メンタルヘルス用語辞典 · ストーキング被害

ストーキング被害とは?
症状・法律・対処法・回復を徹底解説

ストーキング被害は年間約2万件もの相談が寄せられる深刻な問題です。つきまとい・監視・執拗な連絡・サイバーストーキングなど被害の種類から、心理的影響(PTSD・うつ)、ストーカー規制法(2025年改正対応)、警察への相談手順、日常の安全対策、治療とメンタルケア、支援制度まで、被害者・支援者・周囲の方に必要な情報をすべてまとめました。

ABOUT STALKING VICTIMIZATION

ストーキング被害とは——日常を脅かす深刻な犯罪

ストーキング被害は、特定の人物からの執拗なつきまとい・連絡・監視などの行為により、被害者の生活・精神・身体に深刻な影響をもたらす問題です。日本では年間約2万件もの相談が警察に寄せられており、決して他人事ではない身近な問題です。

定義

ストーキング被害の定義——ストーカー規制法が定める行為

「ストーキング」とは、特定の人物(またはその関係者)に対して、恋愛感情その他の好意の感情、またはそれが満たされなかったことへの怨恨の感情を充足する目的で、一定の行為を繰り返し行うことを指します。日本では2000年に制定された「ストーカー行為等の規制等に関する法律(ストーカー規制法)」により、こうした行為が規制されています。

ストーカー規制法では、つきまとい・待ち伏せ・押し掛け、監視していると告げる行為、面会・交際の要求、乱暴な言動、無言電話・連続した電話・FAX・メール・SNSでの連絡、汚物等の送付、名誉を傷つける行為、性的羞恥心を害する行為、GPS機器等を用いた位置情報の取得という10類型の行為を「つきまとい等」として規制しています。2025年の改正では、紛失防止タグ(AirTagなど)を無断で取り付けたり利用したりする行為も規制対象に加わりました。

日常的な行為
一般的なコミュニケーション
気になる相手に連絡を取ること、会いたいと伝えること自体は日常的なコミュニケーションです。問題となるのは「繰り返し」「拒絶されても続ける」「複数の手段を組み合わせて追い詰める」という点です。
ストーキング被害
生活を脅かす執拗な行為
明確に拒絶しても繰り返し接触・連絡を試みる、監視する、情報を無断で収集する、恐怖を与える言動をするなど、相手の意思を無視した執拗な行為です。被害者に深刻な恐怖と生活制限をもたらします。
⚠️
「好意」は免罪符にはなりません「好きだからやっている」「相手のためを思っている」という加害者側の主張は、ストーカー行為の正当化には全くなりません。相手が恐怖を感じたり、日常生活に支障が出たりしている時点で、それは被害です。あなたが恐怖を感じているなら、それは正当な被害です。
統計データ

ストーキング被害の実態——警察庁データ

警察庁の統計によると、ストーキング被害に関する相談は年間約2万件と高い水準で推移しており、2023年の相談件数は19,843件(前年比721件増)を記録しました。検挙件数も増加傾向にあり、2024年は1,341件と過去最多を更新しています。

19,843
2023年のストーカー被害相談件数(警察庁)。年間約2万件の高水準が続く
1,341
2024年の検挙件数(過去最多)。前年比24%増で深刻さが増している
2,415
2024年の禁止命令等の件数。初めて2,000件を超え、対策強化が進んでいる
47.6%
被害者と加害者の関係で最多の「交際相手・元交際相手」の割合(警視庁データ)
ストーカー被害の90%近くは、つきまとい・面会要求・無言電話等という3つの行為形態が占めています。被害は「特別な事情がある人」だけに起きるのではなく、交際・別れ・片思いなど誰もが関わりうる日常的な人間関係から始まることが多いのが特徴です。
加害者との関係

誰がストーキング被害を受けるのか——被害者と加害者の関係

ストーキング加害者は「見知らぬ不審者」というイメージがありますが、統計上は顔見知りからの被害が圧倒的に多数です。警視庁の統計では、加害者との関係で最も多いのは「交際相手・元交際相手」で47.6%を占めています。

交際相手・元交際相手 (最多)
47.6%
知人・友人 (職場・学校等含む)
約15%
配偶者・元配偶者 (DVと重複する場合も)
約8〜10%
面識なし (SNS等での出会いも含む)
約8.4%
その他 (隣人・サービス業での接触等)
約20%

被害者の性別については、女性が被害者全体の約80%を占めており(警察庁データ)、20〜30代の若い世代に特に多い傾向があります。ただし、男性被害者も一定数存在しており、男性被害者は周囲に打ち明けにくく、相談が遅れる傾向があることに注意が必要です。

💡
元交際相手からの被害は特に危険性が高い別れた後に始まる「復縁目的のストーキング」は、加害者が被害者の自宅・職場・行動パターンを熟知しているため、逃げにくく非常に危険です。「一度会えば解決する」という発想は通用しないことが多く、むしろ危険性を高めます。早期に警察に相談し、専門家の支援を受けることが重要です。
受診・相談の目安

こんな状況なら今すぐ相談を

以下のような状況に当てはまる場合は、一人で抱え込まず、警察や相談窓口に連絡してください。「まだ大丈夫」「大げさかな」と思って放置すると、被害がエスカレートする危険があります。

  • つきまとい、待ち伏せ、無断の接触を繰り返される
  • 電話・メール・SNSで執拗な連絡が来て、精神的に追い詰められている
  • 恐怖から外出・通勤・通学が困難になっている
  • 被害がいつ起こるかわからない不安で眠れない日が続いている
  • フラッシュバックや悪夢で被害場面が繰り返しよみがえる
  • 「逃げ切れない」「誰も助けてくれない」という無力感が強い
  • 体調不良(頭痛・食欲不振・動悸など)が続いている
  • !自分を傷つけたい気持ちや死にたいという気持ちがある
⚠️
死にたい気持ちが出てきたらストーキング被害の極度のストレスから、死にたいという気持ちが生じることがあります。その場合は、すぐにいのちの電話(0120-783-556)またはよりそいホットライン(0120-279-338)に連絡してください。あなたの命はかけがえなく、助けを求めることは正しい行動です。
TYPES OF STALKING

ストーキング被害の6つのパターン

ストーキング被害は一種類だけではありません。複数のパターンが組み合わさって起こることも多く、時間とともにエスカレートする危険があります。早期に気づき、適切に対処することが重要です。

6つのパターン

ストーキング被害の代表的な6つのパターン

ストーカー規制法では10類型の行為を規制していますが、実際の被害は複数のパターンが重なって現れることが多いです。以下に代表的な6つのパターンを解説します。被害が複数のパターンにまたがっている場合、加害者の執着の強さを示しており、危険度が高いと考えられます。

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つきまとい・待ち伏せ型
自宅・職場・学校・よく行く場所などで待ち伏せしたり、後をつけてきたりする行為です。「偶然を装う」形で繰り返し接触しようとするケースが多く、被害者に強い恐怖と緊張を与えます。外出が困難になり、日常生活が制限されてしまいます。毎日の通勤路や買い物先でも安心できなくなるため、精神的消耗が激しいタイプです。加害者は被害者を「見ているだけ」と言い訳することもありますが、それ自体が重大なプライバシー侵害です。
最も多いタイプ物理的接触リスク高生活制限が深刻
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連絡・メッセージ執拗型
電話・メール・SNS・手紙などで何度も連絡を送り続ける行為です。1日に何十件もの着信や、夜中の無言電話、脅迫的な内容のメッセージなどが繰り返されます。ブロックしても別のアカウントや電話番号から連絡してくるケースも多く、デジタルデバイスが「恐怖の道具」となります。2025年のストーカー規制法改正で、SNSでの執拗なメッセージ送信なども規制対象として明確化されています。
SNS・電話・メールブロック後も継続24時間の恐怖
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監視・尾行型
被害者の行動パターンを調べ上げ、GPS機器を無断で取り付けたり、紛失防止タグ(AirTagなど)を所持品や車に隠したりして位置情報を追跡する行為です。2024年には紛失防止タグ悪用に関する警察相談が370件(前年比約2倍)に急増し、2025年の法改正で明確に規制対象になりました。自分の居場所が常に監視されている恐怖は、被害者に強い無力感と不安を与えます。
GPS・AirTag悪用2025年改正で規制常時監視の恐怖
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要求・交際強要型
面会・交際・性的行為などを繰り返し執拗に求める行為です。「1回だけ会ってほしい」という一見穏やかな要求から始まり、断られると脅迫的な言動に変わるケースが多いです。元交際相手による「復縁要求」がこのタイプに多く、被害者が拒否するたびにエスカレートする危険性があります。被害者は断ることへの罪悪感を持たされる場合もありますが、どんな理由があっても要求を受け入れる義務はありません。
復縁要求が多いエスカレートリスク罪悪感の植え付け
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サイバーストーキング型
インターネット上でSNSへの誹謗中傷コメントの繰り返し投稿、個人情報の無断拡散(さらし行為)、被害者を装ったなりすましアカウントの作成、家族や友人への嫌がらせなどを行う行為です。ネット上の攻撃は拡散力が高く、被害者の評判や人間関係を破壊する危険があります。また、被害者が「デジタル空間でも安全でない」と感じることで、孤立が深まりやすいのが特徴です。
SNS・ネット上の攻撃拡散力が高い孤立を深める
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名誉毀損・中傷型
被害者の名誉を傷つけるような内容を職場・学校・近隣・インターネット上で流布する行為です。虚偽の情報や性的な内容の投稿・送付なども含まれます。被害者の社会的信用を失墜させることで「孤立させる」ことを目的とするケースもあります。職場や家族に嘘の情報を流されることで、被害者は二次的な被害(人間関係の破壊)にも苦しめられます。
職場・家族への嫌がらせ虚偽情報の流布社会的孤立
エスカレーションの警告サイン

被害が深刻化する前に気づくための警告サイン

ストーキング被害は最初は「ちょっと気になる行動」から始まり、徐々にエスカレートするパターンが多いです。以下の警告サインに気づいたら、早期に対応することが重要です。

🔁
しつこい連絡が始まる
断った後も繰り返し連絡してくる、ブロックしても別の方法で連絡してくる。この段階で毅然と拒絶の意思を示すことが重要です。
📍
「偶然」の出会いが増える見逃しやすい
通勤路・行きつけの店・友人の集まりなど、様々な場所で「偶然」会う回数が増える。尾行や監視の可能性があります。
💌
贈り物・手紙の送付見逃しやすい
断っても一方的に贈り物や手紙を送り続ける。善意に見えるが、被害者の情報を把握していることを示すサインでもあります。
😠
断ると怒りや脅しに変わる
「会ってくれないなら何をするかわからない」「一生後悔させる」などの脅迫的な言葉が出始めたら、危険性が高まっているサインです。
📷
SNSへの異常なアクセス見逃しやすい
自分のSNS投稿へ毎回すぐに反応する、知らない人が自分の情報を詳しく知っているなど、SNSを通じた監視の可能性があります。
🌐
周囲の人への接触
家族・友人・職場の同僚に接触して被害者の情報を聞き出そうとする行動は、ストーキングが本格化しているサインです。
⚠️
「どうせ何もしてこない」は危険な楽観視「脅すだけで実際には何もしてこないだろう」という判断は非常に危険です。ストーキング被害は段階的にエスカレートする傾向があり、無視・放置するほど加害者の行動が激化するケースが多いです。脅迫的な言動が始まったら、すぐに警察に相談してください。
ストーキング被害は「受けている側の問題」ではありません。どんな過去の関係があったとしても、相手が「やめてほしい」と意思表示しているにもかかわらず行動を続けることは、法的にも道義的にも許されません。被害者は断固として支援を求める権利があります。
PSYCHOLOGICAL IMPACT

ストーキング被害が心と体に与える影響

ストーキング被害は被害者の精神的・身体的健康に深刻な影響を与えます。「まだ被害は軽い」と思っている方も、心身に現れているサインを見逃さないようにしましょう。

心身への影響

ストーキング被害が引き起こす8つの心身の影響

ストーキング被害は、急性のストレス反応からPTSD・うつ・身体症状まで、幅広い心身の不調を引き起こします。一つでも当てはまるサインがあれば、軽視せず専門家に相談してください。

😰
慢性的な恐怖と不安
加害者が「いつ現れるかわからない」という予測不可能な恐怖は、被害者に絶え間ない緊張状態をもたらします。外出中はもちろん、自宅にいても「見られているのでは」という不安が消えません。この慢性的な恐怖は、身体的にも精神的にも大きな消耗をもたらします。研究では、ストーキング被害者の80%以上が日常生活に重大な支障をきたしていることが報告されています。
🧠
PTSD(心的外傷後ストレス障害)
ストーキング被害はPTSDの主要な原因の一つです。被害者はフラッシュバック(加害者との遭遇場面が突然よみがえる)、悪夢、回避行動(特定の場所や状況を避ける)、過覚醒(常に警戒している状態)などの症状を経験します。被害が終わってからも長期にわたってPTSD症状が継続するケースも多く、専門的な治療が必要です。
😔
うつ病・抑うつ状態
無力感、将来への絶望感、日常活動への興味喪失などのうつ症状が現れやすいです。「どうせ助けてもらえない」「自分が悪いのかもしれない」という思考パターンに陥ることがあります。ストーキング被害者の研究では、被害者の約50〜60%がうつ病または抑うつ状態を経験することが示されています。
🔒
社会的孤立
被害者は加害者との接触を避けるために外出を控え、友人・家族との交流を制限するようになります。「巻き込みたくない」「信じてもらえないのでは」という思いから、被害を周囲に打ち明けられないことも多く、孤独感が深まります。社会的孤立はさらにうつや不安症状を悪化させる悪循環につながります。
😴
睡眠障害
不眠・悪夢・過眠(疲弊から眠り続けてしまう)などの睡眠障害が高頻度に現れます。夜中の電話やSNS通知への恐怖から、睡眠中もスマートフォンを手放せなくなる被害者も多いです。慢性的な睡眠不足は免疫機能の低下、集中力の減退、感情コントロールの困難などを引き起こし、日常生活全体に支障をきたします。
💔
自己信頼感・自尊心の低下
「なぜ自分がこんな目に遭うのか」「自分に非があったのではないか」という自責感が被害者を苦しめます。また、加害者による精神的操作(「お前が悪い」「大げさだ」などの言葉)によって自己評価が著しく低下するケースもあります。自尊心の低下は、助けを求めることを妨げる大きな障壁となります。
🌊
解離症状
ストーキング被害に伴う極度のストレスは、解離症状(現実感の喪失、感情の麻痺、記憶の空白など)を引き起こすことがあります。これは心が耐えられないほどのストレスから自分を守ろうとする防衛反応です。解離症状は日常生活や対人関係に深刻な影響を与えるため、専門家による評価が重要です。
🏥
身体的健康への影響
慢性的なストレスは免疫機能を低下させ、頭痛・胃腸障害・疲労感・食欲不振・動悸などの身体症状として現れます。「なんとなく体調が悪い」という状態が続くことで、仕事や学業のパフォーマンスも大幅に低下します。ストレスが身体に及ぼす悪影響は、被害が続くほど蓄積されていきます。
💡
こんな感情は、あなたが弱いからではありません恐怖、不安、無力感、抑うつ——これらはすべてストーキングという重大なストレスに対する自然な反応です。「もっと強くならなければ」「なぜこんなことで不安になるのか」と自分を責める必要は全くありません。あなたの感情は正当です。
PTSDについて

ストーキング被害とPTSD——深刻な心の傷

ストーキング被害はPTSD(心的外傷後ストレス障害)の主要な原因の一つです。PTSDは、生命の危機を感じるような恐怖体験の後に発症する精神疾患で、ストーキング被害という「いつ何が起こるかわからない慢性的な脅威」は、PTSDを引き起こす典型的な状況と言えます。

ストーキング被害者に現れるPTSD症状には、フラッシュバック(加害者に遭遇した場面や被害内容が突然リアルに頭によみがえる)、悪夢(被害に関する悪夢を繰り返し見る)、回避(加害者に会った場所・似た状況・話題を徹底的に避ける)、過覚醒(常に周囲を警戒し、些細な物音や人影に過剰に反応する)、感情の麻痺(感情が湧かなくなる、楽しいことが楽しくない)などが含まれます。

  • フラッシュバック:被害場面が突然・リアルによみがえり、今もその場にいるかのような感覚になる
  • 悪夢:毎晩のように加害者や被害状況に関する悪夢を見て目が覚める
  • 過覚醒:後ろを歩く足音、似た体型の人影だけで強い恐怖反応が起きる
  • 回避:被害のあった場所・加害者と似た外見の人・関連する話題を徹底的に避ける
  • 感情の麻痺:これまで楽しかったことへの興味が消え、感情全体が鈍くなる
  • 集中困難:常に警戒しているため、仕事・勉強への集中が著しく困難になる
PTSDは治療できますストーキング被害後のPTSDは、適切な治療(トラウマ焦点化認知行動療法・EMDR等)によって大幅に改善することが可能です。「ずっとこのままかもしれない」と絶望しないでください。専門家の助けを借りることで、多くの方が回復への道を歩んでいます。
慢性ストレスの影響

長期間のストーキング被害が引き起こす慢性ストレスの深刻さ

ストーキング被害の特徴の一つは、「いつ何が起こるかわからない」という予測不可能な恐怖が長期間続くことです。この慢性的なストレス状態は、脳と身体の両方に深刻な悪影響をもたらします。

人間の身体は、危険を感じると「戦うか逃げるか(Fight or Flight)」の反応として、コルチゾールやアドレナリンなどのストレスホルモンを放出します。これは短期的には生存に役立つ反応ですが、ストーキング被害のように慢性的にこの状態が続くと、免疫機能の低下、心血管系への負荷、海馬(記憶・学習に関わる脳領域)の萎縮、感情調節機能の障害などが引き起こされます。

80%以上
ストーキング被害者の80%以上が日常生活(仕事・学業・対人関係)に重大な支障を経験
50〜60%
被害者の約50〜60%がうつ病または抑うつ状態を経験するという研究報告
長期継続
被害終了後もPTSD症状が長期間持続するケースが多く、早期治療が重要
「被害が続いているのに、なぜ自分はこんなに疲れているのか」と自分を責める必要はありません。慢性的な恐怖とストレスが身体を消耗させているのは、自然な生理的反応です。早期に安全を確保し、専門的な支援につながることが、心身の回復への第一歩です。
LEGAL FRAMEWORK

ストーカー規制法と法的手続き——あなたを守る法律

日本では2000年に制定されたストーカー規制法が、ストーキング被害から被害者を守るための法的枠組みを提供しています。2025年の改正でさらに強化された法律と、実際に使える法的手続きについて解説します。

法律の歴史

ストーカー規制法の歴史と2025年改正

ストーカー規制法(ストーカー行為等の規制等に関する法律)は、2000年11月に施行されました。制定の背景には、1999年に起きた桶川ストーカー殺人事件をはじめとする深刻なストーキング犯罪の増加がありました。それ以降、社会情勢やストーキングの手口の変化に合わせて複数回の改正が行われてきました。

特に重要な改正のポイントを年代順にまとめると、2013年改正ではストーカー行為の規制対象に「電子メールによる執拗な送信行為」が追加されました。2016年改正では「SNS等でのメッセージ送信」「文書の送付」が追加され、デジタル時代のストーキングへの対応が強化されました。2021年改正では「GPS機器等を用いた位置情報の取得」が規制対象に加えられました。そして2025年改正では、「紛失防止タグ(AirTagなど)の無断取り付け・悪用による位置情報取得」が明確に規制対象に加わり、警察の職権による警告発出も可能になりました。

📜
2025年改正ストーカー規制法の主なポイント
  • 紛失防止タグ(AirTagなど)の無断取り付けや悪用による位置情報の追跡が規制対象に追加
  • 被害者の申出がなくても、警察が職権で加害者への警告を発することができるように
  • 情報提供先がストーカーであることを知りつつ被害者の情報を提供する者への禁止要請制度の新設(令和8年3月10日施行)
  • 禁止命令等の対象行為が拡大され、より幅広い状況でストーカー行為を取り締まれるよう
法律は「被害者が申出なければ動けない」という限界がありましたが、2025年の改正でその壁が低くなりました。「警察に相談しても何もしてくれない」という過去の経験をお持ちの方も、改正後の新しい制度を活用してください。
法的手続き

ストーキング被害を受けた場合の法的手続きの流れ

ストーキング被害を受けた場合、以下の手順で法的対応を進めることができます。一人で対応しようとせず、警察・弁護士・支援センターなどの専門機関に相談しながら進めることが重要です。

STEP 1
警察への相談
まず地元の警察署または#9110(警察安全相談電話)に相談しましょう。被害状況を説明し、被害届の提出や警告・禁止命令の申請について案内してもらえます。2025年の法改正で、警察は被害者の申出なしでも職権で警告を発することができるようになりました。
最初の相談先
STEP 2
証拠の収集と保全
被害記録を詳細につけましょう。日時・場所・具体的な行為内容・目撃者の有無をメモに残し、メール・SNSのスクリーンショット、着信履歴、手紙・贈り物などを保存します。GPS機器などが見つかった場合は素手で触らず、そのまま警察に見せましょう。証拠が多いほど法的対応が取りやすくなります。
重要:廃棄しないこと
STEP 3
警告(行政指導)
警察が調査の結果、ストーカー行為等に該当すると判断した場合、加害者に対して警告を発します。2025年の法改正前は被害者の申出が必要でしたが、改正後は警察の職権でも発することができます。警告は禁止命令より手続きが簡素で早期対応できる行政指導ですが、法的拘束力という面では禁止命令より弱いです。
迅速に対応可能
STEP 4
禁止命令(行政処分)
警告に従わない、または緊急性が高い場合は、都道府県公安委員会から禁止命令が出されます。禁止命令は法的拘束力があり、違反した加害者は2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金が科されます。2024年には全国で初めて禁止命令が年間2,000件を超え2,415件に達しました。
法的拘束力あり
STEP 5
被害届・刑事告訴
ストーカー行為が刑事罰の対象となる行為(ストーカー行為等の規制等に関する法律違反)にあたる場合、被害届を提出するか刑事告訴できます。ストーカー行為そのものへの罰則は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。2024年の検挙件数は1,341件で過去最多を記録しています。
検挙件数過去最多
STEP 6
接近禁止命令(民事)
裁判所に申し立てることで、DV防止法に基づく接近禁止命令(保護命令)が発令される場合があります。また、損害賠償請求など民事上の対応も可能です。弁護士や法テラスに相談することで、最適な法的手段を検討できます。
民事でも対応可能
💡
証拠の収集が法的手続きの鍵警察や裁判所が動くためには証拠が必要です。被害に遭ったら、日時・場所・具体的な行為内容をメモし、メッセージ・着信履歴・手紙・監視に使われた機器などをすべて保存しておきましょう。証拠が多いほど、迅速な法的対応が可能になります。
罰則

ストーカー規制法違反の罰則——加害者への法的制裁

ストーカー規制法は段階的な規制と罰則を設けています。行政指導(警告)→行政処分(禁止命令)→刑事罰(検挙・起訴)という段階で対応が強化されます。

警告
警察本部長等が発出
行政指導(法的拘束力なし)。被害状況の調査後、加害者に対して警察が発出します。
禁止命令等
都道府県公安委員会が発出
行政処分(法的拘束力あり)。違反すると刑事罰の対象となります。
禁止命令違反
刑事裁判
2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金。
ストーカー行為罪
刑事裁判
1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金。
脅迫・傷害等を伴う場合
刑事裁判
各罪の法定刑(より重い処罰)が適用されます。
⚠️
危険を感じたら迷わず110番を緊急の危険を感じる場合(加害者が今まさに追ってきている、自宅の外にいるなど)は、#9110ではなく110番(緊急)に電話してください。ストーキングは「命に関わる犯罪」である可能性があります。身の安全を最優先にしてください。
WHAT TO DO

ストーキング被害を受けたときの対処法

「どうしたらいいかわからない」という状況で、何から手をつければいいかを分かりやすく解説します。一人で解決しようとせず、適切な支援機関につながることが最も重要な第一歩です。

まずやること

被害に気づいたらまず行動すべき5つのこと

ストーキング被害に気づいたとき、多くの方が「大げさかもしれない」「自分で何とかできるはず」と思ってしまいます。しかし、ストーキング被害は時間が経つほどエスカレートするリスクが高く、早期の行動が重要です。以下の5つを最初に行いましょう。

1
毅然と拒絶の意思を示す(最初の一度だけ)
加害者に対し、「これ以上の連絡・接触は一切お断りします」と明確に伝えます。ただし、これは一度だけで十分です。それ以降は一切応じず、無視することが重要です。「話し合えばわかる」という姿勢で何度も対話しようとすると、かえって加害者の行動を強化してしまいます。
2
記録をつける
被害の日時・場所・具体的な行為・加害者の言動・目撃者の有無を詳細に記録しましょう。メール・SNSのスクリーンショット、着信履歴、手紙・贈り物、監視機器なども保存・証拠として保管します。このメモと記録が後の警察相談や法的手続きで大きな力を発揮します。
3
警察または相談窓口に連絡する
最寄りの警察署または#9110(警察安全相談電話)に相談しましょう。「警察に行っても何もしてくれない」と思っている方も、2025年の法改正で警察の対応権限が強化されています。被害が軽微に見えても、相談することで記録が残り、後の対応に役立ちます。
4
信頼できる人に状況を伝える
家族・友人・職場の信頼できる人に現状を伝えましょう。孤立することは危険を高めます。「巻き込みたくない」という気持ちはわかりますが、サポートネットワークを持つことは安全確保において非常に重要です。加害者から自分の情報を聞かれても教えないよう、周囲に伝えておきましょう。
5
安全計画を立てる
緊急時にどこに逃げるか、誰に連絡するか、何を持ち出すかを事前に計画しておきます。警察や支援センターと相談しながら「安全計画(セーフティプラン)」を作成しておくことで、予期しない事態にも冷静に対応できます。
💡
「無視する」は正しい対応です拒絶の意思を一度明確に伝えた後は、加害者からの連絡・接触を徹底的に無視することが重要です。どんな内容であっても反応してしまうと、「反応させられた=まだ可能性がある」と加害者が受け取り、行動が強化されてしまいます。電話・メール・SNSはブロックし、応じないことを徹底してください。
安全確保

日常生活での具体的な安全確保の方法

被害が続いている間、日常生活での安全を確保するための具体的な方法を紹介します。完璧にすべて実行することは難しいかもしれませんが、できることから少しずつ取り組んでいきましょう。

📱
緊急連絡先をすぐ呼び出せるようにする
警察(110番)、信頼できる人(家族・友人)の電話番号を短縮ダイヤルに登録しておきましょう。スマートフォンのSOS機能(電源ボタン5回押しなど)の設定も確認しておくと安心です。位置情報を信頼できる人と共有するアプリも有効です。
🗓
被害日記をつける
被害があった日時・場所・加害者の行動・自分の状態・目撃者の有無などを詳細に記録しましょう。手書きのメモとデジタル記録の両方を残すと安全です。この記録は警察への相談や法的手続きの際に非常に重要な証拠となります。
🏠
自宅の安全を確認する
玄関・窓・駐車場の施錠を徹底し、必要に応じて鍵を交換しましょう。郵便ポストに鍵をかける、宅配ボックスを活用するなども有効です。インターホンの映像記録機能を使うことで、不審者の記録が残せます。自宅周辺に不審な車や人物がいないか注意しましょう。
🛣
行動パターンを変える
通勤・通学の経路、時間帯、よく行く店や施設を時々変えましょう。加害者が行動パターンを把握していると「次の居場所を予測」されてしまいます。できれば複数のルートを用意しておき、毎回ランダムに選ぶことが効果的です。
💻
SNS・デジタルセキュリティを強化する
SNSのプライバシー設定を見直し、位置情報の自動付加をオフにしましょう。知らない人からのフォロー・メッセージは受け付けないように設定します。投稿した写真から自宅や職場の位置が特定されないよう注意が必要です。ストーカーからのアカウントはブロック・通報してください。
🔍
自分の個人情報を点検する
住所・電話番号・勤務先などの個人情報がインターネット上に流出していないか確認しましょう。転居した場合は住民票や各種登録情報の住所変更を速やかに行い、必要に応じてDV・ストーカー被害者向けの住民票閲覧制限制度を利用します。
🧑‍🤝‍🧑
信頼できる人に状況を伝える
被害状況を家族・友人・職場の信頼できる人に伝えておきましょう。孤立することは危険を高めます。「加害者から連絡が来た場合は一緒に考えてほしい」「緊急時に助けてほしい」と具体的にお願いしておくと、サポートを得やすくなります。
🚗
移動中の安全を確保する
夜間や人通りの少ない場所での一人歩きは避け、できる限り複数人で行動しましょう。車移動の際はドアロックを徹底し、駐車場では周囲を確認してから乗降します。電車やバス内では窓際より通路側の席を選ぶと逃げやすいです。不審者を見かけたら迷わず駅員・警備員に声をかけましょう。
住民票閲覧制限制度を活用しましょう転居して新しい住所を知られたくない場合、市区町村役場でDV・ストーカー被害者向けの「住民票閲覧制限(支援措置)」を申請できます。これにより、第三者(加害者を含む)が住民票を取得しても、住所の記載が制限されます。警察や支援センターを通じて申請することができます。
TREATMENT AND HEALING

ストーキング被害後の治療とメンタルケア

ストーキング被害による心の傷(トラウマ)は、適切な治療とサポートによって回復することができます。「もう元の自分には戻れない」と感じている方も、専門的なケアを受けることで大きく改善できます。

治療法

ストーキング被害後のトラウマ治療——エビデンスに基づく方法

ストーキング被害によるPTSD・うつ病・不安障害などは、適切な治療によって大幅に改善することが可能です。治療は必ず「安全の確保」が前提となります。被害が続いている状況では治療の効果が限定されるため、まず安全を確保することが最優先です。

1
トラウマ焦点化認知行動療法(TF-CBT)エビデンスベース
ストーキング被害によるトラウマを段階的に処理するための認知行動療法です。安全の確立から始まり、トラウマ記憶の再処理、否定的な思考パターンの修正、日常生活への再適応という段階で進められます。エビデンスに基づいた有効性が実証されており、PTSDや不安障害、うつ症状の軽減にも効果的です。
2
EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)WHO推奨
トラウマ記憶を安全に再処理するための療法で、眼球運動などの両側性刺激を用いながらトラウマ体験の感情的な負荷を軽減します。ストーキング被害による恐怖体験や侵入的な記憶の処理に有効で、WHOもトラウマ関連障害の治療法として推奨しています。
3
持続エクスポージャー療法(PE)PTSD治療の第一選択
PTSDの治療として高い有効性が示されている療法です。トラウマ記憶を安全な環境で繰り返し語ることで、記憶に伴う強烈な感情反応を徐々に低減させます。また、回避行動(トリガーとなる場所や状況を避けること)を段階的に克服していきます。
4
認知処理療法(CPT)自責感・罪悪感に有効
ストーキング被害に伴う否定的な認知(「自分が悪い」「誰も信じられない」「世界は危険だ」など)を特定し、より現実的でバランスの取れた考え方に修正することを目指します。自責感や罪悪感の処理に特に効果的です。
5
グループ療法・当事者サポート孤立感の解消
同じ被害を経験した人たちが集まり、体験を共有し、互いに支え合うグループ療法です。「一人ではない」という安心感が得られ、孤立感の解消に大きく貢献します。ただし、グループ参加が安全かどうかを事前に支援者と確認することが重要です。
6
薬物療法(補助的)精神療法と組み合わせて
PTSDに伴うフラッシュバックや過覚醒、うつ症状、不安症状には、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などの薬物療法が補助的に用いられます。ストーキング被害によるPTSDに対してSSRI(パロキセチン、セルトラリンなど)の有効性が認められています。薬物療法のみでは根本的な解決にならないため、精神療法との組み合わせが推奨されます。
治療を始める前に「まず安全を確保すること」が大原則です。被害が継続している状況でトラウマ治療を始めると、かえって症状が悪化することがあります。まず警察や支援センターと連携して安全を確保し、その上で精神科・心療内科でのメンタルケアを開始しましょう。
セルフケア

日常生活でできるセルフケア——回復を助ける習慣

専門的な治療と並行して、日常生活の中でもできるセルフケアを取り入れましょう。小さな積み重ねが、心身の回復を大きくサポートします。

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グラウンディング技法を身につける
フラッシュバックや強い不安が来た時に「今ここ」に意識を戻す技法です。5-4-3-2-1法(5つ見えるもの・4つ触れるもの・3つ聞こえるもの・2つ匂うもの・1つ味わえるものを数える)が代表的で、パニックや解離を和らげる効果があります。
🌙
睡眠の質を大切にする
できるだけ同じ時間に就寝・起床し、寝室の安全確認(施錠確認)をルーティン化することで、「寝る前の不安」を軽減します。悪夢が続く場合は主治医に相談し、イメージリハーサル療法などを検討してください。
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適度な運動で身体感覚を取り戻す
ウォーキング・ヨガ・水泳などの穏やかな運動は、慢性ストレスによる身体の緊張をほぐし、セロトニン・エンドルフィンの分泌を促してメンタルヘルスを改善します。一人での外出が不安な場合は、信頼できる人と一緒に行いましょう。
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安全なつながりを維持する
ストーキング被害者は孤立しやすいですが、孤立は回復の大きな妨げになります。被害を理解してくれる友人・家族・支援者との交流を意識的に維持しましょう。支援グループへの参加も、「同じ経験をした人がいる」という安心感を与えます。
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感情日記をつける
今日の気持ちや出来事を短くてもいいので書き留めましょう。感情を言語化することで、圧倒されそうな感情を少し「外から見る」ことができます。また、回復の記録として「以前よりここが楽になった」という変化を確認する手段にもなります。
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アルコール・薬物に頼らない
不安や恐怖を紛らわすためにアルコールや市販薬・処方薬に過度に頼ることは、PTSDや不安症状を長期的に悪化させます。つらい気持ちはアルコールではなく、カウンセラーや相談窓口に話しましょう。
回復のプロセス

回復には時間がかかります——段階的な回復の見通し

ストーキング被害からの回復は、直線的なプロセスではありません。良い日と悪い日が交互に来たり、回復していたはずなのに突然フラッシュバックが戻ったりすることは珍しくありません。これは回復の失敗ではなく、回復プロセスの一部です。

※回復の三段階(Herman, 1992年のトラウマ回復モデル)に基づいた整理です。

PHASE 1
安全の確立
身体的・心理的安全の確保が最優先です。被害からの保護、信頼できる支援者との関係構築、基本的な生活の安定を図ります。この段階をしっかり固めることが、次の回復を支えます。
回復の土台
PHASE 2
トラウマの処理と追悼
安全が確立された後、専門家のサポートのもとでトラウマ体験を段階的に処理します。被害体験を語り、感情を処理し、意味を見出すプロセスです。この段階では、良い日と悪い日の波があります。
波がある時期
PHASE 3
日常生活・社会との再接続
トラウマ体験を「過去の一部」として統合し、人間関係・仕事・生き甲斐を再構築していきます。被害前と全く同じではなくても、新しい「自分らしさ」を見つけていく段階です。
新しい自分らしさ
完全に「元に戻ること」が目標ではありません回復とは、被害前の自分に完全に戻ることではなく、「被害体験を持ちながらも、充実した生活を送れるようになること」です。被害を経験したあなたは、それだけ強い経験を乗り越えてきた人です。焦らず、自分のペースで一歩一歩進んでいきましょう。
DAILY SAFETY

毎日の生活で実践できる安全対策

ストーキング被害は日常生活のあらゆる場面に影響を与えます。具体的な安全対策を日常の習慣として取り入れることで、リスクを減らし、少しでも安心して過ごせる環境を作ることができます。

デジタル安全

SNS・スマートフォンのセキュリティ対策

現代のストーキング被害はデジタル空間に大きく広がっています。スマートフォンやSNSを通じた監視・嫌がらせは24時間止まることがなく、被害者の精神的消耗は極めて大きいです。以下の対策を早めに実施しましょう。

  • 全てのSNSアカウントのプライバシー設定を「フォロワー限定」または「非公開」に変更する
  • 写真・動画に含まれるジオタグ(GPS情報)を削除する設定にする
  • スマートフォンの位置情報共有アプリを確認し、不審なアプリを削除する
  • 全てのアカウントのパスワードを強力なものに変更し、2段階認証を設定する
  • 加害者・不審者からのアカウントはすべてブロック・通報する
  • AirTag等の紛失防止タグが所持品・車に無断取り付けられていないか確認する
  • スマートフォンにスパイウェアが入っていないか専門店で確認する(特に元交際相手に渡したことがある場合)
  • メールアドレスを新しいものに変更し、新しいアドレスは加害者に知られないようにする
💡
スマートフォンのスパイウェアに注意元交際相手がスマートフォンを操作できた場合、位置情報追跡アプリ(スパイウェア)が無断でインストールされている可能性があります。専門の修理店やセキュリティ業者に相談し、端末を確認してもらうか、スマートフォンを新品に変えることを検討してください。
職場での安全

職場での安全対策と職場への相談

ストーキング被害は職場にも及ぶことがあります。加害者が職場に電話してきたり、職場の近くで待ち伏せしたりするケースも少なくありません。職場での安全を確保するため、以下の対策を検討しましょう。

  • 職場の上司・人事・総務部門の信頼できる人に被害状況を伝え、連携を依頼する
  • 加害者からの職場への電話・来訪に対応しないよう、職場全体での対応プロトコルを作成する
  • 職場の警備・受付スタッフに加害者の特徴と対応方法を伝えておく
  • 通勤経路・出退勤時間を変えたり、同僚と同行したりするなど、日常的なパターンを崩す
  • 職場での位置情報(Facebookの「チェックイン」など)をSNSに公開しない
  • 在宅勤務・シフト変更などの配慮をお願いできるか上司に相談する
職場への相談は「プライバシーの侵害」ではありません「職場に迷惑をかけたくない」「仕事に影響が出ると思われたくない」という気持ちから、職場への相談をためらう方が多いです。しかし、職場が状況を知らないまま被害が職場に及ぶと、より多くの人が巻き込まれる可能性があります。信頼できる上司や人事部門への早めの相談が、職場での安全を守るために重要です。
FOR FAMILY AND FRIENDS

被害者の周囲にいる方へ——正しい支援の方法

ストーキング被害を受けた大切な人をどう支えたらよいか。間違った対応が被害者を傷つけたり、危険を増したりすることがあります。正しい支援の方法を知ることが、最大の力になります。

対応のポイント

被害者への正しい接し方——してほしいこと・避けてほしいこと

被害者を支えるとき、何を言うか・しないかが回復と安全を大きく左右します。次の比較を参考に、関わり方を見直してみてください。

✓ してほしいこと
  • 「あなたは悪くない」「信じている」と明確に伝え、被害者を孤立させない
  • 被害について話したい時は傾聴し、話したくない時はそれを尊重する
  • 被害記録をつけることをサポートし、証拠の保全に協力する
  • 一緒に警察や相談窓口に付き添うことを申し出る
  • 被害者の行動・外出・連絡先の変更などのプライバシーを厳守する
  • 加害者から被害者の情報を聞かれても絶対に教えない
  • 被害者が専門家(カウンセラー・弁護士・警察)につながるのをサポートする
  • 緊急時のプランを被害者と一緒に考えておく
✗ 避けてほしいこと
  • 「大げさでは」「気のせいでは」と被害を過小評価・否定する
  • 「なぜそういう状況になったの」「自分にも非があるのでは」と責める
  • 加害者と「話し合えばわかる」と安易に和解を勧める
  • 被害者の了承なしに、他の人に被害状況を話す
  • 「警察に行っても無駄」という思い込みを伝える
  • 「それくらい大丈夫」と危険性を軽く見る
  • 一人ですべてのサポートを抱え込む(支援者自身が燃え尽きない)
情報管理

被害者の個人情報を守ることの重要性

ストーカー加害者は、被害者の周囲の人物(家族・友人・職場の同僚など)に接触して、被害者の新しい住所・連絡先・行動パターンを聞き出そうとすることがあります。「何気ない会話」の中で情報を引き出そうとする手口も多く、気づかないうちに加害者に情報を渡してしまうケースも報告されています。

1
状況:「○○さんは元気にしてますか?」という自然な会話から始まる
対応:「近況は○○本人に直接確認してください」と返す
2
状況:「共通の知人だけど連絡先を教えてほしい」
対応:「本人からの許可なしには教えられません」と断る
3
状況:「○○さんのことが心配で」という親切を装う接触
対応:疑わしい場合はまず被害者本人に確認する
4
状況:SNSで被害者の友人・家族のページから情報を収集
対応:被害者の投稿・タグ付けに注意し、位置情報を含む投稿を避ける
⚠️
「善意の情報提供」が危険を招くことがあります加害者は「心配しているだけ」「誤解を解きたい」という言葉を使うことがあります。どれほど善意に見えても、被害者の了承なしに個人情報を提供することは絶対に避けてください。疑わしい接触があった場合は、すぐに被害者本人と警察に伝えましょう。
支援者のケア

支える側のセルフケア——二次的トラウマに注意

ストーキング被害者を支援することは、支援者自身にも大きな心理的負担をかけます。被害者の恐怖や苦しみを間近で見続けることで、支援者が「二次的トラウマ(二次被害)」を経験することがあります。支える側が消耗してしまわないよう、自分自身のケアも大切にしてください。

🧘
自分のための時間を作る
24時間サポートに専念することはできません。自分の趣味・休息・友人との交流など、支援とは無関係の時間を定期的に持ちましょう。支援者が穏やかでいることが、被害者への最大のサポートです。
🏛
専門機関に相談する
「どこまで関与すべきか」「何をすれば助けになるか」などについて、精神保健福祉センターや犯罪被害者支援センターに相談することができます。支援者向けの情報提供や相談サービスを活用しましょう。
👥
一人で抱え込まない
支援の役割を一人の人間に集中させることは、その人の消耗を招きます。家族・友人・職場のサポートを分散し、複数の人が少しずつ関わることで、持続可能な支援ができます。
📋
緊急時の対応プランを事前に決める
「加害者が来たらどうするか」「被害者が危険な状況にある時はどうするか」を事前に計画しておきましょう。緊急連絡先(警察・被害者支援センター)を一覧にして手元に置いておくと、いざという時に冷静に動けます。
あなたが健康でいることが最大のサポートです支援者が燃え尽きてしまうと、長期的な支援が困難になります。「完璧なサポートができなくても、そばにいること」が被害者にとって最も大きな力になります。自分を大切にしながら、できる範囲で継続的に関わっていきましょう。
SUPPORT RESOURCES

利用できる支援制度・相談窓口一覧

ストーキング被害は一人で解決しようとしないでください。日本には、被害者を支援するための様々な制度と窓口が整備されています。まずは相談することから始めましょう。

支援制度

ストーキング被害者が使える主な支援制度・相談窓口

ストーキング被害者への支援は、警察・法律・医療・福祉・精神保健など多様な機関が連携して提供しています。どこに相談すればよいかわからない場合は、まず警察(#9110)または精神保健福祉センターに連絡することをお勧めします。そこから適切な支援機関につないでもらえます。

🚔
警察署・#9110
ストーキング被害の相談・被害届の提出はまず警察に。#9110は各都道府県警察の安全相談電話で24時間対応(都道府県によって異なる)。2025年の法改正で警察の対応権限が強化され、被害者の申出なしでも職権で警告を発することができるようになりました。
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精神保健福祉センター
各都道府県・政令市に設置されており、ストーキング被害による精神的苦痛やPTSDなどの相談を無料で受け付けています。専門の精神保健福祉士や心理士が対応し、医療機関への紹介や支援制度の情報提供も行っています。
法テラス(日本司法支援センター)
DV・ストーカー被害者に対し、弁護士による法律相談を提供しています。自由に使える現金・預貯金が300万円以下の方は相談費用が無料です。接近禁止命令(保護命令)の申立て、損害賠償請求などの法的手続きについて専門的なアドバイスを受けられます。
🤝
犯罪被害者支援センター
全国各地に設置された犯罪被害者支援センターでは、ストーキング被害者への相談支援・同行支援・情報提供を行っています。「犯罪被害者支援ダイヤル(0120-079714)」では平日9時〜21時、土曜9時〜17時に対応しています。
👩
配偶者暴力相談支援センター(DV相談センター)
元交際相手・配偶者からのストーキング被害はDVと重複することが多く、DV相談センターも重要な相談先です。一時保護(シェルター)の情報提供や、安全な場所への避難支援も行っています。DV相談ナビ(#8008)で最寄りの相談センターにつながれます。
🏥
精神科・心療内科
ストーキング被害によるPTSD・うつ病・不安障害などの治療は精神科・心療内科で受けられます。「自立支援医療制度(精神通院医療)」を申請すれば、医療費の自己負担が原則1割に軽減されます。長期の通院が必要な場合は早めに申請することをお勧めします。
📱
よりそいホットライン・SNS相談
24時間365日対応のよりそいホットライン(0120-279-338)では、ストーキング被害者を含む様々な悩みに対応しています。外出が難しい状況でも、電話・チャットで専門家に相談できます。
📋
自立支援医療制度(精神通院医療)
精神科・心療内科への継続的な通院が必要な方は、この制度を利用することで医療費の自己負担を原則1割に軽減できます。申請は市区町村の福祉窓口で行います。ストーキング被害によるPTSDや抑うつ状態もこの制度の対象となります。
医療費支援

自立支援医療制度(精神通院医療)——医療費の自己負担を軽減

ストーキング被害によるPTSD・うつ病・不安障害などで精神科・心療内科への継続的な通院が必要な方は、「自立支援医療制度(精神通院医療)」を申請することで、医療費の自己負担を通常の3割から原則1割に軽減できます。長期にわたる通院が必要なストーキング被害後の精神的回復においては、この制度が経済的な負担を大きく軽減します。

STEP 1
主治医への相談
担当医に自立支援医療制度の利用を希望することを伝え、診断書(意見書)を作成してもらいます。
診断書を依頼
STEP 2
市区町村の福祉窓口へ申請
住んでいる市区町村の障害福祉課等に必要書類(申請書・診断書・健康保険証の写し・マイナンバー確認書類等)を持参して申請します。
必要書類を持参
STEP 3
認定・受給者証の受け取り
審査後、認定されると「自立支援医療受給者証」が発行されます。有効期間は1年間で更新が必要です。
年1回更新
STEP 4
指定医療機関での受診
受給者証に記載された指定医療機関(病院・薬局)でのみ1割負担が適用されます。受診前に指定機関か確認しましょう。
指定機関を確認
💡
世帯の所得に応じて月ごとの自己負担上限額が設定されており、低所得の方は自己負担がゼロになる場合もあります。詳細は市区町村の窓口またはかかりつけ医にご確認ください。
緊急避難

身の危険を感じる場合の緊急避難先

加害者が自宅の場所を知っており、身の危険を感じる場合は、一時的な避難が必要になることがあります。以下の機関が緊急避難の支援をしています。

  • 警察による一時避難先の確保(費用は公費負担の場合あり)——相談した警察署に依頼する
  • DV・ストーカー被害者向けシェルター(民間・公的)——配偶者暴力相談支援センター(DV相談ナビ #8008)を通じて紹介
  • 友人・親族の家への一時避難——加害者が住所を知らない安全な場所
  • 民間のシェルターを運営するNPO法人——地域の被害者支援団体に問い合わせる
  • ホテル・ゲストハウスへの一時宿泊——費用が心配な場合は生活困窮者支援窓口に相談
🚨
今すぐ危険な場合は110番へ加害者が今まさに自宅の外にいる、追ってきているなど、生命の危険を感じる場合は迷わず110番(緊急)に電話してください。ストーキングは命に関わる犯罪になりえます。

一人で抱え込まないで。
相談してみませんか。

ストーキング被害の恐怖や孤独感を、一人で抱えていませんか。誰かに話すだけで、少し楽になれることがあります。どうかあなたの大切な悩みをココトモに聞かせていただきたいです。

今すぐ話したい方へ——相談窓口
ココトモ相談するチャット相談・無料
いのちの電話0120-783-55624時間・無料
よりそいホットライン0120-279-33824時間・無料
精神保健福祉センター各都道府県に設置無料相談・専門家対応

このページの情報は、医師による診断や治療に代わるものではありません。症状が気になる場合は、心療内科・精神科への受診をご検討ください。自立支援医療制度(精神通院医療)を利用すれば、医療費の自己負担を原則1割に抑えられます。

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