メンタルヘルス用語辞典 · ためこみ症

ためこみ症とは?
症状・原因・治療法をわかりやすく解説

ためこみ症は、物を捨てることに強い苦痛を感じ、生活空間が物で圧迫される精神疾患です。「片付け下手」とは本質的に異なり、脳の機能に関わる問題です。症状の特徴から治療法、日常生活のケア、家族のサポートまで詳しく解説します。

ABOUT HOARDING DISORDER

ためこみ症とは、どのような病気か

ためこみ症は、物を捨てることに強い苦痛を感じ、大量の物が生活空間を圧迫するにもかかわらず手放すことができない精神疾患です。「片付けが苦手」とは本質的に異なる、脳の機能に関わる問題です。

定義

ためこみ症の定義——「片付けられない」とは違う

ためこみ症(Hoarding Disorder)は、DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)で2013年に独立した診断カテゴリーとして初めて認められた精神疾患です。以前は強迫性障害(OCD)の一症状と考えられていましたが、独自の特徴を持つ別の疾患として分類されました。物を処分することに対する持続的な困難さ、物の蓄積による生活空間の圧迫、そしてこれらが臨床的に意味のある苦痛または機能障害を引き起こしていることが診断基準の核心です。

片付けが苦手な状態
生活習慣の問題
時間や気力がなくて散らかっている。片付ける気にさえなれば整理できる。物を捨てること自体に強い苦痛はない。
ためこみ症
脳の機能に関わる精神疾患
物を捨てようとすると激しい不安や苦痛が生じる。物に対する過度な感情的愛着がある。生活空間が著しく圧迫されている。片付けの能力ではなく、手放すことの困難さが本質。
ためこみ症は「だらしなさ」ではありませんためこみ症は脳の意思決定機能や感情調節に関わる神経基盤の問題です。「片付ければいいだけ」という単純な話ではなく、専門的な治療が有効な精神疾患です。
有病率

ためこみ症は、想像以上に身近な問題である

ためこみ症は決して珍しい病気ではなく、社会的な影響も大きい疾患です。

2〜6%
一般人口における有病率は推定2〜6%。約20〜50人に1人の割合
50代〜
症状は若年で始まるが、深刻化するのは50代以降が多い
75%
ためこみ症の約75%がうつ病や不安障害を併存している
高齢化と独居世帯の増加に伴い、ためこみ症は社会問題としても注目されています。「ごみ屋敷」として報道される事例の多くが、ためこみ症と関連しています。
片付け下手との違い

「片付け下手」とためこみ症——何が違うのか

ためこみ症は単なる「片付けの問題」ではありません。以下の点で本質的に異なります。

ためこみ症の核心的な特徴
片付け下手
ためこみ症
捨てる時の感情
面倒・大変
激しい不安・苦痛
物への愛着
通常の範囲
過度に強い
生活への影響
軽度
重度(安全にも影響)
自力での改善
可能
専門的な支援が必要
受診の目安

専門家に相談すべきサイン

以下の項目に複数当てはまる場合は、専門家への相談を検討してください。

  • 部屋が物で埋まり、本来の用途に使えない場所が増えている
  • 物を捨てようとすると、強い不安や苦痛を感じる
  • 不要な物を買ったり拾ったりすることが止められない
  • 物のせいで家族や近隣との関係が悪化している
  • 自宅に人を招けない状態が長期間続いている
  • 転倒、火災、衛生上のリスクがある
  • 物のことで頭がいっぱいになり、仕事や日常生活に支障が出ている
  • 気分が落ち込む、不安が強い、孤立感を感じる
💡
ためこみ症の相談先としては、精神科・心療内科のほか、地域の保健所や精神保健福祉センターも利用できます。自宅の状態を写真に撮って持参すると、状況を伝えやすくなります。
支援制度

ためこみ症で使える公的支援制度

ためこみ症の方や家族が利用できる公的な支援制度があります。「自分には関係ない」と思わず、積極的に活用しましょう。

🏥
自立支援医療制度(精神通院医療)
精神科・心療内科への通院医療費の自己負担を原則1割に軽減する制度です。ためこみ症も対象疾患に含まれます。所得に応じた月額上限もあり、継続的な通院治療の経済的負担を大幅に軽減できます。主治医と相談の上、お住まいの市区町村窓口に申請してください。
🏛
精神保健福祉センター
各都道府県・政令市に設置されている相談機関です。本人だけでなく家族からの相談も受け付けており、電話・来所・オンラインで対応しています。ためこみ症の治療機関の紹介、家族支援プログラムへの案内など、幅広い支援を無料で提供しています。
🏘
地域包括支援センター(高齢者の場合)
65歳以上の方が対象の総合相談窓口です。高齢者のためこみ・ゴミ屋敷問題について、介護保険の利用、ヘルパーによる生活支援、福祉事務所との連携など、包括的な支援につないでもらえます。市区町村の窓口または地域包括支援センターに相談してください。
📋
障害福祉サービス(重度の場合)
ためこみ症が重度で日常生活に大きな支障がある場合、障害者手帳の取得や障害福祉サービス(居宅介護・生活訓練など)を利用できる可能性があります。福祉事務所または市区町村の障害福祉担当窓口に相談してください。
💡
費用の心配がある方へ自立支援医療制度を活用すれば、定期的な精神科通院の自己負担額を大幅に下げることができます。経済的な理由で受診をためらっている方は、まず保健所や精神保健福祉センターに相談してみてください。
TYPES OF HOARDING

ためこみ症のタイプ

ためこみ症にはいくつかのタイプがあります。物のためこみだけでなく、動物やデジタルデータのためこみも含まれます。

収集・獲
収集・獲得型
ためこみ症の分類
無料の物やバーゲン品、チラシやパンフレットなど、手に入る物を次々と集めてしまうタイプです。「いつか使うかもしれない」「もったいない」という感情が強く、必要以上の物を獲得してしまいます。ゴミ収集日に他の人が出したゴミの中から使えそうなものを拾って帰ることもあります。無料の物やセール品に特に引かれやすく、本来不要な物でも手に入れずにはいられない衝動を感じます。インターネット通販の普及により、オンラインでの過剰な購入が新たな問題として増えています。
過剰な収集もったいない感情衝動的な獲得
保管・保
保管・保存型
ためこみ症の分類
すでに持っている物を捨てられないタイプです。新聞、雑誌、古い衣類、壊れた家電、空き箱、レシートなど、客観的に見て不要な物でも「いつか必要になるかもしれない」「思い出がある」「捨てるのが不安」という感情が強く、手放すことに激しい苦痛を感じます。部屋の中が物で埋め尽くされ、本来の用途に使えない部屋が増えていきます。段階的に生活空間が侵食され、最終的にはキッチンで料理ができない、ベッドで眠れない、浴室が使えないといった状態に至ることもあります。
捨てられない不安と苦痛生活空間の侵食
動物ため
動物ためこみ型
ためこみ症の分類
適切に世話ができる範囲を超えて多数の動物を飼育するタイプです。動物への愛情から始まりますが、飼育環境が劣悪になっても動物を手放すことができません。動物の健康被害、不衛生な環境、近隣への迷惑、法的問題につながることがあります。本人は動物を救っているつもりでも、実際には動物を苦しめている状況に気づけないことが多いです。
過剰な動物飼育劣悪な飼育環境手放せない
デジタル
デジタルためこみ型
ためこみ症の分類
デジタルデータ(ファイル、メール、写真、ブックマーク、アプリ等)を削除できないタイプです。比較的新しい概念ですが、デジタル化が進む現代社会で増加しています。数万件の未読メール、整理不能なファイル、いっぱいになったストレージ、何千もの未整理写真など、デジタル空間が混乱した状態になります。物理的な健康被害は少ないものの、仕事の効率低下や精神的な苦痛をもたらします。
デジタルデータの蓄積削除への不安情報の整理不能
どのタイプであっても、本人は物を「ゴミ」とは感じていません。物への感情的なつながりや、失うことへの恐怖が根底にあります。この理解が適切なサポートの第一歩です。
SYMPTOMS

ためこみ症の症状

ためこみ症の症状は精神面と身体面の両方に現れます。生活環境の悪化は安全にも直結するため、早期の対応が重要です。

📦
物を捨てることへの強い苦痛
物を処分しようとすると、激しい不安、苦痛、悲しみを感じます。「これを捨てたら大変なことになる」「必要な時に困る」という恐怖が圧倒的です。捨てることを考えるだけで動悸がしたり、涙が出たりすることもあります。この苦痛の強さが、ためこみ症を「ただの片付け下手」と区別する重要なポイントです。
🏠
生活空間の深刻な圧迫
物が積み上がり、部屋が本来の用途に使えなくなります。キッチンのテーブルで食事ができない、ベッドで眠れない(物の上や間で寝る)、浴室やトイレに行くのも困難、玄関が開けられないなど、生活の質が著しく低下します。第三者が片付けなければ、居住空間としての機能が完全に失われるレベルに至ることもあります。
🔄
過剰な獲得行動
不要な物でも、無料であったり安売りであったりすると取得してしまう衝動が抑えられません。ゴミの中から物を拾う、同じ物を何個も買う、チラシやパンフレットを大量に持ち帰るなどの行動が見られます。「いつか使うかもしれない」「もったいない」「お得だから」という認知が獲得行動を駆動します。
😰
決断の困難さ
何を残して何を捨てるかの判断が極めて困難です。「間違った選択をしたらどうしよう」という不安が強く、決断を先延ばしにします。この優柔不断さは物の処分だけでなく、日常生活の様々な場面にも現れることがあります。完璧主義的な傾向が背景にある場合もあります。
🚪
社会的孤立
自宅の状態を人に見られたくないため、友人や家族を家に招けなくなります。修理業者や配達員さえも入れたくないと感じることがあります。このことが社会的孤立を深め、うつ状態や不安の悪化につながる悪循環が生じます。引っ越しや転居を繰り返す場合もあります。
🔥
安全上のリスク
物が積み上がることで、火災のリスクが著しく高まります。避難経路が塞がれ、消防士が室内に入れない事態も起こりえます。転倒による怪我、不衛生な環境による健康被害(害虫・カビ・悪臭)、建物の構造的な損傷など、深刻な安全問題につながることがあります。
😔
本人の苦痛と病識の乏しさ
ためこみ症の方の多くは、問題の深刻さを十分に認識できていません(病識の乏しさ)。「少し散らかっているだけ」「自分にとっては大切な物」と感じ、家族や近隣からの苦情に困惑することがあります。しかし心の奥では漠然とした不安や恥の感情を抱えていることが多く、完全に無自覚というわけではありません。
💡
病識の乏しさについてためこみ症の方は問題の深刻さを十分に認識できていないことが多く、これが治療への動機づけの大きな障壁となります。しかし「病識がない=治療不可能」ではありません。動機づけ面接法を用いた丁寧なアプローチで、変化への意欲を引き出すことができます。
重症度の段階

ためこみの重症度——5段階のスケール

ためこみ症の重症度は、生活空間への影響度で5段階に分類されることがあります(Clutter Image Rating Scale参照)。

レベル1軽度の散らかり。すべての部屋が通常の用途に使える。ドアや階段は通行可能。
レベル21つ以上の部屋が散らかり始める。家電の一部が機能しない。軽度の不衛生。
レベル3複数の部屋の用途が制限される。明らかな不衛生。構造的な損傷の兆候。
レベル4ほとんどの部屋が使用不能。深刻な衛生問題。害虫の発生。安全上のリスク大。
レベル5居住不可能なレベル。構造的な損傷。重大な健康・安全リスク。行政介入が必要。
レベル3以上の場合は、安全上のリスクが高まっています。専門家への相談を強くお勧めします。
CAUSES & RISK FACTORS

ためこみ症の原因とリスク要因

ためこみ症は脳の機能、遺伝、人生経験、認知パターンなど複数の要因が重なって発症します。

🧠脳の機能的特徴

ためこみ症の方の脳画像研究では、前頭前皮質(特に眼窩前頭皮質や前帯状皮質)の機能異常が報告されています。これらの領域は意思決定、感情調節、物の価値判断に関与しており、その機能低下が「捨てるべきかどうか」の判断を困難にしている可能性があります。また、物を処分する場面での扁桃体の過活動も観察されており、「捨てること」に対する過度な感情的反応と関連していると考えられています。注意力や分類能力にも問題が見られることがあります。

  • 前頭前皮質(意思決定領域)の機能異常
  • 扁桃体の過活動(処分への恐怖反応)
  • 注意力・分類能力の低下
  • 物の「価値判断」に関わる神経回路の偏り
悪化の誘因

ためこみ症を悪化させる要因

以下の要因がためこみ症の症状を悪化させることが知られています。

悪化リスクの高い要因
大切な人との死別・喪失
90%
引っ越し・生活環境の変化
75%
強制的な片付け(逆効果になる)
85%
社会的孤立・孤独感
70%
うつ病・不安障害の併存
80%
加齢に伴う認知機能の低下
65%

※ リスクの相対的な大きさを示すイメージ図です

最も避けるべきは「本人の同意なく強制的に片付けること」です。善意であっても、信頼関係の崩壊と症状の悪化を招きます。
TREATMENT & RECOVERY

ためこみ症の治療法と回復

ためこみ症は治療が可能な疾患です。回復には時間がかかりますが、適切な治療で生活の質を大きく改善できます。

心理療法

心理療法——治療の中心

ためこみ症の治療では、ためこみ症に特化した認知行動療法(CBT-HD)が最も効果的とされています。

ためこみ症に特化した認知行動療法(CBT-HD)最も効果的な治療法

ためこみ症の治療で最も効果が実証されている方法です。物に対する信念(「いつか使う」「捨てたら後悔する」)の検討、分類・整理スキルの練習、段階的な物の処分の実践(曝露)、新しい獲得行動の抑制を組み合わせて行います。通常16〜26回のセッションで構成され、自宅訪問を含むプログラムも効果的です。グループ療法としても実施されており、仲間と共に取り組むことで動機づけが維持しやすくなります。

動機づけ面接法変化への意欲を引き出す

ためこみ症では病識が乏しいことが多く、治療への動機づけが大きな課題です。動機づけ面接法は、本人の価値観や目標を尊重しながら、変化への意欲を引き出す技法です。「片付けなさい」と強制するのではなく、「あなたにとって大切なことは何ですか?」「今の生活で困っていることはありますか?」と共感的に対話することで、本人の中から変化の動機を引き出します。CBT-HDの前段階として実施されることが多いです。

家庭訪問による支援実践的な現場支援

治療室での面談だけでなく、実際の生活環境(自宅)を訪問して支援を行うアプローチです。治療者と一緒に物の分類・処分を実践し、スキルを現場で身につけます。自宅の状態を直接確認できるため、問題の深刻さの評価や安全対策の検討にも役立ちます。本人にとっては自宅を見られることへの抵抗がありますが、治療効果を高める重要な要素です。

薬物療法

薬物療法とその他の支援

薬物療法(SSRI等)併存症状への対応

ためこみ症に対する薬物療法は、心理療法と比べるとエビデンスは限られていますが、併存するうつ病や不安障害の治療に有効です。SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が主に使用されますが、ためこみ症単独に対する効果は中等度にとどまります。ベンラファキシン(SNRI)も使用されることがあります。心理療法との併用が推奨されています。

ピアサポート・自助グループ仲間との回復

同じためこみ症を抱える人たちの集まり(自助グループ)に参加することで、孤立感が軽減し、回復への動機づけが維持されます。「自分だけではない」と感じられること、他の人の回復体験を聞くことが、治療への取り組みを支えます。オンラインでの支援グループも増えており、外出が困難な方でも参加しやすくなっています。

注意点

治療における重要な注意点

⚠ 強制的な片付けは治療ではない

行政やご家族による強制的な片付け(本人の同意なき介入)は、一時的に環境を改善しますが、本人の苦痛を増大させ、信頼関係を損ない、高い確率でリバウンドを引き起こします。ためこみ症の治療は「物を減らすこと」ではなく「物との関わり方を変えること」が本質です。

治療には時間がかかります。数か月〜数年の長期的な取り組みが必要ですが、小さな進歩を積み重ねることで、確実に生活は改善していきます。焦らず、一歩ずつ進みましょう。
CBT-HDの流れ

認知行動療法(CBT-HD)の具体的なステップ

ためこみ症に特化した認知行動療法(CBT-HD)は、通常16〜26回のセッションで構成されます。以下は標準的な治療の進め方です。

STEP 1
アセスメントと心理教育(第1〜3回)
ためこみの歴史・パターンを整理し、ためこみ症の仕組みを学びます。「物を捨てられない理由」を脳科学・認知心理学の観点から理解することで、自己批判を減らし治療への動機づけを高めます。
STEP 2
動機づけと目標設定(第4〜5回)
「理想の生活空間はどんな状態か」「治療で何を達成したいか」を具体的にイメージします。価値観に基づいた目標(例:孫を家に招けるようになりたい)を設定することで、困難な作業を続けるための内発的動機を育てます。
STEP 3
認知再構成——物への信念を見直す(第6〜10回)
「この物がなければ後で困る」「捨てたら取り返しがつかない」という信念を検討します。「本当にその物が必要になる確率は?」「なくて困ったことは実際に何回あったか?」と問いかけながら、物の価値についての考え方を柔軟にしていきます。
STEP 4
整理・分類スキルの習得(第7〜14回)
物を「使用中」「保留(1か月後に再判断)」「寄付・売却」「廃棄」の4つに分ける練習をします。分類のルールを文章化しておくことで、その場での判断の負担を軽減します。物を手に取るたびに感じる感情を記録し、処分後の感情変化を確認することも重要なステップです。
STEP 5
曝露——段階的な手放しの実践(第12〜22回)
不安の少ない物から段階的に手放していく練習をします。「捨てた後に感じた不安が時間と共に下がる」という体験を繰り返すことで、処分することへの恐怖が少しずつ和らぎます。自宅訪問セッションを組み合わせることで治療効果が高まります。
STEP 6
新規獲得行動の制御(第8〜22回)
衝動的な購入や収集行動を抑えるための対策を練習します。「店に入る前にリストを作る」「無料のものは24時間待ってから判断する」「オンラインショッピングアプリを削除する」など、個人に合った行動ルールを作ります。
STEP 7
再発予防と維持(第23〜26回)
治療で得たスキルを日常生活に定着させる計画を立てます。リバウンドのサイン(物が増えてきた、捨てることへの不安が強まってきた)を早期に察知し、対処する方法を準備します。3〜6か月後のフォローアップセッションを設けることが推奨されています。
自宅訪問セッションの重要性実際の生活環境で治療者と共に作業するホームビジット(自宅訪問)は、診察室での面談だけでは得られない治療効果をもたらします。自宅を見られることへの抵抗感がある方も多いですが、治療者は批判ではなく支援のために来ています。
併存症

ためこみ症に多い併存症——見逃されやすいつながり

ためこみ症の約75%が何らかの精神疾患を併存しています。併存症の存在は治療方針に大きく影響するため、包括的な評価が重要です。

😔
うつ病(約50〜56%)
最も多い併存症です。物が片付かない自己嫌悪、社会的孤立、慢性的なストレスがうつを引き起こします。また、うつによる意欲・判断力の低下がためこみ行動をさらに悪化させる悪循環が生じます。うつの治療を並行して行うことが、ためこみ症の治療効果を高めます。
😰
不安障害(約40〜50%)
全般性不安障害、社交不安障害、パニック障害などが多く見られます。「捨てたらどうなるか」という将来への過度な不安はためこみ症の核心とも重なります。不安障害が重度の場合、CBT-HDの前に不安障害への対処を先行させることがあります。
ADHD(注意欠如・多動症)(約27%)
日本人のためこみ症患者の約27%にADHDが併存します。ADHDの実行機能の障害(計画・分類・優先順位付けの困難)がためこみ行動と重なります。衝動的な購入や、整理を始めても途中で別のことが気になってしまう「注意の散漫」が特に問題になります。ADHDへの薬物療法がためこみ症状の改善につながることもあります。
🔁
強迫性障害(OCD)(約20〜25%)
かつてためこみはOCDの一症状とされていましたが、現在は独立した疾患です。ただし一部の患者には両方が共存します。OCDのためこみは「汚染への恐怖」「縁起の悪さへの強迫観念」からくることが多く、ためこみ症とは異なる動機があります。治療アプローチも一部異なります。
🧩
自閉スペクトラム症(ASD)
ASDを持つ人の一部にためこみ行動が見られます。特定の物への強いこだわり、変化への抵抗感、感覚的な特性(手触りや見た目への愛着)が関連することがあります。また整理整頓のルールや手順が複雑すぎると実行できないという特性も、物の蓄積につながることがあります。
🧠
認知症(高齢者に多い)
認知症が進むと判断力・記憶力が低下し、物を管理・整理する能力が失われます。認知症に伴うためこみは、ためこみ症とは原因が異なりますが、結果として似た状況が生じます。高齢者のゴミ屋敷問題では、認知症との鑑別と適切な介護支援が重要です。
💡
併存症があっても治療は可能です複数の疾患が重なっていても、一つひとつに対応する包括的な治療計画を立てることができます。まずは精神科・心療内科で丁寧な評価を受けることが第一歩です。
DAILY LIFE

日常生活でできること

治療と並行して、日々の生活の中で少しずつ取り組めるセルフケアがあります。完璧を目指さず、小さな一歩から始めましょう。

📦
「1日1個」ルールから始める
いきなり大量に処分しようとせず、毎日1個だけ処分することから始めましょう。小さな成功体験を積み重ねることが大切です。捨てることに抵抗がある場合は、まず「寄付する」「リサイクルに出す」など、物が活かされる方法を選ぶと心理的な抵抗が和らぎます。
📸
物の写真を撮ってから手放す
思い出の品は、写真に撮ってデータとして保管してから手放す方法が有効です。「物そのもの」がなくても「記憶」は残ります。デジタルアルバムにまとめることで、物理的なスペースを確保しながら思い出を大切にできます。
🚫
新しい物の流入を止める
物を減らすのと同時に、新しい物が入ってくるのを防ぐことが重要です。「無料だから」「安いから」で取得しない。買い物リストを作り、リストにない物は買わない。チラシやダイレクトメールはすぐに処分する——これらのルールを設けましょう。
📋
分類のルールを決める
物を「必要」「不要」「保留」の3つに分ける練習をしましょう。保留は一定期間(1か月など)後に再判断します。分類の基準を事前に決めておくことで、その場での判断の負担を軽減できます。「1年以上使っていない物は手放す」などの具体的なルールが有効です。
片付け時間を短く区切る
一度に長時間の片付けはエネルギーが消耗し、挫折感につながります。15〜20分ずつ時間を区切り、タイマーを使って取り組みましょう。短い時間で達成感を感じることで、次回への意欲が保たれます。
🤝
信頼できる人と一緒に取り組む
一人では進められないことも、信頼できる人と一緒なら取り組めることがあります。ただし、相手が勝手に物を捨てたり、批判的な態度を取ったりすると逆効果です。「あなたが決めていいよ」「一緒にやろう」という姿勢が大切です。
🏆
小さな進歩を記録し、自分を褒める
ビフォー・アフターの写真を撮る、処分した物の数を記録するなど、進捗を可視化しましょう。小さな進歩でも自分を褒める習慣が、長期的な取り組みを支えます。SNSの「断捨離」コミュニティに参加するのも動機づけに有効です。
🛑
完璧を求めない
「完璧にきれいにする」ことを目標にすると、圧倒されて何も始められません。「昨日より少しだけ良い状態にする」を目標にしましょう。時にはリバウンドすることもありますが、それは自然なことです。長い目で見て、緩やかに改善していくことが大切です。
すべてを一度にやる必要はありません。まずは「今日1つだけ手放してみる」——そこから始めてみてください。
関連する用語
強迫性障害(OCD)うつ病不安障害ADHD認知行動療法セルフネグレクト
FOR FAMILY & FRIENDS

周囲の人にできること

ためこみ症のサポートは長期的な取り組みです。本人の尊厳を守りながら、安全を確保するバランスが大切です。

対応のポイント

してほしいこと・避けてほしいこと

✓ してほしいこと
ためこみ症が「怠惰」ではなく「精神疾患」であることを理解する
本人のペースを尊重し、「少しずつ」の改善を一緒に喜ぶ
本人の物を勝手に捨てない——強制的な片付けは信頼関係を壊し、症状を悪化させる
批判や説教ではなく「私はあなたの安全が心配」というI(アイ)メッセージで伝える
専門家への相談を穏やかに提案する(地域の保健所、精神保健福祉センター等)
安全上の最低限のライン(火災リスク、衛生問題)について冷静に話し合う
家族自身のストレスケアを最優先にする——長期戦であることを覚悟する
✗ 避けてほしいこと
本人の留守中に大量に物を処分する(信頼関係の崩壊と症状の悪化を招く)
「なんでこんなゴミを取っておくの」「いい加減にして」と責める・怒鳴る
「普通の人はこうしない」「恥ずかしい」と羞恥心を煽る
物をため込む理由を理解しようとせず、一方的に片付けを要求する
「もう手伝わない」「出て行ってもらう」と脅す(切迫した危険がない場合)
一人ですべてのサポートを抱え込む(家族が燃え尽きる)
安全の確保

安全上の最低ラインを確保する

ためこみ症の方の安全を確保するために、以下の最低ラインを守ることが重要です。

🔥
火災リスクの軽減
コンロ周り、暖房器具の近くの物を移動する。火災報知器の設置・動作確認。避難経路(玄関・窓)の確保。これらは安全に関わる最優先事項です。
🚶
通路の確保
玄関、廊下、階段の通路を最低限確保する。転倒リスクの軽減は特に高齢者にとって命に関わる問題です。緊急時に避難できる状態を維持することが重要です。
🚰
基本的な衛生の確保
トイレ、洗面所、キッチンの最低限の機能を維持する。腐敗した食品の除去、害虫対策など、健康に直結する衛生面の確保に取り組みましょう。
安全上の緊急事態がある場合は火災リスクや衛生状態が深刻な場合は、地域の保健所、福祉事務所、精神保健福祉センターに相談してください。専門職が介入し、本人の権利を守りながら安全を確保するプランを立ててくれます。
FAQ

ためこみ症についてよくある質問

ためこみ症に関してよく寄せられる疑問にお答えします。

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このページの情報は、医師による診断や治療に代わるものではありません。症状が気になる場合は、心療内科・精神科への受診をご検討ください。

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