セクシャルハラスメント(セクハラ)とは?
定義・種類・具体例・心理的影響・対処法・相談先を徹底解説
セクハラは性的な言動によって相手の尊厳を傷つけ、就業環境や生活環境を害する深刻な人権侵害です。職場・学校・公共の場などあらゆる場面で発生し、被害者に深刻な心理的ダメージを与えます。定義・種類・具体例・心理的影響・法的枠組み・実践的な対処法・相談窓口まで、必要な情報をすべてここにまとめました。
セクシャルハラスメント(セクハラ)の定義
セクハラは性的な言動によって相手の尊厳を傷つけ、就業環境や生活環境を害する深刻な人権侵害です。法的定義から国際基準、判断基準まで解説します。
セクシャルハラスメントとは何か
セクシャルハラスメント(Sexual Harassment)とは、相手の意に反する性的な言動によって相手の尊厳を傷つけたり、不利益を与えたり、不快な環境を作り出す行為のことです。日本語では『セクハラ』と略され、1980年代後半から日本でも広く認識されるようになりました。
本質は『性的な言動』と『相手の意に反する』という2つの要素の組み合わせ。行為者の意図ではなく、受け手がどう感じたかという『受け手の視点』が判断の基準となります。セクハラは単なるマナー違反ではなく人権侵害であり、場合によっては犯罪行為にもなり得る深刻な問題で、精神的健康・職業生活・社会的関係に広範な悪影響を及ぼし、回復には長期間を要することがあります。
日本の法律における定義
男女雇用機会均等法第11条が職場におけるセクシャルハラスメントを規定し、事業主にセクハラ防止のための必要な措置を講ずる義務(措置義務)を課しています。具体的には『職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されること』と定義。『職場』は事業所内に限らず取引先の事務所・出張先・業務で使用する車中・宴会の場も含みます。
2020年6月施行のパワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)とあわせ、事業主の防止措置義務がより一層強化されました。相談窓口の設置、事後の迅速かつ適切な対応、再発防止措置などが義務化されています。
国際的な定義と基準
ILO(国際労働機関)は2019年に『暴力及びハラスメント条約』(第190号条約)を採択し、職場における暴力とハラスメントを『身体的・心理的・性的又は経済的な危害を目的とした、又はそのような結果をもたらす、若しくはもたらす可能性がある、一定の範囲の受け入れがたい行動及び慣行又はその脅威』と定義。
米国EEOC(雇用機会均等委員会)は『望まない性的な接近、性的な行為の要求、およびその他の性的な性質を持つ言語的又は身体的な嫌がらせ』と定義し、『対価型(Quid Pro Quo)』と『環境型(Hostile Environment)』の2類型を含みます。EU指令でも、性的な性質を持つ言語的・非言語的・身体的な行為で人の尊厳を侵害する威圧的・敵対的・侮辱的・屈辱的・不快な環境を作り出すことを目的・効果とするものと定義。
セクハラの判断基準
『平均的な労働者の感じ方』を基準として判断されます。同様の状況で多くの人が不快に感じるであろう言動であればセクハラと判断される可能性が高い。ただし個人差があるため、被害者が特に敏感であっても行為者がそのことを知っていた場合や意向を無視して継続した場合は認定されます。1回の行為でも内容が重大(例:身体的接触)であれば認定されます。一般的な社交辞令や業務上必要なコミュニケーションは通常該当しませんが、相手が不快感を示したにもかかわらず同様の言動を繰り返す場合は該当性が高まります。
判断要素別に整理すると:
- 相手の反応セクハラに該当しやすい:明らかに不快感を示しているのに継続/該当しにくい:双方が同意している社交的な会話
- 行為の反復性セクハラに該当しやすい:繰り返し行われている/該当しにくい:1回限りで軽微な言動
- 行為の重大性セクハラに該当しやすい:身体的接触、対価の要求を含む/該当しにくい:一般的な業務上の会話
- 関係性セクハラに該当しやすい:上下関係を利用している/該当しにくい:対等な関係での日常会話
- 場所・状況セクハラに該当しやすい:密室、逃げ場のない状況/該当しにくい:公開された場所での一般的会話
- 客観的評価セクハラに該当しやすい:多くの人が不快と感じる内容/該当しにくい:社会通念上許容される範囲
セクハラの7つの主要な類型
場面別・対象別の典型例
- 食事や飲み会に執拗に誘い、断ると不機嫌になる・評価に影響をちらつかせる
- 『その服装セクシーだね』『もっと女性らしくしたら?』など容姿コメントを繰り返す
- プライベートな交際関係や性経験について質問
- 出張先のホテルの部屋に呼びつける
- 昇進・昇格の面談で不必要に身体的距離を縮める
- 特定の部下にだけ個人的なプレゼントを贈り、交際を迫る
- 退職を示唆して性的な要求に応じさせようとする
- 性的な冗談やわいせつな話題を頻繁に持ち込む
- 同僚の性的な噂を流す
- 宴会の席で隣に座ることを強制し、身体に触れる
- 更衣室やトイレでの行動について言及
- LINE等で業務と無関係な性的メッセージを送る
- 合コンや交際の強要
- 取引先の担当者が接待の場で身体に触れる
- 顧客が『もっと若い女性に担当を替えて』と要求
- 取引条件と引き換えに個人的な関係を求める
- 訪問先で密室に誘導され、不適切な行為を受ける
- 結婚・出産に関する質問の繰り返し(『結婚はまだ?』『子どもは作らないの?』)
- 容姿に対する『褒め言葉』(『綺麗だね』『痩せた?太った?』)
- 性別に基づく呼称(『女の子』『おじさん』)
- 飲み会での『無礼講』——過度なスキンシップや下ネタ
- 『男らしさ』『女らしさ』の押し付け
- 噂話や陰口——同僚の恋愛関係や私生活について噂を広める
- 女性の上司や同僚から身体に触られる(肩を揉む・腕にしがみつく)
- 『彼女はいるの?』『まだ独身?』とプライベートを詮索
- 『男のくせに』『男らしくない』などジェンダーに基づく否定的発言
- 飲み会で女性社員から抱きつかれたり際どい質問
- 性的な体験について質問・暴露を強いられる
- 男性同士で性的冗談やからかいの対象
- 本人の同意なく性的指向や性自認を周囲に暴露する(アウティング)
- 『ホモ』『レズ』『オカマ』などの差別的呼称
- 性的指向を変えるよう圧力(『治せ』『正常になれ』)
- トランスジェンダーの方に本人が望まない性別として扱う(ミスジェンダリング)
- 性的マイノリティであることを理由に性的行為を強要
- 更衣室やトイレの利用について嫌がらせ
セクハラを生む4つの要因
心理的影響——5つの側面
身体への影響——ストレス反応と健康リスク
心理的ストレスは自律神経系・内分泌系に影響して様々な身体症状を引き起こします(心身相関)。
- 消化器系胃痛、吐き気、食欲不振、過食、下痢、便秘(ストレスによる自律神経の乱れが消化機能に影響)
- 循環器系動悸、胸の締めつけ感、血圧の変動(交感神経の過度な活性化)
- 神経系頭痛、めまい、ふらつき、手足のしびれ(筋緊張と自律神経の不調)
- 筋骨格系肩こり、首の痛み、腰痛、全身の筋肉痛(慢性的な緊張状態による筋肉の硬直)
- 免疫系風邪を引きやすくなる、口内炎、帯状疱疹(ストレスによる免疫機能の低下)
- 皮膚じんましん、肌荒れ、脱毛、かゆみ(ストレスホルモンと免疫の変動)
- その他疲労感、倦怠感、体重の増減(慢性的なストレス状態の全身への影響)
睡眠障害はセクハラ被害者で最も一般的な身体症状の一つです:
- 入眠困難——布団に入っても被害の場面が頭に浮かびなかなか寝付けない、翌日の職場への不安で眠れない
- 中途覚醒——夜中に何度も目が覚める、悪夢で目覚めることも多い
- 早朝覚醒——必要以上に早く目が覚めその後眠れない
- 悪夢——セクハラの場面が夢に繰り返し現れる(PTSDの症状)
- 過眠——精神的疲弊から過度に眠る、布団から出られなくなる
睡眠の問題が2週間以上続く場合は医療機関への受診を検討すべきです。
慢性的な健康への影響(コルチゾールの分泌パターン変化):
- 心血管疾患のリスク増加(高血圧・心臓病)
- 免疫機能の低下による感染症の頻発
- 消化器系の慢性疾患(過敏性腸症候群・機能性ディスペプシア)
- 慢性疼痛(線維筋痛症・慢性腰痛)
- 生殖機能への影響(月経不順・性機能障害)
- 代謝機能の変化(食行動の変化と相まった肥満や栄養不良)
不健康な対処行動(マラダプティブ・コーピング):
- アルコールや薬物の乱用——つらい感情を一時的に麻痺させるため飲酒量増加・処方薬への依存
- 過食や拒食——食行動のコントロールで不安やストレスに対処
- 自傷行為——精神的苦痛を身体的痛みに置き換えて対処
- 社会的引きこもり——人との関わりを避けることで安全確保
- 仕事への過度な没頭(ワーカホリック)——仕事への没頭で被害について考えることを回避
セクハラを規律する法律と法的手段
事業主にセクハラ防止のための雇用管理上の措置を義務化。①方針の明確化と周知・啓発、②相談体制の整備、③事後の迅速かつ適切な対応、④プライバシーの保護等が措置義務として明示。『職場』には事業所内、取引先事務所、出張先、業務で使用する車中、宴会の場も含む。2024年改正でフリーランスへのハラスメント防止措置も義務化。
2020年6月施行の改正法。セクハラを含むハラスメント全般に関する事業主責務を強化。社内方針策定・周知の義務、セクハラ相談を理由とする不利益取扱いの禁止、事業主間の協力義務、労働者の防止への関心・理解の努力義務。2022年4月から中小企業にも全面適用。
不同意わいせつ罪(刑法176条、2023年改正で『同意しない意思を形成・表明・全うすることが困難な状態』でのわいせつ行為が処罰対象)、不同意性交等罪(刑法177条)、迷惑防止条例違反(電車内のつきまとい・盗撮等)、ストーカー規制法違反、リベンジポルノ防止法違反、名誉毀損罪・侮辱罪など。
不法行為に基づく損害賠償(民法709条)——加害者個人への慰謝料や逸失利益請求。使用者責任に基づく損害賠償(民法715条)——雇用主も損害賠償責任。債務不履行に基づく損害賠償(民法415条)——事業主の安全配慮義務違反。被害者は加害者と企業の双方に請求可能。
①社内相談窓口への相談、②都道府県労働局(雇用環境・均等部室)への相談(助言・指導・あっせん/調停を申請可)、③労働審判(原則3回以内の期日で結論)、④民事訴訟、⑤刑事告訴・被害届、⑥弁護士相談(法テラスで無料法律相談)。
被害直後の対処と社内ステップ
証拠の集め方——6つの方法
セクハラ被害を訴える際、証拠の有無は非常に重要です。
メンタルヘルスのセルフケア
回復には時間がかかります。自分自身のメンタルヘルスを大切にすることが重要です。
- 自分を責めない——セクハラの責任は100%加害者にあります
- 感情を抑え込まない——怒り・悲しみ・恐怖は自然な感情
- 信頼できる人とのつながりを維持する
- 日常のルーティン(食事・睡眠・運動)を維持する
- リラクゼーション法(深呼吸・瞑想・ヨガ・ストレッチ)を活用
- 症状が改善しない場合は心療内科・精神科・カウンセラーへ
企業が実施すべき5つの防止対策
- セクハラ防止に関する基本方針の明文化(就業規則やセクハラ防止規程への明記)
- セクハラの定義・具体例・処分内容を明確に記載したガイドライン作成
- 経営トップからの定期的なメッセージ発信(社内報・朝礼・研修)
- 方針の全従業員への周知(掲示・配布・説明会)
- 複数の相談経路の確保(人事部門・外部EAP・社外弁護士、メール・電話・対面)
- 相談担当者の選任と研修(男女両方の担当者配置)
- 匿名相談の仕組み
- プライバシーの保護
- 不利益取扱いの禁止(相談を理由とする不利益)
- 全社員向け研修(定義・種類・具体例・影響、年1回以上)
- 管理職向け研修(部下からの相談対応、予兆の察知、職場環境の維持)
- 新入社員研修
- 相談窓口担当者向け研修(傾聴スキル・事実確認・二次被害防止)
- ケーススタディの活用(実際の事例を題材にしたグループワーク)
- 相談の受付(被害者の話を丁寧に聴き心理的安全を確保)
- 事実関係の調査(被害者・行為者・目撃者からの聞き取り、公正・中立)
- 被害者への配慮措置(配置転換・引き離し・メンタルヘルスケア)
- 行為者への措置(厳重注意、懲戒処分等)
- 再発防止措置(研修実施、職場環境の見直し、相談体制の強化)
- オープンなコミュニケーション(風通しのよい職場)
- 多様性の推進(管理職の性別バランス改善・多様な人材登用)
- 飲み会文化の見直し(参加の事実上の強制をやめる、二次会を控える)
- テレワーク環境でのルール(業務時間外の連絡制限・ビデオ会議のマナー)
- 定期的なアンケート調査(匿名で実態把握)
二次被害(セカンドハラスメント)の定義
二次被害(セカンドハラスメント)とは、セクハラ被害者が被害を訴えた後にさらに受ける不適切な対応や嫌がらせのこと。多くの被害者にとって、元のセクハラと同等あるいはそれ以上に深刻な心理的ダメージを与えます。被害者が声を上げることを抑制する最大の要因の一つで、『氷山の一角』問題(報告されない被害が大多数を占める)の根本原因。セクハラ問題解決のためには二次被害の防止が不可欠です。
二次被害の典型例
- 『あなたにも隙があったのでは?』『服装が挑発的だったのでは?』と被害者の落ち度を指摘(被害者非難・ビクティムブレーミング)
- 『大げさに騒いでいる』『考えすぎ』と被害を矮小化
- 『加害者も悪気はなかった』『冗談が通じないね』と加害者を擁護
- 被害者の性的経歴や私生活を持ち出して信頼性を攻撃
- 被害者を『トラブルメーカー』『面倒な人』として敬遠
- 被害の噂を広めてプライバシーを侵害
- 相談しても真剣に取り合ってもらえない
- 加害者ではなく被害者に配置転換を命じる
- 調査や対応が遅延し被害者が放置される
- 被害者の相談内容が加害者に筒抜けに
- 『円満に解決するために』と被害者に泣き寝入りを求める
- 被害申告後に評価が下がる、昇進が見送られるなどの報復
二次被害を防ぐために
- 相談窓口担当者への専門研修(傾聴・バイアスの認識・二次被害の理解)
- 調査プロセスにおけるプライバシー保護の徹底
- 被害者に対する不利益取扱い禁止の明確化と監視
- 迅速な調査・対応の仕組みづくり
- 全従業員に対する二次被害についての啓発
- 被害者の話を否定せずに聴く(『そうだったんだね』『辛かったね』)
- 被害者を責めない(『あなたは悪くない』というメッセージ)
- アドバイスよりも共感を優先
- 被害者の意思を尊重(対応について強要しない)
- 被害者の情報を第三者に漏らさない
職場以外の4つのセクハラ場面
教師と生徒の明確な権力関係から発生しやすい環境。教師から生徒、スクールカウンセラーやコーチから、生徒間も。
- 教師が生徒の容姿について不適切なコメント
- 部活動の顧問が指導の名目で不必要に身体に触れる
- 進路指導や成績評価を利用して個人的関係を迫る
- 生徒間でのSNSを通じた性的嫌がらせや画像共有
- 大学研究室における教授から学生へのセクハラ(アカデミック・ハラスメントの一形態)
患者・利用者からスタッフへ、スタッフ間でも。身体的ケアの性質上、身体接触の境界が曖昧になりやすい。
- 患者が看護師に性的発言・身体に触れる
- 入浴介助や排泄介助の際の不適切な言動
- 訪問介護で一人訪問時にセクハラ
- 医師が患者に必要以上の身体的接触
- 医療チーム内での性的冗談や差別的発言
採用権限を持つ企業担当者と就活学生の極端な力の非対称性。2020年厚労省調査で約4人に1人が経験。
- OB・OG訪問の場での不適切な言動
- 面接で結婚予定や出産計画について質問
- 企業説明会後に個人的連絡先を聞かれ食事に誘われる
- インターンシップ中の性的な言動
- 内定を条件に個人的関係を求められる
雇用関係がないため従来の労働法による保護が及びにくく、取引先との力関係から声を上げにくい。
- クライアントとの打ち合わせの場での性的言動
- 仕事の発注を条件に個人的な関係を求められる
- 契約交渉の場で性的冗談や不適切な接触
- オンラインでのやり取りの中での性的メッセージ
- 2024年11月施行『フリーランス保護法』でハラスメント防止措置が発注者の義務に
加害者を理解するための3つの観点
- 権力の誇示欲求——他者を支配・コントロールすることで優越感
- 認知の歪み——『相手も嫌がっていない』『冗談として受け止めている』『これくらい普通』
- 共感性の欠如——他者の気持ちや立場を想像する能力が低い
- 性的客体化の傾向——他者を性的対象としてのみ捉える
- ストレスの転嫁——仕事や私生活でのストレスをセクハラで発散
- 世代・環境による認識の差——『昔はこんなの当たり前だった』
- コミュニケーションの誤解——『親しさの表現』『場を盛り上げるための冗談』のつもり
- 相手の反応の読み違い——笑顔で応対=『嫌がっていない』と解釈(実は力関係で表明できないだけ)
- 『褒めている』という正当化——『綺麗だね』『スタイルがいい』も容姿への不要なコメントはセクハラに
- 事実の認識——行為がセクハラであったこと、被害者への影響を明確に伝える
- 適切な処分——行為の重大性に応じた懲戒(厳重注意・減給・降格・懲戒解雇)
- 再発防止のための教育——セクハラに関する教育・カウンセリング
- 行動変容の支援——コミュニケーションスキル、共感性のトレーニング、ストレスマネジメント
- フォローアップ——処分後も定期的に面談、行動改善が維持されているか確認
セクハラ被害からの回復のプロセス
回復の3段階、専門家による治療、日常生活のセルフケア、心的外傷後成長(PTG)まで——心の傷を癒し自分を取り戻すプロセスを解説します。
回復の3段階
回復は一直線ではなく前進と後退を繰り返しながら徐々に改善に向かうプロセス。一般的に以下3段階を辿ります。
専門家による治療・カウンセリング——6つの選択肢
被害体験で形成された否定的思考パターン(『自分が悪い』『誰も信用できない』)を識別し、より適応的な思考に置き換える。エビデンスに基づいた効果的な治療法。
トラウマ記憶の処理を促進する技法。眼球運動を用いてトラウマ記憶に伴う苦痛を軽減。
トラウマ体験に焦点を当てた認知行動療法。段階的なアプローチでトラウマ記憶と向き合い処理。
安全な治療関係の中で被害者の感情を受け止め、自己肯定感の回復を支援。『あなたは悪くない』というメッセージを伝える。
同様の体験をした人々との交流を通じて孤立感を軽減し回復を促進。『自分だけではない』という気づきが大きな力に。
うつ症状・不安症状・PTSDの症状が強い場合、抗うつ薬・抗不安薬などが併用される。精神科医による処方と管理のもとで。
日常生活での回復を支えるセルフケア
- 規則正しい生活リズム(決まった時間に起きる・食事・運動)
- 身体的なケア(ウォーキング・ヨガ・水泳など適度な運動)
- マインドフルネス(『今この瞬間』に意識を集中させる瞑想)
- ジャーナリング(日記)——感情や考えを書き出し整理
- 趣味や楽しみの時間
- 自然との接触(自然の中で過ごす時間はストレスを軽減)
- 境界線の設定——自分が快適と感じる範囲を明確に、超える要求には『ノー』
サバイバーからスライバーへ(心的外傷後成長)
回復が進むと『サバイバー(生き延びた人)』から『スライバー(力強く成長する人)』へ変化する方も。心理学でいう『心的外傷後成長(Post-Traumatic Growth:PTG)』と呼ばれる現象です。
- 人間関係の変化——真に信頼できる人との絆がより深まる
- 新しい可能性の発見——困難を乗り越えた経験から新しい目標や活動
- 個人としての強さの認識——『自分は思っていたよりも強い』という自己効力感
- 精神性・人生観の変化——人生で本当に大切なことへの気づき
- 社会への貢献——自分の経験を活かし他の被害者の支援や社会変革に取り組む
心的外傷後成長はすべての被害者に起こるわけではなく、成長が見られないからといって問題があるわけでもありません。また、成長があったからといって被害の苦痛が帳消しになるわけでもない。重要なのは回復のプロセスの中で自分なりの意味や前に進む力を見つけていくことです。
公的機関の相談窓口
- 都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)各都道府県の労働局に設置/職場のセクハラ相談、助言・指導・調停(あっせん)
- 総合労働相談コーナー各都道府県の労働局・労働基準監督署内/あらゆる労働問題に関する無料相談
- 女性の人権ホットライン0570-070-810/女性に対するセクハラ・暴力など人権に関する相談
- みんなの人権110番0570-003-110/人権問題に関する相談(性別を問わず)
- 法テラス(日本司法支援センター)0570-078374/法的な問題に関する無料相談、弁護士の紹介
- 警察相談専用電話#9110/犯罪被害に関する相談、緊急の場合は110番
- 配偶者暴力相談支援センター各都道府県に設置/配偶者やパートナーからのセクハラ・DVに関する相談
- 性暴力被害者ワンストップ支援センター#8891/性暴力被害に関する相談、医療・法律・心理的支援
民間の支援団体・相談窓口
- ココトモチャットで無料相談が可能。メンタルヘルスに関する悩みを匿名で相談できる
- NPO法人 労働相談センター職場のハラスメントに関する無料の電話・メール相談
- よりそいホットライン0120-279-338(24時間無料)。DVやセクハラを含む様々な悩みの相談
- いのちの電話0120-783-556(24時間無料)。精神的に追い詰められている方の相談
- NPO法人 ヒューマンライツ・ナウセクハラを含む人権侵害に対する法的支援と啓発活動
- 各地域の弁護士会初回無料の法律相談を実施している弁護士会も多い
相談する際のポイント
- 事実を時系列で整理する(いつ・どこで・誰から・どのようなセクハラを受けたか)
- 証拠を持参する(メモ・メール・録音、なくても相談は可能)
- 自分の希望を考えておく(『加害者をやめさせたい』『配置転換してほしい』『損害賠償を求めたい』)
- 相談先を複数持つ(一つの相談先で十分な対応が得られなかった場合は別の機関にも)
- メンタルヘルスのケアも忘れずに(法的対応だけでなく心理的サポートも同時に)
8のよくある質問
A. はい、証拠がなくても相談は可能です。相談窓口や弁護士は証拠の有無にかかわらず相談を受け付けます。まずは被害の事実を伝えることが大切です。相談の過程で今後の証拠の集め方についてもアドバイスを受けられます。被害者本人の証言も重要な証拠の一つです。被害の詳細を日時や場所とともにメモしておくことをおすすめします。
A. はい、セクハラを拒否したことを理由とした不利益な取扱い(評価の引き下げ・配置転換・降格など)は男女雇用機会均等法に違反します。これは典型的な『対価型セクハラ』であり法的に保護されるべき事案です。都道府県労働局や弁護士に相談し、適切な対応を取ることをおすすめします。
A. はい、セクハラは性別に関係なく発生します。男性から男性へ、女性から男性へ、女性から女性へのセクハラも法律上の保護対象です。男性の被害者は『男性がセクハラ被害を受けるはずがない』という社会的偏見から声を上げにくい傾向がありますが、被害は正当に認められるべきものです。男性も遠慮なく相談窓口を利用してください。
A. 『平均的な労働者の感じ方』を基準とした客観的評価と、被害者の主観的な感じ方の両方が考慮されます。行為の内容と重大性、反復性、行為者と被害者の関係性、行われた状況・文脈、被害者の反応と行為者の対応などが総合的に判断されます。1回の行為でも重大なもの(身体接触など)はセクハラに該当し得ます。
A. 会社がセクハラの相談に対して適切な対応を取らない場合、それ自体が男女雇用機会均等法に違反する可能性があります。次のステップとして、①都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談、②労働局に助言・指導・調停(あっせん)を申請、③弁護士に相談して法的手段を検討、などの対応が考えられます。会社の対応(または不対応)の記録を保存しておくことも重要です。
A. セクハラの処分内容は行為の重大性・反復性・影響の程度などによって異なります。軽微な場合は注意や指導にとどまることもありますが、重大なケースでは懲戒処分(減給・降格・諭旨退職・懲戒解雇など)が行われます。犯罪に該当する行為(不同意わいせつなど)については刑事罰の対象。民事上では損害賠償(慰謝料)の請求が可能です。
A. 取引先からのセクハラも均等法の保護対象です。まず自社のハラスメント相談窓口に報告してください。会社には取引先に対して事実確認と是正を求め、被害者を保護する義務があります。取引先の企業にも自社の従業員のセクハラ防止措置義務があるため、取引先への申し入れも有効です。一人で解決しようとせず組織的な対応を求めることが重要です。
A. はい、セクハラ被害はPTSD(心的外傷後ストレス障害)を引き起こすことがあります。特に身体的接触を伴う重度のセクハラや長期間にわたるセクハラはPTSDのリスクを高めます。フラッシュバック・悪夢・回避行動・過覚醒などの症状が見られた場合は精神科や心療内科を受診してください。PTSDは適切な治療によって改善が見込める疾患です。
一人で抱え込まないで。
相談してみませんか。
セクハラは深刻な人権侵害です。あなたが感じた不快感は正当なもの。どうかあなたの大切な悩みをココトモに聞かせていただきたいです。
このページの情報は、医師による診断や治療に代わるものではありません。症状が気になる場合は、心療内科・精神科への受診をご検討ください。
