メンタルヘルス用語辞典 · 周産期喪失

周産期喪失とは?
流産・死産・新生児死亡——語られにくい悲しみとケア

周産期喪失は、妊娠中・出産時・出産直後に赤ちゃんを亡くす体験です。流産・死産・新生児死亡の種類、心身の症状、悲嘆のプロセス、ケアと治療法、日常のサポートまで、必要な情報をすべてまとめました。

ABOUT PERINATAL LOSS

周産期喪失とは——語られにくい深い悲しみ

周産期喪失とは、妊娠中・出産時・出産直後に赤ちゃんを亡くすことを指します。流産、死産、新生児死亡を含むこの体験は、最も深い悲嘆をもたらす喪失の一つでありながら、社会的に十分に理解されていません。

定義

周産期喪失の定義——見過ごされがちな喪失

周産期喪失(ペリネイタル・ロス)とは、妊娠中から新生児期(生後28日)までの間に赤ちゃんを失うことの総称です。流産(妊娠22週未満の胎児死亡)、死産(妊娠22週以降の胎児死亡)、新生児死亡(生後28日以内の死亡)が含まれます。また、医学的適応による人工妊娠中絶も、赤ちゃんの喪失として同様の悲嘆をもたらします。

成人の死別との比較
社会的に認知された悲嘆
葬儀や弔問、忌引き休暇、周囲の同情など、悲嘆を表現し支えられる社会的仕組みが整っている。悲しんでいいという「許可」が自然に与えられる。
周産期喪失の悲嘆
社会的に見えにくい悲嘆
社会的な弔いの仕組みが乏しく、「赤ちゃんのことは話さない方がいい」という暗黙の圧力がある。悲嘆の深さが過小評価され、孤独な悲しみになりやすい。
💔

悲嘆の深さは妊娠週数で測れない

「まだ初期だったから」「赤ちゃんを知らなかったから」と言われることがありますが、親にとっての絆は妊娠の瞬間から始まっています。妊娠検査薬で陽性を見た瞬間、エコーで心拍を確認した瞬間、その命はすでにかけがえのない存在です。悲嘆の深さは週数ではなく、その命への愛の深さによって決まります。

あなたの悲しみは正当なものです赤ちゃんを亡くした悲しみは、どんな形の喪失であっても、深く重いものです。「この程度で」と自分の悲しみを否定する必要はありません。あなたは大切な命を失ったのです。
データ

周産期喪失のデータ——決して珍しくない体験

周産期喪失は多くの人が想像するよりも頻繁に起こっています。

15%
全妊娠のうち流産で終わる割合(約6〜7人に1人が経験)
約2万件/年
日本で年間に届け出られる死産の件数(約500件に1件)
30%
周産期喪失後にPTSD症状を示す女性の割合(研究による推定)
これだけ多くの人が体験しているにもかかわらず、周産期喪失は「沈黙の喪失」と呼ばれるほど語られていません。声を上げることは、あなた自身の回復のためにも、同じ体験をした人を支えるためにも大切なことです。
見えない悲嘆

「見えない悲嘆」——なぜ周産期喪失は語られにくいのか

周産期喪失の悲嘆が社会的に見えにくい背景には、いくつかの要因があります。赤ちゃんとの共有された記憶や社会的なつながりがないため、周囲が喪失の実感を持ちにくいこと。「流産はよくあること」という社会的な認識が悲嘆を矮小化すること。妊娠や出産が「タブー」や「プライベート」な話題とされやすいこと。そして、当事者自身が「こんなことで悲しんでいいのか」と自分の悲嘆を否定してしまうことです。

💡
社会の変化近年、日本でもグリーフケアの重要性が認識され始め、厚生労働省も流産・死産等の体験者への支援を推進しています。多くの自治体でグリーフケア相談が開設され、病院でも退院後のフォローアップ体制が整備されつつあります。
パートナーの悲嘆

パートナー(父親)の悲嘆——「強くあるべき」の呪縛

パートナー(多くの場合、父親)もまた深い悲嘆を経験しますが、その悲しみはさらに見過ごされがちです。「妻を支えなければ」「強くいなければ」というプレッシャーから自分の悲しみを押し殺し、結果として悲嘆が複雑化するケースが少なくありません。悲嘆の表現方法の違い(泣く代わりに仕事に没頭するなど)が「冷たい」「悲しんでいない」と誤解されることもあります。

パートナーの悲嘆のペースや表現方法は異なって当然です。お互いの悲しみ方の違いを認め合い、責め合わないことが大切です。必要であれば、カップル療法を検討してみてください。
TYPES OF LOSS

周産期喪失の種類

周産期喪失にはさまざまな形があり、それぞれに特有の悲嘆の特徴があります。どの形であっても、かけがえのない命の喪失であることに変わりはありません。

最も頻度が高い
流産(早期・後期)
妊娠22週未満の胎児喪失
妊娠初期(12週未満)の早期流産は全妊娠の約10〜15%に起こり、決して珍しくありません。12〜22週未満の後期流産はより稀ですが、身体的な痛みを伴うことが多く、心理的衝撃も大きくなります。流産は「よくあること」と軽視されがちですが、親にとってはかけがえのない命の喪失であり、悲嘆の深さは妊娠週数で測れるものではありません。繰り返す流産(不育症)は特に深刻な心理的影響をもたらします。
妊娠22週未満全妊娠の10〜15%身体的痛みを伴う社会的に軽視されやすい
深刻なトラウマ体験
死産
妊娠22週以降の胎児死亡
妊娠22週以降の赤ちゃんの死亡を死産といいます。胎動を感じた後、名前を考えた後の喪失であり、その衝撃は計り知れません。出産のプロセスを経なければならないことが多く、身体的にもトラウマとなります。死産届を出す必要があり、社会的手続きも悲しみの中で求められます。日本では約500件に1件の割合で起こるとされ、決して稀ではありません。
妊娠22週以降出産のプロセスを伴う死産届が必要約500件に1件
絆形成後の喪失
新生児死亡
生後28日以内の死亡
生まれてきた赤ちゃんを抱き、顔を見て、声を聞いた後の喪失です。NICUでの治療を経て亡くなるケースも多く、希望と絶望を繰り返す体験がトラウマとなります。赤ちゃんの写真、足形、衣類などが残ることもあり、具体的な存在を失った悲しみはより鮮明です。出生届と死亡届の両方を出す必要があり、行政手続きの負担も加わります。
生後28日以内具体的な存在の喪失NICU体験希望と絶望の繰り返し
複合的な悲嘆
人工妊娠中絶(医学的適応)
医学的理由による妊娠終了
胎児の重篤な疾患や母体の健康上の理由から妊娠を終了せざるを得ない場合です。「選択した」という側面が罪悪感を深め、悲嘆を複雑にします。社会的なスティグマから、体験を語ることがさらに困難になりがちです。「正しい選択だったのか」という問いが長期にわたって当事者を苦しめることがあります。
医学的理由による選択の重圧罪悪感が強い社会的スティグマ
どのタイプの喪失であっても、あなたの悲しみは正当なものです。喪失の「種類」によって悲しみの深さが決まるわけではありません。あなたが感じていることが、あなたにとっての真実です。
SYMPTOMS

周産期喪失の症状——心と身体に現れるもの

周産期喪失の悲嘆は、心理的な症状だけでなく、身体にも多彩な症状として現れます。これらはすべて、深い喪失に対する正常な反応です。

💓
動悸・胸の痛み
悲嘆による身体的反応として、動悸や胸の圧迫感が生じます。「心が壊れた」と表現される痛みは、実際にストレスホルモンの影響で心臓に負担がかかっている状態(たこつぼ型心筋症)の場合もあります。
🌙
睡眠障害
入眠困難、悪夢、中途覚醒が続きます。特に産後は乳房の張りなど身体的変化も睡眠を妨げ、心身の疲弊が加速します。空っぽのベビーベッドを前にしての不眠は特に辛いものです。
🤱
乳房の張り・母乳の分泌
死産や新生児死亡の場合、身体は授乳の準備をしています。赤ちゃんがいないのに母乳が出続ける体験は、喪失の痛みを身体的に突きつけます。これは最もつらい身体症状の一つです。
🔋
極度の疲労感
悲嘆そのものがエネルギーを消耗する上に、産後の身体回復も必要です。「起き上がれない」「何もする気力がない」状態が数週間〜数ヶ月続くことがあります。
🍽
食欲の変化
まったく食べられなくなるか、逆に過食に走ることがあります。身体の回復のために栄養が必要な時期に食欲がなくなることは、身体的な回復を遅らせる要因にもなります。
💢
腕の空虚感・幻覚的体験
赤ちゃんの泣き声が聞こえる、腕の中に赤ちゃんの重みを感じるなどの体験をすることがあります。これは病的なものではなく、悲嘆の正常な反応です。
💡
身体のケアも忘れずに産後の身体回復が必要な時期です。婦人科のフォローアップを受け、身体の回復も並行して進めましょう。身体が回復することで、心の回復にも取り組むエネルギーが生まれます。
注意が必要なサイン

専門的なサポートを求めるべきサイン

以下のサインが見られる場合は、専門家(心療内科、精神科、グリーフカウンセラー)への相談を検討してください。

  • 🚨
    「消えてしまいたい」と思う
    赤ちゃんの後を追いたい、生きている意味がないと感じる。すぐに相談窓口に連絡を。
  • 😶
    6ヶ月以上悲嘆が軽減しない見逃しやすい
    日常生活が立ち行かない状態が半年以上続く。複雑性悲嘆の可能性。
  • 🍷
    アルコールや薬物への依存見逃しやすい
    悲しみを紛らわすための飲酒や薬物使用が増えている。
  • 🚫
    完全な感情の遮断見逃しやすい
    何も感じない状態が長期間続く。泣けない、悲しめないことへの罪悪感。
  • 😤
    パートナーへの激しい怒り
    パートナーとの関係が深刻に悪化している。責め合いが止まらない。
  • 🔄
    強迫的な行動の出現見逃しやすい
    赤ちゃんの持ち物を何度も確認する、同じ行動を繰り返すなど。
助けを求めることは強さの証です「この程度のことで」と思わないでください。周産期喪失は深いトラウマ体験であり、専門的なサポートを受けることは当然の権利です。
GRIEF PROCESS

悲嘆のプロセスを理解する

周産期喪失の悲嘆がどのように進むのか、そしてどのような場合に注意が必要かを理解することは、回復への重要なステップです。

悲嘆は直線的な段階を経るのではなく、個人によって異なるプロセスをたどります。以下の4つの視点から悲嘆を理解しましょう。

🌊悲嘆の波のモデル

周産期喪失の悲嘆は、直線的な「段階」を経るのではなく、「波」のように押し寄せます。穏やかな時間と激しい悲しみが交互に訪れ、その間隔は徐々に開いていきますが、完全に消えることはありません。記念日(予定日、命日)やトリガー(赤ちゃんを見かけるなど)によって波は再び大きくなります。この「波のモデル」を知っておくことは、「いつまで悲しいのか」という不安を和らげる助けになります。

  • 悲嘆は波のように押し寄せ、引いていく
  • 波の間隔は徐々に広がるが、完全には消えない
  • 記念日やトリガーで波が大きくなるのは正常
  • 悲嘆のタイムラインは人それぞれ
リスク要因

悲嘆が複雑化しやすいリスク要因

以下の要因がある場合、悲嘆が複雑化しやすいとされています。該当する場合は、早期に専門的なサポートを受けることが推奨されます。

悲嘆複雑化のリスク要因
社会的サポートの不足
90%
トラウマ性の喪失体験(突然の死産など)
85%
過去のトラウマや精神疾患の既往
80%
不妊治療後の喪失
75%
繰り返す流産・死産
90%
パートナーとの関係の問題
70%

※ リスクの相対的な大きさを示すイメージ図です

リスク要因があるからといって、必ず悲嘆が複雑化するわけではありません。早期のサポートと適切なケアにより、多くの方が健全な悲嘆プロセスを歩むことができます。
CARE & TREATMENT

周産期喪失のケアと治療

周産期喪失からの回復を支えるケアと治療法について解説します。一人で抱え込まず、サポートを受けることが回復への近道です。

直後のケア

喪失直後のケア——最初の対応が回復を左右する

喪失直後に適切なケアを受けることは、その後の回復プロセスに大きな影響を与えます。

周産期グリーフケア喪失直後のケア

喪失直後から始まる専門的なケアです。赤ちゃんとのお別れの時間を持つこと(抱っこ、写真撮影、手形・足形の採取など)、メモリアルボックスの作成、退院後のフォローアップが含まれます。近年、多くの病院で「天使のケア」として取り組みが進んでいます。赤ちゃんの存在を認め、「この子は確かに存在した」という体験が、健全な悲嘆プロセスの基盤となります。

継続的サポート

継続的なサポートと治療

退院後の継続的なサポートが回復の鍵です。自分に合ったサポートの形を見つけましょう。

悲嘆カウンセリング・心理療法心理的サポートの中核

周産期喪失に精通したカウンセラーや心理士による個別カウンセリングです。悲嘆の感情を安全に表現する場を提供し、罪悪感や怒りなどの複雑な感情を整理します。認知行動療法(CBT)、対人関係療法(IPT)、EMDRなどが状況に応じて用いられます。複雑性悲嘆に対しては、複雑性悲嘆治療(CGT)という専門的なプロトコルが開発されています。

自助グループ・ピアサポートピアサポート

同じ体験をした人同士が支え合う場です。日本では「ポコズママの会」「お空の天使パパ&ママの会」「天使の保護者ルカの会」など、複数の自助グループが活動しています。「この悲しみをわかってもらえる人がいる」という体験は、孤立感を和らげる大きな力になります。対面のほか、オンラインでの活動も広がっており、地方在住の方やコロナ禍でも参加しやすくなっています。

カップル・家族療法関係性の修復

周産期喪失はカップルの関係性に大きな影響を与えます。悲嘆のペースや表現方法の違いがすれ違いを生みやすく、関係悪化のリスクがあります。カップル療法では、お互いの悲嘆の違いを理解し、コミュニケーションを改善し、共に回復するプロセスをサポートします。きょうだい(上の子ども)のケアも含めた家族全体のアプローチも重要です。

薬物療法補助的治療

悲嘆そのものに対する薬物療法は限定的ですが、うつ状態が深刻な場合はSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が検討されます。不眠が著しい場合は短期的な睡眠薬、PTSD症状がある場合はSSRIやプラゾシンが使用されることもあります。授乳を考慮した薬剤選択が必要な場合もあり、産婦人科と精神科の連携が重要です。

支援リソース

支援リソース——一人で抱え込まないために

日本には周産期喪失を経験した方を支える団体やサービスがあります。

🤝
ポコズママの会
流産・死産経験者で作る自助グループ。当事者による相談、情報提供、イベントを運営。オンラインでの参加も可能。
👼
お空の天使パパ&ママの会
流産・死産・新生児死亡を経験したカップルのための自助グループ。パートナーも参加できる活動が特徴。
🏥
自治体のグリーフケア相談
多くの自治体で流産・死産等を経験した方向けのグリーフケア相談を開設。保健センター等に問い合わせを。
📱
周産期グリーフケア情報ステーション
周産期喪失に関する情報を集約したウェブサイト。退院後のケア情報、体験記、支援者向け情報を提供。
支援を受けることは「弱さ」ではありません。同じ体験をした人とつながることで、「自分だけではない」という安心感が得られ、回復の大きな力になります。
社会制度・職場の支援

知っておきたい社会制度と職場復帰の支援

周産期喪失を経験した方には、さまざまな社会的制度が用意されています。悲しみの中でも、自分に使える権利を知っておくことは、生活を守るうえで大切です。

🏥
産後休業(労働基準法第65条)
妊娠12週(85日)以降の流産・死産・人工妊娠中絶も対象となり、産後8週間の休業を取得できます。職場への申請は医師の診断書があればスムーズです。まず産婦人科の担当医に相談しましょう。
💴
出産育児一時金
妊娠85日(12週)以降の流産・死産の場合、健康保険・国民健康保険から出産育児一時金(一児につき50万円)が支給されます。また、産前産後休業期間中は社会保険料の免除を受けることができます。加入している健康保険組合または市区町村の窓口に確認してください。
🏢
職場復帰支援
復職のタイミングは心身の状態に合わせて無理なく設定することが重要です。段階的な復帰(時短勤務・テレワーク)を活用する、業務内容の一時的な変更を相談するなど、柔軟な対応を求める権利があります。上司や人事担当者に正直に状況を伝え、産業医・EAP(従業員支援プログラム)も活用しましょう。
📋
自立支援医療制度(精神通院医療)
複雑性悲嘆・うつ病・PTSDなどで継続的に精神科・心療内科に通院する場合、自立支援医療制度(精神通院医療)を利用すると、医療費の自己負担が原則1割になります。申請は住所地の市区町村窓口で行います。精神科医・心療内科医に相談してみてください。
🏛
精神保健福祉センター
各都道府県・政令指定都市に設置されている公的なメンタルヘルス相談窓口です。グリーフカウンセリング、精神科への受診相談、社会資源の紹介など幅広い支援を無料で受けられます。電話相談だけでなく、面接相談にも応じています。お住まいの都道府県のウェブサイトで連絡先を確認できます。
🤱
産後ケア事業
流産・死産を経験された方も、産後1年以内であれば産後ケア事業(宿泊型・デイサービス型・アウトリーチ型)を利用できる自治体があります。心身のケアやサポートを目的とした事業で、費用の一部が補助されます。お住まいの市区町村の母子保健担当窓口にお問い合わせください。
💡
手続きは一人で抱え込まないで悲しみの中での行政手続きは大きな負担です。パートナー、家族、またはソーシャルワーカーに助けを求めることをためらわないでください。病院の医療ソーシャルワーカー(MSW)に相談すると、必要な手続きを一緒に整理してもらえます。
DAILY LIFE

日常生活でできること

深い悲しみの中でも、少しずつ自分を支えるためにできることがあります。すべてをやる必要はありません。今できることを一つだけ、始めてみてください。

📝
赤ちゃんの存在を大切にする
赤ちゃんの名前を呼ぶ、写真やエコー画像を大切に保管する、メモリアルボックスを作る、手紙を書くなど。赤ちゃんの存在を記憶に刻むことは、悲嘆のプロセスを助けます。「なかったこと」にする必要はありません。
🌙
睡眠と休息を最優先に
心身ともに消耗している時期です。眠れるときに眠り、休めるときに休みましょう。「何もしない」ことに罪悪感を感じる必要はありません。身体の回復は心の回復の土台です。
📖
悲しみを表現する方法を見つける
日記を書く、絵を描く、音楽を聴く、手芸をするなど、言葉にならない感情を表現する方法を見つけましょう。表現することで感情が「外」に出て、少しだけ楽になることがあります。
🤝
理解してくれる人とつながる
すべての人に理解を求める必要はありません。一人でも「わかってくれる人」がいることが支えになります。自助グループやオンラインコミュニティで同じ体験をした人とつながることも検討してみてください。
🗓
記念日を大切にする
命日、出産予定日、お空の天使の日など、大切な日を自分なりの方法で過ごしましょう。花を供える、キャンドルを灯す、手紙を書くなど。記念日を大切にすることは「忘れない」という愛の表現です。
自分のペースを尊重する
「もう元気にならなきゃ」「忘れなきゃ」と自分を急かさないでください。悲嘆のタイムラインは人それぞれです。周囲の期待ではなく、自分の心と身体の声に従いましょう。
🏥
次の妊娠は慎重に
次の妊娠を急ぐ必要はありません。心身の回復を十分に待ち、医学的な検査や相談を経てから考えましょう。次の妊娠は喜びと同時に大きな不安を伴います。その不安は正常な反応であり、サポートを受けながら過ごすことが大切です。
🛡
自分を守る境界線を引く
「赤ちゃんはまだ?」「次頑張って」などの無神経な言葉から自分を守りましょう。SNSのベビー関連のアカウントをミュートする、お祝い事を断る、妊婦さんとの接触を控えるなど、自分を守る権利があなたにはあります。
「早く立ち直らなければ」と思う必要はありません。赤ちゃんを想う気持ちは、ずっと持ち続けていいのです。悲しみと共に生きていくことと、日常を取り戻していくことは、矛盾しません。
ボディケア・マインドフルネス

心身を整えるケア——マインドフルネスと身体アプローチ

周産期喪失後の悲嘆に対して、マインドフルネスや身体へのアプローチが有効であることが研究で示されています。8回のカウンセリングにマインドフルネスストレス低減法(MBSR)を組み合わせたプログラムで、不安・ストレス・抑うつが有意に改善したという報告があります。以下のような方法を、無理のない範囲で試してみましょう。

  • 腹式呼吸
    鼻から4秒かけて吸い、口から8秒かけてゆっくり吐く。これを1日3〜5回繰り返すだけで、自律神経を整え、急激な悲嘆の波を和らげる助けになります。
  • グラウンディング(5感への集中)
    「今見えるものを5つ数える」「今感じている身体の感覚を言葉にする」など、現在の感覚に意識を向けることで、フラッシュバックや侵入的記憶から意識を引き戻す効果があります。
  • セルフコンパッション
    「自分に友人に語りかけるような優しい言葉をかける」練習です。「こんなに悲しいのは当然だ、私は大切な存在を失った」と自分を責める代わりに、自分自身を慈しむ練習をします。
  • 軽い身体活動
    短い散歩、ストレッチ、ヨガなど、強度の低い身体活動は気分の改善に役立ちます。「運動しなければ」という義務感は不要です。今日できる範囲で動くことが大切です。
  • 自然との接触
    公園でのんびり過ごす、植物を育てる、窓から空を眺めるなど、自然との接触は精神的な癒しに効果があることが研究で確認されています。
  • 創造的表現
    日記、詩、絵画、音楽など、言葉にならない悲しみを創造的に表現することは、感情の処理を助けます。「上手くなければいけない」ということはありません。
💡
身体の回復も忘れずに産後の身体は、ホルモンバランスが大きく変動しています。疲労、貧血、睡眠不足は悲嘆の感情をより強く感じさせます。婦人科のフォローアップを欠かさず受け、身体の回復も心の回復と並行して進めましょう。
次の妊娠

次の妊娠への向き合い方——「虹色の赤ちゃん」を待つ心理

周産期喪失を経験した後の次の妊娠は、「虹色の赤ちゃん(Rainbow Baby)」と呼ばれることがあります。嵐の後の虹のように、深い悲しみの後に訪れる新しい命です。しかし、その妊娠は純粋な喜びだけではありません。不安、恐怖、罪悪感(「前の赤ちゃんを忘れるのではないか」)、そして再び大切な命を失うかもしれないという強烈な恐怖が伴うことが多いです。

  • 次の妊娠はいつから?
    身体的な準備と心の準備は別物です。医学的には流産後1〜3回の正常な月経を待てば多くの場合妊娠可能ですが、心の準備が整っているかどうかはあなた自身が決めることです。「まだ悲しんでいるから妊娠してはいけない」ということはありませんが、「急かされているから」という理由だけで次の妊娠を急ぐ必要もありません。
  • 妊娠中の不安への対処
    次の妊娠中は、エコーのたびに不安になる、胎動が少し遅れると「また死んでしまうのでは」と恐怖に陥るなど、強い不安が続くことがあります。これは「周産期喪失後の妊娠(PAL: Pregnancy After Loss)」に特有の正常な反応です。産婦人科の主治医に状況を伝え、必要に応じてカウンセリングを並行させましょう。
  • 前の赤ちゃんへの罪悪感
    次の赤ちゃんへの喜びを感じることで「前の子を忘れてしまうのでは」「喜んでいいのか」という罪悪感が生じることがあります。前の赤ちゃんへの愛と、次の赤ちゃんへの喜びは共存できます。愛は分かち合えるものです。
  • 原因の究明と再発予防
    不育症(反復流産)の場合は、専門の不育症外来で原因を調べることが勧められます。検査で原因が特定できれば、次の妊娠での対策が立てられる場合があります。
次の妊娠はあなたのペースで次の妊娠を急ぐ必要もなければ、急いではいけないということもありません。あなたとパートナーの心と身体の準備が整ったとき、そのタイミングが最良です。周囲のプレッシャーに惑わされず、信頼できる医療者と相談しながら決めていきましょう。
関連する用語
外傷的悲嘆複雑性悲嘆PTSD産後うつグリーフケア公認されない悲嘆
FOR FAMILY & FRIENDS

周囲の人にできること

赤ちゃんを亡くした方のそばにいることは、何を言えばいいかわからず戸惑うかもしれません。完璧な言葉は必要ありません。「そばにいる」ことが最大のサポートです。

対応のポイント

してほしいこと・避けてほしいこと

✅ してほしいこと
赤ちゃんの名前があれば名前で呼び、存在を認める——「かわいい名前だね」
「つらかったね」「悲しいよね」と感情を受け止める言葉をかける
具体的なサポートを申し出る——「食事を持っていくね」「買い物に行こうか」
記念日(命日、予定日)を覚えておき、その日に連絡する
当事者が話したいときに、ただ聴く。アドバイスは求められるまでしない
悲嘆の期間が長くても「まだ悲しんでいるの?」と言わない
自分自身のサポートも確保する(共感疲労に注意する)
❌ 避けてほしいこと
「次がある」「若いからまた産める」「天国で幸せだよ」などの安易な慰め
「あなたよりもっと大変な人がいる」と悲しみを比較する
「考えすぎないで」「忘れた方がいい」と悲嘆を封じようとする
赤ちゃんのことに一切触れず、なかったことのようにする(沈黙の壁)
「何か原因があったんじゃない?」「無理したんじゃない?」と原因を探る
自分の出産体験や子育ての話を無神経にする
言葉かけ

何を言えばいいか——言葉に迷ったときに

完璧な言葉を探す必要はありません。大切なのは、相手の悲しみに寄り添う姿勢です。

💬
「つらかったね」「悲しいね」
感情をそのまま受け止める言葉。アドバイスや意味づけではなく、ただ共感を伝えます。
👼
「〇〇ちゃんのこと、教えてくれる?」
赤ちゃんの存在を認め、名前で呼ぶ。多くの親は赤ちゃんのことを話したいと思っています。
🤲
「何かしてほしいことがあったら言ってね」
具体的なサポートの意思を伝える。実際には「食事を持っていくね」など具体的な申し出の方が受け取りやすい。
🤫
黙ってそばにいる
言葉が見つからないときは、沈黙でも構いません。そばにいること自体が「あなたは一人ではない」というメッセージです。
支える側のケアも大切です大切な人の深い悲しみに触れ続けることは、あなた自身にも影響を与えます。自分のケアを怠らず、必要に応じて専門家に相談してください。共感疲労は誰にでも起こりうることです。
FAQ

よくある質問——周産期喪失について

周産期喪失を経験した方、または支援したい方からよく寄せられる質問にお答えします。

Q. 流産してから何ヶ月も経つのに、まだ悲しいのはおかしいですか?

A. いいえ、おかしくありません。周産期喪失の悲嘆に「正常な期間」は決まっておらず、数年にわたって波のように繰り返すことも珍しくありません。「まだ悲しんでいる」ことは、あなたの愛の深さの表れです。ただし、6ヶ月以上経っても日常生活に著しい支障がある場合は、複雑性悲嘆(遷延性悲嘆症)の可能性があるため、グリーフカウンセラーや精神科・心療内科に相談することをお勧めします。

Q. 流産は「よくあること」と言われました。そう思えない自分は弱いのでしょうか?

A. 弱くはありません。「よくあること」というのは統計的な事実ですが、あなたにとってはかけがえのない唯一の命です。その悲しみの深さは妊娠週数や「よくあること」という社会的文脈では測れません。他の人の言葉に惑わされず、自分の悲しみを正当なものとして受け取る権利があなたにはあります。

Q. パートナーが悲しんでいるようには見えません。冷たい人なのでしょうか?

A. 悲嘆の表現方法は人によって大きく異なります。特に男性は「悲しみを見せてはいけない」「妻を支えなければ」というプレッシャーから、内側で深く悲しみながらも外に出さないことが多いです。仕事に没頭する、感情を切り離したように見えるのも悲嘆の一形態です。直接「一緒に悲しんでいい」と伝えること、必要であればカップル療法を検討することが助けになります。

Q. 次の妊娠がとても怖いです。それでも妊娠を考えていいのでしょうか?

A. はい、怖さを感じながら次の妊娠を望むことはまったく自然なことです。周産期喪失を経験した後の妊娠(PAL: Pregnancy After Loss)では、強い不安が続くことが多く、それは正常な反応です。次の妊娠を決断する前に、医師に前回の喪失の原因や再発リスクについて相談することをお勧めします。また、次の妊娠中はグリーフカウンセラーや産婦人科の心理士によるサポートを受けながら過ごすことができます。

Q. 職場になんと説明すればいいかわかりません。

A. 詳細を説明する義務はありません。「体調不良により療養が必要」「医師の指示で休養が必要」などの説明で十分です。産後休業(妊娠12週以降の流産・死産が対象)については、産婦人科医の診断書を会社に提出することで取得できます。会社の人事担当者や産業医に相談することをお勧めします。なお、職場での開示をどこまでするかは、あなた自身が決めることです。

Q. 赤ちゃんを供養したいのですが、どうすればいいですか?

A. 赤ちゃんの供養の方法は、宗教的・文化的背景や個人の意向によって異なります。妊娠22週未満の流産の場合、法律上は死産届の提出義務はありませんが、多くの産院でメモリアルサービス(手形・足形の採取、写真撮影など)を行っています。また、エンゼルケアや病院内での小さなお別れの機会を設けている施設もあります。自治体によっては流産・死産の赤ちゃんのための合同供養を行っているところもあります。「どうすれば赤ちゃんのためになるか」という問いに、正解はありません。あなたが赤ちゃんの存在を大切にするその気持ちが、最も重要です。

Q. 周囲に「次頑張ればいい」と言われるのが辛いです。どう対処すればいいですか?

A. その辛さはもっともです。「次がある」という言葉は、失った命の代替として扱われているように感じられ、深く傷つく言葉です。対処法として:(1)「その言葉は今の私には辛いです」と穏やかに伝える練習をする、(2) 深く傷つける言葉を言う人との距離を一時的に置く、(3) 同じ体験をした自助グループとつながり、「わかってもらえる場所」を見つける、などが助けになります。すべての人に理解してもらおうとすることは難しいですが、一人でも「わかってくれる人」がいることが大きな支えになります。

Q. 「消えてしまいたい」という気持ちが出てきたとき、どうすればいいですか?

A. その気持ちが出てきたら、すぐに誰かに話してください。一人で抱え込まないことが最も大切です。今すぐいのちの電話(0120-783-556)やよりそいホットライン(0120-279-338)に電話してください。24時間つながれます。ネットでの相談を好む方はココトモのチャット相談(/chat-soudan)も利用できます。「消えてしまいたい」という気持ちは、あなたがどれだけ深く傷ついているかの表れです。その痛みは、サポートを受けることで和らいでいきます。

もっと知りたい方へこのページでは周産期喪失の全体像をお伝えしています。個別の状況については、グリーフカウンセラーや精神科・心療内科に相談することをお勧めします。ひとりで抱え込まず、サポートを受けてください。

一人で抱え込まないで。
相談してみませんか。

赤ちゃんを亡くされた悲しみは、誰かに聴いてもらうだけでも少し楽になることがあります。あなたの大切な赤ちゃんのこと、お聞かせください。

今すぐ話したい方へ——相談窓口
ココトモ相談するチャット相談・無料
いのちの電話0120-783-55624時間・無料
よりそいホットライン0120-279-33824時間・無料

このページの情報は、医師による診断や治療に代わるものではありません。症状が気になる場合は、心療内科・精神科への受診をご検討ください。

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