メンタルヘルス用語辞典 · トータルサポート

トータルサポートとは?
医療・福祉・就労・生活を包括的に支える仕組みを徹底解説

精神疾患や心の不調を抱える人を、医療・福祉・就労・住まいまで「生活全体」で支えるトータルサポート。4つの柱・専門職連携・ACT・自立支援医療制度・家族支援・デジタル活用まで、利用までのステップを含めて必要な情報を一つにまとめました。

ABOUT TOTAL SUPPORT

トータルサポートとは——定義と背景

トータルサポートとは、精神疾患や心の不調を抱える人が医療・福祉・就労・生活のあらゆる側面において包括的・継続的に支援を受けられる仕組み。一つの窓口や制度だけでなく、複数の専門機関がネットワークを組み、その人の「生活全体」を丸ごと支える考え方です。

定義

トータルサポートの定義

トータルサポート(Total Support)という言葉は、もともと医療・福祉・教育・産業などの分野で広く使われてきた概念です。メンタルヘルスの文脈では、精神疾患や心理的困難を抱える人が、その人の人生全体にわたって必要なあらゆる支援を受けられる状態・体制を意味します。

心の不調や精神疾患は、薬物療法や外来通院だけで解決できるものではありません。日常生活の困難、経済的な不安、就労上の障壁、人間関係の問題、住まいの不安定さなど、さまざまな課題が複合的に絡み合っています。だからこそ、「トータルサポート」という視点が必要とされるのです。

一つの窓口では支えきれない医療は医療、福祉は福祉、就労は就労——という縦割りでは、その人の生活全体は支えられません。横断的に、継続的に、生活まるごとを支える発想がトータルサポートです。
政策の背景

厚生労働省の方針とトータルサポート

厚生労働省が推進する「精神保健医療福祉の改革ビジョン」(2004年)や、その後の「良質かつ適切な精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針」(2014年)においても、精神障害者が「地域の一員として安心して自分らしい暮らしができるよう」、医療・障害福祉・介護・住まい・社会参加(就労)・地域の助け合い・普及啓発が包括的に確保されることが目標とされています。これはまさにトータルサポートの理念そのものです。

脱施設化と地域移行

入院中心から地域生活へ

日本では長年、精神科病院への長期入院が主流でしたが、1990年代以降、国際的な潮流に沿って「脱施設化」「地域移行」が推進されるようになりました。地域で生活するためには、外来医療だけでなく、日常生活の支援・就労の機会・住まいの確保・社会とのつながりなど、多面的な支援が不可欠です。こうした背景から、トータルサポートの重要性がますます高まっています。

近年の動向

精神疾患は「誰でもかかりうる身近な病気」へ

2024年から2025年にかけては、こころの病気の外来患者数が過去20年で2倍以上に増加したことが報告されており、精神疾患は今や「誰でもかかりうる身近な病気」として認識されています。それに伴い、支援体制の充実・整備も急務となっています。

💡
かつての「特別な人の特別な問題」ではなく、生活の中で誰もが直面しうる課題として、社会全体で支える体制が整いつつあります。
WHY NEEDED

なぜ「トータルサポート」が必要なのか

心の不調や精神疾患を抱える人が直面する困難は、医療的な症状だけにとどまりません。複数の困難が複合的に絡み合うため、縦割りではなく横断的な支援が求められます。

5つの困難

精神疾患を抱える人が直面する複合的な困難

以下のような複合的な課題が重なり合うことが多く、それぞれの課題に対して縦割りではなく横断的に支援することが求められます。

🏠
生活の困難
意欲低下・認知機能の影響・疲弊感によって、食事・洗濯・掃除・買い物といった日常の家事ができなくなります。金銭管理が難しくなったり、公共料金の支払いが滞ったりするケースも少なくありません。
💼
就労の困難
症状の波で安定して働けず、休職・離職を繰り返すことがあります。職場での理解が得られず人間関係のトラブルに発展したり、復職後に再び体調を崩したりすることもあります。
💴
経済的な困難
就労困難による収入減少と医療費負担が重くのしかかります。障害年金・生活保護・各種手当など利用できる制度を知らないために経済的に追い詰められてしまう人も多くいます。
🔑
住まいの不安定さ
家族関係の破綻、保証人が得られないなどで住居を確保できないケースがあります。ホームレス状態になるリスクも、精神疾患を抱える人には高いとされています。
🌫
社会的孤立
スティグマ(偏見・差別)や引きこもり傾向により、人との繋がりが薄れていきます。孤立が深まると病状の悪化や自殺リスクの上昇にもつながります。
課題は連動する

一つを解決しても他が残れば改善しない

これらの課題は互いに連動しており、一つを解決しても他の課題が残れば全体的な生活の質(QOL)は改善しません。だからこそ、「トータルサポート」——あらゆる側面を同時に、継続的に支えるアプローチが必要なのです。

医療だけ・福祉だけ・就労支援だけ、では生活は完成しません。複数のピースが噛み合って初めて、地域で自分らしく暮らせる状態が成立します。
FOUR PILLARS

トータルサポートを構成する4つの柱

メンタルヘルス分野におけるトータルサポートは、大きく次の4つの柱から構成されています。これら4つが互いに連携し、一人の利用者を中心に「360度」サポートするのがトータルサポートのあり方です。

4つの柱

医療・福祉・就労・生活の4本柱

🏥
医療的支援
精神科・心療内科による診断・薬物療法・精神療法・リハビリテーションが中心。外来・入院・デイケア・訪問診療など、さまざまな形態があります。
🤝
福祉的支援
障害福祉サービス(就労移行支援・就労継続支援・自立訓練・グループホーム・相談支援など)を通じて、日常生活の支援と社会参加を促進します。
💼
就労支援
ハローワーク・障害者就業・生活支援センター・就労移行支援事業所などが連携し、職場復帰や新たな就職に向けた支援を行います。
🏘
生活・住まいの支援
グループホーム・自立生活援助・住居確保給付金など、安定した住まいと生活基盤を支援。地域住民や自治会、ピアサポーターとの繋がりも含みます。
💡
どれか一つだけが優先されるのではなく、その人のニーズに応じて4つの柱を組み合わせる。これがトータルサポートの設計図です。
MEDICAL CARE

医療的支援——精神科・心療内科・訪問診療

トータルサポートの中核を担うのが医療的支援です。外来・デイケア・訪問・入院といったさまざまな形態と、自立支援医療制度との連携で、継続的な医療を支えます。

5つの医療形態

医療的アプローチの種類

心の不調や精神疾患に対する医療的なアプローチには、以下のようなものがあります。

🏥通院による治療の基盤

精神科・心療内科への定期通院が基本。問診・診察・薬の処方に加え、医師やスタッフによるカウンセリング・支持的精神療法が行われます。症状が安定すれば月1〜2回の通院で管理できることも多く、日常生活を送りながら治療を継続する基盤となります。

💡
通院を続けられるかどうかは、お金の不安にも左右されます。自立支援医療制度の活用は医療継続の鍵です。
WELFARE SERVICES

福祉的支援——障害福祉サービスと生活支援

障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスは、トータルサポートの重要な構成要素です。日常生活の支援と社会参加促進の両面から、地域での暮らしを支えます。

6つの福祉サービス

障害福祉サービスの主な内容

精神疾患や精神障害によって日常生活や社会生活に支障がある方が利用できる主な障害福祉サービスを紹介します。

  • 相談支援相談支援専門員がアセスメントを行い、「サービス等利用計画」を作成。どんなサービスをどう組み合わせるかを一緒に考え、支援全体のコーディネートを担います。複合的な課題には医療・福祉・就労・住まいにまたがる総合計画が必要です。
  • 自立訓練(生活訓練)地域生活に必要な日常生活能力(食事・掃除・金銭管理・服薬管理など)の向上を目的としたトレーニング。精神障害者向け生活訓練事業所では、最長2年(延長可)の期間で個別またはグループのプログラムを提供します。
  • 就労移行支援・就労継続支援就労に関する障害福祉サービス。詳細は就労支援セクションで扱います。
  • 地域活動支援センター創作活動や交流を通じて社会参加を促す場。仲間との繋がりを作ったり日中の居場所として機能したりすることで、孤立の防止に大きく貢献します。
  • ピアサポート同じ精神疾患の経験を持つ「ピアサポーター」が相談相手や活動同行を担います。専門家とは異なる「当事者目線の支援」として、近年ますます注目されています。
  • 短期入所(ショートステイ)家族の急病や本人の体調一時悪化時などに短期間の入所を利用できます。家族介護者の負担軽減や緊急時のセーフティネットとして機能します。
サービスは「組み合わせ」が前提。何を選ぶかは、相談支援専門員と一緒に考えていけます。
WORK SUPPORT

就労支援——働くことへのトータルサポート

就労はただ収入を得るためだけでなく、生きがい・自己肯定感・社会とのつながりをもたらす重要な要素。トータルサポートにおける就労支援は、段階的かつ継続的なサポートを行います。

6つの就労支援

働くことを段階的に支える仕組み

精神疾患を抱えながらも「働きたい」と思っている方は多くいます。それぞれの段階に応じた支援メニューが用意されています。

STEP A
就労移行支援
一般企業への就職を目指す方(原則65歳未満)を対象に、最長2年間、職業訓練・実習・求職活動のサポートを実施。コミュニケーション訓練・業務遂行能力訓練・履歴書の書き方・面接練習などを通じて就職準備を整えます。就職後も一定期間の職場定着支援が行われます。
最長2年・65歳未満
STEP B
就労継続支援A型・B型
一般就労が難しい方へ就労機会を提供。A型は雇用契約を結び最低賃金以上の報酬を得る形態、B型は雇用契約なしで福祉的就労として工賃を得る形態。農業・軽作業・IT・カフェ運営など、事業所により多様な仕事に取り組めます。
A型=雇用契約/B型=福祉的就労
STEP C
障害者就業・生活支援センター
就業と生活の両面から総合的に支援する機関。就職活動・職場定着支援に加え、生活リズム安定・健康管理・日常生活上の問題解決も支援。医療・福祉・ハローワーク・企業との連携できめ細かなサポートを提供します。
就業+生活の総合支援
STEP D
ハローワーク(公共職業安定所)
専門支援員(精神障害者雇用トータルサポーター等)が配置され、求職活動・求人情報の提供・面接同行支援などを実施。精神障害者向け求人紹介や職業訓練の案内も行います。
全国の公共機関
STEP E
職場復帰(リワーク)支援
うつ病などで休職中の方が職場復帰するためのプログラム。医療機関や就労移行支援事業所でリワークプログラムが実施され、段階的な復職を支援。主治医・産業医・人事部門・支援機関の連携で再休職リスクを低減します。
段階的復職支援
STEP F
就労定着支援(2018年制度化)
就職後6か月以内の障害者を対象に、職場での課題解決や関係機関との連絡調整を行うサービス。最大3年間、支援員が定期的に本人・職場を訪問し、職場適応を継続的にサポートします。
最大3年
💡
再休職を防ぐ連携主治医・産業医・人事・支援機関が連携するリワークと定着支援の組み合わせが、復職後の安定就労を実現します。
HOUSING & LIFE

生活・住まいの支援——地域で暮らすための基盤

安定した住まいは、精神的な健康を維持するための根本的な基盤です。グループホーム・自立生活援助・各種公的制度により、地域での生活基盤を確保します。

5つの住まい支援

住まいと生活を支える制度

🏘
グループホーム(共同生活援助)
地域住宅街の小規模共同住居で、日常生活支援を受けつつ自立した生活を目指します。精神障害者向けには「介護サービス包括型」「外部サービス利用型」「日中活動サービス支援型」「サテライト型(一人暮らし移行型)」の4種類があり、令和3年時点で全国約14万人が利用。精神科病院からの地域移行の受け皿として重要な役割を担います。
🚶
自立生活援助
入所施設やグループホームから一人暮らしに移行した方へ、定期訪問や随時の相談対応を行うサービス。服薬の確認・家事の状況確認・近隣トラブルへの対応など、日常生活上のさまざまな課題に対応します。
📃
住居確保給付金
離職や廃業で住まいを失うおそれがある方に、一定期間の家賃相当額を支給する制度。精神疾患による長期休職・離職後の経済困窮時にも活用できます。
🛡
生活保護
最低限度の生活を保障する制度。精神疾患により就労困難で収入が得られない場合に申請可能。生活扶助のほか、医療扶助(医療費の全額公費負担)も受けられます。
🧹
ホームヘルプ(居宅介護)
精神障害で日常生活が困難な方の自宅にホームヘルパーが訪問し、家事援助(調理・洗濯・掃除)・身体介護・通院等の介助を行います。
「住む場所がある」「光熱費が払える」——この基盤が揺らいでいると、治療も就労もうまく回りません。住まいの支援は土台の土台です。
ACT & TEAM

包括型地域生活支援(ACT)と多職種連携

ACT(積極的地域治療)は、重度の精神障害を抱える方に、多職種チームがアウトリーチで包括的サービスを提供する支援モデル。さらに各専門職が連携することで、トータルサポートが実現されます。

ACTとは

包括型地域生活支援(ACT)の概要

ACT(Assertive Community Treatment:積極的地域治療/包括型地域生活支援プログラム)は、重度の精神障害を抱え、入退院を繰り返したり長期入院を余儀なくされたりしている方のために、地域に出向いて多職種チームが包括的なサービスを提供する支援モデルです。1970年代にアメリカのウィスコンシン州で始まり、現在では欧米を中心に広く普及しています。日本でも2000年代から一部の病院・地域で試験的に導入が始まり、その効果が認められています。

ACTの特徴

ACTを特徴づける5つのポイント

  • 多職種チームによる支援精神科医・看護師・作業療法士・精神保健福祉士・就労支援専門員などが一つのチームを形成します。
  • 24時間365日対応緊急時にはいつでも支援チームに連絡できる体制を整えています。
  • アウトリーチ(訪問型)支援病院やオフィスではなく、利用者の自宅や職場など生活の場に出向いて支援を行います。
  • 医療と生活支援の統合服薬管理・症状モニタリングから家事援助・就労支援まで、一つのチームで対応します。
  • 低いケースロードスタッフ1人が担当する利用者数を少なく設定し、密度の高い支援を実現します。
ACTの効果

国内外の研究で示される効果

ACTの導入により、入院日数の大幅な短縮・住居の安定・就労率の向上・利用者の満足度向上などの効果が国内外の研究で示されています。特に、これまで支援が届きにくかった「治療中断者」や「長期入院患者」への効果が大きいとされています。

💡
「待つ医療」から「届ける支援」へ。ACTは生活の場まで支援が出向く設計が、従来の枠組みで支えにくかった人々に届く理由です。
多職種連携

メンタルヘルス支援に関わる主な専門職

トータルサポートを実現するためには、さまざまな専門職が連携して一人の利用者を支えることが不可欠です。ここでは、メンタルヘルス支援に関わる主な専門職と、その役割を紹介します。

🩺
精神科医・心療内科医
診断・薬物療法・精神療法の中核を担当。治療方針の決定と他職種へのコンサルテーションを行います。
📋
精神保健福祉士(PSW)
精神障害者の相談支援・権利擁護・地域生活支援を専門とする国家資格者。入退院調整・福祉サービス手続き支援・家族支援・地域ネットワーク構築など、社会的支援のコーディネートを担います。こころの健康問題を抱える方の相談に乗り、希望の実現を支援する専門家です。
🧠
公認心理師・臨床心理士
心理的アセスメント・カウンセリング・心理療法・集団療法などを担当。認知行動療法(CBT)・弁証法的行動療法(DBT)・EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)など、エビデンスに基づいた心理療法を提供します。
💉
看護師・精神科認定看護師
病棟・外来での医療的ケアのほか、訪問看護として地域での服薬管理・体調観察・危機介入を行います。
🛠
作業療法士(OT)
デイケア・訪問サービスの場で、日常生活動作の訓練・職業前訓練・余暇活動支援などを担当。「作業」を通じた心身のリハビリテーションを専門とします。
🤲
社会福祉士
生活全般の困りごとに対する相談支援・福祉サービスの調整・権利擁護などを担います。
🏢
産業医・産業保健スタッフ
職場でのメンタルヘルス対策・休職・復職支援に関わり、主治医と職場の橋渡し役として重要な機能を果たします。
💗
ピアサポーター
精神疾患の当事者経験を持つ人が支援者として寄り添います。専門家とは異なる「経験に基づく理解」が、利用者の希望回復(リカバリー)に大きな力を発揮します。
CONSULT & SYSTEM

相談機関・自立支援医療・相談窓口

精神保健福祉センターをはじめ、自立支援医療制度・各種相談窓口は、トータルサポートに繋がるための入り口です。どこから相談すれば良いかを知ることが、最初の一歩になります。

精神保健福祉センター

精神保健福祉センターの役割

精神保健福祉センターは、都道府県・政令指定都市に設置された精神保健と精神障害者の福祉に関する総合的な技術センターです。全国に69か所(2024年時点)設置されており、以下のような機能を担っています。

  • 相談支援本人・家族・関係者からの精神保健福祉に関する相談を受付。電話・来所・訪問の多様な形態で、依存症・引きこもり・発達障害・自殺念慮など幅広い問題に対応しています。
  • 研修・普及啓発地域の医療・福祉・保健・教育などの専門職向け研修を実施。一般市民向けのメンタルヘルス普及啓発活動も行います。
  • コンサルテーション(専門的助言)市町村の保健センター・福祉事務所・学校など、地域の関係機関に専門的助言を提供します。
  • 自立支援医療の支給認定精神通院医療に係る自立支援医療の支給認定を都道府県・指定都市に代わって行うことがあります。
  • アクセス方法全国69か所(2024年時点)に設置。所在地・連絡先は厚生労働省ウェブサイトや各都道府県HPで確認可能。相談は基本無料。「こころの情報サイト」(国立精神・神経医療研究センター運営)にも情報が掲載されています。
自立支援医療制度

自立支援医療制度(精神通院医療)の活用

自立支援医療制度(精神通院医療)は、精神疾患の治療のために継続的に通院が必要な方の医療費を軽減する制度です。障害者総合支援法に基づき、全国で利用できます。

  • 対象となる方統合失調症・うつ病・双極性障害・不安障害・強迫性障害・発達障害・依存症など、精神疾患(てんかんを含む)で通院による継続治療が必要な方が対象です。
  • 対象となる医療精神科・心療内科の外来診察・投薬/デイケア・ショートケア・ナイトケア・精神科作業療法/訪問看護・精神科訪問看護/精神科外来作業療法。
  • 費用負担の仕組み通常3割の医療費自己負担が原則1割に軽減。世帯の所得状況に応じて「月額上限負担額」が設定され、医療費が大幅に抑えられます。低所得(住民税非課税世帯)では月額負担が2,500円〜5,000円程度の少額となる場合もあります。
  • 申請方法申請先は市区町村(または都道府県・指定都市)の窓口。主治医作成の診断書(意見書)・申請書・保険証などを持参して申請。有効期間1年で、毎年更新が必要です。
  • 活用のポイントメンタルヘルス支援で最も身近で活用しやすい制度の一つ。精神科通院を始めたら早めに主治医や精神保健福祉士に相談を。制度を知らずに高額の医療費を払い続けている方も多いため、積極的な活用がおすすめです。
💡
知らずに損をしている人が多い通院を始めたら、まず自立支援医療の申請を主治医や精神保健福祉士に相談を。3割→1割は、長期通院では非常に大きな差になります。
相談窓口の種類

相談窓口と支援機関への繋がり方

トータルサポートを受けるためには、まず適切な相談窓口に繋がることが出発点となります。どこに相談すれば良いかわからない場合は、以下の窓口を活用してください。

🏥
かかりつけの精神科・心療内科
通院中なら、主治医や病院のソーシャルワーカー(精神保健福祉士)に「生活全般で困っていること」を相談するのが最も近道。福祉サービスへの繋ぎや各種手続き支援を行います。
🏛
市区町村の障害福祉窓口
「障害者手帳」「障害福祉サービス」「自立支援医療」などの手続きを行う窓口。初めての相談でも丁寧に案内してもらえます。
🧭
基幹相談支援センター
地域における相談支援の中核機関として市区町村が設置・委託。障害福祉サービスの利用相談・計画作成支援・権利擁護など、総合的相談に対応します。
🏢
精神保健福祉センター
都道府県・政令指定都市に設置。精神保健に関する専門的な相談ができ、電話・来所・訪問にも対応します。
🩺
保健所・保健センター
地域の保健師が精神保健の相談を受付。受診前段階でも相談でき、地域関係機関への橋渡しも行います。
📞
よりそいホットライン
0120-279-338。24時間365日対応の電話相談で、生活困窮・暴力被害・外国語対応など幅広い相談に無料で応じます。精神的な悩み・危機状態にも対応。
いのちの電話
0120-783-556。自殺念慮や深刻な心の危機状態にある方を対象としたフリーダイヤル。毎日16時〜21時、毎月10日は8時〜翌8時対応。
💬
オンライン相談・チャット相談
電話・対面が難しい方向けに、チャットやビデオ通話による相談サービスも増加。「ここともコネクト」など24時間気軽に相談できるサービスを活用しましょう。
FAMILY SUPPORT

家族・周囲の人へのサポートも含む

トータルサポートは、精神疾患を抱える本人だけでなく、その家族や周囲の人々へのサポートも重要な要素として含んでいます。家族もまた、支援を受ける権利があります。

家族の困難

家族が抱える困難

精神疾患を抱える家族を支える家族は、しばしば「ケアラー」として過大な負担を担います。症状への対応・再発への不安・経済的負担・社会的孤立・自身の心身の疲弊など、複合的な問題を抱えることが多く、本人への支援と並行して家族への支援が必要です。

主なサポート

家族への主なサポート

  • 家族相談精神保健福祉センター・医療機関・相談支援事業所などで、家族からの相談に対応しています。
  • 家族教室・家族心理教育病気の正しい知識・対応方法・コミュニケーションの取り方などを学ぶプログラム。再入院率の低下や家族の負担感軽減に効果があるとされています。
  • 家族会・セルフヘルプグループ同じ立場の家族同士が集まり、情報共有や励まし合いを行う場。「全国精神保健福祉会連合会(みんなねっと)」などが全国的に活動しています。
  • ヤングケアラー支援精神疾患の親をケアする子どもへの支援も近年重視されており、学校や地域の相談機関が対応しています。
家族自身のメンタル

家族自身のメンタルヘルス

家族自身もメンタルヘルスの不調を抱えるリスクがあります。「自分が頑張らなければ」と無理をしすぎないこと、自分自身の相談先を持つことが重要です。家族もまた、トータルサポートの対象として支援を受ける権利があります。

支える人にも支えが必要本人の回復と家族のメンタルヘルスは別物。家族が倒れたら支援も止まる、という現実を踏まえて、家族自身の相談先を確保しましょう。
DIGITAL

デジタル・オンラインを活用したトータルサポート

近年、デジタル技術の進歩により、メンタルヘルス支援の形も大きく変わりつつあります。2025年には「デジタルメンタルヘルスサービス カオスマップ」が公表されるなど、ICTを活用した支援が急速に普及しています。

4つのデジタル支援

活用できるデジタルサポートの種類

📱
オンライン診療
スマートフォン・パソコンを通じて自宅から精神科・心療内科の診察を受けられます。外出困難な方、地域に精神科がない方、通院の時間的コストを削減したい方にメリット大。ただし初診は対面が原則のケースもあるため、各医療機関への確認が必要です。
📊
メンタルヘルスアプリ
気分の記録・睡眠トラッキング・マインドフルネス練習・認知行動療法のワーク・ストレスチェックなど、多様な機能を持つアプリが普及。専門支援の代替にはなりませんが、日常的セルフケアの補助ツールとして有効です。
💬
チャット・テキスト相談
電話が苦手・話すことに抵抗がある・夜間に悩みが出やすい方にとって大きな助け。カウンセラーや支援員がテキストで対応するサービスが増えており、匿名相談が可能なものも多くあります。
🌐
SNS・オンラインコミュニティ
同じ経験を持つ人とつながれるオンライン当事者コミュニティ・自助グループも活発に活動。ただし情報の正確性に注意が必要で、専門家のサポートと組み合わせることが重要です。
注意点

デジタルサポートを使う上での注意

デジタルを活用したサポートは便利ですが、危機状態(自殺念慮・自傷行為・精神症状の急激な悪化など)の場合は、速やかに専門的な対面サポートや緊急支援に繋がることが最優先です。

⚠️
緊急時はデジタルでは足りないテキスト相談やアプリは「日常のセルフケア」と「相談の入り口」に強い一方、急性期の危機にはリアルな専門支援が必要です。使い分けを意識しましょう。
HOW TO START

トータルサポートを受けるための具体的ステップ

「トータルサポートを受けたいけど、どこから始めればいいかわからない」という方のために、6つのステップを示します。順番通りでなくても構いません。今できるところから始めましょう。

6ステップ

相談から地域接続までの流れ

STEP 1
まず相談する
困っていることを誰かに話すのが最初の一歩。精神科・心療内科・保健所・精神保健福祉センター・電話相談窓口など、どこでも構いません。「何から話せばいいかわからない」「自分が支援を受けていいのか不安」という場合も、そのまま伝えて大丈夫です。
出発点
STEP 2
診察・アセスメントを受ける
医療機関を受診し、現在の状態・困りごと・希望について話します。診断が確定することで、利用できるサービス・制度が明確になります。
医療機関
STEP 3
支援計画を立てる
相談支援専門員・ソーシャルワーカーと一緒に「どんな支援が必要か」「どんな生活を目指すか」を整理。障害福祉サービスを利用する場合は「サービス等利用計画」を作成します。
計画作成
STEP 4
各種手続きを行う
精神障害者保健福祉手帳の申請・自立支援医療の申請・障害福祉サービスの支給決定申請など、必要な手続きを市区町村窓口で実施。ソーシャルワーカーや支援員が同行・補助してくれる場合もあります。
市区町村窓口
STEP 5
サービス利用と継続的見直し
支援計画は固定されたものではなく、状態や希望の変化に応じて定期的に見直します。「もっとこんなサポートが欲しい」「このサービスは自分に合わない」という声を支援者に伝えることが大切です。
継続調整
STEP 6
地域のつながりを築く
支援機関・当事者グループ・地域住民などとのつながりを少しずつ広げ、一人で抱え込まない環境を整えます。
地域接続
「自分が支援を受けていいのか不安」——その不安そのものを最初の窓口で伝えて大丈夫。受け止めてくれる人がいます。
RECOVERY & WORKPLACE

リカバリーの理念と職場のトータルサポート

トータルサポートが目指すのは、症状の消失ではなく「自分らしく充実した人生を生きること」——リカバリーの理念です。職場のメンタルヘルスにおいても、3層構造のトータルサポートが重要となります。

リカバリーとは

現代メンタルヘルスにおけるリカバリーの位置づけ

現代のメンタルヘルス支援において、「リカバリー(Recovery)」という概念は非常に重要な位置を占めています。リカバリーとは、単に「症状がなくなること」ではなく、「精神疾患があっても、自分らしく充実した人生を生きること」を意味します。

トータルサポートは、このリカバリーの理念を実現するための仕組みです。医療的な症状の管理のみならず、希望・目標・人とのつながり・社会参加・アイデンティティの回復を支えることが、本当の意味でのトータルサポートといえます。

2つのリカバリー

パーソナルリカバリーとクリニカルリカバリー

  • パーソナルリカバリー症状の有無にかかわらず、その人が自分の価値観・希望・役割に沿って生きることができる状態を目指します。「私の人生は私のもの」という主体性の回復が核心にあります。
  • クリニカルリカバリー症状の軽減・社会機能の回復・再入院の防止など、医学的な観点からの回復。パーソナルリカバリーと並行して追求されます。
  • 支援者の役割の変化リカバリーの理念では、支援者は「専門家として正しい答えを提供する人」ではなく「当事者が自分の人生の主人公として歩むことを側面から支える人」とされます。「当事者中心の支援(パーソンセンタードケア)」がトータルサポートの基本姿勢です。
💡
「治す」よりも「ともに歩む」。リカバリーモデルは、支援者と当事者の関係そのものを再定義します。
職場の3層予防

職場のメンタルヘルスにおけるトータルサポート

働く人のメンタルヘルスに対するトータルサポートは、個人レベル・職場レベル・制度レベルの3層で考えることが重要です。厚生労働省の「こころの耳」ポータルサイトでも、働く人・企業・支援者それぞれへの情報提供が行われています。

🛡
一次予防:未然防止
ストレスチェック制度(労働者50人以上の事業所に義務付け)の活用・ハイリスク者への面接指導・職場環境の改善・メンタルヘルスリテラシー教育などが含まれます。2024年の制度改正により、ストレスチェック対象が拡大される方向で検討が進んでいます。
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二次予防:早期発見・早期対応
メンタルヘルス不調のサインを早期に察知し、産業医・産業保健スタッフへの相談に繋げます。管理職向けのラインケア研修・同僚へのセルフケア研修が重要な役割を果たします。
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三次予防:休職・復職支援と再発防止
休職中の医療的支援・リワーク支援・段階的復職計画・復職後のフォローアップを通じて再発を防ぎつつ職場復帰を実現。主治医・産業医・人事・直属上司・EAP(従業員支援プログラム)が連携したトータル支援が求められます。
FAQ

よくある質問

トータルサポートに関して、よく寄せられる疑問をまとめました。手帳の必要性・費用・働きながらの利用・家族の受診拒否・地方在住・機関の探し方まで、6つのQ&Aで解説します。

FAQ

トータルサポートへのよくある質問

Q. 精神障害者保健福祉手帳がないとトータルサポートは受けられませんか?

A. 必ずしも手帳がなくても、多くの相談支援・医療・一部の福祉サービスは利用できます。ただし障害福祉サービスの多くは「障害支援区分の認定」が必要であり、精神疾患の診断書が必要となる場合があります。手帳の取得は義務ではありませんが、取得することで利用できるサービスや制度が広がるため、主治医や支援者に相談してみましょう。

Q. トータルサポートはお金がかかりますか?

A. 相談支援そのものは無料のものが多くあります。医療費については自立支援医療制度により大幅に軽減できます。障害福祉サービスの利用者負担は原則1割ですが、所得に応じた月額上限があります。生活保護受給者は原則自己負担なしで利用できます。

Q. 働いていてもトータルサポートは受けられますか?

A. はい、働きながらでもトータルサポートを受けられます。就労しながら精神科に通院し、必要に応じて相談支援や障害福祉サービスを利用することは一般的です。職場での合理的配慮や産業保健スタッフとの連携も、トータルサポートの一環です。

Q. 家族が精神科受診を拒否しています。どうすれば良いですか?

A. まず家族自身が精神保健福祉センターや保健所に相談することをお勧めします。本人が受診に同意していない場合でも、家族への相談支援・情報提供・本人への関わり方のアドバイスを受けられます。緊急性が高い場合は、保健所や精神科救急相談窓口に相談してください。

Q. 地方に住んでいますが、支援機関が少ない場合はどうすればよいですか?

A. 地方では支援資源が限られていることもありますが、精神保健福祉センター・保健所・市区町村窓口などは全国に設置されています。また、オンライン診療・チャット相談など地域を問わず利用できるデジタルサービスも活用できます。広域の支援機関に相談することで、最適な支援に繋いでもらえる場合もあります。

Q. 「トータルサポート」を明示している機関はどうやって探せますか?

A. 「トータルサポート」という名称は統一されていないため、「包括的支援」「地域生活支援」「多職種連携」などのキーワードで検索することも有効です。精神保健福祉センター・基幹相談支援センター・市区町村の障害福祉窓口に相談すれば、地域で利用できる資源を紹介してもらえます。

一人で抱え込まないために困りごとの大小にかかわらず、相談することは決して恥ずかしいことではありません。一人で限界まで頑張ることより、早めに誰かに相談し、必要な支援に繋がることの方が、回復への近道となることが多いのです。

「自分一人ではもう抱えきれない」と
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このページの情報は、医師による診断や治療に代わるものではありません。症状が気になる場合は、心療内科・精神科への受診をご検討ください。

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