多職種連携とは?
MDT・IPW・各専門職の役割と地域連携をわかりやすく解説
精神科医・看護師・精神保健福祉士・作業療法士・公認心理師・薬剤師——複数の専門職がひとつのチームとして当事者と家族を支える「多職種連携」。基礎概念・各職種の役割・チームアプローチの有効性・地域連携の実際・課題と未来まで、必要な情報をすべてここにまとめました。
多職種連携とは何か——MDT・IPW・チーム医療
多職種連携は、異なる専門職資格を持つ複数の医療・保健・福祉の専門家が、共通の目標に向かって協力しながら支援を行う実践です。MDT・IPW・チーム医療という3つの用語の違いを理解することが、現代のメンタルヘルスケアを把握する出発点となります。
多職種連携の定義
多職種連携とは、異なる専門職資格を持つ複数の医療・保健・福祉の専門家が、共通の目標に向かって協力しながら支援を行う実践のことを指します。一人の専門家では担いきれない複雑な心の問題に対し、各職種が専門知識を持ち寄り、当事者と家族を真ん中に置きながら包括的な支援を提供します。
英語では主に2つの概念が使われます。MDT(Multi-Disciplinary Team/多職種チーム)は複数の職種がそれぞれの専門的判断を持ち寄り一定の目標を達成するチームを意味します。IPW(Interprofessional Work/専門職連携実践)は単なる情報共有を超えて、各専門職が互いの役割と専門性を尊重・学習し合いながら協働するあり方を指す、より高次の概念です。
MDT・IPW・チーム医療の違い
日本では「チーム医療」という言葉も広く使われています。厚生労働省は2010年に「チーム医療の推進に関する検討会」の報告書を公表し、医療スタッフが専門性を前提に目的と情報を共有しながら業務を分担・補完し合うことで、医療の質の向上と患者負担の軽減を図ることをチーム医療の本質と定義しました。
Person-Centered——当事者中心の姿勢
多職種連携の最も重要な点は、「当事者中心(Person-Centered)」の姿勢です。各職種が自分の専門分野の視点から判断するだけでなく、その人の生活全体・人生の目標・価値観を軸にしてチームの方向性を決めるという考え方が根本にあります。
精神科においては、症状の緩和という医学的目標だけでなく、その人が地域でどのような生活を送りたいか、どのような回復(リカバリー)を望むかを中心に、チームが機能するよう設計されています。
専門職連携教育(IPE)との関係
IPWと密接に関連するのが「専門職連携教育(IPE:Interprofessional Education)」です。IPEとは、将来の医療・福祉専門職が学生のうちから他職種とともに学び、互いの役割を理解し連携能力を身につけるための教育アプローチです。多くの大学がカリキュラムにIPEを取り入れ始めており、チーム医療の質を根本から底上げする取り組みとして注目されています(詳細は連携教育のセクションで解説)。
なぜメンタルヘルスに多職種連携が必要なのか
心の病気は一般的な身体疾患と比べてはるかに多面的な問題を含んでいます。一人の専門家がすべてを担うことは不可能であり、多職種チームの存在が不可欠です。
心の問題に含まれる5つの次元
たとえば統合失調症の人を考えると、次の少なくとも5つの異なる次元の問題が同時に存在します。
入院中心主義から地域生活中心へ
日本のメンタルヘルス医療には長らく「入院中心主義」という課題がありました。精神科病床数が世界的に見て突出して多く、長期入院が常態化していた歴史があります。この問題を是正し、地域生活への移行を促進するためには、病院の医師・看護師だけでなく、地域の福祉・行政・就労支援などの多様な専門家が連携する仕組みが必要でした。
2004年の「精神保健医療福祉の改革ビジョン」以降、日本は「入院医療中心から地域生活中心へ」という方針を打ち出し、多職種連携の重要性が一層高まっています。
うつ病・不安障害でも増す重要性
うつ病・不安障害・適応障害などの「軽症から中等症」のメンタルヘルス問題でも、多職種連携の重要性は増しています。精神科専門病院だけでなく、一般科クリニック・産業保健・学校・地域包括支援センターなど多様な場面でメンタルヘルスの問題が顕在化する現代において、それぞれの場で働く専門職が互いに情報をつなぎ、適切なタイミングで適切なサポートを届ける「連続的なケア(Continuum of Care)」を実現するためにも、多職種連携の実践が欠かせません。
2026年度診療報酬改定の方向性
2026年度の診療報酬改定では、精神科における多職種チーム医療への評価が大幅に強化される予定です。公認心理師による心理支援加算の拡充、精神保健福祉士による地域連携のハブ機能の強化など、制度的にも多職種連携が推進される方向が明確になっています。
精神科チームを構成する職種と役割
精神科の多職種チームは、施設の規模や機能によって構成が異なりますが、代表的な職種とその役割を整理します。各職種が「自分の専門領域のエキスパート」であると同時に、「チームの一員としてほかの職種の視点を尊重する姿勢」を持つことが、チームの質を左右します。
精神科チームの中核職種
生活者を支えるソーシャルワーカー
精神保健福祉士(Psychiatric Social Worker:PSW)は、1997年に国家資格化された精神科ソーシャルワークの専門職です。医療・保健・福祉の幅広い領域で働き、精神障害のある人を「患者」ではなく「生活者」として捉え、その人が地域で自分らしい生活を送れるよう支援することを使命としています。
PSWの役割は多岐にわたります。まず「医療の入口」として受診のハードルを下げる相談支援や、適切な医療機関への橋渡しを行います。入院中は住居・経済・家族関係などの社会的問題を整理しながら、退院後の生活を見据えた「退院支援」を計画します。福祉サービス(障害福祉サービス・自立支援医療制度など)の申請援助・関係機関との連絡調整・家族支援なども主要な業務です。
PSWが多職種チームにおいて特に重要なのは、「コーディネーター(調整役)」としての機能です。医療・保健・福祉・行政・就労・住居など多様な社会資源を把握し、それをつなぎ合わせる「ケアコーディネーション」はPSWの中心的な専門性です。多職種カンファレンスでは、生活背景・社会資源の活用状況・家族の状況などの情報をチームに提供し、医学的視点だけでは見えにくい生活者としての視点をチームにもたらします。
近年では、ACT(Assertive Community Treatment/包括型地域生活支援プログラム)やアウトリーチ支援(訪問支援)においてもPSWの役割が大きく、地域に出向いて当事者の生活の場で支援を行う「アウトリーチ型PSW」が増えています。2026年度の診療報酬改定でも、PSWの伴走支援・地域連携ハブ機能への評価強化が盛り込まれており、その社会的重要性はさらに高まっています。
- 受診・入院に関する相談援助
- 退院支援・退院後の生活設計支援
- 障害福祉サービスの利用調整と申請支援
- 経済的問題(生活保護・障害年金等)の相談対応
- 家族への情報提供・家族支援
- 地域の支援機関との連携・調整
- 就労支援・住居確保支援
- アウトリーチ(訪問)による地域生活支援
- 権利擁護(アドボカシー)
活動と参加を通じたリハビリテーション
作業療法士(Occupational Therapist:OT)は、心身の障害のある人が「作業(occupation)」——日常生活・仕事・余暇・社会参加など人が行うすべての活動——を通じて健康的な生活を取り戻せるよう支援する専門職です。身体リハビリのイメージが強い職種ですが、精神科における作業療法士の役割は非常に重要で、精神科病棟・デイケア・地域生活支援センターなど幅広い場で活躍しています。
精神科における作業療法(Psychiatric Occupational Therapy)の核心は、「何をしたいか」「どんな生活を送りたいか」という当事者の主体的な意欲を引き出し、その実現に向けて段階的に活動を積み重ねていくプロセスにあります。たとえば長期入院で生活リズムが乱れ、意欲を失った患者には、まず簡単な作業(折り紙・塗り絵・料理など)から始め、グループ活動・外出練習・就労準備訓練と段階を踏んで社会参加へとつなげていきます。
具体的な支援には次のものが含まれます。生活技能訓練(SST:Social Skills Training)ではコミュニケーション・服薬管理・金銭管理・家事などの日常生活スキルを段階的に練習します。認知機能リハビリテーションでは、統合失調症などに伴う認知機能低下(注意・記憶・問題解決能力など)の改善を目指したプログラムを提供します。感覚統合訓練では、感覚処理の問題(発達障害やトラウマに関連することもある)に対応します。
多職種チームにおけるOTの独自の貢献は、「その人の活動能力と参加の可能性を具体的に評価・支援できる専門職」であることです。医師が診断と薬物療法、PSWが社会資源の調整を行う中で、OTは「実際の生活動作・スキルの部分」をつなぐ役割を担います。厚生労働省の審議会でも、精神科作業療法士は「入院から地域生活への移行を支える要」として位置づけられています。
- 生活技能訓練(SST:Social Skills Training)
- 認知機能リハビリテーション(NEAR・CRTなど)
- 就労準備プログラム(IPS:個別就労支援)
- 感覚統合・感覚調整アプローチ
- グループ活動(料理・体操・創作など)
- 外出・地域参加支援
- 家族へのリハビリ指導
心理的アセスメントと心理支援
公認心理師(Certified Psychologist:CP)は、2017年に施行された公認心理師法に基づく日本初の心理職の国家資格です。それ以前は「臨床心理士(民間資格)」が心理職の中心でしたが、国家資格化により医療・福祉・教育・産業・司法など幅広い分野での活躍が制度的に整備されました。精神科・心療内科における多職種チームの中で、公認心理師は「心理的アセスメント(評価)」と「心理支援(心理療法)」を専門とする職種として位置づけられています。
心理的アセスメントとは、知能検査(WAIS・WISCなど)・人格検査(ロールシャッハ・MMPI・TEGなど)・神経心理学的検査など、標準化されたツールを用いて当事者の認知機能・パーソナリティ・情緒状態などを客観的に評価することです。このアセスメント結果は、精神科医の診断補助・治療方針の決定・教育的配慮の検討などに活用され、多職種チームへの貴重な情報提供となります。
心理支援(心理療法)としては、認知行動療法(CBT)・精神力動的心理療法・来談者中心療法・EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)・マインドフルネスに基づく介入(MBSR・MBCT)など、様々なアプローチが用いられます。特に認知行動療法はうつ病・不安障害・強迫症・PTSDなど多くの精神疾患でエビデンスが確立されており、公認心理師が担う中心的な心理支援として診療報酬でも評価されています(認知療法・認知行動療法加算など)。
2026年度の診療報酬改定では、公認心理師による心理支援加算の拡充が盛り込まれており、精神科チームにおけるCPの役割はさらに拡大する見通しです。また、コンサルテーション(他の専門職へのアドバイス)や心理教育(患者・家族への心理学的教育)も公認心理師の重要な機能であり、チーム全体の心理的知識と技術を高める「チームの心理専門家」としての役割が期待されています。
- 心理的アセスメント(各種心理検査の実施・解釈・報告)
- 個人心理療法(CBT・精神力動・来談者中心など)
- 集団心理療法・グループワーク
- 心理教育(患者・家族への教育プログラム)
- 危機介入(自殺リスクアセスメントを含む)
- 他職種へのコンサルテーション
- 調査・研究
チームアプローチの有効性——国内外のエビデンス
多職種チームアプローチの有効性については、国内外で多くの研究が行われており、特定の疾患・状況においてエビデンスが蓄積されています。主要な4つのモデルを紹介します。
エビデンスのある多職種モデル
情報共有とカンファレンス——チームの核となるコミュニケーション
多職種チームが機能するためには、各職種が持つ情報をいかに効果的に共有するかが決定的に重要です。「情報の非対称性」を解消するカンファレンスは、チーム医療の核をなします。
精神科で開催される代表的なカンファレンス
各職種が異なる情報を持っていても、それを共有する場や仕組みがなければチームとして機能しません。カンファレンス(会議体)は、多職種が定期的に集まり情報を共有・統合してケアの方向性を協議する場として、チーム医療の核をなします。
効果的なカンファレンスのポイント
- ✓定期開催(週次・月次など)で全職種が参加できる時間を確保する
- ✓当事者・家族の声を反映した議題設定を行う
- ✓各職種が対等な立場で発言できる雰囲気・ファシリテーションを工夫する
- ✓決定事項を明確に記録し、チーム全員が確認できるようにする
- ✓次回の評価日程を設定し、ケア計画の効果を継続的に評価する
地域連携——病院・診療所・福祉・行政・学校をつなぐ
多職種連携は一つの病院・施設の中だけで完結するものではありません。当事者が地域で生き生きと暮らし続けるためには、病院・診療所・福祉事業所・行政機関・学校・職場など、多様な機関や場が横断的につながる「地域連携ネットワーク」が不可欠です。
地域連携ネットワークの5つの軸
これを「地域包括ケアシステム」の精神保健版として構築することが、日本のメンタルヘルス政策の中心的な課題となっています。
- 病診連携・医療機関間連携重症度の高い患者は入院設備のある精神科病院、症状が安定したら地域診療所でフォロー。紹介状・診療情報提供書・共通アセスメントシートが情報共有ツール。
- 医療と福祉の連携就労継続支援(A型・B型)・就労移行支援・生活介護・共同生活援助(グループホーム)・地域活動支援センター等のサービスを相談支援専門員がPSWと連携してコーディネート。地域移行・地域定着支援の鍵。
- 行政との連携(精神保健福祉センター)各都道府県・政令市設置。心の健康相談・デイケア・家族支援・研修・調査研究を担い、地域の医療・福祉・行政機関をつなぐ「地域の要」。市町村の障害福祉担当部署・保健センター・生活保護担当窓口も重要資源。
- 学校との連携スクールカウンセラー(公認心理師・臨床心理士)・スクールソーシャルワーカー(社会福祉士・精神保健福祉士)が学校配置。発達障害・不登校・虐待・いじめへ対応し、医療・福祉・行政との橋渡し。要保護児童対策地域協議会など法定の多機関連携の場も活用。
- 職域(職場)との連携産業医・保健師・EAP(従業員支援プログラム)カウンセラー・人事担当者で産業保健チームを構成。職場ストレス問題・メンタル不調者の職場復帰支援(リワーク)で医療機関と連携。主治医意見書・職場復帰支援プランが共有ツール。
多職種連携の課題——縦割り・情報共有・役割分担の壁
多職種連携の有効性が認識されながらも、実践上にはさまざまな課題が存在します。これらの課題を正確に理解することが、より良い連携の実現に向けた第一歩となります。
現場が直面する5つの課題
当事者・家族をチームの一員として
現代の多職種連携において最も重要な視点の転換のひとつが、「当事者と家族を支援の受け手」から「チームの中心的なメンバー」として位置づけることです。
当事者中心ケアとリカバリー
これは「当事者中心ケア(Person-Centered Care)」「当事者参加(Service User Involvement)」という概念として国際的に普及しており、英国のNHSや国連障害者権利条約(CRPD)でも強く推奨されています。
日本でも「リカバリー(Recovery)」という概念の普及とともに、当事者参加の重要性が認識されるようになっています。リカバリーとは、精神疾患の症状が完全に消えることを指すのではなく、病気や障害があっても「希望と意味のある人生を自分らしく生きること」を指します。リカバリーの実現には、専門家が決めた治療を受け身に受けるのではなく、当事者自身が自らの回復の主体者として治療・支援の方向性に参加することが本質的に重要です。
ピアサポーターのチーム参加
実際の多職種チームへの当事者参加の形は様々です。ケアプランの作成・カンファレンスへの参加・目標設定への関与などが基本的な参加形態です。より進んだ形として「ピアサポート(Peer Support)」があります。
ピアサポーターとは、自身が精神疾患・精神障害の経験を持ちながら、その経験を活かして他の当事者の支援に携わる人々です。彼らが多職種チームに加わることで「経験者にしかわからない」視点や感覚がチームに持ち込まれ、支援の質が向上するとともに、当事者同士の「希望のモデリング(回復した先輩を見て回復への希望を持つ)」という効果も生まれます。
家族——第二の当事者としての家族支援
家族も多職種チームの重要なメンバーです。精神疾患を持つ人の多くは家族と生活しており、家族は日々の様子を把握できる最も身近な支援者であると同時に、精神的・身体的・経済的な負担を抱えることも多い「第二の当事者」でもあります。
家族へのサポートとして、家族心理教育(疾患・治療・対処法に関する情報提供と心理的支援を組み合わせたプログラム)・家族相談・家族会(自助グループ)への紹介などが多職種チームの重要な役割となっています。研究では、家族心理教育の実施が統合失調症の再発率を有意に低下させることが示されています。
当事者・家族のチーム参加を促進するポイント
- ✓専門用語を使わず、わかりやすい言葉でチームの判断・計画を説明する
- ✓「何を望むか」「何が大切か」という本人の価値観・希望を繰り返し確認する
- ✓カンファレンスへの本人参加を原則とし、参加が難しい場合は意向を代弁する仕組みを作る
- ✓ピアサポーターをチームに加える・当事者が運営に関わるプログラムを設ける
- ✓家族への心理教育・家族相談を定期的に提供し、家族の負担を軽減する
多職種連携教育(IPE)——次世代の医療福祉人材育成
多職種連携の質は、それを担う専門職の「連携能力」に大きく依存します。連携能力は現場経験で自然に身につくものではなく、意図的な教育によって育成する必要があるという認識から生まれたのがIPEです。
WHOによるIPEの定義
連携能力とは、自分の専門職アイデンティティを確立しながら、他職種の役割・専門性を尊重し、対等なコミュニケーションと協働判断ができる能力です。
IPEは「二つ以上の専門職が、互いから、互いについて、互いとともに学ぶこと」とWHOが定義しています。単に「他職種について知識を学ぶ」のではなく、実際に他職種の学生・専門家と共同でケースを検討したり、シミュレーション演習を行うことで、連携実践に必要なコミュニケーション・チームワーク・役割理解・倫理的判断などの能力を体験的に身につけることを目指します。
日本で実施されている大学
日本では多くの大学でIPEプログラムが実施されています。医学部・看護学部・薬学部・社会福祉学部などの学生が混合チームを作り、模擬患者・事例を用いたグループワーク、病院・施設での合同実習、共同ケアプラン作成などを通じてIPEを実践しています。
CIPWの6コンピテンシー・フレームワーク
IPEの教育目標として国際的に参照されているのが「コンピテンシー・フレームワーク」です。カナダのCIPW(Canadian Interprofessional Health Collaborative)が提唱する枠組みでは、次の6つのコンピテンシーが示されています。日本でも各大学がこうした国際基準を参考にIPEのカリキュラムを設計しています。
- ①患者・クライアント・家族・地域との関係当事者中心の姿勢を保ち、家族や地域とパートナーシップを築く能力。
- ②職種の役割の明確化自職種と他職種の役割・専門性を理解し説明できる能力。
- ③チーム機能効果的なチーム運営に貢献し、チームのダイナミクスを理解する能力。
- ④協働的リーダーシップ状況に応じて主導/支援の役割を切り替えるリーダーシップ能力。
- ⑤専門職間コミュニケーション異なる職種間で誤解なく情報・判断を伝え合うコミュニケーション能力。
- ⑥対立解決と相互依存の管理意見の対立を建設的に解決し、相互依存関係を健全に管理する能力。
IPEの成果
IPEの成果に関する研究も蓄積されており、IPEを受けた学生は他職種への態度・知識・コミュニケーション能力が改善し、卒業後の職場での連携実践においてもより効果的に機能するという報告があります。WHO(2010年)は「専門職連携教育と協働的実践のための行動の枠組み」を公表し、IPEが世界の医療保健課題に対応するための重要な戦略であると位置づけています。
多職種連携の未来——診療報酬改定とデジタル化の展望
2026年度の診療報酬改定は、日本における精神科多職種連携にとって大きな転換点となる見通しです。さらに、オープンダイアローグ・AI活用など新しい潮流も生まれています。
2026年度診療報酬改定の4つの柱
フィンランド発・対話型チームアプローチ
国際的な潮流として「オープンダイアローグ(Open Dialogue)」が注目を集めています。フィンランドで発展したこのアプローチは、精神科的危機に対してできるだけ早期に多職種チームと当事者・家族がひとつの場に集まり、対話を通じて危機を乗り越えるという実践です。
薬物療法を急がず、対話と関係性を通じた回復を重視するこの方法は、従来の多職種連携とは異なる「対話型チームアプローチ」として日本でも試験的な実践が始まっています。
人工知能(AI)の活用
人工知能(AI)の活用も多職種連携の未来に影響を与えつつあります。電子カルテのデータを解析して再入院リスクの高い患者を早期に特定するAIシステム・音声認識によるカンファレンスの自動議事録作成・多職種間のタスク管理を支援するデジタルプラットフォームなどの技術が実用化・研究段階に入っています。
7つのよくある質問
A. 精神科・心療内科を受診している場合は、まず主治医や担当看護師に「他のスタッフとも話したい」「生活のことや仕事のことで困っている」と伝えることから始めましょう。多くの精神科病院やクリニックには精神保健福祉士や公認心理師が在籍しており、主治医からの紹介または直接の相談予約が可能です。精神保健福祉センター(各都道府県に設置)では本人・家族が無料で相談でき、適切な支援機関につないでもらえます。支援を受けたことがない場合は、かかりつけ医や地域包括支援センターに相談するのも有効な第一歩です。どの専門職が必要かは、相談を通じてチームが一緒に考えてくれますので、まずは「困っている」気持ちを誰かに伝えることが大切です。
A. どちらも国家資格のソーシャルワーカーですが、対象分野が異なります。精神保健福祉士(PSW)は精神障害者の保健・福祉に特化した国家資格で、主に精神科病院・精神科クリニック・精神保健福祉センター・障害福祉サービス事業所などで活躍します。一方、社会福祉士は高齢者・障害者・児童・生活困窮者など幅広い福祉分野を対象とする国家資格で、社会福祉施設・行政機関・地域包括支援センター等で活動します。両資格を同時取得するケースも多く、「精神保健福祉士+社会福祉士」のダブルライセンスを持つ専門職も増えています。精神科の多職種チームではPSWがより中心的な役割を担うことが多いですが、地域包括ケアの視点では社会福祉士も重要な連携相手です。
A. 家族が多職種チームと関わる窓口として最も利用しやすいのは「家族相談」です。精神科病院の精神保健福祉士(PSW)や公認心理師が家族相談を担当しており、本人の状態・治療の進め方・家族としての対応方法・社会資源の利用方法を相談できます。「家族心理教育プログラム」は疾患の知識・症状への対処・コミュニケーション方法を系統的に学べる集団プログラムで、家族の負担軽減と本人の回復促進への効果が示されています。「家族会(自助グループ)」への参加も有益で、全国組織として「全国精神保健福祉連合会(みんなねっと)」があり、都道府県・市区町村レベルの家族会も多数あります。本人の同意が得られればカンファレンスへの参加も可能です。主治医や担当PSWに「家族としてどう関われるか」を積極的に確認してみましょう。
A. 「カウンセラー」は資格名ではなく職業の通称であり、法的に定義された資格要件がありません。そのため、専門的な訓練を受けていない人でも名乗れる状況があります。一方、公認心理師は2017年施行の公認心理師法に基づく国家資格で、大学・大学院での規定の教育課程と実習を修了し国家試験に合格した人のみが名乗ることができます。医療機関で働く「医療領域の公認心理師」は、医師の指示のもとで心理的アセスメント・心理療法・心理教育を行います。「臨床心理士」は公認心理師以前から心理職の中心を担ってきた民間資格(日本臨床心理士資格認定協会が認定)で、多くの医療・福祉・教育機関で公認心理師と同様の業務を担っています。現在は移行期で公認心理師と臨床心理士を両方持つ人が多く、医療機関の求人では「公認心理師・臨床心理士優遇」と記載されることが一般的です。相談機関を探す際はスタッフの資格を確認しましょう。
A. まず精神保健福祉センター(各都道府県設置)に問い合わせると、地域の精神科医療機関・福祉事業所の情報を得られます。「精神科救急情報センター(都道府県設置)」では急を要する場合の受診先相談に対応しています。インターネットでは「医療機能情報提供システム(各都道府県運営)」で精神保健福祉士・作業療法士・公認心理師などの職種の有無で医療機関を検索できる場合があります。公益社団法人日本精神科病院協会・一般社団法人日本総合病院精神医学会のウェブサイトも参考になります。「認定・指定入院医療機関」「精神科救急医療体制整備病院」「精神科急性期治療病棟」などの指定は多職種体制が整っている目安です。かかりつけの内科・一般科の医師や地域の相談支援専門員に紹介を依頼するのも良い方法です。
A. 学校内でまず相談できるのは、学級担任・養護教諭(保健室の先生)・スクールカウンセラー(公認心理師・臨床心理士)・スクールソーシャルワーカー(社会福祉士・精神保健福祉士)です。スクールカウンセラーは主に心理的サポートや保護者面談、スクールソーシャルワーカーは家庭環境・福祉的問題・関係機関との連携調整を担います。学校外では「子ども家庭センター(旧:児童相談所)」「市区町村の子育て相談窓口」「発達障害者支援センター」「精神科・心療内科(思春期専門外来を設ける機関もあります)」が相談先です。不登校や発達障害では教育委員会設置の「教育支援センター(適応指導教室)」や「特別支援教育コーディネーター」との連携も重要です。一つの窓口に相談すれば必要に応じて他の専門機関につないでもらえますので、まず身近な窓口に連絡することを躊躇わないでください。
A. 職場の「産業保健チーム」は、産業医・産業保健師・産業カウンセラー(EAPカウンセラー)・人事・管理職などで構成されます。従業員がメンタル不調を経験した際は、まず産業保健師や産業カウンセラーへの相談が入口となることが多く、そこから産業医面談・医療機関への受診勧奨・休職手続きの支援へとつながります。休職中は主治医が治療を担いながら、産業医が「職場復帰可能かどうか」の医学的判断を行い、人事担当者が傷病手当金・休職規程など各種制度を案内する形で産業保健チームと医療機関が連携します。職場復帰(リワーク)の段階では、主治医の復職許可意見・産業医の職場環境調整意見・人事の職場環境整備・上司や同僚の理解と受け入れ体制が複合的に機能する必要があり、これも立派な多職種連携の実践です。「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き(厚生労働省)」が実践的指針として公表されています。
一人で抱え込まず、
多職種チームに頼ってみませんか
あなたの困りごとは、医師だけが見るものではありません。精神保健福祉士・公認心理師・作業療法士など、生活と心を支える専門職がチームで関わります。まずはココトモで、話しはじめてみませんか。
このページの情報は、医師による診断や治療に代わるものではありません。症状が気になる場合は、心療内科・精神科への受診をご検討ください。
