身体的虐待とは?
定義・具体例・サイン・影響・2022年民法改正・通報の流れをわかりやすく解説
身体的虐待は、殴る・叩く・蹴るといった直接的な暴力から、拘束・薬剤拘束まで幅広い形態があります。2022年の民法改正により、親の懲戒権は削除され、体罰は明確に禁止されました。法律、影響、通報の流れ、相談先まで、必要な情報をすべてここにまとめました。一人で抱え込まないでください。
身体的虐待とは
身体的虐待とは、本人の身体に対して物理的な暴力や傷害を加える行為の総称です。児童・高齢者・障害者・配偶者それぞれについて法律で定義されており、どの対象に対しても許されない加害行為です。2022年の民法改正で懲戒権が削除され、親による体罰も明確に禁止されました。
4つの法律に共通する『身体への暴力』
身体的虐待は日本の主要な4つの虐待防止法で定義されています。児童虐待防止法第2条1号は『児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること』と規定し、外傷の有無や程度を問わず、暴行自体を虐待としています。高齢者虐待防止法は『高齢者の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること』、障害者虐待防止法も同様に身体への暴行を規定しています。DV防止法では配偶者・パートナーからの身体的暴力が『身体に対する不法な攻撃』として明確に位置づけられています。
共通するキーワードは『外傷の有無を問わず暴行であれば虐待』という点です。殴った結果として痕が残らなかったとしても、あるいは単に脅しとして手を振り上げただけでも、身体に危害を加えるおそれがある行為は虐待として扱われます。また、『しつけ』『懲戒』『教育』『厳しさ』『愛情の裏返し』といった言い訳は、法律上いずれも身体的虐待を正当化する根拠にはなりません。
最新データが示す深刻な現実
こども家庭庁が公表した令和5年度の児童相談所における虐待対応件数は過去最多の225,509件で、そのうち身体的虐待は51,623件(22.9%)を占めます。心理的虐待(59.8%)に次いで2番目に多い類型であり、生命・健康への直接的な危険を伴う深刻なカテゴリです。加害者別では、実母が48.7%で最多、次いで実父が42.3%と続いており、日常的に近くにいる養育者による暴力が大多数を占めることが分かります。
高齢者虐待の分野では、令和5年度の養護者による判断件数17,100件のうち、身体的虐待は63.4%と最多で、2つ以上の類型が重複するケースも多数報告されています。施設内虐待では身体的虐待が最多の57.6%を占め、介護現場における深刻な課題として位置づけられています。DV被害については、内閣府の調査で配偶者から身体的暴力を受けた経験がある女性は約17.2%、男性は約5.0%と報告されており、統計に表れない潜在的な被害はこれより遥かに多いと推定されています。
2022年民法改正で何が変わったか
2022年12月10日、民法等の一部を改正する法律が国会で成立し、同月16日に施行されました。この改正により、親の『懲戒権』を定めた民法822条が削除され、代わりに新民法821条には『親権を行う者は、(略)子の人格を尊重するとともに、その年齢及び発達の程度に配慮しなければならず、かつ、体罰その他の子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならない』という規定が新設されました。これは日本の家族法における歴史的な転換点です。
旧民法の『懲戒権』は『親は子を懲戒できる』という規定で、『しつけのための体罰は正当』という誤解を生み出してきました。この条文を削除することで、『体罰は一切認められない』という法律のメッセージを明確にすることができました。厚生労働省は『体罰等によらない子育て』というガイドラインを公表し、体罰に頼らない育児の具体的な方法を提案しています。『体罰以外の選択肢を知らない』という親への教育と支援が、今後の重要な課題です。
世界的に見ると、2025年現在、スウェーデン(1979年世界初)を含む60以上の国で家庭内の体罰が法的に禁止されています。日本もこの国際的な潮流に加わったことになります。体罰を受けた子どもは、受けていない子どもと比較して、攻撃的行動、自己肯定感の低下、メンタルヘルスの問題、対人関係の困難などのリスクが高いことが、国内外の研究で繰り返し報告されています。『体罰は効果的なしつけ』という通念は、科学的にも否定されているのです。
国連子どもの権利委員会は、日本政府に対して繰り返し『すべての場面における体罰の法的禁止』を勧告してきました。2019年の第4・5回統合報告の最終所見でも、『家庭、学校、児童養護施設その他すべての環境における子どもへの体罰の明示的かつ全面的禁止』を求める勧告が出されています。2022年の民法改正は、この国際社会からの要請に応える形で実現したものであり、今後は法律の精神を社会全体に浸透させる段階に入っています。『法律が変わった』ことを出発点に、子育ての価値観そのものを少しずつ更新していくことが求められています。
しかし法律が変わっても、『自分は体罰されて育ったが立派になった』『優しく育てたら甘やかしになる』という根強い声があるのも事実です。これに対して子育て研究の知見は、『体罰の代替となる、より効果的な育児方法がある』という結論を繰り返し示しています。体罰は一時的な『効果』があるように見えても、長期的には子どもの協力性を下げ、反抗心を育て、『怒られるからやらない』という外的動機づけに依存する態度を作ります。これに対し、感情を受け止めながら境界線を示す関わり方は、子どもの内発的な動機と自己調整力を育てることが分かっています。
5つの主要形態と具体例
タブを切り替えて、各形態の具体例を確認してください。複数の形態が同時に起きることも珍しくありません。
直接的な暴力のうち最も典型的な形態です。頬を叩く、頭を殴る、腹を蹴る、背中を踏む、拳で叩くなど、身体に対する直接的な暴力全般を指します。『しつけ』として行われるケースもありますが、2022年の民法改正で『懲戒権』は削除され、親による体罰も明確に禁止されています。児童・高齢者・配偶者・障害者のいずれに対しても違法な加害行為です。
火傷を負わせる、冷水・熱湯をかける、道具で殴るといった、一般的な暴力の範疇を超えた加害行為です。被害者の身体に重大な傷害を残すことが多く、放置すれば命に関わります。小さな子どもや高齢者、障害者など、自分で避けることができない立場の人ほど被害が深刻化します。
乳幼児を激しく揺さぶることで起きる深刻な脳損傷です。硬膜下血腫、網膜出血、脳浮腫などを引き起こし、重い後遺症や死亡に至ることもあります。『泣き止まない赤ちゃんをあやそうとして』というケースが典型的ですが、それも虐待として法的に扱われます。『ゆさぶりっこ』のような遊びとは違い、頭部が固定されない乳幼児への激しい揺さぶりは生命を脅かします。
身体を縛る、押さえつける、長時間同じ場所に閉じ込めるなど、物理的に自由を奪う行為です。介護施設や障害者施設では『身体拘束』として厳格な3要件(切迫性・非代替性・一時性)が求められており、それを満たさない拘束は虐待に該当します。家庭内で子どもを長時間押し入れに閉じ込めるような行為も身体的虐待です。
本人の同意なく薬物を投与する、不必要な薬で動きを抑制する、過剰な医療的介入を行うなど、医療・薬物を用いた支配行為です。介護現場での『薬剤拘束』『化学的拘束』として注目されており、高齢者虐待の一形態と認識されています。障害者・精神疾患者に対しても同様に問題となる形態です。
- 平手打ち・こぶしで殴る
- タバコを押しつける
- 激しく揺さぶる
- 縛り付ける
- 過度な鎮静剤の使用
- 蹴る・踏みつける
- 熱湯・お湯をかける
- 抱き上げて落とす
- 押し入れに閉じ込める
- 本人同意のない注射
- 頭を叩く・揺さぶる
- 冷水に浸ける
- 乱暴に投げる動作
- 手錠・紐で拘束
- 薬で動きを抑制する
- 投げ飛ばす
- 金属製品で叩く
- 頭部への衝撃を伴う扱い
- 椅子に縛り付ける
- 必要な薬の過剰投与
- 突き飛ばす
- ベルトで打つ
- 授乳中の乱暴な扱い
- 部屋から出さない
- 毒物の混入
- 首を絞める
- 刃物でけがをさせる
- 泣き止ませるための強い揺さぶり
- 動きを物理的に妨げる
- 子どもへの不適切な薬物投与
- 髪を引っ張る
- ドアに挟む
- 兄弟間での揺さぶり遊び
- 車椅子に拘束帯で固定
- 精神科薬の悪用
身体的虐待は、1回の強い暴力だけでなく、『日常的に繰り返される軽い暴力』という形でも深刻な影響を残します。『ちょっと叩いただけ』『ほんのお仕置き』と軽く捉えられがちな行為でも、繰り返されることで被害者の心身に大きな傷を残します。また、『今日は殴らなかった』『最近は優しい』といった加害者の言動の変動も、むしろ支配関係を強化する要因となります。『次はどうなるか分からない』という不安定さが、被害者を心理的に追い詰めていきます。
また、近年注目されているのが『薬剤拘束(化学的拘束)』です。これは、身体を物理的に縛る代わりに、抗精神病薬や睡眠薬を過剰投与して動きを抑制する行為で、介護現場や精神科医療の現場で問題となっています。物理的な拘束と同様、本人の意思や同意を無視した『見えない虐待』として、国際的にも批判されています。日本でも『身体拘束ゼロ』の推進と合わせて、薬剤拘束の削減が重要課題となっています。
厚生労働省の『令和5年度福祉行政報告例』によれば、児童相談所が対応した児童虐待相談件数は過去最多の225,509件に達し、このうち身体的虐待は51,623件(22.9%)を占めています。心理的虐待が59.8%で最多ですが、身体的虐待は子どもの生命・身体に直接的な危険を及ぼす重大な類型として、依然として高い割合を占め続けています。高齢者虐待防止法に基づく調査では、養護者による虐待のうち身体的虐待が最多の約63.4%を占めており、続いて心理的虐待、介護等放棄、経済的虐待、性的虐待の順となっています。障害者虐待も同様の傾向で、身体的虐待が最も多く報告されています。
家族内での身体的虐待の加害者は、子どもの場合は実母(約48.7%)と実父(約42.3%)が大部分を占めますが、継父・継母、内縁の男性・女性、きょうだいによる加害もあります。高齢者の場合は息子・夫・娘・嫁の順で多く、障害者の場合は父・母・兄弟姉妹・配偶者が主な加害者です。いずれのケースでも、『最も身近で信頼すべき存在』が加害者になるという現実が、被害者が声を上げにくい根本原因の一つとなっています。『家族なんだから』『育ててくれた人だから』という情緒的な縛りが、被害を長期化・深刻化させる要因でもあります。また、被害者が子ども・高齢者・障害者といった『声を上げにくい立場』である場合、外部に助けを求めること自体が難しく、発見が遅れがちです。だからこそ、周囲の大人・近隣・専門職の『気づく力』が、閉じた家庭に光を届ける最初の鍵になります。
身体的虐待は、『ある日突然始まる』ものではなく、多くの場合『小さな体罰』『日常的な怒鳴り』『軽い暴力』から徐々にエスカレートしていきます。加害者本人も『こんなにひどくなるつもりはなかった』『気がついたらやっていた』と語ることが多く、体罰や暴力の『日常化』が歯止めを失う最大のリスクです。だからこそ、『一度だけ』『ちょっとだけ』の段階で立ち止まり、相談につながることが予防の鍵となります。『まだ大したことはない』段階で支援に繋がることこそ、本人・家族・周囲すべてにとって最も負担の少ない選択です。
周囲が気づける6つのサイン
身体的虐待は外見に痕跡が残ることが多いため、周囲が気づきやすい虐待類型です。しかし、被害者が隠そうとすることも多く、『説明と合わない』『繰り返す』という点に注目することが発見の鍵です。
身体と行動に現れる警告
次のサインが複数同時に現れる場合、または繰り返し観察される場合は、身体的虐待の可能性を考えて相談してください。1つだけでは判断せず、『パターン』を見ることが大切です。
子どもの場合、学校の先生、養護教諭、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、保育士、幼稚園教諭が、虐待の発見で最も重要な役割を担います。健康診断、体育の時間、着替えの場面、プール、長期休暇明けなど、子どもの身体を観察する機会を通じて、日常とは異なる傷や様子に気づくことができます。学校には『要保護児童対策地域協議会』との連携が制度化されており、疑いの段階で児童相談所や自治体の虐待防止担当課に情報を共有する仕組みがあります。
高齢者・障害者の場合は、ケアマネジャー、訪問介護員、訪問看護師、デイサービス職員、医療機関のスタッフが発見者になりやすい立場です。入浴介助・清拭・更衣の場面で身体を観察する機会があり、説明のつかない打撲・骨折・皮下出血・褥瘡などに気づいた場合は、地域包括支援センターに速やかに情報提供する必要があります。介護職員には虐待の通報義務があり、通報を理由とした不利益な扱いは法律で禁止されています。『組織を守る』のではなく『利用者を守る』という視点で、勇気を持って声を上げることが求められます。
医療機関での発見も重要です。救急外来、小児科、整形外科、内科、皮膚科などで、説明のつかない外傷、繰り返す受診、特定のパターンの怪我、家族の同席下での不自然な様子などを通じて、医師・看護師・MSW(医療ソーシャルワーカー)が虐待を疑うケースが増えています。日本小児科学会の『子ども虐待診療の手引き』、日本老年医学会の『高齢者虐待対応マニュアル』など、各専門学会が診療ガイドラインを整備し、医療現場での早期発見と対応を体系化しています。
近隣住民・地域の人からの情報提供も、虐待発見の重要な経路です。『隣の家からいつも子どもの泣き声や叫び声が聞こえる』『深夜に物音や怒鳴り声がする』『子どもが真冬に薄着で外に出されている』『高齢者が長時間、窓際で助けを求めているように見える』——こうした違和感は、具体的な証拠がなくても、189(いちはやく)や地域包括支援センターに電話してよい情報です。『大げさかな』『勘違いかな』と迷っても、専門職が状況を整理してくれます。近隣の気づきが、閉ざされた家庭の扉を開く唯一の鍵になることもあります。『関わりたくない』『波風を立てたくない』という気持ちも自然ですが、通告者の情報は厳重に守られるため、加害者に『誰が通報したか』が伝わることはありません。あなたの小さな行動が、子どもや高齢者の命を救う大きな力になります。『見ないふり』をした後悔より、『勇気を出して電話した』ことの安心の方が、ずっと長く心に残ります。
また、本人が助けを求める言葉を持たない場合も多いため、『言語以外のサイン』にも注目してください。子どもの場合、絵や遊びの中に暴力的な表現が繰り返し現れる、親の前で極端に緊張する、服を脱ぐのを極端に嫌がる、夜尿・退行・食欲不振が続く——これらは『言えない苦しみ』の表現です。高齢者・障害者の場合は、介護者の前で目を合わせない、特定の部屋に入ることを怖がる、急に話さなくなる、『転んだ』を繰り返すなど、生活の中の細かな変化に気づくことが大切です。『いつもと違う』『何か変だ』という感覚は、親しい人にしか分からない大切な情報で、そのまま記録・共有することが専門職の判断材料になります。
身体から心・関係性まで
身体的虐待の影響は、受けた時期、継続期間、加害者との関係、周囲の反応などによって異なります。身体の傷は目に見えても、心と脳への影響は『見えない傷』として長く残ります。特に、加害者が親・配偶者・介護者といった『愛情と依存の対象』である場合、被害者は『愛されたい気持ち』と『怖い気持ち』が同時に存在する矛盾した関係の中に置かれ、これが自己認識・対人関係・愛着パターンに深い歪みを残すことがあります。
近年の脳科学研究では、幼少期の身体的虐待が脳の構造と機能に影響を与えることが明らかになっています。ストレスホルモン(コルチゾール)の過剰分泌は、海馬の萎縮、扁桃体の過活動、前頭前野の発達遅延といった変化を引き起こし、成人後の情緒調節、認知機能、人間関係に長期的な影響を残すことが示されています。これは『心の問題』ではなく『脳の問題』であり、時間と適切なケアで回復していくプロセスを必要とします。
一方で、近年のトラウマ治療の発展により、『傷ついた脳も回復できる』ことが示されつつあります。神経可塑性(ニューロプラスティシティ)——脳は経験によって変化し続ける——という性質を利用した治療法が開発され、EMDR、TF-CBT、ニューロフィードバック、ヨガ、瞑想など、多様なアプローチが効果を上げています。『もう手遅れ』は決してなく、今からでも回復は始められます。専門職との出会い、安全な関係性、自分自身への優しさ——これらが回復の土台となります。
身体的虐待はまた、うつ病、不安障害、PTSD、複雑性PTSD(C-PTSD)、解離性障害、境界性パーソナリティ障害、摂食障害、薬物・アルコール依存などの精神疾患のリスクを大きく高めることが数多くの研究で示されています。ACE研究(Adverse Childhood Experiences:小児期逆境体験研究)は、幼少期に身体的虐待を含む逆境を複数経験した人は、成人後に心身の疾患・自殺リスク・社会経済的困難を抱える確率が顕著に上昇することを示しました。この研究は現在、世界中の公衆衛生政策の基礎となっています。しかし同時に、『回復要因(レジリエンス)』の存在も確認されており、安定した関係性、教育機会、支援者との出会いがあれば、逆境の影響を大きく緩和できることも分かっています。
身体的な後遺症にも目を向ける必要があります。重度の外傷、頭部外傷、骨折、熱傷、SBSによる脳障害、長期の栄養不良などは、後遺症として生涯にわたる医療的ケアを必要とすることがあります。身体障害、高次脳機能障害、てんかん、視覚・聴覚障害、運動機能障害など、被害の形は多様です。適切な医療・リハビリテーション・福祉制度(身体障害者手帳、自立支援医療、障害年金、医療費助成など)を利用しながら、長期的な生活再建を進めることが大切です。医療ソーシャルワーカー、相談支援専門員、リハビリテーション職員がチームとして支えます。
法律と2022年民法改正
2022年12月の民法改正により、親の『懲戒権』が削除され、体罰は明確に禁止されました。また、児童福祉法・高齢者虐待防止法・障害者虐待防止法・DV防止法など、対象別の保護枠組みが整備されています。
懲戒権削除という歴史的転換
2022年12月10日、民法等の一部を改正する法律が成立し、同月16日に施行されました。この改正の最大のポイントは、民法822条に定められていた『親の懲戒権』の削除です。旧条文は『親権を行う者は、第820条の規定による監護及び教育に必要な範囲内でその子を懲戒することができる』と定めており、これが『親による体罰は許される』という誤った解釈を生む原因となっていました。
改正により、新しく民法821条には『親権を行う者は、前条の規定による監護及び教育をするに当たっては、子の人格を尊重するとともに、その年齢及び発達の程度に配慮しなければならず、かつ、体罰その他の子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならない』という条文が新設されました。これは日本において初めて、『親は子に体罰をしてはいけない』ことが法律に明文化された歴史的な変化です。
この民法改正に先立ち、2019年には児童虐待防止法および児童福祉法の改正により、親権者・児童福祉施設長などによる体罰が禁止されていました。しかし当時は民法に懲戒権が残っていたため、法律間の矛盾が指摘されていました。2022年改正はこの矛盾を解消し、すべての法制度を通じて『子どもへの体罰は認められない』という一貫したメッセージを確立しました。世界的に見ると、1979年にスウェーデンが世界で初めて家庭内体罰を法的に禁止して以来、63カ国以上が子どもへの体罰を全面的に禁止しており、日本もようやくその流れに加わった形です。
法律改正の背景には、2018年の目黒区5歳女児虐待死事件、2019年の野田市10歳女児虐待死事件など、親の『しつけ』を口実にした深刻な虐待死事件が続いたことがあります。これらの事件を通じて、『体罰は絶対にしつけにならない』『しつけと虐待の区別は被害者側からは見えない』という認識が社会全体で共有され、法制度の転換につながりました。同時に、相次ぐ悲劇を繰り返さないために、児童相談所の体制強化、関係機関の連携強化、地域での見守り体制の構築、親支援プログラムの普及など、多面的な取り組みが進められています。2024年には児童福祉法・児童虐待防止法のさらなる改正により、一時保護時の司法審査の導入、児童福祉司・児童心理司の増員、市区町村子ども家庭センター(旧子ども家庭総合支援拠点・子育て世代包括支援センターの統合)の設置など、子どもの権利保障をより強化する制度改革が進められています。
児童・高齢者・障害者・配偶者を守る4つの法律
児童虐待防止法(2000年施行)は18歳未満の子どもへの身体的虐待を定義し、発見者に通告義務を課しています。通告先は児童相談所(189)または市区町村で、確証がなくても『思われる』段階で通告できます。高齢者虐待防止法(2006年施行)は、65歳以上の高齢者への虐待を対象とし、家族・親族・養介護施設従事者による身体的虐待を市区町村への通報対象としています。
障害者虐待防止法(2012年施行)は、障害者(18歳以上)への虐待を家庭・施設・職場で定義し、それぞれに対応窓口を整備しています。DV防止法(2001年施行、2023年改正)は配偶者・パートナー・元配偶者からの暴力に対応し、保護命令(接近禁止・退去命令)、一時保護、シェルター、医療・心理支援の枠組みを提供します。2023年改正では保護命令の対象が拡大し、精神的暴力・経済的暴力も明確に含められました。各法律は被害者の年齢・関係性に応じて使い分けられ、複数の法律が同時に適用されることもあります。
刑法の観点では、身体的虐待は傷害罪(刑法204条、15年以下の懲役または50万円以下の罰金)、暴行罪(同208条、2年以下の懲役等)、傷害致死罪(同205条、3年以上の有期懲役)、殺人罪(同199条、死刑等)などに該当します。被害者が親族の場合でも、刑事罰は原則として適用されます。ただし、被害者本人の告訴の有無・意思が考慮される場合もあり、刑事事件として立件するかは状況次第です。民事訴訟(損害賠償請求)は刑事事件化しない場合でも可能で、弁護士と相談することで最適な対応方針を選べます。
被害者が経済的理由で弁護士に依頼できない場合でも、法テラス(日本司法支援センター)の『民事法律扶助制度』を利用すれば、無料の法律相談や弁護士費用の立替えが受けられます。DV被害者・児童虐待被害者・犯罪被害者向けの特別枠もあり、収入要件が緩和されたり、立替金の償還が免除されたりするケースもあります。また、犯罪被害者等給付金制度(警察庁)により、重傷・遺族・障害などの区分で給付金を受け取ることができ、医療費・生活費・転居費などの実費を補填できます。『お金がないから諦める』必要はありません。法テラスは電話(0570-078374)やWebからの相談申込みが可能で、相談員が制度の利用要件や手続きの流れを丁寧に説明してくれます。
保護命令(DV防止法)は、配偶者・元配偶者・同居交際相手などからの身体的暴力・生命等への脅迫がある場合、地方裁判所に申し立てることで接近禁止命令・退去命令・電話等禁止命令などを発令してもらえる制度です。2023年の改正で対象が拡大し、心身に重大な危害を生じるおそれが大きい精神的暴力等も対象となりました。違反には懲役・罰金が科されます。手続きには配偶者暴力相談支援センターや警察の書面が必要ですが、弁護士が一緒に動いてくれるため、一人で抱える必要はありません。緊急避難が必要な場合は、シェルターや婦人相談所の一時保護が並行して利用できます。保護命令は発令まで通常1〜2週間かかりますが、その間は警察の被害防止措置・パトロール・緊急一時保護などで安全を確保します。住民票の閲覧制限(支援措置)により、加害者に住所が知られることも防げます。
気づきから支援につながるまで
通告・通報は『告発』ではなく『SOSを社会に共有する行為』です。あなたの一本の電話が、誰かの命と尊厳を守るきっかけになります。
また、『通告するかどうか』で迷った時点で、既に何らかの気づきがあるということです。『確実な証拠がない』『勘違いかもしれない』と思うかもしれませんが、それは専門職が判断することです。通告者に求められているのは『100%の確信』ではなく、『気になる事実を伝える』ことだけです。結果的に虐待ではなかったとしても、それは『良い結果』であり、通告者が責められることはありません。『見て見ぬふり』の方が、遥かに大きなリスクを生み出します。
通告した後の流れについても知っておくと安心です。児童相談所は通告を受けてから原則48時間以内に、子どもの安全を直接確認する『48時間ルール』という運用を行っています。目視での安全確認、子どもの身体・状況の確認、家庭訪問、学校・保育園・医療機関からの情報収集などを通じて、虐待の有無と緊急性を判断します。緊急性が高い場合は、児童相談所長の権限で『一時保護』が行われ、子どもは一時保護所や協力施設で安全に守られながら、今後の方針が検討されます。高齢者虐待・障害者虐待の場合も同様に、市区町村が速やかに実態調査を行い、必要に応じて一時保護・施設入所・措置などの対応が行われます。
通告の方法は、電話(189、地域包括支援センター、市区町村の虐待対応窓口)、直接訪問、メール、Web通報フォームなど、自治体によって多様です。匿名での通告も可能で、『通告したこと』自体が加害者に伝わることはありません。通告内容は『いつ・どこで・何を見たか(聞いたか)』という事実だけで構いません。『これは虐待だ』と断定する必要も、詳細な証拠を準備する必要もありません。あなたの役割は『気になることを専門職に伝える』ことまでで、その後の判断・対応は専門職が担います。
相談・支援の窓口
身体的虐待の相談は、対象者と状況に応じて窓口が異なります。どこに電話すべきか迷う場合は、地域包括支援センターか189に電話すれば、適切な窓口にリレーしてもらえます。
迷ったらまず一本電話を
以下の窓口はすべて、確証がなくても・匿名でも相談可能です。『こんな程度で電話して良いのか』と迷う必要はありません。プロが話を整理し、必要な対応を一緒に考えてくれます。電話が難しい場合は、メール相談・Web相談・対面相談など、多様なチャネルが用意されています。また、外国語対応の窓口(多言語相談ダイヤル、やさしい日本語対応)、ろう者・難聴者向けのFAX・メール対応、視覚障害者向けの音声案内など、アクセシビリティにも配慮されています。『自分には合う窓口がないかも』と諦める前に、まず一度どこかに電話してみてください。専門職が別の適切な窓口を紹介してくれます。相談は無料で、匿名でも構いません。何度でも相談できますし、『今日はやっぱり話せない』と思えば途中で切っても大丈夫です。相談窓口はあなたを責めません。
支援は一度きりで終わるものではなく、継続的な関わりが必要です。児童虐待の場合、児童相談所の介入後に、市区町村子ども家庭総合支援拠点、要保護児童対策地域協議会、児童家庭支援センター、子育て世代包括支援センターなどがチームとして関わります。高齢者・障害者の場合は、地域包括支援センターや市区町村障害者虐待防止センターを中心に、介護サービス事業所、医療機関、成年後見人、民生委員、権利擁護センターなどが連携します。DVの場合は、配偶者暴力相談支援センター、婦人相談所、民間シェルター、弁護士、自治体の生活支援などが支えます。
また、経済的な支援制度も重要な資源です。生活保護、生活困窮者自立支援制度、児童扶養手当、障害年金、医療費の公費負担、住宅確保給付金、犯罪被害者等給付金制度など、虐待後の生活再建を支える制度は多数あります。ケースワーカー、社会福祉士、ソーシャルワーカーが、利用可能な制度を整理し、申請をサポートしてくれます。『知らない』『手続きできない』が制度から遠ざかる最大の障壁なので、まず相談窓口につながることが第一歩です。
心理的な回復を支える資源も豊富にあります。トラウマ専門の臨床心理士・公認心理師、精神科医、トラウマフォーカスト認知行動療法(TF-CBT)を実施する専門機関、子どもの心の診療部、児童精神科、DV被害者向けグループカウンセリング、自助グループ(AC自助グループ、DV被害者自助グループ、虐待サバイバーのための集まり)など、被害者同士がつながり語り合う場も全国に広がっています。『自分と同じ経験をした人がいる』『一人ではない』と気づくことが、孤立から抜け出す大きな一歩になります。オンラインの匿名相談、SNSの当事者コミュニティ、書籍・当事者手記など、対面以外のつながり方も今は豊富にあります。自分のペースで、自分に合う形で、回復への一歩を踏み出してください。
周囲の人ができること・よくある質問
家族・友人・近隣住民・専門職として、身体的虐待に気づいたとき、どう関わればよいか——『信じる』『責めない』『つなぐ』の3つが基本です。迷ったらまず一本電話を入れてください。
してよいこと・避けたいこと
身体的虐待は急激にエスカレートすることがあるため、早期の気づきと適切な対応が命を守ります。
子どもが被害者の場合、親・保護者として関わる大人は『自分が守れなかった』『気づけなかった』という自責感を抱えがちです。この感情は自然なものですが、子どもの前で過度に表現すると、子どもが『自分のせいで親が苦しんでいる』と感じて閉じこもってしまうことがあります。親自身もカウンセリングを受けながら、子どもの前では『あなたを信じている』『あなたを守る』という安定したメッセージを繰り返し伝えることが大切です。親が安定することが、子どもの回復を支える一番の力になります。
また、支援者・専門職として関わる場合は、『二次受傷(代理受傷)』に注意してください。深刻なケースに継続的に関わることで、支援者自身がPTSDに似た症状を経験することがあります。定期的なスーパービジョン、同僚との情報共有、自分の感情を言語化する時間、必要に応じた休養——これらは贅沢ではなく、支援の質を保つために不可欠な『職業上の自己ケア』です。ケアする人が壊れないことが、ケアを受ける人の安全を守ることにもつながります。
加害者となってしまった親・家族に対しても、『罰する』だけでなく『変化を支える』視点が必要です。児童相談所や市区町村は、親支援プログラム(MCG:Mother & Child Group、PCIT:親子相互交流療法、CARE:Child-Adult Relationship Enhancementなど)を提供し、親自身の認知・感情・行動パターンを見直す機会を作っています。加害者の多くは自身も被虐待体験やDV目撃体験を持ち、『適切なしつけの仕方』を学ぶ機会がないまま親になっています。『悪い親』と切り捨てるのではなく、『支援が必要な親』としてアプローチすることで、子どもの安全と家族関係の再構築を両立できる可能性が広がります。
高齢者・障害者虐待の場合も、養護者(介護者)への支援が不可欠です。介護負担の軽減(レスパイト・ショートステイ・デイサービスの利用)、経済的支援、介護技術の指導、家族カウンセリング、地域の見守りなどが、再発防止と関係改善に役立ちます。『介護うつ』『介護離職』『ヤングケアラー』といった社会問題ともつながっており、社会全体で介護を支える仕組みが、個々の家庭の孤立を防ぎます。地域包括支援センターは、被害者だけでなく養護者の相談にも対応しており、『もう限界かもしれない』と感じたら、早めに相談することが大切です。『助けを求めること』は『弱さ』ではなく、家族の安全を守る最も責任ある行動です。相談することで、『虐待する親・家族』と呼ばれることはなく、むしろ『大変な状況の中で頑張ってきた人』として、具体的なサポートに繋がれます。
よくある質問
A. 2022年12月に民法が改正され、『懲戒権』の規定が削除されました。これにより、『しつけ』の名目での体罰は明確に禁止されました。改正後の民法821条では、親は『子の人格を尊重しなければならず、体罰その他子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならない』と定められています。平手打ち、お尻を叩く、『言うことを聞かないから』と手を上げる——これらはすべて『しつけ』ではなく虐待です。厚生労働省も『体罰等によらない子育て』のガイドラインを公表しており、効果的な代替方法を提案しています。
A. 配偶者からの身体的暴力はDV(ドメスティック・バイオレンス)に該当し、DV防止法に基づく保護が受けられます。まず身の安全を確保することが最優先です。緊急時は110番、相談はDV相談プラス(#8008)または全国の配偶者暴力相談支援センターへ。シェルター(一時保護施設)の利用、保護命令の申立て、転居、離婚手続き、子どもの親権など、必要な支援がワンストップで受けられます。被害者の医療費や弁護士費用の公的支援制度もあります。『自分さえ我慢すれば』と抱え込まず、すぐに相談してください。
A. 直接介入するのは危険な場合があるので、児童相談所虐待対応ダイヤル189(いちはやく)に電話してください。匿名で、確証がなくても通告できます。緊急性が高い場合(大きな怪我、重大な危険がある場合)は110番を迷わず使います。通告は『親を告発する行為』ではなく、『親子を支援につなげる行為』です。通告者の情報は守秘義務で守られ、加害親に『誰が通告したか』が伝わることはありません。あなたの一本の電話が、子どもの命と将来を守ることにつながります。
A. 高齢者虐待防止法では、虐待を受けたと思われる高齢者を発見した者に通報の努力義務(生命・身体に重大な危険がある場合は通報義務)が課されています。相談・通報窓口は地域包括支援センターまたは市区町村の高齢者福祉担当課。介護職員による虐待の場合は、施設の外部通報窓口や都道府県の指導監査課にも相談可能です。通報者の情報は守秘され、通報によって不利益を受けない保護規定があります。家族内の介護疲れが背景にある場合もあり、通報は『加害者を罰する』だけでなく『支援の導入』につながる行為です。
A. 2022年の民法改正により、『軽い体罰』も法律上は許されない行為となりました。一回限りの軽い接触で即通告すべきかは状況次第ですが、繰り返し叩く、子どもが怯える様子を見せる、あざができる、家族が黙認しているような環境がある場合は、ためらわずに通告してください。迷う場合は『児童相談所に相談する』という選択肢もあります。『通告すべきか』ではなく『相談する』という感覚で、189に電話して状況を話すだけでも、適切な判断やアドバイスを得られます。
A. SBS(Shaken Baby Syndrome)は、生後6ヶ月未満の乳児に多い深刻な脳損傷です。泣き止まない赤ちゃんを激しく揺さぶることで、脳内出血・網膜出血・脳浮腫を引き起こし、後遺症や死亡のリスクがあります。『少し揺さぶった程度』と思っても、乳幼児の頭は大きく首が不安定なため、大人では想像できない深刻なダメージを与えます。泣き止まないことに困ったら、赤ちゃんを安全な場所に寝かせて、一旦部屋を離れる、深呼吸する、信頼できる人に代わってもらうなどの対策を取ってください。厚生労働省・小児科学会もSBS予防啓発に力を入れています。
A. 高齢者虐待防止法第21条により、養介護施設従事者等は、業務中に虐待を発見した場合、市区町村への通報義務があります。施設内に虐待防止担当者が配置されているので、まず内部で相談します。対応が不十分な場合は市区町村の虐待防止担当課、都道府県の介護保険指導監査課、警察に通報することができます。公益通報者保護法により、通報を理由とした不利益な扱いは違法です。『同僚を裏切る』ことへの抵抗感があるかもしれませんが、利用者の尊厳と安全を守ることが介護の本質です。
A. 状況により異なります。児童虐待の場合は自治体の子ども医療費助成、DVの場合はDV被害者医療費公費負担制度、犯罪被害者の場合は犯罪被害者等給付金制度や自治体独自の支援、高齢者・障害者虐待の場合は介護保険・障害福祉サービスなどが利用できます。保険証が使えない状況(加害者が管理している等)であっても、『保険証を持参できない事情』を医療機関・福祉機関に説明すれば対応してもらえます。費用の心配で医療を受けられない場合は、法テラスや自治体の福祉窓口にも相談してください。
A. はい。虐待の再発防止には、被害者の保護と並行して加害者への支援・治療が不可欠です。児童虐待の加害親には『親支援プログラム』『ペアレントトレーニング』、DVの加害者には『DV加害者プログラム』(民間支援団体が実施)、介護虐待の加害者には介護負担軽減のためのサービス導入や家族会参加が支援メニューとしてあります。加害者自身も『助けを求めていた』ケースも多く、責めるだけでなく『変わるチャンスを提供する』視点も必要です。ただし、支援は被害者の安全確保が最優先で、加害者支援はその土台の上に成り立つものです。
A. はい、回復は可能です。時間はかかりますが、EMDR、TF-CBT、認知処理療法(CPT)、ソマティック・エクスペリエンシング®など、科学的に確立されたトラウマ治療法が複数存在します。精神科・心療内科・臨床心理士・公認心理師のもとで受けることができ、一部は保険診療の対象です。『自分は壊れた』のではなく『傷ついた』のです。適切なケアと時間で、『傷と共に生きる力』は必ず育っていきます。回復には自分のペースを大切にすることと、信頼できる専門職との出会いが鍵となります。
A. 『叩いてしまった』と気づいた時点で、あなたは変わるスタートラインに立っています。一回の行為でも継続的な行為でも、今から支援を求めることは可能です。子ども家庭支援センター、児童相談所(相談は匿名可)、保健センターなどに相談することで、育児の困難の背景にある問題(経済困難・孤立・心身の疲弊・自分自身の過去など)に一緒に向き合う支援が得られます。『悪い親』として責められるのではなく、『変わろうとしている親』として受け止められます。自分一人で抱え込まず、勇気を持って相談してください。
A. 体罰に頼らない子育てには、いくつかの実践的な方法があります。①してほしい行動を具体的に伝える(『走らないで』ではなく『歩こうね』)、②親の感情を言葉にする(『ママは心配している』)、③子どもの感情を受け止める(『悲しかったのね』)、④選択肢を提示する(『この2つのどっちがいい?』)、⑤ポジティブな関わりを増やす(できたことを褒める)、⑥親自身がセルフケアを大切にする(疲れ切った親から優しさは生まれません)。厚生労働省は『体罰等によらない子育てのために』というガイドを公表し、具体的な関わり方の例を紹介しています。子育て支援センターや保健師にも気軽に相談できます。
A. 兄弟(きょうだい)間の深刻な暴力も、児童虐待防止法が対象とする『児童虐待』の範疇に含まれる場合があります。年長の子が年少の子に対して日常的に暴力を振るう場合、親の監護義務違反として児童虐待と判断されることがあります。また、『きょうだい虐待』として独立した研究分野も存在し、深刻な心的トラウマを残すことが知られています。児童相談所や市区町村の子ども家庭支援窓口に相談することで、家族全体への支援が受けられます。年長の子自身も、家庭の中で困難を抱えている可能性があり、責めるだけでなく背景にある問題に目を向ける支援が必要です。
A. はい、あります。『ペアレントトレーニング』は、子どもとの効果的な関わり方を学ぶプログラムで、自治体の保健センター、子ども家庭支援センター、児童家庭支援センター、医療機関などで受講できます。また、『トリプルP』『コモンセンス・ペアレンティング』『精研式ペアレントトレーニング』など、各種プログラムが全国で実施されています。発達障害や育てにくさのある子どもの親向けのプログラムもあり、障害特性に応じた関わり方を学べます。『叩きそうになる』と感じている段階で支援につながることが、虐待の予防になります。
暴力から、
あなたを守る道があります。
『家族だから』『自分が我慢すれば』『しつけだと思っていた』——そうやって一人で抱え込んでいるあなたへ。殴られること、傷つけられることは、決してあなたのせいではありません。被害を受けている方も、大切な人の被害に気づいたあなたも、どうかココトモにあなたの大切な悩みを聞かせてください。匿名で、安心してお話しください。あなたのペースで大丈夫です。話すのが難しければ、ただ文字を打つだけでも構いません。
このページの情報は、医療・法律・警察対応に代わるものではありません。緊急時は110番・119番、児童は189(いちはやく)、高齢者・障害者は地域包括支援センター、配偶者からの暴力はDV相談プラス(#8008)へ。2022年の民法改正により、親の懲戒権は削除され、体罰は明確に禁止されました。通告・通報は法律で認められた正当な行動であり、通告者の情報は厳重に守られます。あなたは一人ではありません。どうか、自分を責めずに、今日ここでこのページを読んでいることを、最初の一歩として大切にしてください。
