メンタルヘルス用語辞典 · 脱抑制型対人交流障害

脱抑制型対人交流障害(DSED)とは?
症状・原因・治療法をわかりやすく解説

脱抑制型対人交流障害は、見知らぬ大人にも過度に馴れ馴れしく接する愛着の障害です。不適切な養育環境が原因で、子どもの安全に重大なリスクをもたらします。症状から治療法、日常の対応、養育者へのサポートまで必要な情報をすべてまとめました。

ABOUT DSED

脱抑制型対人交流障害(DSED)とは、どんな障害か

脱抑制型対人交流障害(DSED)は、不適切な養育環境の結果、見知らぬ大人にも過度に馴れ馴れしく接し、社会的な境界がほとんどない状態を示す障害です。一見「社交的」に見えますが、深い信頼関係を築く力が育っていない状態であり、子どもの安全に重大なリスクをもたらします。

定義

DSEDの定義——「社交的」に見える子どもの本当の姿

脱抑制型対人交流障害(Disinhibited Social Engagement Disorder:DSED)は、DSM-5において「心的外傷およびストレス因関連障害群」に分類される障害です。生後9か月以上の子どもに診断され、不十分な養育環境(ネグレクト、施設養育、養育者の頻繁な交代)の結果として、見知らぬ大人に対して過度に馴れ馴れしく接するパターンが特徴です。

DSEDの子どもは一見「人懐っこい」「社交的」に見えますが、その行動の背景には、特定の養育者との安定した愛着関係が形成されなかったという深刻な発達上の問題があります。「誰にでもなつく」ことは、裏を返せば「誰を特別とも思えない」ことを意味します。

🧠

なぜ「誰にでもなつく」のか

通常の発達では、子どもは特定の養育者との関係を「安全基地」として、見知らぬ人に対しては警戒心を示します。しかし、安定した養育関係を経験できなかった子どもは、この「安全基地」が形成されません。「一人の人に頼れない」代わりに、生存戦略として「手当たり次第に大人の注意を引く」パターンが発達するのです。これは子どもの「わがまま」ではなく、環境に適応しようとした結果です。

DSEDは子どもの性格の問題ではありません「人懐っこい性格」と「DSED」は全く異なります。DSEDは不適切な養育環境の結果であり、適切な治療と安定した養育環境により改善が期待できます。
有病率

DSEDの頻度

20%
施設養育経験のある子どもの約20%にDSEDの症状が見られるとの報告
5歳以下
多くは5歳以下で発症するが、症状は学童期・青年期まで持続しうる
2歳まで
2歳までに里親へ移行した場合、DSED症状の改善がより良好
DSEDは反応性愛着障害(RAD)と異なり、養育環境が改善しても完全には消失しにくいことが報告されています。しかし、早期の介入で症状の程度は大幅に軽減できます。
RADとの違い

反応性愛着障害(RAD)との違い

RAD(反応性愛着障害)
DSED(脱抑制型)
対人パターン
引きこもり・回避
過度な馴れ馴れしさ
見知らぬ人への反応
警戒・回避
すぐになつく
養育環境改善後
速やかに改善しやすい
改善に時間がかかる
安全リスク
低い
高い(見知らぬ人について行く)
愛着の特徴
愛着の抑制
無差別な愛着
受診の目安

こんな時は専門家に相談してください

DSEDを疑うべきサイン
  • 🔍
    初対面の大人に躊躇なく抱きつく・膝に座る・手をつなぐ
  • 🔍
    見知らぬ人にもすぐについて行こうとする
  • 🔍
    養育者が離れても不安を示さない
  • 🔍
    「知っている人」と「知らない人」の区別があいまい
  • 🔍
    同年齢の子どもとの友人関係が築きにくい
  • 🔍
    施設養育・里親の交代・ネグレクトの既往がある
  • 🔍
    ADHDのような落ち着きのなさ・衝動性がある
  • 🔍
    人見知りがほとんどない(乳幼児期から)
歴史

DSEDの歴史的背景と診断分類の変遷

脱抑制型対人交流障害(DSED)の概念は、第二次世界大戦後の孤児院研究にまで遡ります。1940年代、精神分析家のルネ・スピッツは施設養育の乳幼児が深刻な発達遅延を示すことを報告し「ホスピタリズム」と名づけました。同時期にジョン・ボウルビィは、母親からの分離が子どもの精神発達に与える影響を体系的に研究し、「愛着理論(Attachment Theory)」を確立しました。

DSM-III(1980年)では「反応性愛着障害」として一つの診断カテゴリーにまとめられていましたが、臨床研究が進むにつれ、抑制型(引きこもり型)と脱抑制型(馴れ馴れしい型)は異なる経過をたどることが明らかになりました。DSM-5(2013年)では、この2つが「反応性愛着障害(RAD)」と「脱抑制型対人交流障害(DSED)」という別々の診断に分割されました。

この分割の背景には、ブカレスト早期介入プロジェクト(BEIP)をはじめとする大規模縦断研究の成果があります。BEIPはルーマニアの施設養育児を対象に、施設養育が子どもの発達に与える影響と里親養育への移行効果を長期追跡した画期的な研究です。RADは養育環境の改善で比較的速やかに改善するのに対し、DSEDの症状は養育環境が改善しても持続しやすいという重要な違いが実証されました。ICD-11(WHO国際疾病分類最新版)でもDSEDは独立した診断として位置づけられており、国際的に認知されています。

DSEDという診断の誕生は、施設養育の実態と子どもの権利への意識の高まりと密接に結びついています。日本でも社会的養護改革が進む中、DSEDの理解と支援体制の整備が急務となっています。
愛着理論の基礎

DSEDを理解するための愛着理論

DSEDを理解するには、ジョン・ボウルビィが提唱した「愛着理論」を知ることが助けになります。子どもは生後間もなくから特定の養育者との感情的絆を形成し、この絆が「安全基地(Secure Base)」として機能します。安全基地があるからこそ、子どもは見知らぬ人に対して適切な警戒心を持ちながら世界を探索できます。

  • 安全基地の欠如:施設養育やネグレクトで安定した安全基地が形成されなかった子どもは、「誰が安全で誰が危険か」を判断する内部モデルが育ちません。その結果「手当たり次第に誰にでも近づく」という生存戦略が発達します。
  • 内部作業モデル(IWM):ボウルビィは、養育者との経験から「自分と他者について」の内部的表象(内部作業モデル)が形成されると説明しました。DSEDの子どもの内部作業モデルは「誰も信頼できないし、誰でも同じ」というものになりやすく、この修正が治療の核心です。
  • 感受性期間:愛着形成には感受性の高い時期(生後6か月〜2歳頃)があり、この時期の安定した養育が特に重要です。ただし、この時期を過ぎても愛着の修正・発達は可能であり、希望を持って支援を続けることが大切です。
  • 愛着は変えられる:安定した養育環境と適切な心理療法によって、子どもの内部作業モデルは修正され、健全な対人関係の発達が促進されます。
SYMPTOMS

脱抑制型対人交流障害の症状

DSEDの症状は「中核症状(対人行動の異常)」と「発達面への影響」の2つの側面があります。

🤗
見知らぬ大人への過度な馴れ馴れしさ
初対面の大人に対して躊躇なく近づき、抱きついたり、膝に座ったり、手をつないだりします。通常の子どもが示す「人見知り」や警戒心がほとんど見られません。スーパーや公園で見知らぬ大人に話しかけ、ついていこうとすることもあり、安全面で深刻な懸念があります。
👋
社会的境界の欠如
「知っている人」と「知らない人」の区別が曖昧で、誰に対しても同じように親密な態度を取ります。養育者に対する特別な愛着が希薄で、養育者が離れても動揺を示さず、見知らぬ人が養育者に代わっても平気です。
🚶
見知らぬ人について行く
公園や商業施設などで、見知らぬ大人について行こうとします。「怖い」「危ない」という感覚が希薄で、これが子どもの安全に重大なリスクをもたらします。養育者がいなくなっても探そうとしない、不安を示さないことも特徴です。
💬
過度に馴れ馴れしい言動
初対面の大人に個人的な情報を次々と話す、「お母さん/お父さん」と呼ぶ、身体的な接触を過度に求めるなど、状況にそぐわない親密さを示します。これは本当の親密さではなく、「表面的な社交性」です。
😊
表面的な対人関係
大人に対しては過度に愛想が良いですが、同年齢の子どもとの友人関係は困難です。深い信頼や親密さに基づく関係を築くことが難しく、対人関係は広く浅い傾向があります。
⚠️
危険認識の低さ
見知らぬ人について行く、高い場所に登る、交通量の多い道路に飛び出すなど、危険に対する認識が低い傾向があります。これは愛着の「安全基地」機能が発達していないことと関連しています。
⚠️
安全面のリスクに注意DSEDの子どもは見知らぬ人について行くことがあり、重大な安全リスクがあります。外出時は常に目を離さず、学校や保育園にも状況を共有して見守り体制を整えてください。
年齢別の特徴

年齢によるDSED症状の変化

DSEDの症状は、子どもの発達段階によって異なる形で現れます。年齢に応じた特徴を理解することが、早期発見と適切な対応につながります。

年齢段階
主な症状の特徴
乳幼児期(0〜3歳)
人見知りの欠如、見知らぬ大人に手を伸ばす・抱きつく、養育者が離れても泣かない、誰にでも微笑む
幼児期(3〜6歳)
見知らぬ人について行く、過度に馴れ馴れしい言動、養育者への選択的愛着の希薄さ、安全認識の低さ
学童期(6〜12歳)
初対面の大人に個人的な情報を話す、教師への過度な親密さ、同年齢の友人関係の困難、社会的境界の逸脱
青年期(12歳〜)
対人関係の表面性、境界の曖昧さ、深い信頼関係構築の困難、二次的な抑うつ・不安
DSEDの症状は成長とともに「消える」のではなく「形を変える」ことがあります。幼児期の「見知らぬ人にしがみつく」行動が、青年期には「SNSで見知らぬ人と過度に個人情報を共有する」という形で現れることもあります。
CAUSES & RISK FACTORS

DSEDの原因とリスク要因

DSEDは子どもの性格の問題ではなく、極端に不適切な養育環境、特に安定した養育関係の欠如が原因です。

🏠極端に不適切な養育環境

DSEDの最も重要な原因は、生後早期の極端に不適切な養育環境です。特に、養育者がいない、あるいは養育環境がないに等しい状況(大規模施設養育、重度のネグレクト)が背景にあります。RADが「養育者との関係はあったが不適切だった」場合に生じるのに対し、DSEDは「安定した養育関係そのものが存在しなかった」場合に生じやすいとされています。子どもが愛着を形成する対象がそもそも存在しなかったために、「誰にでもなつく」パターンが発達します。

  • 大規模施設養育(多数の養育者・少ない個別の関わり)
  • 重度のネグレクト
  • 養育者の極端な不在
  • 選択的愛着を形成する機会の欠如
DIAGNOSIS

DSEDの診断

DSEDの診断はDSM-5の基準に基づき、子どもの行動パターンと養育環境の情報を総合的に評価して行われます。ADHDとの鑑別が特に重要です。

診断基準

DSM-5による診断基準

DSM-5 脱抑制型対人交流障害の診断基準(313.89 / F94.2)
  • A
    見慣れない大人に積極的に接近し交流する行動パターン(過度に馴れ馴れしい言動・身体的接触・見知らぬ人について行く意思)
  • B
    上記の行動が、文化的に容認される社会的な逸脱行動の範囲を超え、衝動性のみでは説明できない
  • C
    不十分な養育の経験がある(社会的ネグレクト、養育者の頻繁な交代、制限のある養育環境)
  • D
    不十分な養育が障害の原因であると推定される
  • E
    発達年齢は9か月以上
鑑別診断

ADHDとの鑑別

DSEDとADHDは衝動性や社会的逸脱行動で重なることがありますが、異なる障害です。

DSED
ADHD
養育環境の問題
必須
不要
見知らぬ人への接近
過度に親密
衝動的だが親密ではない
選択的愛着
欠如
通常は存在する
併存
両者が併存することもある
DSEDとADHDは併存することがあります。養育環境の情報が鑑別の鍵となりますので、お子さまの養育歴を正確に専門家に伝えることが重要です。
TREATMENT & RECOVERY

DSEDの治療と回復

DSEDの治療で最も重要なのは、特定の養育者との安定した関係の構築です。治療には時間がかかりますが、改善は確実に可能です。

安全で安定した養育環境の提供最重要

DSEDの治療で最も重要なのは、特定の養育者との安定した関係を提供することです。施設養育から家庭養育(里親・養子縁組)への移行が強く推奨されます。ただし、DSEDの子どもは見知らぬ人にもすぐに馴染むため、養育者は「この子は自分になついている」と錯覚しやすいです。実際には「選択的な」愛着が形成されるまでには長い時間と忍耐が必要です。養育者が一貫して応答し、「この人は特別な存在だ」と子どもが感じられるまで、粘り強く関わり続けることが大切です。

愛着に焦点を当てた心理療法関係性の構築

養育者と子どもの関係性を強化し、選択的愛着の形成を促進する心理療法です。サークル・オブ・セキュリティ(COS)、ビデオフィードバック介入、ダイアディック発達的心理療法(DDP)などが用いられます。養育者が子どものシグナルを読み取り、「安全基地」として機能する力を育てます。同時に、子どもが養育者を「特別な存在」として認識できるよう、日常の関わりの中での愛着促進活動を組み込みます。

安全教育・社会的スキル訓練安全確保

DSEDの子どもは社会的境界の感覚が希薄なため、「知っている人」と「知らない人」の区別、「安全な行動」と「危険な行動」の区別を具体的に教える必要があります。ソーシャルストーリー、ロールプレイ、絵カードなどを使った安全教育が有効です。ただし、これは根本的な治療ではなく、愛着の発達を促進する治療と並行して行うべきものです。

養育者支援・トレーニング養育者サポート

DSEDの子どもの養育は独特の困難を伴います。「誰にでもなつく」行動の意味の理解、子どもの安全確保の具体的な方法、選択的愛着の発達を促す関わり方、養育者自身のストレスマネジメントなどを提供します。ペアレントトレーニングプログラムや、同じ状況の養育者同士のサポートグループも重要です。

薬物療法(併存疾患への対応)補助的

DSEDそのものに対する特異的な薬物療法はありませんが、併存するADHDに対して中枢刺激薬やアトモキセチンが、不安や気分の問題に対してSSRIが検討されることがあります。薬物はあくまで補助的であり、養育環境の改善と心理療法が治療の主軸です。

DSEDの回復には時間がかかりますRADと異なり、DSEDの症状は養育環境が改善しても完全には消失しにくいことが知られています。しかし、症状の程度は着実に軽減し、子どもの社会的機能は向上していきます。長い目で見守ってください。
治療の3原則

DSEDの治療で大切な3つの原則

DSEDの治療には、一般的な子どもの行動問題への対応とは異なるアプローチが必要です。以下の3つの原則を理解することが、効果的な治療の基盤となります。

第一の原則:安全の確保。DSEDの子どもは見知らぬ人について行くリスクがあるため、治療と並行して物理的な安全を確保する必要があります。養育者だけでなく、学校や保育園など子どもに関わるすべての大人が連携して取り組むべき課題です。

第二の原則:選択的愛着の促進。「見知らぬ人に近づくな」と教えるだけでは不十分です。重要なのは「この人は特別」という感覚を育てること——養育者との選択的愛着を形成することです。養育者との1対1の時間、一貫した応答的な関わり、日常のルーティンの共有が選択的愛着の発達を促進します。

第三の原則:長期的な視点。DSEDはRADと比較して改善に時間がかかることが知られています。数か月で劇的な変化を期待するのではなく、年単位での緩やかな改善を目標にすることが養育者と専門家の双方にとって重要です。小さな変化を見逃さず記録し、喜ぶことが治療のモチベーション維持に役立ちます。

叱ることは逆効果です見知らぬ人に馴れ馴れしく接することを叱ったり罰したりしても、行動は改善しません。代わりに、養育者のそばに戻った時に「戻ってきてくれてうれしいよ」と伝え、適切な行動を強化するアプローチが有効です。
フィリアル・セラピー

フィリアル・セラピー(親子遊戯療法)について

フィリアル・セラピー(Filial Therapy)は、養育者が治療的な遊び場面のリードを学び、子どもとの愛着関係を深める介入法です。2022年のPMC研究では、里子のDSED症状がフィリアル・セラピーの実施によって有意に低下したことが報告されています。養育者と子どもの関係を「再構築・再生・強化」することで、選択的愛着の形成を促進します。

  • 基本的な構造:週1回30〜45分の「特別な遊び時間」を設け、養育者が子どもの主導に従って遊びます。評価・命令・批判を行わず、子どもの感情と行動を反映します。
  • 養育者のスキル習得:セラピストが養育者に「追うスキル(子どもの主導に従う)」「反射スキル(感情を言語化する)」「適切な制限の設定スキル」を訓練します。
  • DSEDへの特別な工夫:「養育者との特別な時間」を一貫して継続することで「この人との時間は特別だ」という感覚を積み重ねます。他の大人への過度な接近行動が見られた時の養育者の対処法も並行して指導します。
  • 効果の持続:研究では、セラピー終了後も効果が持続することが示されています。養育者が日常の関わりの中でスキルを使い続けることが鍵です。
遊ぶことが治療になるフィリアル・セラピーは特別な「訓練」ではなく、遊びを通じた自然な関係の構築です。養育者が「治療者」になるのではなく「特別な遊び相手」になることで、子どもの愛着システムを穏やかに刺激します。
研究とエビデンス

DSEDに関する主要な研究知見

DSEDの理解は、ルーマニアの孤児院で行われた大規模な研究(ブカレスト早期介入プロジェクト:BEIP)によって飛躍的に進みました。以下に主要な研究知見をまとめます。

主要な研究知見(BEIP・関連研究)
  • 1
    2歳までに里親へ移行した子どもは、施設に残った子どもと比較してDSED症状が有意に少なく、認知機能や精神的健康の指標も良好だった(BEIP、ランダム化比較試験)
  • 2
    DSEDの症状は施設入所期間が長いほど重く、6か月以上の施設養育は青年期にまで症状が持続するリスクを大幅に高める
  • 3
    早期のDSED症状(幼児期)は、12歳時点での社会的能力の低下と独立して関連しており、症状が一時的に軽減しても長期的な影響は残る(PMC 2019)
  • 4
    施設での養育者と子どもの比率が低く(1対1に近い)、養育者の交代が少ない環境ではDSEDの発症率・重症度が低下する
  • 5
    DSEDはRADとは異なる神経発達的経路をたどり、社会的認知・衝動制御の神経回路の問題と関連する可能性がある
  • 6
    フィリアル・セラピーの里子へのランダム化比較試験では、DSED症状の有意な軽減が報告された(PMC 2022)
  • 7
    2025年に検証されたRADA(評価ツール)は内的一貫性・評価者間信頼性・収束的妥当性に優れ、臨床診断の標準化に貢献することが期待される
研究は一貫して「早期介入の重要性」と「安定した養育環境の効果」を示しています。一方で、DSEDに対する特定の心理療法の有効性についてはまだ研究途上であり、今後のエビデンスの蓄積が期待されています。
DAILY LIFE

日常生活でできること

DSEDの子どもとの日常では、安全の確保と選択的愛着の発達促進が2つの大きな柱です。

🏠
一貫したルーティンと境界を設定する
毎日のスケジュールを一定にし、「何が起こるか予測できる」環境を作りましょう。同時に、適切な境界(ルール)を明確に示すことも大切です。境界は罰としてではなく、安全のためであることを伝えてください。
🤝
「特別な時間」を毎日設ける
養育者と子どもが1対1で過ごす「特別な時間」を毎日15〜30分設けましょう。子どもの主導で遊び、養育者はその子だけに集中します。この体験の積み重ねが「この人は自分にとって特別」という感覚を育てます。
🚫
安全確保の具体的な対策
外出時は必ず手をつなぐか、目を離さない。見知らぬ人に話しかけられた時の対応を繰り返し練習する。学校や習い事の場では先生に状況を説明し、見守りを依頼する。GPS付きの見守りデバイスの活用も検討しましょう。
🗣
「知っている人」と「知らない人」の区別を教える
写真カードを使って「家族」「先生」「知らない人」を分類する遊びや、ロールプレイで「知らない人に話しかけられたらどうする?」を練習しましょう。繰り返しの練習が必要です。
💪
適切な行動を強化する
養育者に助けを求めた時、養育者のそばにいた時など、適切な愛着行動が見られた時にすかさず認め、褒めましょう。「お母さん/お父さんのところに来てくれてうれしいよ」と伝えることで、養育者との関係の「特別さ」を強化します。
📋
学校・関係機関との連携
担任の先生、スクールカウンセラー、児童相談所など、子どもに関わるすべての人にDSEDの特性を共有し、一貫した対応が取れるようにしましょう。学校での見守り体制も重要です。
🛁
養育者のセルフケア
DSEDの子どもの養育は、独特の疲労を伴います。「誰にでもなつく」子どもの行動に、養育者が傷つくことは自然なことです。ご自身の感情を大切にし、定期的な息抜きやカウンセリングを活用してください。
🌱
小さな変化を記録する
「今日はスーパーで知らない人について行かなかった」「お迎えの時、嬉しそうにしてくれた」——こうした小さな変化は回復の証です。記録しておくと、長期的な改善が見えやすくなります。
関連する用語
反応性愛着障害愛着障害ADHDトラウマネグレクト児童虐待愛着理論施設養育
FOR CAREGIVERS

養育者の方へ

DSEDの子どもの養育には独特の困難があります。「誰にでもなつく」行動に傷つくこともあるかもしれません。あなたの努力には確実に意味があります。

養育者へのメッセージ

養育者の方に伝えたいこと

💔
「自分を特別に思ってくれない」つらさ
DSEDの子どもが誰にでも同じように接する姿に、養育者が傷つくのは自然なことです。「自分がこの子の親である意味があるのか」と感じることもあるでしょう。しかし、それは子どもがあなたを拒絶しているのではなく、「特別な人」を認識するシステムがまだ発達途上なのです。
変化は少しずつ起こる
DSEDの改善はゆっくりです。1か月後、3か月後には変化が見えにくいかもしれません。しかし、1年後、2年後に振り返った時、確実な変化に気づくでしょう。今日のあなたの関わりは、種を蒔いているのです。
🛁
あなた自身のケアが不可欠
DSEDの子どもの養育は感情的に消耗します。定期的なカウンセリング、レスパイトケア、同じ状況の養育者との交流を積極的に活用してください。あなたが健やかでいることが、子どもにとっても最善です。
🌈
あなたの存在が子どもの未来を変える
研究は明確に示しています——安定した養育者の存在が、DSEDの子どもの予後を劇的に改善することを。あなたがいるからこそ、この子には未来があるのです。
思春期のDSED

思春期・青年期のDSEDの特徴と長期的な影響

DSEDは「子ども時代の障害」というイメージがありますが、適切な支援がなければ症状は思春期・青年期まで持続します。BEIPの研究では、施設養育経験のある子どもの早期のDSED症状が12歳になっても消失せず、社会的能力の低下と関連していることが示されました。

🧑
仲間関係の表面性
思春期になると、DSEDの対人行動の問題が同世代の仲間関係にも拡大します。見境のない馴れ馴れしさが友人・同輩へも向かい、表面的で浅い友人関係に終わりやすく、いさかいや対立が多くなります。深い信頼に基づく友情を育てることに困難を感じます。
🏫
学校・部活での対人問題
教師や顧問に対して過度に親しい態度を取る、クラスメートとの境界を無視したふるまいが指摘されるなど、学校環境での対人問題が生じます。ルールを軽視した行動や衝動的な言動で誤解を受けやすく、結果的に孤立する場合もあります。
😕
自己肯定感の低下
周囲から「変な子」「なれなれしい」と受け取られる経験が積み重なることで、自己肯定感が低下しやすい傾向があります。「自分には深い友達ができない」という感覚が生まれ、抑うつや不安の二次的な問題を引き起こすこともあります。
⚠️
成人期へのリスク
介入なしでは、DSEDの特性は思春期・成人期に持続し、抑うつ・不安障害・パーソナリティの問題として形を変えて現れるリスクが高まるとされています。早期の適切な介入が、長期的な予後を大幅に改善します。
思春期からでも回復は可能です思春期以降に支援を始めても改善は期待できます。安定した大人との関係、心理療法、学校と家庭の連携が、遅ればせながらでも愛着の発達を促進します。あきらめる必要はありません。
支援機関

利用できる支援機関とサポート資源

DSEDの子どもと養育者を支援するためには、医療・福祉・教育が連携した包括的なサポートが必要です。日本で利用できる主な支援機関と制度を紹介します。

  • 児童相談所:養育環境の評価・里親支援・家庭支援の中心機関。0120-189-783(子ども相談専用ダイヤル)で最寄りの児童相談所に繋がります。
  • 児童精神科・小児精神科:DSEDの診断・治療計画の立案・心理療法の実施を行います。かかりつけの小児科から紹介を受けるか、精神保健福祉センターに相談してください。
  • 精神保健福祉センター:各都道府県・政令市に設置された精神保健の相談・支援機関。養育の悩みや子どもの精神的な問題について無料で相談できます。電話相談窓口も設置されています。
  • 発達支援センター・療育施設:DSEDに伴う発達上の問題(感情調節の困難、社会的スキルの遅れなど)への療育的支援を行います。市区町村の福祉窓口から申し込めます。
  • 里親支援機関・養子縁組支援団体:里親や養親に対して、養育に関するコンサルテーション、研修、レスパイトケア(一時的な養育の代替)などを提供します。
  • スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカー:学校に配置され、担任教師と連携しながら子どもと養育者の相談に乗ります。
  • 自立支援医療制度(精神通院医療):DSEDの治療のために定期的な通院が必要な場合、医療費の自己負担を軽減できます。市区町村の窓口で申請でき、所得に応じて自己負担が1割に軽減されます。
一人で抱え込まないためにDSEDの支援は長期戦です。養育者が孤立しないよう、利用できる支援機関を積極的に活用してください。「うまく使えているか」よりも「つながっているか」が重要です。
専門家への相談

専門家への相談を検討するタイミング

以下のような状況では早めに専門家に相談してください。DSEDは「経過観察」よりも「早期介入」が、子どもの長期的な予後を大幅に改善します。

  • 子どもが施設養育・里親の頻繁な交代・ネグレクトの経験を持ち、見知らぬ人への過度な馴れ馴れしさが見られる
  • 外出時に親のそばを離れ、見知らぬ人についていこうとする行動が繰り返される
  • 学校や保育園で担任教師・他の大人に過度に親しい態度を取り、問題になっている
  • 養育者が離れても不安や泣き声を示さず、見知らぬ人が代替しても平然としている
  • 同年齢の子どもとの友人関係が表面的で、深い関係を結べずにいる
  • ADHDに似た衝動性・落ち着きのなさと、社会的境界の希薄さが組み合わさっている
  • 養育者が「この子に特別に思われていない」という感覚を強く感じ、疲弊している
相談できる場所
  • かかりつけの小児科・小児神経科 → 児童精神科への紹介を依頼
  • 都道府県の精神保健福祉センター(無料相談)
  • 児童相談所(0120-189-783)
  • 市区町村の子育て支援センター・発達相談窓口
  • スクールカウンセラー(学校在籍中の場合)
FAQ

よくある質問

脱抑制型対人交流障害についてよくいただく質問にお答えします。

関連する用語・制度
反応性愛着障害愛着障害ADHDトラウマネグレクト児童虐待愛着理論施設養育フィリアル・セラピー自立支援医療制度精神保健福祉センター児童相談所里親制度養子縁組

一人で抱え込まないで。
相談してみませんか。

お子さまの対人関係の悩み、養育のつらさ、ご自身の気持ち——どうかココトモに聞かせてください。

今すぐ話したい方へ——相談窓口
ココトモ相談するチャット相談・無料
精神保健福祉センター各都道府県に設置こころの健康相談
いのちの電話0120-783-55624時間・無料
よりそいホットライン0120-279-33824時間・無料

このページの情報は、医師による診断や治療に代わるものではありません。お子さまの状態が気になる場合は、児童精神科への受診をご検討ください。継続的な通院治療には自立支援医療制度(精神通院医療・自己負担1割)が利用できます。お住まいの市区町村窓口でお申し込みください。

keyboard_arrow_up