心理的虐待とは?
定義・5つの具体例・ガスライティング・影響・対処法を解説
殴られていなくても、傷が残らなくても — 言葉や態度で繰り返し心を傷つけられているなら、それは『心理的虐待』かもしれません。児童虐待防止法・高齢者虐待防止法・障害者虐待防止法・DV防止法のすべてで明確に『虐待』と定義された違法な人権侵害です。定義・具体例・ガスライティング・影響・対処法・支援制度まで、必要な情報をすべてまとめました。
心理的虐待とは — 『見えない傷』を残す言葉と態度の暴力
心理的虐待(精神的虐待・Psychological Abuse / Emotional Abuse)は、言葉・態度・行動によって相手の心を傷つけ、自尊心や自己決定力を奪う行為です。身体的な暴力とは異なり、外から見えない傷を残すため、被害者自身も加害者も気づきにくいのが特徴です。
『もしかして心理的虐待?』10のサイン
ご自身、お子さん、ご家族、パートナーとの関係について、当てはまる項目がないか確認してみましょう。診断ではなく、状況を整理し相談につなげるためのチェックリストです。
- 1『お前はダメだ』『価値がない』『生まれてこなければよかった』など、自尊心を傷つける言葉を繰り返し言われる
- 2些細なことで激しく怒鳴られたり、長時間説教されたりする
- 3話しかけても無視される/存在を認められない期間が続く
- 4あなたの記憶や感じ方を『そんなことは言っていない』『気のせいだ』と否定される
- 5友人・家族・職場との関係を制限・監視されている
- 6自分の判断に自信が持てなくなり、相手の顔色ばかり気にしている
- 7『お前のせいで』『お前がいなければ』と責められることが多い
- 8脅し・物を壊す・大声を出すといった行為で恐怖を感じる
- 9相手の前にいると体調が悪くなる(頭痛・動悸・吐き気・震え)
- 10『自分が悪いのかもしれない』『自分さえ我慢すれば』と思い続けている
日本の法律における定義
心理的虐待は、複数の法律で『虐待』として明確に定義されています。
- 児童虐待防止法(第2条)『児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力、その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動』
- 高齢者虐待防止法『著しい暴言又は著しく拒絶的な対応その他の高齢者に著しい心理的外傷を与える言動』
- 障害者虐待防止法『著しい暴言、著しく拒絶的な対応又は不当な差別的言動その他の障害者に著しい心理的外傷を与える言動』
- DV防止法『身体に対する暴力又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動』として、心理的暴力を含む
つまり、子ども・高齢者・障害者・配偶者・パートナーに対する心理的虐待は、いずれも法的に『虐待』『暴力』として位置づけられており、通報・保護・処罰の対象となりえます。
自覚されにくく、声を上げにくい
心理的虐待の難しさは、加害者側に『虐待している自覚がない』ことが多い点にあります。『お前のためを思って』『甘やかしたら良くない』『教育のため』『家族だから』『愛しているから』といった言葉で正当化され、被害者も『自分のためなのかも』『大袈裟に考えすぎかも』と感じて声を上げにくくなります。しかし、相手がどんな意図を持っていたとしても、結果として恐怖・無力感・自尊心の喪失を引き起こす言動は虐待です。意図ではなく『結果』で判断することが重要です。
心理的虐待の5つのパターン
心理的虐待は多様な形を取りますが、大きく5つのパターンに分けると整理しやすくなります。複数のパターンが組み合わさって行われることが多いのも特徴です。
タブで具体例を確認
言葉そのもので相手の自尊心や存在価値を傷つける行為。最もよく知られた心理的虐待の形態。
相手の存在を認めない、応答しないことで精神的に追い詰める行為。『沈黙の暴力』とも呼ばれる。
恐怖を植えつけて支配する行為。直接的な暴力でなくても、威圧によって相手を縛る。
相手の行動・人間関係・金銭を制限し、自立を奪う行為。DV・モラハラの典型。
相手の現実認識・記憶・判断を歪めることで支配する手口。最も巧妙な心理的虐待の一つ。
- 『役立たず』『死ねばいい』『生まれてこなければよかった』などの人格否定話しかけても返事をしない/目を合わせない『出ていけ』『離婚するぞ』『殺すぞ』などの脅し外出・友人関係・職場を制限する『そんなこと言ってない』『お前の勘違い』と事実を否定
- 『お前のせいで』『お前さえいなければ』と責任を押し付ける数日〜数週間にわたって口をきかない物を投げる・壁を殴る・物を壊す携帯電話・SNS・メールを検閲する『お前は神経質すぎる』『被害妄想だ』と感受性を否定
- 外見・能力・出自・性別・性的指向に関する侮辱存在しないかのように扱うペットや大切な物を傷つけると脅すお金を渡さない/使途を細かく管理する嘘をつき続けて、被害者の現実感覚を狂わせる
- 他人と比較しての貶め(『○○さんに比べてお前は』)感情的なニーズを満たそうとしない/甘えを拒絶する子どもや家族を傷つけると脅す服装・髪型・食事を強制する周囲に『あの人はおかしい』と吹聴して孤立させる
- 罵声・怒鳴り声・長時間の説教『要らない子』『お前は他人』のような言葉刃物・拳銃・重い物を見せつける実家や友人と会うことを禁じる『お前のために言ってる』と支配を愛情に偽装する
ガスライティング — 『あなたが間違っている』と思い込ませる手口
ガスライティング(Gaslighting)は、心理的虐待の中でも最も巧妙で、被害者自身が虐待を受けていることに気づきにくい手口です。1944年の映画『Gaslight』が語源で、近年改めて注目されています。
ガスライティングの特徴
ガスライティングの本質は、『被害者の現実認識を加害者にとって都合よく書き換える』ことにあります。『そんなこと言ってない』『お前の勘違い』『お前は神経質すぎる』『精神的におかしいんじゃないか』と繰り返されるうちに、被害者は自分の記憶・判断・感覚を信じられなくなっていきます。結果として、加害者の言うことが『正しい現実』として受け入れられ、被害者は自分の意思や判断を完全に手放してしまいます。
『Gaslight(ガス灯)』という名称は、1944年の米映画『Gaslight』に由来します。劇中、夫が家のガス灯を密かに薄暗くしておきながら『暗くなんかなっていない、君の気のせいだ』と妻に言い続け、妻を精神的に追い詰める場面が描かれており、これが心理学用語として定着しました。
モラルハラスメントとの違い
モラハラ(モラルハラスメント)が『相手を見下す・侮辱する・無視する』といった関係のパターンを指すのに対し、ガスライティングは『相手の現実感を歪める手口』を指します。モラハラは比較的客観的に分かりやすいのに対し、ガスライティングは手口が巧妙で、被害者自身にも周囲にも分かりにくいという特徴があります。ただし、両者は重なり合うことが多く、モラハラの中にガスライティングが含まれることがほとんどです。
ガスライティングのサイン
- ✓『自分はおかしいのかも』『記憶力が悪くなった』と感じることが増えた
- ✓判断するときに必ず相手の意見を確認しないと不安
- ✓『自分が悪い』『自分が我慢すれば』と常に思っている
- ✓友人や家族から『最近変わったね』と言われる
- ✓相手の前で言葉に詰まる・記憶が曖昧になる
- ✓『あなたは精神的に不安定だ』『被害妄想がある』と何度も言われる
心理的虐待がもたらす影響 — 『見えない傷』が一生に残ること
心理的虐待は、被害者の心と身体に深く長期的な影響を残します。傷が見えないからといって軽い影響というわけではなく、むしろ身体的虐待と同等以上の長期影響が報告されています。
心と身体に残る8つの影響
どんな関係で起こる? — 親子・夫婦・職場・介護
心理的虐待は、親密な関係や上下関係のあるところで起こります。関係性によって虐待の現れ方や対応の仕方が異なるため、自分の状況に合った理解を深めましょう。
関係別の特徴
心理的虐待への対処 — 自分でできること・専門機関の活用
心理的虐待からの回復は『一人で頑張る』ものではありません。安全確保・記録・相談・専門支援の順で、できることから少しずつ取り組んでいきましょう。
今日からできる対処のステップ
心理的虐待からの回復 — 自分を取り戻すプロセス
心理的虐待からの回復は、加害者から物理的に離れて終わりではありません。長く奪われていた自尊心・判断力・人間関係への信頼を取り戻していく、長いプロセスです。一人で進む必要はありません。
回復への5つのフェーズ
心理的虐待が脳に与える影響 — 科学が明らかにした『見えない傷』
近年の神経科学・脳画像研究により、心理的虐待(情緒的虐待)が脳の構造や機能に具体的かつ長期的な変化をもたらすことが明らかになっています。『心の傷』は比喩ではなく、脳の物理的変化として実証されています。
暴言が脳を変える — 聴覚野への影響
国立精神・神経医療研究センターをはじめとする研究機関の脳画像研究により、言葉による虐待(暴言)は、特に聴覚野(聴覚処理に関わる脳領域)に顕著な変化をもたらすことが明らかになっています。繰り返し暴言にさらされた子どもは、言語処理や感情調整に関わる脳回路が変化し、その影響が成人期まで持続する可能性があります。身体的虐待では別の脳領域(前頭前野・扁桃体など)が影響を受けることが知られており、虐待の形態によって脳への影響部位が異なることも研究で示されています。
- 暴言・心理的虐待 → 聴覚野・言語処理領域への影響
- 身体的虐待 → 前頭前野・海馬・扁桃体への影響
- 性的虐待 → 視覚野・感覚処理領域への影響
- ネグレクト → 前頭前野の発達遅延・全般的な灰白質減少
海馬・扁桃体の変化とトラウマ記憶
慢性的な心理的ストレスは、海馬(記憶の形成・整理)と扁桃体(感情・恐怖反応の処理)の構造と機能に持続的な変化をもたらします。特に重要なのは次の2点です。
- 海馬の萎縮長期間のストレスホルモン(コルチゾール)の高値により、海馬のニューロンが損傷・死滅し、記憶の形成・整理が困難になる。PTSDの記憶統合困難やフラッシュバックと深く関連。
- 扁桃体の過活動わずかな刺激(声のトーン・特定のにおい・場面)でも強い恐怖反応が引き起こされ、過覚醒・警戒心の高まり・パニック症状につながる。これがトラウマ反応の生理学的基盤。
これらの変化は、適切な治療(EMDR・認知行動療法・安全な対人関係の回復)により改善・修復されることも研究で示されています。脳は変化する能力(神経可塑性)を持っており、回復は可能です。
HPA軸の慢性的な乱れとストレス反応
心理的虐待を受け続けると、HPA軸(視床下部-下垂体-副腎皮質系)と呼ばれるストレス反応システムが慢性的に乱れた状態になります。本来は急性のストレスに対応するために働くコルチゾール(ストレスホルモン)が、慢性的に過剰分泌または機能低下を起こします。
- 免疫機能の低下 → 感染症・炎症疾患にかかりやすくなる
- 慢性的な疲労感・消耗感 → 「いつも疲れている」「何もやる気がしない」
- 睡眠障害 → 入眠困難・中途覚醒・悪夢
- 摂食の乱れ → 過食・拒食・体重の急激な変動
- 痛みへの感受性の変化 → 原因不明の頭痛・腹痛・腰痛
これらは『身体表現性障害』『心身症』として診断されることもありますが、根本には心理的虐待によるHPA軸の乱れがあることが多く、心理的アプローチが有効です。
子ども時代の虐待と成人後の認知バイアス
国立精神・神経医療研究センターの研究(2021年)では、子ども時代の情緒的虐待が成人後のネガティブな情報に対する注意の向け方に大きな影響を与えることが明らかにされました。具体的には、情緒的虐待を経験した成人は、ネガティブな表情や言葉に対して過剰に注意が引きつけられ(注意バイアス)、その生物学的メカニズムには炎症関連物質やBDNF遺伝子が関与する可能性が示唆されています。
この認知バイアスは、対人関係における過度な警戒感・敏感さ・被害的解釈につながり、日常生活の困難さを生み出します。『些細な言葉でひどく傷つく』『相手の表情が気になって仕方ない』『怒らせたかと常に気にしてしまう』といった反応は、脳の変化に伴う自動的な反応であり、意志の弱さや性格の問題ではありません。
なぜ心理的虐待をするのか — 加害者の心理と背景
心理的虐待を行う人の理解は、被害者が自責から解放されるためにも、再発防止・支援のためにも重要です。ただし、加害者の背景を理解することは、虐待を正当化・免責することとは全く異なります。
加害者に多い心理的特徴
すべての加害者が同じ心理プロフィールを持つわけではありませんが、心理的虐待を繰り返す人に比較的多く見られる特徴として以下が挙げられます。
- 自己愛傾向(ナルシシズム)自分の優越感・特別さを維持するために他者をコントロールする傾向。批判・指摘に対して激しく怒る。共感性が低い。
- 感情調整の困難自分の怒り・不安・羞恥心を適切に処理できず、相手にぶつけることでコントロールする。
- 強い支配欲・不安関係の中で主導権を失うことへの強い恐怖から、パートナーや子どもを束縛・監視・コントロールする。
- 自分自身の被虐待経験幼少期に心理的虐待を受けた経験を持ち、それが唯一知っている『関係のパターン』として再現される(世代間連鎖)。
- 誤った認知『愛しているから厳しくする』『しつけは厳しくないと意味がない』『家族なら我慢して当然』など、虐待を正当化する信念体系。
『良い人』と『加害者』の二面性
心理的虐待の加害者の多くは、外部の人間関係では『良い人』『優しい人』『社会的に成功した人』として振る舞えます。これが被害者の訴えを信じてもらいにくくする原因の一つです。
この二面性は矛盾ではなく、『権力と支配の対象を選択している』ことを示しています。職場の上司に対しては謙虚に振る舞い、家に帰ると家族に怒鳴り散らす。近所には『良い夫』を演じ、家の中ではパートナーを支配する。この選択性こそが、心理的虐待が『衝動的な感情爆発』ではなく『意図的な支配行動』であることを示しています。
加害者は変われるか?
心理的虐待の加害者が変わるかどうかは、被害者にとって最も重要な問いの一つです。残念ながら、加害者自身が『自分の行動は問題だ』と認識し、専門的な支援(DV加害者プログラム・心理療法)を受ける意志がなければ、変化はほぼ期待できません。
- 『変わる』と言いながら変わらないサイクルを繰り返す場合、それ自体が支配の一形態(ハニームーン期)である可能性が高い
- 日本ではDV加害者プログラムへのアクセスはまだ限定的だが、NPOや民間機関が実施している
- 加害者の変化を待つことが被害者の回復の条件にならないよう、自分の安全を最優先に判断することが重要
- 『加害者が変わるかもしれない』という希望で関係を続けるよりも、まず自分の安全と回復を優先することが正しい選択肢
加害者への対応 — 被害者が取れる選択肢
加害者と向き合う際に、被害者ができることには限界があります。以下の点を覚えておいてください。
- 正面から議論しない心理的虐待の加害者との『話し合い』は、相手のペースに引き込まれるリスクが高い。第三者(カウンセラー・弁護士)を介した関わりが有効。
- 感情的な反論を控える加害者は被害者の感情的反応を『問題の証拠』として利用する傾向がある。
- 境界線を設定する『その言葉は受け入れられない』『そのような話し方なら話を続けられない』と伝え、会話を中断する。
- 専門家・支援機関の介入を求めるDV相談センター・弁護士・裁判所(接近禁止命令)の介入が最も確実な保護手段。
- 安全を最優先にどんな対応も、まず自分と子どもの物理的・精神的安全を確保した上で行う。
被害者が使える医療・支援制度
心理的虐待の影響(うつ病・PTSD・不安障害など)は、医療・福祉の支援対象です。費用面の不安なく受診・回復できるよう、利用できる制度を知っておきましょう。
精神保健福祉センターへの相談
精神保健福祉センターは、各都道府県・政令指定都市に設置された公的なメンタルヘルスの相談機関です。心理的虐待による精神的な問題(うつ・PTSD・不安・解離など)に関する相談を、専門の精神保健福祉士・臨床心理士・精神科医などが無料で受けています。
- ✓相談は無料(初回・継続ともに費用なし)
- ✓電話・来所・一部ではオンライン相談に対応
- ✓精神科・心療内科への紹介状の発行も可能
- ✓家族からの相談(子どもへの虐待・パートナーへのDVなど)も受け付ける
- ✓各地域の精神科・心療内科リストを入手できる
まず『どこに相談したらいいか分からない』という状態であれば、居住地域の精神保健福祉センターに電話することが最初の一歩として最も適切です。
自立支援医療制度(精神通院医療)
自立支援医療制度(精神通院医療)は、精神疾患(うつ病・PTSD・不安障害・解離性障害など)で継続的に通院治療が必要な方の医療費負担を軽減する公的制度です。
- ✓通常3割の医療費自己負担が1割に軽減(所得に応じた上限額あり)
- ✓対象:精神科・心療内科の診察代、薬代、デイケア、訪問看護など
- ✓申請先:住民票のある市区町村の担当窓口(障害福祉担当)または精神保健福祉センター
- ✓必要書類:医師の診断書(指定様式)、健康保険証、収入確認書類など
- ✓有効期限は1年間(毎年更新が必要)
- ✓精神科を受診している場合、主治医に『自立支援医療を申請したい』と伝えると手続きを案内してもらえる
心理的虐待の影響で精神科・心療内科に継続通院している方は、ぜひこの制度を活用してください。医療費の軽減は、継続的な治療を続けるための重要なサポートです。
カウンセリング・心理療法の選び方
心理的虐待からの回復に有効とされる心理療法として、以下が挙げられます。専門家と相談しながら、自分に合った方法を選んでください。
- 認知行動療法(CBT)虐待によって歪められた『思考パターン』を特定し、現実的な認知に修正する。うつ・不安・PTSD全般に有効。保険適用のあるクリニックも増えている。
- EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)トラウマ記憶の再処理に特化した療法。WHO(世界保健機関)もPTSDへの有効性を認定。日本EMDR学会のサイトで認定治療者を検索可能。
- スキーマ療法幼少期の虐待によって形成された深い信念(スキーマ)に直接アプローチ。長期の虐待・複雑性PTSDに向いている。
- STAIR Narrative Therapy複雑性PTSDに特化した心理療法。国立精神・神経医療研究センターが日本への導入研究を進めており、安全性と効果が示されている。
- ソマティック(身体的)アプローチトラウマを身体から解放するアプローチ。SE(ソマティック・エクスペリエンシング)など。言語化が難しい場合に特に有効。
自助グループ・ピアサポートの活用
同じ経験を持つ人とつながる自助グループ・ピアサポートは、孤立感の解消と回復の力強い支えになります。
- DV被害者の自助グループ各地のDV相談センター・支援団体が運営。同じ経験を持つ人と安全な場所で話し合える。
- アダルトチルドレン(AC)の自助グループ親からの心理的虐待を経験した成人が集まるグループ。『機能不全家族』で育った影響を分かち合い、回復を目指す。
- オンラインコミュニティ地域を問わず参加できる。匿名性が高く、外出が難しい状況でも参加しやすい。
- ステップアッププログラム一部の支援団体では、心理教育プログラムや回復プログラムをグループ形式で提供。
自助グループは『専門的治療の代替』ではなく『補完』として機能します。専門的な治療と組み合わせて活用することで、回復が加速されることが多いです。
心理的虐待についてのよくある質問
読者からよく寄せられる質問をまとめました。状況の理解と次の一歩の参考にしてください。
よくある質問
A. はい。児童虐待防止法・高齢者虐待防止法・障害者虐待防止法・DV防止法のすべてで、心理的虐待は『虐待』として明確に定義されています。身体的暴力と同様、法的にも人権侵害として認められた違法行為です。傷が見えないだけで、被害者の心身に与える影響は身体的虐待と同等、あるいはそれ以上に長期的とされます。
A. 夫婦喧嘩は『お互いに対等な立場で意見をぶつけ合う』ものですが、心理的DVは『一方が他方を支配・コントロール・恐怖で縛る』関係です。判断のポイントは『力の不均衡があるか』『相手の前で本音を言えなくなっているか』『自尊心が削られているか』。喧嘩なら一時的に感情が収まれば対等性が戻りますが、DVは恒常的に一方が優位に立ち続けます。
A. 『毒親』という言葉は法的な用語ではありませんが、心理的虐待を行う親を指して使われることがあります。判断のポイントは『あなたの自尊心・自立・人間関係・将来の選択に持続的なネガティブな影響が出ているか』。大人になってもなお、親との関わりで強い不安・うつ・自己否定が続くなら、心理的虐待の影響を疑い、カウンセリングや支援機関に相談してください。
A. 心理的虐待そのものを直接処罰する刑罰規定は限定的ですが、脅迫罪・侮辱罪・名誉毀損罪・強要罪・暴行罪・接近禁止命令違反などで法的措置を取れる場合があります。離婚訴訟・損害賠償請求・親権争いなどの民事手続きでは、心理的虐待の事実が大きな考慮要素となります。法テラス・DV相談プラスなどで弁護士相談(初回無料あり)を活用してください。
A. 子どもの前で配偶者を殴ったり罵倒したりすることは『面前DV』と呼ばれ、児童虐待防止法で『心理的虐待』に明確に該当します。実際、児童相談所が対応する虐待相談のうち、心理的虐待が最多であり、その大半は面前DVです。子どもへの直接的な暴力がなくても、189(児童相談所虐待対応ダイヤル)に相談・通報できます。
A. まず、起きた出来事を時系列で記録してください。スマホのメモ・録音・写真など、客観的な証拠を残すことで、自分の現実認識を取り戻せます。そして、第三者(カウンセラー・友人・支援機関)の視点を借りて『起きていることを説明してもらう』こと。一人で考え続けると相手の言い分に引きずられがちですが、外部の視点が入ると現実が見えやすくなります。
A. 配偶者暴力相談支援センター・女性相談支援センター・婦人保護施設・DVシェルターなどは、住居・生活費・就労支援・子どもの転校・住民票の閲覧制限まで、生活再建を総合的にサポートしてくれます。生活保護・児童扶養手当・母子父子寡婦福祉資金などの経済支援制度も利用できます。『出ていく決断』の前に、まず情報を集めてみてください。
A. 複雑性PTSD(ICD-11で正式に定義)の主な症状は、①フラッシュバック・悪夢・侵入記憶などのPTSD中核症状、②感情の調整困難(些細なことで強い感情が湧き上がる・感情が麻痺する)、③ひどく歪んだ自己認識(『自分は無価値』『自分は壊れている』)、④対人関係の持続的な困難(信頼できない・距離の取り方が分からない)の4つです。これらは長期にわたる心理的虐待の後遺症として生じやすく、適切な治療(EMDR・STAIR Narrative Therapy・スキーマ療法など)により改善が可能です。まず精神科・心療内科に相談し、複雑性PTSDの診断を受けてください。
A. 心理的虐待の記憶が曖昧・断片的・または『記憶がない』という状態は珍しくありません。幼少期の強いストレスは、脳の記憶処理に影響し、記憶が断片化・抑圧・解離されることがあります(解離性健忘)。また、慢性的な日常的虐待は『非日常的な出来事』として記憶に刻まれにくく、『これが普通』として内在化されることもあります。記憶がないからといって虐待がなかったとは言えません。現在の症状(自己否定・対人困難・感情調整の難しさなど)を軸に、専門家のカウンセリングで整理することをお勧めします。
A. 職場への開示は慎重に判断してください。信頼できる上司や産業医・産業カウンセラーへの相談は有効ですが、職場全体への開示は、職場環境によっては不利になることもあります。うつ病・PTSDなどの診断がある場合、主治医に『職場への配慮事項の意見書』を書いてもらい、産業医経由で職場に伝えることが一般的です。また、家庭での心理的虐待が職場の集中力・勤怠に影響している場合は、まず産業医や産業カウンセラーに『家庭環境が影響している』と伝えることから始めるのが安全です。
A. 証拠収集のポイントは以下の通りです。①日時・状況・言われた言葉を詳細にメモ(できれば直後に)。②スマートフォンのボイスレコーダーで暴言・威圧的な発言を録音(自分が当事者として参加している会話の録音は日本では合法)。③傷ついた状態の写真(身体的被害がある場合)。④医療機関の受診記録・カウンセラーの記録。⑤相手からの脅迫的なメッセージ・メール・LINEのスクリーンショット。これらは裁判・離婚調停・接近禁止命令申請で証拠として使えます。記録はクラウドストレージ(相手がアクセスできないもの)に保存し、弁護士や支援機関に相談しながら管理してください。
A. 面前DV(子どもの前でパートナーに暴言・暴力を振るう)は、児童虐待防止法上の『心理的虐待』に明確に該当します。子どもへの直接的な暴力がなくても、189(児童相談所虐待対応ダイヤル・24時間365日無料)に相談・通報できます。また配偶者暴力相談支援センター(DV相談ナビ #8008)に相談すれば、自分(DV被害者)としての支援と子ども(虐待被害者)としての支援を同時に受けることができます。子どもをどう守るかについては、シェルター利用・一時保護・転校支援など具体的な選択肢を案内してもらえます。
『これは虐待かも』と
感じた時が、相談のタイミング
殴られていなくても、傷が残らなくても、苦しいなら一人で抱え込まないでください。あなたの感じている苦しさは、決して『気のせい』ではありません。ココトモに話してみませんか。
このページの情報は、医師による診断や治療に代わるものではありません。症状が気になる場合は、心療内科・精神科への受診をご検討ください。
