メンタルヘルス用語辞典 · 精神科訪問看護

精神科訪問看護とは?
対象・内容・費用・利用方法を徹底解説

退院後の生活が不安、通院はできているが日常生活が崩れている、家族としてどう支えればよいかわからない——精神疾患を抱えながら地域で生きていくうえで、こうした悩みは少なくありません。精神科訪問看護の定義から支援内容・費用・申し込み手順・ステーションの選び方まで、利用者・家族が知っておくべき情報をすべてここにまとめました。

ABOUT

精神科訪問看護とは——定義と目的

精神疾患を抱える方の自宅・生活の場に専門職が訪問し、病状管理から日常生活支援まで包括的にサポートする医療サービスです。長期入院中心から「地域移行・地域定着」への政策転換とともに、その重要性は高まり続けています。

定義

精神科訪問看護の定義

精神科訪問看護(せいしんかほうもんかんご)とは、精神疾患を抱える方や心のケアを必要とする方の自宅・生活の場に、看護師・作業療法士・精神保健福祉士などの専門職が訪問し、病状の管理から日常生活支援まで包括的なサポートを行う医療サービスです。病院での治療と地域生活を橋渡しする役割を担っており、主治医の「精神科訪問看護指示書」に基づいて実施されます。

日本の精神保健医療福祉政策は、長期入院中心の体制から「地域移行・地域定着」へと大きく転換してきました。厚生労働省の方針のもと、精神障害のある人が地域で自分らしい生活を送ることを支援するため、精神科訪問看護の重要性はますます高まっています。2023年には約20万人以上が精神科訪問看護を利用しており、需要は年々増加しています。

リカバリーを支える伴走者訪問看護師は単なる「医療処置の実施者」ではなく、利用者の生活全体を見渡す伴走者として機能します。「その人が自ら悩み、考え、行動しながら自分らしい生活を送ることができるよう、長期的視点を持って支援する」という理念が、精神科訪問看護の基盤にあります。
3つの目的

精神科訪問看護の目的——リカバリーの支援

精神科訪問看護の根本的な目的は、利用者の「リカバリー(recovery)」を支援することです。リカバリーとは、症状が完全に消えることだけを意味するのではなく、精神障害があっても地域で自分らしい満足した人生を送ることができる状態を指します。具体的な目的は次の3つに集約されます。

🛡
再発予防
服薬管理や症状の早期モニタリングを通じて、精神症状の再燃・悪化を防ぐ。
🌿
生活支援
食事・睡眠・清潔保持・社会参加など、日常生活全般の質を維持・向上させる。
🤝
社会資源活用支援
デイケア、就労支援、障害福祉サービスなど、地域の制度・サービスへの橋渡しを行う。
高まる需要

精神科訪問看護の需要が高まっている背景

精神科訪問看護のニーズが急拡大している背景には、いくつかの社会的・制度的要因があります。

  • 長期入院患者の地域移行推進国の「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の構築方針により、精神科長期入院者の退院・地域移行が加速。退院後の生活支援ニーズが急増している。
  • 精神疾患患者数の増加うつ病・不安障害・発達障害など、外来通院中の精神疾患患者は約600万人を超えており、在宅での継続支援の必要性が高まっている。
  • 単身・独居者の増加精神疾患を持つ方の単身生活者が増え、家族によるインフォーマルサポートが得られにくい状況が広がっている。
  • 精神科病床の削減政策長期入院を減らす政策の中で、在宅医療・訪問看護の充実が不可欠となっている。
約600万人
外来通院中の精神疾患患者数(推計)
約20万人+
2023年の精神科訪問看護利用者数
週3回
医療保険での標準的な訪問回数上限
週5回
退院後3か月間の特例上限
1割負担
自立支援医療適用時の自己負担
30〜90分
一回あたりの訪問時間
DISTINCTION

通常の訪問看護との違い

同じ「訪問看護」でも、精神科訪問看護と一般訪問看護は、対象・目的・提供内容・使用する保険・訪問職種の面で大きく異なります。違いを正しく理解しておきましょう。

比較表

精神科訪問看護と一般訪問看護の比較

「訪問看護」と聞くと高齢者の在宅ケアや身体疾患のリハビリを思い浮かべる方が多いかもしれません。両者の違いを7つの観点で整理します。

項目
精神科訪問看護
一般訪問看護
主な対象
精神疾患(統合失調症・うつ病・双極性障害等)を持つ方
身体疾患・障害・高齢による要介護状態の方
保険区分
医療保険(精神科訪問看護基本療養費)が原則
介護保険または医療保険
訪問できる専門職
看護師(精神科)、作業療法士(精神科)、精神保健福祉士、保健師
看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士
支援の中心
精神症状管理・服薬支援・生活技能訓練・社会復帰支援
身体機能の維持・回復・医療処置・日常生活援助
リハビリの特徴
精神的・社会的リハビリ(SST、認知行動療法的アプローチ、就労支援等)
身体機能の維持・向上を目指した理学・作業・言語療法
訪問指示書
精神科訪問看護指示書(精神科医が発行)
訪問看護指示書(主治医が発行)
自立支援医療
適用可能(費用が大幅軽減される)
適用なし
独自性

精神科訪問看護の独自性

精神科訪問看護の最大の特徴は「心の病気」に特化した専門的アプローチです。身体的処置よりも、対話・傾聴・関係性の構築が支援の中核を担います。訪問看護師は利用者の話をじっくり聴き、本人が望む生活像を一緒に描きながら、その実現に向けて伴走します。

また、精神科訪問看護では「その人が生活する場で行われる」ことが重要な意味を持ちます。病院の診察室では見えにくい、実際の生活環境(食事・睡眠・服薬状況・人間関係・住環境)を直接把握できるため、より実態に即した支援が可能です。

💡
訪問できる職種の注意点身体リハビリを担う理学療法士は、精神科訪問看護では訪問できません。一方、作業療法士は精神科訪問看護において重要な役割を果たします。精神保健福祉士(PSW)が同行し、社会資源の活用支援や制度的な手続きをサポートするケースもあります。
TARGET

対象となる疾患と利用条件

精神科訪問看護の対象は、ICD(国際疾病分類)における「精神および行動の障害(F00〜F99)」のすべて。年齢・障害程度による制限はなく、主治医が必要と認めた方であれば利用可能です。

対象疾患

対象となる精神疾患

対象となる精神疾患は、WHO(世界保健機関)が定めるICD(国際疾病分類)における「精神および行動の障害(F00〜F99)」のすべてが含まれます。主な対象疾患を以下に示します。

🧠
統合失調症・統合失調症スペクトラム障害
幻覚・妄想・陰性症状等による生活機能の低下があり、最も利用者数が多い疾患群。
🌧
うつ病・双極性障害
気分の波によって日常生活が困難になる方。服薬継続と生活リズムの安定が重要。
💨
不安障害・パニック障害
外出困難、対人恐怖などにより通院自体が困難な方。
🔁
強迫性障害(OCD)
強迫観念・強迫行為により日常生活が大きく妨げられている方。
💔
PTSD・解離性障害
トラウマ体験による症状で地域生活に支障が生じている方。
🧩
発達障害(ASD・ADHD等)
二次障害(うつ・不安等)を伴い、生活支援が必要な成人の方。
🍶
依存症(アルコール・薬物等)
回復途上にあり、断酒・断薬の継続と生活再建を必要とする方。
🍽
摂食障害
食行動の異常と身体的リスクを抱え、在宅でのケアが必要な方。
🧓
認知症(精神症状が著しい場合)
BPSDなどの精神症状管理が在宅で必要な方。
その他の精神疾患
人格障害、身体表現性障害など、医師が訪問看護の必要性を認めた場合。
利用条件

利用するための条件

精神科訪問看護を利用するためには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 精神科・心療内科への通院があること(通院治療の補完として位置づけ)
  • 主治医による精神科訪問看護指示書の発行(最大6か月有効)
  • 医療保険に加入していること(介護保険ではなく医療保険が優先)
  • 在宅生活を送っていること(自宅・グループホーム・施設など)
💡
通院が困難な方も諦めないで精神科への通院が困難な方でも、まず電話で精神科や精神保健福祉センターに相談することで、訪問看護の利用につながる道が開けます。「通院できないから訪問看護も無理」と諦めないでください。
年齢・障害程度

年齢・障害程度による制限

精神科訪問看護には、特定の年齢制限はありません。児童・青少年から高齢者まで、精神科医師が必要と認めた方であれば利用可能です。障害の程度についても、障害者手帳の有無は問われません。ただし、精神科訪問看護の指示が出るためには、主治医が「訪問看護が治療上必要である」と判断することが条件となります。

SUPPORT

精神科訪問看護の支援内容

服薬管理・症状観察・生活支援・家族支援・社会資源活用・危機対応——精神科訪問看護師は6つの軸で、利用者の地域生活を多面的に支えます。

6つの支援

精神科訪問看護が提供する6つの支援

タブをクリックすると、それぞれの支援内容の詳細が表示されます。

💊①服薬管理・薬物療法の継続支援

精神疾患では薬を飲み続けることが再発予防の根幹を成すが、副作用・自覚症状の改善・自己判断による中断など、服薬継続には多くの障壁がある。

  • 服薬状況の確認:薬が正しく飲まれているか、残薬がないかを毎回確認
  • 副作用のモニタリング:眠気・体重増加・口の渇き・動作緩慢などを観察し医師に報告
  • 服薬に関する不安・疑問への対応:必要に応じて医師への橋渡し
  • 自己管理の支援:一包化・服薬カレンダー・アプリ活用などの工夫を一緒に考える
⚠️
今すぐ危機的な状態にある場合「死にたい」「消えたい」という気持ちが強い場合は、すぐに主治医・訪問看護師・精神科救急・相談窓口に連絡してください。一人で抱え込まないことが大切です。
VISIT FLOW

一回の訪問の流れ

一回あたりの訪問時間は30分〜90分。医療保険での標準は週3回まで、退院後3か月間は週5回までの特例があります。初回は関係性の構築を最優先に行います。

訪問時間と頻度

訪問時間と頻度

精神科訪問看護の一回あたりの訪問時間は30分〜90分が一般的です。利用者の状態・支援内容・体調によって柔軟に設定されます。30分程度で服薬確認と健康状態チェックを行うコンパクトな訪問から、90分かけて生活支援や相談支援をじっくり行う訪問まで、様々なかたちがあります。

医療保険での訪問回数は、原則として週3回までが上限です。ただし、精神科病棟を退院後3か月間は週5回まで訪問可能な特例があります。これは退院直後の不安定な時期に集中的にサポートするためです。また、精神科への入退院を繰り返している方や、症状が不安定で特別な管理が必要な方は、医師の指示により訪問回数を増やすことができます。

初回訪問

初回訪問の流れ

初めての訪問では、いきなり多くのことをしようとするのではなく、まず関係性の構築が最優先されます。

  • 自己紹介と目的の説明担当看護師が自己紹介をし、精神科訪問看護とは何か、どのようなことができるかをわかりやすく説明する。
  • ニーズの聴き取り利用者が「何に困っているか」「どんな生活を送りたいか」を丁寧に聴く。押しつけにならないよう、本人のペースを最大限尊重する。
  • 生活環境の把握住居の状況、家族構成、日課、服薬状況、通院状況などを確認する。
  • 個別支援計画の作成聴き取りをもとに、利用者と一緒に「何を目標とするか」「どのように支援するか」を話し合い、個別支援計画を作成する。
通常訪問

通常の訪問の流れ

初回以降の訪問では、以下のような流れで支援が行われます。ただし、毎回固定した手順があるわけではなく、その日の利用者の状態・気分・話したいことに応じて柔軟に対応することが精神科訪問看護の特徴です。

訪問開始〜5分
挨拶・体調確認
「今日はどんな感じですか?」と話しかけ、表情・声のトーン・動作から状態を観察する。
OPEN
5〜20分
服薬・身体状態の確認
服薬確認(薬が正しく飲めているか・残薬確認)、体重・血圧など身体的な健康状態の確認。
CHECK
20〜50分
生活状況・相談対応
日常生活の状況確認(食事・睡眠・外出・社会参加)、困っていること・気になっていることの傾聴、生活技能訓練・相談対応・家族支援など。
CORE
50分〜終了前
次回確認・締めくくり
次回の訪問日時の確認、緊急時の連絡先の確認、「次回まで困ったことがあれば連絡して」と伝える。
CLOSE
訪問後
記録・チーム共有
看護記録の作成・主治医への報告(必要時)・医療チームとの情報共有。
AFTER
職種

訪問者の専門職種

精神科訪問看護では、以下の専門職が訪問します。

👩‍⚕
看護師・保健師
医療行為(注射・処置等)と精神的なケアの両面を担う。最も一般的な訪問職種。
🛠
作業療法士(OT)
日常生活活動・社会参加・就労に向けた生活技能訓練(SST)、趣味・余暇活動の支援など。
📋
精神保健福祉士(PSW)
社会資源の調整・申請手続き支援・相談支援を担う。同行訪問が認められている。
HOW TO APPLY

利用申し込みから開始までの手順

主治医への相談から、ステーション探し、初回面談、指示書の授受、サービス開始まで——5つのステップで全体の流れを把握しましょう。

5つのステップ

申し込みから開始までの5ステップ

申し込みから開始まで、全体の所要期間は2週間〜1か月程度が目安です。

STEP 1
主治医に相談・指示書の発行
主治医(精神科・心療内科)に「訪問看護を利用したい」と伝える。「一人では薬を管理できない」「生活リズムが乱れて困っている」「退院後の生活が不安」など具体的な困りごとを伝えると判断しやすい。主治医が利用可と判断すれば「精神科訪問看護指示書」を発行する。指示書の有効期間は最大6か月。
受診のタイミングで
STEP 2
訪問看護ステーションを探す
主治医・医療機関からの紹介が最もスムーズ。他に①精神保健福祉センター・保健所に相談、②相談支援事業所に依頼、③「精神科訪問看護 ○○市」でインターネット検索、④全国訪問看護事業協会・都道府県の検索サイト利用などの方法がある。
数日〜1〜2週間
STEP 3
申し込みと初回面談
電話または窓口で申し込み。この時点で指示書がまだ手元になくても「主治医に発行をお願いしている」と伝えれば対応してもらえることが多い。申し込み後、ステーションの担当者が初回アセスメント訪問(事前面談)を行い、生活状況・困りごと・希望支援・緊急連絡先などを確認、個別支援計画を作成する。
1〜2週間
STEP 4
指示書の授受
主治医からステーションへ指示書が発行・送付される。
数日〜1週間
STEP 5
サービス開始
契約完了後、訪問看護がスタート。最初の数回は関係構築が中心となり、徐々に支援の内容・密度が深まる。訪問看護師・主治医・相談支援専門員などが連携して支援チームを形成する。
上記完了後すぐ
💡
主治医への伝え方のポイント「一人では薬を管理できない」「生活リズムが乱れて困っている」「退院後の生活が不安」など、具体的な困りごとを伝えると、主治医も判断しやすくなります。「自分に訪問看護は必要ですか?」と直接聞いてもよいでしょう。
COST & SYSTEM

費用と自立支援医療制度の活用

精神科訪問看護は医療保険適用。自立支援医療制度を併用すれば自己負担は原則1割に軽減されます。費用を抑える制度を知っておきましょう。

基本費用

基本的な費用の仕組み

精神科訪問看護は医療保険が適用されます(介護保険ではなく医療保険が優先)。費用は「精神科訪問看護基本療養費」として保険点数が設定されており、自己負担額は加入している保険の負担割合(1〜3割)に応じて異なります。

訪問タイミング
3割負担(標準)
1割負担(自立支援医療)
月初めの訪問(1回目)
約3,890円
約1,300円
2回目以降の訪問
約2,560円
約850円

※上記はあくまで目安です。訪問時間・加算の有無・訪問看護ステーションにより異なります。正確な費用はステーションに直接確認してください。また、交通費が別途かかる場合もあります。

自立支援医療

自立支援医療制度(精神通院医療)の活用

精神科訪問看護を利用する際に特に重要なのが、自立支援医療制度(精神通院医療)です。この制度を利用することで、精神科訪問看護にかかる費用(および精神科通院の医療費・調剤費)の自己負担が、原則として1割に軽減されます。

  • 対象者通院による精神医療を継続的に必要とする方(うつ病・統合失調症・双極性障害・てんかん・認知症・薬物依存症など)
  • 対象費用精神科訪問看護費、精神科通院費(診察・投薬・デイケア等)が対象。身体科の医療費は対象外
  • 自己負担の上限所得に応じた月額上限額(2,500円〜2万円)が設定されており、上限を超えた分は負担なし
  • 非課税世帯(低所得者)自己負担の上限額がさらに低く設定され、費用負担が非常に軽くなる
💡
指定自立支援医療機関の確認を自立支援医療を利用するには、あらかじめ指定された「指定自立支援医療機関」として登録されている訪問看護ステーションを選ぶ必要があります。ステーション選びの際に、指定を受けているか確認しましょう。
申請方法

自立支援医療の申請方法

自立支援医療(精神通院医療)の申請は、お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口で行います。申請は本人のほか、家族・友人・医療ソーシャルワーカーなど代理申請も可能です。必要書類は以下のとおり。

  • 自立支援医療費支給認定申請書(市区町村窓口または都道府県HPから入手)
  • 診断書(通院中の精神科・心療内科の医師が記入、更新時は2年に1回)
  • 健康保険証のコピー
  • 身分確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)
  • 世帯の所得状況がわかる資料(市区町村民税課税(非課税)証明書など)

申請が承認されると「自立支援医療受給者証」と「自己負担額管理票」が交付されます。有効期間は最大1年間で、毎年更新手続きが必要です(更新時の診断書は2年に1回)。申請から受給者証の交付まで、概ね1〜2か月かかります。

申請中でも利用開始できる自立支援医療の申請中であっても、申請した日から遡って制度を適用できる場合があります。受給者証が届く前に訪問看護を開始する必要がある場合は、ステーションに申請中であることを必ず伝えてください。
その他の制度

その他の費用軽減制度

  • 高額療養費制度1か月の医療費が一定額(所得に応じた上限額)を超えた場合、超過分が払い戻される制度。自立支援医療と組み合わせて利用可能。
  • 市区町村の独自補助一部の自治体では、自立支援医療に上乗せして精神科医療費を無料または低額とする独自の補助制度を実施している。居住地の自治体に確認を。
  • 生活保護受給者医療扶助により、自己負担なしで精神科訪問看護を利用できる。
HOW TO CHOOSE

訪問看護ステーションの選び方

ステーションは地域・規模・得意分野によって質に差があります。複数に問い合わせて比較し、合わなければ変更も可能。7つのチェックポイントを押さえましょう。

7つのポイント

精神科訪問看護ステーション選びのポイント

精神科訪問看護ステーションは、地域によって数・規模・得意分野が大きく異なります。自分に合ったステーションを選ぶことが、支援の質・継続性に大きく影響します。

🩺
精神科専門のスタッフがいるか
精神科の経験豊富な看護師・作業療法士が在籍しているか確認する。「精神科訪問看護専門」を掲げるステーションなら安心度が高い。
💰
自立支援医療の指定を受けているか
指定を受けていないステーションでは自立支援医療が使えず費用が高くなる。必ず確認を。
🕒
対応できる曜日・時間帯
自分が希望する曜日・時間に訪問できるかを確認。緊急時の対応(時間外連絡が可能か)も重要。
🧑‍🤝‍🧑
担当者の固定性
精神科訪問看護では担当者との信頼関係が特に重要。できる限り担当者が変わらない体制のステーションを選ぶ。
🔗
主治医との連携体制
主治医と密に連絡を取り、情報共有できる体制があるか。
🎯
得意な疾患・支援領域
統合失調症・依存症・発達障害・思春期など、ステーションによって得意な分野がある。主な対象疾患を確認する。
💬
利用者・家族の口コミ・評判
可能であれば、主治医や保健師など信頼できる人からの紹介・評判を参考にする。
複数比較

複数のステーションに問い合わせることを恐れない

訪問看護ステーションは一つに絞って申し込む前に、複数に問い合わせて比較することが大切です。「どんなスタッフがいるか」「どのような支援ができるか」「費用はどのくらいか」などを電話で聞いてみましょう。問い合わせること自体は無料です。ステーションとの相性・担当者との関係性も支援の継続に大きく影響するため、「この人なら話せそう」と感じられるかどうかも重要な判断基準です。

もし利用開始後にステーションや担当者が合わないと感じた場合は、変更することも可能です。主治医や相談支援専門員に相談してみましょう。

EFFECT & CASES

入院予防・地域生活継続への効果

再発予防・入院抑制・生活機能の維持・孤立の防止——精神科訪問看護の効果は国内外の研究で裏付けられています。3つの仮想事例とともに、その実態に触れます。

エビデンス

精神科訪問看護の有効性に関するエビデンス

精神科訪問看護が再入院予防・地域生活継続に果たす効果については、国内外の研究および厚生労働省の調査から一定の知見が蓄積されています。

  • 再発予防効果定期的な訪問による服薬継続支援と症状モニタリングにより、統合失調症・双極性障害などの再燃リスクが大幅に低下することが複数の研究で報告されている。
  • 入院抑制効果厚生労働省の令和4年度障害者総合福祉推進事業「精神科訪問看護の実態調査」(2023年3月)では、支援ニーズの高い利用者においても生活技能の維持・改善が認められたと報告されている。
  • 生活機能の維持・改善同調査では「GAF得点(全体的機能評価)」の改善も確認されており、精神症状だけでなく社会生活全体の機能向上に寄与することが示されている。
  • 孤立の防止精神疾患を持つ方の多くが単身・独居であるが、定期的な訪問により社会的孤立が防がれ、精神的安定に寄与している。
地域で生きる

「地域で生きる」を支える仕組み

精神科訪問看護の最大の強みは、「生活の場」で支援を行うことです。病院の外来診察は週1回・15〜30分程度が一般的ですが、精神科訪問看護では実際の暮らしの場に入り込み、リアルな困難に寄り添うことができます。

「薬はある、でも飲めない」「外来では困っていないふりをしてしまう」「家が散らかりすぎて自分でも途方に暮れている」——こうした、診察室では見えてこない現実に直接向き合えるのが、訪問看護という形態の本質的な価値です。

在宅医療チームとの連携精神科訪問看護の効果を最大化するためには、主治医・相談支援専門員・デイケア・就労支援機関・ヘルパーなど、多職種が連携したチームアプローチが不可欠です。「チームで利用者を支える」という発想が、地域生活継続を支えます。
事例

具体的な支援事例(仮名)

精神科訪問看護がどのように機能するかを、具体的な例で示します(実際の事例ではなく、典型的なパターンを基にした仮想事例です)。

Aさん(40代・統合失調症)

退院後、服薬が不規則になり幻聴が再燃。週2回の訪問で服薬確認と症状モニタリングを実施。3か月後には服薬が安定し、近所のスーパーへの買い物も一人でできるようになった。

Bさん(30代・うつ病・単身)

食事が取れず、昼夜逆転が続く状態。週1回の訪問で生活リズムを整える支援を開始。担当看護師と信頼関係が築かれ、「今週は2日外出できた」などの小さな成功体験を積み重ねた。6か月後、就労移行支援への通所を開始。

Cさん(20代・双極性障害・家族同居)

躁状態時の行動が家族関係を悪化させていた。家族も含めた支援で家族の理解が深まり、躁転のサインを家族が早期に察知して主治医に連絡できる体制が整備された。

FOR FAMILY

家族のための情報

家族の負担軽減、家族自身のサポート、利用を勧めるときのポイントまで——精神疾患を持つ家族を支えるあなたへの情報です。

家族のメリット

家族が精神科訪問看護に期待できること

精神疾患を持つ家族を支えるご家族にとって、精神科訪問看護は「専門家を味方につける」重要な手段です。家族視点でのメリットを整理します。

🤲
専門職に「委ねる」部分ができる
これまで家族が一人で担ってきた服薬確認・相談対応・状態の観察を、専門職が一部担ってくれることで、家族の心理的・身体的負担が軽減される。
📞
緊急時の連絡先ができる
「何かあったときに相談できる専門職がいる」という安心感は、家族の精神的支えになる。
💬
家族自身の悩みを聴いてもらえる
訪問時に家族も同席し、介護・支援の疲れ・不安・怒りなどの感情を訪問看護師に話すことができる。
📚
疾患・対応方法の知識が増える
家族心理教育を通じて、病気の特性と適切な接し方を学ぶことで、家族関係の改善につながることがある。
家族のサポート

家族が疲れたときのサポート

精神疾患を持つ方の家族は、「ケアラー(介護者)」として深刻なバーンアウト(燃え尽き症候群)のリスクがあります。以下のサポートを積極的に活用してください。

  • 精神保健福祉センターへの家族相談精神保健福祉センターでは、家族向けの無料相談・家族教室を実施している。「家族のメンタルヘルス相談」として利用できる。
  • 家族会への参加全国精神保健福祉会連合会(みんなねっと)や各地域の家族会に参加することで、同じ立場の人と繋がり、孤立感が軽減される。
  • レスパイトの活用一時的に介護・支援から離れる「レスパイト(休息)」も重要。訪問看護・デイケア・ショートステイなどを活用し、家族自身の時間を確保する。
  • 家族自身の精神科受診介護疲れ・抑うつ・不眠などが続く場合、家族自身も精神科・心療内科の受診を検討する。家族が健康でなければ、利用者を支えることはできない。
家族が健康でなければ、利用者を支えられない介護疲れ・抑うつ・不眠などが続く場合、家族自身も精神科・心療内科の受診を検討してください。「自分のケア」も、家族としての大切な役割です。
利用を勧めるとき

家族が訪問看護の利用を勧めるときのポイント

「本人が訪問看護を嫌がっている」という相談は珍しくありません。本人に訪問看護の利用を勧める際には、以下の点に注意しましょう。

  • 「監視」ではなく「支援」であることを伝える「チェックしに来るのではなく、困ったことを一緒に解決してくれる人が来る」というイメージを持ってもらう。
  • 本人の「やってみてもいいかも」を待つ強制は逆効果。「とりあえず一回だけ会ってみる」という低いハードルから始めるのが有効。
  • 主治医から提案してもらう家族からの提案より、信頼している主治医からの提案のほうが受け入れられやすいことが多い。
  • 訪問看護師に相談する利用を拒否している方への関わり方についても、訪問看護ステーションに相談できる。「導入が難しい方への支援」も専門的スキルのひとつ。
FAQ

よくある質問

身体疾患との併用、担当者変更、長期利用、デイケアとの併用、引っ越し、本人未同意、申請中の費用——利用前に気になる質問にまとめて答えます。

Q&A

精神科訪問看護のよくある質問

Q. 精神科訪問看護は、身体的な病気があっても利用できますか?

A. はい、利用できます。精神疾患と身体疾患を合わせ持つ方(合併症の方)でも、主治医が必要と判断すれば精神科訪問看護を利用できます。身体疾患の医療処置が主目的なら一般訪問看護(医療保険または介護保険)、精神症状の管理・生活支援が主目的なら精神科訪問看護という使い分けになります。両方を組み合わせて利用することも可能な場合があります。精神科訪問看護の訪問中に身体的な問題(血圧・体重の確認、傷の観察など)も対応してもらえることが多いので、まず担当ステーションに相談してみましょう。

Q. 訪問看護師と気が合わないと感じた場合、担当者を変えてもらえますか?

A. はい、可能です。精神科訪問看護において担当者との信頼関係は支援の質を大きく左右するため、「合わない」と感じること自体は大切なシグナルです。ステーションの管理者や相談担当者に「担当者を変えてほしい」と伝えることができます。遠慮する必要はありません。どうしてもそのステーション自体が合わないと感じる場合は、別のステーションに変更することも可能です。変更の際は、主治医や相談支援専門員に相談すると手続きがスムーズです。

Q. 精神科訪問看護は何年も利用し続けてもいいのですか?

A. はい、長期にわたって継続利用することができます。精神科訪問看護の利用期間に上限はなく、主治医が継続して指示書を発行する限り、何年でも利用し続けることが可能です。支援の内容・頻度は、利用者の状態や生活の変化に応じて柔軟に調整されます。「状態が安定してきたから減らす」「環境の変化で不安定になったから増やす」といった柔軟な対応が可能です。症状が安定し自立度が上がった場合、訪問頻度を徐々に減らして「卒業」に向かうケースもあります。

Q. 精神科訪問看護とデイケアは同時に利用できますか?

A. はい、同時利用は可能です。精神科訪問看護とデイケア(精神科外来のリハビリプログラム)は役割が異なるため、並行して利用することが推奨されることもあります。デイケアは集団の場での社会参加・リハビリが中心ですが、精神科訪問看護は個別・在宅での生活支援が中心。両者を組み合わせることで、より包括的な支援が受けられます。ただし、精神科訪問看護とデイケアが同じ日に行われる場合の保険算定には制限がある場合があるため、主治医や訪問看護ステーションに確認してください。

Q. 引っ越した場合、訪問看護は続けられますか?

A. 引っ越し先の地域によって対応が異なります。引っ越し先が同じ訪問看護ステーションのサービス提供エリア内であれば、担当者を変えずに継続できる場合があります。エリア外の場合は、新しい地域の訪問看護ステーションを探す必要があります。引っ越しが決まったら早めに現在の訪問看護ステーションと主治医に相談し、引っ越し先での体制を整えてから転居することをおすすめします。自立支援医療の受給者証も、転居に伴い新しい自治体での申請・変更手続きが必要になります。

Q. 精神科訪問看護を本人に内緒で申し込むことはできますか?

A. 精神科訪問看護は、基本的に本人(利用者)の同意のもとで行われるサービスです。医療保険を使用するサービスである以上、本人が知らないまま申し込むことはできません。ただし、「本人がまだ受け入れていない」段階で、家族がステーションに「相談だけ」を申し込むことは可能です。本人の状態・拒否の理由・家族の困りごとを相談することで、導入に向けたアドバイスをもらえることがあります。精神保健福祉センターや保健所への相談も、家族だけで行うことができ、専門家から本人への関わり方を教えてもらえます。

Q. 自立支援医療の申請が通るまでの間、費用はどうなりますか?

A. 自立支援医療の申請から受給者証の交付まで、通常1〜2か月かかります。この間は通常の医療保険(1〜3割負担)で訪問看護を受けることになります。ただし、申請した日に遡って制度を適用できる自治体も多いため、受給者証が届いた後に申請日以降の分の費用を精算・返金してもらえる場合があります。これを「遡及適用」といいます。申請時に窓口で確認しておきましょう。訪問看護ステーションにも申請中であることを伝えておくと、費用の精算手続きが円滑に進みます。

精神科訪問看護の利用を
迷っているあなたへ

「自分には大げさかもしれない」「迷惑をかけたくない」「どうせ良くならない」——そう感じている方は多くいます。けれど精神科訪問看護は重症者だけのサービスではなく、地域で自分らしく生きていくための賢い選択です。まず一歩、ココトモに話してみませんか。

今すぐ話したい方へ——相談窓口
ココトモ相談するチャット相談・無料
いのちの電話0120-783-55624時間・無料
よりそいホットライン0120-279-33824時間・無料
精神保健福祉センター各都道府県・政令指定都市に設置。精神科訪問看護の利用相談、地域のステーション情報の提供を無料で受けられます。
自立支援医療制度(精神通院医療)精神科・心療内科への通院医療費を最大9割軽減できる公的制度。市区町村の障害福祉担当窓口で申請できます。

このページの情報は、医師による診断や治療に代わるものではありません。症状が気になる場合は、心療内科・精神科への受診をご検討ください。

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