障害者雇用とは?
精神・発達障害の働き方・求人の探し方をわかりやすく解説
「障害を会社に伝えるべきか」「障害者雇用枠で働くとどう違うのか」——障害のある方が就職・転職を考えるときの不安に、制度の概要・法定雇用率・対象障害・オープン/クローズ・給与・求人の探し方・採用選考・合理的配慮・職場定着・公的支援まで、最新情報をもとに包括的に解説します。
障害者雇用とは
障害者雇用は、障害のある方が自分らしく安定して働けるよう設計された雇用制度です。2024年以降の法改正で対象と仕組みが大きく変わり、精神障害・発達障害のある方も含めて制度を正しく理解することが、キャリアの第一歩となります。
障害者雇用とは何か
障害者雇用とは、「障害者の雇用の促進等に関する法律」(障害者雇用促進法)に基づき、一定規模以上の企業が障害のある方を一定割合以上雇用することを義務づける制度です。障害のある方が自らの特性に合わせた配慮を受けながら、安定的に就労できる環境を整えることを目的としています。
障害者雇用には、大きく次の2つの側面があります。
障害者雇用促進法の歩み
障害者雇用促進法は1960年に「身体障害者雇用促進法」として制定されたのが始まりです。何度も改正を重ね、対象が身体障害者から知的障害者、精神障害者、発達障害者へと拡大されてきました。
障害者雇用と一般雇用の基本的な違い
障害者雇用(オープン就労)と一般雇用(クローズ就労)は、障害の開示・合理的配慮・給与水準・求人数・職場定着率・必要な証明書の各項目で異なります。
- 障害の開示障害者雇用は企業に開示したうえで就労、一般雇用は開示せず(または知らせず)就労します。
- 合理的配慮障害者雇用は配慮を受けながら働ける(義務)、一般雇用は配慮を求めにくい場合が多い。
- 給与水準障害者雇用は一般雇用より低い傾向、一般雇用は一般的な給与水準が適用されます。
- 求人数障害者雇用は一般雇用より少なく、一般雇用は求人数が多く職種の選択肢が広い。
- 職場定着率障害者雇用は配慮があるため高い傾向、一般雇用は精神障害の場合は離職リスクが高い。
- 必要な証明書障害者雇用は障害者手帳(各種)が必要、一般雇用は不要です。
法定雇用率と2024年・2026年改正
法定雇用率は障害のある方の就労環境を支える根幹の数値です。2024年・2026年の改正で雇用率は段階的に引き上げられ、短時間労働者の算定範囲も広がりました。
法定雇用率とは
法定雇用率とは、企業が雇用しなければならない障害のある方の割合を法律で定めたものです。常時雇用する労働者に占める障害者の割合がこの率を下回ると、雇用不足分に応じて「障害者雇用納付金」を支払う義務が生じます。
2024年4月改正の主な内容
2024年4月1日施行の改正障害者雇用促進法では、以下の重要な変更が行われました。
- 法定雇用率の引き上げ民間企業の法定雇用率が2.3%から2.5%に引き上げられた(段階的引き上げの第一段階)。
- 短時間労働者の算定拡大週10時間以上20時間未満で働く精神障害者・重度身体障害者・重度知的障害者も、雇用率の算定対象(0.5カウント)に追加された。
- 対象企業の拡大雇用義務が生じる常時雇用労働者数が43.5人以上から40人以上に引き下げられた。
- 除外率の見直し一部業種で設定されていた除外率(雇用率算定から除外できる割合)が引き下げられた。
2026年7月の改正予定
現行の計画では、2026年7月1日に民間企業の法定雇用率がさらに2.7%へ引き上げられます。これに伴い、雇用義務が生じる従業員数の下限も37.5人以上となる予定です。企業は早期に採用計画を立てる必要があります。
雇用率達成・未達成の場合
- 達成(超過)した場合雇用率超過分に応じて「障害者雇用調整金」が支給される(中小企業は月額2万7,000円×超過人数)。
- 未達成の場合不足数1人につき月額5万円の「障害者雇用納付金」を徴収される。また、雇用率が著しく低い場合(常時100人超の企業)は厚生労働大臣による「勧告」の対象になり、企業名が公表されることもある。
対象となる障害の種類
障害者雇用促進法の対象は身体・知的・精神・発達の4区分。原則として該当する障害者手帳の所持が要件となります。手帳がない方が利用できる支援も整備されています。
障害者雇用の対象となる4つの障害
障害者雇用促進法の対象となるのは、以下の障害のある方です。いずれも原則として障害者手帳(身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳のいずれか)の所持が要件となります。
精神障害者保健福祉手帳の取得
精神障害・発達障害のある方が障害者雇用枠を利用するには、精神障害者保健福祉手帳が必要です。手帳の取得には以下のステップが必要です。
- 受診精神科・心療内科で診断を受ける(精神疾患による初診日から6か月以上経過していること)
- 診断書の取得主治医に所定の診断書を作成してもらう(費用は数千円〜1万円程度)
- 申請市区町村の福祉窓口または精神保健福祉センターに申請書類を提出
- 交付審査後、手帳が交付される(数週間〜2か月程度)。有効期間は2年で更新が必要
手帳がなくても利用できる支援
障害者雇用枠は原則として手帳所持者が対象ですが、手帳を持っていない方でも利用できる就職支援があります。
- 就労移行支援事業所障害者総合支援法に基づく福祉サービス。手帳がなくても「障害福祉サービス受給者証」があれば利用できる場合がある。
- 発達障害者支援センター発達障害のある方への就労相談支援。手帳の有無に関わらず利用可能。
- ハローワーク専門援助窓口手帳がなくても、主治医の診断書等があれば専門的な就職相談に対応してもらえるケースがある。
オープン就労・クローズ就労の違い
障害のある方が就職を考えるとき、最初にぶつかるのが「障害を開示するか・しないか」の選択です。それぞれのメリット・デメリットを理解し、自分に合う働き方を選びましょう。
オープン就労とクローズ就労の定義
障害のある方が就職を考えるとき、最初にぶつかる重要な選択が「オープン就労(障害者雇用枠)」か「クローズ就労(一般雇用枠)」かという問題です。
オープン就労のメリット・デメリット
メリット——障害を開示することで得られる4つの利点です。
デメリット——同時に注意したい3つの課題です。
クローズ就労のメリット・デメリット
メリット——一般雇用枠で働くことで得られる3つの利点です。
デメリット——障害を隠し続けることによる4つの課題です。
どちらを選ぶべきか
オープン就労とクローズ就労のどちらが適切かは、障害の状態、経済状況、キャリアプランなどによって異なります。以下の視点で考えてみましょう。
- 症状が安定していない・配慮が必要な方オープン就労が安全。無理して働いて再発するリスクを避けられる。
- 症状が安定し、特性が仕事に大きく影響しない方クローズ就労も選択肢になりうる。
- 収入を優先する方クローズ就労の方が給与面で有利なことが多いが、長続きするかどうかを慎重に考える必要がある。
- 長期的な安定を優先する方オープン就労の方が職場定着率が高く、長く働ける可能性が高い。
障害者雇用のメリット・デメリット
障害者雇用は求職者・企業の双方に複数のメリットをもたらしますが、解決すべき課題も残っています。両側面を整理します。
求職者側のメリット
障害のある方が障害者雇用枠を利用するメリットは、単に「配慮が受けられる」だけではありません。
企業側のメリット
企業が障害者雇用に積極的に取り組む経済的・社会的メリットも増えています。
課題・デメリット
障害者雇用制度にはまだ解決すべき課題もあります。
- 給与水準の低さ厚生労働省の調査では、精神障害のある方の月平均賃金は約12万5,000円、発達障害のある方は約12万7,000円(2018年度)で、給与所得者全体の平均約36万8,000円と大きな差がある。
- 非正規雇用の多さ障害者雇用枠の多くはパートタイムや契約社員などの非正規雇用であり、正社員採用の求人は限られている。
- キャリアの制約一部の企業では障害者雇用枠からのキャリアアップ(昇進・昇格)の機会が限られている場合がある。
- 職種の偏り事務・データ入力・軽作業など、特定の職種に求人が集中しており、希望する職種での就職が難しい場合がある。
- 職場の理解不足制度上は配慮が義務づけられていても、現場の理解が不十分なケースもあり、名ばかりの配慮になる場合がある。
障害者雇用の給与・収入の実態
障害者雇用の給与水準を正しく理解することは、就職活動の計画を立てるうえで欠かせません。月額平均賃金、最低賃金、収入を上げる方法、障害年金との組み合わせを整理します。
障害種別・雇用形態別の給与水準
厚生労働省「障害者雇用実態調査」のデータを基に整理します。
これらは平均値であり、フルタイム正社員であれば20万円以上を受け取る方も多くいます。一方、パートタイムや短時間勤務(週20時間程度)では月収8〜12万円程度になることもあります。
最低賃金と障害者雇用
障害者であっても、原則として最低賃金の適用を受けます。ただし、労働能力が著しく低い場合に限り、都道府県労働局長の許可を得ることで最低賃金が減額される「最低賃金の減額特例」が認められることがあります(障害者雇用促進法に基づく制度)。しかし、この特例はあくまで例外であり、多くの障害者雇用枠での雇用では通常の最低賃金が適用されます。
収入を上げるための方法
障害者雇用での収入を高めるためのアプローチをまとめます。
- フルタイム雇用を目指す週20時間のパートから始め、体調を安定させながら勤務時間を増やし、最終的にフルタイムを目指す。
- 正社員採用を目指す障害者雇用枠でも正社員採用の求人は存在する。就職エージェントを通じて正社員求人を探す。
- スキルを磨く就労移行支援でITスキル、事務スキルなどを身につけることで、専門的な職種の求人にアクセスできる。
- 大企業・上場企業を狙う規模の大きい企業は給与水準が高く、福利厚生も充実している傾向がある。
- 各種公的支援を活用する障害者手帳を持っていると、各種交通費割引、障害年金の受給(要件を満たす場合)などで実質的な生活水準を上げられる。
障害年金との組み合わせ
障害者雇用と障害年金は原則として同時に受給できます。障害年金は就労しても受給資格を失うわけではなく(等級によっては支給停止になる場合もあり)、障害者雇用での賃金と合わせることで生活を安定させられます。障害基礎年金2級の場合、月額約6万7,000円(2024年度)が受給できます。詳しくは日本年金機構や社会保険労務士に相談することをお勧めします。
求人の探し方・就職活動の進め方
障害者雇用枠の求人探しには複数のルートがあります。それぞれの特徴を理解し、複数のルートを組み合わせることが就職成功のカギです。
主な求人探しのルート
障害者雇用枠の求人を探す方法は複数あります。それぞれの特徴を理解したうえで、複数のルートを組み合わせることが就職成功のカギです。
ハローワークの活用方法
ハローワークは、障害のある方の就職活動を支援する公共の無料職業紹介機関です。障害者雇用枠の求人は「専門援助部門」が担当しています。
- 求職登録最寄りのハローワークに手帳を持参して求職登録。「障害者求職者登録」を行うと専門の相談員が担当。
- 求人検索ハローワークインターネットサービスで「障害のある方のための求人」を選択して検索可能。
- 面接同行必要に応じてハローワークの相談員が企業への連絡・面接同行を支援してくれる場合がある。
- 各種セミナー就職活動に関するセミナーや合同就職面接会を定期的に開催している。
就労移行支援事業所の活用
就労移行支援事業所は、一般企業への就職を目指す障害のある方(原則65歳未満)を対象とした福祉サービスです。
- 主なサービス内容就労に必要なスキル(ビジネスマナー、PCスキル等)の習得、自己理解・障害特性の把握、企業実習、求人紹介、面接練習、入社後の定着支援。
- 利用期間原則2年(最大3年まで延長可)。
- 費用原則無料(所得に応じて一部負担が生じる場合あり)。
- 利用の流れ①市区町村の福祉窓口に相談 → ②「障害福祉サービス受給者証」の申請・取得 → ③事業所に通所開始。
障害者専門求人サイト・エージェントの活用
インターネットで利用できる障害者専門の求人サービスも充実しています。
- atGP(アットジーピー)精神・発達障害の求人に強い。エージェントサービスあり。
- dodaチャレンジパーソルグループが運営。大企業の求人も多い。担当エージェントが個別サポート。
- LITALICOワークス就労移行支援事業所も運営。自社内での一貫したサポートが特徴。
- DIエージェント精神・発達障害に特化したエージェント。
- Kaien(カイエン)発達障害に特化した就労移行支援・転職サポート。
エージェントを使うと、求人紹介だけでなく、職務経歴書の書き方、面接対策、給与交渉など、就職活動全体のサポートが受けられます。障害者専門エージェントはすべて無料で利用できます。
採用選考から入社まで
障害者雇用枠の選考では、応募書類・面接・入社前確認のそれぞれで一般採用とは異なる視点が必要です。準備すべきポイントを整理します。
応募書類の書き方
障害者雇用枠での就職活動では、一般の就職活動とは少し異なる視点で応募書類を作成します。
- 自分の障害特性を正直に伝える「何ができて何ができないか」「どんな配慮があれば力を発揮できるか」を具体的に記載する。
- 強みを積極的にアピールする発達障害のある方なら「特定分野への高い集中力」「正確さへのこだわり」なども強みになりうる。
- 就労経験・ブランクへの対応休職・ブランク期間は「体調管理に取り組んでいた」「就労移行支援でスキルを習得した」など、ポジティブに説明できるよう準備する。
- 必要な配慮を具体的に書く「週3〜4日勤務から始めたい」「通院のために月2回の早退が必要」など、具体的な配慮の内容を明記する。
面接での注意点
障害者雇用枠の面接では、一般の面接に加えて障害に関する質問がされることがあります。
- 「どんな配慮が必要ですか」への回答準備最も聞かれる質問の一つ。「静かな席での作業をお願いしたい」「業務指示は文書でもいただけると助かります」など、具体的に答えられるよう準備する。
- 「通院・服薬の状況」への回答通院頻度と予約の取りやすさ(業務への影響度合い)を正直に伝える。服薬については詳細な病名まで開示する義務はなく、「安定のために服薬を続けています」程度の回答でよい。
- 「体調が悪くなったときの対応」自分なりの対処方法(早退の際の連絡方法、休養の取り方など)を準備しておく。
- 「長所・短所」障害に関連した特性を長所・短所として正直に説明し、どう対処しているかを伝えると評価が高まる。
入社前の確認事項
内定が出た後、入社前に必ず確認・交渉しておくべき項目があります。
- ✓労働条件通知書の確認:勤務時間、給与、休暇、試用期間などを書面で確認する
- ✓合理的配慮の内容の確認:面接で話し合った配慮の内容が実際に提供されるか、人事担当者と確認・合意する
- ✓業務内容の確認:具体的にどのような業務を担当するかを事前に確認し、不安な点があれば質問する
- ✓職場見学の希望:可能であれば入社前に職場環境を見学させてもらい、自分に合う環境かどうかを確認する
- ✓支援機関との連携:就労移行支援やジョブコーチを利用している場合、入社後も連携を継続できるか企業に確認する
合理的配慮の義務化
2024年4月から民間事業者にも合理的配慮の提供が義務化されました。障害種別ごとの具体例と、配慮を求める際のポイントを整理します。
合理的配慮とは
合理的配慮とは、障害のある方が、障害のない方と同じように職場で働けるよう、障害の特性に応じた必要な変更・調整を行うことをいいます。「過重な負担」にならない範囲で、事業主には合理的配慮を提供する法的義務があります(障害者雇用促進法・障害者差別解消法)。
合理的配慮の具体例
障害の種別・特性に応じた合理的配慮の具体例を紹介します。
合理的配慮を求める方法
職場で合理的配慮を求める際のポイントを整理します。
- 具体的に伝える「困っている症状や状況」「必要な配慮の内容」「その配慮によって期待できる効果」の3点を具体的に説明する。
- 書面で残す口頭でのやり取りだけでなく、メールや書面で確認しておくことが重要。
- 段階的に始める最初から大きな配慮を求めるのではなく、小さな配慮から始めて職場との信頼関係を築きながら拡大していく方が受け入れられやすい。
- 支援機関に相談する配慮の内容について迷ったり、企業との調整が難しい場合は、ハローワーク、就労移行支援、障害者就業・生活支援センターに相談する。
職場定着支援・ジョブコーチ
厚生労働省の調査では、障害者雇用枠で就職した方の1年後の継続率は精神障害で約49.3%、発達障害で約71.5%(令和3年度)。職場定着には支援機関の活用と自己管理が欠かせません。
職場定着支援の重要性
障害のある方が職場に定着することは、本人にとっても企業にとっても重要な課題です。厚生労働省の調査によると、障害者雇用枠で就職した方の1年後の継続率は、精神障害で約49.3%、発達障害で約71.5%と、障害の種類によって大きく異なります(令和3年度)。職場定着を実現するには、本人の努力だけでなく、周囲のサポートが欠かせません。
ジョブコーチ(職場適応援助者)とは
ジョブコーチ(職場適応援助者)とは、障害のある方の職場適応を支援するために、職場に出向いて直接支援を行う専門家です。障害者本人だけでなく、事業主や職場の同僚に対しても助言を行い、職場環境の整備を支援します。
- 3種類のジョブコーチ①配置型(地域障害者職業センターに所属)、②訪問型(社会福祉法人等に所属)、③企業在籍型(企業が自社従業員にジョブコーチ研修を受けさせる)。
- 支援内容業務内容の切り出し・整理、作業手順書の作成支援、コミュニケーション方法の改善、職場の同僚への障害理解の啓発。
- 支援期間標準的には2〜4か月(状況に応じて1〜8か月の範囲で設定)。
- 費用事業主・障害者本人ともに原則無料。
就労定着支援サービス
就労定着支援は、2018年4月に創設された障害者総合支援法に基づくサービスです。就職後の生活面の課題や職場での困りごとに対応します。
- 対象就労移行支援等を経て一般就労した方(就職後6か月を経過した日から利用可能)。
- 支援内容定期的な面談(職場訪問・自宅訪問含む)、生活リズムの調整支援、医療機関・家族との連絡調整、職場の人間関係の問題への介入。
- 利用期間最長3年(6か月ごとの更新)。
- 費用所得に応じて月額負担上限が設定(多くの場合は無料または低額)。
職場定着のための自己管理ポイント
- ✓体調の記録:睡眠時間、服薬状況、気分の状態を日々記録し、不調のサインを早期に把握する
- ✓疲労の蓄積を防ぐ:「まだ大丈夫」と無理をするのではなく、疲れを感じたら早めに休む習慣をつける
- ✓困りごとを早めに相談する:一人で抱え込まず、職場の上司や支援機関のスタッフに早めに相談する
- ✓通院・服薬を続ける:症状が安定しても自己判断で通院や服薬をやめないことが再発防止につながる
- ✓生活リズムを整える:規則正しい睡眠・食事・運動が精神的な安定と仕事のパフォーマンス維持に直結する
精神障害・発達障害と障害者雇用
精神障害・発達障害のある方の障害者雇用は近年急速に増加しています。それぞれの特性を理解し、向く仕事や復職時の注意点を押さえましょう。
精神障害のある方の就労状況
精神障害のある方の障害者雇用での就職は近年急速に増加しています。厚生労働省のデータによると、2023年の精神障害者の新規就職件数は身体障害者を大きく上回り、最も多い障害種別となっています。一方で、精神障害のある方の職場定着率は他の障害に比べて低い傾向があり、就職後のサポートが特に重要です。
- 就職しやすい職種データ入力・事務補助、清掃・軽作業、農業(農福連携)、IT・Webデータ整理、小売・販売の補助業務。
- 定着のカギ症状の安定、定期的な通院・服薬の継続、職場の理解、早期の相談(一人で抱え込まない)。
- リワーク(復職支援)との連携うつ病等で休職中の方が復職を目指す場合、リワークプログラム(医療機関・支援機関が提供)を経てから就職・復職するとスムーズなケースが多い。
発達障害(ASD・ADHD)のある方の就労
発達障害のある方の就労では、障害特性の理解と適切な職種選びが特に重要です。
- ASD(自閉スペクトラム症)の特性と向く仕事ルーティン作業への高い集中力、詳細へのこだわり、正確性を活かしたデータ入力・プログラミング・検査・品質管理業務。一方、突発的な変化や曖昧な指示が苦手な傾向があるため、手順が明確な業務が向く。
- ADHD(注意欠如多動症)の特性と向く仕事創造性・発想力を活かしたクリエイティブ業務、新しいことへの挑戦が多いポジション。一方、単調な繰り返し作業や細かいミスが許されない業務は苦手なことが多い。
- 開示のタイミング発達障害は外見からはわかりにくいため、選考時に開示するか迷う方が多い。障害者雇用枠で応募する場合は選考前から開示が前提となる。
うつ病・双極性障害からの復職・再就職
うつ病や双極性障害のある方が就職・復職を目指す際には、特に注意が必要なポイントがあります。
- 主治医の許可を得る就職・復職は主治医と相談のうえ進める。「働けそうな気がする」という感覚だけで急がない。
- 段階的に始めるいきなりフルタイムではなく、週3日・短時間から始め、体調を見ながら徐々に増やす。
- 双極性障害の波への対応躁状態のときに仕事を詰め込みすぎず、うつ状態に備えた業務計画を職場と共有する。
- 再発のサインを知る「眠れない」「食欲が落ちた」「仕事への意欲が急に低下した」などの再発サインを自己管理リストにまとめておく。
障害者雇用と公的支援制度
障害者雇用と並行して活用できる公的支援制度は数多くあります。医療費軽減・相談窓口・職業訓練・助成金・トライアル雇用などを組み合わせ、生活と就労の安定を図ります。
自立支援医療制度(精神通院医療)
自立支援医療制度(精神通院医療)は、精神疾患のある方が継続的な通院医療を受けやすくするための医療費助成制度です。
- 対象統合失調症、うつ病・双極性障害、不安障害、発達障害、てんかん等で、継続的な通院が必要な方。
- 内容精神科・心療内科の通院医療費(診察費・薬代含む)の自己負担が原則1割(通常は3割)に軽減される。
- 申請窓口お住まいの市区町村の福祉担当窓口(または精神保健福祉センター)。
- 有効期間1年ごとの更新が必要。
- 就労との関係働いていても受給資格は原則維持される(所得に応じて月額上限負担が設定される)。
精神保健福祉センターの活用
精神保健福祉センターは、各都道府県・政令指定都市に設置されている公的な相談機関です。精神保健に関する幅広い相談に、無料で対応しています。
- 相談内容精神疾患に関する相談、就労に関する不安、手帳の申請方法、自立支援医療の相談、家族への支援。
- 専門スタッフ精神科医、精神保健福祉士、臨床心理士などの専門家が対応。
- 匿名での相談も可能まず電話で相談してみることができる。
- 障害者雇用との接点障害者手帳の申請や自立支援医療の申請の際に窓口を通じて相談でき、就労支援機関の情報も提供してもらえる。
その他の活用できる支援制度
- 障害者職業能力開発校障害のある方を対象とした職業訓練。IT、事務、建築など多様な訓練科目がある。原則無料。
- 特定求職者雇用開発助成金企業側が障害者を雇用した際に受けられる助成金。企業の積極的な障害者採用を促進する効果がある。
- 障害者トライアル雇用企業が障害者を最長3か月間トライアル(試用)雇用できる制度。本採用前に職場に慣れる機会として活用できる。
- 在職者向けのナビゲーションブック自分の障害特性や必要な配慮をまとめた「ナビゲーションブック」の作成支援を、地域障害者職業センターで受けられる。
よくある質問
障害者雇用について寄せられることの多い質問にお答えします。
よくある質問
A. 原則として、障害者雇用促進法に基づく「障害者雇用枠」での採用には、障害者手帳(身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳のいずれか)が必要です。ただし、就労移行支援や発達障害者支援センターなど、手帳がなくても利用できる就労支援サービスも多くあります。まず主治医に相談し、手帳取得の可否を確認することをお勧めします。精神科・心療内科の初診から6か月以上経過していれば、精神障害者保健福祉手帳の申請が可能です。
A. 一概にどちらがよいとはいえませんが、厚生労働省のデータでは、精神障害・発達障害のある方の場合、障害者雇用枠(オープン就労)の方が一般雇用枠(クローズ就労)よりも職場定着率が高い傾向があります。配慮が受けられるため、無理をして体調を崩すリスクが低いからです。ただし、症状が安定していて業務への影響が少ない方は、一般雇用枠でうまくやっているケースもあります。就労移行支援や支援機関で自分の状況を整理したうえで、どちらが自分に合うかを検討するのがベストです。
A. 障害者雇用の給与が生活に見合わない場合、以下の方法を組み合わせることで生活水準を上げられる可能性があります。①障害年金の受給(障害基礎年金2級なら月額約6万7,000円)、②自立支援医療制度で医療費を1割に抑える、③勤務時間の段階的な延長によるフルタイム勤務を目指す、④スキルアップして給与水準の高い企業・職種に転職する、⑤大企業・上場企業の障害者雇用枠を狙う(給与水準が高い傾向)。一人で悩まず、就労支援機関や社会保険労務士に相談することもお勧めします。
A. 日本の法律上、障害の開示は義務ではなく、障害を隠して就職したこと自体は雇用契約の詐欺にはあたりません。ただし、業務遂行に支障をきたすような重大な事実(例:てんかんの発作があるのに運転業務に就く等)を故意に隠した場合は、解雇の理由になりうるケースもあります。また、障害を開示しなかった場合、合理的配慮を求める権利は法的に保護されにくくなります。体調が悪化してきた場合や、配慮が必要になってきた場合は、主治医や支援機関に相談のうえ、開示のタイミングや方法を検討することをお勧めします。
A. 2024年4月の改正で、主に以下の2点が変わりました。①民間企業の法定雇用率が2.3%から2.5%に引き上げられた(企業はより多くの障害者を雇用する義務を負う)、②週10時間以上20時間未満で働く精神障害者・重度障害者も雇用率の算定対象(0.5カウント)になった。求職者への影響としては、精神障害・発達障害のある方で「短時間勤務から始めたい」という方も企業の雇用率にカウントされるようになったため、短時間勤務の求人が増えやすくなったことが挙げられます。週10〜20時間程度の勤務から始めたい方にとっては、より就職しやすい環境が整いつつあります。
A. 就労移行支援は、一般企業への就職を目指す方のための訓練・就職活動支援サービスです(原則2年、無料または低額)。一般就労が当面難しい場合に利用するのが就労継続支援で、A型(雇用契約あり・最低賃金保障)とB型(雇用契約なし・工賃は低い傾向)に分かれます。一般就労に向けて段階的にステップアップしたい場合は、就労継続支援B型→A型→就労移行支援→一般就労というルートをたどる方もいます。どのサービスが今の自分に合っているかは、主治医や精神保健福祉士に相談するとよいでしょう。
A. 2024年4月より、民間企業への合理的配慮の提供が法的義務となりました。企業は正当な理由なく合理的配慮を拒否することができません。ただし、実際には「職場の理解が追いつかない」「配慮の内容が曖昧で伝わらない」という困難が生じることもあります。配慮を求める際は、①具体的な内容と期待できる効果を説明する、②「過重な負担」にならない現実的な配慮から始める、③書面で残す、④支援機関を間に入れる、といった工夫が有効です。合理的配慮を求めることは権利であり、遠慮する必要はありません。
一人で抱え込まないで。
就労の悩みを話してみませんか
就労のこと、障害のこと、生活のこと——どんな小さな不安でもかまいません。あなたの大切な悩みをココトモに聞かせてください。自立支援医療制度(精神通院医療)を申請すれば、精神科・心療内科への通院医療費の自己負担が原則1割に軽減されます。就労中であっても受給資格は維持されます。
このページの情報は、医師による診断や治療に代わるものではありません。症状が気になる場合は、心療内科・精神科への受診をご検討ください。
