ヤングケアラーとは?
定義・実態統計・心理的影響・2024年法改正・支援制度・相談窓口を徹底解説
大人が担うはずの家事・家族の介護・きょうだいの世話を、子ども・若者が日常的に行っている——それがヤングケアラーです。中学2年生の約17人に1人、全日制高校2年生の約24人に1人が該当すると推計され、1クラスに必ず1〜2人はいる計算になります。2024年6月の改正子ども・若者育成支援推進法で初めて法律上に定義され、支援対象は「おおむね30歳未満」まで拡大されました。定義・実態・統計・心理的影響・支援制度・周囲ができること・相談窓口まで、最新情報に基づいて包括的に解説します。
ヤングケアラーとは
本来大人が担うはずの家事・家族の介護・きょうだいの世話を、子ども・若者が日常的に行っている——それがヤングケアラーです。中学2年生の約17人に1人、全日制高校2年生の約24人に1人が該当すると推計され、1クラスに必ず1〜2人はいる計算になります。
ヤングケアラーとは何か
ヤングケアラー(Young Carer)とは、本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っている子ども・若者のことです。こども家庭庁は「本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っていることにより、子ども自身がやりたいことができないなど、子ども自身の権利が守られていないと思われる子ども」と定義しています。
重要なのは、「家族の世話をする子ども」のすべてがヤングケアラーではない点です。手伝いや軽いお手伝いの範囲を超え、子どもの権利・日常生活・将来に影響が出るほどのケア負担を担っている場合に、ヤングケアラーとして支援が必要とされます。
- 対象年齢一般的には18歳未満の子どもを指すが、2024年の法改正により「おおむね30歳未満」の若者も支援対象に含まれた。
- ケアの対象障がいや病気のある親・きょうだい・祖父母、依存症を抱える親、外国にルーツを持つ家族など。
- ケアの内容身体的なケア、感情的サポート、家事全般、幼いきょうだいの世話、通訳など多岐にわたる。
改正子ども・若者育成支援推進法による法的定義
2024年6月12日に施行された「改正子ども・若者育成支援推進法」において、日本で初めてヤングケアラーが法律上に定義されました。同法では、ヤングケアラーを「家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者」と規定し、国・地方公共団体等が支援に努めることを明確にしました。
「ヤングケアラー」という言葉の歴史
ヤングケアラーという概念は1980年代のイギリスで最初に提唱されました。当初は「親の障がいや病気により家族のケアを担う子ども」を指す言葉でしたが、その後対象が広がり、現在では精神疾患・依存症・認知症・慢性疾患を持つ家族をケアする子ども・若者全般を含むようになっています。
日本では2010年代から研究者や支援者の間で注目されるようになり、2020年頃からメディアでの報道が急増しました。2021年には厚生労働省・文部科学省がはじめて全国規模の実態調査を実施し、ヤングケアラーの実態が統計的に明らかになりました。2024年の法改正により、社会的認知から法的支援へと大きな転換点を迎えています。
ヤングケアラーの種類と具体例
ヤングケアラーが担うケアは非常に多岐にわたります。一見すると「ちょっとしたお手伝い」に見えることでも、それが毎日続き、子どもの生活全体に影響を与えている場合はヤングケアラーにあたります。
担うケアの種類
具体的なケアの内容を6つに分類して紹介します。タブをタップで詳細が切り替わります。
入浴・着替えの介助、車椅子の操作、通院の付き添い、薬の管理、食事の介助など、本来は専門職や大人が担う身体的ケアを子どもが担います。
料理・掃除・洗濯・買い物、家計管理、弟妹の保育園・学校の送迎など、家族全員分の家事を子どもが取り仕切ります。
親の話し相手、精神的支柱としての役割、うつ状態の親を励ます、「死にたい」という言葉を聞くなど、子どもには本来担えない重さを持つケア。
障がいや病気のあるきょうだいの世話、幼いきょうだいの育児的役割を、親に代わって担います。
外国にルーツを持つ家族のために、学校・病院・行政窓口での通訳を担います。日本語の話せない親の代理として手続きを行うこともあります。
依存症(アルコール・薬物・ギャンブル)のある家族の見守り、自殺リスクのある親の監視など、緊張感の続くケア。
ケアを必要とする家族の状況
ヤングケアラーが生まれる家庭では、ケアを受ける側の家族が何らかの困難を抱えています。
- 身体的な障がい・病気肢体不自由、慢性疾患(がん・心臓病・透析など)、脳卒中後遺症など、身体的ケアを必要とする家族。
- 精神疾患うつ病・統合失調症・双極性障害・不安障害など。日本のヤングケアラーにとくに多いケースです。
- 依存症アルコール依存症・薬物依存症・ギャンブル依存症など、家族の生活そのものを揺るがすケース。
- 認知症祖父母の認知症で、親世代がフルタイム労働のため子どもが代わってケアを担うケース。
- 日本語能力の問題外国にルーツを持つ家族で、日本語が話せない親の代わりに通訳・手続きを担う。
- ひとり親家庭・貧困働きに出るひとり親の代わりに家事・育児全般を担う。
「お手伝い」とヤングケアラーの違い
家庭での家事の手伝いはどの子どもにもあることですが、ヤングケアラーとの違いは「子ども自身の生活・発達・将来に支障が出ているかどうか」です。以下のような状況が続いている場合、ヤングケアラーとして支援を検討する必要があります。
- ✓毎日長時間(目安として平日2時間以上)をケアに費やしている
- ✓ケアのために学校を欠席・遅刻・早退することがある
- ✓宿題や勉強の時間が取れない
- ✓友人と遊ぶ時間がほとんどない
- ✓自分の進路や夢についてゆっくり考える余裕がない
- ✓ケアのことを誰にも話せず、孤立感を感じている
- ✓ケアを理由に部活動・習い事・学校行事に参加できない
ヤングケアラーの実態と統計データ
2021年に厚生労働省と文部科学省が共同で実施した「ヤングケアラーの実態に関する調査研究」は、日本で最初の全国規模のヤングケアラー実態調査です。その結果は衝撃的なものでした。
厚労省・文科省全国調査(2021年)の結果
世話をしている家族が「いる」と回答した子どもの割合を、学年別にまとめました。
ケアに費やす時間の実態
調査では、世話をしている家族が「いる」と回答した子どもに対し、平日1日あたりにケアに費やす時間も質問されました。その結果は深刻なものでした。
ケアの時間が長い子どもほど、学業・友人関係・睡眠・自分の時間に深刻な影響が出ていることが確認されています。
世話をしている家族の種類
世話をしている家族の種類(複数回答)では、年齢層によって対象が変わる特徴が見られます。
- 中学2年生「きょうだい」が61.8%と最多。次いで「母親」が18.0%、「祖母」が13.8%、「父親」が9.7%。
- 全日制高校2年生「きょうだい」が50.3%、「母親」が20.4%、「祖母」が19.2%。
- 大学生「母親」が35.2%と増加。親自身のケアを担う割合が上がります。
小学生・中学生ではきょうだいのケアが多い一方、大学生では親のケアを担う割合が高くなるという特徴があります。
日本財団の調査(2022年)と最新動向
日本財団が2022年に実施した「ヤングケアラーを知っていますか?」調査では、さらに詳細な実態が明らかになっています。
- 認知度「ヤングケアラー」という言葉を知っている中高生は約40%。一般成人でも60%程度にとどまる。
- 自己申告の難しさ自分がヤングケアラーだと認識している子どもは少数で、多くは「家族のことはプライベートなこと」として話さない。
- 相談できていない現実ケアについて誰にも相談したことがないヤングケアラーが過半数を占める。
ヤングケアラーが生まれる背景・原因
ヤングケアラーは個別の家庭の問題というよりも、社会構造的な複数の要因が重なり合って生じる問題です。同時に、家族内の力学と「見えにくさ」という3つの層から理解する必要があります。
社会構造的な背景
ヤングケアラーは、個別の家庭の問題というよりも、社会構造的な複数の要因が重なり合って生じる問題です。
- 核家族化祖父母や親戚が近くにいないため、家族内でケアを分担できる大人が少ない。
- 共働き・ひとり親家庭の増加親が働きに出ている間、子どもがケアを担わざるを得ない状況が生じやすい。
- 社会的孤立「家族の問題は家族で解決すべき」という文化的規範により、外部に助けを求めにくい。
- 介護保険・障害福祉サービスの不十分な活用利用できるサービスがあっても、親が申請しなかったり、情報が届いていないケース。
- 精神疾患への偏見親が精神疾患であることを家族が隠そうとする結果、子どもがケアを内部化してしまう。
家族内の力学
ヤングケアラーになる子どもは、しばしば家族の中で「頼れる子」「しっかりした子」として位置づけられています。家族への愛情と責任感から、ケアを自発的に引き受けているケースが多く、そのために「辛い」「助けてほしい」と言い出せない心理が生まれます。
- 家族への愛情と忠誠心「家族を見捨てることはできない」という強い気持ち。
- 「ふつうのこと」という認識幼い頃からケアをしてきたため、それが特別なことだとは思っていない。
- 親に迷惑をかけたくないという心理親を心配させたくない、親の負担を増やしたくないという気遣い。
- 「恥」や「スティグマ」の内面化家族の問題(精神疾患・依存症など)を他者に知られることへの恥の感覚。
- 長子・女子に多い傾向日本では長子、特に長女がヤングケアラーになりやすい傾向が研究で示されている。
ヤングケアラーの「見えにくさ」
ヤングケアラーが特に対応が難しいのは、その存在が「見えにくい」という点です。
- 本人が自覚していない「自分はヤングケアラーだ」と認識しているケースは少数。
- 成績不振・遅刻が「やる気の問題」と誤解されるケアが原因であることに気づかれず、怠慢だと思われることがある。
- 家族が秘密にするよう求める「家のことは誰にも言うな」と親から言われているケースがある。
- 地域・学校との接点が薄れるケアで忙しいため、課外活動・学校行事への参加が減り、接点が薄れる。
学業・友人関係・将来への影響
ヤングケアラーの経験は、日々の学業から長期的な人生設計まで広範囲に影響します。本人が自覚しにくいまま、進路・人間関係・経済状況にまで波及していく構造を見ていきます。
学校生活・学業への影響
厚生労働省の実態調査では、「世話をしているために、やりたいけれどできていないこと」について、ヤングケアラーが回答した結果が示されています。特に以下の項目で、ヤングケアラーではない子どもに比べて高い割合が確認されました。
日々の学業への影響は、長期的な学力の低下・進路選択の制限へとつながります。
- 定期試験の点数低下勉強時間の不足が成績に直結します。
- 高校受験・大学受験の準備不足塾に行く時間・費用がない、受験勉強の時間が取れないなど。
- 進学の断念家族のケアのために地元を離れることができず、志望校を諦めるケースがあります。
- 学校中退・転校ケアの重さから全日制を続けられず、定時制・通信制に転校したり、中退に至るケースもあります。
友人関係・社会性への影響
子ども・若者にとって、友人と過ごす時間は単なる楽しみではなく、社会性を育む重要な発達の機会です。しかしヤングケアラーは、ケアの負担から友人との時間が大幅に制限されてしまいます。
友人との関係が乏しくなることは、子どもの社会性の発達に長期的な影響を及ぼします。
- コミュニケーション能力の発達遅滞同年代との交流が少ないことで、対人スキルが十分に育まれない。
- 孤立の慢性化孤立した状態が続くことで、成人後も人間関係を築くことへの苦手意識が残る。
- 自己開示の困難「家族のことを話してはいけない」という経験が、成人後も自分の気持ちを打ち明けることへの抵抗感として残る。
- 「ケア役割」の内面化自分が誰かのケアをすること(与える側)に慣れすぎ、自分がケアを受けること(受け取る側)が苦手になる。
進路・就職・人生設計への影響
ヤングケアラーの経験は、子どもの将来の進路・人生設計に大きな影響を及ぼします。「将来のことを考える余裕すらない」という状態が長く続くことで、夢や目標を持ちにくくなるケースもあります。
- 志望校を変更・断念「家族を置いて遠くの学校には行けない」「受験勉強する時間がない」という理由から、本来望んでいた進路を諦める。
- 高校・大学への進学断念経済的理由(ケアのために親が働けない)と時間的理由が重なり、進学を諦めるケースがある。
- 就職先の選択肢が限られる「家族の近くにいられる」「急な休みが取れる」という条件が優先され、本人の希望や能力に合った職を選べないことがある。
「ケアラーサイクル」の問題
ヤングケアラーの経験は成人後も継続するケースが少なくありません。子ども時代にケアを担い続けた人が、成人してからも「家族のケアをすることが当然」という感覚を持ち続けることで、以下のような問題が生じることがあります。
- 自己犠牲的なパターンの継続成人後も自分のニーズより他者のニーズを優先する生き方が染み付いている。
- 燃え尽き症候群子ども時代から続くケア役割が成人後に爆発し、深刻な燃え尽きを経験する。
- 介護離職のリスク成人後に親が高齢化・病状悪化した際に、再び重いケア負担を一人で担うケースがある。
- 「ケアを受けること」への罪悪感自分が支援を受けたり休んだりすることへの強い罪悪感が残る。
メンタルヘルスへの影響
ヤングケアラーのメンタルヘルスへの影響は、国内外の複数の研究で明確に示されています。長期間ケアを担い続けることは、抑うつ・自傷・希死念慮のリスクを倍増させることが2024年の研究で示されました。
ヤングケアラーが直面するメンタルヘルスの問題
ヤングケアラーのメンタルヘルスへの影響は、国内外の複数の研究で明確に示されています。特に長期間にわたってケアを担い続けることが、重大な精神的影響をもたらします。
長期ヤングケアラーと精神的不調の研究知見
東京都医学総合研究所による研究(2024年)では、思春期に長期間ヤングケアラーの状態が続くと、精神的な不調を抱えやすくなることが確認されました。長期ヤングケアラーでは、ヤングケアラーではない児童と比べて以下のようにリスクが増加していました。
これらの数値は、長期にわたるヤングケアラー状態が子どもの精神的健康に深刻なリスクをもたらすことを科学的に示しています。
精神疾患のある親を持つ子どもの特別な負担
特に、うつ病・統合失調症・双極性障害などの精神疾患を持つ親のケアを担う子どもは、身体的なケアに加えて精神的な負担が非常に重くなります。
- 「死にたい」という言葉を受け止める親が希死念慮を口にするたびに、子どもはその言葉を一人で受け止めなければならない。
- 感情的サポートの重さ親の話し相手・愚痴の聞き役・精神的支柱としての役割は、子どもには本来担えない重さを持つ。
- 「親を怒らせてはいけない」という緊張親の感情状態に常に気を配り、自分の感情を抑え込む習慣がつく。
- 二次的トラウマ親のトラウマ・苦しみを繰り返し聞かされることで、子ども自身にもトラウマ反応が生じることがある。
- 「自分が何かしなければ」という過度の責任感子どもが親の回復に責任を感じてしまう、非常に重い心理的負担。
ポジティブな側面と「複雑な感情」
ヤングケアラー支援において重要なのは、ケアがすべて否定的な経験というわけではない点です。一部のヤングケアラーは、ケアを通じて責任感・共感力・問題解決能力・家族への深い絆を育んでいることを誇りに思っています。しかし同時に、疲弊・孤立・将来への不安も感じており、この複雑な感情を丸ごと受け止めることが支援において重要です。
気づくサインと声のかけ方
ヤングケアラーは自分から名乗り出ることが少ないため、周囲の大人がサインに気づくことが重要です。場面別の気づきのサインと、適切な声かけ・避けるべき対応を整理します。
場面別・気づきのサイン
学校の先生、スクールカウンセラー、地域の支援者が気づきやすいサインを場面別にまとめました。
気づいたときの声のかけ方
ヤングケアラーに気づいたとき、どのように声をかければよいでしょうか。無理に聞き出そうとしたり、急に「支援機関につなぐ」と言ったりすることは逆効果になりかねません。まず「あなたのことを気にしている人がいる」という事実を伝えることが大切です。
- ✓一対一で話せる場を作る(人前で聞くのではなく、放課後など二人きりで話せる状況で声をかける)
- ✓行動の変化を具体的に伝える(「最近疲れていそうに見えて、心配しているよ」「遅刻が続いているけど、何か困っていることある?」)
- ✓すぐに解決しようとしない(「何でもいいから話してくれると嬉しい」と、まず話を聞く姿勢を見せる)
- ✓秘密を守ることへの配慮(「話してくれたことは、あなたの許可なく広めない」と伝える、虐待が疑われる場合を除く)
- ✓感謝と称賛より、共感を(「よくがんばっているね」よりも「それは大変だったね、つらくない?」とケアの重さを共感する言葉を選ぶ)
やってはいけない対応
善意の言葉が、ヤングケアラーの子どもを傷つけることがあります。以下のような対応は避けることが重要です。
- 「家族なんだから当然」という言葉(ケアを美化・正当化する言葉は、子どもの苦しみを見えなくする)
- 「もっとがんばれ」「しっかりして」(すでに限界まで頑張っている子どもをさらに追い詰める)
- 本人の同意なく家族の状況を広める(信頼を裏切り、以後相談を受けられなくなる)
- 「行政に通報する」という脅しのような言い方(支援につなぐ必要がある場合も、まず本人に丁寧に説明し同意を得る)
- ケアをすぐにやめさせようとする(家族のケアは生活の一部であり、急にやめさせることは家族全体の混乱を招く可能性がある)
支援制度——学校・法律・地域・民間
2024年の法改正により、ヤングケアラーへの支援は国・自治体の法的責務となりました。学校現場、公的福祉サービス、地域条例、民間団体の4層で支援が構築されつつあります。
学校・教育現場での支援
学校は子どもと日常的に接する場であり、ヤングケアラーの早期発見・支援において特に重要な役割を担っています。文部科学省も、学校がヤングケアラー発見の「最前線」であることを明確にし、教員・スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカー(SSW)の連携を促進しています。2025年7月28日付で文部科学省が「ヤングケアラー支援における学校等とヤングケアラー支援担当部署との連携について」という通知を発出し、学校と支援担当部署の連携強化が改めて求められています。
- 日常的な観察登校状況・学習状況・生活態度の微細な変化に気づける。
- 子どもとの信頼関係相談しやすい関係性を日頃から築いておくことが重要。
- スクールソーシャルワーカーとの連携福祉的支援が必要なケースをSSWにつなぐ。
- 学習支援ケアが原因の遅れについて補習・課題の調整など柔軟に対応する。
- スクリーニングの実施アンケートや個別面談でヤングケアラーを早期に把握する取り組み(令和7年度文科省ガイドライン)。
- ケース会議の開催学校内の関係職員が集まり、個々の子どもの状況を共有・検討する。
- 関係機関との連携市区町村の支援担当課・児童相談所・精神保健福祉センターとの情報共有と連携。
学校で受けられる具体的なサポート窓口は次の3つです。
法律・公的福祉サービス
2024年の法改正で、国と自治体の支援が法的に義務付けられました。具体的に活用できる公的福祉サービスを知っておくことは、支援の第一歩です。
- 介護保険サービス65歳以上の祖父母・親のケアには、介護保険のヘルパーサービス・デイサービス・ショートステイなどが利用できる。ケアマネジャーへの相談から始める。
- 障害福祉サービス障がいのある家族のケアには、居宅介護(ホームヘルプ)・生活介護などの障害福祉サービスが利用できる。市区町村の障害福祉担当窓口に相談する。
- 精神科・心療内科への受診精神疾患のある家族には、医療機関への受診と精神科訪問看護などのサービスが有効。
- 子育て支援サービスひとり親家庭には、ファミリーサポートセンター・学童保育・一時預かりなどのサービスが利用できる。
- 生活困窮者自立支援制度経済的困窮を抱える家庭には、生活困窮者自立支援制度(自立相談支援・住居確保給付金等)が利用できる。
- 自立支援医療制度(精神通院医療)精神疾患のある家族・またはヤングケアラー本人が精神科に通院する場合、医療費の自己負担が原則1割に軽減される制度。市区町村の福祉担当窓口または精神保健福祉センターに申請する。
地域条例と自治体の取り組み事例
法改正以前から、先進的な地方自治体ではヤングケアラーを含むケアラー支援条例の制定が進んでいました。
- 埼玉県(2020年施行)日本で最初のケアラー支援条例。ヤングケアラーを含む全世代のケアラー支援を規定。
- 北海道(2021年施行)ケアラー支援条例。ヤングケアラーを含む全世代のケアラー支援を規定。
- 全国の動向2025年3月27日現在、全国で計32の条例が制定されており、今後も増加が見込まれる。各市区町村でも独自のヤングケアラー支援計画・相談窓口の設置が進んでいる。
全国の自治体で、ヤングケアラー支援のための独自の取り組みが進んでいます。
- 埼玉県LINEによるヤングケアラー相談「埼玉県ヤングケアラーチャンネル」を開設。気軽に無料で相談できる。
- 京都府「京都府ヤングケアラー総合支援センター」を開設し、平日だけでなく土曜日も相談を受け付け。
- 大阪府ヤングケアラー支援事例集「がんばっているあの子に気づいたら」を作成・公開。
- 東京都各区市町村のヤングケアラー相談窓口情報を東京都福祉局がまとめて提供。
民間団体・専門機関による支援
公的支援に加え、当事者団体・民間財団・精神保健福祉センターによる支援も充実してきています。
ヤングケアラー本人ができること
このページを読んでいるあなたが、もしヤングケアラーかもしれないと思っているなら、まず伝えたいことがあります。あなたは一人ではなく、相談できる場所があります。
まず知ってほしい4つのこと
- あなたが家族を大切にしていることは、間違いではありませんただ、その重さはあなた一人で背負うべきものではないのです。
- 助けを求めることは、家族を裏切ることではありません支援を受けることで、あなたも家族も状況が良くなる可能性があります。
- あなたの将来は大切ですケアのために自分の夢を諦めることは、あなたにとっても、家族にとっても、社会にとってもよいことではありません。
- あなたは一人ではありません同じ状況にある子ども・若者は全国にたくさんいます。あなたの気持ちを分かってくれる人がいます。
自分の状況を整理してみる
「自分がヤングケアラーかどうかわからない」と感じている場合、まず以下のような点を振り返ってみましょう。
- ✓家族の世話をしているために、学校に遅刻・欠席したことがある
- ✓宿題や勉強をする時間が十分に取れない日が続いている
- ✓友達と遊ぶ約束をキャンセルしなければならないことが多い
- ✓家族のことをいつも心配していて、授業に集中できない
- ✓家族の状況を友達や先生に話せないでいる
- ✓自分の時間・将来のことを考える余裕がない
これらが当てはまる場合、あなたはヤングケアラーかもしれません。一つでも当てはまることがあれば、まず誰かに話してみてください。
相談できる場所
ヤングケアラー本人が利用できる相談窓口を紹介します。自分が住んでいる地域の相談窓口は、こども家庭庁の特設サイト(kodomoshien.cfa.go.jp/young-carer/consultation/)で検索できます。
- ✓学校のスクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカー(最もハードルが低い方法の一つ)
- ✓一般社団法人ヤングケアラー協会のLINE相談(元ヤングケアラーのスタッフが対応)
- ✓こども家庭庁ヤングケアラー特設サイト(kodomoshien.cfa.go.jp/young-carer/)で全国の相談窓口検索
- ✓市区町村の子ども相談窓口・子ども家庭総合支援拠点
- ✓精神保健福祉センター(自分自身や家族のメンタルヘルスについて無料で相談可)
自分自身をケアすることの大切さ
ヤングケアラーの多くは、自分のことを後回しにする習慣が身についています。しかし、自分自身の心と体を守ることは、家族のケアを続けるためにも不可欠です。
- 自分の気持ちを大切にする「疲れた」「辛い」という気持ちを、「当然のこと」として見過ごさない。
- 少しの時間でも「自分の時間」を作る好きな音楽を聴く、散歩をするなど、ほんの短い時間でも自分のためだけの時間を作ることが重要。
- 話せる場所を見つける友人、先生、相談窓口など、どこかに気持ちを話せる場所を見つけておく。
- 「助けを求めていい」と自分に許可する支援を求めることは弱さではなく、自分と家族を守るための賢明な選択。
家族・周囲ができること
子どもに過度なケア負担をかけている親・保護者が、その状況に気づいていないケースも少なくありません。家族として気づき、伝え、外部支援を求める3つのステップを整理します。
子どもがヤングケアラーになっている可能性に気づく
以下のような状況が家庭にある場合、子どもへの影響を振り返ってみることが重要です。
- ✓子どもが毎日食事の準備や家事の大部分を担っている
- ✓子どもが弟妹の世話を主に担っている
- ✓自分(親)の体調・精神状態が安定していないときに、子どもが精神的な支え役を担っている
- ✓子どもが学校を休んで家のことをしてくれることがある
子どもに伝えてほしい4つのこと
- 「ありがとう」と感謝を伝える子どもがケアをしていることへの感謝と、その大変さへの理解を言葉で伝える。
- 「あなたの学校・友達・将来を大切にしてほしい」と伝えるケアに追われる中でも、子ども自身の生活が大切であることを伝える。
- 「一人で抱え込まなくていい」と伝える外部の支援を求めることへの許可を、言葉で与える。
- 子どもの話を聞くケアについて子どもがどう感じているかを、定期的に聞く機会を作る。
外部の支援を求める
子どもへのケア負担を減らすために、外部の支援サービスを積極的に活用することが重要です。「お金がかかる」「人を家に入れたくない」という気持ちもわかりますが、子どもへの影響を考えると、利用できるサービスを活用することが家族全体のためになります。
- 介護保険・障害福祉サービスの相談ケアマネジャー・相談支援専門員・市区町村の窓口に相談する。
- ひとり親家庭向けサービスファミリーサポートセンター・子育て短期支援事業(ショートステイ)などの活用。
- 精神保健福祉センターへの相談精神疾患のある方は、精神保健福祉センターや主治医に現在の状況を伝え、訪問看護・デイケアなどの活用を検討する。
よくある質問
A. 一般的には18歳未満の子どもを「ヤングケアラー」と呼びますが、2024年6月施行の改正子ども・若者育成支援推進法により、支援対象は「おおむね30歳未満」の若者まで拡大されました。進学・就職の重要な移行期(10代後半〜20代)も含めて切れ目のない支援を行うことが、法律で求められています。成人後もケアを担い続けている20代の方も、支援の対象です。
A. 「ヤングケアラーかどうか」という判断より、「自分が困っているかどうか」が重要です。家族の世話のために学校・友達・自分の時間が影響を受けていると感じているなら、それだけで相談する理由として十分です。一般社団法人ヤングケアラー協会のLINE相談や、学校のスクールカウンセラーに「こんな状況なんですが」と話してみるだけで構いません。診断や判定をしてもらう必要はなく、まず話を聞いてもらうことが第一歩です。
A. ヤングケアラーへの支援の基本は「家族を引き離すこと」ではなく、「子どもと家族が一緒に生活できるよう支援を入れること」です。相談しただけで家族が引き離されることはほとんどありません。ただし、虐待が疑われる状況では、子どもの安全を優先するための対応が取られる場合があります。相談窓口では守秘義務があり、本人の同意なく情報を広めることは基本的にありません。まず「話を聞いてもらうだけ」でも大丈夫です。
A. そうとは言えません。家族のケアを通じて、責任感・共感力・問題解決能力・深い家族の絆を育む子どもも多くいます。ヤングケアラーであることを誇りに思う方もいます。問題になるのは、ケアの量・内容・継続期間が子どもの年齢や発達に見合わないほど重くなり、学業・友人関係・睡眠・将来に著しい支障が出ている場合です。「ケアすること自体は悪いことではない。でも、その重さがあなた一人で背負えるものかどうかを一緒に考えたい」というのが、支援の基本的な姿勢です。
A. 学校の先生に相談することに抵抗がある場合、以下の選択肢があります。一般社団法人ヤングケアラー協会のLINE相談は、スマートフォンから気軽に相談でき、元ヤングケアラーのスタッフが対応します。こども家庭庁の特設サイト(kodomoshien.cfa.go.jp/young-carer/consultation/)では、地域の相談窓口を検索できます。また、精神保健福祉センターでは電話・来所による無料相談(匿名可)を実施しています。「誰かに話す」という最初の一歩を、どの場所からでも踏み出してください。
A. これは非常に重い状況であり、子ども一人で抱え込んではいけない問題です。まず、「死にたい」という言葉を一人で受け止め続けることは、子どもにとって極めて大きな精神的負担です。あなたが感じている怖さ・疲れ・不安は、当然の感情です。できるだけ早く、学校のスクールカウンセラー、精神保健福祉センター、またはヤングケアラー相談窓口に連絡してください。親自身の支援(精神科への受診、訪問看護など)と、あなた自身への支援の両方を一緒に考えてもらえます。緊急の場合(親が今すぐ死にたいと言っている)は、警察(110番)または救急(119番)に連絡してください。
A. 子ども時代のヤングケアラー経験は、成人後の生活にも影響を及ぼすことがあります。自己犠牲的なパターン・「ケアを受けることへの罪悪感」・人間関係における過度の責任感などが、成人後も続くことがあります。しかし、適切なサポート(カウンセリング・心理療法など)によって、これらのパターンを変えていくことは可能です。2024年の法改正により「おおむね30歳未満」の若者も支援対象となったため、大人になってからでも支援を受ける機会があります。一人で抱え込まず、精神保健福祉センター・カウンセラー・支援団体に相談してください。
一人で抱え込まないで。
相談してみませんか。
ヤングケアラーとして、あるいはヤングケアラーを支える立場として、つらい気持ちを抱えていませんか。どうかあなたの大切な悩みをご相談ください。
このページの情報は、医師による診断や治療に代わるものではありません。心身の症状が気になる場合は、心療内科・精神科への受診をご検討ください。
