パートナーへの暴力(IPV)とは?
DVとの違い・4類型・サイクル理論・影響・相談先・保護命令まで解説
IPV(Intimate Partner Violence)は、配偶者・事実婚・恋人・元交際相手など親密な関係にある相手から受ける身体的・精神的・性的・経済的暴力の総称です。定義、DVとの関係、4類型、周囲が気づけるサイン、Lenore Walkerのサイクル理論、背景・原因、心身・子ども・生活への影響、安全に離れるためのステップ、2024年改正で拡大された保護命令、回復のプロセス、主要な相談窓口まで、必要な情報をすべてここにまとめました。
IPV(パートナーへの暴力)とは
IPV(Intimate Partner Violence)は、配偶者・事実婚パートナー・恋人・元交際相手など、親密な関係にある相手から受ける身体的・心理的・性的・経済的暴力の総称です。DV防止法の対象となる『配偶者等からの暴力』とほぼ同義で、世界保健機関(WHO)も重大な公衆衛生・人権問題と位置づけています。
IPVとDV、呼び方の違いと共通点
IPV(Intimate Partner Violence)は国際的な学術・医療分野での標準用語で、WHO・米国CDC・世界各国のガイドラインで採用されています。日本で一般に使われる『DV(Domestic Violence)』は家庭内暴力全般を指す広い語で、IPVはその中核部分にあたる『親密なパートナー間の暴力』です。法律上、日本のDV防止法(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律)の対象は『配偶者(事実婚含む)および生活の本拠を共にする交際相手』であり、これがIPVに最も近い範囲です。
IPVの最新統計——『身近にある問題』
内閣府男女共同参画局の発表によると、令和6年度の配偶者暴力相談支援センターへの相談件数は約12.8万件で、前年度から微増。配偶者・交際相手からの暴力経験率は、女性で約22.5%(約4人に1人)、男性で約10.5%(約10人に1人)とされており、性別を問わずIPVが広く存在していることが示されています。警察が受理したDV相談も9,000件超に達しています。
DV防止法の成立から現在まで
日本のIPV対策は、2001年のDV防止法成立によって本格的に始まりました。それまでは『家庭内の問題』として公的介入が困難でしたが、同法により配偶者暴力相談支援センターの設置、保護命令制度、一時保護、自立支援などが整備されました。
- 2001年DV防止法成立。配偶者暴力相談支援センター設置、保護命令制度の新設
- 2004年改正。元配偶者・面前DVを対象に追加。基本方針を策定
- 2007年市町村基本計画の策定を努力義務化。電話等禁止命令の新設
- 2013年『生活の本拠を共にする交際相手』を対象に追加(事実上のデートDVへの拡大)
- 2019年児童虐待との連携強化、被害者の自立支援を明記
- 2024年改正法施行。接近禁止命令の対象を『自由・名誉・生活平穏を害する脅迫』にまで拡大、命令期間も6ヶ月から1年に延長
国際的にも、WHOは2013年の報告書で『パートナーからの暴力は女性の暴力被害の最大の類型』と位置づけ、加盟国に対しIPVの予防・対応体制の整備を求めています。日本のDV防止法はこうした国際潮流と連動して改正を重ねてきましたが、加害者プログラムの公的実施、シェルター運営の安定財源、男性被害者の支援、LGBTQ+カップルへの対応など、残された課題は少なくありません。支援制度を『使いこなす』ためにも、まずは『#8008』『DV相談+』という最初の扉を知っておくことが重要です。
IPVの4類型
IPVは身体的・精神的・性的・経済的の4類型に分類されます。実際には複数が組み合わさって起き、単独で起きることはまれです。『殴られていないから違う』とは限りません。
4つの暴力——身体・精神・性・経済
統計上、相談件数の多くは『身体的+精神的』の複合型です。経済的暴力は専業の配偶者に、性的暴力は年齢・性別を問わず起こります。
具体例で見る4つの暴力
タブを切り替えて、各類型の具体例を確認してください。どれか一つでも当てはまればIPVに該当します。
殴る・蹴る・刃物で脅す・首を絞める・物を投げつける・髪を引っ張るなど、身体に直接危害を加える行為。殺害・重傷に至る最も可視化された暴力です。警察が介入する典型的なケースでもあります。『一度だけ』であっても身体的暴力は身体的暴力であり、エスカレートする可能性があります。
暴言・侮辱・脅迫・無視・人前での恥辱・外出の制限・友人関係の遮断・宗教や趣味の支配・『お前は何もできない』といった繰り返しの否定など、目に見えない形で心と尊厳を壊していく暴力。外からはほとんど見えないため、長期間にわたって被害が続きやすい類型です。
同意のない性行為・避妊に協力しない・性行為を取引材料にする・妊娠を強要する・望まない中絶を強要する・性的な画像を撮影・流布するなど。『夫婦だから同意は必要ない』という誤解がありますが、2023年の刑法改正により婚姻関係にあっても同意のない性行為は不同意性交等罪に該当します。
生活費を渡さない・働くことを禁じる・配偶者の収入を取り上げる・借金を肩代わりさせる・クレジットカードの利用を監視・制限するなど、経済的に支配し自立を妨げる行為。被害者が逃げられない最大の要因のひとつであり、特に専業主婦・主夫に多い類型です。
- 拳・平手で殴る
- 首を絞める・口をふさぐ
- 刃物や道具で脅す
- 階段から突き落とす
- 妊娠中でも殴る・蹴る
- 寝ている間に襲う
- ペットを傷つけて威嚇する
- 『お前はダメだ』と人格を否定する
- 大声で怒鳴る・物を壊して威嚇する
- 友人・家族との接触を禁じる
- 外出・連絡の自由を制限する
- 過去の失敗を繰り返し責める
- 子どもを使って脅す
- 離婚・別居をちらつかせて支配する
- 嫌がっても性行為を強要する
- 避妊に協力しない
- 妊娠を強要する・中絶を強要する
- 性的な画像を撮影・流布する
- 性的な屈辱を与える
- 生理中でも性行為を強要する
- 生活費を十分に渡さない
- 配偶者に働くことを禁じる
- 収入・通帳・カードを取り上げる
- 大きな買い物の全決定権を握る
- 借金の保証人にさせる
- 離婚時の財産開示を拒む
心理的IPVの中でも近年注目されているのが『ガスライティング』と呼ばれる支配手法です。『そんなこと言っていない』『お前の記憶違いだ』『お前は頭がおかしい』——と繰り返し言われることで、被害者は自分の認識・記憶・判断に自信を失い、加害者の言葉を『正しい』と受け入れるようになります。ガスライティングは暴力の物理的痕跡を残さないため、外部から発見されにくく、被害者自身も『自分が悪いのかもしれない』と思い込みやすいのが特徴です。『話せば話すほど自分がおかしいと感じる関係』は、危険信号です。
経済的暴力についても、日本ではまだ『モラハラの一種』としか捉えられていない側面があります。しかし、通帳・カード・収入の完全管理、働くことの禁止、離婚時の財産開示拒否、借金の押し付けなどは、明確に経済的な支配・暴力であり、国際的にはIPVの独立した類型として位置づけられています。特に専業主婦(夫)、高齢期の配偶者、在留資格を配偶者に依存する外国人パートナーは経済的暴力の影響を強く受けやすく、『逃げたくても金がない』という状況を生み出します。離婚時には財産分与・年金分割・婚姻費用分担請求などの法的手段があることを知っておいてください。
周囲が気づける、被害のサイン
IPV被害者自身は『私が悪いのかも』と思い込み、自分では声を上げにくくなっています。だからこそ、家族・友人・同僚など周囲の『気づき』が重要な入口になります。
身近な人に現れる6つのサイン
以下のサインが複数・長期にわたって現れていたら、IPV被害の可能性を考慮してください。1つだけでは判断せず、全体として『普段と違う』様子を観察します。
被害者自身にも気づきのチェックポイントがあります。『パートナーの機嫌を過剰にうかがってしまう』『自分の発言・服装・交友関係を常に事前に検閲してしまう』『友人や家族に本当のことを言えない』『自分の時間・お金・判断の自由がほとんどない』『パートナーが怖いのに別れられない』——このような状態は、あなたが悪いのではなく、IPVの影響下に置かれている可能性があります。『私は大げさかもしれない』という感覚そのものが、長期的な支配の結果であることがよくあります。
暴力のサイクル——なぜ逃げられないのか
IPVの関係には、緊張期→爆発期→ハネムーン期→再緊張期の4フェーズのサイクルがあります。『いい人なのに時々暴力をふるう』という矛盾は、このサイクル理論で説明できます。
Lenore Walkerの暴力サイクル理論
心理学者Lenore Walkerの提唱した『暴力のサイクル理論』は、IPVの典型的なパターンを説明する古典的モデルです。サイクルが繰り返されるほど、ハネムーン期は短くなり、爆発期は激しくなる傾向があります。
背景と原因——なぜIPVは起きるのか
IPVは『特別な悪い人』の問題ではなく、加害者の心理、関係性の力学、社会・文化的な背景が複雑に絡み合って生まれます。構造を理解することで、予防と支援の道筋が見えてきます。
加害者心理・関係性・社会構造
タブを切り替えて、3つの領域を確認してください。どれか1つだけで起きるのではなく、重なることで強化されていきます。
加害者の多くは低い自己肯定感や幼少期の暴力体験、怒り・嫉妬の制御困難、支配欲、男尊女卑的な価値観などを抱えています。『愛している』気持ちと『支配したい』欲求が混在するのが特徴。職場ではむしろ温厚・優秀と評価される人も多く、『家庭内だけの別人格』が加害者像の典型です。
経済的な依存、子どもの存在、住居の共有、親族との関係——こうした関係性の要素が『逃げられない』構造を作ります。『夫婦なんだから話し合えば解決する』という発想は、対等ではない関係性には当てはまりません。
『家のことは家で解決すべき』『妻は夫に従うべき』『離婚は恥』といった伝統的価値観、相談窓口の認知不足、DVへの理解の遅れなど、社会全体の構造も背景にあります。先進国の中でも日本はジェンダー平等指数が低く、DVの可視化・支援体制の強化は途上です。
- 幼少期のDV目撃・被虐待経験
- 低い自己肯定感
- 怒り・嫉妬の制御困難
- 男尊女卑・家父長制的な価値観
- 飲酒問題・薬物依存
- 精神疾患(反社会性・自己愛性パーソナリティ障害など)
- 職場ストレスの家庭持ち込み
- 経済的依存・収入格差
- 子どもの養育・親権問題
- 住居・住宅ローンの共有
- 親族との関係・世間体
- 在留資格などの法的地位
- 介護・病気の相互依存
- 『家のことは家で』という文化
- 離婚へのスティグマ
- ジェンダー格差・賃金格差
- 相談窓口の認知不足
- 警察のDV対応の地域差
- シェルター・社会資源の不足
『なぜ逃げないのか』という問いは、IPVの構造を理解すれば自然に変わっていきます。被害者が逃げられない理由には、恐怖(逃げた後の報復)、経済(生活の基盤が加害者依存)、子ども(親権・養育・面会の問題)、愛情(サイクル理論によるハネムーン期への期待)、孤立(支援者とのつながりが切られている)、自己否定(『自分なんて』という思い込み)、社会的スティグマ(『離婚は恥』という周囲の目)、法的知識の不足(保護命令・支援制度を知らない)など、複数が重なり合っています。つまり『逃げないのはおかしい』のではなく、『逃げられない状況』が作られているのです。支援とは、この構造の一つひとつに丁寧に対応し、『逃げられる道』を一緒に組み立てていく仕事です。
加害者プログラム(バタラー介入プログラム)は、欧米では1980年代から実施されており、Duluthモデル・認知行動療法モデル・ナラティブモデルなど複数のアプローチがあります。エビデンス上、一定の効果はあるものの、『完治』を保証するものではなく、被害者の安全確保が前提であることに変わりはありません。日本では一部の民間団体・研究機関がプログラムを提供していますが、公的な実施体制はまだ整っていません。加害者側の責任を問い、行動変化を促す取り組みは、IPV予防のもう一つの重要な柱です。
IPVが心身・子ども・生活に与える影響
IPVの影響は『今の苦しみ』にとどまりません。脳と身体、精神、子どもの発達、仕事、生命まで広範囲に及びます。同時に、離れた後に適切な支援を受ければ、回復も可能です。
心・身体・家族・生命への広がり
WHOの調査によると、IPV被害者は非被害者に比べて、うつ病リスクが約2倍、自殺企図リスクが約3倍、アルコール乱用リスクが約2倍、早産・低出生体重児リスクが約1.5倍になるとされています。
離れたあとの回復——4つのフェーズ
IPVから離れたあと、被害者は『安全の確保』→『感情の揺り戻し』→『自己の再構築』→『統合と前進』という4つのフェーズを辿ることが多いとされています。『離れればすぐに元気になれる』わけではなく、回復には時間が必要です。途中で加害者を懐かしく思うような揺り戻しがあっても、それは回復のプロセスの一部であり、あなたの決断が間違っていたわけではありません。
回復を支える大きな要素は、①安全な環境、②否定せずに話を聴いてくれる存在、③専門的なトラウマケア、④経済的自立、⑤同じ経験をした仲間とのつながり(ピアサポート)の5つです。カウンセリング、EMDR、トラウマ焦点型認知行動療法などのエビデンスある治療法も選択肢に入ります。回復のスピードは人それぞれです。数ヶ月で日常を取り戻す人もいれば、数年かけてゆっくりと自分を取り戻す人もいます。『早く元気にならなきゃ』と焦る必要はまったくありません。
安全に離れるためのステップと保護命令
IPVから安全に離れるためには、準備と支援が不可欠です。衝動的に家を出るのではなく、計画を立て、専門機関と連携し、法的保護も視野に入れてください。
離れるまでの5つのステップ
以下はあくまで一般的な流れです。個別の状況により順序や内容は変わるため、必ず配偶者暴力相談支援センターなどの専門家と一緒に計画してください。
保護命令制度——裁判所による接近禁止
保護命令は、地方裁判所が加害者に対して発する命令で、DV防止法に基づきます。主な内容は次のとおりです。
- 接近禁止命令加害者に、被害者の身辺につきまとう・住居や勤務先近くで徘徊することを禁止(2024年改正により6ヶ月→1年)
- 退去命令共同生活していた住居からの退去を命令(2ヶ月間)
- 電話等禁止命令電話・メール・LINE・SNS・GPS追跡などの連絡や監視を禁止
- 子への接近禁止命令同居の子どもへの接近も禁止
- 親族等への接近禁止命令被害者の親族・関係者への接近も禁止
違反した場合は1年以下の懲役または100万円以下の罰金。申立ては地方裁判所に行い、診断書や相談記録が証拠として重要になります。手続きは配偶者暴力相談支援センター・法テラス・弁護士が支援します。
実際の申立ては、①配偶者暴力相談支援センター・警察・法テラス・弁護士のいずれかに相談し、②陳述書(被害の経緯)を作成し、③地方裁判所に申立書を提出し、④裁判所の審理(原則として1週間以内に審尋)を経て、⑤命令発令という流れです。裁判所の手数料は1,000円程度と低額で、法テラスを利用すれば弁護士費用の立替制度もあります。発令率は約8〜9割と高く、要件を満たしていれば命令が出される可能性は十分にあります。『裁判所に行くのは敷居が高い』と感じるかもしれませんが、実際は支援機関が同行・代理してくれるケースも多く、一人で手続きを進める必要はありません。
目的別に選べる6つの窓口
電話・SNS・メール・対面など、利用しやすい手段を選んでください。複数の窓口を並行利用しても構いません。
▸ #8008・全国共通
▸ 0120-279-889・多言語
▸ 公的総合窓口
▸ 緊急・非緊急両対応
▸ 0570-078374
▸ 0120-279-338
経済的自立の支援として、母子家庭等就業・自立支援センター、生活保護、児童扶養手当、住宅確保給付金、母子父子寡婦福祉資金貸付、ハローワークのマザーズコーナーなどの制度があります。これらはDV被害者も優先的に利用できるケースが多く、配偶者暴力相談支援センターと連携すれば、子どもの転校・保育園の優先入園・医療費助成までワンストップで案内してもらえます。『制度が多すぎて分からない』という状態こそ、相談員の出番です。
周囲の人ができること
家族・友人・同僚がIPVに気づいたとき、どう接すればよいか——その一言が、被害者を救う入口になることがあります。『何もできない』と感じる必要はありません。
してよいこと・してはいけないこと
よかれと思った言葉が、かえって追い詰めることがあります。以下を参考にしてください。
IPV被害者を支える側も、無理をしすぎないことが重要です。話を聴くことで自分自身が動揺したり、眠れなくなったり、加害者への怒りが湧いてきたりすることは自然な反応です。『支援者の二次受傷』と呼ばれるこの状態は、長期的に関わる上で誰にでも起こりうるものであり、必要に応じてあなた自身もカウンセリングやピアサポートを利用してください。『支える人が倒れない仕組み』こそ、持続的な支援を可能にします。被害者に寄り添う道は短距離走ではなく、時には何年もかかる長距離走であることを、心に留めておいてください。
よくある質問
A. DV(Domestic Violence)は『家庭内暴力』の意味で、広義には親子間・きょうだい間の暴力も含みます。IPV(Intimate Partner Violence)は『親密なパートナー間の暴力』の意味で、夫婦・事実婚・恋人・元交際相手などを対象とします。国際的にはIPVが学術用語として定着しつつあり、WHOや米国CDCはIPVを公式用語として使っています。日本の法律ではDV防止法が『配偶者(事実婚含む)・生活の本拠を共にする恋人』を対象としており、IPVの一部に相当します。
A. はい、一度でも身体的暴力はIPVに該当します。『カッとなっただけ』と本人・加害者が軽視するケースは多いですが、一度起きた身体的暴力は統計的にほぼ確実に再発します。『次はない』と思っても、数週間〜数ヶ月後に再び起きることがほとんどです。早期に専門機関に相談しておくことが、エスカレートを防ぐ唯一の方法です。
A. 子どもがいることは、むしろ支援につながる理由になります。子どもの前でのDV(面前DV)は心理的虐待として児童相談所の介入対象でもあり、DV支援と児童相談所が連携して動くことができます。経済的自立、住居の確保、養育費・面会交流の法的手続き、保育園・学校の転校支援など、一連の流れを配偶者暴力相談支援センターで相談できます。『一人で解決する必要はない』ことをまず知ってください。
A. DV加害者の多くは家庭の外では温和・真面目・優秀と評価されることが珍しくありません。『家庭内だけで見せる顔』があるのがDVの特徴です。外から見える姿と家庭内の姿のギャップは、周囲に話しても信じてもらえない苦しさを生みます。専門の相談窓口は、その構造をよく理解しており、あなたの話をそのまま受け止めてくれます。
A. 保護命令は地方裁判所が発する命令で、①接近禁止命令(6ヶ月間、被害者に近づくことを禁止)、②退去命令(2ヶ月間、共同生活している住居からの退去を命令)、③電話等禁止命令(電話・メール・SNSの連絡を禁止)、④子どもへの接近禁止、⑤親族等への接近禁止などが含まれます。違反すれば1年以下の懲役または100万円以下の罰金。申立てには医師の診断書や相談の記録があると有利です。法テラスで弁護士の無料相談を受けられます。
A. 条件付きで可能性はあります。ただし、加害者が『自分に問題がある』と自発的に認め、長期にわたってプログラムに通い続けた場合に限られます。被害者が『私が頑張れば変わる』と期待して残ることは危険です。変化には数年単位の時間がかかり、その間に被害者の安全が守られる保証はありません。安全を最優先に、距離を取ったうえで加害者の変化を見守るのが原則です。
A. はい、あります。内閣府の調査では配偶者から暴力を受けた経験がある男性は10.5%(女性は22.5%)と報告されています。男性被害者は『男のくせに』という偏見から相談しにくく、潜在化している傾向があります。DV相談+、よりそいホットラインなどは男性の相談も受け付けています。『男性だからDV被害者ではない』ということはありません。
A. 一定の条件を満たせば在留資格を維持できる制度があります。『日本人の配偶者等』『永住者の配偶者等』の在留資格で滞在している方で、DV被害により離婚に至った場合、『定住者』への変更が認められるケースがあります。出入国在留管理庁への相談、および外国人のためのDV相談窓口(DV相談+の10カ国語対応など)を活用してください。言語の壁で諦める必要はありません。
A. 『通報したら余計にひどくなるのでは』という恐怖は被害者の多くが抱く自然な感情です。しかし警察への相談・通報そのものが記録として残ることは、あとの保護命令申立てや離婚調停で重要な証拠になります。緊急でない場合は『#9110』で相談専用窓口に、身の危険が迫る場合は110番へ。通報後の安全確保として、シェルター入所・住民票閲覧制限などを同時に進めることができます。単独で通報するのではなく、配偶者暴力相談支援センターと連携しながら段取りを組むのが原則です。
A. サイクル理論でいうハネムーン期の典型的な現象です。加害者は涙を流し、手紙を書き、贈り物をし、『本当は優しい人』の姿を見せます。被害者は『やっぱり夫(妻)は変われるんだ』という希望を持ち、逃げる決断を撤回しがちです。しかし研究によれば、専門的な加害者プログラムに長期間(最低でも半年〜数年)参加し続けないかぎり、行動パターンが根本的に変わることはきわめて稀です。『今回は違う』という感覚は、多くの場合サイクルの一部です。判断は一人でせず、必ず専門家と共有してください。
A. まずは責めたり急かしたりせず、『心配している』『いつでも話を聞くよ』と伝えるだけで十分です。具体的なアドバイスや解決策を提示すると、被害者は『理解してもらえていない』と感じて距離を取ってしまうことがあります。話してくれたら、否定せずに最後まで聴く。『あなたは悪くない』『一人じゃない』と繰り返す。相談窓口の情報をそっと渡す。緊急時のために自分の連絡先を書いた紙を渡しておく——これらのシンプルな行動が、『声を上げてよい』という信号になります。
A. もちろん起きます。米国の研究では、同性カップル間でもIPVの発生率は異性カップルと同等かそれ以上との報告があります。しかし『同性カップルのDVは社会に理解されにくい』『加害者が暴露(アウティング)をちらつかせて支配する』『男性同士のDVは軽視されがち』など、LGBTQ+特有の困難が重なります。日本でも、よりそいホットラインのセクシュアルマイノリティ専門ラインや、LGBTQ+支援団体がDV相談を受け付けています。『同性だから支援は受けられない』ということはありません。
A. デートDV(デートバイオレンス)は『交際関係にある若年層の間で起きる暴力』のことで、IPVの若年層版と位置付けられます。結婚前・同居前の関係で起きるため、DV防止法の対象外となるケースがあり、支援制度の空白地帯になりがちです。しかし2013年改正により『生活の本拠を共にする交際相手』はDV防止法の対象となりました。高校生・大学生のデートDV被害率は約4割との調査もあり、若者への啓発・教育が急務とされています。
A. 各都道府県の婦人相談所や民間シェルターは、加害者から身を守るための緊急避難施設です。所在地は非公開で、入所時には携帯電話・GPS機器の使用が制限されることがあります。原則2週間程度の短期入所が中心ですが、次の生活場所(母子生活支援施設、アパート確保など)が決まるまで延長されることもあります。食事・寝具・日用品は用意されており、子どもと一緒に入所できます。心理的ケアや自立支援プログラムも提供され、『次の一歩』を組み立てる安全基地として機能します。
A. まず、何も準備がなくても相談して大丈夫です。そのうえで、可能であれば①暴力を受けた日時・場所・状況のメモ、②ケガの写真(日付つき)、③病院の診断書、④加害者からの脅迫メール・LINEのスクリーンショット、⑤身分証・保険証のコピー、⑥通帳・印鑑の情報、などがあると法的手続きで役立ちます。ただしこれらを準備することで加害者に気づかれるリスクがある場合は、無理をせず、まず電話相談から始めてください。順序や方法は相談員が一緒に考えてくれます。
A. 子どもが加害者を『好き』と感じることは自然なことであり、あなたの罪悪感を強めるものではありません。しかし面前DVを受けた子どもは、たとえ直接暴力を受けていなくても、脳の発達・情緒・対人関係に長期的な影響を受けることが多くの研究で示されています。『子どものために我慢する』が『子どものために離れる』に変わった例は少なくありません。児童相談所、配偶者暴力相談支援センター、スクールカウンセラーなどと連携しながら、子ども自身の気持ちもケアしつつ、安全な環境を整えていくことができます。
A. はい、もちろん相談できます。精神的暴力は身体的暴力と同じくIPVの一類型であり、長期的にはPTSD・うつ病・自殺念慮などの重大な影響を及ぼします。2024年のDV防止法改正により、精神的暴力(自由・名誉・生活の平穏を害する脅迫)を受けている場合にも保護命令を申し立てられるようになりました。『殴られていないから大したことない』と自分の被害を軽視する必要はまったくありません。『傷は見えないけれど苦しい』——その状態こそ、支援の対象です。
A. 数は限られますが、民間団体を中心にDV加害者向けの更生プログラムが運営されています。認知行動療法をベースに、怒りのコントロール、ジェンダー平等の学習、被害者視点の理解などを組み合わせたプログラムが中心です。ただし、加害者が自発的に参加し、長期にわたって継続することが前提であり、『参加すれば必ず変わる』わけではありません。被害者側は加害者の変化を期待して残るのではなく、自分自身の安全を最優先にしたうえで、距離を取りながら状況を見守ることが原則です。
一人で抱え込まないで。
相談してみませんか。
『もしかしてDVかも』『離れたいけど怖い』『家族のことが心配』——どんな立場の方でも、どうかあなたの大切な悩みをココトモに聞かせていただきたいです。
このページの情報は、医療・法律上の助言や警察対応に代わるものではありません。緊急時は110番、DV相談は#8008(24時間対応のDV相談ナビ)へ。DV相談+(0120-279-889)はメール・SNSチャットにも対応し、10カ国語の通訳を利用できます。あなたは一人ではありません。どうか、安全な一歩を踏み出すために、信頼できる誰かに声をかけてください。
