相談にも応じており、受診前の相談や、どの医療機関に行けばいいかの情報提供も行っています。電話相談が可能で、地域によっては面談相談も対応しています。全国に69か所(2024年時点)設置されています。

Q. オンライン診療は利用できますか?

A. 一部の精神科・心療内科ではオンライン診療(ビデオ通話での診察)が利用可能です。外出が困難な場合や、近隣に専門機関が少ない地域の方にとって有効な選択肢です。初診はオンラインでも受け付けている機関が増えています。ただし初回は対面での詳細な評価が望ましいとする機関もあります。

Q. 心理療法だけで治療できますか?

A. 現実感消失の主な治療は心理療法(特に認知行動療法)です。薬物療法が必要かどうかは、関連する症状(うつ、不安障害など)の程度によって判断されます。軽度から中等度の現実感消失では、薬を使わない心理療法のみで改善するケースも多くあります。治療方針は担当医と相談しながら決めましょう。

支援制度

現実感消失・メンタルヘルスで活用できる支援制度

精神疾患の治療を継続する際に利用できる公的支援制度があります。経済的な不安が受診の妨げにならないよう、積極的に活用してください。

自立支援医療制度(精神通院医療)

精神科・心療内科に継続通院している方の医療費自己負担を3割から1割に軽減する制度。市区町村の担当窓口に申請します。所得に応じてさらに上限額が設定されます。離人症・現実感消失症も対象となります。

相談方法:市区町村の福祉担当窓口または精神保健福祉センターへ相談
精神保健福祉センター

都道府県・政令指定都市が設置する相談機関。受診前の相談、どの医療機関に行けばよいかの情報提供、家族向け相談も受け付けています。電話相談が可能で、多くのセンターで専門スタッフが対応します。

相談方法:全国に69か所設置。お住まいの都道府県のセンターへ電話相談
障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)

精神疾患により日常生活や社会生活に制限がある方が取得できる手帳。医療費助成、交通機関の割引、就労支援など様々なサービスが利用できます。診断から6か月以上経過していることが申請の条件です。

相談方法:市区町村の障害福祉担当窓口または精神保健福祉センターへ
相談支援専門員・精神保健福祉士

社会生活のサポートや医療機関への橋渡し、福祉サービスの利用調整を行う専門家。精神保健福祉センターや相談支援事業所で相談できます。「治療だけでは不安」「生活の立て直し方がわからない」という方にも支援が届きます。

相談方法:精神保健福祉センター、地域の相談支援事業所へ相談
制度の利用は「弱さ」ではありません公的支援制度は、困難な状況にある方が回復に専念できるよう社会が用意した仕組みです。「自分が使っていいのか」と遠慮する必要はありません。専門家や相談窓口に気軽に問い合わせてみましょう。
FOR FAMILY & FRIENDS

周囲の人にできること

現実感消失は外見からはわからない症状です。「大げさ」「気のせい」と思わずに、本人の体験を尊重することが最も重要なサポートです。

対応のポイント

してほしいこと・避けてほしいこと

自己効力感が低下しがちな現実感消失の本人にとって、周囲の関わり方が回復を大きく左右します。違いを意識してみましょう。

✓ してほしいこと
体験を否定せず「それは辛いね」と受け止める
「焦らなくていい」「ゆっくりでいい」と伝える
受診・治療の継続をさりげなくサポートする
グラウンディング技法を一緒に学ぶ・実践する
症状が出ている時に「現実」とのつながりを言葉で提供する(「私はここにいるよ」など)
本人のペースを尊重し、できないことを責めない
✗ 避けてほしいこと
「気のせいでしょ」「大げさだよ」と体験を否定する
「現実でしょ?そんなこと言われても」と論理的に反論する
「考えすぎだよ」「もっと前向きに」と叱咤する
症状の存在を無視して普通に振る舞うよう強要する
専門家への受診を「大げさ」と言って否定する
一人でサポートを抱え込みすぎる
「現実にいる」という声かけが助けになります症状が出ている時、「私はここにいる」「あなたは安全な場所にいる」「これは過ぎ去る」という言葉は、本人にとって現実とのつながりを取り戻す助けになります。落ち着いた声で、穏やかに話しかけることが大切です。

一人で抱え込まないで。
相談してみませんか。

現実感消失の症状は、一人で抱えていると恐怖が増すことがあります。どうかあなたの大切な悩みをココトモに聞かせていただきたいです。

今すぐ話したい方へ——相談窓口
ココトモ相談するチャット相談・無料
いのちの電話0120-783-55624時間・無料
よりそいホットライン0120-279-33824時間・無料

このページの情報は、医師による診断や治療に代わるものではありません。症状が気になる場合は、心療内科・精神科への受診をご検討ください。

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