メンタルヘルス用語辞典 · 物質誘発性障害

物質誘発性障害とは?
種類・症状・原因・治療法をわかりやすく解説

物質誘発性障害は、アルコール・薬物・処方薬などの精神作用物質が脳に直接作用することで引き起こされる精神・行動障害です。「意志の問題」ではなく脳の神経系への化学的作用が原因です。種類・症状・脳内メカニズム・治療法・社会制度・家族支援まで詳しく解説します。

ABOUT

物質誘発性障害とは

物質誘発性障害は、アルコール・薬物・処方薬などの精神作用物質の使用によって引き起こされる精神・行動障害の総称です。「依存症そのもの」とは区別され、物質の直接的な薬理作用(中毒・離脱・慢性使用)が原因で生じる精神症状を指します。

定義

物質誘発性障害の定義——物質が「直接引き起こす」精神症状

物質誘発性障害(Substance-Induced Disorders)とは、アルコール・違法薬物・処方薬・その他の精神作用物質を使用することで、その物質の直接的な薬理作用によって引き起こされる精神・行動障害の総称です。DSM-5(米国精神医学会の診断基準)では、物質関連障害の大きな分類の一つとして位置づけられています。

物質誘発性障害が「物質使用障害(依存症)」と異なる最大の点は、精神症状が物質の直接的な薬理作用によって生じているという点です。例えば、アルコールを大量に飲んだ後に幻覚が現れる「アルコール幻覚症」や、覚醒剤使用中に発症する「覚醒剤精神病」などは、物質誘発性障害の典型例です。

重要なのは、物質誘発性障害は「物質の使用をやめても一定期間続くことがある」という点です。特に離脱症状による精神障害は、使用停止後数日〜数週間にわたって続き、場合によっては数ヶ月以上残存することもあります(遷延性離脱症候群)。また、フラッシュバックのように使用から長期間が経過した後でも再発するケースもあります。

物質によって引き起こされる精神症状には、①抑うつ症状、②躁状態様症状、③不安症状、④精神病症状(幻覚・妄想)、⑤強迫症状、⑥PTSD様症状、⑦認知機能障害、⑧睡眠障害、⑨性機能障害など多岐にわたります。同じ物質でも、中毒時(使用中)と離脱時(使用停止後)では現れる症状が大きく異なる場合があります。

「薬物を使ったから当然」ではない物質誘発性障害の症状は、「薬物を使ったのだから自業自得」ではなく、脳の神経系に対する物質の直接的・化学的な作用によって引き起こされる医学的状態です。適切な医療的介入が必要であり、適切な治療によって回復できます。
診断基準

DSM-5による診断基準——「物質が直接引き起こした」ことの確認

物質誘発性障害の診断には、精神症状が物質の直接的な薬理作用によるものであることを医学的に確認することが必要です。DSM-5では以下の基準が設けられています。

  • 基準A:物質の直接的作用による症状が物質(薬物・アルコール等)の中毒または離脱中に、あるいは直後(1ヶ月以内)に発現したことが確認される。
  • 基準B:他の精神疾患では説明できない症状が独立した精神疾患(うつ病・統合失調症等)ではなく、物質の作用によるものであることが医学的に裏付けられる。
  • 基準C:せん妄の文脈ではない症状がせん妄のみの経過中に生じているのではないこと(せん妄は別診断として扱う)。
  • 基準D:著しい苦痛または機能障害症状が臨床的に意味のある苦痛、または社会的・職業的・その他の重要な機能領域における障害をきたしている。
鑑別診断の重要性物質誘発性の精神症状と、独立した精神疾患(うつ病・統合失調症等)の鑑別は非常に重要です。物質誘発性の場合、物質使用をやめることで症状が改善することが多いですが、独立した精神疾患は物質とは関係なく治療が必要です。精神科専門医による適切な評価が不可欠です。
依存症との違い

物質使用障害(依存症)との違い

物質誘発性障害と物質使用障害(依存症)は関連しながらも別の概念です。この区別を理解することが、適切な治療につながります。

物質誘発性障害
薬理作用が直接引き起こす精神症状
物質の薬理作用が直接引き起こす精神症状。中毒症状・離脱症状・慢性使用による症状を含む。物質使用をやめることで改善する可能性があり、初回使用でも発症しうる。例:アルコール幻覚症・覚醒剤精神病・離脱性うつ。
物質使用障害(依存症)
依存・コントロール喪失のパターン
物質への依存・コントロール喪失のパターン。耐性・離脱・渇望・強迫的使用が中核症状。物質をやめても依存のパターン自体は残存し、慢性・反復的な物質使用歴がある。例:アルコール依存症・薬物依存症。

実際には両者は高頻度で併存します。物質使用障害を持つ人が物質誘発性精神障害を経験することは非常に多く、また逆に物質誘発性の精神症状(例:離脱時の不安・不眠)を緩和しようとして物質使用が続き、依存症が形成されるという悪循環も生じます。両者を同時に適切に治療する「デュアルダイアグノシス(二重診断)」治療の視点が重要です。

有病率

物質誘発性障害の有病率——思いのほか身近な問題

20%
アルコール依存症患者の約20%がアルコール誘発性精神病を経験する
50%
薬物使用障害のある人の約50%が何らかの精神疾患を併存(デュアルダイアグノシス)
5
若年期(16歳以下)からの大麻使用で統合失調症発症リスクが最大5倍に上昇
物質誘発性障害は「薬物を使う人の特別な問題」ではありません。医師から処方された睡眠薬・抗不安薬による依存や、市販薬の乱用による精神症状なども物質誘発性障害に含まれます。誰にでも起こりうる問題として理解することが重要です。
受診の目安

こんな症状があったら精神科・依存症専門クリニックへ

アルコール・薬物使用をやめようとしても、強い身体症状・精神症状が現れてやめられない
使用量がコントロールできず、当初の予定より多く・長く使用してしまう
物質を使用しないと強い不安・イライラ・身体的不快感が生じる
使用後に幻覚・妄想・強い不安・抑うつなどの精神症状が現れたことがある
物質使用のために仕事・家族・友人関係・健康に深刻な問題が生じている
「やめなければ」と思いながら、繰り返し使用してしまう
身近な人から「使い方がおかしい」「心配だ」と言われた
受診をためらわないでください「恥ずかしい」「怒られる」「警察に通報される」という不安から受診をためらう方は多くいます。しかし、医療機関は治療を提供する場であり、使用の事実だけで法的措置がとられることはありません。勇気を出して相談することが回復への第一歩です。
TYPES

物質誘発性障害の種類と特徴

物質誘発性障害は、使用する物質の種類によってその症状・経過・重症度が大きく異なります。主要な物質とそれぞれの特徴を理解することが、適切な対応と治療への第一歩です。

物質別

主要な6つの物質と精神症状

タブを切り替えて、それぞれの物質による精神障害の特徴をご確認ください。

🍶アルコール誘発性精神障害

日本で最も多い物質誘発性障害。飲酒中のブラックアウト(記憶消失)、禁断時の振戦せん妄(手の震え・幻覚)、ウェルニッケ脳症(チアミン欠乏による意識障害・眼球運動障害)、コルサコフ症候群(重篤な記憶障害)など多岐にわたる。慢性飲酒者の約50%が何らかの精神症状を経験する。

  • ブラックアウト(記憶消失)
  • 振戦せん妄(禁断症状)
  • 幻覚・幻聴(アルコール幻覚症)
  • ウェルニッケ・コルサコフ症候群
  • 抑うつ・不安・睡眠障害
💡
複数物質の同時使用(ポリサブスタンス)に注意アルコールと睡眠薬、覚醒剤と大麻など、複数の物質を同時または交互に使用するポリサブスタンス使用は、それぞれ単独の使用よりもはるかに重篤な精神症状を引き起こすリスクがあります。特にアルコールとベンゾジアゼピンの組み合わせは呼吸抑制による突然死のリスクがあり、極めて危険です。
SYMPTOMS

症状——中毒・離脱・慢性使用それぞれの精神症状

物質誘発性障害の症状は、①物質使用中(中毒症状)、②使用停止後(離脱症状)、③長期・慢性使用によるもの、という3つの局面で異なります。同じ物質でも局面によって症状が大きく変わる場合があります。

中毒と離脱

主要物質別:中毒症状と離脱症状の比較

同じ物質でも、使用中(中毒)と使用停止後(離脱)では精神症状が大きく異なります。特に「興奮系物質(覚醒剤・コカイン)」と「抑制系物質(アルコール・ベンゾジアゼピン)」では逆の反応パターンが見られることが特徴的です。

物質中毒症状(使用中)離脱症状(使用停止後)
アルコール多幸感・脱抑制・協調運動障害・言語障害・記憶消失不安・振戦・発汗・てんかん発作・振戦せん妄(重篤)
覚醒剤多幸感・誇大感・被害妄想・心拍増加・体温上昇重篤な抑うつ・過眠・倦怠感・強烈な渇望
大麻多幸感・不安・パニック・時間感覚の歪み・眼充血過敏性・不眠・食欲低下・軽度の不安
オピオイド多幸感・縮瞳・呼吸抑制・意識低下激烈な不安・筋肉痛・嘔吐・下痢・不眠
ベンゾジアゼピン鎮静・協調運動障害・記憶消失重篤な不安・不眠・てんかん発作・発汗
慢性使用

長期・慢性的な物質使用が引き起こす精神症状

長期にわたって物質を使用し続けることで、急性の中毒・離脱とは別に、脳の構造・機能の変化を反映した慢性的な精神症状が現れます。これらは物質使用をやめた後も長期間残存することがあります。

遷延性離脱症候群(PAWS)
急性離脱が落ち着いた後も数ヶ月〜2年間にわたって続く慢性的な症状群。感情的な不安定さ、認知機能の低下(集中力・記憶力)、睡眠障害、疲労感、強い渇望などが周期的に現れます。PAWSは再発(スリップ)の最大の危険因子の一つです。
🧠
認知機能障害
特にアルコール・ベンゾジアゼピン・大麻の長期使用では、記憶力・注意力・遂行機能・処理速度などの認知機能が低下します。断薬後に回復するものもありますが、重篤な場合(ウェルニッケ・コルサコフ症候群等)は不可逆的な障害が残ることもあります。
🌧
二次的うつ病・不安障害
物質が報酬系・ストレス応答系を変容させるため、断薬後に「物質なしでは喜びを感じられない」「強烈な不安が続く」という二次的な精神症状が現れます。これが再使用の動機となるため、適切な精神科的治療が不可欠です。
人格変化・社会機能の低下
長期の物質使用は衝動制御、感情調節、対人関係能力に関わる前頭前野を変容させ、人格的な変化(攻撃性・衝動性の増大、共感能力の低下)や社会機能の著しい低下をもたらすことがあります。
「断薬後にかえって辛くなった」は正常な回復過程断薬直後に「使用していた頃より辛い」「症状が悪化した気がする」と感じる方は多くいます。これは遷延性離脱症候群(PAWS)のためであり、回復過程の一部です。この時期こそ医療機関と自助グループのサポートが最も重要です。
MECHANISM

原因・脳内メカニズム

物質が精神症状を引き起こすのは「意志の問題」ではありません。物質が脳の神経系に与える直接的・化学的な影響が、精神症状の科学的な根拠です。

脳内メカニズム

6つの神経科学的メカニズム

物質誘発性障害の発症には、複数の脳内メカニズムが関わっています。それぞれが相互に作用し、依存と精神症状を生み出します。

🧠
ドーパミン報酬系の過剰刺激
アルコール・覚醒剤・オピオイドなどは、脳の報酬系(側坐核・腹側被蓋野)を強力に刺激し、通常の100倍以上のドーパミンを放出させます。この過剰刺激が繰り返されることで、脳は「自然な喜び」に反応しにくくなり、物質なしでは喜びを感じられない状態(快感消失)が生じます。
⚖️
神経適応とホメオスタシスの破綻
脳は物質の持続的な作用に「適応」するため、興奮系・抑制系のバランスを物質がある状態を「正常」として再設定します。これが「耐性」の神経学的基盤です。物質を突然中止すると、この「新しい正常」が崩れ、激烈な離脱症状として現れます。
🔄
前頭前野の機能低下
物質乱用が長期化すると、衝動制御・判断・計画立案を担う前頭前野の機能が著しく低下します。これにより「やめたいのにやめられない」という状況が強化され、物質探索行動の抑制が困難になります。この前頭前野機能低下は依存症の核心的な病態です。
💾
記憶系の関与(状態依存学習)
物質使用に関連した環境・感情・状況(特定の場所・人・においなど)が、強烈な「渇望」を呼び起こす条件付け記憶として扁桃体と海馬に刻み込まれます。これが「引き金(トリガー)」によるスリップ(再使用)のメカニズムです。
🧬
遺伝的脆弱性
物質誘発性障害の発症には遺伝的要因が40〜60%関与するとされています。アルコール代謝酵素の遺伝子多型、ドーパミン受容体の感受性の違い、衝動制御に関わる遺伝子などが依存形成のリスクに影響します。ただし遺伝だけが原因ではなく、環境との相互作用が重要です。
🌀
ストレス応答系の変容
物質の慢性使用はHPA軸(視床下部-下垂体-副腎皮質系)を変容させ、ストレス耐性を著しく低下させます。離脱状態では過剰なストレス反応が生じ、物質を「抗ストレス剤」として再使用する動機が強まります。これが依存サイクルを維持する重要な機序です。
リスク要因

物質誘発性障害を起こしやすいリスク要因

物質誘発性障害は誰にでも起こりうる可能性がありますが、以下のリスク要因がある場合、より発症しやすいとされています。

🧬
遺伝的脆弱性
依存症・精神疾患の家族歴がある場合、物質への過剰反応リスクが高まる
🧠
既存の精神疾患
うつ病・不安障害・PTSDなどがある場合、自己治療目的の物質使用が始まりやすい
🌱
若年での使用開始
脳が発達途中の若年期(特に16歳以下)の使用は脳への影響が深刻になりやすい
😥
慢性的なストレス・トラウマ
幼少期の逆境体験(虐待・DV等)は物質誘発性障害のリスクを大幅に高める
📈
使用量・使用期間
大量・長期の使用は脳の構造的変化をもたらし、精神症状のリスクを高める
💊
複数物質の同時使用
ポリサブスタンス使用は相互作用による予測困難な精神症状を引き起こしやすい
TREATMENT

治療——回復への段階的アプローチ

物質誘発性障害の治療は、急性期の安全確保から長期的な回復支援まで、段階的に行われます。「一度回復すれば終わり」ではなく、慢性疾患として長期的に関わり続けることが回復の鍵です。

治療ステップ

回復への4段階——デトックスから長期支援まで

STEP 01
解毒・離脱管理(デトックス)
入院または外来
物質使用を安全に中止するための医学的管理。アルコール・ベンゾジアゼピンの離脱は生命に関わる場合があるため、入院管理が推奨されます。覚醒剤・オピオイドの離脱も激烈な苦痛を伴います。この段階では薬物療法(ベンゾジアゼピン漸減、メサドン代替療法など)と医療的モニタリングが中心です。
STEP 02
精神科的合併症の評価・治療
外来継続
物質誘発性障害では、うつ病・不安障害・PTSDなどの精神疾患が高頻度で合併します(「二重診断:デュアルダイアグノシス」)。物質の離脱が完了してから4〜6週後に精神症状を再評価し、残存する症状に対して薬物療法(抗うつ薬・抗精神病薬等)や心理療法を開始します。
STEP 03
回復支援・心理社会的治療
長期的(数ヶ月〜数年)
薬物療法だけでは再発を防ぎ切れません。認知行動療法(引き金の同定・対処スキル)、動機づけ面接(変化への動機を高める)、12ステッププログラム(AAやNAなどの自助グループ)、SMARPP(薬物依存回復プログラム)などが有効です。社会的サポート(家族支援・就労支援・住居確保)も回復に不可欠です。
STEP 04
再発予防と長期フォローアップ
生涯にわたる視点
依存症は「慢性・再発性脳疾患」として理解されます。再発はゴールへの失敗ではなく、慢性疾患の経過として想定内の出来事です。スリップ(再使用)が起きた際に自責に沈まず、すぐに支援につながることが重要。「ハームリダクション(有害性低減)」の視点で、完全断薬が困難な場合も傷つきを最小化する支援が広がっています。
薬物療法

回復を支える薬物療法

物質誘発性障害・依存症の治療に使用される主な薬剤を紹介します。薬物療法は心理社会的治療との組み合わせで最大の効果を発揮します。

  • ナルトレキソン(アルコール・オピオイド依存)オピオイド受容体遮断薬。飲酒・薬物使用による多幸感をブロックし、強化学習を妨げることで渇望・再使用を低減させる。副作用:吐き気・頭痛(軽度)。
  • アカンプロサート(アルコール依存)グルタミン酸系神経の過活動を抑制し、断酒後の不安・不快感を軽減。渇望低減効果があり、断酒継続をサポートする。腎機能障害がある場合は禁忌。
  • ジスルフィラム(ノックビン)(アルコール依存)アルコール代謝を阻害し、飲酒すると激しい不快反応(嘔吐・頭痛・動悸)を引き起こす「嫌忌療法」。服薬の意欲と監督者の存在が効果の前提。
  • メサドン・ブプレノルフィン(オピオイド依存)オピオイド受容体に作用し、離脱症状と渇望を管理する「代替療法(MAT)」。規制管理下で処方される。日本ではブプレノルフィンが処方可能。
  • バレニクリン(ニコチン依存)ニコチン受容体部分作動薬。ニコチンの作用を部分的に代替しながら、喫煙時の満足感を低下させる。禁煙成功率を2〜3倍に高める。
薬だけが「治療」ではない薬物療法は回復のための重要な一手段ですが、それだけでは十分ではありません。心理療法・自助グループ・社会的サポート・生活の立て直しを組み合わせた包括的な治療が、長期的な回復のために不可欠です。
SMARPP

SMARPP——日本発の薬物依存症回復プログラム

SMARPP(Serigaya Methamphetamine Relapse Prevention Program:スマープ)は、国立精神・神経医療研究センターが開発した、日本の外来医療機関で実施できる薬物依存症の認知行動療法プログラムです。もともと覚醒剤(メタンフェタミン)依存を対象に開発されましたが、現在はアルコールを含む多様な物質依存に対応した「SMARPP-24」として広く普及しています。

SMARPPは24回のセッションを1クールとして行われ、1回約90分のグループセッションで構成されます。参加者はワークブックを使いながら、自分が依存している物質がなぜ危険なのか、再使用の「引き金(トリガー)」は何か、どのようにして危険な状況を避けるかを、過去の経験を振り返りながら学びます。罰や叱責のない安全な環境で、仲間と経験を分かち合うことが回復を支えます。

SMARPPの特徴
プログラムの仕組み
外来通院中でも参加できる集団療法/ワークブックを用いた構造化プログラム/断薬できていない参加者も排除しない/認知行動療法と動機づけ面接を組み合わせ/全国の精神保健福祉センター等で実施。
主なテーマ
プログラムの内容
依存症・物質誘発性障害の正しい理解/自分の使用パターン・引き金の分析/渇望(クレービング)への対処スキル/再使用した場合の対処(スリップ管理)/家族・支援者との関係を整える。
24
SMARPPの標準1クール。週1回参加で約6ヶ月かけて回復の基盤を作る
69カ所
全国の精神保健福祉センターにSMARPP提供施設が拡大(2015年)
60%超
SMARPPプログラム完了者の断薬継続率(研究による)
SMARPPはどこで受けられる?SMARPPは全国の精神保健福祉センターや依存症専門医療機関、一部のDARCで受けることができます。お住まいの都道府県の精神保健福祉センターに問い合わせると、近くの実施施設を紹介してもらえます。参加費は医療機関によって異なりますが、自立支援医療制度(精神通院医療)を利用することで自己負担を1割に抑えることが可能です。
セルフケア

回復を助けるセルフケア

📋
トリガーの同定と回避計画
自分が使用に至る「引き金」(特定の場所・人・感情・時間帯)を書き出し、回避・対処計画を立てます。引き金を避けられない場合の対処法(深呼吸・電話する・場所を変える)も事前に決めておきます。
🤝
自助グループへの参加
AA(アルコホーリクス・アノニマス)、NA(ナルコティクス・アノニマス)、DARC(薬物依存症回復施設)などの自助グループは、同じ経験を持つ仲間とのつながりが回復の大きな支えになります。「一人ではない」という感覚が再発防止の鍵です。
🧘
ストレスマネジメントの習得
物質は多くの場合、ストレス・不安・孤独感への対処として使われていました。マインドフルネス瞑想、運動、呼吸法など、物質を使わないストレス対処スキルを意識的に身につけることが長期的な回復に不可欠です。
🏥
定期的な医療機関受診の継続
物質誘発性障害は慢性疾患です。症状が落ち着いていても定期的な受診を続け、再使用の兆候を早期に捉えることが重要です。また、合併精神疾患(うつ・不安)の管理も受診継続のなかで行われます。
🌱
生活リズムと社会的役割の回復
依存中に失われた生活リズム(睡眠・食事・運動)と社会的役割(仕事・家族関係・趣味)の回復が、再発予防と生活の質向上に直結します。焦らず一歩ずつ、できることから始めましょう。
ハームリダクション

ハームリダクション——「やめさせる」ではなく「傷つきを減らす」支援

ハームリダクション(Harm Reduction:有害性低減)とは、薬物・アルコールの使用によって生じる健康・社会・経済上の悪影響を、必ずしも使用量を減らさなくても最小化することを目指す支援アプローチです。「完全断薬か治療なし」という二択ではなく、現実的な小さな変化を積み重ねていく考え方です。

従来の依存症支援では「完全断薬」を目標に置くことが多く、再使用(スリップ)があると「治療失敗」と見なされてきました。しかしハームリダクションの視点では、再使用は慢性疾患の経過として想定内のことであり、再使用があっても「より安全な使い方」「過剰摂取の防止」「感染症リスクの低減」「社会的孤立の回避」を支援し続けることが重要とされています。

🎯
完全断薬を求めない関わり
「やめなければ支援しない」という姿勢は、支援から最も必要な人を遠ざけます。ハームリダクションでは、使用しながらでも支援につながり続けることを重視します。信頼関係を構築しながら、本人のペースで変化を支えます。
🛡️
過剰摂取(オーバードーズ)の予防
覚醒剤・オピオイド・アルコールなどの過剰摂取は生命に関わります。ナロキソン(オピオイド拮抗薬)の普及、安全な使用環境の確保、救急医療へのアクセス向上などが、命を守るための具体的なハームリダクション策です。
🤝
当事者の意思決定を尊重
ハームリダクションは当事者が自分の生活をコントロールする権利を尊重します。外から「こうすべき」と押しつけるのではなく、本人が望む目標(完全断薬でも減量でも安全な使用でも)を一緒に設定し、その実現を支援します。
🏥
医療・支援へのアクセスを維持
物質問題を抱える人が「怒られる」「捕まる」という恐れなく医療・支援機関にアクセスできる環境をつくることが、ハームリダクションの根幹です。精神保健福祉センターや依存症相談拠点機関は、使用の事実だけで法的措置を取ることはありません。
ハームリダクションは「諦め」ではないハームリダクションは断薬を諦める考え方ではありません。断薬が難しい段階でも命と健康を守り、支援関係を継続することで、回復への道を開いていくアプローチです。日本でも精神保健福祉センターや依存症支援団体を中心に、ハームリダクションの考え方を取り入れた支援が広がっています。
SOCIAL SUPPORT

社会制度・サポート——経済的負担を減らして治療を続けるために

物質誘発性障害・依存症の治療は長期にわたることが多く、経済的な負担が治療継続の妨げになることがあります。しかし日本にはこれを軽減するための公的制度があります。治療を続けながら生活を立て直すために、積極的に活用しましょう。

公的制度

回復を支える5つの社会制度

  • 自立支援医療制度(精神通院医療)(医療費軽減)精神疾患(依存症・物質誘発性障害を含む)で継続的な通院治療が必要な方の医療費自己負担を軽減する制度です。通常3割の自己負担が1割に減額され、さらに世帯の収入に応じて月額の自己負担上限額が設定されます。申請は市区町村の担当窓口で行い、精神科医の診断書が必要です。受給者証の有効期間は1年(更新可能)。
  • 精神保健福祉センター(各都道府県)(無料相談)全国47都道府県と政令指定都市に設置されている精神保健の専門機関です。依存症・物質誘発性障害の本人・家族への無料相談、家族教室、自助グループの情報提供、SMARPPなどの回復プログラム実施を行っています。「どこに相談すればよいかわからない」という場合の最初の窓口として最適です。
  • 依存症相談拠点機関(専門相談)厚生労働省が指定した依存症の専門相談機関が全国各地に設置されています。依存症の専門医や精神保健福祉士が、本人・家族からの相談に対応し、適切な医療機関や自助グループを紹介します。利用は原則無料です。
  • 障害年金(生活保障)物質誘発性障害・依存症によって日常生活や就労に著しい制限が生じている場合、障害年金(障害基礎年金・障害厚生年金)の対象となりうります。精神保健福祉士や社会保険労務士への相談が受給申請の助けになります。
  • 生活保護・住居確保給付金(生活支援)依存症・物質誘発性障害の回復過程で収入が不安定になった場合、生活保護や住居確保給付金などの生活支援制度が利用できます。福祉事務所や生活困窮者支援相談窓口に相談しましょう。依存症があることを理由に申請を断られることはありません。
制度を使って治療を続けることが回復の近道経済的な不安から治療を中断してしまうケースは少なくありません。自立支援医療制度(精神通院医療)を活用することで、月々の医療費負担を大幅に軽減できます。まずは精神保健福祉センターや通院先の医療機関のソーシャルワーカー(精神保健福祉士)に相談してみましょう。
FOR FAMILY

周囲の方へ——家族・大切な人を支えるために

物質誘発性障害・依存症を持つ方の家族は、本人と同じかそれ以上の苦しみを抱えていることがあります。正しい知識と適切な距離感が、本人の回復と家族自身の健康を守ります。

家族のできること

支える側が知っておきたいこと

してほしいこと
本人を支える関わり
  • 物質誘発性障害は「意志の弱さ」ではなく「脳の病気」であると理解する
  • 本人の話に耳を傾け、批判せずに感情を受け止める(共感的傾聴)
  • 通院・服薬・自助グループへの参加を見守り、さりげなく後押しする
  • 本人が回復への一歩を踏み出した際は小さな変化でも認め、肯定する
  • 自分自身のメンタルヘルスを守ることも重要——家族相談会・Al-Anonへの参加を検討する
  • 緊急時(意識消失・過量使用)の対応手順を事前に確認しておく
避けてほしいこと
本人を追い詰める関わり
  • 「意志が弱い」「本気でやめようとしていない」と非難・叱責する
  • 使用を隠蔽したり、物質を入手できるよう「援助」する(イネーブリング)
  • 本人の代わりに問題を解決し続け、依存を助長する(共依存)
  • 「あなたのせいで家族が壊れる」と追い詰め、罪悪感で動かそうとする
  • 回復の遅さに苛立ち、期限を設けて「治らなければ縁を切る」と脅す
  • 家族だけで問題を抱え込み、専門機関に相談しない
家族のためのリソース

家族自身のサポート資源

依存症の家族を支えることは、精神的・身体的に非常に負担が大きい。家族自身がサポートを受けることが、本人の回復にとっても不可欠です。

  • Al-Anon(アラノン)アルコール依存症者の家族・友人のための自助グループ。世界各地で開催されており、同じ立場の家族と悩みを分かち合える場です。
  • Nar-Anon(ナラノン)薬物依存症者の家族・友人のための自助グループ。Al-Anonと同様の12ステッププログラムを基盤とした回復プログラムです。
  • 精神保健福祉センター全国各都道府県に設置。依存症の家族向けの相談・家族教室・自助グループ紹介などのサービスを提供しています。無料で相談できます。
  • 依存症相談拠点機関厚生労働省が指定した依存症相談拠点機関(全国に設置)では、本人だけでなく家族への相談支援も行っています。
「家族だけでなんとかしよう」という考えを手放す依存症の回復は家族の努力だけでは達成できません。専門家・自助グループ・地域支援など複数の力を借りることが、本人にとっても家族にとっても最善の道です。あなた一人で抱え込まないでください。

一人で抱え込まないで。
相談してみませんか。

物質に関する悩み、依存への不安、ご家族のこと——どうかあなたの大切な悩みをココトモに聞かせていただきたいです。

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いのちの電話0120-783-55624時間・無料
よりそいホットライン0120-279-33824時間・無料

このページの情報は、医師による診断や治療に代わるものではありません。症状が気になる場合は、心療内科・精神科・依存症専門クリニックへの受診をご検討ください。

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