メンタルヘルス用語辞典 · 分離不安障害

分離不安障害(分離不安症)とは?
症状・原因・治療法をわかりやすく解説

分離不安障害は、愛着を持つ人との分離に対して過度な恐怖や不安を抱える障害です。子どもだけでなく大人にも発症します。症状、原因、年齢別の特徴、治療法から家族のサポートまで、必要な情報をすべてまとめました。

ABOUT SEPARATION ANXIETY

分離不安障害(分離不安症)とは

分離不安障害は、愛着を持つ人との分離に対して過度で持続的な恐怖や不安を抱える障害です。子どもだけでなく大人にも発症し、DSM-5では不安症群に分類されています。

定義

分離不安障害の定義——子どもだけの問題ではない

分離不安障害(Separation Anxiety Disorder)は、家や愛着を持つ人(親、パートナー、家族など)から離れることに対して、発達的に不適切な過度の恐怖や不安を示す障害です。以前は小児期の障害に分類されていましたが、DSM-5では成人にも診断可能な不安症群に移されました。実際に、成人期の分離不安障害の半数以上が成人期に初めて発症しています。

発達段階の分離不安
成長過程で自然に見られる反応
生後8カ月〜3歳頃の子どもに見られる分離不安は正常な発達段階です。養育者がいなくなると泣くが、年齢とともに自然に収まる。
分離不安障害
年齢相応でない過度な分離への恐怖
年齢に不相応な過度の分離不安が持続し、身体症状を伴い、学校・仕事・対人関係に重大な支障をきたす。治療が必要。
大人の分離不安障害分離不安障害は子どもの問題と思われがちですが、成人にも相当数存在します。パートナーの外出中にパニックになる、一人での出張ができない、常にパートナーの安否を確認するなどの形で現れます。
有病率

分離不安障害の有病率

4%
子ども(6〜12歳)における有病率は約3〜4%
1〜2%
成人における12カ月有病率は約1〜2%
50%以上
成人の分離不安障害の50%以上が成人期に初発
分離不安障害は不安障害の中でも発症年齢が最も早い疾患のひとつです。適切な早期介入により、成長後の不安障害やうつ病の予防にもつながります。
受診の目安

こんな時は専門家に相談を

⚠️受診を検討すべきサイン
  • 🔍
    愛着のある人(親、パートナー)と離れることに極端な不安や苦痛を感じる
  • 🔍
    愛着対象が死んだり事故に遭ったりする心配が頭から離れない
  • 🔍
    登校・出勤が困難で、不登校や欠勤が続いている
  • 🔍
    一人で寝ること、一人で家にいることが極度に怖い
  • 🔍
    分離の予測だけで腹痛、頭痛、吐き気などの身体症状が出る
  • 🔍
    常に愛着対象と連絡を取ろうとし、応答がないとパニックになる
  • 🔍
    上記の症状が子どもは4週間以上、大人は6カ月以上続いている
  • 🔍
    日常生活(学業、仕事、対人関係)に明らかな支障が出ている
💡
上記に3つ以上該当し、日常生活に支障が出ている場合は、小児科(子どもの場合)、精神科・心療内科への受診をお勧めします。
心理社会的影響

分離不安障害が日常生活に与える影響

分離不安障害は、学業・就労・対人関係・家族関係のあらゆる側面に深刻な影響を及ぼします。特に子どもでは不登校、大人では職場離脱や社会的孤立につながることがあります。

学校・職場への影響
不登校・遅刻・欠席の増加。子どもでは年間登校日数が著しく減少するケースも。大人では在宅勤務への依存や転職繰り返しが生じやすい
対人関係の制約
愛着対象(親・パートナー)への過度な依存で、友人関係・恋愛関係が難しくなる。「束縛が強い」「自立していない」と誤解されることも多い
身体的健康への影響
慢性的な不安による身体化症状(頭痛・腹痛・吐き気)。睡眠障害(一人で眠れない)が長期化することで慢性疲労が生じる
経済的・家族的影響
付き添い登校・送迎による家族の就労制限。医療費・支援費用の負担。兄弟姉妹や夫婦関係への二次的ストレスも生じやすい
SYMPTOMS

分離不安障害の症状

分離不安障害では、分離に関連する精神症状と身体症状の両方が現れます。特に子どもでは身体症状が前面に出ることが多く、注意が必要です。

😰
愛着対象からの分離への過度な苦痛
親やパートナーなど、愛着を持つ人と離れる際に、年齢相応の反応を大きく超えた激しい苦痛を繰り返し経験します。泣き叫ぶ、しがみつく、嘔吐するなどの反応が見られます。
💀
愛着対象を失うことへの持続的な心配
愛着対象が死んでしまう、病気になる、事故に遭う、誘拐されるなどの災難に見舞われるのではないかという心配が持続します。合理的な根拠がなくても恐怖が消えません。
🌀
不幸な出来事で引き離される心配
自分自身が迷子になる、誘拐される、事故に遭うなどして、愛着対象から引き離されるのではないかという心配が持続します。
🏠
外出・登校への抵抗
家を離れることや、学校・職場に行くことに強い抵抗を示します。分離の予測だけで不安が高まり、外出を拒否します。子どもでは不登校の主要な原因のひとつです。
🌙
一人でいること・就寝への恐怖
愛着対象なしに眠ることや、一人で家にいることを極度に恐れます。子どもは親の寝室に行きたがり、大人はパートナーがいないと眠れないなどの症状が見られます。
😱
分離に関する悪夢
愛着対象との分離をテーマとした悪夢を繰り返し見ます。火事、災害、誘拐など、引き離される内容の夢が多いです。
📱
常に連絡を取ろうとする
愛着対象と常に連絡が取れる状態を維持しようとします。頻繁に電話やメッセージを送り、応答がないと激しい不安に襲われます。
DSM-5の診断基準では、上記のうち3つ以上が該当し、子どもでは4週間以上、成人では6カ月以上持続する場合に分離不安障害と診断されます。
CAUSES & RISK FACTORS

分離不安障害の原因とリスク要因

分離不安障害は遺伝的な気質、愛着パターン、ストレスフルな出来事、脳の機能など、複数の要因が絡み合って発症します。

🧬遺伝的要因と気質

分離不安障害には遺伝的な要素が関わっています。6歳児における双生児研究では、分離不安障害の遺伝率は約73%と高い値が報告されています。特に女児ではさらに高い遺伝率が示されています。気質的には「行動抑制」(新しい状況に対して警戒・回避する傾向)が強い子どもは、分離不安障害のリスクが高まります。親に不安障害がある場合、子どもの発症リスクも上昇します。

  • 双生児研究での遺伝率:約73%
  • 女児でより高い遺伝率
  • 行動抑制気質とリスクの関連
  • 親の不安障害との関連
分離不安障害は「育て方が悪かった」と自責する必要はありません。遺伝的な気質が大きく関わっており、専門的なサポートを受けることが大切です。
神経生物学的背景

分離不安障害の脳・神経メカニズム

分離不安障害の生物学的基盤として、扁桃体の過活動・前頭前皮質の制御機能低下・オキシトシン/コルチゾールシステムの異常が指摘されています。これらは「気の持ちよう」では変えられない神経生物学的な特性です。

扁桃体の過活動
愛着対象との分離を「脅威」として処理する扁桃体が過剰に反応。分離のわずかな手がかりでも恐怖反応が誘発される
愛着ホルモン(オキシトシン)
愛着形成に関わるオキシトシン系の異常が、特定の人物への過度な依存と分離への過剰反応を生じさせる
ストレス反応系
コルチゾール(ストレスホルモン)の調節異常により、分離場面でのパニック・身体症状(心悸亢進・腹痛)が起きやすくなる
遺伝的素因
一卵性双生児研究でSADの遺伝率は40〜65%。不安気質・行動抑制傾向の遺伝子が関与するとされている
AGE-SPECIFIC FEATURES

年齢別の特徴

分離不安障害の現れ方は年齢によって異なります。子どもから大人まで、各年齢に特有の症状パターンを知っておくことが、早期発見につながります。

幼児期(3〜5歳)年齢相応の分離不安との鑑別が重要

親から離れると激しく泣き叫ぶ、しがみつく。幼稚園・保育園への登園を拒否。親のそばから離れない。分離時に嘔吐することも。

学童期(6〜12歳)学業への影響が大きい

不登校の主要な原因のひとつ。登校前の朝に腹痛・頭痛を訴える。親の安否を過度に心配する。一人での外泊ができない。

青年期(13〜17歳)自立への移行が困難

学校の欠席、友人関係の制限。親に過度に連絡を取ろうとする。進学や自立への強い不安。身体症状が前面に出やすい。

成人期(18歳以上)社会生活への影響が深刻

パートナーや家族から離れることへの過度な不安。仕事の出張や転勤が困難。頻繁な確認連絡。パートナーの不在時の強い不安。一人での生活が困難。

大人の分離不安障害は見逃されがちです。「パートナーがいないと不安で仕方がない」「一人での外出が極度に怖い」という悩みの背景に、分離不安障害が隠れていることがあります。
TREATMENT & RECOVERY

分離不安障害の治療と回復

分離不安障害は適切な治療により高い改善率が期待できます。認知行動療法を中心に、必要に応じて薬物療法を組み合わせます。

第一選択

認知行動療法(CBT)

分離不安障害に最もエビデンスのある治療法です。分離場面に対する非現実的な心配(「お母さんが死んでしまう」)を現実的な考え方に修正する認知的介入と、段階的に分離場面に慣れていく曝露療法を組み合わせます。子どもの場合は親も参加する形式が効果的です。約60〜80%の子どもが有意な改善を示すとされています。

段階的なステップ

段階的曝露療法

不安の低い分離場面から順に、少しずつ分離を経験していく方法です。「隣の部屋で5分→10分→30分」「親なしで友人の家に1時間」のように段階を細かく設定し、各段階で「大丈夫だった」という成功体験を積み重ねます。急激な分離は避け、本人のペースを尊重しながら進めます。

親の関わり方の改善

親訓練プログラム

親が子どもの分離不安にどう対応するかを学ぶプログラムです。分離時の子どもの不安に対して過度に反応しない方法、別れ際の適切な対応(長引かせない、穏やかに行ってらっしゃいと送り出す)、分離に成功した時の適切な褒め方などを実践的に学びます。過保護な養育パターンの修正にも焦点を当てます。

補助的治療

薬物療法

中等度から重度の場合や、心理療法だけでは十分な効果が得られない場合に、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が使用されます。子どもへの使用は慎重に行われ、低用量から開始します。薬物療法は心理療法の補助として用いられ、単独での使用は推奨されません。ベンゾジアゼピン系は子どもには原則使用しません。

治療は焦らず、段階的に進めることが大切です。無理な分離を強いると逆効果になります。専門家と相談しながら、本人のペースに合わせて進めましょう。
支援制度

利用できる支援制度・相談窓口

分離不安障害の治療・生活支援に活用できる制度を紹介します。これらの制度を知っておくことで、経済的・心理的な負担を軽減しながら治療を継続できます。

自立支援医療制度
精神科・心療内科の通院医療費を1割負担に軽減。継続治療が必要な方は主治医に相談を。所得に応じてさらに上限あり
精神保健福祉センター
各都道府県に設置。子ども・大人の精神的健康に関する無料専門相談。家族からの相談も受け付けている
教育相談(子ども)
スクールカウンセラー・教育支援センター・適応指導教室。不登校の子どもへの個別支援・別室登校・訪問支援が受けられる
障害年金・手帳
重症例では精神障害者保健福祉手帳(2・3級)の取得が可能。税制優遇・公共交通割引・就労支援サービスが利用できる
DAILY LIFE

日常生活でできること

治療と並行して、日々の生活の中で分離不安に対処するスキルを育てることが大切です。家族全体で取り組みましょう。

📅
予測可能な日課を作る
毎日の生活に一定のリズムを持たせましょう。起床、食事、登校・出勤、帰宅、就寝の時間を一定にすることで、「次に何が起こるか」が予測でき、不安が軽減されます。
👋
別れの儀式を作る
分離の場面での「お別れの儀式」を決めておきましょう。ハグ、特別な合言葉、手を振るなど。短く(30秒以内)、温かく、一貫した儀式は安心感を与えます。
再会の時間を具体的に伝える
「いつ戻ってくるか」を具体的に伝えましょう。子どもの場合は時計が読めなくても、「お昼ご飯の後に迎えに来るよ」など、わかりやすい目印で伝えます。
🎒
移行対象を活用する
愛着対象を思い出せる「お守り」(家族の写真、特別なハンカチ、親のにおいがするものなど)を持たせましょう。安心の源を持ち歩くことで分離の不安が和らぎます。
🌟
成功体験を積み重ねる
分離に成功した(学校に行けた、一人で寝られた)時は、具体的に褒めましょう。「勇気を出して学校に行ったね、すごいよ」と行動を認めることが大切です。
🧘
リラクゼーション技法を教える
深呼吸、腹式呼吸、筋弛緩法など、不安を和らげるセルフケア技法を一緒に練習しましょう。「不安を感じたらこれをしよう」と具体的な対処法を持つことが安心につながります。
📱
連絡のルールを決める
大人の場合は「1日3回まで連絡OK」のようにルールを決めましょう。無制限の確認は不安のサイクルを強化します。ルールを守れた時は自分を認めましょう。
📝
不安の温度計を使う
不安の強さを0〜10の「温度計」で表現する練習をしましょう。不安を数値化することで客観視でき、「今は5だから、深呼吸してみよう」と対処行動につなげやすくなります。
分離不安への取り組みは「慣れ」ではなく「学び」です。安全な環境で少しずつ分離を経験し、「離れていても大丈夫」という実感を育てていきましょう。
セルフケア

分離不安障害のためのセルフケア・対処スキル

日常生活でできる具体的な対処法を身につけることで、分離不安の強度を和らげ、治療の効果を高めることができます。

不安日記・記録
毎日の不安の強度(0〜10点)と誘発場面を記録。パターンを把握することで、治療者との共有・治療計画の精緻化に役立つ
腹式呼吸・リラクゼーション
分離場面でのパニック・過呼吸に対して。4秒吸い・4秒止め・8秒吐く「ボックスブリージング」が特に有効
コーピングカード
「離れていても大丈夫」「○○は△時に帰ってくる」などの安心フレーズをカードに書いて携帯。不安時に取り出して読む習慣を作る
確認行動の段階的削減
連絡・確認の回数を段階的に減らす(例:1時間に1回→2時間に1回)。治療者の指示のもとで行う段階的曝露の一つ
活動・社会参加の維持
趣味・友人関係・外出などの活動を少しずつ維持・拡大する。「愛着対象なしでも楽しめる経験」の蓄積が自己効力感を高める
睡眠・身体ケア
規則正しい睡眠・適度な運動・バランスの取れた食事が不安の閾値を下げる。カフェイン・アルコールは不安を増幅させるため注意
セルフケアは「治療の代わり」ではなく「治療の助け」です。一人で取り組む前に、治療者に相談して自分に合った対処法を選びましょう。
関連する用語
愛着障害全般性不安障害パニック障害不登校選択性緘黙社交不安障害
FOR FAMILY & FRIENDS

周囲の人にできること

分離不安障害の治療では、家族の関わり方が非常に重要です。適切な対応を学び、本人の回復を支えましょう。

対応のポイント

してほしいこと・避けてほしいこと

してほしいこと
分離不安は本人にとって「本当につらい」ものであることを理解する
分離の場面では穏やかに、しかし毅然とした態度で送り出す(長引かせない)
「必ず戻ってくるよ」と明確に伝え、約束は必ず守る
分離に成功した時は具体的に褒める(「一人で寝られたね、よく頑張ったね」)
段階的に分離の経験を増やし、本人のペースを尊重する
子どもの場合は学校の先生やスクールカウンセラーと連携する
成人の場合はパートナーとして理解を示しつつ、徐々に自立を促す
避けてほしいこと
分離時に泣き叫ぶ子どもに引きずられて何度も戻る
「泣くな」「恥ずかしい」「もう大きいでしょ」と叱責する
不安を回避させるために学校や仕事を休ませ続ける
「じゃあずっと一緒にいてあげるから」と過度に安心を保証する
突然の長期分離を強いる(準備なしの合宿参加など)
本人の不安を笑ったり軽視したりする
別れ際が最も大切分離の場面では「穏やかに、短く、一貫して」が鉄則です。何度も振り返って手を振ったり、泣く子どもに何度も戻ったりすると、不安を強化してしまいます。「行ってらっしゃい、お昼に迎えに来るよ」と笑顔で伝え、すぐに離れましょう。
回復の見通し

回復の段階と家族の役割

分離不安障害の回復は段階的に進みます。家族が各段階に応じた適切な関わり方をすることで、回復を加速できます。

急性期(治療開始〜1ヶ月)
治療を開始し、曝露課題に慣れる時期。最初は症状が一時的に増すことも。「一緒に取り組む」姿勢を示して安心感を与える
改善期(1〜3ヶ月)
曝露課題が少しずつこなせるようになる時期。小さな成功を一緒に喜ぶことが自己効力感を高める。過度に助けようとしない
安定期(3〜6ヶ月以降)
分離に対処できる場面が増え、日常生活の回復が進む時期。新たな挑戦(外泊・旅行等)を一緒に計画する
維持期(治療終了後)
再発のサインを家族も共に観察する。「最近また不安が強いね」という早期気づきが再発予防に不可欠
FAQ

よくある質問

分離不安障害について、当事者・家族からよく寄せられる疑問にお答えします。

よくある質問

分離不安障害に関するQ&A

Q. 分離不安障害は子どもの病気ではないのですか?

以前は小児期の障害に分類されていましたが、DSM-5(2013年)からは成人にも適用される不安症として再定義されました。大人の分離不安障害の有病率は約0.9〜1.9%とされ、決して珍しくありません。大人の場合「パートナーへの過度な依存」「一人での外出・旅行への強い恐怖」「連絡が取れないパニック」として現れます。「恋愛依存症」「愛情が深いだけ」と見過ごされやすいですが、日常生活に支障が出ている場合は専門的治療が有効です。

Q. 子どもが「学校に行きたくない」と泣きます。分離不安障害ですか?

登校しぶり・不登校の原因は分離不安障害のほかにも、いじめ・学習困難・社交不安・発達障害など様々あります。分離不安障害が背景にある場合、「親と離れることの恐怖」が主な原因であり、「学校が怖い」より「家(親)を離れたくない」という訴えが特徴的です。また、登校日は「お腹が痛い」「頭が痛い」という身体症状が現れることが多いです。学校への分離が問題なのか、それとも学校環境自体の問題なのかを見極めるため、スクールカウンセラーや小児科・児童精神科への相談をお勧めします。

Q. 分離不安障害の治療にはどのくらいの期間がかかりますか?

認知行動療法(CBT)を中心とした治療では、子どもの場合12〜20セッション(週1回で約3〜5ヶ月)で約60〜80%が改善するとされています。大人の場合は重症度・併存障害(うつ病・他の不安症)によって異なりますが、多くの場合6ヶ月〜1年での改善が目標です。薬物療法(SSRI)は効果発現まで4〜8週かかります。「すぐに治らない」と焦らず、段階的曝露療法を根気よく続けることが回復への鍵です。症状が改善した後も、維持療法や定期的な面接を続けることで再発を防げます。

Q. 「過保護な親」が原因ですか?親の責任ですか?

分離不安障害の原因を「過保護な育て方」だけに帰結させることは正確ではありません。研究によると、遺伝的な不安気質(生まれつきの特性)が40〜65%を占めます。親の養育スタイル(過保護・過干渉)は、発症を促進する一因となりますが、それだけが原因ではありません。同じ育て方をしても分離不安障害になる子どもとならない子どもがいることがその証拠です。治療では「親の育て方を変えること」よりも「子どもの不安対処スキルを育てること」「親が安全基地として機能できるよう支援すること」に焦点を当てます。自責せず、一緒に治療に取り組むことが大切です。

Q. 薬を使わずに治せますか?

軽度〜中等度の分離不安障害では、認知行動療法(CBT)単独で十分な改善が得られる場合があります。特に子どもでは、薬物療法なしにCBT・親訓練・学校との連携だけで大幅な改善が報告されています。重症例や不登校が長期化しているケース、うつ病などが合併しているケースでは、SSRIなどの薬物療法を組み合わせることで治療効果が高まります。「薬を飲みたくない」という希望は医師に伝えることができます。治療方針は専門家と十分に相談して決めましょう。

Q. 大人の分離不安障害はパートナーへの「束縛」と違うのですか?

「束縛」は意図的な行動コントロールを含むことがありますが、分離不安障害は本人が望まないにもかかわらず、分離の不安が制御できない状態です。特徴的な違いとして、①本人が「不安が過剰であることを自覚しながら止められない」②分離場面で身体症状(動悸・腹痛・涙)が出る③愛着対象の安全に関する繰り返しの確認行動が止まらない、という点があります。パートナーとの関係に支障をきたしている場合は、カップルカウンセリングを含む専門的支援が有効です。「愛情の強さ」と「病的な不安」は異なります。

Q. 何科を受診すればよいですか?

子どもの場合は小児科・児童精神科・子どものこころ専門医が適しています。かかりつけ小児科医に相談して紹介状を書いてもらうのがスムーズです。スクールカウンセラーや教育支援センターへの相談から始めることもできます。大人の場合は精神科・心療内科を受診してください。「分離不安障害かもしれない」「パートナーがいないと強い不安がある」と初診時に伝えることで適切な評価が受けられます。精神保健福祉センターでは専門相談員による無料相談も行っています。

Q. 分離不安障害と愛着障害はどう違うのですか?

分離不安障害と愛着障害はしばしば混同されますが、概念的に異なります。愛着障害(反応性愛着障害・脱抑制型対人交流障害)は、幼少期の著しい養育ネグレクト・虐待・養育者の頻繁な交代によって生じる愛着システム自体の障害です。分離不安障害は、愛着は形成されているが「分離」という特定の場面への過度な恐怖反応です。ただし重複することもあり、愛着障害を背景に分離不安障害が発症するケースもあります。正確な鑑別には専門家の評価が必要です。

Q. 分離不安障害は再発しますか?予防できますか?

分離不安障害は再発のリスクがある障害です。特に、強いストレスイベント(引越し・進学・失業・喪失体験など)が再発の引き金になりやすいです。再発予防には①治療で学んだ曝露療法・認知スキルを日常的に維持すること②生活リズム(睡眠・食事・運動)の安定③ストレスの早期察知と対処策の準備④症状の再燃サインを自己モニタリングする習慣が有効です。「少し不安が増えてきた」段階で専門家に相談することで、本格的な再発を防ぎやすくなります。治療終了後も年1〜2回のフォローアップ受診を続けることが望ましいです。

Q. 分離不安障害と強迫症(OCD)は関係がありますか?

分離不安障害と強迫症は異なる診断ですが、重複することがあります。共通点として、①愛着対象の安全に関する繰り返しの確認行動(電話・メッセージ)②「もしかしたら何かあったかも」という侵入思考③儀式的な行動(別れ際の特定のルーティン)があります。分離不安障害の確認行動は「愛着対象の安全確認」に焦点があるのに対し、OCDの強迫行為はより広範なテーマ(汚染・対称性等)を持ちます。両者が合併する場合は、CBTの中で曝露と反応妨害(ERP)を組み合わせた治療が行われます。正確な鑑別のために専門家の評価が重要です。

Q. 学校の先生や支援者はどのように関わればよいですか?

学校での支援では、①安心できる場所(相談室・保健室)の確保と信頼できる大人(担任・養護教諭)との関係構築②登校を強制せず、段階的な参加計画(一部時間・別室登校)を家族・治療者と共有③分離の場面での一貫した「穏やかな受け入れ」——泣いて止めようとしている場面に余計に関わり過ぎない④「甘え」「怠け」として批判しないこと⑤治療の曝露課題を学校でも一貫して実施することが重要です。スクールカウンセラー・特別支援コーディネーターを通じた医療機関との連携が不可欠です。

Q. 分離不安障害は成人後、恋愛・結婚・育児にどのような影響がありますか?

分離不安障害が未治療のまま成人期に持ち越されると、恋愛・結婚・育児に様々な影響が現れます。恋愛では、パートナーへの過度な依存・嫉妬・連絡確認が関係を圧迫し、破局につながりやすいです。結婚後は「一人での外出や出張が極度に苦手」という形で配偶者に負担をかけることがあります。育児では、過保護になりすぎて子どもの自立を妨げたり、子どもの分離不安障害を引き継がせてしまうリスクがあります。しかし、治療によって分離不安が改善すると、対人関係・家族関係も大きく好転します。「自分が変わることで、子どもの環境も変わる」という希望を持って治療に取り組みましょう。

Q. 分離不安障害の子どもを持つ親自身も、精神的に参っています。どうしたらよいですか?

子どもの分離不安障害に対処し続ける親が燃え尽きや不安・うつを経験することはよくあります。あなたの苦労は本物です。親自身のセルフケアも治療の一部です。具体的には①子どもの治療者に「親として限界を感じている」と正直に伝える②親向けの心理教育グループや保護者会に参加する③自分自身のカウンセリング・精神科受診を検討する④精神保健福祉センターへの家族相談④家事支援・ショートステイなどの福祉サービスを活用する、といった方法があります。「親が安定していることが子どもの回復を助ける」——あなた自身を大切にすることは、子どもへの支援でもあります。

一人で抱え込まないで。
相談してみませんか。

「親と離れると胸が締め付けられる」「パートナーがいないと一日中不安で頭が離れない」「子どもが学校に行けず、自分を責め続けている」——分離不安障害のつらさは、「愛情の強さ」だけでは説明できない、本物の苦しみです。恥ずかしいことではありません。一人で抱え込まず、まず話してみませんか。

今すぐ話したい方へ——相談窓口
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このページの情報は、医師による診断や治療に代わるものではありません。症状が気になる場合は、小児科(子どもの場合)・心療内科・精神科への受診をご検討ください。通院医療費の自己負担を1割に軽減できる自立支援医療制度も活用できます。

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