グリーフサポートとは?
悲嘆のプロセス・支援の種類・相談窓口を解説
大切な人を失った深い悲しみ(グリーフ)に寄り添う取り組み、グリーフサポート。悲嘆の症状・回復のプロセス・複雑性悲嘆・喪失の種類・専門職・相談窓口・周囲のかかわり方まで、必要な情報をすべてここにまとめました。
グリーフサポートとは
グリーフサポートとは、大切な人を失った悲しみ(グリーフ)を抱えた人に寄り添い、その悲嘆を支援する取り組み全般を指します。「早く立ち直ること」を求めるものではなく、自分のペースで悲しみを歩んでいくことを支える姿勢を根本としています。
グリーフサポートの定義
グリーフサポートとは、大切な人を失った悲しみ(グリーフ)を抱えた人に寄り添い、その悲嘆を支援する取り組み全般を指します。「グリーフ(Grief)」とは英語で「深い悲しみ・悲嘆」を意味し、特に死別や離別、重大な喪失体験に伴う深い悲しみの状態を表します。
グリーフサポートは、このような喪失体験をした人が、自分のペースで悲しみを乗り越えていけるよう、専門家・支援者・コミュニティがさまざまな形で支援するプロセスです。
「早く立ち直ること」を求めない
グリーフサポートは決して「早く立ち直ることを求める」ものではありません。悲しみは自然な人間の反応であり、その感情を否定せず、ともに寄り添いながら時間をかけて歩んでいくことを根本的な姿勢としています。
日本における社会的認識の高まり
日本においても近年、グリーフサポートの重要性に対する社会的認識が急速に高まっています。一般社団法人グリーフサポート研究所、日本グリーフ専門士協会、日本グリーフケア協会をはじめ、多くの団体・専門機関が悲嘆支援に取り組んでいます。
2025年には「上級グリーフケア士」という新しい資格制度も開始され、専門性の高い支援者育成が進められています。
グリーフ(悲嘆)とはどのような状態か
グリーフとは、大切な人・ものを失ったときに生じる心身全体の反応です。死別だけでなく、以下のような喪失体験もグリーフを引き起こします。
- 離婚・離別
- 流産・死産
- ペットの死
- 病気による喪失(機能・役割・アイデンティティの喪失)
- 大規模災害による喪失
グリーフの主な症状——4つの側面
グリーフの状態では、感情・認知・行動・身体の4側面に多彩な症状が現れます。これらは「異常」ではなく、喪失に対する「正常な反応」です。喪失直後に最も強く現れ、時間の経過とともに徐々に和らいでいきますが、波のように繰り返しながら進みます。
感情・認知・行動・身体に現れる症状
記念日反応——回復は直線的ではない
これらの症状は、喪失直後に最も強く現れ、時間の経過とともに徐々に和らいでいくことが多いです。ただし、回復の過程は直線的ではなく、波のように繰り返しながら進んでいきます。
命日や故人の誕生日、季節の変わり目など「記念日反応」として、いったん落ち着いた悲しみが再び強くなることもあります。これは回復の失敗ではなく、ごく自然なことです。
悲嘆のプロセス——回復の段階を理解する
悲嘆の回復にはいくつかのモデルが提唱されています。ただし、これらは「必ずこの順番で進む」ものではなく、個人差が大きく、行きつ戻りつしながら進みます。
アルフォンス・デーケン博士の12段階モデル
上智大学名誉教授のアルフォンス・デーケン博士は、死別による悲嘆のプロセスを以下の12段階に整理しました。
ストローブとシュットの二重過程モデル
ストローブとシュットが提唱した「二重過程モデル」では、悲嘆を「喪失志向(亡くなった人への思いに向き合う)」と「回復志向(新しい生活に向き合う)」の間で揺れ動くプロセスとして捉えています。
人は毎日この二つの間を行き来しながら、少しずつ前に進んでいきます。この揺れは弱さではなく、健全な回復の証です。
コンティニュイング・ボンズ(継続する絆)の視点
近年の悲嘆研究では、「故人との絆は死後も続く」という「継続する絆(Continuing Bonds)」の考え方が重視されています。
かつては「故人から心理的に離れることが健全な回復」とされていましたが、現代では故人との内的な繋がりを持ち続けながら生きていくことが、長期的な適応に寄与すると考えられています。
複雑性悲嘆(遷延性悲嘆症)とは
グリーフは通常時間とともに和らぎますが、一部の方では悲嘆が長期にわたって非常に強い状態が続き、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。これを複雑性悲嘆または遷延性悲嘆症(Prolonged Grief Disorder)と呼びます。
DSM-5への正式な追加
DSM-5(精神疾患の診断統計マニュアル第5版)では2022年に「遷延性悲嘆症」が正式に診断基準として加えられました。一般的に、死別後6ヶ月(子どもの場合は3ヶ月)以上にわたって強い悲嘆症状が続き、社会的・職業的機能が著しく損なわれている状態が目安とされています。
複雑性悲嘆のリスクを高める要因
- 突然の予期せぬ死(事故死、自死、災害死など)
- 自死(自殺)による遺族(スティグマや罪悪感が特に強い)
- 子どもを亡くした親
- 配偶者・パートナーなど最も親密な関係の人との死別
- 幼い子ども期の死別体験
- 以前にうつ病や不安障害の既往がある
- 社会的サポートが乏しい
- 複数の喪失体験が重なった場合
- 死の状況を目撃した(外傷的体験)
複雑性悲嘆の主な症状
喪失の種類による違い
自死(自殺)によって大切な人を亡くした遺族
通常の死別とは異なる複雑な悲嘆を経験することが多い。「なぜ止められなかったのか」という強烈な罪悪感、「自分が原因ではないか」という自責、社会的なスティグマ(偏見・差別)への恐れ、死の状況・原因を詮索されることへの苦痛が重なります。死因を周囲に言えず孤立しがちです。
親より先に子が逝くという耐えがたい喪失
多くの親にとって人生で最も耐えがたい喪失の一つです。「我が子を守れなかった」という強烈な罪悪感、人生の意味・目的の崩壊、夫婦間の悲しみ方の違いによる関係の摩擦など、特有の困難が伴います。
身近な人を亡くした子ども(6〜18歳など)
子どもは年齢・発達段階によって、死の概念の理解と悲嘆の表現の仕方が大きく異なります。幼い子どもは「どこかに行ってしまっただけ」と理解することもありますが、年齢が上がるにつれて死の永続性を理解します。子どものグリーフは遊びや身体活動、行動の変化として現れることが多く、大人が「悲しんでいない」と誤解することがあります。正直にわかりやすく死について話すこと、日常のルーティンを維持すること、専門プログラムを活用することが有効です。
長年連れ添ったパートナーとの別れ
日常生活のあらゆる面に影響します。役割の喪失(世話をする相手・してもらえる相手がいなくなる)、経済的変化、アイデンティティの変容(「妻」「夫」「パートナー」としての自分が失われる)が複合的に重なります。高齢者の場合は社会的孤立もより深刻になりがちです。
見えない喪失(Disenfranchised Grief)
「まだ生まれていないから」「会ったことがないから」という周囲の無理解により、悲嘆が剥奪された悲嘆として孤立しがちです。しかし、これは確かな喪失であり、正当なグリーフです。専門的なサポートを求める権利があります。
準備のない突然の喪失
自然災害や事故による突然の死別は、何の準備もする間もなく起こるため、特に強烈な衝撃を伴います。遺体が見つからない・損壊が激しいといった状況は、現実の受け入れをさらに困難にします。生き残ったこと自体への罪悪感(サバイバーズ・ギルト)も生じることがあります。
- NPO法人グリーフケア・サポートプラザ
- 全国自死遺族総合支援センター(グリーフサポートリンク)
- 自死遺族向けのわかちあいの会
- Grief Support Project(家族向けプログラム)
- 子どもを亡くした親の自助グループ
- 全国自死遺族総合支援センター(子ども・家族向けつどい)
- Grief Support Project
- こどもグリーフサポートふくおか
- 地域包括支援センター(高齢者向け生活支援)
- 遺族年金制度
- わかちあいの会(配偶者死別)
- 流産・死産経験者の自助グループ
- 周産期グリーフ専門相談
- 日本災害グリーフサポートプロジェクト(JDGS)
- 各都道府県の精神保健福祉センター
グリーフサポートの種類と方法
グリーフサポートには「専門的・医療的支援」「コミュニティ支援」「自己ケア」の三つの柱があります。それぞれを組み合わせて、自分に合うサポートを選んでください。
1. 専門的・医療的支援
2. コミュニティ支援
3. 自己ケア(セルフケア)
グリーフの中にあるとき、自分自身の世話を続けることがとても大切です。以下の自己ケアは、悲嘆の回復を支える基盤となります。
- 身体のケアできる範囲で食事・睡眠・運動を維持する。身体の状態は感情状態に直結します。
- 感情を表現する日記を書く、泣く、信頼できる人に話す。感情を「出す」ことは健全な回復の一部です。
- 故人を偲ぶ時間を持つ写真を見る、思い出話をする、お墓参りをするなど、故人との絆を大切にする。
- 無理に「普通」を演じないグリーフ中は判断力・集中力が低下します。大きな決断は先送りにすることも大切です。
- 自分のペースを尊重する「○ヶ月で立ち直るべき」という社会的プレッシャーに縛られない。
- 自然や身体活動を活用する散歩、ヨガ、ガーデニングなど、身体を動かすことは気分の安定に役立ちます。
- 創造的表現絵を描く、音楽を聴く・演奏する、手紙を書くなどの創造的な活動がグリーフの表現と統合を助けます。
グリーフとメンタルヘルス疾患の関係
グリーフそのものは「病気」ではありませんが、グリーフをきっかけにメンタルヘルスの問題が顕在化・悪化することがあります。以下の状態が続く場合は、精神科・心療内科への相談を検討してください。
グリーフとうつ病は症状が重なる部分が多く(悲しみ、食欲低下、睡眠障害、意欲の低下など)、区別が難しいことがあります。グリーフに伴うものはやがて和らぐことが多いですが、うつ病は専門的な治療が必要です。強い自責感、将来への絶望感、自殺念慮がある場合は、すぐに専門家に相談してください。
突然の事故・事件・災害・自死による死別は、心的外傷(トラウマ)を伴うグリーフとなることがあります。死の状況のフラッシュバック、夢に繰り返し出てくる、その場面を思い出させるものを徹底的に避ける——これらはPTSDの症状である可能性があります。トラウマ処理の専門的な心理療法(EMDR、トラウマ焦点化CBTなど)が有効です。
グリーフの痛みを和らげるためにアルコールや薬物に依存するようになることがあります。一時的な効果はあっても長期的には悲嘆を悪化させ、依存症という新たな問題が加わります。アルコール・物質の使用量が増えていると感じる場合は、早めに相談することが重要です。
遺族、特に自死遺族は自殺リスクが一般人口より高いことが知られています。「自分も死にたい」「消えてしまいたい」という思いが浮かぶことは珍しくありませんが、具体的な計画がある場合や、思いが強くなっている場合は、すぐに専門家・相談窓口に連絡してください。
グリーフサポートにおける制度・費用の支援
グリーフに伴う心の不調で医療機関を受診する際、経済的な負担を軽減できる制度があります。
精神科・心療内科に通院して治療を受ける場合、医療費の自己負担が原則1割に軽減。申請は市区町村の窓口で行い、医師の診断書が必要です。グリーフに伴ううつ病・複雑性悲嘆・PTSDなどで継続的に精神科通院が必要な方は、担当医師に相談してください。
各都道府県・政令指定都市に設置。無料で精神保健相談を受けられ、グリーフに関する相談や適切な専門機関・医療機関への紹介も行います。
配偶者を亡くしたことによる経済的困難など、生活全体の困難を抱える場合、自治体の生活困窮者自立支援制度を活用できることがあります。
配偶者・子どもを亡くした場合、遺族年金などの公的給付を受けられることがあります。年金事務所や市区町村窓口に相談してください。
専門職・資格と相談窓口
日本では近年、グリーフサポートの専門性に対する関心が高まり、さまざまな資格・専門職が整備されています。一人で抱え込まず、これらの窓口を活用してください。
グリーフサポートを行う専門職・資格
日本のグリーフサポート相談窓口・支援機関
悲嘆を抱えているとき、一人で抱え込まずに相談できる窓口があります。
- NPO法人グリーフケア・サポートプラザ電話傾聴相談(火・木・土曜 11:00〜17:00)。自死で大切な人を亡くした遺族の悲しみを訓練を受けたスタッフが傾聴。
- 全国自死遺族総合支援センター(グリーフサポートリンク)電話相談・24時間メール相談を提供。わかちあいの会を全国各地で開催。
- とうきょう自死遺族総合支援窓口TEL 03-5357-1536(月〜金 14:00〜18:00、日 13:00〜17:00/東京都)
- 一般社団法人グリーフサポート研究所(東京)グリーフカウンセリング・支援者育成・研修を実施。
- NPO法人暮らしのグリーフサポートみなとグリーフカフェ・電話相談・カウンセリングを提供。
- 日本グリーフケア協会グリーフケアに関する啓発・資格認定・相談紹介。
- 全国自死遺族総合支援センター(子ども向け)身近な人を亡くした子ども(6〜18歳)とその家族向けのつどいを開催。
- Grief Support Project子どもを亡くした家族向けのプログラムを提供。
- こどもグリーフサポートふくおか(福岡)大切な人を亡くした子ども・10代向けのつどいを開催。
- 日本災害グリーフサポートプロジェクト(JDGS)災害で大切な人をなくされた方のための情報・支援サイト。
- 各都道府県の精神保健福祉センター被災地域での心理的支援・グリーフサポートを実施。
- 各地の精神保健福祉センターグリーフ・悲嘆に関する相談・支援者への紹介。無料で利用できます。
- かかりつけ医・精神科・心療内科身体症状・うつ症状・不眠が続く場合は医療機関へ。
- 地域包括支援センター(高齢者の場合)配偶者を亡くした高齢者の生活全般の支援。
- 世田谷区グリーフサポート事業行政としてグリーフサポート事業を実施。グリーフカウンセラーによる個別相談、グリーフサポートグループへの参加支援。行政レベルの取り組みは全国へ広がりつつあります。
遺族を支える側へ——基本姿勢
大切な人を失った友人・家族を支えたいと思っているあなたへ。グリーフサポートにおいて、支える側が知っておくべき基本的な姿勢があります。「何を言えばいいかわからない」と感じることは、とても自然なことです。
してほしいこと・避けてほしいこと
遺族への接し方には、回復を助けるものと、逆に傷つけてしまうものがあります。完璧な言葉を探す必要はありません。「何も言えないけど、そばにいるよ」——この言葉と姿勢が、最大のサポートになることがあります。
グリーフリーブ・EAP・同僚としての姿勢
日本では一般的に「忌引き休暇」として3〜7日程度が認められていますが、欧米では「グリーフリーブ(Grief Leave)」としてより長期・柔軟な休暇制度を設ける企業が増えています。グリーフの回復には通常数ヶ月以上かかることを考えると、忌引き後も柔軟な勤務形態・休暇取得を認めることが重要です。
EAPを導入している企業では、グリーフカウンセリングを無料で利用できる場合があります。人事・総務担当者への確認を検討してください。
職場で悲嘆を抱えた同僚がいる場合、過度な詮索や「もう大丈夫?」という問いかけは避け、「業務上必要な場合はいつでも声をかけてください」という距離感で、プレッシャーなく接することが大切です。
よくある質問
A. 「この程度で相談していいのかな」「もっとひどくならないと相談できない」と感じることがありますが、そんなことはありません。大切な人を亡くして辛いと感じた時点で、相談する権利があります。早期のグリーフサポートは複雑性悲嘆の予防にもなります。
A. カウンセリング(臨床心理士・公認心理師)は主に心理的なサポートと心理療法を提供します。精神科・心療内科は診断・薬物療法を含む医療的治療を提供します。症状が軽〜中程度の場合はカウンセリングから始めることが多いですが、強いうつ症状・不眠・自殺念慮がある場合は精神科受診が適切です。両者の組み合わせも有効です。
A. グリーフサポートグループでは、話すことを強制されることは基本的にありません。初めは聴くだけ、涙を流すだけでも構いません。「同じ体験をした人たちの存在を感じる」だけでも、孤立感を和らげる力があります。
A. グリーフの回復には個人差があり、何年経っても悲しみが薄れないことは珍しくありません。特に子どもを亡くした親、自死遺族などは、「立ち直る」というより「悲しみとともに生きていく」形での回復が適切と言われることもあります。「何年も経つのに」という自己批判は自分をさらに苦しめます。今からでも専門的なグリーフサポートを受けることで、質の高い生活に向けた変化が起きることがあります。
A. 子どもの年齢に合わせた正直な説明が基本です。「死」という言葉を使うことを避けず(「眠っているだけ」「旅に出た」などは子どもを混乱させます)、子どもの疑問に正直に答えることが大切です。子どもも大人と同じように悲しんでいることを認め、感情の表現を受け入れてください。専門の子ども向けグリーフサポートプログラムの活用も有効です。
A. 近年、オンラインでのグリーフカウンセリング・グループがグリーフサポートの選択肢として広がっています。多くの団体がオンラインでのわかちあいの会・相談を提供しており、地理的な制約を超えてサポートを受けることが可能になっています。
A. グリーフを抱えた人の前で「何を言えばいいかわからない」と感じることは、とても自然なことです。完璧な言葉を探す必要はありません。「何も言えないけど、そばにいるよ」——この言葉と姿勢が、最大のサポートになることがあります。
大切な人を亡くした
悲しみを、一人で抱え込まないで
悲しみの深さは、愛の深さの表れです。あなたのペースで、悲しみとともに歩んでいけるよう、ココトモが寄り添います。話したいときは、いつでも相談してください。
このページの情報は、医師による診断や治療に代わるものではありません。症状が気になる場合は、心療内科・精神科への受診をご検討ください。
