メンタルヘルス用語辞典 · 流産と悲嘆

流産と悲嘆・メンタルヘルス
心理的影響・悲嘆のプロセス・回復のためのケアと支援を徹底解説

流産は妊娠した人の約15〜20%が経験する出来事ですが、その喪失の痛みは数字では表せないほど深く、当事者のメンタルヘルスに大きな影響を与えます。2025年のメタ分析では流産後の女性の約30〜34%がうつ・不安・ストレスを経験することが示されました。悲嘆のプロセス、うつ・PTSD・不安障害との関係、パートナーのケア、回復のためのセルフケアと支援制度まで、包括的に解説します。

ABOUT MISCARRIAGE

流産とは——定義・種類・頻度

流産(自然流産)は、妊娠22週未満に胎児が子宮外で生存できない状態で妊娠が終わることをいいます。医学的には人工妊娠中絶とは区別され、その種類・頻度・原因を正しく知ることは、自責の念から解放される第一歩です。

定義と種類

流産の定義と6つの種類

流産(りゅうざん)とは、妊娠22週未満に胎児が子宮外で生存できない状態で妊娠が終わることをいいます。医学的には「自然流産(spontaneous abortion)」と呼ばれ、人工的に妊娠を中断する「人工妊娠中絶」とは区別されます。

🌱
早期流産(初期流産)
妊娠12週未満に起こる流産。流産全体の約80%を占める。
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後期流産
妊娠12週以降22週未満に起こる流産。全妊娠の約1.5%程度。
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稽留流産(けいりゅうりゅうざん)
胎児・胎芽の発育が停止しているのに、自覚症状なく子宮内に留まっている状態。
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進行流産
出血・腹痛などの症状があり、すでに流産が進行している状態。
🌱
不全流産
流産後も胎内に胎児や胎盤の一部が残っている状態。
🌱
化学流産
着床はしたが超音波で胎嚢が確認される前に終了した非常に早期の流産。
頻度と統計

流産は決して稀ではない——統計から見る実態

流産は決して稀ではありません。日本および世界の統計から、その実態を見てみましょう。

15-20%
臨床的に確認された妊娠のうち流産に終わる割合
30%前後
妊娠自覚前を含む全妊娠の流産率
80%
流産のうち妊娠12週未満(早期)の割合
70+%
胎児心拍確認前(妊娠6〜7週未満)に起こる割合
10万+件/年
日本の年間自然流産推計件数
50+%
40歳以上の流産率(加齢による上昇)
「よくあること」でも痛みは本物流産が統計的に「よくあること」であっても、それはその人の悲しみを小さくするものではありません。胎内に宿った命への愛着と期待は、妊娠のどの段階においても本物であり、その喪失に伴う悲嘆も同様に本物です。流産の悲しみを「大げさ」と感じる必要はまったくありません。
原因

流産の原因——「自分のせい」ではないことの根拠

「自分のせいで流産した」と自責する方が非常に多いですが、流産の大部分は母親の行動とは無関係です。原因は次の4系統に大別されます。

🧬
胎児側の 染色体異常
🩺
子宮形態 異常
⚖️
内分泌 異常
🩸
血液凝固 免疫異常
🧬胎児側の染色体・遺伝子異常

最も多い原因(約50〜70%)。自然界の選択であり、誰にでも起こりうる。妊娠した時点で既に決まっているため、母親の行動とは無関係。

  • 流産原因の最多要因
  • 自然界の選択現象
  • 本人の行動と無関係
🩺子宮形態異常

子宮の形の問題で着床・成長が困難になるケース。

  • 双角子宮
  • 中隔子宮
  • その他の子宮奇形
⚖️内分泌異常

ホルモン分泌のバランス異常による流産。

  • 黄体機能不全
  • 甲状腺疾患
  • 糖尿病
🩸血液凝固・免疫・感染症など

血液凝固異常(抗リン脂質抗体症候群など、不育症の原因として重要)、免疫異常(母体の免疫系が胎児を異物として攻撃)、感染症(子宮内感染など)も原因となる。検査をしても原因が特定できない「原因不明」も多い。

  • 抗リン脂質抗体症候群
  • 免疫異常
  • 子宮内感染
  • 原因不明
💡
日常的な運動、性行為、ストレス、仕事、食事の多くは流産の直接的原因にはなりません。「あのとき無理をしたから」「もっと安静にしていれば」という思いは理解できますが、それが流産の原因である可能性はほとんどないといってよいでしょう。
PSYCHOLOGICAL IMPACT

流産の心理的衝撃——なぜこれほど深く傷つくのか

流産は単に「今回の妊娠」を失うだけでなく、思い描いていた未来すべてが一瞬にして消える「複合的な喪失」です。妊娠に伴う愛着、流産特有の悲嘆の性質、最新研究によるメンタルヘルスへの影響を見ていきます。

妊娠中の愛着

妊娠に伴うアタッチメント(愛着)の形成

妊娠が分かった瞬間から、多くの人は胎内の命に対して強い愛着(アタッチメント)を形成し始めます。赤ちゃんの名前を考える、生まれた後の生活を想像する、育児グッズを調べる——こうした「期待」や「夢」は、胎児の成長とともに積み重なります。

流産は、この愛着の対象を突然、完全に奪う出来事です。それは単に「今回の妊娠」を失うだけでなく、思い描いていた未来すべてが一瞬にして消える体験です。子どもが生まれた後の家族の姿、その子が最初に歩く瞬間、入学式……すべての未来が失われる「複合的な喪失」です。

特殊な性質

流産が持つ特殊な悲嘆の性質——5つの側面

流産による悲嘆は、ほかの死別と比較しても特殊な性質を持ちます。

🕯
認められにくい悲嘆
Disenfranchised Grief。流産は社会的に十分に認められていないことが多く、葬儀もなく、公式な追悼の機会がほとんどない。「あなたも子どもを亡くした人」として周囲から認識されないことで、悲嘆が孤立化・内面化しやすい。
💊
身体と心の同時的喪失
妊娠を維持しようとする身体のホルモン変化(エストロゲン・プロゲステロンの急激な低下)が、生理的なうつ症状を引き起こす側面もある。
😔
「自分のせい」という自責感
原因が分からないことが多いため、当事者が自分の行動を振り返り自責しやすい。「もっと気をつけていれば」という思いが心を苦しめる。
🤐
孤独な悲嘆
特に初期流産は妊娠を周囲に知らせる前であることが多く、流産を知っている人が限られる。「誰にも言えない」まま悲しみを抱える人も少なくない。
😨
次の妊娠への恐れとの同居
悲しむ一方で、「また妊娠できるだろうか」「次も流産したら」という恐れが常に同居し、回復を複雑にする。
最新の研究

メンタルヘルスへの影響——2025年メタ分析より

2025年に発表された系統的レビューとメタ分析(Journal of Global Health)では、流産後6週間以内の女性において以下の割合でメンタルヘルス上の問題が確認されています。

32.5%
流産後6週間以内の不安症状有病率(2025年メタ分析)
30.1%
流産後6週間以内のうつ症状有病率
33.6%
流産後6週間以内のストレス関連症状有病率

また、流産後12ヶ月以内の女性を対象とした研究では、最も多かった精神疾患は以下のとおりでした。

  • 適応障害流産後12ヶ月以内で最も多かった精神疾患(22.4%)。流産というストレスに適応できず感情・行動の問題が生じている状態。
  • 特定の恐怖症流産後12ヶ月以内で2番目に多かった(14.5%)。産婦人科・妊婦・赤ちゃん関連への強い恐怖など。
  • PTSD流産後12ヶ月以内で3番目に多かった(8.1%)。
これらの数字は、流産後のメンタルヘルスケアがいかに重要であるかを示しています。「自分だけが弱い」のではなく、多くの人が同じように苦しんでいる現実です。
GRIEF PROCESS

流産後の悲嘆(グリーフ)のプロセスと段階

悲嘆は「病気」ではなく、喪失に対する正常な人間の反応です。キュブラー・ロスの5段階モデル、流産特有の感情、悲嘆の継続期間について整理します。

悲嘆とは

悲嘆(グリーフ)とは何か

悲嘆(グリーフ:grief)とは、愛する存在や大切なものを失ったときに経験する、深い悲しみと心理的苦痛のプロセスです。悲嘆は「病気」ではなく、喪失に対する正常な人間の反応です。しかし、そのプロセスは決して直線的ではなく、山あり谷ありを繰り返しながら、時間とともに少しずつ変化していきます。

5段階モデル

キュブラー・ロスの悲嘆の5段階

精神科医エリザベス・キュブラー・ロスが提唱した「悲嘆の5段階モデル」は、流産後の心理的プロセスを理解するうえで参考になります。ただし、これらの段階は必ずしも順番通りに進むものではなく、行き来したり、複数の段階が同時に現れることもあります。

第1段階
否認
現実を受け入れることができず、「嘘だ」「間違いだ」と感じる。流産後では「まだお腹の中にいる気がする」「本当に流産したのか信じられない」という感覚として現れる。
DENIAL
第2段階
怒り
喪失に対する怒り・憤り。対象は自分、医師、神、運命など様々。「なぜ私だけ」「ちゃんと検診に行っていたのに」「神様はひどい」という怒りとして現れる。
ANGER
第3段階
取引
「もし〜なら元に戻るのでは」と条件を提示する心理。「もっと安静にしていれば良かった」「あの薬を飲まなければ良かった」という後悔と取引の形をとる。
BARGAINING
第4段階
抑うつ
深い悲しみ・無気力・絶望感。何もする気になれない、食欲がわかない、涙が止まらない、外出できない、といった症状として現れる。
DEPRESSION
第5段階
受容
喪失の現実を受け入れ、少しずつ前を向く。「あの子の命は短くても本物だった」「あの経験があって今がある」という意味付けの始まり。
ACCEPTANCE
「受容」は悲しみが消えることではない「受容」は、悲しみが消えることではありません。喪失の現実を自分の人生の一部として統合し、その悲しみと共に生きていくことができるようになることです。「乗り越えなければならない」という強迫的な考えよりも、「悲しみとともに歩んでいく」という姿勢の方が、心の回復に寄り添うものと言えるでしょう。
特有の感情

流産の悲嘆に特有の感情——8つの側面

流産後に経験しやすい感情を知っておくことで、「こんな気持ちになっても大丈夫」と自分を安心させることができます。

😢
深い悲しみと喪失感
泣き止めない、胸が痛い、何も手につかないという状態。
🥀
罪悪感・自責感
「あのとき激しく動いたから」「仕事を続けたから」「前の妊娠でとった行動のせいか」という根拠のない自責。
🔥
怒り
自分への怒り、医師への怒り、妊娠中の友人や出産した人への怒り、「なぜ私だけ」という不公平感。
💔
嫉妬
妊娠中の人、子どもを抱く人、「おめでとう」を言われている人への複雑な嫉妬の感情。
🌧
孤独感
「誰もわかってくれない」「この痛みを共有できる人がいない」という孤立感。
🌫
麻痺・解離
現実感が乏しく、ぼんやりとした状態が続く。
😶
安堵感とその後の罪悪感
妊娠に不安を感じていた場合、安堵を覚えることがある。その安堵感を感じた自分をさらに責めてしまうことも。
🕳
空虚感
何かが根底から抜け落ちたような、虚ろな感覚。
💡
どんな感情も「正常」です上記のどの感情も、流産という喪失体験に対する正常な反応です。「こんなことを感じてはいけない」という感情はありません。怒り、嫉妬、安堵、麻痺——どれも、あなたが今それだけ深く傷ついていることの証です。
継続期間

悲嘆の継続期間——「期限」はない

悲嘆の期間には大きな個人差があります。研究によれば、流産後の強い悲しみは一般的に数週間から数ヶ月をかけて徐々に和らいでいきますが、6ヶ月以上悲嘆が続く人も少なくありません。ある研究では、流産から平均4年後の時点でも、57%が臨床的に意味のある周産期悲嘆レベルを示していました。

「もうそろそろ立ち直らなければ」「もう○ヶ月も経つのに」という周囲からの(あるいは自分への)プレッシャーは、回復の妨げになります。悲嘆に「正しい期間」はなく、人それぞれのペースで進んでいきます。

SYMPTOMS

流産後に生じる心の症状と精神疾患

流産後には感情・認知・行動・身体の4領域にわたる症状が現れ、長期化すると精神疾患へと発展することがあります。症状の全体像を把握し、必要に応じた専門家相談につなげましょう。

4つの症状領域

流産後に現れる心身の症状——4カテゴリー

流産後には、感情的・認知的・行動的・身体的な様々な症状が現れます。これらは悲嘆プロセスの一部であり、また精神疾患の症状である場合もあります。

💗
感情的症状
深い悲しみ、涙が止まらない、怒り、罪悪感、無力感、空虚感、孤独感、絶望感。
🧠
認知的症状
集中力の低下、記憶力の低下、意思決定の困難、「まだお腹にいる」という感覚、フラッシュバック、赤ちゃんについて考えるのが止められない。
🚪
行動的症状
引きこもり、趣味への興味喪失、育児グッズを見られない、妊婦や赤ちゃんを避ける、SNSを見られない。
🩺
身体的症状
疲労感、食欲不振または過食、不眠または過眠、頭痛、動悸、息切れ、胸部の圧迫感。
5つの精神疾患

流産後に生じやすい精神疾患

悲嘆と精神疾患は重なり合うことがあります。以下のような状態が長期化・重症化した場合は、専門家への相談を検討してください。

  • うつ病・抑うつ障害強い気分の落ち込みが2週間以上続き、日常生活に支障が出る状態。
  • PTSD(心的外傷後ストレス障害)流産の場面のフラッシュバック、悪夢、回避行動などが続く状態。
  • 適応障害流産というストレスに適応できず、感情・行動の問題が生じている状態。
  • 不安障害・パニック障害次の妊娠への過度の恐れ、医療機関への恐怖、動悸・息切れを伴うパニック発作。
  • 複雑性悲嘆(遷延性悲嘆障害)悲嘆が長期間(通常6ヶ月以上)続き、機能障害が生じている状態。
DEPRESSION

流産とうつ病——「悲嘆」との見極め

流産後の女性の約30%が有意なうつ症状を示します。正常な悲嘆とうつ病を見極めるポイント、受診の目安、リスク要因について解説します。

実態

流産後のうつ病の実態

流産後のうつ病(抑うつ障害)は、多くの人が経験する深刻な問題です。2025年の系統的レビューでは、流産後の女性の約30%が有意なうつ症状を示すことが示されました。流産後のうつ病は、産後うつ病と比較しても、社会的に認識されにくいという特徴があります。

悲嘆との違い

うつ病と「悲嘆」の違い——5つの比較ポイント

流産後の気分の落ち込みが「正常な悲嘆の範囲内」なのか、「うつ病として治療が必要な状態」なのかを見極めることが重要です。

正常な悲嘆 — 波の有無
悲しい波と楽な波が交互にある
うつ病 — 波の有無
ほぼ常に気分が落ち込んでいる
正常な悲嘆 — 楽しみの感覚
楽しいことが時々ある
うつ病 — 楽しみの感覚
何をしても楽しめない(アンヘドニア)
正常な悲嘆 — 自己評価
自己批判はあるが、自己価値感は保たれる
うつ病 — 自己評価
「自分には価値がない」「生きていてもしょうがない」という感覚
正常な悲嘆 — 日常生活への影響
つらいが何とか機能できる
うつ病 — 日常生活への影響
仕事・家事・対人関係が著しく障害される
正常な悲嘆 — 改善の傾向
時間とともに少しずつ楽になる
うつ病 — 改善の傾向
数週間以上改善しない、または悪化する

以下のような症状が2週間以上続く場合は、うつ病の可能性があるため、精神科・心療内科への受診を検討してください。

  • ほぼ毎日、一日中気分が落ち込んでいる
  • 以前楽しかったことに喜びを感じられない
  • 食欲の著明な変化(増加または減少)
  • 不眠または過眠
  • 疲れやすく、気力がわかない
  • 自分には価値がないと感じる、強い罪悪感
  • 集中力・思考力の低下
  • 死にたい、消えてしまいたいという気持ち
⚠️
死にたいという気持ちが出たら、すぐに相談を流産後に「死にたい」「消えてしまいたい」という気持ちが生じることがあります。これは決してあなたが弱いからではなく、それほどの痛みを抱えているサインです。このような気持ちになったときは、一人で抱え込まず、すぐに信頼できる人や相談窓口に連絡してください。
リスク要因

流産後うつのリスクを高める9つの要因

以下のような要因がある場合、流産後のうつ病リスクが高まるとされています。

  • !以前にうつ病や不安障害の既往歴がある
  • !生きている子どもがいない(初めての妊娠での流産)
  • !流産を繰り返している(不育症)
  • !不妊治療を経て妊娠した後の流産
  • !社会的サポートが乏しい(孤立)
  • !経済的困難を抱えている
  • !流産のことを周囲に話せていない
  • !パートナーとの関係に問題がある
  • !妊娠・流産の体験を自分のせいだと強く思っている
PTSD

流産とPTSD(心的外傷後ストレス障害)

出血・激痛・緊急処置・手術など、医療的な体験そのものがトラウマ体験となり得ます。2016年の研究では流産経験者の約4割が3ヶ月以内にPTSD症状を経験したと報告されています。

トラウマになる理由

流産体験がトラウマになりうる理由

流産は、精神的なトラウマ(心的外傷)を引き起こすことがあります。特に、出血や激しい腹痛を経験した場合、緊急の処置が必要だった場合、手術(子宮内容除去術)を受けた場合などは、医療的な体験そのものがトラウマ体験となりうるのです。

約4
流産・子宮外妊娠経験者で流産から3ヶ月以内にPTSD症状を経験(2016年研究)
29%
流産1ヶ月後にPTSD症状を示した割合
24%
流産1ヶ月後に中等度〜重度の不安症状を示した割合
11%
流産1ヶ月後に中等度〜重度のうつ症状を示した割合
主な症状

流産後のPTSDの主な症状——4つのカテゴリー

流産後のPTSDは、以下のような症状として現れることがあります。

🔁
侵入症状(再体験)
流産の場面が突然フラッシュバックとして蘇る、悪夢を繰り返し見る、流産を思い出させる場所・音・においで強い苦痛を感じる。
🚷
回避症状
妊婦・赤ちゃん・産婦人科病院・育児グッズを見ることを避ける、流産について考えたり話したりすることを避ける。
🌑
認知・気分の変化
「自分が悪い」「誰も信用できない」という思い込み、楽しみや喜びを感じられない、自分や他者への否定的な感情が続く。
覚醒亢進症状
些細なことで驚く(過剰驚愕反応)、眠れない、集中できない、イライラしやすい、常に緊張している。
治療法

PTSDのエビデンスのある治療

流産後のPTSDには、エビデンスに基づいた効果的な治療があります。

  • トラウマフォーカスト認知行動療法(TF-CBT)トラウマ体験を安全に処理し、思考パターンを変えることを目指す心理療法。
  • EMDR(眼球運動による脱感作と再処理)眼球運動を用いてトラウマ記憶の処理を促進する治療法。流産後のPTSDへの効果が示されている。
  • 暴露療法(エクスポージャー)段階的にトラウマと向き合うことで恐怖反応を和らげる治療。必ず専門家の指導のもとで行う。
  • 薬物療法必要に応じてSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などの抗うつ薬が使用される。
ANXIETY

流産と不安障害

流産後6週間以内の女性の約32.5%が不安症状を経験するとされています。とくに次の妊娠への予期不安が中心となり、医療機関への恐怖や妊婦・赤ちゃん関連への不安として現れます。

不安の特徴

流産後の不安の特徴

流産後、多くの人が強い不安を経験します。特に次の妊娠への強い恐れ、「また流産するのではないか」という予期不安が中心となります。2025年の研究では、流産後6週間以内の女性の約32.5%が不安症状を経験することが明らかになっています。

主な現れ方

流産後の不安の主な現れ方——5つのパターン

😰
次回妊娠への予期不安
「また妊娠したいが、また流産したら耐えられない」という強い恐れ。
🤰
妊娠後の過度の心配
次の妊娠中に、些細な症状でも「また流産する」と極度に不安になる。
🏥
医療機関への恐怖(医療トラウマ)
産婦人科の診察台、超音波検査室などへの強い恐れ・回避。
👶
妊婦・赤ちゃん関連への不安
妊婦に会う、赤ちゃんを見る、育児用品を見ることへの強い不快感・不安。
💓
パニック発作
強い不安が動悸・息切れ・めまい・発汗などの身体症状として現れる。
アプローチ

不安に対するアプローチ

流産後の不安を和らげるためのアプローチには以下のようなものがあります。

  • 認知行動療法(CBT)不安を引き起こす思考パターンを特定し、よりバランスのとれた見方へと変えていく心理療法。不安障害に対するエビデンスが最も豊富。
  • マインドフルネス「今ここ」に意識を向けることで、「また流産するかもしれない」という未来への過度の心配から距離を置く練習。
  • グラウンディング技法強い不安が生じたとき、感覚に集中することで「今・ここ」に戻る(5つの見えるもの、4つの触れられるもの、3つの聞こえるもの、2つの匂い、1つの味を意識する)。
  • 段階的曝露不安の強い場所や場面に少しずつ慣れていくプロセス(必ず専門家の指導のもとで)。
  • 薬物療法必要に応じてSSRI、SNRIなどの抗不安・抗うつ薬が使用される。
RECURRENT LOSS

繰り返し流産(不育症)と複雑性悲嘆

2回以上の流産を繰り返す場合に「不育症」と診断されます。繰り返す喪失は心理的ダメージを累積させ、複雑性悲嘆(遷延性悲嘆障害)へと発展することもあります。

不育症とは

不育症とは——定義と頻度・治療

不育症(ふいくしょう)とは、妊娠はするものの、流産・死産・早期新生児死亡を繰り返して生きた子どもを得ることができない状態です。一般的には、2回以上の流産・死産を繰り返す場合に不育症と診断されます(以前は3回以上でしたが、近年は2回以上に見直される傾向にあります)。

  • 日本での頻度日本では約3〜5%の妊娠経験者が不育症に当てはまるとされる。
  • 抗リン脂質抗体症候群不育症の原因として約10〜15%。
  • 子宮形態異常不育症の原因として約10〜15%。
  • 染色体構造異常夫婦のどちらかに染色体構造異常がある場合、約3〜5%。
  • 治療後出産率適切な治療(ヘパリン療法、低用量アスピリンなど)を行えば、約70〜80%の方が出産にたどり着けるとされている。
心への影響

繰り返す喪失が心に与える影響——5つの側面

流産を繰り返すことは、単に「悲しい体験」が繰り返されるだけでなく、心理的なダメージが累積・複雑化する「複合的な喪失」をもたらします。

🪫
希望の消耗
最初の流産では「次こそは」という希望があっても、繰り返すごとに希望が削られ、無力感・絶望感が深まる。
次の妊娠への恐れ
妊娠したことを喜べず、「どうせまた流産する」という予期悲嘆が先行する。
🏥
医療機関への複雑な感情
助けてほしい場所であるはずの病院に対し、恐怖・不信感・無力感を抱くようになることがある。
🔇
人間関係の歪み
繰り返す流産を周囲に話すことへの疲れ、「また流産した」と言いにくくなる孤立化。
🪞
アイデンティティの危機
「自分は母親になれない体なのでは」という自己概念への深刻な打撃。
複雑性悲嘆

複雑性悲嘆(遷延性悲嘆障害)

繰り返す流産や、流産から長期間が経過しても悲嘆が続く場合、複雑性悲嘆(遷延性悲嘆障害:Prolonged Grief Disorder)に発展していることがあります。

  • 喪失から6ヶ月以上が経過しても、強い悲嘆と機能障害が続いている状態
  • 亡くなった胎児への強い思慕・渇望が中心症状となる
  • 日常生活(仕事、家事、対人関係)への参加が著しく障害される
  • DSM-5(米国精神医学会の診断基準)において、2022年に独立した診断名として認められた比較的新しい概念
  • 治療には、複雑性悲嘆への特化した心理療法(CGT:複雑性悲嘆治療)や認知行動療法が有効
PARTNER & FATHER

パートナーと悲嘆——男性・父親の心理的影響

流産はパートナー(配偶者・夫・同性パートナーなど)も深く傷つけますが、その悲嘆はしばしば見過ごされます。男性パートナーの悲嘆の特徴と、カップルで乗り越えるための工夫を整理します。

パートナーの悲嘆

パートナーも悲嘆を経験する

流産は、妊娠した本人だけでなく、そのパートナー(配偶者、夫、同性パートナーなど)も深く傷つける出来事です。しかし、パートナーの悲嘆はしばしば見過ごされます。「男性だから強くいなければ」「妻を支える立場だから」という社会的プレッシャーが、パートナー自身の悲しみの表出を抑制します。

男性の特徴

男性パートナーの悲嘆の特徴——5つの側面

厚生労働省の資料(聖路加国際大学・石井慶子氏の調査研究)でも指摘されているように、父親(男性パートナー)の悲嘆は、母親とは異なる様相を持ちます。

🫀
身体体験の違い
母親は身体的に妊娠を経験するが、父親はその直接的な身体体験を持たないため、喪失感の性質が異なる場合がある。
🤐
悲嘆表出の難しさ
「男性は泣いてはいけない」「強くいなければ」という文化的規範が、悲しみを外に出すことを難しくする。
😵
妻・パートナーの悲しみへの困惑
強い悲嘆を示すパートナーに対して「どう接すればいいのかわからない」と困惑し、適切なサポートができないと感じることが多い。
💼
「頑張り屋」として役割を担う
仕事に戻る時期も早く、悲しみを処理する時間が十分に取れないことが多い。
🚷
サポートへのアクセスの難しさ
男性が「悲嘆のサポートを求める」という行動は社会的に受け入れられにくく、相談につながりにくい。
カップルとして

カップルとして悲嘆を乗り越えるために——5つの工夫

流産はカップルの関係に大きな影響を与えます。悲嘆のスタイルや表現の違いが、互いに「理解されていない」という感覚を生み、関係に亀裂が生じることも少なくありません。

  • 悲嘆のスタイルが違って当然と認識する同じ体験をしても、悲嘆の表れ方は人によって異なる。どちらが正しいということはない。
  • 「話し合う」ことを日課にする「今日はどう感じた?」と短くても話す時間を持つことが関係の維持に役立つ。
  • 相手の悲しみのタイミングを尊重する一方が楽になってきた時期に、もう一方がより深い悲しみに入ることがある。タイミングのずれを責めない。
  • カップルカウンセリングの活用コミュニケーションが難しいと感じるときは、カップルカウンセリング(夫婦療法)を活用することも有効。
  • パートナーも自身のサポートを求めるサポートする側もサポートを必要としている。男性向けのサポートグループや相談窓口を利用することを恥ずかしいと思わない。
FOR FAMILY & FRIENDS

周囲の人がしてはいけないこと・できること

善意の言葉でも、流産経験者を深く傷つけることがあります。「悲嘆の無効化(Grief Invalidation)」と呼ばれるNGな言葉と、寄り添うための具体的な行動を整理します。

NGな言葉

言ってはいけない言葉——「悲嘆を無効化する言葉」

善意から出た言葉でも、流産を経験した人を深く傷つけることがあります。以下のような言葉は「悲嘆の無効化(Grief Invalidation)」と呼ばれ、当事者の心の回復を妨げます。

妊娠の機会について
NG
また妊娠できるよ
OK
つらかったね。今あなたが感じている悲しみは、いま失った命の悲しみ。それを丸ごと受け止めてくれる人がここにいるよ。

今回の喪失を軽視する。「また妊娠できる」ことと「今失った命」は別の話。

妊娠週数について
NG
早い週数だったから良かった/まだ人間じゃなかったから
OK
週数の長短は関係ない。あなたが大切に思っていた命だったんだよね。

当事者が感じていた命への愛着を否定する言葉。週数の長短と悲しみの深さは無関係。

宗教的な慰めについて
NG
神様のご意志だよ/天国に行ったんだよ
OK
つらいよね。あなたの感じ方を尊重したい。

宗教観の押しつけ。信じていない人には苦痛になる可能性がある。

原因への言及
NG
体に問題があったんでしょ/自然の選択だから
OK
理由はわからないけれど、それはあなたのせいじゃない。

「流産して正解」という意味に聞こえ、当事者の悲しみを否定する。

前を向くことへの催促
NG
いつまでも落ち込んでいないで前を向かないと
OK
あなたのペースで大丈夫。悲しんでいい時間が必要なんだよ。

悲嘆に「期限」を設けることで、当事者を急かし孤立させる。

他者との比較
NG
もっとひどい人もいるよ
OK
つらさを比べる必要はない。あなたが今つらいことは本物だよ。

当事者の苦しみを相対化し、「悲しむ権利がない」と感じさせる。

触れない・無視
NG
流産について何も触れない
OK
あの時のこと、今も気にかけているよ。話したくなったらいつでも聞くからね。

「なかったこと」として扱われる孤独感を生む。

寄り添い方

周囲ができること——6つの寄り添い方

流産を経験した人に対して、周囲の人ができる最も大切なことは「悲しみを本物として認めること」です。

  • 「つらかったね」と共感の言葉を伝える——解決策を提示したり、明るい面を伝えようとするより、まず「どれほどつらいか」を認める言葉が力になる
  • 聴く姿勢を持つ——当事者が話したいときに、アドバイスや自分の意見を挟まず静かに聴く。「何か言わなければ」と焦らなくていい
  • 具体的なサポートを申し出る——「何かできることがあれば」という曖昧な申し出より、「今週の食事を届けてもいい?」「一緒に買い物に行こうか?」という具体的な提案の方が当事者には助かる
  • 長期的に寄り添う——流産から数週間が経っても、当事者のことを気にかけている姿勢を示す。記念日や命日を覚えておくだけでも大きな意味を持つ
  • 当事者のペースを尊重する——「もう大丈夫そうだね」と決めつけず、当事者が「悲しい」と言えば「そうだよね、悲しいよね」と受け止める
  • 妊娠報告・育児の話題には配慮する——友人・知人への妊娠報告を直接ではなくメッセージで伝える、育児の話題を避けるなど、相手の状態に配慮した行動をとる
長期的に寄り添うことが力になる記念日や命日を覚えておくこと、数週間経った後も「気にかけているよ」と声をかけることは、当事者にとって大きな支えになります。「もう大丈夫だろう」と決めつけず、当事者のペースを尊重しましょう。
SELF CARE

流産後の回復を支えるセルフケア

セルフケアは「自分を甘やかすこと」ではなく、心身の回復に必要なエネルギーを補充するための積極的な行動です。基本的な6つのセルフケア、コミュニティの活用、職場対応について整理します。

基本のセルフケア

心の回復のための基本的な6つのセルフケア

セルフケアとは「自分を甘やかすこと」ではなく、心身の回復に必要なエネルギーを補充するための積極的な行動です。流産後は特に、自分を大切にすることへの許可を自分自身に与えることが重要です。

SELFCARE 1
感情を抑え込まず表現する
泣くことを許す。日記に気持ちを書く。信頼できる人に話す。感情の表出は回復の重要な一部。
感情の表出
SELFCARE 2
身体の基本的なケアを優先する
睡眠・食事・水分をきちんと取る。疲れているときは休む。身体の回復が心の回復を支える。
身体ケア
SELFCARE 3
SNSとの距離を取る
妊娠・出産・育児に関する投稿を見ることで傷つくと感じるなら、SNSを一時的に控えたり、関連アカウントをミュート・ブロックすることを躊躇わない。
トリガー回避
SELFCARE 4
小さな喜びを意識する
好きな音楽を聴く、好きな香りのお茶を飲む、自然の中を散歩する……など、小さな喜びを日常に取り入れることは自己否定ではない。
喜びの再開
SELFCARE 5
記念・追悼の方法を持つ
名前をつける、花を供える、絵を描く、手紙を書く……形は何でも構わない。命を悼み記念する行為が、悲嘆の健全な表出につながる。
追悼
SELFCARE 6
自分を責める思考パターンに気づく
「自分のせいだ」という思考が浮かんだとき、「それは本当か?」と問い直す。流産の大部分は誰のせいでもない。
認知の見直し
コミュニティ

グリーフケアのコミュニティ・つながりの力

同じ体験をした人とつながることで、「自分だけではない」という感覚と、深く理解されるという体験が得られます。

  • 流産経験者のサポートグループ同じ体験を持つ人同士が集まる自助グループ。厚生労働省がリストアップしているグループや、オンラインで参加できるグループもある。
  • ポコズママの会(pocosmama.jp)流産・死産を経験した女性で作るオンラインコミュニティ。同じ体験を持つ人のサポートを得られる。
  • オンラインコミュニティの活用外出が難しい時期でも、オンラインで同じ体験を持つ人とつながることができる。
  • 無理につながらなくていい他者の体験に触れることが苦しい場合は、自分のタイミングでグループ参加を検討すれば十分。
職場対応

職場への対応とその課題——4つのポイント

流産後の職場復帰は、多くの人が難しさを感じます。特に初期流産の場合は、妊娠を職場に知らせる前であったケースも多く、有給休暇を使って休んでも、実態を説明しにくいという状況があります。

  • 職場への開示は義務ではない——流産のことを職場に話すかどうかは当事者が決めること。「流産のため」と伝えなくても、体調不良として休む権利がある
  • 必要な休養を取ることを優先する——「すぐに戻らなければ」という焦りが回復を遅らせることがある。主治医と相談しながら復帰のタイミングを決める
  • 復帰後に配慮を求めることができる——しばらくは妊婦・赤ちゃんに関する業務や話題から外してほしいという要望を、上司・人事に伝えることは正当な配慮の申し出
  • 産業カウンセラーや保健師の活用——職場に産業カウンセラーや産業保健師がいる場合は相談できる
PROFESSIONAL HELP

専門家によるケアと治療

セルフケアや周囲のサポートだけでは限界があるとき、精神科・心療内科や心理カウンセラーへの相談が大切な選択肢になります。受診の目安・治療法・自立支援医療制度について整理します。

相談タイミング

専門家に相談すべきタイミング——7つのサイン

以下のような状態が続く場合は、精神科・心療内科への受診や、心理カウンセラーへの相談を検討してください。「まだ専門家に相談するほどではない」という思いが回復を遅らせることがあります。

  • 強い気分の落ち込みや不安が2〜4週間以上続いている
  • 日常生活(仕事、家事、食事、睡眠)に著しい支障が出ている
  • 死にたい、消えたいという気持ちが生じている
  • 流産の場面がフラッシュバックとして繰り返し蘇る
  • 産婦人科・妊婦・赤ちゃん関連への強い回避が続く
  • 流産から6ヶ月以上が経過しても、日常生活に戻れていない
  • 繰り返す流産(不育症)で、精神的な限界を感じている
治療法

精神科・心療内科での5つの治療

流産後のメンタルヘルスの問題は、適切な治療によって回復が見込めます。

  • 薬物療法うつ病・不安障害・PTSDに対して、SSRI(パロキセチン、セルトラリンなど)、SNRI(デュロキセチンなど)などの薬が使用される。次の妊娠を希望する場合は、薬の安全性について医師と相談する。
  • 認知行動療法(CBT)うつ、不安、PTSDに対するエビデンスが最も豊富な心理療法。流産に伴う自責思考、破局的思考のパターンを変えることができる。
  • EMDR流産のトラウマ記憶の処理に効果的。日本でも認定されたEMDRセラピストが増えている。
  • 複雑性悲嘆への特化した心理療法(CGT)複雑性悲嘆に特化した治療法。通常のうつ病治療では不十分な場合に検討される。
  • グリーフカウンセリング悲嘆のプロセスを専門的にサポートするカウンセリング。
自立支援医療

自立支援医療制度(精神通院医療)の活用

流産後のうつ病、PTSD、適応障害、不安障害などで精神科・心療内科に継続的に通院する必要がある場合、自立支援医療制度(精神通院医療)を活用することで医療費の自己負担を軽減できます。

自立支援医療制度(精神通院医療)について精神科・心療内科への通院にかかる医療費が、通常の3割負担から原則1割負担に軽減されます(所得に応じた自己負担上限あり)。申請は市区町村の福祉担当窓口で行います。主治医の診断書が必要です。詳細は最寄りの精神保健福祉センターまたは市区町村窓口にお問い合わせください。
SUPPORT SYSTEMS

日本の支援制度・相談窓口

日本では近年、流産・死産を経験した方への支援が整備されつつあります。公的機関・民間NPO・電話相談窓口を一覧で整理します。

支援リソース一覧

活用できる9つの支援・相談リソース

公的機関・自治体・NPO・電話相談窓口など、流産後に利用できる支援制度は多岐にわたります。状況や必要に応じて使い分けてください。

  • こども家庭庁「流産・死産等を経験された方へ」流産・死産を経験した方向けの情報・相談窓口のポータルページを提供(cfa.go.jp)。
  • プレコンセプションケアサイト流産・死産についての心のケアと支援制度についての情報提供(precon.cfa.go.jp)。
  • 自治体のグリーフケア相談自治体によっては、流産・死産経験者向けの専門グリーフケア相談を実施している(例:総社市、さいたま市、東京都北区など)。
  • 精神保健福祉センター各都道府県・政令指定都市に設置。精神科医・心理士・精神保健福祉士に無料相談可能。精神科受診に抵抗がある場合の「最初の相談窓口」として活用でき、流産後のうつ・悲嘆・PTSD・不育症による心の問題なども相談対象。地域の医療機関や社会資源への橋渡しも行う。電話相談・面接相談を実施(自治体により異なる)。
  • 自立支援医療制度(精神通院医療)精神科・心療内科への通院医療費が、通常の3割負担から原則1割負担に軽減(所得に応じた自己負担上限あり)。申請は市区町村の福祉担当窓口で行い、主治医の診断書が必要。詳細は最寄りの精神保健福祉センターまたは市区町村窓口へ。
  • ポコズママの会(pocosmama.jp)流産・死産経験者によるNPO。当事者同士のつながりと情報提供。
  • 不育症サポートネットワーク不育症の当事者支援・情報提供・医療機関紹介。
  • よりそいホットライン(0120-279-338)24時間対応の無料電話相談。孤独・不安・悲しみなど何でも相談可能。
  • いのちの電話(0120-783-556)24時間対応の無料電話相談。死にたい気持ちがある場合も。
NEXT PREGNANCY

次の妊娠への恐れと心の準備

「また妊娠したい」という望みと、「また流産したら耐えられない」という恐れが同時に存在する状態は、流産経験者の多くが抱える複雑な感情です。心の準備、不安への対処を整理します。

複雑な感情

次の妊娠への複雑な感情

流産を経験した後、次の妊娠を考えるにあたって、多くの人が複雑な感情を抱えます。「また妊娠したい」という望みと、「また流産したら耐えられない」という恐れが同時に存在する状態は、非常につらいものです。

  • 予期悲嘆(Anticipatory Grief)次の妊娠を望みながら、すでに「また流産するかもしれない」という悲しみを先取りして経験している状態。
  • 妊娠への喜びを感じることへの罪悪感「喜んだらまた傷つく」という自己防衛から、妊娠の喜びを感じることをあえて抑制する。
  • 「虹の赤ちゃん(Rainbow Baby)」の概念流産・死産などを経験した後に生まれた赤ちゃんを、嵐の後の虹に例えた言葉。この言葉を知ることで、次の妊娠を「前の喪失を乗り越えた証」として意味づけることができる人もいる。
心の準備

次の妊娠を迎えるための5つの心の準備

次の妊娠を目指す前に、心の準備として以下のことを考えてみてください。

  • 十分に悲しむ時間を取る「早く次の妊娠を」と急がず、今回の喪失を十分に悼む時間を持つことが、次の妊娠への心理的な準備につながる。
  • 心理的なサポートを整えてから可能であれば、次の妊娠前にカウンセリングや心理療法を受け、悲嘆とトラウマをある程度処理しておくことが望ましい。
  • 「また流産しても大丈夫」という準備「今度こそ絶対大丈夫」と思い込もうとするより、「もし流産になっても、自分には乗り越える力と支えがある」という心理的準備の方が現実的で安定につながる。
  • 医療チームとの信頼関係を築く次の妊娠では不安が高まる。気になることをすぐに相談できる産婦人科を見つけ、「何かあればすぐ連絡できる」という安心感を持てる環境を整える。
  • サポートネットワークを確認する次の妊娠中に不安になったとき、誰に相談できるかを事前に確認しておく。
妊娠中の対処

次の妊娠中の不安への対処——5つのアプローチ

流産経験者は、次の妊娠中に強い不安を抱えることが多いです。「妊娠を喜べない」「毎日が不安で仕方ない」という経験は、流産後の妊娠では非常によくあることです。

  • 不安を感じることは正常——以前の流産体験があれば、次の妊娠中に不安を感じるのはごく自然なこと。「不安を感じる自分はおかしい」と自己批判しなくていい
  • マインドフルネスの実践——「今日一日、赤ちゃんは元気だ」という「今ここ」への集中が、未来への過剰な心配を和らげるのに役立つ
  • 産科医や助産師との密なコミュニケーション——不安な症状があればすぐに相談できる関係を作る。「心配しすぎ」と言われても、不安が続くなら改めて相談することを躊躇わない
  • 「妊娠初期を一段ずつ登る」というアプローチ——「無事に出産できるか」という大きなゴールより、「今日の検診まで」「心拍確認まで」「12週まで」と段階的に目標を設定する
  • 専門家のサポートを継続する——妊娠中も心理士・カウンセラーとの面談を継続することで、不安の管理がより容易になる
💡
一段ずつ登る「無事に出産できるか」という大きなゴールより、「今日の検診まで」「心拍確認まで」「12週まで」と段階的に目標を設定するアプローチが、流産後の妊娠を支える有効な方法です。
FAQ

よくある質問

流産・悲嘆・回復について、多くの方が抱える代表的な疑問にお答えします。

7つの質問

流産と悲嘆についてのよくある質問

Q. 流産してから何ヶ月も経つのに、まだ悲しい気持ちが消えません。おかしいのでしょうか?

A. おかしくありません。研究によれば、流産から数年が経過した後でも、臨床的に意味のある悲嘆レベルを示す人が半数以上いるというデータもあります(ある研究では平均4年後でも57%)。悲嘆に「正しい期間」はなく、回復のペースは人によって大きく異なります。ただし、悲しみが日常生活(仕事、睡眠、食事、対人関係)に著しい支障を与えている場合や、死にたいという気持ちが生じている場合は、精神科・心療内科への受診をご検討ください。

Q. 初期流産(8週)でも、こんなに深く傷ついていいのですか?

A. もちろんです。悲しみの深さは妊娠の週数とは無関係です。妊娠が分かった瞬間から、胎内の命への愛着が始まります。「まだ8週だから」「心拍も確認していないから」という言葉で自分の悲しみを小さくする必要はまったくありません。あなたが感じている喪失感は本物であり、それだけその命を大切に思っていた証拠です。

Q. 「自分のせいで流産した」という気持ちが消えません。本当に自分のせいなのでしょうか?

A. 大多数の流産は、母親の行動とは無関係です。流産の約50〜70%は胎児の染色体異常が原因であり、これは妊娠した時点で既に決まっているものです。日常的な運動、性行為、仕事、ストレス、食事内容のほとんどは流産の直接的原因にはなりません。「あのときのあれが原因だったのでは」という思いは、流産後に非常によく見られる認知パターンですが、それが事実を反映しているとは限りません。自責感が強い場合は、カウンセラーや産婦人科医に相談することで、客観的な視点を得ることができます。

Q. パートナーが流産後もあまり悲しんでいるように見えません。冷たい人なのでしょうか?

A. パートナーが外見上「悲しんでいないように見える」のは、多くの場合「悲しみを内側に抱えている」か「感情表出を抑制している」ことを意味します。特に男性は「強くいなければ」という社会的プレッシャーから、悲しみを外に出しにくいことが多いです。また、悲嘆のプロセスやタイミングも個人差が大きく、一方が深く落ち込んでいる時期に、もう一方が「頑張らなければ」モードになることもあります。冷たいのではなく、それぞれのやり方で悲しみと向き合っているのかもしれません。感情について率直に話し合う機会を持つことが助けになります。

Q. 友人が「また妊娠できるよ」「早い週数だから良かった」と言います。どう対応すればいいですか?

A. その言葉が傷つくのは当然です。多くの人は悪意なく、よかれと思ってそのような言葉をかけますが、結果として悲嘆を無効化する言葉になってしまっています。対応としては、エネルギーがある場合は「その言葉は今の私にはつらい。ただ『つらかったね』と言ってくれるだけで十分」と伝えることができます。エネルギーがない場合は、しばらくその人との接触を減らすことも自分を守るための選択です。理解してくれる人、流産経験者のコミュニティ、カウンセラーなど、より安全な場所でつながりを求めることも大切です。

Q. 流産を2回繰り返しました。不育症かどうか、どこで検査できますか?

A. 2回以上の流産を繰り返している場合、不育症の可能性を含めた精密な検査を受けることをお勧めします。不育症の検査・治療を行っている産婦人科・婦人科(不育症専門外来を持つ施設がある)に相談してください。日本産科婦人科学会のウェブサイトで、不育症対応医療機関を探すことができます。検査の結果、原因が特定され適切な治療を受けることで、多くの方が出産にたどり着けることが分かっています。また、検査・治療と並行して、繰り返す喪失による心理的なダメージのケアも重要です。精神保健福祉センターやカウンセラーへの相談も検討してください。

Q. 流産後、妊婦さんや赤ちゃんを見るのがつらく、SNSも見られなくなりました。これは普通のことですか?

A. 非常によくあることです。妊婦・赤ちゃん・育児に関連するものが「トリガー(引き金)」となって、喪失の悲しみや不安が強く喚起される状態は、流産後の悲嘆の正常な一部です。SNSのミュート・ブロック機能を使う、妊婦の多い場所を一時的に避ける、友人の妊娠報告に対して「今はおめでとうと言える状態ではない」と正直に伝えるなど、自分を守るための行動を躊躇わず取ってください。ただし、この回避が長期間続き、日常生活への支障が大きい場合は、PTSDや不安障害としてのケアが必要な可能性があるため、専門家への相談をご検討ください。

一人で抱え込まないで。
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流産の悲しみは、誰かに話すことで少し楽になることがあります。どうかあなたのつらい気持ちをココトモに聞かせていただきたいです。

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自立支援医療制度(精神通院医療)精神科・心療内科の通院医療費が原則1割負担に軽減。申請は市区町村窓口へ

このページの情報は、医師による診断や治療に代わるものではありません。症状が気になる場合は、心療内科・精神科への受診をご検討ください。

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