メンタルヘルス用語辞典 · 摂食障害

強迫的節食とは?
症状・原因・治療法をわかりやすく解説

強迫的節食は「ダイエット」の域を超えた食行動のパターンです。食べることへの強い恐怖・罪悪感・強迫的なカロリー計算が日常を支配し、深刻な身体的・心理的影響をもたらします。定義から症状・原因・治療法・回復のための日常ケアまで、必要な情報をまとめました。

ABOUT RESTRICTIVE EATING

強迫的節食とは

強迫的節食とは、食事量・カロリー・食品の種類などを強迫的・儀式的にコントロールしようとする食行動のパターンです。「ダイエット」の域を超え、日常生活・健康・対人関係に深刻な影響を与えます。

定義

強迫的節食の定義——「ダイエット」と何が違うのか

強迫的節食(Restrictive Eating Behavior)とは、食べる量・カロリー・食品の種類・食事の時間などを、健康上の必要性を超えて強迫的・儀式的にコントロールしようとする食行動パターンを指します。一般的な「ダイエット」とは根本的に異なり、食事の制限が目的ではなく、強迫的な衝動・不安の回避・自己価値の維持手段として機能しています。

強迫的節食を持つ人は、食事の計画・カロリー計算・「許可された食品」と「禁止された食品」の分類に膨大な時間とエネルギーを費やします。ルールを破ると激しい罪悪感・パニック・自己嫌悪が生じ、より厳しいルールを設けるという悪循環が生まれます。

健康的なダイエット
柔軟性のある食事管理
目標があり、達成後は終了できる。特定の状況では「例外」を許容できる。食事を楽しむことができる。体重や食事への強迫的な思考はない。社会的な食事の場に参加できる。
強迫的節食
硬直した強迫的コントロール
ルールを終わらせることができない。「例外」が激しい罪悪感・パニックを引き起こす。食事を楽しむことができない。1日3時間以上を食事・体型の思考に費やす。社会的食事の場を回避する。
「強い意志」の問題ではありません強迫的節食はしばしば「意志の強さ」や「自己管理」として賞賛されることがありますが、それは誤解です。食事のコントロールへの強迫的衝動は、意志力とは関係のない脳内の神経生物学的変化が関与しています。「食べないことへの達成感」は、脳の報酬回路が異常に処理された結果です。
スペクトラム

強迫的節食のタイプ——多様な形態

強迫的節食にはいくつかのパターンがあり、複数が重複することも多くあります。

カロリー制限型
1日の摂取カロリーを極端に制限する。500kcal以下など、医学的に危険なレベルまで制限する場合もある。「食べないことへの達成感」や「空腹感の麻痺」が生じる。
カロリー計算の強迫達成感空腹感の否定
食品種類制限型
特定の食品群(炭水化物・脂質・糖質など)を「悪い食べ物」として完全に排除する。禁止食品に触れると強い罪悪感が生じる。オルトレキシアと重複することも多い。
禁止食品リスト罪悪感食品恐怖
食事時間制限型
1日の食事を特定の時間帯のみに制限する(断続的断食・16時間断食など)。時間外に食べると強い罪悪感が生じ、食事への恐怖が強まる。
時間ルール断食強迫柔軟性の欠如
量・回数制限型
1日の食事回数や一度に食べる量を厳密にルール化する。決めた量を超えると罰するような行動(過度な運動・嘔吐など)をとることもある。
食事ルール量の厳密管理補償行動
💡
「まだ軽い」は要注意強迫的節食は、始まりは「ちょっとしたダイエット」に見えることがほとんどです。「まだそこまでひどくない」という認識は、受診を遅らせる最大の要因です。日常生活・食の楽しみ・人間関係に影響が出ているなら、専門家への相談を真剣に検討してください。
有病率

強迫的節食・摂食障害の実態

強迫的節食は、診断された摂食障害の数字よりはるかに広く存在しています。

8〜13%
若年女性における臨床的に問題のある食行動の推定有病率
10
摂食障害は全精神疾患の中で最も高い死亡率を持つ(うつ病の約10倍の死亡率)
60%
摂食障害の患者が別の精神疾患(不安障害・うつ病等)を合併している割合
摂食障害は全ての精神疾患の中で最も死亡率が高い疾患のひとつです。「太っていないから摂食障害じゃない」という誤解が受診の遅れにつながっています。体重が正常範囲内でも、食行動が生活を支配しているなら専門的な支援が必要です。
医学的リスク

強迫的節食が引き起こす医学的リスク

強迫的節食は、心理的苦痛だけでなく、深刻な身体的合併症を引き起こします。

🏥医学的合併症一覧
心臓・循環器
徐脈・低血圧・不整脈・心不全(致死的)
骨・筋肉
骨密度低下・疲労骨折・筋肉量低下
ホルモン
月経異常・不妊・甲状腺機能低下
神経・脳
認知機能低下・ブレインフォグ・末梢神経障害
消化器
胃排出遅延・便秘・リフィーディング症候群
免疫
感染症への脆弱性・創傷治癒の遅れ
皮膚・毛髪
脱毛・産毛出現(ラヌゴ)・皮膚乾燥
電解質
低カリウム血症・低ナトリウム血症(致死的)
⚠️
医学的緊急状態のサインBMI 15以下・心拍数50以下(安静時)・失神・低カリウム血症・低血圧(収縮期90mmHg以下)のいずれかに該当する場合は、直ちに医療機関(内科・救急)を受診してください。これらは生命に関わる緊急状態です。
受診の目安

こんな時は相談・受診を検討してください

以下の項目に心当たりがある場合は、精神科・心療内科・摂食障害専門外来への相談を検討してください。

🔍受診を検討すべきチェックポイント
  • 🔍
    1日のうち3時間以上を食事・カロリー・体型の思考に費やしている
  • 🔍
    「禁止食品」があり、それを食べると激しい罪悪感・パニックが生じる
  • 🔍
    食事の場(外食・会食)を強い不安から避けるようになっている
  • 🔍
    体重や体型を確認する行為(体重計・鏡)が1日に何度もあり、やめられない
  • 🔍
    食べた後に「消費しなければ」という強い衝動が常にある
  • 🔍
    体重・食事のコントロールを失うことへの恐怖が強く、日常生活を支配している
  • 🚨
    体重が著しく低い、または急激に減少している
  • 🚨
    月経が止まっている(女性の場合)・動悸・失神がある
💡
上記に3つ以上当てはまる場合は、精神科・心療内科または摂食障害専門外来への受診をおすすめします。最後の2項目(身体症状)に当てはまる場合は、できるだけ早く受診してください。
SYMPTOMS

強迫的節食の症状・特徴

強迫的節食は、心理的な症状と身体的な症状の両面から日常生活を侵食していきます。「食べないこと」が達成感・安心感として機能するため、本人が「問題」と認識しにくいことが特徴です。

🧠
食事に関する強迫的思考
「何カロリー食べたか」「今日は何を食べていいか」という思考が頭から離れず、食事以外のことに集中できなくなります。一日のうち3〜4時間以上を食事のことを考えることに費やす人も少なくありません。これは意志の問題ではなく、脳内の強迫的な思考回路が食と絡み合った状態です。
😰
食べることへの強い恐怖・罪悪感
「食べてしまった」という罪悪感が非常に強く、少し食べすぎたと感じるだけで激しい自己嫌悪に陥ります。食事の場面(外食・会食・家族との食事)を避けるようになり、社会的孤立が進みます。この恐怖と罪悪感のサイクルが行動を強化します。
🪞
ゆがんだ身体イメージ(ボディイメージ障害)
実際の体重や体型と自分の認識が大きく乖離します。客観的に見て痩せていても「まだ太っている」と認識し、さらなる制限をかけます。鏡や写真を見ることへの強い恐怖、または逆に鏡から目が離せなくなるチェック行動が現れます。
🎯
完璧主義・コントロール欲求
食事の管理を通じて「自分の人生をコントロールできている」という感覚を得ようとします。食事ルールを守ることが自己価値と直結しており、少しでもルールを破ると「失敗した自分」という感覚に苦しみます。完璧主義的な性格傾向と強く関連します。
💭
食事以外への意欲低下・集中力低下
栄養不足による脳機能の低下により、仕事・学業・趣味への集中力が大幅に落ちます。「霧がかかったような」感覚(ブレインフォグ)が続き、日常的な決断も難しくなります。これが孤立をさらに深め、食事管理のみが「唯一うまくできること」になります。
😤
感情の調節困難
極端な食事制限は脳内の神経伝達物質(セロトニン・ドーパミン)のバランスを崩し、感情の浮き沈みが激しくなります。些細なことで強い怒り・悲しみ・不安が生じ、対処する力が低下します。「食事を管理している時だけ安心できる」という感覚が強まります。
🏠
社会的回避・孤立
外食や他者との食事の場を避けるため、友人関係・職場関係・家族関係が悪化します。「食べないこと」を隠すために嘘をつくことも増え、罪悪感と孤立が深まる悪循環に陥ります。
😣
過度な運動強迫
摂取したカロリーを「消費しなければならない」という強迫観念から、過度な運動を行います。体調が悪くても、怪我をしていても運動をやめられません。運動できない状況(悪天候・病気など)で強い不安・パニックが生じます。
💡
「食べないことへの達成感」は危険なサイン強迫的節食では、食事を我慢することや目標以下のカロリーに抑えることに強い達成感・高揚感を感じます。この「達成感」は、脳の報酬回路が食制限を「成功」として処理するために生じます。達成感があるから「自分は大丈夫」ではありません。この感覚こそが、強迫的節食が維持される核心的なメカニズムです。
警告サイン

緊急性の高いサイン——見逃さないために

以下の症状が現れた場合は、直ちに医療機関を受診してください。これらは生命に関わる状態を示している可能性があります。

  • 急激な体重減少(1ヶ月で3kg以上)要注意
    急激な体重減少は医学的緊急状態のサインです。すぐに医療機関を受診してください。
  • 💓
    動悸・失神・極度の疲労要注意
    電解質異常や心臓への影響を示している可能性があります。救急受診が必要な場合があります。
  • 🌡
    常に寒い・手足が冷たい(低体温)要注意
    基礎代謝の低下と体脂肪の極端な減少を示しています。医療的評価が必要です。
  • 🩸
    月経が3ヶ月以上止まっている要注意
    エネルギー不足によるホルモン異常のサインです。骨密度低下・不妊のリスクがあります。
  • 🥴
    食事の前後に強い罪悪感・パニック
    心理的苦痛が日常生活に著しく影響している状態です。心理専門家への相談を検討してください。
  • 📏
    1日3時間以上を食事計算・体型確認に費やす
    思考が食と体型に占拠されており、生活の質を著しく損なっています。専門支援が有効です。
⚠️
緊急の場合動悸・失神・極度の衰弱・意識の混濁がある場合は、救急車を呼ぶか、すぐに救急外来を受診してください。📞 救急:119
CAUSES & RISK FACTORS

強迫的節食の原因と背景

強迫的節食は「食べないことへの意志力」の問題ではありません。遺伝・脳の神経生物学・社会文化的メッセージ・心理的要因・トラウマが複雑に絡み合って生じます。

強迫的節食が発症するメカニズムは、単一の原因によるものではありません。脆弱性(遺伝・性格・過去の体験)と誘発因子(社会的メッセージ・ライフイベント・ダイエットの開始)が重なり合うことで、食行動が強迫的なパターンへと変容していきます。

🧬遺伝的要因・神経生物学的要因

強迫的節食には明確な遺伝的要因があることが研究で示されています。神経性やせ症の遺伝率は約50〜80%と推定されています。セロトニン系(特に5-HT2A受容体)の機能異常が衝動制御・報酬処理・強迫的思考と関連していると考えられています。また、脳の報酬回路(ドーパミン系)において、食べることよりも「食べない達成感」の方が強い快感として処理されることも明らかになっています。完璧主義・強迫傾向・不安感受性の高さを規定する神経生物学的基盤が、摂食障害の素因として機能します。

  • 神経性やせ症の遺伝率約50〜80%
  • セロトニン5-HT2A受容体の機能異常
  • ドーパミン報酬回路の異常(「食べない」ことが報酬化)
  • 完璧主義・強迫傾向の神経生物学的基盤
  • 不安感受性の高さ(内側前頭前野・扁桃体の関与)
「本人の責任」ではありません強迫的節食は「意志が弱い」「自己管理ができない」「自分勝手なわがまま」ではありません。脳の神経生物学的変化・社会的メッセージへの曝露・心理的トラウマが複合的に関与した結果です。本人を責めることは回復を遅らせます。
リスク要因

発症リスクを高める要因

以下の要因が強迫的節食・摂食障害の発症リスクを高めることが研究で示されています。

リスク要因の影響度
女性(男性の約8〜10倍のリスク)
95%
青年期〜若年成人(10〜25歳)
88%
完璧主義・強迫傾向
82%
過去のいじめ・容姿批判体験
78%
家族歴(摂食障害・不安障害)
72%
体重管理スポーツへの参加
68%
SNSへの高曝露
60%
低い自己肯定感
75%

※ リスクの相対的な大きさを示すイメージ図です

リスク要因を多く持っているからといって必ず発症するわけではありません。また、リスク要因がない人でも発症することはあります。大切なのは、自分の食行動と心理状態に気づき、必要なときに助けを求めることです。
TREATMENT & RECOVERY

治療と回復

強迫的節食の治療は、医学的安定化・栄養療法・心理療法の3本柱で行われます。回復は可能です。適切なサポートがあれば、食事を恐怖なく楽しめる生活を取り戻すことができます。

医学的治療・栄養療法

医学的安定化と栄養回復——治療の土台

強迫的節食の治療において、身体的な安定化と栄養の回復は最も優先されます。栄養状態が改善されない限り、心理療法の効果も制限されます。なぜなら、低栄養状態の脳は認知・感情調節・学習のいずれも著しく機能が低下しているからです。

医学的モニタリング・安定化第一優先

強迫的節食が重度に進行している場合、まず医学的安定化が最優先事項です。心拍数・血圧・体温・血液検査(電解質バランス・骨密度・肝機能等)の定期的モニタリングが必要です。重篤な場合(BMI 15以下・重篤な電解質異常・心臓異常)は入院治療が必要になります。再栄養(リフィーディング)は段階的かつ慎重に行う必要があり、急速な再栄養によるリフィーディング症候群を防ぐため、医療チームの管理下で進めます。身体的安全の確保なしに心理的治療の効果は十分には得られません。

栄養療法・食事指導専門栄養士と連携

登録栄養士による専門的な栄養カウンセリングが不可欠です。「禁止食品」「安全な食品」という分類を解消し、すべての食品が許可されるという考え方(直感的摂食)を段階的に再学習します。食事の記録を「カロリー管理」ではなく「身体のニーズへの気づき」の手段として活用します。食事の量・種類・タイミングを徐々に正常化していくプロセスを、恐怖を管理しながら進めます。「チャレンジ食品」(恐怖の強い食品)に少しずつ曝露するエクスポージャー課題も行います。

認知行動療法(CBT-E)最も強いエビデンス

摂食障害専門の強化版認知行動療法(CBT-E)は、強迫的節食に最も強いエビデンスを持つ心理療法です。摂食障害を維持するコア信念(「体重・体型で自己価値が決まる」等)を特定し、より現実的な信念への修正を図ります。食事に関連した認知の歪み(全か無か思考、破滅化思考等)を認識し変えていきます。また、行動実験(恐怖食品を食べても「破滅」しないことを体験する)を通じて、歪んだ信念の根拠を実際に検証します。通常20週間程度のプログラムとして提供されます。

弁証法的行動療法(DBT)感情調節スキル習得

感情調節の困難さ、衝動的な行動(極端な制限・代償行動)、対人関係の問題を抱える場合にDBTが有効です。マインドフルネス・苦悩耐性・感情調節・対人関係スキルの4つのモジュールを通じて、食事以外の方法で感情を調節するスキルを身につけます。特に複雑性PTSD・境界性パーソナリティ障害との合併がある場合に推奨されます。

家族ベースト治療(FBT)思春期に特に有効

思春期の若者に特に効果が高い治療法です。第一段階では親が食事の管理を一時的に担い(親が「外在化された病気」に立ち向かう)、第二段階で徐々に本人に食事の主体権を返していきます。家族全体が摂食障害を「本人の問題」ではなく「家族全体で対処すべき病気」として捉え直す枠組みです。外来での実施が可能で、早期介入(発症3年以内)では最も回復率が高い治療法のひとつです。

薬物療法補助的役割

強迫的節食(特に神経性やせ症)には単独で有効な薬物療法は現時点では存在しませんが、合併する不安障害・強迫性障害・うつ病に対してSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が使用されることがあります。また、体重回復後の再発予防にSSRIが有効との報告があります。過食・嘔吐を伴う神経性過食症にはフルオキセチンが承認されています。アリピプラゾール(非定型抗精神病薬)が神経性やせ症の体重増加と不安軽減に一定の効果を示すという研究もあります。

「体重を増やすだけ」が治療ではありません体重回復は回復の重要な一側面ですが、それだけが治療ではありません。食事に対する恐怖・強迫的思考・ボディイメージの歪みへの心理的アプローチなしに、真の回復は達成できません。体重が戻っても心理的な問題が残れば、再発リスクは高いままです。
心理療法

心理療法——食と自己価値のつながりを解きほぐす

強迫的節食の心理療法では、「体重・体型で自己価値が決まる」というコア信念を変容させ、食事に対する柔軟性を取り戻すことを目指します。

アクセプタンス&コミットメント療法(ACT)価値に基づく行動

「食べることへの恐怖」という思考や感情を「なくす」のではなく、それがあってもバリュー(自分が本当に大切にしていること)に基づいた行動を選択できるよう支援します。思考との距離化(デフュージョン)と、現在の瞬間への注意(マインドフルネス)を活用して、食事制限への衝動に飲み込まれない力を養います。

スキーマ療法深層信念への介入

幼少期から形成された深層信念(スキーマ:「自分は欠陥品だ」「愛されるためには完璧でなければならない」等)が現在の食行動にどう影響しているかを探ります。イメージワーク・チェアワークなどを通じて、深層信念の再構築を目指します。慢性化・治療抵抗性の摂食障害に有効です。

EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)トラウマ関連に有効

トラウマ体験が摂食障害の発症・維持に関与している場合に有効です。特定のトラウマ記憶に対してEMDRを適用することで、記憶の情動的強度を低下させ、トラウマ由来の食行動(感情調節としての食事制限など)を緩和していきます。

対人関係療法(IPT)対人関係の改善

現在の対人関係の問題が摂食障害の維持にどう関与しているかを探り、コミュニケーションと関係性の改善を図ります。孤立・役割の変化・対人関係の葛藤などが摂食障害の悪化因子となっている場合に特に有効です。

回復への心がけ

回復において大切にしてほしいこと

回復は一直線ではありません

体重が戻る・食事の幅が広がる・食事への恐怖が減る——これらのプロセスは決して直線的ではありません。「一歩前進して二歩後退する」ような時期もあります。後退は「失敗」ではなく、回復プロセスの一部です。自分を責めず、治療チームと状況を共有し続けることが大切です。

完全回復は可能です

適切な治療と十分なサポートがあれば、強迫的節食から完全に回復し、食事を恐怖なく楽しめる生活を送れるようになります。研究では、神経性やせ症でも長期的な追跡調査で約50〜70%が完全または大部分回復することが示されています。諦めないことが最も重要です。

治療を通じて、「食べることを楽しめる自分」を発見する方は多くいます。食は人生の喜びのひとつです。今は食事が恐怖に見えていても、それは変えられます。一人で抱え込まず、専門家のサポートを受けながら、一歩一歩進みましょう。
DAILY LIFE

日常生活でできること

治療と並行して、日々の生活の中でも少しずつ食との関係を変えていくためのヒントを紹介します。無理は禁物です。専門家のサポートを受けながら、自分のペースで取り組みましょう。

📖
食事日誌を「カロリー記録」から「気持ちの記録」へ変える
食べたものを書くとき、カロリーや量ではなく「その時の気持ち」「空腹・満腹の感覚」「何かストレスはあったか」を書くことにシフトしてみましょう。身体のシグナルと感情のつながりに気づくことが、直感的な食事への第一歩です。
🌱
「恐怖食品」への段階的な挑戦
一人で突然怖い食べ物に挑戦する必要はありません。専門家と一緒に「恐怖のはしご」を作り、一番怖くない食品から少しずつチャレンジしていきましょう。「食べても何も悪いことは起きなかった」という体験の積み重ねが、恐怖を和らげます。
🎭
「ルール破り」の練習
意図的に食事ルールを少しだけ破る練習をします(例:いつも同じ量しか食べない人が、今日は少し多めに食べてみる)。「ルールを破っても自分は崩壊しない」という体験が、完璧主義的なコントロール衝動を緩めます。最初は専門家のサポートのもとで行いましょう。
💆
身体感覚への気づきを養う(インターオセプション)
空腹感・満腹感・疲労感・緊張感など、身体の内側からのシグナルに意識的に注意を向ける練習をします。強迫的節食では、身体のシグナルを無視・否定することが習慣化しているため、まずは「感じることを許可する」ことが大切です。ボディスキャン瞑想が役立ちます。
🤝
信頼できる人と食事をする
一人での食事は食事ルールが強まりやすいです。週に1回でも、信頼できる友人・家族と一緒に食事をする機会を作りましょう。「楽しく食べる」体験を少しずつ重ねることが、食事を「義務・恐怖」から「喜び」へと変えていきます。
🚶
「補償的運動」の代替行動を見つける
食べた後に「消費しなければ」という衝動が生じたとき、すぐに運動する代わりに別の行動を試みましょう(入浴・音楽を聴く・人に電話するなど)。「食べたらすぐ運動」というパターンを崩すことが、強迫的なサイクルを断ち切る第一歩です。
📵
「痩せコンテンツ」のSNSをデトックスする
フォローしているアカウントの中に、体型や食事を強迫的に管理しているインフルエンサー、「痩せ方」「クリーンイーティング」のコンテンツが多い場合、それらをフォロー解除・ミュートすることを検討しましょう。目に入る情報は思考と感情に大きな影響を与えます。
💊
医療機関との連携を絶やさない
身体的な状態(体重・心拍・血液検査値)の定期的なモニタリングは自力では困難です。たとえ症状が「軽い」と感じていても、定期的に医療機関を受診し、専門家チーム(医師・栄養士・心理士)と連携を保つことが安全な回復の鍵です。
セルフケアは「治療の代わり」にはなりません日常のセルフケアは回復を支援しますが、専門的な治療の代わりにはなりません。強迫的節食は、一人での努力だけでは回復が難しい疾患です。医師・栄養士・心理士によるチームアプローチが最も効果的です。セルフケアは治療を補完するものとして活用してください。
FOR FAMILY & FRIENDS

周囲の人にできること

強迫的節食を抱える人の周囲にいる方へ。食事を「強制」したり「体型についてコメント」したりすることは逆効果です。正しい理解と適切なサポートの方法をお伝えします。

対応のポイント

してほしいこと・避けてほしいこと

強迫的節食に対する周囲の対応は、回復に大きな影響を与えます。善意のアドバイスが逆効果になることも多いため、正しい知識を持った上でサポートしてください。

✅ してほしいこと
「食べる量」や「体重」についてコメントしない——たとえ心配していても、これが最も傷つけます
「治さなければ」というプレッシャーをかけず、安心できる関係性を作ることに集中する
食事の場を「楽しい場所」として保つ——監視や説教の場にしない
「なぜ食べないの?」ではなく「今どんな気持ちでいる?」と感情に注目する
専門家(医師・栄養士・心理士)への受診をサポートし、一緒に受診することも提案する
支える自分自身のメンタルヘルスも大切にし、必要なら家族向けサポートグループを活用する
本人の小さな変化・前進を具体的に認める(「今日は一緒に食事できたね」など)
❌ 避けてほしいこと
「少し食べたら治るよ」「気合いが足りない」——摂食障害への最も有害な誤解です
食事の量を強制する・強引に食べさせようとする——かえって症状を悪化させます
「あなたのせいで家族が大変」と罪悪感を与える
「そんなに痩せて、かえって心配」など体型についての言及(たとえポジティブなものでも)
一人ですべてのサポートを抱え込む——専門家チームへの委託が不可欠です
「食べることを強要すれば治る」という誤った信念で対応する
あなた自身のサポートも大切に摂食障害を抱える人を支えることは、精神的に非常に消耗します。一人で抱え込まず、家族向け支援プログラム(摂食障害家族教室・家族グループなど)を活用してください。あなた自身が健やかでいることが、最大のサポートです。

一人で抱え込まないで。
相談してみませんか。

食事のことが頭から離れない、食べることが怖い——そのつらさをぜひ聞かせてください。ココトモのカウンセラーが寄り添います。

今すぐ話したい方へ——相談窓口
ココトモ相談するチャット相談・無料
摂食障害支援センター各都道府県設置専門相談窓口
いのちの電話0120-783-55624時間・無料
よりそいホットライン0120-279-33824時間・無料
精神保健福祉センター各都道府県に設置平日・無料相談

このページの情報は、医師による診断や治療に代わるものではありません。症状が気になる場合は、心療内科・精神科への受診をご検討ください。通院医療費の自己負担を1割に軽減できる自立支援医療制度も活用できます。

keyboard_arrow_up