メンタルヘルス用語辞典 · 夜食症候群(NES)

ナイトイーティング症候群とは?
原因・症状・診断基準・治療法・回復のステップを解説

夕食後の過食、夜中の覚醒に伴う摂食、朝の食欲不振——「食べないと眠れない」状態が続くナイトイーティング症候群(NES)。1955年に最初に報告されたこの摂食障害について、症状・原因・診断・治療・日常生活・周囲の関わりまで、必要な情報をひとつにまとめました。

ABOUT NIGHT EATING SYNDROME

ナイトイーティング症候群とは

ナイトイーティング症候群(夜食症候群/NES)は、夕食後の過食と夜間の覚醒に伴う摂食を特徴とする摂食障害の一つです。「食べないと眠れない」状態が続き、体重増加やうつ症状を伴うことが多い疾患です。

定義

ナイトイーティング症候群の定義——ただの「夜食」ではない

ナイトイーティング症候群(Night Eating Syndrome:NES)は、1955年にスタンカードらによって初めて報告された摂食障害です。夕食後の過食(1日の総カロリーの25%以上を夕食後に摂取)と、夜間覚醒に伴う摂食(週2回以上)を中核症状とし、朝の食欲不振を伴います。

単なる「夜食の習慣」とは異なり、NESでは食欲を調節するホルモン(レプチン、グレリン、メラトニンなど)の日内変動に異常が生じており、体内時計の食欲リズムが「後退」しています。そのため、本人の意志力の問題ではなく、生物学的な基盤を持つ疾患です。DSM-5では「他の特定される摂食障害」の一つとして認識されています。

普通の夜食
たまの夜食・おやつ
仕事が遅くなった時、お腹が空いた時にたまに夜食を食べる。食べなくても眠れるし、食べた後に強い罪悪感はない。日中の食事パターンは通常通り。
ナイトイーティング症候群
食欲リズムの異常による夜間過食
夕食後にもかかわらず繰り返し食べる、夜中に起きて食べないと眠れない。朝は食欲がない。罪悪感や抑うつを伴い、体重増加や生活への支障がある。3か月以上持続。
「意志が弱い」のではありませんNESは食欲を調節するホルモンの日内リズムの異常が関与する疾患です。「夜食をやめる意志力がない」のではなく、身体のリズムが乱れている状態です。適切な治療で改善できます。
疫学

NESは珍しい病気ではない

NESは一般に認知度は高くありませんが、実際には多くの方が苦しんでいる疾患です。特に肥満者やうつ病患者での有病率が高いことが知られています。

1.5%
一般人口におけるNESの推定有病率
10〜27%
肥満者(BMI30以上)におけるNESの有病率
50%以上
NES患者におけるうつ病の併存率
ダイエットに何度も失敗している方の中に、NESが隠れていることがあります。「意志力の問題」で片付けず、食事のパターン(特に夜間)を振り返ってみてください。
SREDとの違い

睡眠関連摂食障害(SRED)との違い

NESとしばしば混同される疾患に、睡眠関連摂食障害(Sleep-Related Eating Disorder:SRED)があります。両者は夜間の摂食という共通点がありますが、意識状態が決定的に異なります

NES
夜間摂食症候群
夜間摂食時の意識は完全に覚醒。翌朝も食べたことを覚えている。食品を意識的に選択する。摂食障害として分類される。
SRED
睡眠関連摂食障害
夜間摂食時は半覚醒(睡眠中)。翌朝は記憶がない。食品の選択は無意識(時に異物も)。睡眠障害として分類される。
💡
NESでは夜間に食べている時、本人は完全に覚醒しており、翌朝もそのことを覚えています。寝ぼけて食べるSREDとはこの点が明確に異なります。
受診の目安

こんな症状があれば受診を検討してください

以下のような症状や悩みがある場合、NESの可能性があります。一つでも当てはまり生活に支障がある場合は、専門家への相談を検討してみてください。

  • 夕食後に大量に食べてしまう日が週に何度もある
  • 夜中に目が覚めて食べないと再び眠れない
  • 朝は食欲がなく、朝食をほとんど食べない
  • 夕方以降に気分が落ち込む傾向がある
  • 夜間の過食が原因で体重が増加している
  • 「食べないと眠れない」と感じている
  • 夜間の食行動に強い罪悪感を感じている
  • 何度もダイエットに失敗している
💡
上記に4つ以上心当たりがあれば、心療内科・精神科への受診を検討してください。肥満外来に通院中の方は、主治医にNESの可能性を相談してみましょう。
SYMPTOMS

ナイトイーティング症候群の症状

NESでは夜間の過食を中核に、身体的・心理的にさまざまな症状が現れます。「食べないと眠れない」という特徴的なパターンが生活全体に影響を及ぼします。

症状の3側面

中核症状・身体症状・心理的影響を切り替えて確認

NESの症状は、食行動そのものの「中核症状」、身体に現れる影響、そして心理面への影響の3つの側面から理解できます。タブを切り替えてそれぞれの症状をご覧ください。

🌙
夕食後の過食(イブニングハイパーファジア)
1日の総カロリーの25%以上を夕食後に摂取する。夕食が終わったにもかかわらず、就寝までの間に繰り返し食べ続ける。特に炭水化物を多く含む食品(パン、菓子、米飯など)への渇望が強い。
🕐
夜間の覚醒と摂食(ノクターナルイーティング)
夜中に目が覚め、食べなければ再び眠れないと感じる。週に2回以上、夜間に起きて食事をとる。本人は覚醒しており、翌朝もその行動を覚えている(睡眠関連摂食障害とは異なる点)。
☀️
朝の食欲不振(モーニングアノレキシア)
朝は食欲がまったくなく、朝食を摂らない、または極少量しか食べられない。午前中は食事をほとんど摂らず、昼食も少ない。食欲が夕方以降に急激に増加するパターンが特徴的。
😔
夕方以降の気分の落ち込み
夕方から夜にかけて気分が悪化する(抑うつ気分の日内変動)。落ち込み、不安、イライラが夕方以降に強まり、これが過食のトリガーとなる。食べることで一時的に気分が改善するが、その後の罪悪感でさらに落ち込む悪循環に陥る。
😫
不眠症の併存
入眠困難や中途覚醒を伴うことが多い。「食べないと眠れない」という強い信念があり、夜間の摂食が入眠の条件づけとなっている。不眠と過食が相互に悪化させ合う悪循環が生じる。
⚖️
体重増加・肥満
夜間の余分なカロリー摂取により、体重増加や肥満に至ることが多い。BMI30以上の肥満者の約10〜27%にNESが認められるとの報告がある。メタボリックシンドロームや2型糖尿病のリスクも高まる。
💡
NESの3大特徴①夕食後の過食 ②夜間覚醒に伴う摂食 ③朝の食欲不振——この3つが揃っている場合、NESの可能性が高いです。
CAUSES & RISK FACTORS

ナイトイーティング症候群の原因とリスク要因

NESの発症には、ホルモンの日内リズム異常、心理的ストレス、概日リズムの乱れ、遺伝的要因が複合的に関わっています。

4つの要因

NESに関わる4つの要因カテゴリ

タブを切り替えて、神経内分泌・心理ストレス・概日リズム・遺伝体質、それぞれの観点からの解説をご覧ください。

🧠神経内分泌学的要因

NESでは、食欲やエネルギー代謝、概日リズムを調節するホルモンの日内変動に異常が見られます。レプチン(満腹ホルモン)の夜間分泌が低下し、グレリン(空腹ホルモン)の分泌パターンが変化しています。また、メラトニン(睡眠ホルモン)の分泌開始が遅延し、コルチゾール(ストレスホルモン)の夜間レベルが上昇しているという報告もあります。これらのホルモン異常が、夜間の食欲亢進と不眠を同時に引き起こしていると考えられます。インスリンの分泌パターンの変化も指摘されています。

  • レプチンの夜間分泌低下
  • グレリンの分泌パターン異常
  • メラトニン分泌開始の遅延
  • コルチゾールの夜間上昇
  • インスリン分泌の日内変動異常
NESは「食べることへの甘え」ではなく、体内時計の食欲リズムの異常が根底にある疾患です。この理解が、自分を責めることをやめ、適切な治療を受ける第一歩になります。
DIAGNOSIS

ナイトイーティング症候群の診断

NESの診断には、2010年に発表された国際的な診断基準(Allisonらの提唱)が用いられます。食事パターンの詳細な評価と、他の疾患の除外が重要です。

診断基準

NESの診断基準(Allisonら 2010)

以下が現在広く用いられているNESの診断基準です。1〜6のすべてを満たす場合にNESと診断されます。

  • 基準1:夕食後の過食パターン:1日の総摂取カロリーの25%以上を夕食後に摂取する、および/または週2回以上の夜間覚醒に伴う摂食がある
  • 基準2:夜間の摂食に対する認識と記憶がある(睡眠関連摂食障害との鑑別点)
  • 基準3:以下のうち3つ以上に該当する:朝の食欲不振、夕食から就寝までの間に強い食欲がある、入眠困難(週4日以上)、食べないと眠れないという信念がある、夕方以降の気分の落ち込み
  • 基準4:症状により著しい苦痛や機能障害が生じている
  • 基準5:症状が少なくとも3か月間持続している
  • 基準6:物質使用障害、他の精神疾患、薬物の影響、他の医学的状態では十分に説明できない
NESの診断には、食事日記による食事パターンの客観的な記録が非常に役立ちます。少なくとも1〜2週間の食事記録を持参して受診すると、診断がスムーズに進みます。
鑑別診断

他の摂食障害・睡眠障害との鑑別

NESは複数の疾患と症状が重なるため、正確な鑑別が治療方針の決定に重要です。以下に主な鑑別すべき疾患を示します。

🔍
睡眠関連摂食障害(SRED)
睡眠中(半覚醒状態)に摂食し、翌朝に記憶がない点でNESと異なります。SREDは睡眠障害の一種であり、ノンレム睡眠中の異常行動として生じます。治療もNESとは異なり、睡眠薬の調整やクロナゼパムが用いられます。
🔍
むちゃ食い障害(BED)
短時間に大量の食物を摂取する「むちゃ食いエピソード」を特徴とします。時間帯は問わず、日中にも発生します。NESは夕方以降に集中し、朝の食欲不振が特徴で、BEDのような制御不能感を伴う急速な大量摂取とは異なります。
🔍
過食症(神経性過食症/BN)
むちゃ食い後に自己誘発嘔吐や下剤乱用などの代償行動を伴います。NESでは代償行動は見られません。ただし、BNとNESが併存するケースも報告されており、評価には注意が必要です。
🔍
概日リズム睡眠-覚醒障害(睡眠相後退症候群)
睡眠リズム全体が後退し、深夜に眠り昼頃起床するパターンです。NESは睡眠リズムそのものは比較的保たれており、食欲リズムだけが後退している点で異なります。
💡
NESの正確な診断のために、受診時は1〜2週間の食事日記と睡眠記録を持参することをお勧めします。「何時頃食べたか」「夜中に起きたか」「朝食は食べられたか」を記録しておくと診断の助けになります。
評価ツール

NESの評価に使用される尺度

NESの診断・重症度評価には、いくつかの標準化された評価尺度が用いられています。

📋
NEQS(Night Eating Questionnaire)
NESの症状を14項目で評価する自記式質問票。夕食後の摂食量、夜間覚醒、朝の食欲、気分の日内変動などを0〜4点で評価します。14点以上でNESの可能性が高いとされます。
🗒️
食事・睡眠日記
少なくとも1〜2週間にわたり、食事の時刻・内容・量、就寝・覚醒時刻、夜間覚醒の有無と摂食行動、気分を毎日記録します。NESの食事パターンの客観的な把握に不可欠です。
😴
アクチグラフィー(活動量計)
手首に装着する小型センサーにより、睡眠-覚醒リズムを客観的に計測します。夜間の覚醒パターンを客観的に記録し、主観的な報告を補完します。専門医療機関で実施されます。
🧪
ホルモン日内変動測定
研究目的では、レプチン・グレリン・メラトニン・コルチゾールの24時間プロファイルを測定し、NESにおける概日リズム異常を確認します。通常の外来診療では行われません。
TREATMENT & RECOVERY

ナイトイーティング症候群の治療法と回復

NESは適切な治療により改善が期待できます。認知行動療法、薬物療法、概日リズムの調整を組み合わせたアプローチが有効です。

心理療法

認知行動療法——考え方と行動のパターンを変える

NESに対する認知行動療法では、夜間の過食を維持する思考パターンと行動パターンの両方に働きかけます。

認知行動療法(CBT)第一選択

NESに対する第一選択的な心理療法です。夜間の過食を引き起こす自動思考(「食べないと眠れない」「夜中に食べずにはいられない」)を特定し、修正します。食事日記を用いて食事パターンの可視化と規則正しい食事リズムの再構築を行います。刺激統制法(夜間のキッチンへのアクセスを制限するなど)や、ストレスへの代替的な対処法の習得も組み合わされます。NESに特化したCBTプログラムでは、有意な症状改善が報告されています。

薬物療法・光療法

薬物療法・光療法——セロトニンと概日リズムへのアプローチ

心理療法と併用することで、より効果的な治療が期待できます。

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)薬物療法

セルトラリンがNESに対する最も研究されている薬物療法です。セロトニンは食欲、気分、睡眠の調節に関わっており、SSRIにより夜間の過食エピソード、夜間覚醒、気分の改善が報告されています。通常のうつ病治療と同等の用量で使用され、効果発現までに4〜6週間を要します。フルボキサミンやエスシタロプラムの有効性も報告されています。

光療法(ブライトライトセラピー)概日リズム調整

NESの概日リズム異常に対して、朝の高照度光療法が有効な場合があります。朝に10,000ルクスの光を30分間浴びることで、体内時計をリセットし、食欲と睡眠の概日リズムを正常化する効果が期待されます。食欲の日内変動の是正に寄与し、朝の食欲改善と夜間の過食減少につながります。

食事リズム

食事リズムの再構築とリラクゼーション

日中の食事を整え、ストレス・不眠への対策を行うことが、夜間過食の減少につながります。

栄養カウンセリングと食事リズムの再構築食事パターン是正

管理栄養士と連携し、規則正しい食事パターンの確立を目指します。朝食を含む1日3回の定時の食事に加え、計画的な間食を組み入れることで、夕方以降の極端な飢餓感を予防します。食事日記を活用してカロリー配分の偏りを可視化し、段階的に日中の摂食量を増やし、夜間の摂食量を減らしていきます。

リラクゼーション技法・睡眠衛生指導ストレス・不眠対策

夜間の過食のトリガーとなるストレスや不眠に対して、漸進的筋弛緩法、腹式呼吸、マインドフルネスなどのリラクゼーション技法を指導します。また、睡眠衛生(就寝時間の固定、寝室環境の整備、カフェイン・アルコールの制限など)の改善を通じて、「食べなくても眠れる」体験を積み重ねます。

NESの治療では「朝食を食べられるようになること」が重要なマイルストーンの一つです。食事のリズムを日中に戻していくことで、夜間の過食は自然と減っていきます。
弁証法的行動療法

弁証法的行動療法(DBT)とマインドフルネス

弁証法的行動療法(DBT)は、もともと境界性パーソナリティ障害の治療のために開発されましたが、感情調節の困難を持つ摂食障害にも応用されています。NESの夜間過食が感情的なストレスと強く結びついている場合に特に有効です。

🧘
マインドフルネス(核心スキル)
「今この瞬間」に意識を向け、夜間に生じる食衝動を評価や判断なしに観察する練習です。「食べたい気持ち」が湧いてきても、それをただ波のように観察し、自動的に行動しないための間を作ります。食衝動は通常20〜30分でピークを過ぎることが多く、「波乗り(アービングサーフィン)」という技法で乗り越えることを練習します。
🧘
感情調節スキル
夕方以降の気分の落ち込みや不安に対して、感情を悪化させる状況を特定し、感情を調節するための具体的なスキルを身につけます。快適な活動を増やす(楽しいことを計画する)、身体を健康に保つ(睡眠・食事・運動のセルフケア)、感情の波に乗りきる技術が含まれます。
🧘
苦痛耐性スキル
食べたい衝動が強い危機的な瞬間を、過食なしに乗り越えるための技術です。TIPPスキル(体温・激しい運動・呼吸調整・漸進的筋弛緩)、ディストラクション(気そらし)、自己慰撫(五感を使った安らぎ)などが含まれます。
DBTのスキルは一人で習得するのは難しいですが、グループ療法やワークブックを用いて段階的に学ぶことができます。治療者と相談しながら取り入れてみましょう。
回復の段階

NESからの回復——段階的な改善の道筋

NESからの回復は直線的ではなく、波があります。しかし多くの方が段階的に改善を体験します。回復の道筋を知っておくことは、「今どこにいるか」を確認し、焦らず続けるための助けになります。

STAGE 1
認識段階(治療開始前後)
「これは意志の弱さではなく疾患だ」と気づき、専門家に相談する決断をする段階。食事日記をつけ始め、自分のパターンを客観的に把握し始めます。夜間の過食エピソード数を数える習慣がつきます。
治療開始前後
STAGE 2
安定化段階
薬物療法や心理療法が始まり、夜間覚醒が少しずつ減少し始めます。朝食を少量でも食べられるようになる日が出てきます。夜間の過食は完全にはなくなりませんが、頻度や量が減り始めます。
治療開始〜3か月
STAGE 3
改善段階
夜間の過食エピソードが週1〜2回以下に減少します。朝食が習慣化し始め、日中の食事量が増えます。気分の日内変動も和らいできます。再発(夜間過食が増える時期)もありますが、回復の自信が育ち始めます。
3〜6か月
STAGE 4
維持・社会復帰段階
正常な食事リズムが定着し、夜間覚醒と過食がほぼなくなります。ストレスが高い時期に症状が一時的に戻ることがありますが、対処法を知っているためすぐに立て直せます。治療の頻度を徐々に減らし、再発予防を中心とした段階に入ります。
6か月以降
再発は回復の一部です回復の道のりで夜間過食が再び増えることがあっても、失敗ではありません。「また元に戻ってしまった」ではなく、「今は回復の波の谷にいる」と捉え直してください。治療者に正直に伝えることで、対処法を一緒に考えることができます。
DAILY LIFE

日常生活でできること

治療と並行して、日々の生活の中でも夜間の過食を減らし、健康的な食事リズムを取り戻すためにできることがあります。

セルフケア

日常で実践できる8つの基本セルフケア

どれか一つでも、できるものから取り入れてみてください。完璧を目指す必要はありません。

☀️
朝食を食べる習慣をつける
最初は無理のない量(ヨーグルト1個、バナナ1本など)から始め、徐々に朝食の量を増やしていきましょう。朝食を摂ることで、食欲の日内リズムが正常化し始めます。起床後1時間以内の摂食を目標にしてください。
🕐
規則正しい食事時間を設定する
朝食・昼食・夕食を決まった時間に摂り、計画的な間食(午前と午後に1回ずつ)を入れましょう。日中にしっかり食べることで、夕方以降の極端な飢餓感を予防できます。食事のスキップは夜間の過食の引き金になります。
📝
食事日記をつける
何を、いつ、どのくらい食べたか、その時の気分はどうだったかを記録します。自分の食事パターンと感情の関連が見えてくることで、夜間の過食のトリガーを特定しやすくなります。
🧘
ストレスの対処法を食事以外に持つ
夜間の過食はしばしばストレスへの対処法として機能しています。入浴、読書、音楽を聴く、軽いストレッチ、呼吸法など、食べること以外のストレス解消法をリストアップし、夜間に試してみましょう。
🌙
夜間の環境を整える
就寝前のキッチンへのアクセスを意識的に制限しましょう。夜食用の食品を買い置きしない、キッチンの照明を暗くする、就寝前のルーティンを食事以外のことで埋めるなど、環境面からの対策が有効です。
🌞
朝の光を浴びる
起床後に明るい光(できれば自然光)を浴びることで、体内時計がリセットされ、食欲の日内リズムが正常化しやすくなります。朝の散歩やカーテンを開けての朝食は、NESの改善に役立つ簡単な習慣です。
🍷
カフェイン・アルコールを控える
カフェインは不眠を悪化させ、アルコールは一時的に眠気を誘うものの睡眠の質を低下させます。どちらも夜間覚醒を増やし、夜間の過食リスクを高めます。特に午後以降のカフェイン、就寝前のアルコールは避けましょう。
🏥
専門家に相談する
NESは自力での改善が困難な場合が多い疾患です。心療内科・精神科を受診し、認知行動療法や薬物療法のサポートを受けましょう。肥満外来やダイエット外来ではNESが見落とされやすいため、摂食障害の知識がある医療者への相談が理想的です。
まずは「朝食を少しでも食べてみること」と「食事の時間を決めること」——この2つから始めてみてください。完璧を目指す必要はありません。
夜間の衝動対処

夜間の食衝動が来た時の具体的な対処法

夜間に「食べたい」衝動が来た時、すぐに食べてしまうのではなく、まず次のステップを試してみましょう。

⏱️
「20分待つ」ルールを試す
食衝動のピークは通常20〜30分以内です。「20分後にまだ食べたければ食べる」と自分に約束し、その間に別のことをします。お茶を飲む、温かいシャワーを浴びる、音楽を聴くなど、感覚に訴えることが効果的です。
🌡️
体温を変える(TIPPスキル)
強い食衝動が来たら、冷水で顔を洗う、手首を冷やすなど体温を急激に変化させることで自律神経を切り替えます。逆に、温かい入浴やホットタオルも副交感神経を活性化し、衝動を和らげます。
🫁
4-7-8呼吸法
4秒かけて鼻から吸い、7秒息を止め、8秒かけて口からゆっくり吐きます。これを3〜4回繰り返すと副交感神経が優位になり、不安・緊張・食衝動が和らぎます。ベッドに横になったまま実践できます。
📖
感情日記を書く
「今食べたい気持ちの強さは10点中何点?」「何を感じているか?」を紙に書き出します。感情を言語化することで、衝動の強さが和らぐことがあります。書き出した後に衝動がどう変わったかも記録しましょう。
🔊
感覚刺激で気をそらす
スペアミントのガムを噛む、アロマオイルを嗅ぐ、お気に入りの音楽をヘッドフォンで聴くなど、五感への刺激は「食べる」以外に意識を向けるのに有効です。自分に効く感覚刺激リストを事前に作っておきましょう。
💬
誰かに連絡する・記録する
家族やパートナーが起きていれば一言声をかける、または匿名の相談窓口(よりそいホットライン:0120-279-338)に電話することで、一人で衝動を抱え込まないようにします。ログ(記録)を残すことも重要です。
💡
低カロリーの「逃げ道食品」を用意する完全に夜間の摂食をゼロにするのは最初から難しいため、治療の初期段階では「どうしても食べたい時のための低カロリー食品」を決めておく方法も有効です。ノンシュガーのゼリー、こんにゃく、無糖ヨーグルトなどを「緊急用食品」として用意し、それ以外は食べないというルールを作ります。
睡眠衛生

「食べなくても眠れる」体験を積む——睡眠衛生の実践

NESの方の多くは「食べないと眠れない」という強い信念を持っています。しかし実際には、体内リズムが整うにつれて「食べなくても眠れる」体験を積み重ねることができます。以下の睡眠衛生のポイントを試してください。

  • 🌅起床時間を毎日固定する就寝時間よりも起床時間を固定することが体内時計の調整に有効です。週末も含め、毎日同じ時間に起きることで、食欲と睡眠の概日リズムが整い始めます。最初は辛くても、2〜3週間で変化が出てきます。
  • 📵就寝1時間前からスマートフォンを置くスマートフォンのブルーライトはメラトニンの分泌を抑制し、入眠を妨げます。就寝1時間前からスクリーンタイムをやめ、読書、入浴、ストレッチ、日記などに切り替えましょう。寝室にスマートフォンを持ち込まないルールも有効です。
  • 🛏️ベッドは眠るためだけに使うベッドでの読書・スマートフォン操作・テレビ視聴は、脳が「ベッド=覚醒状態」と学習してしまう原因になります。ベッドは眠るためだけの場所と決め、眠れない時はいったんベッドから出て別の部屋でリラックスし、眠気が来てから戻りましょう。
  • 🌡️就寝前の入浴で体温を調整する就寝90分前に38〜40℃のぬるめのお風呂に15〜20分入ると、体表面の血流が増え、体内温度が一時的に上昇した後、急速に低下します。この体温低下が自然な眠気を促し、「食べなくても眠れる」状態をつくりやすくします。
睡眠衛生の改善は、すぐに効果が出るものではありません。2〜4週間継続することで、「食べなくても眠れる夜」が少しずつ増えてきます。一晩うまくいかなくても、「今夜はだめだった」ではなく「今夜も練習した」と捉えてください。
関連する用語

あわせて知っておきたい関連用語

NESの理解を深めるために、関連する用語も合わせて学んでみてください。

摂食障害過食性障害睡眠障害概日リズム睡眠障害うつ病肥満症
FOR FAMILY & FRIENDS

周囲の人にできること

NESは「夜食をやめればいい」と簡単に解決できるものではありません。身体のリズムの問題であることを理解し、温かく見守ることが大切です。

対応のポイント

してほしいこと・避けてほしいこと

NESの方への接し方には、回復を助けるものと、逆に症状を悪化させるものがあります。違いを意識してみましょう。

してほしいこと
回復を支える関わり方
  • NESが「意志の弱さ」ではなく、ホルモンや概日リズムの異常が関わる疾患であることを理解する
  • 夜間の摂食を目撃しても、その場で責めたり批判したりしない
  • 規則正しい食事(特に朝食)を一緒に摂る習慣を作る
  • 夕方以降の気分の落ち込みに寄り添い、食事以外の気分転換を一緒に見つける
  • 本人が専門家に相談することを応援し、一緒に受診に付き添うことを申し出る
  • ダイエットの話題を避け、体重や食事量について評価しない
  • 小さな改善(朝食を食べられた、夜間の過食が1回減ったなど)を一緒に喜ぶ
避けてほしいこと
逆効果になる関わり方
  • 「夜に食べなければいいだけでしょ」「意志が弱い」と責める
  • キッチンに鍵をかけるなどの強制的な方法で食事を制限する
  • 夜間の摂食を監視する、食べた量を毎回チェックする
  • 本人の食行動について第三者に話す(恥辱感を強める)
  • 厳しいダイエットを勧める(さらに夜間の過食を悪化させる)
  • 「もう治ったはず」と治療の中断を促す
具体的なサポート

家族ができる具体的なサポート

日常の中で、家族や身近な人ができる具体的なサポートを4つ紹介します。

☀️
朝食を一緒に食べる
NES患者にとって朝食は最もハードルが高い食事です。一緒に朝食を摂る習慣を作ることで、本人の負担を軽減できます。簡単なものでOK。「食べなきゃ」ではなく「一緒に食べよう」という姿勢で。
🌙
夜間のリラックスタイムを共有する
就寝前に一緒にハーブティーを飲む、軽いストレッチをする、好きな音楽を聴くなど、食べること以外のリラクゼーションを一緒に楽しみましょう。
💬
話を聴く姿勢を持つ
NESの方は夜間の過食に強い罪悪感を抱えています。批判せずに話を聴き、「つらいね」「一緒に考えよう」という姿勢を示すことが、本人の孤立を防ぎます。
🛁
自分自身のケアを忘れない
家族のNESに付き合い続けることはストレスです。自分自身の健康やリラクゼーションの時間も確保してください。一人で抱え込まず、専門家に相談することも大切です。
回復には時間がかかります食事のリズムを根本から変えていくことは、一朝一夕にはいきません。小さな改善を一緒に喜びながら、長い目で見守ることが最も大切なサポートです。
支援機関・制度

利用できる支援機関と公的制度

NESを含む摂食障害の回復には、医療機関だけでなく、さまざまな公的支援機関や制度を組み合わせることが有効です。

🏛️
精神保健福祉センター
各都道府県・政令指定都市に設置された公的な相談機関です。心の健康に関する相談(本人・家族いずれも可)、適切な医療機関の紹介、精神科ソーシャルワーカーによる生活支援の相談が無料で受けられます。電話や窓口相談に対応しています。
🏥
摂食障害全国支援センター(相談ほっとライン)
国立精神・神経医療研究センターが運営する摂食障害専門の相談窓口です。火〜金曜 9:00〜15:00(祝日除く)に電話相談を受け付けており、患者本人だけでなく家族・学校関係者・医療職も相談できます。
💴
自立支援医療制度(精神通院医療)
NESを含む摂食障害で継続的な通院が必要な場合、医療費の自己負担を原則1割に軽減できる公的制度です。申請はお住まいの市区町村の窓口で行い、主治医の診断書が必要です。所得に応じた月額上限が設定されており、高額医療費の負担を大幅に軽減できます。
🤝
摂食障害の自助グループ・家族会
同じ経験を持つ仲間と交流できる自助グループや、家族向けの勉強会・家族会があります。「一人ではない」と感じることが回復の大きな支えになります。地域の精神保健福祉センターや摂食障害支援センターに情報を問い合わせてみましょう。
💡
複数の支援を組み合わせることが大切医療機関での治療と並行して、精神保健福祉センターへの相談、自立支援医療制度の活用、自助グループへの参加を組み合わせることで、より安定した回復の基盤をつくることができます。一人で抱え込まず、使えるリソースを積極的に活用してください。
FAQ

よくある質問

夜食症候群についてよく寄せられる疑問にお答えします。

Q&A

夜食症候群に関するよくある質問

Q. 夜食症候群は自分の意志力が弱いせいですか?

A. いいえ、まったく違います。NESは食欲を調節するレプチン・グレリン・メラトニンなどのホルモンの日内リズムに生物学的な異常が生じている疾患です。意志の弱さとは無関係であり、適切な治療を受けることで改善できます。自分を責めることをやめ、まず専門家に相談することが回復への第一歩です。

Q. 夜食症候群と過食症(BED)はどう違いますか?

A. 過食症(むちゃ食い障害/BED)は時間帯を問わず大量の食事を短時間で摂取するエピソードを特徴とし、食後に強い罪悪感を伴います。一方NESは夕方以降・夜間に摂食が集中し、朝の食欲不振とセットであること、睡眠との関連(夜間覚醒に伴う摂食)が中核にある点が異なります。両者が併存する場合もあるため、専門医による鑑別が重要です。

Q. 何科を受診すればよいですか?

A. 心療内科または精神科が第一選択です。摂食障害の専門外来がある病院であればより理想的です。肥満外来や内科ではNESが見落とされる場合があります。受診の際は「夕食後に大量に食べてしまう」「夜中に目が覚めて食べないと眠れない」「朝は食欲がない」という3点を具体的に伝えてください。受診に不安がある場合は、まず精神保健福祉センターや摂食障害の相談ほっとラインに電話するのも良い方法です。

Q. 薬を飲まないと治りませんか?

A. 必ずしも薬物療法は必須ではありません。軽症例では認知行動療法(CBT)や食事リズムの再構築、光療法だけで改善する場合があります。ただし、うつ病や不安障害を合併している場合は、SSRIなどの薬物療法が症状改善を後押しします。薬物療法と心理療法を組み合わせた治療が最も効果的とされています。医師と相談の上、自分に合った治療計画を立てましょう。

Q. 自立支援医療制度は使えますか?

A. はい、利用できます。自立支援医療(精神通院医療)制度を申請すると、心療内科・精神科への通院にかかる医療費の自己負担が原則1割に軽減されます(所得に応じて上限あり)。NESをはじめとする摂食障害でも対象となります。申請窓口はお住まいの市区町村の窓口で、主治医の診断書が必要です。継続的な治療を続けやすくなるため、積極的に活用してください。

Q. 治療にはどのくらいの期間がかかりますか?

A. 個人差が大きいですが、一般に3〜6か月の治療で症状の有意な改善が見られることが多いです。食事リズムの再構築や体内時計の調整には時間がかかるため、焦らず継続することが大切です。NESの背景にストレスやうつ病がある場合は、それらの治療と並行して進める必要があり、全体的な回復には6〜12か月かかる場合もあります。小さな改善を積み重ねながら回復していきます。

Q. 家族が夜食症候群かもしれません。どう接すればよいですか?

A. 最も大切なのは責めないことです。「夜食をやめればいい」「意志が弱い」という言葉はNESの方を深く傷つけます。まず「つらそうだね」と気持ちを受け止め、専門家への相談を一緒に考えてみてください。受診に付き添う提案も有効です。また、朝食を一緒に食べる習慣を作るなど、食事リズムの改善を側でサポートすることも助けになります。家族自身も一人で抱え込まず、精神保健福祉センターや家族会に相談してください。

Q. 子どもや10代にも夜食症候群はありますか?

A. はい、思春期や10代にもNESは発症します。学校のストレス、受験、人間関係の悩み、部活動のプレッシャーなどが夜間の過食のトリガーとなる場合があります。子どもの場合は体重増加よりも「夜遅くまで食べている」「朝食を全く食べられない」「夜中に台所に行く」といった行動の変化として現れることが多いです。保護者が気づいた際は、責めずに「最近眠れてる?」と声をかけることから始め、必要であれば小児科・思春期外来・児童精神科への相談をご検討ください。

ここに書かれていない疑問がある場合は、ぜひ心療内科・精神科、または精神保健福祉センターにご相談ください。一人で答えを探し続ける必要はありません。

「食べないと眠れない」と
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夜の過食は意志の弱さではなく、身体のリズムの問題です。一人で抱え込まず、つらい気持ちをココトモに聞かせてください。

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このページの情報は、医師による診断や治療に代わるものではありません。症状が気になる場合は、心療内科・精神科への受診をご検討ください。

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