任意入院とは?
精神科入院の手続き・費用・退院方法を完全解説
任意入院は、本人が自ら同意して精神科病院に入院する形態で、精神保健福祉法第20条に根拠を持つ最も基本的な精神科入院の仕組みです。日本の精神科入院全体の約60%を占め、うつ病・統合失調症・双極性障害・摂食障害など幅広い精神疾患の治療に活用されています。法的根拠・手続き・3形態の違い・入院中の生活・退院方法と72時間ルール・費用と経済的支援・患者の権利・家族の関与・退院後の支援まで網羅的に解説します。
任意入院とは——定義と法的根拠
任意入院は、本人が自ら同意して精神科病院に入院する形態で、精神保健福祉法第20条に根拠を持つ、最も基本的な精神科入院の仕組みです。日本の精神科入院全体のうち約60%を占めます。
任意入院の定義
任意入院(にんいにゅういん)とは、精神障害のある人が自らの意思で同意し、精神科病院に入院する形態のことです。「任意」という言葉が示すとおり、本人の自由意思に基づく入院であり、強制的な要素がないことが最大の特徴です。
精神科への入院といえば「強制的に連れて行かれる」というイメージを持つ方もいますが、実際には日本の精神科入院の約60%がこの任意入院です。本人が「入院して治療を受けたい」「この状態を改善したい」という意志を持って臨む入院であるため、治療への動機づけが高く、回復にもつながりやすいとされています。
任意入院は精神科病院だけでなく、精神科病床を有する総合病院や大学病院でも行われます。対象となる疾患はうつ病・双極性障害・統合失調症・摂食障害・アルコール依存症・強迫性障害・パニック障害など多岐にわたります。
精神保健福祉法第20条——任意入院の根拠
任意入院の根拠となる法律は、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)です。同法第20条には次のように規定されています。
この条文は、精神科入院においてはまず本人の同意を得ることを原則とするという、精神医療の基本理念を定めたものです。精神医療においては長い歴史のなかで強制入院が広く行われてきた時代もありましたが、現代の精神保健福祉法は、本人の意思を尊重し、インフォームドコンセント(説明と同意)に基づく入院を最優先としています。
なお、第21条第1項では「精神科病院の管理者は、第20条の規定による入院に際しては、退院請求権等を記載した書面を交付し、かつ、当該患者から自ら入院する旨を記載した書面を徴さなければならない」と規定されており、入院時には書面による同意の取得と権利告知が義務づけられています。
任意入院が成立するための要件
任意入院が成立するためには、法律上次の要件が必要です。
- 本人の同意があること(第20条)任意入院の最大の要件。強制・脅迫・虚偽説明による「同意」は任意入院とは認められません。
- 精神障害者であること精神疾患の診断がついていること。ただし、厳密な精神保健指定医による診察は入院時に必須とはされていません。
- 入院治療が適応であること外来での治療では対応困難な状態にあり、入院による集中的な医療が必要であること。
医療保護入院や措置入院と異なり、任意入院では精神保健指定医の診察を経ることが法律上の必須要件とはなっていません。ただし実際には、精神科医師が診察して入院の適応を判断した上で手続きが進められます。
任意入院の割合と現状
厚生労働省の資料では、任意入院・医療保護入院・措置入院の割合はおおよそ6:4:0.1とされており、任意入院が圧倒的多数を占めます。措置入院は全体の0.1%程度に過ぎず、近年は減少傾向にあります。日本の精神医療は、本人の意思による治療を中心に組み立てられているといえます。
任意入院の手続きと流れ
任意入院は、外来受診から書面同意・入院手続きまで一連のステップで進みます。すでに通院している病院に入院する場合と、初めて受診する場合で多少異なりますが、基本的なプロセスは共通しています。
任意入院に至るまでの6つのステップ
任意入院は、多くの場合、以下のような流れで進みます。
入院前に準備すること
入院が決まったら、できるだけ早めに以下の準備を進めましょう。緊急入院の場合は準備期間がない場合もありますが、後日家族に持ってきてもらうことも可能です。
- 健康保険証・マイナンバーカード(保険証利用登録済みのもの)入院手続きに必須です。
- 限度額適用認定証高額療養費制度を事前に利用する場合に必要。加入している健康保険の窓口に申請します。
- 緊急連絡先の確認家族や保証人となる方の連絡先をあらかじめ確認しておきます。
- 服薬中の薬・お薬手帳現在服用している薬の情報は治療上非常に重要です。
- 入院費用の概算確認病院に事前に月額費用の目安を問い合わせておくと安心です。
- 職場・学校への連絡休職・休学の手続きが必要な場合は担当者に相談します。
- 日常の手続きの整理公共料金の引き落とし、ペットの世話など、長期入院になる場合は事前に整理しておきます。
緊急入院の場合
自傷行為・自殺企図・急性の精神症状悪化などの緊急状態では、通常の外来受診を経ずに緊急入院となる場合があります。この場合も、任意入院として行われる場合には本人の同意が得られるかどうかが確認されます。
- ✓精神科救急外来への受診:夜間・休日でも対応できる精神科救急外来がある病院に受診します。各都道府県の精神科救急情報センターに電話すると案内が得られます。
- ✓救急車の利用:自傷他害の危険が切迫している場合は119番に電話します。警察への相談(110番)が有効な場合もあります。
- ✓精神保健福祉センターへの相談:緊急状態でない場合は、精神保健福祉センターに電話相談することで、適切な対応先を案内してもらえます。
入院の判断基準と適応となる疾患
精神科への入院は、外来通院では対応が困難な状況において検討されます。明確な数値的基準はなく、症状の程度・本人の生活環境・社会的サポートの有無などを総合的に判断します。
任意入院が検討される主な状況
「入院しなければならないレベル」という明確な数値的基準があるわけではなく、以下のような状況では、担当医から任意入院を勧められることがあります。
疾患別の入院適応の目安
主な精神疾患ごとに、任意入院が検討される目安を説明します。いずれも「必ずこの状態になったら入院」という絶対的な基準ではなく、個々の状況により異なります。
検討目安:自殺念慮が強い・食事摂取ゼロが続く・抗うつ薬への反応が不十分・在宅療養環境が整っていない
検討目安:躁状態で衝動的な行動が止まらない・多額の浪費・睡眠がほぼゼロ・うつ期に自殺リスクが高い
検討目安:幻覚・妄想が強く日常生活が困難・初発エピソードで経過を観察したい・急激な症状再燃
検討目安:BMI15以下など身体的に危険な低体重・電解質異常・外来通院での体重回復が困難
検討目安:断酒を試みたが離脱症状が強い・アルコール性肝障害などの身体合併症・在宅での断酒継続が困難
検討目安:外出できない・薬物療法への反応が不十分・日常生活が成り立たない
検討目安:自傷行為が繰り返される・現実検討能力が著しく低下・外来療法が進められない
主な目的:安全確保、薬物療法の調整、休養環境の確保
主な目的:気分安定薬の調整、行動制御、安全確保
主な目的:抗精神病薬の調整、症状の安定化、社会復帰支援
主な目的:栄養管理、身体合併症の治療、心理療法
主な目的:離脱症状の管理、身体治療、依存症プログラム
主な目的:薬物療法の調整、認知行動療法の集中実施
主な目的:安全確保、安定化技法の習得、心理的安定
「入院を勧められたが迷っている」という場合
医師から入院を勧められても、「本当に入院が必要なのか」「仕事や家庭はどうなるのか」と迷うことは自然なことです。任意入院は強制ではないため、本人が同意しなければ入院は成立しません。ただし、医師が入院を勧めているということは、現在の状態では外来での安全な治療が困難と判断されているということを意味します。
- 医師に具体的な理由を聞く「なぜ今入院が必要なのか」「入院しない場合のリスクは何か」を具体的に確認します。
- 入院期間の目安を確認する「どのくらいの期間を想定しているか」を聞いておくと、生活の見通しが立てやすくなります。
- セカンドオピニオンも選択肢迷いが大きい場合は、別の精神科医の意見を聞くことも選択肢のひとつです。
- 家族・信頼できる人と話す一人で判断しようとせず、家族や信頼できる人とも相談しましょう。
- 精神保健福祉士(PSW)に相談病院のPSWは入院に関する疑問や不安を聞いてくれる専門家です。遠慮なく相談してください。
任意入院・医療保護入院・措置入院の違い
日本の精神科入院には法律上いくつかの形態があります。大きく分けると、任意入院(自発的入院)と、医療保護入院・措置入院(非自発的入院)に分類されます。
3つの入院形態の比較
それぞれの特徴を理解しておくことは、本人・家族が適切な判断をするうえで重要です。
医療保護入院とは
医療保護入院は、精神保健福祉法第33条に基づく入院形態で、精神保健指定医が入院の必要性を認め、かつ本人の同意が得られない場合に、家族等(配偶者・親・兄弟姉妹・子など)の同意を得て入院させる制度です。
- 適用条件精神疾患があること・医療保護のために入院が必要であること・本人の同意が得られないこと(病識の欠如、判断能力の低下など)。
- 指定医の診察が必須精神保健指定医1名の診察によって入院の必要性が判断されます。
- 定期的な審査入院期間の更新時には、精神保健指定医による継続審査が必要です。
- 退院後生活環境相談員の配置すべての医療保護入院患者に退院後の生活環境を相談する専門員(精神保健福祉士等)が配置されることが義務づけられています。
- 退院支援委員会入院後一定期間が経過した場合、退院の見通しを検討する「退院支援委員会」の開催が義務づけられています。
措置入院とは
措置入院は、精神保健福祉法第29条に基づく最も強制力の強い入院形態で、都道府県知事の権限によって行われます。適用されるのは「精神疾患があり、かつ自傷他害(自分を傷つけること・他者を傷つけること)のおそれがある」と判断された場合に限られます。
- 2名以上の指定医の診察2名以上の精神保健指定医が独立して診察し、その診断が一致した場合にのみ措置入院が決定されます。
- 費用の公費負担措置入院は国と都道府県が費用を負担するため、患者の自己負担はありません。
- 退院は知事の権限症状が改善され自傷他害のおそれがなくなった場合、都道府県知事が退院を命じます。
- 非常にまれな形態全精神科入院の0.1%程度と非常にまれで、明らかに切迫した自傷他害の危険がある場合にのみ適用されます。
入院形態は変わることがある
任意入院として入院を開始した場合でも、入院後に病状が変化し、本人が退院を強く求めるようになった場合などには、医師の判断で医療保護入院に切り替わることがあります。逆に、医療保護入院で入院していた患者が病識を回復し、本人が入院継続に同意した場合に任意入院に変更されることもあります。入院形態の変更は、その都度医師からの説明と必要な手続きが行われます。
入院中の生活と治療内容
精神科病棟での生活は、病院によって多少異なりますが、概ね規則正しいスケジュールで組まれています。規則正しい生活リズムそのものが、精神症状の回復を助けるという治療的意味があります。
精神科病棟での一日の流れ(例)
病院によって時間や活動内容は異なりますが、以下は典型的な一日のスケジュールです。
精神科病棟での主な治療内容
精神科入院中の治療は、薬物療法を中心に、心理社会的療法・リハビリテーションなど多職種が連携して行われます。
病棟の種類と環境
精神科の病棟にはいくつかの種類があり、患者の状態によって適切な病棟が選ばれます。
- 急性期病棟症状が急性・重篤な患者を対象とした集中的治療を行う病棟。看護師の配置が厚く、24時間の監視体制が整っています。入院直後はこの病棟に入ることが多いです。
- 亜急性期・回復期病棟急性期を脱した後、社会復帰に向けてリハビリを行う病棟。作業療法・SST・外出訓練などのプログラムが充実しています。
- 慢性期病棟(療養病棟)長期にわたる療養が必要な患者を対象とした病棟です。
- 開放病棟・閉鎖病棟開放病棟は患者が自由に出入りできる環境の病棟、閉鎖病棟はセキュリティが高く患者の出入りを管理する病棟。任意入院でも閉鎖病棟に入院する場合があります。
- 個室・多床室個室は費用が高くなります。重症度や病院の空き状況によって決まることが多いです。
多職種チームによる支援
精神科の入院治療は、精神科医一人が担うのではなく、様々な専門職が連携するチーム医療として行われます。
退院の手続きと72時間ルール
任意入院の大きな特徴のひとつは、本人が申し出れば原則としていつでも退院できるという点です。患者の自己決定権を保障する重要な規定が法律で定められています。
任意入院者の退院の原則
精神保健福祉法第21条第2項には「精神科病院の管理者は、任意入院者から退院の申出があった場合においては、退院させなければならない」と明記されています。これは任意入院が「本人の自由意思に基づく入院」であることの当然の帰結であり、患者の自己決定権を保障する重要な規定です。
退院の手続きは、基本的には担当医師・看護師・精神保健福祉士に「退院したい」と伝えることから始まります。医師との面談を通じて退院の意向が確認され、退院後の生活の見通しが整えられたうえで退院日が設定されます。
72時間の退院制限——例外的な措置
原則として自由に退院できる任意入院ですが、精神保健福祉法第21条第3項には例外が定められています。精神保健指定医の診察の結果、医療または保護のために特に必要と判断される場合には、72時間(3日間)を限度として退院を制限することができます。
この72時間の退院制限は、あくまで例外的な措置であり、医師の恣意的な判断で無制限に延長できるものではありません。72時間を過ぎても引き続き入院が必要と判断される場合は、医療保護入院に切り替えるための手続きが必要となります。
退院請求制度
入院中の患者(任意入院・医療保護入院を問わず)は、都道府県知事に対して退院や処遇改善を請求する権利があります(精神保健福祉法第38条の4)。これが「退院請求制度(処遇改善請求制度)」です。
- 請求先入院している病院を管轄する都道府県(または政令指定都市)の精神医療審査会。
- 手続き書面または口頭で都道府県に請求します。病院のスタッフやPSWに「退院請求したい」と伝えると手伝ってもらえます。
- 審査精神医療審査会(精神科医・法律家・医療関係者などで構成)が入院の妥当性を審査します。
- 費用無料です。
- 弁護士の援助精神科に入院中の患者は弁護士への接見(面会・電話)を制限されません。法律相談が必要な場合は弁護士を呼ぶことができます。
退院の流れと退院後の計画
円滑な退院とその後の生活のために、退院計画(ディスチャージプランニング)が重要です。
- ✓医師との退院前面談:退院後の薬・通院頻度・生活上の注意点について説明を受けます
- ✓精神保健福祉士(PSW)との面談:退院後の住まい・仕事・学校・日中活動の場・使える支援制度などについて具体的な計画を立てます
- ✓外出・外泊練習:退院前に外出・外泊を段階的に増やし、退院後の生活に慣れていきます
- ✓家族への説明:退院後の生活を支える家族に対して、疾患の特性・症状の変化のサイン・緊急時の対応などについて説明がなされます(家族心理教育)
- ✓地域支援機関との連携:退院後に利用する訪問看護・デイケア・就労支援センターなどとの連携を退院前に整えます
入院費用と経済的支援制度
精神科への任意入院の費用は、一般の医療保険が適用されます。高額療養費制度・自立支援医療制度などの公的支援を活用することで、自己負担を大幅に軽減できます。
精神科入院の費用の目安
費用の内訳は、入院基本料・薬剤費・各種検査費・食事代などで構成されます。
高額療養費制度の活用
高額療養費制度とは、同じ月内に医療機関に支払った自己負担額が一定の上限額(自己負担限度額)を超えた場合に、その超えた分が後から支給される制度です。精神科入院のような長期・高額になりやすい医療では、この制度の活用が重要です。
- 年収約1,160万円以上(区分ア)月の自己負担限度額:252,600円+(医療費-842,000円)×1%
- 年収約770〜1,160万円(区分イ)月の自己負担限度額:167,400円+(医療費-558,000円)×1%
- 年収約370〜770万円(区分ウ)月の自己負担限度額:80,100円+(医療費-267,000円)×1%
- 年収約370万円以下(区分エ)月の自己負担限度額:57,600円
- 住民税非課税(区分オ)月の自己負担限度額:35,400円
限度額適用認定証を事前に取得して病院窓口に提示すれば、最初から自己負担限度額までしか支払わなくてよくなります(後から申請して払い戻しを受ける必要がなくなります)。加入している健康保険組合や協会けんぽ、または市区町村の国民健康保険担当窓口で申請できます。
自立支援医療制度(精神通院医療)
自立支援医療制度(精神通院医療)は、精神疾患のある方が継続的に外来通院する場合の医療費を軽減する制度です。重要なのは、この制度は原則として入院医療費には適用されないという点です。退院後の外来通院に対して適用されます。
内容:通常3割の医療費自己負担が原則1割に軽減される。さらに世帯の所得に応じて月額の自己負担上限額が設定される
申請窓口:お住まいの市区町村の福祉担当窓口(障害福祉課など)
必要書類:医師の診断書(自立支援医療用)・保険証・マイナンバーが確認できるもの・所得確認書類など
有効期限:原則1年(更新が必要)
入院への適用:入院医療費は原則対象外(外来通院の医療費に適用)
退院後の通院治療に移行した際は、できるだけ早めに自立支援医療(精神通院医療)の申請を行いましょう。入院中に精神保健福祉士(PSW)に相談すれば、申請の手伝いをしてもらえます。
その他の経済的支援
- 傷病手当金(健康保険)会社員・公務員が業務外の病気・けがで休職した場合、給与の約2/3が最大1年6ヶ月支給されます。精神科入院・休職中でも受給可能。健康保険組合や協会けんぽに申請します。
- 障害年金精神疾患によって日常生活・就労が著しく困難な状態が1年6ヶ月以上続いている場合、精神の障害を理由とした障害年金(障害基礎年金・障害厚生年金)を申請できる可能性があります。
- 生活保護入院費用を含む生活費の全般的な支援が必要な場合、生活保護の申請を検討します。福祉事務所(市区町村役場の生活保護担当窓口)に相談します。
- 社会福祉協議会の緊急小口資金一時的に生活費が不足している場合、社会福祉協議会から低利または無利子で借りられる制度があります。
- 精神障害者保健福祉手帳精神疾患による障害が一定程度ある場合に取得できる手帳。税金の優遇・公共交通機関の割引・各種サービスの割引などが受けられます。
入院前の準備・持ち物リスト
入院が決まったら、書類・持ち物・連絡先などを早めに準備しておくと安心です。精神科病棟では安全上の理由から持ち込めないものもあるため、事前に病院に確認しておきましょう。
入院時に必要な書類・手続き
- 健康保険証(またはマイナンバーカード)入院手続きの必須書類。忘れた場合は後日提出でも対応可能な病院が多い
- 限度額適用認定証(事前に申請した場合)入院時に提示することで高額療養費の手続きが簡便になる
- お薬手帳・現在服用中の薬他院で処方されている薬も含め、すべて持参する
- 診察券(かかりつけ医がいる場合)医療情報の共有のために役立つ
- 入院同意書・緊急連絡先書類病院所定の書類。入院当日に記入するか、事前に取り寄せて記入しておく
- 印鑑病院によっては書類に印鑑が必要な場合がある
- 医療費の支払い方法の確認クレジットカード・現金などの利用可否を事前確認
入院に必要な持ち物
精神科病棟では、安全上の理由から持ち込めないものがある場合があります(刃物・ライター・過量服薬を防ぐための薬の自己管理など)。事前に病院に確認しておきましょう。以下は一般的な持ち物リストです。
- パジャマ・ルームウェア3〜5枚程度。動きやすく着替えやすいものが望ましい
- 下着・靴下3〜7枚程度
- 洗面用具歯ブラシ・歯磨き粉・シャンプー・ボディソープ・タオルなど
- スリッパ・室内履き病院内で安全に歩けるもの
- 洗濯用品洗濯が可能な病院では洗濯洗剤・ネットなど(病院の洗濯機を使用可能か確認する)
- 書籍・雑誌・文具自由時間の過ごし方として。ただし持ち込み可否を事前確認
- ラジオ・イヤホンテレビ・音楽プレーヤーなど。スマートフォンの持ち込みは病院の方針により異なる
- 眼鏡・コンタクトレンズ・補聴器日常的に使用している補助具
- 現金(小銭)自動販売機・コンビニ・公衆電話(一部病院)などのために少額の現金。ただし多額の現金は病院の管理に預けることが多い
入院中のスマートフォン・携帯電話の利用
スマートフォンや携帯電話の持ち込み・利用については、病院によって方針が大きく異なります。
- 持ち込み可・利用制限あり自室内のみ可、特定の時間帯のみ可、SNS閲覧を自制するよう指導されるなど。
- 持ち込み禁止急性期病棟や閉鎖病棟では、治療上の理由から持ち込みを禁止している場合があります。
- 充電器の管理コード類が制限される場合は、充電器も預かりになることがあります。
入院前に病院に確認し、持ち込めない場合は大切なデータのバックアップや連絡先の書き出しを事前に行っておくとよいでしょう。また、退院請求権の行使や弁護士との連絡は、スマートフォンの有無にかかわらず保障されています。
患者の権利と行動制限
精神科に入院している患者には、法律によって保障された重要な権利があります。任意入院・医療保護入院を問わず、これらの権利は守られなければなりません。
精神科入院患者の基本的権利
入院形態にかかわらず、以下の権利は保障されています。
行動制限とは
精神科病棟では、患者の医療または保護のために必要な限度において、行動を制限することができます(精神保健福祉法第36条)。ただし、行動制限は患者の権利に対する重大な制限であるため、厳格なルールのもとで行われます。
- 隔離内容:患者を他の患者から隔離された部屋(保護室など)に入れること
条件:自傷他害のおそれが強い・他の患者との人間関係が療養上著しく妨げとなる場合など。精神保健指定医の指示が必要 - 身体的拘束内容:身体を縛ったり、拘束帯を使用すること
条件:自傷他害が切迫しており、他の手段では防止できない場合に限る。精神保健指定医の指示が必要。最小限かつ短期間でなければならない - 外出・外泊の制限内容:病院外への外出・家への外泊を制限すること
条件:医師が治療上必要と判断した場合。任意入院では患者の意向も考慮される - 面会の制限内容:特定の人との面会を制限すること
条件:患者の治療上必要な場合。ただし弁護士・人権擁護機関との面会は制限不可 - 電話の制限内容:電話の使用を制限すること
条件:治療上必要な場合。ただし弁護士・人権擁護機関への電話は絶対制限不可
行動制限が行われた場合は、その理由・期間・担当医の指示などが診療録に記録されます。患者または家族は、行動制限の理由について説明を求めることができます。
絶対に制限できないこと
精神保健福祉法により、以下の行為はいかなる理由があっても制限することができないと明記されています。
- ✓信書の発受(手紙の送受信):手紙の内容の検閲も含めて一切の制限が禁止されています。
- ✓都道府県・地方法務局などの人権擁護機関への電話・面会:精神保健福祉センター・法務局・都道府県の精神医療審査会などへの連絡は常に自由です。
- ✓弁護士との電話・面会:患者の代理人または代理人候補の弁護士との連絡は絶対に制限できません。
家族の関与とサポート
任意入院は本人の同意のみで成立するため、法律上は家族の同意は不要です。ただし実際には、家族が患者の治療の重要なサポーターとなることが多く、入院中・退院後を通じて家族の関与は回復に大きな影響を与えます。
任意入院における家族の立場
任意入院は本人の同意のみで成立するため、法律上は家族の同意は不要です。ただし実際には、家族が患者の治療の重要なサポーターとなることが多く、入院中・退院後を通じて家族の関与は回復に大きな影響を与えます。一方で、家族との関係が症状に影響している場合(家庭環境が大きなストレス源の場合など)は、入院中の面会・連絡を一時的に制限することが治療上有益なこともあります。
家族ができるサポート
- ✓情報の提供:患者の日常の様子・生活歴・これまでの症状の経緯などを医療スタッフに伝えることは、正確な診断と治療計画の立案に役立つ
- ✓入院手続きへの協力:保証人・緊急連絡先としての役割、入院時の書類への協力
- ✓面会・電話での精神的支援:適切な頻度での面会・電話連絡は、患者の孤独感を軽減し、回復の動機づけになる。ただし過度の心配や干渉は逆効果になることも
- ✓必要な持ち物の持参:入院中に不足したものを持ってくる
- ✓退院後の生活環境の整備:退院後の住まい・生活環境を整えることは退院後の再入院防止に重要
- ✓家族心理教育への参加:病院が提供する家族向けの勉強会・心理教育プログラムに参加し、疾患の理解を深める
家族自身のケアの重要性
精神疾患の家族を持つ方は、介護疲れ・感情的消耗・経済的不安など多くの困難に直面します。家族自身のメンタルヘルスをケアすることも、長期的な支援を続けるうえで不可欠です。
- 家族会への参加同じ立場の家族とつながり、体験を分かち合う場。「全国精神障害者家族会連合会(みんなねっと)」などが運営しています。
- 精神保健福祉センターへの相談家族として直面している困難を専門家に相談できます。無料・匿名での相談が可能です。
- ひきこもり地域支援センターひきこもりを伴う精神疾患の場合は、各都道府県のひきこもり地域支援センターに家族から相談できます。
- カウンセリングの活用家族自身がカウンセリングを受けることで、感情の整理・コミュニケーション改善につながります。
- 「感情表出(EE)」を学ぶ研究では、家族の過度な批判・過干渉(高EE)が再発リスクを高めることが示されています。心理教育で適切な関わり方を学ぶことが重要です。
本人が入院を拒否している場合
「家族は入院が必要だと思っているが、本人が拒否している」という状況はよく起こります。任意入院は本人の同意が必須であるため、強制的に入院させることはできません。このような場合の対応として以下を検討してください。
- ✓精神保健福祉センターへの相談:対応の仕方・受診への促し方について専門家に相談する
- ✓かかりつけ医への相談:本人が信頼している医師から話してもらうことで、受診・入院への抵抗が和らぐことがある
- ✓自傷他害のおそれがある場合:切迫した自傷他害の危険がある場合は、警察・救急・精神科救急に連絡することが必要になる場合がある。精神保健福祉法に基づく緊急措置(第29条の2)が適用されることもある
- ✓「待つ」ことも戦略:強引に入院を促そうとすると、本人との関係が悪化し、治療からさらに遠ざかることがある。まず信頼関係を維持しながら、専門家の助けを借りて少しずつ受診につなげることが重要
退院後の支援と地域移行
精神科から退院した後、再発を防いで地域で生活を続けるためには、外来治療の継続とともに様々な地域資源を活用することが重要です。近年の精神医療は「長期入院から地域生活へ」という流れが強まっています。
退院後の生活を支える地域資源
退院後を支える仕組みも充実してきています。複数を組み合わせて利用することで、地域での安定した生活を実現しやすくなります。
再発を防ぐためのセルフケア
退院後に安定した生活を送り、再発を防ぐためには、自分自身の状態を知り、セルフケアを実践することが大切です。
- ✓服薬の継続:症状が改善しても、医師の指示なく薬を中断しない。「調子がよいから必要ない」という自己判断での中断は再発リスクを高める
- ✓睡眠リズムの確保:精神疾患では睡眠の乱れが再発の前兆になることが多い。規則正しい睡眠リズムを維持することが予防につながる
- ✓再発のサイン(前駆症状)を知る:自分の再発前に現れやすいサイン(睡眠変化・食欲の変化・思考の速さの変化など)をあらかじめ担当医と話し合っておく
- ✓ストレス管理:ストレスを完全にゼロにすることはできないが、過度なストレスを避け、リラクゼーション・運動・趣味などで発散する習慣をつける
- ✓クライシスプランの作成:「もし再びひどくなったら誰に連絡するか・どの病院に行くか」などを事前に決めておくことで、緊急時の判断をあらかじめ整理しておく
- ✓支援者・相談先を持つ:孤立しないことが重要。信頼できる家族・友人・支援者・専門機関への相談ルートを複数確保しておく
長期入院からの地域移行
日本では歴史的に精神科の長期入院が多く、現在も入院期間が1年以上の「長期入院患者」が多数います。長期入院後の地域移行は、一人暮らしへの急な移行ではなく、グループホームでの共同生活・地域活動支援センターの利用・支援付き就労などを経た段階的な移行が推奨されています。「地域移行支援」「地域定着支援」という障害福祉サービスも活用できます。
任意入院に関するQ&A
A. はい、任意入院は本人の同意が必須であるため、本人が断れば原則として入院は行われません。医師から「入院した方がいい」と勧められた場合でも、最終的な決断は本人にあります。ただし、病状が重篤で判断能力が著しく低下している場合や、自傷他害のおそれが切迫している場合には、医療保護入院や措置入院などの非自発的入院の検討が必要になることがあります。迷っている場合は、入院を断る前に担当医や精神保健福祉士に「なぜ入院が必要なのか」をしっかり確認し、納得のいく説明を求めることをお勧めします。
A. 原則として、任意入院中に退院の申し出をすれば退院できます(精神保健福祉法第21条第2項)。ただし、精神保健指定医が「今すぐ退院することで重大な危険がある」と判断した場合には、最大72時間(3日間)の退院制限が行われる可能性があります。この72時間は「医療保護入院に切り替えるかどうかを検討するための時間」であり、無制限に延長はできません。退院を希望する場合は担当医師・看護師・精神保健福祉士に意向を伝え、手続きを進めましょう。また、入院形態にかかわらず、都道府県の精神医療審査会への「退院請求」を行う権利もあります。
A. 精神科入院の費用は、病院の種別・個室か多床室か・治療内容・保険の種類などによって大きく異なりますが、保険適用前の総額として月10〜35万円程度が目安です。健康保険の3割負担であれば月3〜10万円程度になりますが、高額療養費制度を利用することで自己負担が大幅に軽減されます。一般的な所得の方(区分エ)では月の自己負担上限額が約57,600円に設定されています。事前に「限度額適用認定証」を取得して提示すれば、最初から限度額以上は支払わなくてよくなります。食事代は1食約460円(標準負担額)が別途かかります。具体的な費用は入院予定の病院に問い合わせるのが確実です。
A. 精神科への入院中は、原則として就労はできません。会社員・公務員の場合は「休職」という形になります。休職には会社の就業規則に基づいた手続きが必要です。一般的には、主治医に「休職が必要である」旨の診断書(「療養のための休職が必要」と記載)を書いてもらい、会社の人事・総務担当に提出します。また、会社員・公務員が業務外の病気・けがで仕事を休んだ場合は、健康保険から「傷病手当金」が支給されます(連続3日間を超えて休んだ場合から、給与の約2/3が最大1年6ヶ月支給)。詳しくは、加入している健康保険組合または協会けんぽに問い合わせてください。入院中に精神保健福祉士(PSW)に相談すれば、書類の取得や手続きのサポートをしてもらえます。
A. 病院は患者の個人情報を守る義務(守秘義務)があり、患者の同意なしに家族や職場に入院の事実を知らせることは原則としてできません。ただし、緊急連絡先として登録した家族には連絡が入ることがあります。職場については、傷病手当金の申請や保険組合への手続きの際に疾患名が記載されることがありますが、一般的に保険組合は守秘義務を負っており、会社の人事担当者に病名が知らされることはありません。なお、入院中に「家族に連絡しないでほしい」「どの家族には連絡してよいか」などの希望がある場合は、入院時に病院スタッフに明確に伝えておきましょう。精神疾患でのスティグマ(偏見)を心配する方は多いですが、医療情報は法律によって厳重に保護されています。
A. はい、精神科入院後も継続的な外来通院が再発防止の基本です。入院中に症状が落ち着いていても、薬物療法・心理療法・生活支援の継続が重要です。退院後の外来通院費を軽減するために、自立支援医療制度(精神通院医療)の利用を強くお勧めします。この制度を使うと、外来の精神科通院にかかる医療費が通常の3割から原則1割に軽減され、さらに世帯の所得に応じた月額上限額が設定されます。申請窓口はお住まいの市区町村の福祉担当窓口(障害福祉課など)です。申請には主治医の診断書(自立支援医療用)が必要なので、退院前または退院後に主治医に依頼しましょう。入院中の精神保健福祉士(PSW)に相談すれば、手続きの案内をしてもらえます。
A. 任意入院は本人の同意が必須であるため、家族が「必要」と思っていても、本人が拒否していれば強制的に任意入院させることはできません。まず、精神保健福祉センターへ家族として相談することをお勧めします。専門家から「どのように本人に受診・入院を促すか」についてのアドバイスを得られます。また、本人が信頼している医師や支援者に間に入ってもらうことも有効です。もし自傷他害のおそれが切迫している場合は、精神科救急(各都道府県の精神科救急情報センター)・救急車(119番)・警察(110番)に連絡することが必要になる場合があります。このような緊急事態においては、精神保健福祉法に基づく緊急措置入院(第29条の2)が適用される可能性があります。
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このページの情報は、医師による診断や治療に代わるものではありません。症状が気になる場合は、心療内科・精神科への受診をご検討ください。自立支援医療制度(精神通院医療)を活用すると、退院後の外来通院にかかる医療費が原則1割負担に軽減されます。申請は市区町村の福祉担当窓口へ。
