マインドフルネス認知療法(MBCT)とは?
8週間プログラムの内容・効果・CBTとの違い・日本での受け方を徹底解説
うつ病から回復した後、最も恐ろしいことのひとつが「再発」です。3回以上のエピソードがある人の再発率は80〜90%にのぼるとも言われます。そのような状況の中、科学的根拠に基づいた再発予防の方法として世界中で注目されているのがマインドフルネス認知療法(MBCT)です。臨床研究では再発リスクを最大50%低減できることが示され、英国NHSでも推奨されているエビデンスベースの治療法。この記事では、MBCTとは何か、8週間プログラムの詳細、CBTやMBSRとの違い、誰が対象か、日本ではどこで受けられるかまで、必要な情報をすべてまとめました。
マインドフルネス認知療法(MBCT)とは
MBCTは「マインドフルネス瞑想」と「認知行動療法(CBT)」を組み合わせた、科学的根拠に基づく心理療法です。主にうつ病の寛解期にある人を対象に、うつ病の再発・再燃を予防する目的で開発されました。
MBCTの定義
マインドフルネス認知療法(MBCT: Mindfulness-Based Cognitive Therapy)は、「マインドフルネス瞑想」と「認知行動療法(CBT)」を組み合わせた、科学的根拠に基づく心理療法です。主にうつ病の寛解期(症状が落ち着いている時期)にある人を対象に、うつ病の再発・再燃を予防する目的で開発されました。
MBCTの中心にあるのは、「今この瞬間に意識を向け、判断を加えずにありのままに気づく」というマインドフルネスの実践です。参加者は8週間にわたるグループプログラムを通じて、ボディスキャン、座る瞑想、歩く瞑想、マインドフルネスヨガなどの実践を日々の生活に取り入れることを学びます。そして、ネガティブな思考や感情が湧き上がってきたとき、以前のように反芻したり、感情に飲み込まれたりするのではなく、思考を「ただの心の出来事」として観察できるようになることを目指します。
この「思考との関係を変える」アプローチこそが、MBCTの最大の特徴です。うつ病の再発防止に留まらず、現在では不安障害、双極性障害、慢性疼痛、がん患者の心理的ケアなど、幅広い領域で活用されるようになっています。
MBCTの基本的な特徴
MBCTは構造化された8週間プログラムとして提供され、以下のような特徴を持っています。
MBCTの核心:「存在」のモードと「行為」のモード
MBCTでは、人間の心が持つ二つのモードを重要な概念として扱います。
MBCTが生まれた背景——開発の歴史
MBCTは1990年代に、三人の認知行動療法の研究者・臨床家によって共同開発され、英国NHSの公式採用を経て世界中に広がりました。
三人の研究者による共同開発
MBCTは1990年代に、三人の認知行動療法の研究者・臨床家によって共同開発されました。
- ジンデル・シーガル(Zindel Segal)カナダ・トロント大学の心理学教授。うつ病の認知モデルの第一人者。
- マーク・ウィリアムズ(Mark Williams)英国・オックスフォード大学の臨床心理学教授。
- ジョン・ティーズデール(John Teasdale)英国・ケンブリッジのMRC認知・脳科学ユニット所属。
彼らは当初、認知行動療法(CBT)を維持療法(寛解期の再発予防)として応用するための「簡略版CBT」を開発しようとしていました。しかし研究を進める中で、思考の「内容」を変えるよりも、思考との「関係性」を変えることが再発予防に重要だという認識に至ります。
そこで彼らはジョン・カバットジン(Jon Kabat-Zinn)博士がマサチューセッツ大学で開発した「マインドフルネス・ストレス低減法(MBSR)」のプログラムを学び、そのマインドフルネスの実践を認知行動療法の枠組みに統合する形でMBCTを開発しました。2002年には著書『Mindfulness-Based Cognitive Therapy for Depression』(邦訳:マインドフルネス認知療法)が出版され、世界中に広まりました。
うつ病の高い再発率という現実
MBCTが生まれた背景には、「うつ病の高い再発率」という深刻な問題がありました。
抗うつ薬は急性期のうつ病治療に効果的ですが、薬を飲み続けることへの抵抗感、副作用、長期服用の問題もあります。薬に頼らずに、または薬と組み合わせて、心理的なアプローチによって再発を防ぐことができれば——その問いへの答えとしてMBCTは生まれました。
英国NHSによる公式採用
MBCTの科学的根拠が積み重なるにつれ、英国のNHS(国民保健サービス)は2004年にMBCTを推奨治療として採用しました。英国のNICE(国立医療技術評価機構)のガイドラインでは、「3回以上の抑うつエピソードがある人の再発予防」にMBCTを推奨しています。
マインドフルネスとは——MBCTの核となる概念
MBCTを理解する鍵は「マインドフルネス」の正確な定義にあります。自動操縦からの脱却、そして「脱中心化」というプロセスがMBCTの中核です。
マインドフルネスの定義(カバットジン)
カバットジン博士は、マインドフルネスを次のように定義しています。
この定義には三つの重要な要素が含まれています。
自動操縦(オートパイロット)状態からの脱却
MBCTでは「自動操縦(autopilot)」という概念が頻繁に登場します。私たちは日常生活の多くの時間、「今ここ」にいるようで、実際には過去や未来のことを考えながら、ほとんど無意識に行動しています。歯を磨きながら今日の失敗を後悔する、食事をしながら明日の心配をする——これが自動操縦の状態です。
うつ病や不安の強い人ほど、この自動操縦状態が習慣化しており、ネガティブな思考パターンが無意識のうちに繰り返されます。MBCTの最初のセッションで行われる「レーズンエクササイズ」は、乾燥ブドウ一粒を使ってマインドフルネスを体験する演習ですが、「これまでこんなにじっくりと何かを見たり、感じたりしたことがなかった」と気づく参加者も少なくありません。この体験を通じて、自動操縦から抜け出す「気づき」の感覚を初めて実感する人が多いのです。
脱中心化(Decentering)——思考を「思考」として見る
MBCTの中核的なプロセスのひとつが「脱中心化(Decentering)」または「脱同一化」です。これは、浮かんでくる思考を「事実」や「自分そのもの」として受け取るのではなく、「心の中で起きている一時的な出来事」として観察する能力です。
例えば「自分はダメな人間だ」という思考が浮かんだとき、従来のCBTでは「本当にそうか?反証はないか?」と思考の内容を問い直します。一方、MBCTでは「ああ、今『自分はダメだ』という思考が心に現れた」と、その思考を距離を置いて観察します。「私はダメな人間だ」ではなく、「私は今、『ダメな人間だ』という考えを持っている」という認識への転換——これが脱中心化です。
MBCTの理論的基盤——なぜうつ病が再発するのか
MBCTは「認知的反応性」「反芻思考」「早期警戒サイン」という3つの理論的概念に基づいて構築されています。
認知的反応性(Cognitive Reactivity)モデル
MBCTの理論的根拠となっているのが、ティーズデールらが提唱した認知的反応性(Cognitive Reactivity)の概念です。これは「わずかな気分の落ち込みが、過去のうつエピソードと関連したネガティブな思考パターンを再活性化させる」という現象です。
うつ病を経験した人の脳には、「気分の落ち込み」と「うつ的な思考パターン」が強く結びついた神経回路が形成されています。回復して日常生活に戻った後も、ちょっとした疲れや失敗がきっかけで、過去のうつ状態と関連したネガティブな考え方が自動的に活性化してしまうのです。これが「引き金→うつ的思考→感情悪化→さらにうつ的思考」という悪循環を生み出し、再発につながります。
反芻思考(Rumination)の問題
うつ病の維持・再発において特に有害なのが反芻思考(Rumination)です。反芻思考とは、気分が落ち込んでいるときに「なぜ自分はこんなに悲しいのか」「どこが間違っていたのか」「なぜこうなってしまったのか」と繰り返し考え続けることです。
一見、問題解決的に見えるこの反芻思考ですが、実際には気分をさらに悪化させ、問題を解決するどころかうつの悪循環に拍車をかけます。研究では、反芻傾向の高い人はうつ病のエピソードが長引きやすく、再発しやすいことが示されています。
- 反芻思考の特徴過去に焦点を当てる、「なぜ」という問いを繰り返す、問題の解決策を見つけることが難しい。
- 反芻と心配(worry)の違い心配は未来に焦点を当てるが、反芻は過去や現在の自分の状態に焦点を当てる。
- MBCTの介入ポイントマインドフルネスの実践を通じて、反芻が始まっていることに早期に気づき、注意を「今この瞬間」に戻すことができるようになる。
早期警戒サインへの気づき
MBCTでは、うつ再発の「早期警戒サイン(early warning signs)」を認識し、それに対して適切に対処する能力を育てることも重要な目標のひとつです。
人によって再発の前兆は異なります。「眠れなくなる」「食欲が変わる」「人との交流を避けるようになる」「些細なことに強くイライラする」「特定のネガティブな思考が増える」——MBCTの参加者は、自分固有のうつ再発の早期サインを理解し、そのサインに気づいたときに実践できる対処スキルを身につけます。
8週間プログラムの詳細——セッションごとの内容
MBCTの8週間プログラムは、毎週1回(各約2時間)のグループセッションで構成され、毎日30〜45分のホームプラクティスが課されます。
プログラム全体の構造
MBCTの8週間プログラムは、毎週1回(各約2時間)のグループセッションで構成されます。各セッションには固有のテーマがあり、マインドフルネスの実践技法を段階的に学んでいきます。また、各セッションの間には「ホームプラクティス」として、毎日30〜45分程度の瞑想実践が課されます。
各セッションのテーマと内容
8週間のプログラムは段階的に進行し、前半は気づきの基礎、中盤は嫌悪と受容、後半は脱中心化と再発予防プランへと進んでいきます。
第3週以降の核心スキル:3分間呼吸空間法
第3セッション以降に導入される「3分間呼吸空間法(3-Minute Breathing Space)」は、MBCTの実践の中でも特に重要なスキルです。これは日常生活の中でいつでも、どこでも使える「ポータブルなマインドフルネス」ツールです。3分間呼吸空間法は、時計の砂時計のような形で構成されています。
この実践は、一日のさまざまなタイミング(朝起きたとき、ストレスを感じたとき、昼食前など)に使えるよう設計されています。特に、うつ的な気分が高まったときや、ネガティブな思考の渦に引きこまれそうになったときに効果的です。
ホームプラクティスの重要性
MBCTの効果は、週1回のセッションだけでなく、日々のホームプラクティスによって大きく左右されます。最初の4週間は特に構造的な実践(ボディスキャンや瞑想など)が課され、後半はより柔軟な形で日常生活に取り入れる練習をします。
ホームプラクティスを通じて、マインドフルネスは「特別なセッションのときだけ行うもの」から「日常生活の一部」へと変容していきます。歩くときに歩くことに気づく、食事をするときに食事の感覚に気づく、人と話すときに話すことに気づく——こうした「非公式な実践」が生活全体に浸透していくことが、MBCTの長期的な効果の鍵です。
MBCTの中核的な実践技法
どの実践も「リラックスすること」が目的ではなく、「意図的に気づくこと」が目的です。各実践は補完的に組み合わさり、日常生活の中でいつでもマインドフルネスを呼び出せるスキルを育てます。
MBCTの効果——科学的エビデンス
MBCTの効果は複数の無作為化比較試験(RCT)で検証され、特に3回以上の再発を経験した人で抗うつ薬と同等の予防効果が示されています。
うつ病再発予防のエビデンス
MBCTの効果は、複数の無作為化比較試験(RCT)によって科学的に検証されています。最も重要な知見は以下の通りです。
シーガルらの研究(2010年)では、3回以上のうつエピソードがある人において、MBCTの再発予防効果が抗うつ薬の維持療法と同等であることが示されました。これは心理療法が薬物療法と肩を並べる再発予防効果を持つという画期的な発見であり、世界の医療政策に大きな影響を与えました。
なぜ3回以上のエピソードがある人に特に効果的か
興味深いことに、MBCTの再発予防効果は「うつ病エピソードの回数」によって異なることが示されています。特に3回以上のエピソードがある人において、MBCTの再発予防効果が顕著です。一方、1〜2回のエピソードの人では、より強いライフイベント(離婚、失業など)が再発の主な引き金となるため、マインドフルネスによる認知的反応性への介入が相対的に効果を発揮しにくいと考えられています。
3回以上の再発を繰り返している人では、ライフイベントよりも内的な認知パターン(反芻思考、ネガティブな自動思考)が再発の主要な引き金となっています。MBCTはまさにこのメカニズムに直接介入するため、特に高い効果が得られると考えられています。
うつ病再発予防以外への効果
うつ病再発予防以外にも、MBCTはさまざまな精神健康上の効果が研究によって示されています。
なぜ効果があるのか——変化のメカニズム
MBCTの効果をもたらすメカニズムとして、現在の研究では以下のプロセスが考えられています。
- マインドフルネススキルの向上継続的な実践により、意図的に「今ここ」に注意を向ける能力が高まります。
- メタ認知的気づきの向上自分の思考パターンを「外から眺める」能力が増し、思考に飲み込まれにくくなります。
- 認知的反応性の低下気分が落ち込んでもネガティブな思考が自動的に活性化されにくくなります。
- 自己慈悲(Self-Compassion)の向上自分の苦しみに対して批判的ではなく、温かく受け入れる姿勢が育ちます。
- 感情調節能力の改善感情をより柔軟に、効果的にコントロールできるようになります。
CBT・MBSRとの違い——MBCTの位置づけ
MBCTは「第三世代の認知行動療法」として位置づけられます。従来のCBT、そして元になったMBSRとの違いを整理します。
認知行動療法(CBT)の基本とMBCTとの違い
認知行動療法(CBT: Cognitive Behavioral Therapy)は、「考え方(認知)」と「行動」を変えることで感情や症状を改善する心理療法です。ベック(Aaron Beck)らによって開発され、うつ病・不安障害・強迫症など幅広い精神疾患に対して高いエビデンスを持ちます。CBTでは、「自動思考(automatic thoughts)」と呼ばれる瞬間的に浮かぶ考えを記録し、その考えが歪んでいるかどうかを検討します。「自分はダメな人間だ」という考えに対して、「その証拠は何か?」「別の見方はないか?」と問いかけ、より現実的・バランスのとれた考え方へと修正していきます(認知再構成)。
「第三世代の認知行動療法」としてのMBCT
心理療法の歴史において、MBCTは「第三世代の認知行動療法」のひとつとして位置づけられています。
- 第一世代CBT(1950〜60年代)行動療法。学習理論に基づき、問題行動を変容させるアプローチ。
- 第二世代CBT(1970〜80年代)認知療法。認知の内容を変える。ベックのCBTなど。
- 第三世代CBT(1990年代〜現在)マインドフルネスと受容を重視。MBCT、ACT(受容とコミットメント療法)、DBT(弁証法的行動療法)など。
第三世代CBTの特徴は、思考の「内容」を変えるのではなく、思考・感情との「関係性」を変えることに焦点を当てていることです。MBCTはその先駆けとして、世界中の心理療法の流れに大きな影響を与えました。
MBSR(マインドフルネス・ストレス低減法)との違い
MBSR(Mindfulness-Based Stress Reduction)は、1979年にジョン・カバットジン博士がマサチューセッツ大学医療センターで開発したプログラムです。当初は慢性疼痛や慢性疾患を抱える患者のために開発されましたが、現在ではがん、心臓病、線維筋痛症、ストレス関連障害など幅広い身体・精神的問題に応用されています。MBSRもMBCTと同様に8週間のグループプログラムで、ボディスキャン、座る瞑想、歩く瞑想、マインドフルヨガなどの実践が含まれます。MBCTはまさにこのMBSRをベースに開発されました。
簡単に言えば、MBSRが「身体的・心理的ストレス全般を対象にした汎用的なマインドフルネスプログラム」であるのに対し、MBCTは「うつ病の再発予防という明確な目的のために、CBTの知識と技法を組み込んだ特化型プログラム」です。
MBCTとMBSR、どちらが自分に合うか
MBSRとMBCTのどちらを選ぶかは、自分の状況や目標によって異なります。
- MBCTが向いている場合うつ病からの回復期にある・うつ病の再発が心配・反芻思考が強い・うつや不安の認知パターンを深く理解したい。
- MBSRが向いている場合慢性疼痛や慢性疾患がある・仕事や生活のストレスを軽減したい・精神疾患の診断はないが精神的な健康を高めたい・より汎用的なウェルビーイングの向上を目指している。
- 迷った場合担当の医師や公認心理師・臨床心理士に相談して、自分の状態に合った選択をすることが最善です。
MBCTの対象と注意点
MBCTは寛解期のうつ病再発予防として開発されましたが、誰にでも適しているわけではありません。向いている人・適さないケース・瞑想実践の注意点を整理します。
MBCTが特に効果的な人
研究と臨床の蓄積から、MBCTが特に適しているとされるのは以下のような方々です。
MBCTを受けるのに適した時期
MBCTはうつ病の「急性期」ではなく、「寛解期」のためのプログラムとして設計されています。つまり、「今まさに深刻なうつ状態にある」ときに開始するプログラムではなく、「症状が落ち着いてきて、日常生活に戻れてきた」段階で受けることが想定されています。
ただし、近年は軽度〜中等度のうつ症状がある状態でのMBCTの有効性も研究されており、「完全に寛解していなければ参加できない」というわけでもありません。担当の医師や心理士との相談の上で、タイミングを判断することが大切です。
MBCTが適さないとされるケース
MBCTはすべての人に適しているわけではありません。以下のようなケースでは、まず他の治療を優先すべき場合があります。
- 急性期のうつ病重度の抑うつ状態で、起き上がることや外出することが困難な場合は、まず医療的なアプローチが先決です。
- 強い自殺念慮がある場合自傷・自殺のリスクが高い状態では、より集中的・個別的なサポートが必要です。
- 統合失調症の陽性症状がある場合幻覚・妄想が活発な状態では、MBCTの形式に参加することが難しい場合があります。
- 物質依存が活発な場合アルコールや薬物の依存が続いている場合は、まず依存症の治療が優先されます。
- 重度のPTSD(トラウマ)がある場合ボディスキャンや呼吸への注意がフラッシュバックを引き起こす可能性があるため、トラウマ専門家の評価が必要です。
- グループへの参加が著しく困難な場合対人不安が極めて強く、グループ形式が心理的安全を著しく損なう場合は適応外となります。
瞑想実践に関する注意点
マインドフルネス瞑想は一般的に安全な実践ですが、一部の人では注意が必要なことがあります。
- 解離症状もともと解離(現実感の喪失、自分から抜け出したような感覚)が強い場合、瞑想がこれを増強することがあります。
- 強い不安や恐怖感内側に注意を向けることで、強い不安が喚起される場合があります。目を開けておく、音など外側の感覚に注意を向けるなどの調整が有効です。
- 「良い瞑想」「悪い瞑想」へのこだわり完璧主義傾向の強い人は「うまくできない」ことへの自己批判が生まれやすく、ファシリテーターへの相談が大切です。
日本でのMBCTの受け方
日本でも2010年代以降、医療機関・専門機関・オンラインなどでMBCTが提供されています。保険適用の可能性や自立支援医療制度の活用も含めて、アクセス方法を整理します。
日本におけるMBCTの現状
日本でも2010年代以降、MBCTへの関心が急速に高まり、医療機関・カウンセリング機関・民間機関などでプログラムが提供されるようになっています。ただし、英国のNHSのように公的医療制度として体系的に組み込まれているわけではなく、提供機関によって料金体系・形式・質が異なります。
医療機関・専門機関・自立支援医療
MBCTを受ける主なルートには、医療機関での提供、専門機関・民間プログラム、そして経済的負担を軽減する自立支援医療制度の活用があります。
MBCTプログラムへのアクセス方法
以下のステップで進めることで、自分に合ったMBCTプログラムを見つけやすくなります。
- ✓まずかかりつけ医(精神科・心療内科)に相談し、MBCTプログラムへの紹介を依頼する
- ✓精神保健福祉センターに相談し、地域のMBCT実施機関の情報を得る
- ✓「MBCT 日本」「マインドフルネス認知療法 [都市名]」で検索し、実施機関の情報を収集する
- ✓自立支援医療制度を活用し、通院医療費の負担を軽減する
自習・セルフプラクティス・うつ以外への応用
正式プログラムを受ける前に自分で試したい人へのリソース、そしてうつ病以外への応用領域とMBCT-Lの展開を紹介します。
自習の可能性と限界
「MBCTを正式なプログラムとして受けることが難しい」「まず自分でマインドフルネスを試してみたい」という方に向けて、自習・セルフプラクティスは有効な選択肢になります。ただし、正式なMBCTプログラムは資格を持ったファシリテーターによるグループ実践が前提であり、自習にはいくつかの限界があることを理解しておくことが重要です。
- 自習でできることマインドフルネスの基礎的な実践(ボディスキャン、呼吸瞑想、3分間呼吸空間法)を書籍・アプリを使って学ぶことはできる。
- 自習の限界グループダイナミクスの体験、専門家によるフィードバック、参加者同士の体験シェアによる気づきは、自習では得られない。
- 自習を「入口」として活用まず自習でマインドフルネスに親しみ、その後正式なMBCTプログラムに参加するという流れも有効。
自習に役立つ書籍・アプリ・日常実践
自習を始める際に役立つ書籍・アプリ・日常的なマインドフルネス実践のヒントをまとめます。
- 書籍:マインドフルネス認知療法ジンデル・シーガル、マーク・ウィリアムズ、ジョン・ティーズデール著、越川房子監訳、北大路書房。MBCTの原著テキスト。音声ガイドも活用できます。
- 書籍:うつのためのマインドフルネス実践ボブ・スタール&エリシャ・ゴールドスタイン著。日常生活での実践を重視したわかりやすい入門書。
- アプリ:Headspace/Calm英語ベースだが、基礎的なマインドフルネス瞑想をガイド音声で学べます。
- アプリ:Relook/muon(ムオン)日本語のマインドフルネス瞑想アプリ。
- 食事のマインドフルネス食事の最初の数口を、感覚に完全に意識を向けながらゆっくりと食べます。
- 歩くときのマインドフルネス通勤・通学の一部を、足の感覚に意識を向けながら歩きます。
- 3分間呼吸空間法を日課に一日3回(朝・昼・夕)を目安に、スマートフォンのタイマーを使って実践します。
- 「いつもの動作」をマインドフルに歯磨き・皿洗い・シャワーなど、日常動作の一つをマインドフルに行う時間を決めます。
うつ病以外の精神疾患への応用
当初はうつ病の再発予防のために開発されたMBCTですが、現在ではその応用範囲が大きく広がっています。
身体疾患・その他への応用
精神疾患だけでなく、身体疾患の心理的ケアにもMBCTの応用が進んでいます。
一般向けMBCT(MBCT-L: MBCT for Life)の開発
近年、MBCTを精神疾患の診断がない一般の人々にも応用する試みとして、「人生のためのマインドフルネス認知療法(MBCT-L: MBCT for Life)」が開発されています。オックスフォード大学のWillem Kuyken教授らが開発したこのプログラムは、うつ病の再発予防という特定の目的だけでなく、人生全般のウェルビーイング向上を目指した「ユニバーサル」なMBCTとして設計されています。
MBCT-Lは、精神疾患の診断なく日常のストレスや生きづらさを感じている人にも適しており、「予防」という観点からのメンタルヘルス支援の可能性を広げています。職場のメンタルヘルス支援や学校教育への応用も検討されており、MBCTの普及がより広い層に及ぶことが期待されています。
MBCTに関するよくある質問
A. はい、問題ありません。MBCTは薬物療法を「やめるため」のプログラムではなく、薬物療法と並行して、あるいは将来的な減薬・断薬を検討するための選択肢のひとつとして活用できます。シーガルらの研究では、MBCTが抗うつ薬の維持療法と同等の再発予防効果を示しましたが、これは「薬の代わりにMBCT」ではなく「MBCT単独でも薬と同程度の効果がある」という意味です。薬の調整については、必ず主治医と相談の上で判断してください。
A. はい、むしろ瞑想の経験がない方のほうが「白紙の状態」で実践に臨めるため、プログラムに適応しやすい場合もあります。MBCTのプログラムは、瞑想の基礎から丁寧に教えるよう設計されており、初心者でも参加できます。「うまく瞑想しなければ」と構える必要はありません。最初から「下手」で当然であり、その「下手な自分」に気づき続けることがすでに実践の始まりです。
A. ホームプラクティスの時間を確保することが理想ですが、現実には難しい日もあります。研究では、プログラム参加者のホームプラクティスの量と効果の間に相関関係があることが示されており、実践すればするほど効果が高まる傾向があります。しかし「まったくしないより少しでもする方が良い」のも事実です。3分間呼吸空間法のような短い実践を日常生活に組み込むことから始め、可能な日に長い実践をするというアプローチも有効です。プログラム中にファシリテーターにご自身の状況を率直に伝え、相談することをお勧めします。
A. はい、繰り返し受けることは可能で、有益であることが多いとされています。1回目のプログラムでは「学ぶ」体験が中心ですが、2回目以降では「知っている」という安心感のもとで、より深い実践ができることがあります。「以前参加したが、また受けたい」という方を受け入れているプログラムもあります。ただし、同じプログラムを繰り返す場合は、その施設・機関のポリシーを確認してください。
A. もちろんです。うつ病の診断がなくても、「気分が落ち込みやすい」「反芻思考が強い」「ストレスを感じやすい」「生きることへの意欲が低い」などの悩みを持つ方にとって、MBCTの実践は有益です。特に「人生のためのMBCT(MBCT-L)」は、一般の方を対象とした形式です。ただし、医療機関で提供されるMBCTプログラムは精神疾患の診断がある方を優先していることが多いため、民間・専門機関のプログラムへの参加を検討されることをお勧めします。
A. MBCTは「流行り」ではなく、1990年代から積み重ねられた無作為化比較試験(RCT)に基づくエビデンスを持つ治療法です。英国のNHSやNICEが推奨し、世界中の主要な医療・心理学機関に認められた治療として位置づけられています。ただし「マインドフルネス」という言葉がさまざまな意味で使われるようになっていることも事実であり、「マインドフルネスのアプリを使えばMBCTと同等」とは言えません。正式なMBCTは訓練を受けたファシリテーターによる構造化された8週間プログラムであり、その点で「流行りのマインドフルネス」とは明確に区別されます。
A. 標準的なMBCTはグループ形式で提供されますが、個別形式でMBCTの要素を提供できる公認心理師・臨床心理士もいます。グループへの参加に強い不安がある場合は、個別カウンセリングを提供している機関に相談してみてください。ただし、グループ形式には「他の参加者の体験から学ぶ」「自分だけが苦しいのではないと気づく」という独自の治療的価値があります。グループへの苦手意識がある場合は、まずその気持ちをファシリテーターに伝えることも大切です。
うつの再発が不安なあなたへ
一人で抱え込まないでください
「またあのつらい時期に戻ってしまうのではないか」——その不安は、過去を乗り越えてきたあなたの心が休息を求めているサインかもしれません。MBCTのような専門的サポートを検討する前に、まずは話してみませんか。ココトモがお話を聞きます。
このページの情報は、医師による診断や治療に代わるものではありません。症状が気になる場合は、心療内科・精神科への受診をご検討ください。継続的な通院が必要な方は自立支援医療制度(精神通院医療)をご利用いただくことで、医療費の自己負担を原則1割に軽減できます。申請は市区町村の福祉担当窓口または精神保健福祉センターへ。
