いのちの電話とは?
電話番号・相談内容・使い方を完全解説
「死にたい」「もう消えてしまいたい」——そんな気持ちに押しつぶされそうなとき、声に出して話せる場所が「いのちの電話」です。1971年に日本初のボランティア電話相談として始まり、全国50センター・約5,800名の相談員が年間54万件超の相談に耳を傾けています。電話番号と使い方、相談できる内容、つながりにくいときの対処法、他の相談窓口との比較、医療への橋渡しまで、必要な情報をすべてここにまとめました。
いのちの電話とは何か
「死にたい」「もう消えてしまいたい」——そんな気持ちに押しつぶされそうなとき、24時間いつでも声に出して話せる場所がそれです。1971年に日本初のボランティア電話相談として東京でスタートし、今や全国50センター・約5,800名の相談員が年間54万件以上の相談に耳を傾けています。
命を支える電話相談
いのちの電話とは、孤独・不安・絶望・自殺念慮など、生きることのつらさを抱えた人が、いつでも無料または低コストで話せる電話相談サービスです。一般社団法人日本いのちの電話連盟が全国50センターをまとめ、訓練を受けたボランティア相談員が応じています。「名前を言わなくていい」「何を話してもいい」「ただ聴いてもらうだけでいい」という姿勢で、一人ひとりの声に向き合います。
相談内容は、自殺・死にたい気持ちに限らず、家族・職場・恋愛の悩み、孤独感、将来への不安、病気・障害、経済的困窮など、人生のあらゆる苦しさが対象です。「こんな小さなことで電話してもいいのか」と思う必要はまったくありません。あなたが「話したい」と感じたなら、それが電話するのに十分な理由です。
- 運営主体一般社団法人日本いのちの電話連盟(全国50センター加盟)
- 相談形式電話相談・インターネット(メール)相談
- 費用通話料は一部無料(フリーダイヤル)、または通話料のみ(ナビダイヤル)
- 匿名性名前・住所など個人情報の開示は不要
- 秘密保持相談内容は厳密に守秘され、外部には一切漏らさない
- 相談員全国約5,800名のボランティア(2023年現在)
- センター数全国50センター(北海道〜沖縄)
「いのちの電話」が大切にしていること
いのちの電話の基本姿勢は「傾聴(けいちょう)」です。相談員はアドバイスや答えを出すのではなく、あなたの言葉に耳を傾け、気持ちを受け止めることを第一にしています。これは「アクティブ・リスニング(積極的傾聴)」という心理学的手法に基づくもので、相手が安心して話せる環境を作りながら、気持ちを整理する手助けをします。
利用規模と実績
年間54万件超という相談件数は、1日あたり約1,500件に相当します。それほど多くの人々がいのちの電話に助けを求めていると同時に、実際には「電話がつながらなかった」という人がその何倍も存在するのが現実です。だからこそ、この記事ではいのちの電話以外の選択肢についても詳しく解説します。
いのちの電話の歴史と設立背景
いのちの電話は1953年イギリスのサマリタンズに源流を持ち、1971年に日本でも開設されました。50年以上の歴史と、現代に向き合う課題を見ていきます。
世界と日本のいのちの電話の歩み
いのちの電話の世界的な起源は1953年のイギリス・ロンドン。チャド・ヴァラー(Chad Varah)牧師が、14歳の少女が孤独の中で誰にも話せず自らの命を絶ったことに深い衝撃を受け、ロンドンのセント・スティーブン・ウォルブルック教会に電話相談「サマリタンズ(Samaritans)」を開設しました。この活動はやがてヨーロッパ全土に広まり、現在では「国際友の会(Befrienders Worldwide)」として世界60か国以上、数百都市で運営されています。「傾聴・非審判・守秘」という理念は今も世界共通の基盤です。
日本には、ドイツ人宣教師のルッツ・ヘットカンプ(Lutz Hettkamp)氏を中心とした準備を経て、1971年1月に事務所が設立され、同年10月1日深夜0時に東京で日本初のボランティア電話相談「いのちの電話」が開設されました。設立当初から「市民が市民を支える」というボランティア精神が根幹にあり、相談員はすべて一般市民のボランティアです。医師や専門家が「指導」するのではなく、同じ人間として「ともに考える」という姿勢が、いのちの電話の大きな特徴であり、今もなお変わらない理念です。
いのちの電話が生まれた社会的背景
1970年代の日本は高度経済成長期の末期で、急速な都市化と核家族化により地域コミュニティが弱体化し、孤独死や自殺が社会問題化していました。いのちの電話は、そうした「孤独」を社会的課題として捉え、「顔も名前もわからなくていい、ただ声を聞いてもらえる場所」を市民自身がつくるという画期的な試みでした。
50年以上を経た現代でも、孤独・自殺問題はむしろ深刻化しています。日本の自殺者数は一時期より減少したものの、依然として年間2万人を超えており、コロナ禍以降には女性や若年層の自殺増加も課題となっています。いのちの電話の存在意義は今も変わらず、むしろ必要性はさらに高まっているといえます。
2026年現在のいのちの電話の課題
電話番号と使い方
いのちの電話には全国共通の2種類の電話番号があり、地域ごとに直通番号もあります。電話のかけ方と相談の流れを具体的に紹介します。
2種類の全国共通電話番号
いのちの電話には、目的・時間帯によって使い分ける2種類の全国共通電話番号があります。
各センター独自の電話番号
上記の全国共通番号のほか、各都道府県・都市のいのちの電話センターにはそれぞれ独自の電話番号があります。地域のセンターに直接かけることで、つながりやすくなる場合もあります。自分が住む都道府県の「○○いのちの電話」を検索するか、日本いのちの電話連盟の公式サイト(inochinodenwa.org)で全国センター一覧を確認してください。
- 東京いのちの電話03-3264-4343(毎日16:00〜21:00、毎月1回24時間対応の日あり)
- 名古屋いのちの電話052-931-4343
- 関西いのちの電話(大阪)06-6309-4343
- 千葉いのちの電話043-227-3900
- 埼玉いのちの電話048-645-4343
- 各地域センター公式サイト(inochinodenwa.org)の「全国のいのちの電話」ページで全一覧を確認できます
携帯電話・スマートフォンからもかけられる
いのちの電話は、固定電話だけでなく、携帯電話・スマートフォンからも利用できます。フリーダイヤル(0120-783-556)は携帯電話からも通話料無料でかけられます(一部のIP電話や格安SIMでは制限がある場合があります)。ナビダイヤル(0570-783-556)は携帯電話からかけた場合、通話料がかかりますのでご注意ください。
非通知設定(番号通知なし)をされている場合、発信者番号を通知しないと接続できないケースがあります。「186」をダイヤルしてから番号を押すことで、番号通知に切り替えることができます。例:186-0120-783-556 の順にダイヤルします。
電話をかける前の準備
いのちの電話への電話は、事前に準備しなくても大丈夫です。何を話すか決まっていなくても、「とにかく誰かに話したい」という状態でかまいません。ただ、以下の点を知っておくと安心です。
- ✓名前を言う必要はない(匿名で相談できます。本名や住所を聞かれることはありません)
- ✓何を話してもいい(うまく言葉にできなくても大丈夫。「なんとなくつらい」だけでも伝えられます)
- ✓泣いていても大丈夫(言葉が出なくても、沈黙していても、相談員は電話を切りません)
- ✓通話時間の制限はない(ただし、他の利用者に配慮し、状況によっては区切りの提案をされる場合もあります)
- ✓録音されることはない(相談内容が録音・記録されて外部に出ることはありません)
相談の流れ(一般的な例)
電話をかけてから相談が終わるまでの一般的な流れを紹介します。
初めての人が感じやすい不安
初めて電話する際、「何を言えばいいかわからない」「うまく話せるか不安」「相談員に迷惑をかけないか」と感じることは珍しくありません。それぞれの不安への回答を示します。
- 「何を話せばいいかわからない」「どこから話せばいいかわからないのですが……」とそのまま伝えればOK。相談員が質問しながら話を引き出してくれます。
- 「声を出して話せるか不安」泣き声でも、しゃがれた声でも、細い声でも構いません。相談員は辛抱強く待ってくれます。
- 「電話を切られるのでは」急に電話を切ることはありません。もし通話を終わりにするときは事前に伝えてもらえます。
- 「迷惑ではないか」相談員はあなたの電話を待っています。遠慮せずかけてください。
- 「泣いてばかりで言葉が出ない」それでも大丈夫です。相談員はしばらく沈黙で一緒にいることもできます。
相談できる内容と対象者
いのちの電話に電話していい内容は「自殺念慮のある人だけ」ではありません。生きていることのつらさ、悩み、孤独感など、幅広いテーマで誰でも相談できます。
相談できる内容
いのちの電話は以下の例にとどまらず、生きるつらさに関わるあらゆる話題を受け止めます。
対象者
いのちの電話は、年齢・性別・国籍を問わず、つらい思いを抱えているすべての人が対象です。
- 年齢特に制限なし。子ども・中高生・大学生・成人・高齢者、すべて利用可
- 性別特に制限なし
- 状態「深刻じゃないかもしれない」と思っていても問題なし。「話したい」という気持ちがあれば十分
- 場所全国どこからでもかけられる(全国共通ダイヤルあり)
相談を受け付けていないケース
一方で、いのちの電話が対応できない・対応しないケースもあります。
- 性的・わいせつな内容の電話いのちの電話は感情的なサポートを目的としており、性的な内容の通話は対象外です。
- 迷惑電話・ハラスメント的電話相談員を困らせることを目的とした電話は対応しかねる場合があります。
- 緊急の医療・警察対応が必要な場合今まさに自分や他者が傷つけられている状況では、110番(警察)または119番(救急)に連絡してください。
- 具体的な法律・医療相談弁護士による法的アドバイスや医師の診断は行いません。適切な専門機関をご案内します。
ボランティア相談員の仕組みと研修
いのちの電話の相談員はすべて市民ボランティアです。約1〜2年の養成研修を経て認定され、認定後も継続的な研修とスーパービジョンが課されています。
相談員はすべて一般市民ボランティア
いのちの電話の相談員は、医師・看護師・カウンセラーなどの医療・福祉専門家ではなく、一般市民のボランティアです。これはいのちの電話の創設理念「市民が市民を支える」を体現するものです。
全国約5,800名の相談員は、主婦、会社員、教員、退職者など、さまざまな職業・年代の人々です。専門家ではないからこそ、同じ生活者として等身大に話を聴ける面もあります。ただし、相談員として認定される前には長期間にわたる厳しい訓練が行われており、決して素人が無手勝流で対応しているわけではありません。
相談員になるための研修過程
いのちの電話の相談員になるには、所定の手続きを経て約1〜2年間の養成研修を修了し、認定を受ける必要があります。研修費用(数万円)は自己負担です。これは相談員が本気でこの活動にコミットしている証拠ともいえます。
相談員が守る義務
いのちの電話の相談員は以下の義務を負っています。
- 秘密保持相談内容を外部に漏らすことは一切禁止されています。
- 中立性特定の宗教・政治・団体に勧誘することは禁じられています。キリスト教の精神で設立された組織ですが、宗教的勧誘は行いません。
- 継続研修の参加認定後も定期的な研修参加が義務付けられています。
- 自己の限界の認識対応できない案件は他の機関に引き継ぐ判断が求められます。
なぜボランティア相談員が有効なのか
「専門家でないボランティアが本当に役に立つのか?」と疑問に思う方もいるかもしれません。しかし、傾聴の効果は必ずしも資格の有無と比例するものではありません。
つながりにくい場合の対処法と原因
いのちの電話は需要が供給を大きく上回っており、話し中になることがよくあります。原因と、つながりやすくする実践的な方法、つながらないときの代替手段を紹介します。
なぜつながりにくいのか
いのちの電話への電話がつながりにくいことは、残念ながら現実として多くの人が経験しています。これはいのちの電話の体制的な限界によるものです。
- 電話需要が供給をはるかに超えているかかってくる電話は、受けられる相談の10倍以上ともいわれています。1本でもつながれば十数本は話し中になる計算です。
- 1件の相談が長時間にわたることがある1本の電話が1〜2時間に及ぶこともあり、その間は他の電話を受けられません。
- 相談員のボランティア不足相談員の高齢化・人数減少が全国的な課題。かつて7,000名以上いた相談員が5,800名まで減少しています。
- 夜間・深夜は特に混雑メンタルヘルスの危機は夜間に高まりやすく、特に21時〜深夜にかけて電話が集中します。
- 緊急度の高い相談が優先されることも今まさに自殺を試みようとしている相談者への対応が長時間続くことがあります。
つながりやすくするための実践的な方法
つながらないときのその他の選択肢
- よりそいホットライン(0120-279-338)24時間365日対応・無料。いのちの電話とは別の組織が運営しており、つながりやすい場合があります。
- こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)都道府県・政令市の公的相談機関につながります。
- いのちの電話のインターネット相談電話ではなくメール形式で相談できます(後述)。
- 精神保健福祉センター各都道府県に設置されている公的機関。無料で相談でき、専門職が対応します。
- よりそいホットラインのSNS相談チャット・SNSで相談できるサービスも提供されています。
- ハートライン(各地域の自殺防止相談電話)地域によって独自の自殺防止相談電話があります。
インターネット相談・メール相談の使い方
いのちの電話では、電話以外にインターネット(メール)相談も提供しています。「声を出して話すのが難しい」「夜中に相談したいが電話しにくい」「文章でじっくり気持ちを整理したい」「聴覚障害があって電話が難しい」という方に向いています。
- URLnetsoudan.inochinodenwa.org(日本いのちの電話連盟の公式インターネット相談)
- 費用無料
- 匿名性名前・住所などの個人情報は不要
- 相談回数の制限1期間(6ヶ月)につき3回の制限があります
- 返信までの時間即時返信ではなく、数日程度かかる場合があります
利用手順は以下のとおりです。
自殺予防いのちの電話(自殺に特化したサポート)
いのちの電話の中でも、特に自殺予防を目的とした「自殺予防いのちの電話」があります。フリーダイヤル「0120-783-556」の対応時間(毎日16:00〜21:00、毎月10日は8:00〜翌8:00)がこれに相当し、自殺をも考えておられるような深刻な危機状態の方に対して、特に重点的なサポートを行っています。
「死にたい」「もう終わりにしたい」という気持ちを抱えているとき、この時間帯に無料でかけられることは非常に重要です。夕方から夜にかけてつらさが増すという方は、この時間帯を積極的に活用してください。「死にたいと言ったら連絡されるのでは」という不安から電話をためらう方もいますが、基本的には守秘義務が守られます。
他の相談窓口との比較
日本にはいのちの電話以外にも複数の相談窓口があります。それぞれの特徴を理解し、自分のニーズに合った窓口を選びましょう。
主要な相談窓口の特徴比較
日本には、いのちの電話以外にも複数の相談窓口があります。自分のニーズに合った窓口を選ぶことが大切です。
よりそいホットラインとの違い
よりそいホットライン(0120-279-338)は、一般社団法人社会的包摂サポートセンターが運営する、24時間365日対応の無料相談窓口です。いのちの電話との主な違いは以下のとおりです。
- 対応時間よりそいは24時間365日対応(いのちの電話フリーダイヤルは毎日16〜21時のみ)。深夜の危機にも対応できる。
- 専門対応よりそいはDV・性暴力・外国語・LGBTQなど、専門分野に応じた対応窓口へのガイダンスがある(電話でオプション選択)。
- SNS相談よりそいはSNSやチャットでも相談可能。テキストコミュニケーションが得意な若年層に向いている。
- 運営主体よりそいは非営利組織が運営し、国(厚生労働省)の委託を受けている。いのちの電話は独立した市民ボランティア団体。
- 相談員いのちの電話はすべてボランティア。よりそいは一部に有資格専門職が含まれる場合がある。
- つながりやすさよりそいは24時間対応かつ相談員数が多く、いのちの電話より比較的つながりやすい傾向がある。
こころの健康相談統一ダイヤルとの違い
こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)は、電話した人の所在地の都道府県・政令市が実施している公的相談機関(精神保健福祉センター等)に接続されます。
- 専門性が高い公認心理師・精神保健福祉士・保健師などの専門職が対応。
- 医療・支援機関への紹介地域の医療機関や支援機関への具体的な紹介を行えます。
- 対応時間は都道府県による24時間ではなく、平日日中を中心とした対応が多い。
- 通話料がかかるナビダイヤルのため通話料は有料。
緊急時にすぐ使える相談窓口
- いのちの電話(フリーダイヤル)0120-783-556|毎日16:00〜21:00/毎月10日:8:00〜翌8:00|無料
- いのちの電話(ナビダイヤル)0570-783-556|毎日10:00〜22:00|通話料のみ
- よりそいホットライン0120-279-338|24時間365日|無料
- こころの健康相談統一ダイヤル0570-064-556|都道府県による(平日日中中心)|通話料のみ
- 子どもの人権110番0120-007-110|平日8:30〜17:15|無料
- 女性の人権ホットライン0570-070-810|平日8:30〜17:15|通話料のみ
- DV相談ナビ#8008|24時間|通話料のみ
- 救急(今すぐ命の危険がある場合)119|24時間|無料
- 警察(今すぐ身の危険がある場合)110|24時間|無料
精神保健福祉センター(都道府県別)
各都道府県・政令指定都市には精神保健福祉センターが設置されており、精神的な悩みについて無料で専門的に相談できます。公認心理師・精神保健福祉士・保健師などが対応し、必要に応じて地域の医療機関や支援サービスを紹介してもらえます。「精神科に行く前にまず話したい」という方にも適した窓口です。
- 東京都東京都立精神保健福祉センター(03-3835-4391)
- 大阪府大阪府こころの健康総合センター(06-6691-2732)
- 愛知県愛知県精神保健福祉センター(052-962-5251)
- 神奈川県神奈川県精神保健福祉センター(045-821-8822)
- 全国お住まいの都道府県名+「精神保健福祉センター」で検索してください
メンタルヘルス治療との違いと活用
いのちの電話と医療・カウンセリングは目的が異なります。利用上の注意点と、医療への橋渡し、自立支援医療制度までを整理します。
いのちの電話を利用するときの注意点
長期的・継続的なサポートが必要な場合
同じ悩みを繰り返し抱えている場合や、うつ病・不安障害などが疑われる場合は、以下の機関への相談を検討してください。
- 精神科・心療内科うつ病・不安障害・PTSDなどを医師が診断・治療。
- 公認心理師・臨床心理士継続的なカウンセリング・心理療法。
- 精神保健福祉センター専門職による無料相談・支援機関への橋渡し。
- ストレスケア外来一部の病院にある、精神科の外来よりもカジュアルに相談できる窓口。
「話を聴いてもらう」と「治療」の違い
いのちの電話は「聴くこと」に特化したサービスであり、医療的な治療・診断・継続的な心理支援とは根本的に異なります。それぞれが担う役割を理解し、状況に応じて使い分けることが大切です。
いのちの電話を「入口」として使う
「いのちの電話に電話してみたら、自分が思っていたより深刻だとわかった」「相談員から専門機関を勧めてもらった」というケースは少なくありません。いのちの電話は、メンタルヘルス支援の「入口」として機能することも多く、電話の中で精神保健福祉センターや医療機関への橋渡しを行うこともあります。
電話相談で気持ちが少し楽になったとしても、同じ苦しさが繰り返されるようであれば、ぜひ精神科・心療内科への受診を検討してください。早期に受診することで、より早く回復への道が開けます。
受診を検討すべきサイン
以下のような状態が続いている場合、電話相談と並行して精神科・心療内科への受診を強くお勧めします。
- ✓2週間以上、気持ちが沈んだ状態が続いている
- ✓眠れない・食欲がないなど、身体にも症状が出ている
- ✓死にたい・消えたいという気持ちが繰り返し浮かぶ
- ✓仕事・学校・日常生活に支障が出ている
- ✓自傷行為(リストカット等)をしている、または衝動がある
- ✓過去のつらい体験がフラッシュバックとして繰り返し蘇る
- ✓アルコールや薬物に依存しやすくなっている
自立支援医療制度(精神通院医療)について
精神科・心療内科への通院に対して「医療費が高そうで不安」という方も多いです。しかし、自立支援医療制度(精神通院医療)を利用すれば、医療費の自己負担が原則1割に軽減されます。通常の医療費3割負担から大幅に軽減されるため、経済的な心配がある方でも継続して通院しやすくなります。
- 対象疾患うつ病、統合失調症、不安障害、PTSD、双極性障害、発達障害など、継続的な精神科通院が必要な疾患
- 軽減内容通常3割の医療費自己負担が1割に(さらに所得に応じた月額上限額あり)
- 申請先お住まいの市区町村の福祉担当窓口
- 必要なもの医師の診断書・意見書、健康保険証、マイナンバーなど
- 対象範囲精神科・心療内科の外来通院(入院は対象外)、処方箋による薬代、デイケアなど
- 更新1年ごとに更新手続きが必要
自殺念慮がある方へ——危機を乗り越えるための知識
「死にたい」という気持ちは時間とともに変化します。危機の波を乗り越えるための具体的な行動と、大切な人を支えるためのポイントを紹介します。
「死にたい」という気持ちは変化する
「死にたい」という気持ちが強くなっているとき、「このまま永遠につらいままだ」と感じることがあります。しかし、メンタルヘルスの研究は繰り返し示しています——強い自殺念慮は、多くの場合、時間とともに変化します。危機の「波」が最も高いときに何もしないでいること、あるいは誰かに話すことで、その波が引くことがあります。
危機のときに自分を守る行動リスト
死にたい気持ちが強くなったとき、すぐにできる行動を知っておくことが助けになります。
- ✓電話する:いのちの電話(0120-783-556)、よりそいホットライン(0120-279-338)に電話する
- ✓誰かそばにいる人に声をかける:家族・友人・隣人など、誰でもいいのでそばにいてもらう
- ✓場所を変える:危険なものから物理的に離れる。家の外に出て、人がいる場所(コンビニ・病院・駅など)に行く
- ✓危険なものを遠ざける:致死的な手段(薬・刃物・高い場所など)から距離を置く。家族に預けるか、手の届かない場所に移す
- ✓119番・110番:今すぐ止まれない場合は迷わず救急・警察に連絡する
- ✓「もう少しだけ待つ」:「1時間だけ待ってみよう」という小さな目標を立てる。その1時間が、危機の波が引くきっかけになることがあります
大切な人が死にたいと言っているとき
家族や友人が「死にたい」と言っているとき、どう対応すればいいか戸惑う方が多いです。
- ✓まず話を聴く(「なぜそんなことを考えるの」「気持ちはわかるけど」と否定せず、「そんなにつらかったんだね」と受け止める)
- ✓「死にたいの?」と聞いても大丈夫(自殺の話題を口にするとかえって自殺が増えるという誤解がありますが、研究では「率直に聞くこと」は自殺リスクを下げないとしています。むしろ聞いてもらえることで安心することが多いです)
- ✓一人にしない(できる限り一人にしない。そばにいることが保護因子になります)
- ✓専門機関へのつなぎ(「一緒に相談窓口に電話しよう」「精神科に行ってみようか」と提案する)
- ✓支援者自身の限界を認める(一人で抱え込まず、自分も誰かに相談する)
よくある質問
A. はい、完全に匿名で相談できます。名前・住所・年齢などの個人情報を開示する必要はまったくありません。相談内容は厳格に守秘され、外部に漏れることはありません。「本名を知られるのが怖い」という心配なく、安心してかけてください。
A. もちろんです。いのちの電話は自殺念慮がある人だけのためではありません。漠然としたつらさ、孤独感、将来への不安、人間関係の悩みなど、あらゆる苦しさが相談の対象です。「こんな悩みで電話していいのか」という遠慮は無用です。あなたが「話したい」と感じたとき、それが電話する十分な理由です。
A. いのちの電話は需要が多く、話し中になることがよくあります。その場合は、①毎月10日の24時間フリーダイヤルを活用する、②地域のセンターに直接かける、③よりそいホットライン(0120-279-338)を試す、④インターネット相談を利用する、などを試してみてください。今すぐ命の危機がある場合は119番または110番にかけてください。
A. いいえ、相談員はすべて一般市民のボランティアです。医師・看護師・カウンセラーなどの有資格専門家ではありません。ただし、認定を受ける前に約1〜2年間の訓練・研修を受けており、傾聴・危機介入などについて十分な訓練を積んでいます。医療的な診断・治療・薬の処方などは行えません。
A. 通話記録が外部(警察・家族など)に提供されることは原則ありません。いのちの電話は厳格な守秘義務を守っています。ただし、未成年者が重篤な危機状態にある場合など、例外的に緊急対応が必要なケースでは、生命保護を優先する判断が行われることがあります。通常の相談では、個人情報が外部に出ることはありません。
A. はい、何度でもかけて構いません。ただし、毎回別の相談員が対応するため、前回の話を続けたいときは最初に「前に話したことの続きなのですが……」と伝えると、相談員が状況を把握しやすくなります。同じ悩みが繰り返されるようであれば、継続的なサポートが受けられる専門機関(精神保健福祉センター、精神科・心療内科、カウンセリング機関など)への相談も合わせてご検討ください。
A. 各地域のいのちの電話センターで随時募集しています。応募後、書類選考・面接・約1〜2年間の養成研修(研修費は自己負担)を経て、認定試験に合格することで相談員として活動できます。認定後は月3回の電話当番、月1回の継続研修、年1回のスーパービジョンが求められます。詳細は日本いのちの電話連盟の公式サイト(inochinodenwa.org)または地元のセンターにお問い合わせください。
A. いのちの電話には専用アプリはありません。電話(0120-783-556または0570-783-556)またはインターネット相談(netsoudan.inochinodenwa.org)でご利用ください。スマートフォンのアプリやSNSでのチャット相談を希望する場合は、よりそいホットラインや厚生労働省の「まもろうよ こころ」サイトで紹介されているSNS相談窓口をご活用ください。
A. いのちの電話は一般社団法人日本いのちの電話連盟が運営する民間の非営利活動団体です。政府からの補助金も一部受けていますが、基本的にはボランティアの寄付・研修費によって運営されています。法律に基づく公的機関(精神保健福祉センターなど)とは異なり、民間の自主的な市民活動として位置付けられています。
一人で抱え込まないで。
あなたの声を聴かせてください。
つらい気持ちを誰かに話したいとき、ここにも場所があります。cocotomoのチャット相談は無料で、今すぐ使えます。
このページの情報は、医師による診断や治療に代わるものではありません。症状が気になる場合は、心療内科・精神科への受診をご検討ください。
