家族療法とは?
主要モデル・基本概念・効果・日本での受け方を解説
「問題は個人の中ではなく関係性の中にある」——家族療法は、この発想の転換から生まれた心理療法です。歴史・基本概念・主要6モデル・技法・エビデンス・日本での受け方まで、必要な情報をすべてまとめました。
家族療法とは
家族療法は「問題は個人の中ではなく関係性の中にある」という発想の転換から生まれた心理療法です。家族を一つのシステムとして捉え、家族メンバー間の相互関係・コミュニケーション・家族構造に働きかけて問題解決と成長を目指します。
家族療法(family therapy)の定義
家族療法とは、家族を一つのシステムとして捉え、家族メンバー間の相互関係・コミュニケーションパターン・家族構造に働きかけることで、個人および家族全体の問題解決や成長を目指す心理療法の総称です。「家族システム療法」「システムズ・アプローチ」とも呼ばれます。
従来の個人心理療法が「問題を抱えた個人の内側(思考・感情・無意識など)」に焦点を当てるのに対し、家族療法は「その個人が生きている関係性のコンテクスト」、すなわち家族というシステム全体に注目します。誰か一人を「原因」や「悪者」として特定するのではなく、家族メンバー全員が互いに影響し合い、問題が維持されているという視点から支援を行います。
家族療法の対象は必ずしも「機能不全家族」だけではありません。夫婦間の意思疎通の困難、親子関係の行き詰まり、兄弟間の葛藤、介護をめぐる家族の意見相違など、あらゆる家族の課題が対象となります。また、必ずしも家族全員が参加しなければならないわけでもなく、一人のメンバーが参加するだけでも家族システム全体の変化を促せることが知られています。
なぜ「個人」から「関係性」へ転換したのか
家族療法が生まれた背景には、従来の個人療法では説明しきれない臨床上の謎がありました。精神科病院で回復した統合失調症の患者が家族のもとに戻ると再発しやすい、という現象がその一つです。治療者たちは「病気は個人の中ではなく、家族関係の中にある」という可能性に気づき始めました。
1950年代のアメリカで、グレゴリー・ベイトソンを中心とする研究グループが「統合失調症の家族コミュニケーション」を研究したことが家族療法の誕生に大きく貢献しました。ベイトソンらは二重拘束(ダブルバインド)——言葉と行動が矛盾したメッセージを子どもに送り続けること——が精神疾患の発症と関連すると論じました。この研究は精神疾患を家族システムの文脈で理解する道を開きました。
また、サイバネティクスやシステム理論の発展も家族療法の誕生を後押ししました。システム理論では、ある部分を変えると全体が変わり、全体の変化がまた各部分に影響するという「循環的な相互作用」が重視されます。家族もこのような「開かれたシステム」として捉えられるようになりました。
家族療法を貫く5つの視点
家族療法には、すべてのモデルに共通する基本的な視点があります。
- 問題の脱個人化特定のメンバーを「問題のある人」として捉えるのをやめ、問題を家族システム全体の文脈で理解する。
- 関係性へのフォーカス家族メンバー個々の性格や内面より、メンバー間の相互作用・コミュニケーションパターンを重視する。
- 変化の波及効果一人のメンバーの変化が、家族全体のシステムに影響を及ぼすという原理を活用する。
- リソース(資源)の発見問題だけでなく、家族が持つ強さ・資源・回復力(レジリエンス)にも注目する。
- 中立性と複数性セラピストは特定のメンバーの味方をするのではなく、全メンバーの視点を尊重する。
家族療法の歴史——誕生から現代まで
家族療法は1950年代のアメリカに始まり、各学派の分化、ミラノ派の登場、ナラティブセラピーへの拡大を経て、現代に至るまで複数のモデルを統合する形で発展してきました。
1950年代から現代までの発展史
家族療法は精神分析的観点からスタートし、コミュニケーション論・システム論・社会構成主義・ナラティブ論へと理論的基盤を拡大・深化させながら発展してきました。現代では複数のモデルを統合した折衷的アプローチも広く実践されています。
家族療法の4つの基本概念
IP・円環的因果律・三角関係・境界線とサブシステム——これら4つの基本概念が、家族療法の臨床的な見立てと介入を支えています。
家族療法を支える4つの中核概念
家族療法のあらゆるモデルに共通する、見立ての基盤となる概念を整理します。
IP——症状が家族に果たす役割
家族療法では、IP(Identified Patient)が抱える問題や症状は、その個人の病理ではなく、家族システム全体の機能不全や緊張が、最も感受性の高いメンバーに集中して表れたものと理解します。IP個人を変えようとするだけでは家族システムが変わらず、同じ問題が再発したり別のメンバーが新たな問題を抱えたりします。
IPの症状は、時に家族システムを安定させる「機能」を担っている場合があります。これを「症状の機能」と呼びます。例えば——
- 夫婦間の深刻な葛藤が表面化しないよう、子どもが問題行動を起こして両親の注意を自分に集中させる
- 親の不仲が離婚に発展しないよう、子どもが病気・不登校になり、両親が「子どもの問題」という共通課題に向き合う形で結束する
- 家族の誰かが「弱い存在」でいることで、他のメンバーが「守る側」の役割を保持し、家族としてのまとまりが維持される
家族療法ではこのような「症状の機能」を仮説として立て、その機能を別の方法で満たせるよう家族システムの変化を促します。IPを「治療」するのではなく、家族が新しいコミュニケーションや関係性のパターンを見つけることが目標となります。
円環的因果律の臨床的意義
直線的因果律(原因→結果)ではなく、円環的因果律(A⇄B 相互影響)で家族を見ることは、治療関係に大きな意味を持ちます。
- 非難の軽減「誰かが一方的に悪い」という責任の押し付けから解放され、家族全員が変化のプロセスに参加しやすくなる。
- 新しい介入点の発見直線的因果律では「根本原因を取り除く」しかないが、円環的に見ることでループの中のどこを変えても変化が波及することに気づける。
- 家族の協力関係の促進「問題は関係性のパターンにある」という理解のもとで、家族全員が共に変化に取り組む姿勢が生まれやすい。
- 再発への対処症状が一時的に改善しても「原因が残っている」という不安を軽減し、「パターンが変わったかどうか」という視点で状態を評価できる。
三角関係の典型パターンと気づくサイン
三角関係には典型的な形態があります。
家族療法では三角関係に気づき、それを脱三角化(de-triangulation)することが介入目標となります。以下のサインは三角関係発生の可能性を示します。
- ✓二人が直接対話せず、第三者(子ども・祖父母・友人・セラピスト)を介してコミュニケーションする
- ✓子どもが親の喧嘩の「仲裁者」や「伝言係」の役割を果たしている
- ✓特定の子どもだけが問題行動を繰り返し、兄弟の中で「問題児」としてラベルされている
- ✓一方の親が子どもと「秘密」を共有し、もう一方の親を排除している
- ✓家族の話題が特定の「問題のある人」についてのことばかりになっている
サブシステムと3種類の境界線
構造派家族療法では、家族全体というシステムの中に複数のサブシステムがあると考えます。
健全な家族機能のためには、これらのサブシステムが適切に機能し、サブシステム間の境界線(boundaries)が明確に保たれていることが重要です。境界線はその性質によって3種類に分類されます。
家族療法では、これらの境界線の状態を見立て、より明確で適切な境界線が機能するよう介入します。「密着」が強すぎる家族には適度な分離と個人の自律性を促し、「離隔」が強すぎる家族には交流とつながりを増やす方向で支援します。
家族療法の6つの主要モデル
構造派・コミュニケーション/戦略派・ミラノ派・多世代派・ナラティブセラピー・解決志向アプローチ——それぞれが異なる視点と技法を持ち、現代の家族療法の多様性を支えています。
主要6モデルの特徴と技法
それぞれのモデルは独自の理論と技法を持ちつつ、現代では統合的に用いられることも多くあります。
サルバドール・ミニューチンが1960〜70年代に確立。家族を「構造」(サブシステム・境界線・ヒエラルキー)として捉え、症状は家族構造の不具合を反映していると考える。フィラデルフィアの貧困地域少年院で実践、後に摂食障害家族の研究で世界的に注目された。
パロアルトのMRIを拠点にドン・ジャクソン、ジョン・ウィークランド、ポール・ワツラウィックらが発展。「問題を解決しようとする試みがかえって問題を維持している」という逆説的洞察が核心。眠れない夫に妻が「早く寝なさい」と促し続けることで余計に眠れなくなる、という「解決の試み」が問題を維持する。戦略派はジェイ・ヘイリーとクロエ・マダネスが発展させ、家族内の権力・ヒエラルキー・コントロールのパターンをより重視。能動的・指示的なセラピストが課題を与え、逆説的介入(例「火曜日の夜8時から30分だけ喧嘩してください」)も用いる。
1970年代イタリア・ミラノでマラ・セルヴィニ・パラッツォーリ率いるチームが確立。後にルイジ・ボスコロとジャンフランコ・セチンらが発展。摂食障害家族への適用で注目された。
マレー・ボーエンが確立。現在の問題を「現在の家族だけ」で理解せず、複数世代にわたる家族パターンとの連続性の中で捉える。中心概念は自己分化(differentiation of self)——感情システムと知的システムのバランスをとる能力。分化が高い人は感情に流されず自分の思考と価値観に基づいて行動できる。低い人は他者との「融合」「遮断」のパターンをとりやすく、不安が世代を超えて伝わり、各世代で「三角関係」「スケープゴーティング」「感情的遮断」が繰り返される。
1980年代にマイケル・ホワイトとデーヴィッド・エプストンが提唱、社会構成主義に基づく。「私たちは自分や世界について語る物語を通して現実を構成している」という前提。問題に苦しむ人は「自分は失敗者だ」「この家族はいつもうまくいかない」のような支配的な物語(dominant story)に縛られている。
スティーブ・ド・シェイザーとインスー・キム・バーグがミルウォーキーで1980年代に開発。「なぜ問題が起きているのか」ではなく「どうすれば解決するか」に焦点。基本前提:①解決の構築は問題の理解と独立、②例外は必ず存在する、③クライエントは解決のリソースを持っている、④小さな変化が大きな変化を生む。
- ジョイニング:セラピストが家族の輪に積極的に参加し信頼関係を構築。家族の言葉・価値観に寄り添いながら「部内者」として関与する
- エナクトメント:セッションの中で家族メンバー同士に実際のやり取りをしてもらい、相互作用パターンをリアルタイムで観察・介入
- リフレーミング:問題や行動に新しい意味・解釈を与える。「反抗的な子ども」を「家族のストレスを敏感に感じ取っている子ども」と捉え直す
- 不均衡(unbalancing):セラピストが意図的に特定のメンバーの側に立つことで、家族内の固定化したパワーバランスを揺さぶる
- 境界線の明確化:曖昧あるいは硬直した境界線を明確にする介入。「お母さんの気持ちはお母さんから話してもらいましょう」
- これまでと異なる対応をする介入
- 具体的な課題(directive)の処方
- 逆説的介入(症状処方)
- 権力逆転パターンの修正
- 仮説立て(hypothesizing):セラピーを始める前に家族の問題と家族システムについての仮説を立て、セッション中の観察によって随時修正する
- 円環性(circularity):家族メンバー間の相互作用を円環的に理解し、すべてのメンバーが相互に影響し合っているという視点でセッションを進める
- 中立性(neutrality):セラピストは特定のメンバーの側に立たず、家族のあらゆる視点に等しく関心を持つ姿勢を保つ
- 円環的質問法:あるメンバーに「他のメンバー同士の関係」について質問。「お父さんが疲れて帰ったとき、お母さんはどんな顔をすると思いますか?」「妹が泣いているとき、お兄ちゃんはどうしますか?それを見たお母さんはどう感じる?」「家族の中で最も変わりたいと思っているのは誰?」
- ジェノグラム:家族の歴史を3世代以上にわたって図示する拡大家族図。結婚・離婚・死亡・疎遠・密着、精神疾患・依存症・特定パターン、重要なライフイベントを視覚的にマッピング
- 世代を超えた繰り返しパターンの可視化
- 関係の断絶が始まった世代の特定
- 自己分化の促進
- 外在化(externalizing):問題を「人の内側」ではなく「人の外にある別の存在」として名前をつけ語り直す。「あなたはダメな子」→「暴力がときどきあなたのところに来る」「うちの子はアルコール依存症だ」→「お酒の問題が息子を取り込もうとしている」「私は不安な人間だ」→「不安という訪問者がときどき来る」
- ユニーク・アウトカム:支配的な物語の例外となる「問題がなかった瞬間」「うまくいった場面」「問題に打ち勝てた経験」を丁寧に掘り起こす
- オルタナティブ・ストーリー:例外を豊かに語り直すことで新しい自己物語を形成。「先週、怒りそうになったのをこらえてコップに水を注ぎに行った瞬間」を見つけ、「その瞬間のあなたはどんな子?」「何があなたをそうさせた?」と問い直す
- ミラクル・クエスチョン:「明日目が覚めたとき、奇跡が起きてあなたの問題がすっかり解決していたとしたら、何が違いますか?最初に気づくのはどんなことですか?」
- スケーリング・クエスチョン:「0(最悪)から10(完全に解決)のスケールで今どのくらい?」「5のとき、4のときと何が違う?」「6になるためには何があればいい?」
- 例外探し:「問題が起きていない、あるいは少なかった瞬間はいつ?そのとき何が違った?」
- コーピング・クエスチョン:「こんなに大変な状況の中で、どうしてここまでやってこられたのですか?」と自覚していないレジリエンスを引き出す
複数モデルで用いられる代表技法
各モデルに共通して用いられる技法、複数モデルで活用される横断的技法をまとめます。
- リフレーミング問題や行動に対して、これまでと異なる文脈・意味・解釈を与える。「困った行動」を「家族を守ろうとする試み」として捉え直すことで、相互非難のパターンから関係性を変化させる。
- ジョイニングセラピストが家族に寄り添い、家族の一員として信頼関係を構築すること。家族の文化・言語・価値観を尊重した関与が前提となる。
- エナクトメントセッション内で家族に実際の相互作用を「演じてもらう」技法。コミュニケーションパターンをその場で観察・介入できる。
- ホームワーク(課題)セッション外に家族が行うべき具体的な課題を出す。新しいコミュニケーションパターンを日常生活に定着させることが目的。
- ジェノグラムの作成多世代にわたる家族の歴史を図示することで、繰り返されるパターンや家族の強みを可視化する。
- 円環的質問法ミラノ派の技法。あるメンバーに「他の二人の関係」について質問し、関係性を俯瞰的に描き出す。
- 逆説的介入問題行動を「禁止」するのではなく「処方」することで、問題のコントロールを家族の手に取り戻す戦略的技法。
- ポジティブ・コノテーション問題や症状をシステム全体の観点から肯定的に意味づけることで、家族の防衛を和らげ変化への動機づけを高める。
- 家族彫刻(family sculpture)バージニア・サティア開発のエクスペリエンシャル技法。家族メンバーの関係性を身体的な位置・姿勢・距離で表現する。「家族の中で一番力を持っている人」「最も孤立しているメンバー」などのテーマで配置し、姿勢・表情・距離について語り合う。言語が苦手なメンバーや子どもを含むセッションで有用。
家族療法のエビデンス——どの問題に効果があるか
家族療法の効果については、複数のメタ分析・システマティックレビューにより国際的なエビデンスが蓄積されています。摂食障害から統合失調症、行動障害まで幅広く効果が示されています。
国際的に確認されている効果領域
2025年にJournal of Family Therapyに掲載された包括的レビューでは、システミックな介入が乳幼児期の精神保健問題、虐待・ネグレクトからの回復、外在化問題(行動障害・ADHD)、内在化問題(不安・うつ)、摂食障害、身体的健康問題、精神病(統合失調症)など、幅広い問題に効果を持つことが示されています。
- 摂食障害(神経性やせ症)18歳以下・罹病期間3年未満の神経性やせ症では、家族をベースとする治療(FBT)が国際的ガイドラインで第一選択として推奨されている。親が食事の管理を担い、段階的に子どもの自律性を回復させるアプローチで高い回復率が示されている。
- 統合失調症家族の高い感情表出(批判・敵意・過度の感情的巻き込まれ)が再発リスクを高めることが研究で明らかにされており、家族心理教育・家族療法が再発防止に有効なことが多数の研究で支持されている。
- 子どもの行動障害・ADHDペアレント・トレーニング(親へのトレーニング)を含む家族支援介入が子どもの外在化問題の改善に有効であることが多数のRCT(無作為比較試験)で示されている。
- 不登校・ひきこもり日本において、不登校・ひきこもりへの家族療法的アプローチの有効性が実践・事例研究レベルで報告されており、家族全体のコミュニケーションパターンの変化が本人の状態改善に寄与することが示されている。
- うつ病・気分障害うつ病の維持・再発に家族関係が影響することが知られており、家族療法的アプローチが個人療法との組み合わせで回復を促進するエビデンスがある。特に産後うつや双極性障害では家族支援の重要性が高い。
- 物質使用障害アルコール・薬物依存において、家族全体を巻き込んだ治療アプローチが回復を促進することが示されている。多次元的家族療法(MDFT)などが青年期の薬物使用障害に有効なエビデンスを持つ。
日本における実践と研究
日本では、家族療法は主に不登校・ひきこもり・摂食障害・DVなどの問題に適用されてきました。淀屋橋心理療法センターや大学の心理相談センターなどが長年にわたり実践と研究を積み重ねており、日本の文化的文脈に適した家族療法のモデルが発展しています。
特に日本では、家族の「恥の文化」「集団主義的な家族規範」「三世代同居・拡大家族の影響」といった文化的特性が家族療法の実践に影響します。欧米のモデルをそのまま適用するのではなく、日本の文脈に合わせた修正が加えられた実践が行われています。
向いているケース・個人療法との違い・実際の流れ
家族療法が特に有効なケースから、向いていないケース、個人療法との違い、初回〜終結までの実際のプロセスまで——意思決定に必要な情報を整理します。
家族療法が特に有効なケース
向いていないケース・注意が必要なケース
- DV(家庭内暴力)が進行中の場合被害者の安全が確保されていない状況で家族合同面接を行うことは、被害者に対するリスクが高まる。まず安全確保が最優先。
- 急性期の重大な精神科的緊急状態自傷・自殺企図・急性精神病状態・重篤なうつ病の急性期などでは、まず個人への医療的介入が優先される。状態が安定した後に家族療法を導入することが多い。
- 特定のメンバーが参加を強く拒否している場合強制的な参加は治療効果を損ない、かえって抵抗を強める。参加しない人がいても開始できるが、その人の参加意欲を高める工夫が必要。
- 重篤な物質依存の急性期解毒・断酒・断薬の初期段階では、まず医療的な依存症治療が先決。安定後に家族療法が有効になる。
個人療法と家族療法の比較
個人療法と家族療法は対立するものではなく、多くの場合組み合わせて用いられます。例えば、統合失調症の当事者が個人療法を受けながら、家族が家族心理教育・家族療法に参加するというアプローチが有効なことがあります。
初回〜終結までのプロセス
家族療法は通常、4つのフェーズで進みます。
日本での家族療法の受け方
日本で家族療法を受けるための機関・手順・費用・公的制度をまとめました。家族全員参加が難しい場合の選択肢も含めて整理します。
家族療法を実施している機関
日本で家族療法を受けられる機関は大きく以下の種類があります。
家族療法を受けるための4ステップ
家族全員の参加が難しい場合
家族療法では全員参加が理想ですが、現実にはそれが難しいケースが多くあります。「夫(妻)が来たがらない」「子どもが拒否している」「祖父母が遠方にいる」などの状況でも、家族療法は一人から開始できます。
一人が参加するだけでも、その人の家族への関わり方・コミュニケーションパターンが変わることで、家族システム全体に変化が生じることがあります。「一人家族療法(One-Person Family Therapy)」という考え方も広まっており、一人の参加者を通じて家族全体に働きかける方法論が確立されています。
費用の目安——機関別
家族療法の費用は、受ける機関や形態によって大きく異なります。
- 精神科・心療内科の家族相談(保険診療)患者本人が受診している医療機関で家族が主治医と相談する場合、「通院精神療法」や「入院精神療法」の家族指導として保険適用される場合がある。通常の保険診療と同様に3割負担(高齢者は1〜2割)。
- 自費カウンセリング心理相談機関での家族カウンセリングは原則保険適用外(自費)。1セッション(50〜60分)あたり8,000円〜20,000円程度が相場。家族全員参加でも人数にかかわらず1回の料金とする機関が多い。
- 精神保健福祉センター無料(公費負担)。ただし専門的な継続的家族療法ではなく、相談・助言レベルになることが多い。
- 大学附属相談センター1セッション3,000〜5,000円程度と比較的安価なことが多い。
自立支援医療制度(精神通院医療)の活用
家族の精神疾患(統合失調症・うつ病・双極性障害・摂食障害など)に関連して精神科・心療内科に通院する場合、自立支援医療制度(精神通院医療)を申請することで、医療費の自己負担が原則1割に軽減されます。
- ✓対象:継続的な精神科・心療内科への通院が必要な精神疾患を持つ方
- ✓申請窓口:お住まいの市区町村の福祉担当部署(障害福祉課など)
- ✓必要書類:医師の診断書(指定様式)、健康保険証、マイナンバーカードなど
- ✓更新:1年ごとに更新が必要
- ✓詳細:最寄りの精神保健福祉センターや市区町村の福祉担当部署にお問い合わせください
家族療法に関するよくある疑問
A. 全員参加が理想的ですが、必須ではありません。参加できる人だけで開始することも可能です。一人のメンバーが家族へのかかわり方を変えることで、家族システム全体に変化が生じることが多くの研究・実践で確認されています。「夫(妻)が来ない」「子どもが拒否している」という状況でも、まず来ることのできる人が相談に行くことをお勧めします。「一人家族療法(One-Person Family Therapy)」という考え方も広まっています。
A. 家族療法の訓練を受けたセラピストは、特定のメンバーを「悪者」として扱うことはありません。家族療法の基本的な立場は「中立性」であり、全メンバーの視点を等しく尊重します。問題を特定の人の「せい」にするのではなく、家族全体のパターンとして理解することが家族療法の根幹です。ただし、DVや虐待がある場合には、被害者の安全と権利を最優先に考えます。
A. モデルや問題によって大きく異なります。解決志向短期療法(SFBT)では5〜10回程度での終結を目指すことも多い一方、多世代派の長期アプローチでは年単位にわたることもあります。最初のセッションで「どれくらいの期間を想定しているか」を確認することをお勧めします。多くの機関では、目標達成の状況を見ながら柔軟に期間を調整します。
A. 可能です。むしろ組み合わせが有効なことも多いです。例えば、摂食障害の当事者が個人の心理療法を受けながら、家族が別途家族療法に参加するというアプローチは、国際的なガイドラインでも推奨されています。ただし、個人療法のセラピストと家族療法のセラピストが異なる場合、情報の共有や連携について事前に確認することが重要です。
A. はい、オンラインでの家族療法も可能です。COVID-19パンデミック以降、オンライン(ビデオ通話)での家族療法が急速に普及しました。2025年のメタ分析では、オンラインと対面でのシステミック心理療法の効果に大きな差がないことが示されています。遠方に住む家族メンバーが参加できる、仕事の調整がしやすいなどのメリットがあります。ただし、緊急性の高い状況や身体的な安全確保が必要な場合は対面が優先されます。
A. はい。乳幼児期のメンタルヘルス問題(睡眠・食事・愛着など)への家族療法的アプローチは国際的にエビデンスが蓄積されています。幼い子どもが参加する場合、言語的なやり取りだけでなく、遊び・描画・家族彫刻などの非言語的な技法が活用されます。子どもの年齢・発達段階に応じたアプローチを行う専門家が対応します。
A. これは家族療法の重要な倫理的問題です。複数のメンバーが参加するため、秘密保持の範囲と方針を事前に明確にすることが必須です。多くのセラピストは「個別面接での内容を家族全体の場で暴露しない」などのルールを設けています。ただし、「他のメンバーが知らない重大な秘密(例:不貞行為)」がある場合、その扱いについて事前に確認しておくことをお勧めします。
A. カップルカウンセリング(夫婦療法・マリタル・セラピー)は、家族療法の一形態として位置づけられることが多く、夫婦(あるいはパートナー)の二人を対象に、コミュニケーション・信頼・親密さ・役割分担・子育て方針などの問題に取り組みます。代表的な夫婦療法としてはEFT(感情焦点化療法)があり、ジョン・ゴットマンの研究に基づくゴットマン法も世界的に広まっています。日本では「夫婦カウンセリング」という名称で心療内科や心理相談機関で受けられる場合があります。
家族のことで
悩んでいるあなたへ
問題は、家族の誰か一人のせいではありません。家族療法や家族支援について、まずは話を聞かせてください。一人で抱え込まず、ココトモにあなたの状況を伝えてみませんか。
このページの情報は、医師による診断や治療に代わるものではありません。症状が気になる場合は、心療内科・精神科への受診をご検討ください。
